DMM、葬儀など“終活”情報ポータル提供する終活ねっとを買収ーー取得額は10億円程度か

写真左より、DMM.com 執行役員の緒方悠氏、終活ねっと代表の岩崎翔太氏

DMM.comは10月12日、人生のエンディングを意味する「終活」にまつわる情報ポータルサイトなどを提供するスタートアップ、終活ねっとの発行済株式総数の51%を取得したと発表した。金額は非公開だが、関係者らの情報から推測するに10億円程度とみられる。また、これを期にDMMの執行役員である緒方悠氏、および経営企画室室長の市村昭宏氏が終活ねっとの取締役に就任する。

終活ねっとはお墓や葬儀関連のメディアなどを展開するスタートアップ。同社には現在、メディアのライター・編集者として大学生を中心に約40人が在籍している。主要メンバーは4人で、代表取締役を務める岩崎翔太氏は現役東大生だ。2017年12月にはジェネシア・ベンチャーズなどから8300万円を調達している。

終活ねっとは2016年9月の設立。創業から約2年というタイミングでDMMとのディールを受け入れた理由として、岩崎氏はDMMが持つリソースなどを活用して同社のビジネスを加速したかったと話す。「かねてより、ライフエンディングのNo1ブランドを目指していたが、リソースや経験の壁など様々な問題に直面することもあった。積極的にMAという手段を考えていたタイミングではなかったが、たまたま共通の知人の紹介でDMM側の担当者に会い、終活ねっとにはないものをDMM社がもっていると強く感じた。DMM社の力を借りることで、ライフエンディングのNo1ブランドへの近道になると思った」(岩崎氏)

なお、DMMは2018年10月に100億円規模のマイノリティ投資ファンド「DMM Ventures」を設立しているが、今回の出資はDMM Venturesとは無関係だという。しかし、DMMは今回の出資についても「若手起業家への支援・サポート」という意味をもつものだとコメント。岩崎氏ら終活ねっとは今後も独立性を保ったまま経営されるという。

葬儀やお墓など、“終活”に関する情報のポータルサイト「終活ねっと」が8300万円調達

葬儀やお墓、仏壇など人生のエンディングにまつわる情報ポータルサイト「終活ねっと 〜マガジン〜」などを運営する終活ねっとは12月19日、ジェネシア・ベンチャーズと花房弘也氏など数人のエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は8300万円だ。

同社はシードラウンドで1700万円を調達しており、今回を含む累計調達金額は1億円となる。

終活ねっとは、葬儀やお墓など人生のエンディングにまつわる様々な情報を配信するメディア「終活ねっと 〜マガジン〜(以下、終活ねっとマガジン)」、そして葬儀事業者などを集めた比較サイトの「終活ねっと」を運営するスタートアップ。同社代表取締役の岩崎翔太氏は、22歳の現役大学生だ。

現在、終活ねっとマガジンには約20人の編集チームがおり、同メディアには1日5〜6記事ほどが掲載されている。PV数などは開示していないが、終活ねっと代表取締役の岩崎翔太氏によれば「1日数万PVほど」だという。主な読者は40〜50代が中心だということで、両親の終活のために検索される例が多いそうだ。現在のところ、同メディアでの広告収入が同社の主な収入源となっている。

前述したとおり、終活ねっとは葬儀関連事業者を集めた比較サイト「終活ねっと」も運営している。ただ、正直こちらのサービスはまだ発展途上といったところだ。例えば東京都の事業者を検索すると864件の検索結果(記事執筆段階)が表示されるが、今の段階では、口コミや価格などの情報は掲載されていない。

もっとも、公平を期すために言えば、この業界は価格だとか口コミだとか、リアルなデータの開示に関してとてもセンシティブな業界であることは確かだ。上場企業の鎌倉新書が運営する「いい葬儀」というポータルサイトでも、都市部こそ価格の開示が進んでいる印象を受けるが、地方の葬儀社になればなるほど価格の欄には「ご相談ください」と書かれているだけだ。

今回のラウンドでリード投資家を務めたジェネシア・ベンチャーズの河野優人氏も、「ライフエンディング業界は高齢化の進む日本において、市場としての注目度はもちろん、人々にとっての重要度も高まっていると感じています。一方で、依然としてユーザーとサービス提供者間の情報の非対称性が大きく、多くの課題が残される領域だ」と語る。

鎌倉新書の「いい葬儀」で青森県の葬儀場を検索した例

岩崎氏は終活ねっとを起業した理由について、「『食べログ』や『ゼクシイ』などは社会インフラとして機能するサービスだと思う。そのようなサービスを作りたかった。結婚式をしない人は増えていますが、葬儀はそうではない。そこで、誰しもがいつかは直面する“終活に関する悩み”をすべて解決できるような情報サービスを作ろうと思いました」と話す。終活にまつわる悩みの解決が岩崎氏が目指す目標だ。

個人的には、このサービスの買い手と売り手との間に存在する“情報の非対称性”こそがこの業界の問題であるとするならば、それを解消することが本当の意味での社会的課題の解決につながるのではないかと思う。TechCrunch Japanの記者である僕は、それを可能にするのがスタートアップのディスラプト精神なのだと信じたい。