航空自衛隊「宇宙作戦群」発足、宇宙領域の指揮統制・監視能力を強化しスペースデブリや人工衛星への妨害行為など監視

防衛省が航空自衛隊「宇宙作戦群」発足、宇宙領域の指揮統制・監視能力を強化しスペースデブリや人工衛星への妨害行為など監視

Japan Ministry of Defence

3月18日、防衛省は航空自衛隊宇宙作戦隊の能力を強化し、宇宙領域での活動を指揮、統制する「宇宙作戦群」を発足、東京都府中市の府中基地で発足記念行事を開催しました。

日本政府は防衛力の新しい軸になる分野として宇宙・サイバー・電磁波の3領域を重視しており、17日の「自衛隊サイバー防衛隊」発足に続いて宇宙分野の能力強化も進めていく方針です。

宇宙作戦群の拠点は府中基地に置かれ、発足当初は70人という比較的少人数で構成され、本部20人、自衛隊(陸海空)との連携をとる宇宙作戦指揮所運用隊に30人、2020年に設置された既存の宇宙作戦隊20人という編成になります。

また2022年度には府中基地に装備の維持管理をする「宇宙システム管理隊」を10人編成で設置し、宇宙作戦隊を40人に倍増して「第1宇宙作戦隊」に改名、さらに山口県の航空自衛隊防府北基地に「第2宇宙作戦隊」を新設する予定です。

第1および第2宇宙作戦隊の役割分担は、主に第1作戦隊が宇宙状況(スペースデブリなど)の監視任務、第2作戦隊は電磁波による日本の人工衛星への妨害行為などの監視にあたるとのこと。現在山口県に建設中の宇宙監視レーダーは第1作戦隊が遠隔で運用します。また、2026年度までに監視用の人工衛星を打ち上げ予定で、レーダーと衛星などを組み合わせた宇宙監視システムを構成するとのこと。

近年は世界各国が再び月への有人探査を目指し、火星への進出なども計画される一方で、宇宙空間の監視体制を強化する動きも目立っています。最も話題になったのは米国が2019年に陸・海・空軍および海兵隊などに並ぶ軍種として設置した宇宙軍ですが、2020年にはフランスも空軍の活動領域を宇宙にまで拡大、防衛力強化を目的として「航空宇宙軍」に改名しています。そして日本でも先に述べたとおり2020年に「宇宙領域における部隊運用の検討、宇宙領域の知見を持つ人材の育成、米国との連携体制の構築」を目的とした宇宙作戦隊を編成しており、これが今回の宇宙作戦群発足の基礎になっています。

(Source:TBS。coverage:防衛省(PDF)、NHKEngadget日本版より転載)

Astraが2022年1月に初めてフロリダ州ケープカナベラルからロケットの打ち上げを行うと発表

Astra(アストラ)はこれまで、初期のロケット数機をアラスカ州コディアックで打ち上げてきたが、今後は打ち上げ場所を拡大する予定だ。同社は米国時間12月6日朝、クライアントであるNASAから請け負ったミッションを、2022年1月にフロリダ州のケープ・カナベラルから打ち上げると発表した

この打ち上げは、ケープ・カナベラル宇宙軍基地の広大な敷地内にあるSpace Launch Complex 46 (スペース・ローンチ・コンプレックス46)で行われる予定だ。この施設は、かつてミサイル試験用基地として使われていたが、しばらく使用が停止されていた後、1997年に商業宇宙事業のために再開された。以降は2019年に実施された直近のミッションまで、散発的に使用されている。

Astraが計画している打ち上げは、同社にとってだけでなく、米国からの打ち上げに尽力している米宇宙軍のSpace Launch Delta 45(第45宇宙航空団)にとっても大きな価値がある。これまでの宇宙開発では、打ち上げに必要な承認には数年を要していたが、今回のミッションはわずか「数カ月」で承認を得ることができた。

Astraにとっては、打ち上げのために利用可能な選択肢が増えることになり、顧客のペイロードを届ける軌道の幅を広げるという意味でも重要だ。また、フロリダという土地は歴史的に天候が比較的安定していることもあり、打ち上げ場所として人気が高い。

Astraのコアバリュープロポジションの1つは、ロケットが小型であり、現場における打ち上げ業務に必要な装備も軽量であるため、最小限の人員と準備だけでさまざまな場所から効果的に打ち上げを展開できることだ。ゆえに、それを証明するためにも、打ち上げ場所を多様化することは重要になる。

AstraのBenjamin Lyon(ベンジャミン・リオン)氏とKelyn Brannon(ケリン・ブラノン)氏は、来週の「TC Sessions:Space 2021」に講演者として参加する予定なので、2022年の計画についてはそこでより詳しく知ることができるだろう。

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米宇宙軍がベンチャーキャピタル「Embedded Ventures」と提携し新たな研究開発プロジェクトを設立

かつて宇宙産業を支配していたのは、米国政府だった。米国政府で、いくつもの事業を限られた数の巨大航空宇宙企業に外注し、その技術を長期にわたる中央集権プログラムで利用してきた。爆発的な技術革新と一部にはベンチャーキャピタルと未公開株式のおかげで、米国政府は数ある顧客の1つとなった。しかし、そのままでいるつもりはない。

そのために、米国宇宙軍(USSF)のSpaceWERXオフィスは、設立11カ月のベンチャーキャピタル、Embedded Ventures(エンベデッド・ベンチャーズ)と提携し、国内の宇宙経済を発展させるとともに、国の利益を守るために利用できる研究開発機会の創出を目指す。

これはUSSFが共同研究開発契約(CRADA)と呼ばれるこの種の研究開発契約を、ベンチャーキャピタルと結んだ初めてのケースだ。また、米国政府がベンチャーキャピタルの慣行と資金調達モデルの利点を活かそうとする兆候の1つでもある。

元々CRADAは米国防総省(DOD)と、政府との協業を望むスタートアップとの間で利用されていた。このファンドに事業パートナーとして最近参加したMandy Vaughn(マンディー・ヴォーン)氏が、CRADAを推進するためのアイデアを提案した、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jenna Bryant(ジェナ・ブライアント)氏は言った。Embedded VenturesとWalter McMillan(ウォルター・マクミラン)中佐ら政府関係者との間で数回電話が交わされ「その後はご存知のとおりです」とブライアント氏は言った。

ベンチャーキャピタルにもDODにとってもこれまでに逃したチャンスはたくさんあったので、この5年契約の提携は少しでもその痛みを和らげるものになるだろう、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jordan Noone(ジョーダン・ヌーン)氏がTechCrunchに語った。例えばベンチャーキャピタルは公共機関よりもずっとすばやく動くことができる。さらにVCは、防衛に利益をもたらす新たな新興技術の動向を察知する能力をもっている。

スタートアップもこの提携の恩恵を受けることができる。多くの若い企業にとって、米国政府と仕事をするためには、長い契約期間や厳しき規制されたプロセスなど複雑で威嚇的なプロセスがともなう。その多くは教育に行き着く。スタートアップは戦略的決断を下し、政府との契約に適合するように準備を進める。VCの支援が生かされるのはそこだ。

「このように軍民双方にとっての好機を支援することに対して、ベンチャーキャピタルコミュニティ反応は決して良いものではありません」とヌーン氏はいう。しかしそうした機会は、契約申請の障壁を越える意志を持つ会社にとって利益が大きい。

Embeddedにとって、一企業に賭ける可能性は、向こう側に米国政府という巨大な顧客がいる可能性がある場合の方がずっと高い。加えて、今後20年間主役を演じられる宇宙テクノロジーには、官民連携が必要になる可能性が高い、とヌーン氏はいう。SpaceXが、部分的に、NASAの投資によって種をまかれたのと似ている。

「ベンチャーキャピタル・コミュニティにエコシステムが出来上がり、そこで冷戦のさなかにシリコンバレーが誕生してテクノロジーを生み出してきました。それが今は誰もが消費者向けアプリばかり作っています」とヌーン氏はいう。「その間何が起きたのか、どうすればシリコンバレーが国家安全保障に関われるように舵を取り直せるのでしょう」。

EmbeddedとUSSFは定期的に顔を合わせて進捗について話し合い、その中で基準を設定する。これはCRADAプログラム下の新しいタイプの提携で、両者間に金銭の授受がないため、目標の一部は成功する提携はどのようなものかを定義して、将来再現できるようにすることにある。両社が共同投資する必要はないものの、協業の結果の1つがそうなる可能性はある、とEmbeddedの広報担当者は語る。

「業界の人たちはいつも、『みんなが一緒に働き、ベンチャーのペースで動くにはどうすればいいか』と話していますが、実際にやっている人はいません」とブライアント氏は付け加えた。「今すぐ何か行動することが私にとって重要なのです」

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウォズニアック氏の宇宙企業「Privateer」は混雑化して危険な宇宙のGoogleマップを目指す

現在、地球低軌道上(LEO)には、壊れた衛星やロケットの破片、多段式ロケットや宇宙ミッションの残骸など、何百万個もの宇宙ゴミが散乱しているが、これを一掃することを目的としたベンチャー企業が次々と誕生している。Steve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏と共同で宇宙ベンチャーを設立したAlex Fielding(アレックス・フィールディング)氏によると、LEOの清掃は重要な課題だが、1つ問題があるという。宇宙ゴミ(スペースデブリ)の多くは、実際にどこにあるのかわからないということだ。

「軌道清掃企業は、地球低軌道上にあるほとんどの物体がどこにあるのか一致した意見がなく、それぞれの瞬間に3~400km程度の精度以上で把握することができません」とフィールディング氏はTechCrunchに語った。

フィールディング氏とウォズニアック氏は、新会社「Privateer」を設立して、この知識のギャップを解消しようとしている。これまでステルス状態にあったこの会社は、9月にウォズニアック氏がYouTubeにアップした1分間のプロモビデオへのリンクをツイートしたことで注目を集め、Privateerは宇宙空間の物体の清掃に力を入れるのではないかとの噂が広まった。

しかし、それは微妙に違っていた。「Privateerは実際には、宇宙をきれいにするという目標でスタートしたわけではありません」とフィールディング氏は説明する。「私たちは、宇宙のGoogleマップを作ることを目指してスタートしたのです」。

フィールディング氏とApple(アップル)の共同創業者ウォズニアック氏のコラボレーションは、今回が初めてではない。2人は2000年代初頭に、物体の物理的な位置を追跡する技術を開発する無線ハードウェア企業Wheels of Zeus(WoZ)を設立している。

「20年前、私たちがそれ(WoZ)を始めたとき、宇宙にあったものの半分はゴミでした」とフィールディング氏は語る。その後、状況はさらに悪化していった。「今の世界では、(軌道上には)もっともっと多くのものがあり、その中でも特に危険なものはほぼすべてが低軌道にあり、非常に高速で移動していて、ほとんどの場合よく追跡されておらず、理解されていません」。

宇宙ゴミの危険性は依然として存在する。5月、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が、モジュールの1つに取り付けられたロボットアームに幅5mmの穴が開いているのを発見した。アームは機能していたが、ISSが衝突を避けるための操作をしなかったことから、当たった物体は、米国宇宙軍の宇宙監視ネットワークが追跡できないほど小さい軌道上の数百万個の物体の1つであると考えられる。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)やSpaceX(スペースX)のような打ち上げ企業が、かつてNASAのような公的機関が独占的に行っていたサービスを今は提供しているのと同じように、Privateerはこうした膨大なデータギャップを埋められるかもしれない。

Privateerは、最初から早いペースで取り組みを進めている。同社は、2022年2月11日に「Pono 1」と名づけられた最初の小型衛星を打ち上げる予定だ。Pono 1の大きさは約3U(約30cm)で、非光学式センサー30個と光学式カメラ12個の合計42個のセンサーを搭載する。非光学式センサーは、4ミクロンの精度を実現する。衛星本体は炭素繊維を用いて3Dプリントで作られ、そうすることによりチタンと同等の剛性を持つ単一の固体部品になるとフィールディング氏はいう。推進剤の代わりに、磁気トルカという衛星姿勢制御用の電流を発生させる小型装置を使って方向を制御する予定だ。

Pono 1衛星は4カ月間だけ運用され、そのあと軌道離脱して地球の大気圏に戻り焼失する。2番目の衛星であるPono 2は、4月末に打ち上げられる。Privateerは、両機の打ち上げのためにすでに打ち上げ業者を決定し、必要な承認を得ている。

これらの打ち上げに加えて、Privateerは、軌道上のロジスティックスとサービスを提供するスタートアップであるAstroscaleとすでに協力関係にあり、現在、宇宙ゴミ除去衛星のデモを行っているとフィールディング氏は述べている。また、Privateerは、米国宇宙軍とのパートナーシップも締結した。

フィールディング氏は、宇宙の完全なGoogleマップを追求しないことは、単なる怠慢ではなく、命取りになるかもしれないという。「私は普段は楽観主義者ですが、今でも非常に恐れているのは、遅すぎたのではないか、2年以内に軌道上で最初の有人宇宙飛行士の犠牲者が出るのではないかということです。そう考える理由は、地球低軌道での(物体や活動の)急増にあります」。

関連記事:日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

米宇宙軍からBlue Origin、ULA、Rocket Lab、SpaceXの4社が次世代ロケット開発に関わる契約を獲得

2019年12月に空軍から軍種としてスピンアウトした米国宇宙軍は、次世代ロケットエンジンの試験や上段の改良に関するプロジェクトに向けて、次の契約を勝ち取った企業を発表した。

この契約は、宇宙軍の宇宙システム司令部が管理する「Space Enterprise Consortium(SpEC、スペース・エンタープライズ・コンソーシアム)」プログラムによって選定された企業に付与されるものだ。SpECは、米国防総省と宇宙産業の連携を促進し、約600社の参加企業が契約を競い合っている。今回の契約は総額8750万ドル(約97億5000万円)で、以下の4社のロケット打ち上げ企業が獲得した。

  • Blue Origin(ブルーオリジン)は、大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」上段用の極低温流体管理技術開発のために2430万ドル(約27億円)を獲得
  • United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、新型「Vulcan Centaur(バルカン・ケンタウルス)」2段式大型ロケットのアップリンク・コマンド&コントロールのために2430万ドルを獲得
  • Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社史上最高額となる2430万ドルの契約を獲得。この資金は、同社の次期中型ロケット「Neutron(ニュートロン)」の上段の開発に充てられる
  • SpaceX(スペースX)は「Raptor(ラプター)」ロケットエンジンの燃焼安定性分析および試験のために1440万ドル(約16億円)を獲得

SpaceXとULAは、宇宙軍の国家安全保障宇宙打ち上げプログラムのもと、米国政府のための打ち上げ業者としてすでに選定されている。Rocket LabとBlue Originの両社は、2024年に次回の打ち上げ契約を競うことになるだろう。今回の契約は、両社が入札に向けて準備を進めていることを窺わせるものだ。なお、Blue OriginとNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、2020年にSpaceXとULAに敗れている。

今回の契約獲得について、Rocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)CEOは、Neutronロケットに対する「信頼の証」であると声明で述べている。「私たちはElectron(エレクトロン)で信頼のおける打ち上げシステムを構築してきましたが、ニュートロンでも同じことを行い、より打ち上げ能力の大きな新型ロケットで、引き続き自由な宇宙へのアクセスを提供して参ります」。

画像クレジット:Aubrey Gemignani/NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロケット企業のAstraが初の商業軌道打ち上げを8月27日から9月11日の間に行うと発表

ロケット打ち上げスタートアップ企業のAstra(アストラ)が行った最後のテスト打ち上げは予想以上にうまくいき、軌道速度にあと一歩で達するところだったが、これは特定のミッションのためのストレッチゴールのようなものだ。同社は当時、軌道に到達するためにはソフトウェアを調整するだけでよいと述べていたが、それを証明する機会はいつ到来するのかが判明した。Astraは米国時間8月5日、米国宇宙軍のためのデモンストレーション・ミッションである、初の商業軌道打ち上げのローンチウィンドウが、8月27日より始まることを明らかにした。

Astraが米国宇宙軍と結んでいる契約には、2021年後半に予定されている2回目の打ち上げも含まれているが、その正確なスケジュールはまだ確定していない。

Astraのロケットが宇宙軍のために運ぶペイロードは、同局のSpace Test Program(宇宙テストプログラム)のために飛ばすテスト宇宙機になる。打ち上げは、これまでもテストミッションを行ってきたアラスカ州のコディアックにあるAstraの宇宙港から行われる予定だ。

ローンチウィンドウは、米国太平洋夏時間の8月27日午後1時から始まるが、9月11日まで継続されるため、天候などの条件を考慮した上、この期間内で打ち上げ時間が変更になる可能性もある。

2021年7月1日にSPAC(特別買収目的会社)との合併により上場企業となったAstraは、カリフォルニア州アラメダにある工場でロケットを製造している。この打ち上げプロバイダがターゲットとしているのは、同社の規模と同様、安価で、大量の、質量が小さな打ち上げであり、SpaceX(スペースX)よりも柔軟なサービスを提供し、Rocket Lab(ロケットラボ)に比べてコスト面で優位性がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astraロケット民間宇宙飛行米宇宙軍

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

Gene Blevins / reuters

米空軍が、民間の航空宇宙企業の大型ロケットを使い世界のどこへでも貨物を輸送することを想定した小規模な開発プログラムを継続していると述べました。

米国防総省は”Rocket Cargo”と称するこの実験的プログラムはアメリカ宇宙軍(USSF)が主導することになると説明し「これまで陸送や空輸、船便では困難だった場所への貨物輸送を実現させるためにロケットの着陸能力や、大気圏再突入後に貨物を空中投下するための分離可能なポッドを設計し運用する能力を実証する」と予算案に記しています。

宇宙ロケットを使う輸送や旅行は2地点間を短時間で結ぶことを可能します。よりわかりやすく言えば、地球の裏側まで行くにしても、ほんの1時間ほどの時間で到着できる可能性があるということです。

この計画は2022年の予算案で約5000万ドルの要求と規模こそ小さいものの、昨年からのSpaceXとExploration Architecture Corporation(XArc)との契約による研究開発作業を継続します。

Rocket Cargoプログラムでは具体的には言及していないものの、30〜100トンの貨物を輸送でき、完全に再利用可能なロケットとしては、現在はSpaceXのStarshpが唯一の選択肢でしょう。

SpaceXはこれまでにStarshipのプロトタイプSN15を高高度まで上昇させ、地上に垂直着陸させるテストを成功させています(それまでにはいくつもの爆発がありましたが)。SpaceXはロケットを素早く再利用して再び宇宙飛行に送り出し、それを宇宙経由の定期便に発展させるという、これまでの使い捨てによるロケット運用とは全く異なるコンセプトの実現を目指しています。

ただStarshipプロトタイプであっても、まだ一度も軌道には到達できていません。また、空軍はこのプログラムにおける選択肢をより広くしたいと考えています。

米空軍でRocket Cargoプログラムのリーダーを務めるGreg Spanjers博士は、SpaceXの他にこのプログラムに対し潜在的にロケット供給が可能な民間企業として、NASAの月着陸船契約を競っていたBlue OriginやDyneticsの名を挙げました。さらにほかにもいくつかの企業と話をしており、まずはより多くの企業がこの分野に参入することを奨励するため、窓口とロードマップを整備するとしています。

(Source: CNBCEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:安全保障(用語)XArc(企業)軍事(用語)SpaeceXDynetics物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)Blue Origin(企業)米宇宙軍 / USSF(組織)