不正経費自動検知クラウドStena Expense、飲食店の相場価格から会議費・交際費の異常利用を検知するAI機能を追加

不正経費自動検知クラウドStena Expense、飲食店の相場価格から会議費・交際費の異常利用を検知するAI機能を追加

AI活用検知クラウドやサイバーセキュリティ技術を開発・提供するChillStackは3月15日、個人立替領域の不正経費自動検知クラウド「Stena Expense」(ステナエクスペンス)において、飲食店で会議費・交際費として使用された経費が一般的な相場金額から大きく逸脱していないかを判定・抽出する新機能の実装と提供開始を発表した。

今回の新機能では、外部APIとの連携により、飲食店で使用された経費(交際費・会議費に該当する明細)が、該当店舗の1人あたりの相場金額から大きく逸脱していないかを同社独自AIで識別・抽出する。飲食店データベースと連携したStena独自のAI識別エンジンが飲食店データベースを照合して金額の妥当性を判断するという。

不正経費自動検知クラウドStena Expense、飲食店の相場価格から会議費・交際費の異常利用を検知するAI機能を追加

Stena Expenseは、企業における個人立替経費の申請・承認データを元に、AIが自動的に不正や不適切な経費利用を検知する。経費の重複申請や交通費の水増しといった不正検出に加えて、個々の従業員の申請履歴を踏まえて判断することで、「特定個人との多頻度利用」や「特定店舗での多頻度利用」といった不適切もしくは異常と推察される経費利用も検出できる。AI技術を活用することで、人の目では不可能な時系列的・網羅的に経費申請というビッグデータの解析を行い、間接部門の生産性とガバナンス向上を実現する。

主な特徴

  • 経費の承認・チェック業務の負担を増やすことなく、全データの網羅的かつ時系列での精査が可能
  • 申請履歴・傾向を踏まえたチェックにより、経費利用の妥当性確認が可能
  • 不正・不適切・異常の根拠が表示されるため、原因・理由が明瞭
  • 経理部門・業務部門のどちらも使える分かりやすいウェブUI

2018年11月設立のChillStackは、「AIで守り、AIを守る」というビジョンを掲げ、AIで進化させたサイバーセキュリティ技術、AI自身を守るセキュリティなどの技術開発・提供を行っている。Stena Expenseをはじめ、AI技術を活用した不正検知システム「Stena」シリーズを展開している。

【コラム】シリコンバレーではきちんとしたマネジメントができていない

テック業界はこれまでに世界で最も偉大な革新者を世に送り出し、最も収益性の高く価値ある企業やスタートアップのサクセスストーリーを誕生させてきた。それにも関わらず、優れた経営管理に対する評価が驚くほど低いのも事実である。

3つの会社を設立し、15年間テック業界に従事してきた私は、Shift(シフト)を構築した経験を通して多くのことを身をもって学んできた。もし2014年の創業時に戻れるとしたら、企業文化の設定(与えられるかその逆かのどちらか)や経営管理手法の開発などにおいて、今ならまったく違う対応を行なっていただろうと思う点が複数ある。

私の知る限りでは、適切な経営管理が行われていない場合、いくらそのスタートアップやアイデアがすばらしくてもいずれ失敗に終わっている。さらにはそれがエンジニアリングの人材不足につながり、ひいては企業を設立する際の人的コストの上昇につながるのである。これはシリコンバレーにとって大きな損害だ。

独占的なテック企業にしか通用しない方法

シリコンバレーの一流テック企業は、一見すると非常に優れた経営をしているように見えるかもしれない。しかし実際は、1つの製品を開発し、その製品を中心に独占しているといってもいいほどの一点主義企業なのである。

これは、Google(グーグル)や旧Facebook(フェイスブック)のMeta(メタ)の両方に当てはまることである。どちらも主要な収益源は1つ(デジタル広告)で、買収以外の方法での新製品開発はほとんどにおいて失敗している。GoogleマップやAndroid(アンドロイド)は例外といえなくもないが、どちらも初期段階は買収で始まったものである。

こういった企業は、それぞれの広告ビジネスにおいて圧倒的な価格決定力を持っているため、新製品の開発や買収による競合他社の排除にほぼ無限のリソースを投入し続けながら、ありとあらゆるエンジニアを雇用することが可能なのである。

しかしこれは特に顕著なこの2社だけの問題ではなく、シリコンバレーの大手テック企業全体において広く浸透している。

テック系企業では目標や主要成果について語られることが多々あるが、こういった目標設定のフレームワークは、中身のない単なる言葉に過ぎない場合がほとんどだと言える。

金に糸目をつけない場合、結果として余裕が出過ぎ、アカウンタビリティが小さすぎることになる。その結果リソースが無駄になり、イノベーションが停滞する。企業にいる既存の人材を効果的に活用していれば、同等の、あるいはそれ以上の結果を出すことができる。失敗に終わるプロジェクトも減り、結果的に人材の力を引き出すことによりインパクトのある仕事が達成され、より大きなイノベーションを生み出すことができるようになるだろう。

あえていえば、多くのテック企業は収益にほとんど影響を与えることなく、現在の従業員の20%から40%を削減することができるだろう。しかしそのためには、より少ないリソースで仕事をこなさなければならず、そのためには優れた経営管理(優先順位付け、小規模で始めて実験し、テストと学びの後に製品を大胆に実行する能力、製品への取り組みとビジネスを損益を通じてより大きくコントロールする能力)が必要になる。

経営管理がうまくできれば、手に負えない人材関連のコストを大幅に削減できるようになる。エンジニアの給料が高く、しかも上がり続けていることはご存じだろう。利益率の高いビジネスを展開しているテック企業なら、エンジニアやその他の技術者をやたらと雇用する余裕もあるだろうが、実際は既存の人材をうまくマネージメントすることで、コストを大幅に削減することができ、またそうすることによりリソースをより収益性の高い結果に向けることができるのである。

無論、優れた技術を開発しているすべての企業がこの問題に悩まされているわけではない。中でもAmazon(アマゾン)は最大かつ最良の例で、消費者向けの大手テック企業の中でも同社は本業である小売ビジネスの他に、あるいはそれに加えて、Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス)、プライム・ビデオ、マーケットプレイス、Adsなどの新しい収益源を生み出し、新製品を革新することに最も長けている企業である。

シリコンバレーが経営管理を軽視するようになった経緯

この問題は大手テック企業だけではなく、多くのスタートアップにも共通していることである。良い企業文化とは、社員にコンブ茶を用意したり、グルメな社食を提供したり、インスタ映えするオフィスを作ったり(これは新型コロナ前のことだが)することだという勘違いが広まっている。

これがアカウンタビリティの欠如へと発展していくのだが、経営者の立場からするとそれを隠すのは極めて簡単なことである。確かに、こういったものは多くの従業員にとってうれしい特典ではあるものの、実際に企業文化のコアとなるものは、報われるべき行動と嫌われるべき行動、奨励されるべき行動とやめるべき行動の総意であるべきなのだ。

多くの創業者は、イノベーションを起こすと同時に優れた経営管理とアカウンタビリティを実現することはできないと思い込んでいる。実際、人材争奪戦は非常に激しく、結果を出すことではなく従業員を満足させるということに多くのエネルギーが費やされている。P&L(損益計算書)のレンズを通してビジネスを管理し、その製品がどのようなものであるかをテストし、学習するのではなく、単に優れた製品を作ればユーザーはやってくると信じているのである。

これは「言うは易し行うは難し」である。私はShiftを経営する中で何度もこのミスを犯してきたし、このミスにより非常に多くの時間とお金を無駄にしてきた。

しかし、初期の創業者にとっては、自分よりもはるかに優れたマネージャー的人材を雇うことが必要不可欠なのである。経験からいうと、アーリーステージの創業者(製品と資本に焦点を当てる)とマネージャー(人材管理とアカウンタビリティに焦点を当てる)を同時に務めるのは難しいため、どこが成功していてどこが失敗しているかを把握し、ギャップを埋める必要がある。

また、早期にコーチングを受けるというのも重要だ。良いコーチングがあってこそ、自分の盲点を認識し、それを適切な人たちとどのように解決するかを決めることができるのである。

優れた経営管理により、少ない資源でより多くのことが可能に

しかし、2020年と2021年に驚くべきIPOが行われたように、偉大な企業が今もなお創立されているのであれば、経営管理が優れているかどうかなど関係ないのではと思う読者もいるかもしれない。この理由は2つある。

まず第一に、才能あるエンジニアは信じられないほど不足している。少ないエンジニアでも同じ成果を上げられるにもかかわらず、余裕のある企業が優秀な人材を溜め込んでしまっていればイノベーションや米国経済の将来の繁栄に悪影響を及ぼすだろう。これでは十分に活用されていないエンジニアが平凡な職場に身を置くことになり、米国で最も差し迫った問題の1つである人材不足をさらに悪化させてしまう。その結果、世界のテクノロジー分野で一歩先を行く国としての能力が大きく制限されてしまう事になる。

コスト面の問題もある。この国のインフレがひどいと思っている人は、シリコンバレーの給与インフレを見てみるといいだろう。給与の額は歯止めが利かない状態になっており、生活費も同様だ。エンジニアたちはこの問題を認識しており、当然の権利としてそれを利用しているが、この問題が終わりのない悪循環を引き起こしてしまっている。当然これはビジネスにも影響を及ぼし、特にスタートアップはこの問題を解決するためにとんでもない額の資金を必要とすることになる。

シリコンバレーの企業には、経営に対する考え方を変える大きなチャンスがある。まず最初のステップは、経営管理を受け入れ、アカウンタビリティと損益計算書を通してビジネスを考えることのできる人を雇い、その人物を創業者が自分の周りに置くことから始まる。マネジメント経験のあるリーダーを採用するか、またはマネジメントコーチやコンサルティング会社のサポートを受けるといい。エンジニアがもう1人必要だと感じたとき、本当に必要なのは今いるエンジニアの能力をより引き出すためのマネージャーなのではないかと、一歩立ち止まって考えてみて欲しい。

そして第二に、リーダーは既存の人材の育成と管理に注力すべきである。例えば、従業員に適切な成長機会を与えること、チームを再編成すること、目標を設定し、リーダーと従業員が同様に目標達成の責任を負うことなどが挙げられる。

私が提案しているのはパラダイムシフトであり、それには時間がかかるだろう。もちろん、1社や2社がより良い管理方法を導入したところで、この問題が一夜にして改善されることはない。

しかし、現在のシリコンバレーのワークカルチャーも、ごく一部の企業から生まれ、そこから発展してきたのである。今後10年の間に管理の行き届いたAmazonのような企業が増えてくれば、シリコンバレーの文化は完全に改善され、その結果この業界、そして国全体の管理方法も変わってくるのではないだろうか。

編集部注:本稿の執筆者George Arison(ジョージ・アリソン)死は、オンライン中古車市場「Shift」の共同設立者兼CEO。

画像クレジット:Marti Barraud / Getty Images

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(文:George Arison、翻訳:Dragonfly)

決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

決算開示業務のDX化を目指すサービス「Uniforce -決算開示業務ナビゲーション-」(β版)を手がけるstart-up studioは12月3日、第三者割当増資による1億円の資金調達を発表した。引受先は、イーストベンチャーズ3号投資事業有限責任組合、成田修造氏(クラウドワークス)、野口圭登氏(Brave group)、ほか個人投資家。2022年度の本格的な事業成長に向け、採用活動・開発体制の強化する。決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

Uniforce -決算開示業務ナビゲーション-は、決算開示業務を「最短・最適ルート」へと導くというコンセプトの基、業務全体を見渡しながら正しい順序でナビゲーションし、細かなタスクの抜け漏れを防ぎ、スムーズで快適な業務を遂行できるDXソリューションサービス(2022年3月末日まで全機能を無料で試用可能)。経験豊富な公認会計士を中心とした、決算開示業務のスペシャリストのノウハウを集結して設計した最も効率的な業務(決算開示業務)フローで、これまで以上の正確性とスムーズな業務を実現するとしている。

バックオフィスを中心とした決算開示業務に携わる方にとって、決算開示業務における複雑さ・非効率さ・情報の網羅性や非対称性といった課題や属人化リスクに関する課題の解決策になるという。決算開示業務を「最短・最適ルート」に導く「Uniforce」(β版)を手がけるstart-up studioが1億円のシード調達

同社は、決算開示業務のスペシャリストとテクノロジーの力を融合させた新たなサービスとしており、先に挙げた課題を根本から解決し業界全体のDX化を牽引していくため、資金調達に至ったとしている。

【コラム】自分の価値観を自ら立ち上げたスタートアップの社風に織り込むための3つのアドバイス

「模範を示してリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろう。しかし「価値観を持ってリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろうか?

私は常に私の価値感を指針として用いつつ、模範を示して会社をリードしてきた。しかし、私自身が最初の会社を立ち上げるまでは、それらの価値観を会社に根付かせることの重要性を完全には理解していなかった。

「誠実さ」「個人」「影響力」「革新性」は私の意思決定と社員の行動を日々推進する「4つの価値観」である。これらは単に本社の壁や、リモート社員のマウスパッドに書かれている言葉というだけでなく、社員全員が実際に実行して血の通ったものにすべき価値観である。これらの4つの価値観は過去2年にわたり、私や家族、会社の責任者たちを導いてくれる指針として、ますますその重要性を増している。

多くの企業が「職場に戻る」(仕事は中断したわけではないので「仕事に戻る」ではない)計画を立てているが、私たちは、ただ単に以前の状態に戻るべきではない。そうではなく、価値観を羅針盤として、みなの成功につながる何事かを再設計することをお薦めしたい。こうすることで、社員たちは単にこの厳しい時期を乗り切ることができるだけでなく、職場で十分に能力を発揮できるようになると思うのだ。

私の経験でいうと、価値観でリードするということは、最良のリーダーシップのとり方であり、この目標を達成するためには3つの方法がある。

旧弊な職場のヒエラルキーを排除する

あなたはキャリアのどこかの時点で(卒業直後かもしれないし、卒業から数年後かもしれないし、その中間かもしれない)、下位レベルの社員を敬意に欠ける態度で扱うのが「あたりまえ」の会社を経験したのではないだろうか。「下積み」を是とするようなこうしたタイプの会社は、これらの下位レベルの社員に単調な辛い仕事をあてがう傾向が高く、結局彼らは燃え尽きて会社を離れてしまう。

あるいは、彼らがなんとかマネージメントレベルのポジションに這い上がることができた場合、彼らは新しく入ってきた社員を低く見ているためにこのサイクルが続き、健全な文化は損なわれていくことになる。

これは正しいやり方とはいえないだろう。

リーダーとして、職場に受容性、サポート、協調性、チームワークを望むなら、あなたは、今すぐにも前例を示すべきだ。つまり、職階に付随するヒエラルキーを除去し、 役職に関係なく功績に基づいて社員を評価する会社であることを明確にするのである。会社全体があなたの価値観に基づき、使命を実現するために団結する1つのチームである。このような社風を確立して全員が会社の行く末に責任を持つようになれば、誰も他の社員を粗末に扱うことはなくなるだろう。

象牙の塔的な考えにとらわれないようにしよう

私は働くようになってすぐ、可能な限りオフィスを誰かと共有するようにした。オフィスは、家具や窓からの景色も含め、人々から見栄えのよいすてきな空間と思われないものにするよう心がけた。現在はCEOであるが、社員の中には私のオフィスをクローゼットと呼ぶものもいる。しかし、仕事を成し遂げるには十分なオフィスである。

このような単純なシグナルは強力なメッセージとなる。そして、シグナルは一貫していなければならない。リムジンに乗らず、安い車を借りる。ファーストクラスに乗らずエコノミークラスに乗る。ささいなことに聞こえるかも知れないが、CEOが遭遇する最大の落とし穴の1つは、象牙の塔的考え方に陥ることだ。

経験を通して社員を知るための努力をしよう。「現場に足を運ぶマネージメント」戦略を実行しよう。一日中オフィスに座っているのを避け、部屋から出て社員の様子を見て回ろう。彼らの机に立ち寄り、話しかけよう。ランチは休憩室で取り、新人研修にも顔を出そう。

まだ物理的にオフィスに戻っていない場合はどうすればよいだろう?その場合は、SlackチャンネルやZoomミーティングを行おう。私は社員のベービーシャワー(赤ちゃん出産前の前祝パーティー)に、Zoomで突撃をしかけたことがある。参加者のお祝いの言葉に耳を傾けることができ、私にとっても彼らにとってもよい一日になった。職場にいて、そこを人間味のある空間にしよう。こうした努力は必ず報われるものだ。

職場慣行に配慮し一貫性を保つ

社風は会社のトップによる影響が大きい。あなたが思い描く社風は、あなたが社員に実行するようにと要求する慣習を彼らが納得して受け入れる場合にのみ、実現するものだ。より重要なのは、これらの取り組みや慣行を自ら全力で行わなければ、堅実な文化を育むことができないということだ。

例えば、私の会社 SailPointでは2020年、Free2Focusと呼ばれる新たな取り組みを行った。これは、1週間に2度、Free2Focusの時間帯に会議を、数時間を入れないようすることで、Zoom疲れを防ぐだけでなく、散歩するなり、子どもの勉強を助けるなり、カメラを少しの時間切るなり、個人にあった方法で一息ついてもらうための取り組みである。

1週間のうち一息つける時間を社員に取って欲しいと思うなら、私自身も同じことをする必要があると私は気づいた、つまり、Free2Focusの時間帯にはミーティングを入れず、1日中メールを送り続けるのをやめ、社員が必要な休憩を取っているからといって批判するのをやめるということである。私はほとんどの場合、社員が自分の時間に自分なりのやり方で仕事を達成していると信じている。こうして信用すれば、社員の業績は確実に上がるのだ。

CEOであるということは、ビジョン、製品、アイディアを築く以上のことが求められる。それは、士気や尊厳を損なうことのなく相互の目標を達成するために、価値観を持って人々を導くということである。仕事に付随するさまざまなことに気を取られるのは簡単なことだが、自分自身と自らの価値観を全社に浸透させる努力をしなければ、結局自分のためにならないし、会社のためにもならない。

これは一夜にして成し遂げられることではない。しかし、最も小さなことが、最も大きな影響力を持つものであることも多いということを覚えておこう。あなたがリーダーなら、模範を示してリードしよう。これこそ、年月を経ても長続きするチームを構築する唯一の方法なのである。

編集部注:本稿の執筆者Mark McClain(マーク・マクレーン)氏はクラウド・エンタープライズ・セキュリティのリーダーであるSailPointの創業者兼CEO。

画像クレジット:Getty Images under a Dimitri Otis license.

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(文:Mark McClain、翻訳:Dragonfly)

データ分析の力で意志決定を行う経営層をDXする「Hogetic Lab」が5000万円を調達

データ分析の力で意志決定を行う経営層をDXする「Hogetic Lab」が5000万円を調達

「データの力で経営を再発明する」をミッションとするデータ分析スタートアップHogetic Lab(ホゲティックラボ)は6月23日、第三者割当増資と融資による総額5000万円の資金調達を発表した。引受先は独立系ベンチャーキャピタルmintで、借入先は日本政策金融公庫。

新型コロナウイルスの影響で、マーケティング、セールス、業務などの自動化といったDXを推進する企業が増えたものの、「こうしたDXへの取り組みは進む一方で、旧来より変化していないものがあります。それが”経営”です」とHogetic Labは話す。多くの企業では、経営のための意志決定は経営者などの直感に頼っていて、意志決定の過程と結果の蓄積がない。「そのため会社経営そのものは、実はそこまで進化していないと当社では考えています」という。それは、ディー・エヌ・エーの分析組織に在籍していた大竹諒氏(代表取締役CEO)と、白石裕人氏(取締役COO)がHogetic Labを共同創設した動機にもなっている。

Hogetic Labは、事業に関わるデータを集める分析基盤を高速・低価格で構築できるDCaaS(サービスとしてのデータ収集)「Collectro」(コレクトロ)、意志決定を行う経営層のデータリテラシーを飛躍的に向上させるサービス「BizSchola」(ビズスカラ)、収集データを経営に組み込み意志決定につなげるAIアルゴリズムモジュールを提供するサービス「Factolithm」(ファクトリズム)という3つのサービスを提供している。これらを連携することで企業のデータ利活用水準を向上させるという。「CollectroとBizScholaによって、あっという間にデータ分析ができる社内環境を整え、組織にデータ分析がフィットするまで我々が粘り強く並走します」とのことだ。

今回調達した資金は、Collectroのプロダクト開発とデータ分析に関わる社内体制の強化に利用される。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)経営 / マネジメント(用語)データ分析(用語)Hogetic Lab(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

「今はイノベーションの黄金期」シリコンバレーの投資家イラッド・ギル氏とのインタビュー[後編]

シリコンバレーの起業家で投資家のElad Gil(イラッド・ギル)氏

爆速成長マネジメント」の著者でシリコンバレーの投資家で起業家でもあるElad Gil(イラッド・ギル)氏とのインタビュー後編。前編では初めての起業家が陥りやすい落とし穴とその回避策について、後編では新型コロナウイルスがスタートアップ業界に与えている影響と展望について話を聞いた。

前編:「スケールするために経営陣が必要」シリコンバレーの投資家イラッド・ギル氏に聞くスタートアップアドバイス[前編]

パンデミックがスタートアップに与えた影響

2020年は新型コロナウイルスの影響でスタートアップを取り巻く環境は大きく変わりました。どういった点がスタートアップにとってより難しくなったと思いますか。例えば、対面で話すことが減ったので、企業文化を作るのは難しくなっているかと思います。

ギル氏:企業文化を作ることについては、間違いなく以前より難しくなっています。企業文化は人が集まり、交流することで作られるものですから。社員がリモートワークしている会社からは、すでに出来上がっている仕組みに関してはそのまま維持して回せるけれど、何かイノベーティブなことをしたり、新しいことをしたりするのは難しくなったという話を聞きます。

2つ目は、いくつかの業界では事業を継続するのが非常に難しくなりました。例えば、私が知っているほぼすべての旅行系スタートアップは昨年から壊滅状態です。レイターステージだと、例外的な会社にTripActions(トリップアクションズ)が生き残っていますが、アーリーステージの会社のほとんどは事業を続けられませんでした。

3つ目は、新型コロナウイルスの影響で、多くの人は生き方を変えざるをえなかったことと関係します。在宅で子供を見なければならなくなったり、鬱や気分の落ち込みを経験したり。会社は社員のこうした問題に対処し、社員が新しく増えたストレスに対抗しながらも仕事を続けられる環境を整えなければなりません。

こうした課題にうまく対応しているスタートアップはありますか?

ギル氏:ビジネス面で急成長したところは多くあります。Stripe(ストライプ)、Instacart(インスタカート)、Zoom(ズーム)は、世界がオンライン化する中で急成長した企業の一例です。

企業文化の面でいうと、新型コロナウイルスが蔓延する中でも社員が交流できるよう、例えば、広い公園でマスクをつけて参加するミートアップを開催しているような会社があります。

会社によってはオンボーディングが難しくなったものの、採用はしやすくなったという変化もあります。採用しやすくなった理由としては時間や場所にかかわらず面接できるようになったからです。面接のためにオフィスを訪ねたり、仕事を休んだりする必要がなくなりました。ズームで話せばいいのですから。

オンボーディングが難しくなったのにはいくつか理由があります。GitLab(ギットラボ)は早くから社員のリモートワークに注力してきた会社で、彼らは社員のオンボーディングを3つのカテゴリーに分けています。コンピューターやメールの設定といった技術面でのオンボーディング。業務や役割、目標の設定といった組織面でのオンボーディング。最後に文化面でのオンボーディング。ですが、この3つはどれもリモートで行うのが難しいのです。

コロナ後の世界はどうなると思いますか?

ギル氏:2つの相反する力が世界に働いているように思います。現在のインターネットは、10年前と比べると10倍以上の規模になっていて、この拡大規模は10年前の人たちの想像を遥かに超えているでしょう。インターネットで過ごす時間が増え、たくさんのモバイル端末があり、仕事関連のアプリも大量に出現し、仕事でインターネットを使う時間も増えました。なので、今日設立したどの事業にも、5年、10年前と比べると、10倍規模になる可能性があるということです。つまり、10年前に1000万ドル(約10億円)の売上があった事業は、今やれば1億ドル(約107億円)規模の事業になる可能性があるということです。そして世界中のどこからでも、大規模な会社が作れるようになりました。

これは「分散化」のトレンドですが、一方で「集中化」のトレンドも同時に起きています。

特定の都市に特定の業界の人が集まっているのが、もう1つの重要なトレンドです。業界別に見ると、1つか2つの都市にその業界の物理的な拠点があるのが分かります。例えば、映画業界で仕事をしたいという人に向かって、「どこに住んでもいい」とアドバイスする人はいません。米国なら「ロサンゼルスに住まないとダメだ」と言うはずです。脚本はどこにいても書けるし、撮影も、映像編集も、音楽制作もどこにいてもできますが、それでも最終的に全員、ロサンゼルスに集まります。

世界の都市は業界ごとにまとまるようになってきています。金融だったら、資金調達をするのも、トレード戦略を考えるのもどこにいてもできますが、米国のヘッジファンドのほとんどはニューヨーク州とコネチカット州に集中しています。その理由は、サービスプロバイダーが重要で、経営陣が重要で、人と人のネットワークが重要だからです。新型コロナウイルスで世界の状況は変わりましたが、それでもなお、人は特定の場所に集まって活動を続けるでしょう。スタートアップをする人たちは特定の地域に集まって会社を立ち上げるといった傾向が続くと思います。

新たにスタートアップを立ち上げるとしたら、どのような分野に可能性があると思いますか?

ギル氏:家の地下室で仕事をしている私より、外でいろいろと動き回っている起業家たちの方が良いアイデアを持っているのは間違いないでしょう(笑)。新しいことを始めようとしている起業家集団の方が、どんな個人よりも素晴らしいアイデアを持っているものです。とはいえ、いくつか興味のある分野があるのでお話したいと思います。

1つ目は、バーティカルのコラボレーションSaaSです。例えば、Figma(フィグマ)によってデザインチームがオンラインで協力しながら仕事を進められるようになったのと同じように、財務チームが協力して財務計画を立案したり、データチームが協力して分析やアナリティクスをしたり、BI(ビジネスインテリジェンス)チームが協力して事業に関わるデータの分析ができたりするようなツールです。社内の特定の部署に特化したバーティカルのコラボレーションツールには可能性があるのではないかと思っています。

2つ目は、コンシューマー向けソーシャルアプリです。世界にはまだ、新しいソーシャルな行動が生まれ、広まる余地があると思っています。その理由は、世代間の違いがあるからです。若い人たちは新しいソーシャルネットワークを求めています。Clubhouse(クラブハウス)で人々が突然音声の魅力に気づいたのと同じように、他にも人々の行動を変えるような新しい形のソーシャルネットワークやリアルタイムコミュニケーションが登場するのではないかと思っています。

現在、膨大な量のイノベーションが起きています。例えば、AngelList(エンジェルリスト)を見ると5年前に比べて、スタートアップの数は5倍、10倍に増えています。これは新しく設立したスタートアップの実数ベースの話です。半導体や機械学習、さまざまなSaaS、防衛技術、不動産など、あらゆる分野でイノベーションが同時進行に起きていて、今はイノベーションの黄金期と言えるのではないでしょうか。

2021年4月14日にCoinbase(コインベース)が上場しています(ギル氏はコインベースの初期からの投資家)。暗号資産(仮想通貨)の領域はどう見ていますか。

ギル氏:暗号資産の領域はとても楽しみにしています。コインベースのIPOは、Netscape(ネットスケープ)がIPOした時のように捉えられるようになるのではないかと思っています。かつてネットスケープの上場で、インターネットがメインストリームの存在になると世間の人々が気づいたように、コインベースの上場は、ウォール街や既存の金融業界に対し、暗号資産が世界にとって重要であることを知らせる大きな契機になるのではないかと思っています。

関連記事:「スケールするために経営陣が必要」シリコンバレーの投資家イラッド・ギル氏に聞くスタートアップアドバイス[前編]

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:CEO経営インタビューシリコンバレーAirbnbCoinbasePinterestSquareStripe新型コロナウイルス

「スケールするために経営陣が必要」シリコンバレーの投資家イラッド・ギル氏に聞くスタートアップアドバイス[前編]

シリコンバレーの起業家で投資家のElad Gil(イラッド・ギル)氏

2021年3月18日、シリコンバレーの起業家で投資家であるElad Gil(イラッド・ギル)氏の著書「High Growth Handbook」の日本語版である「爆速成長マネジメント」(日経BP)が発売となった。

著者のギル氏は投資家やアドバイザーとして、Airbnb(エアビーアンドビー)、Coinbase(コインベース)、Pinterest(ピンタレスト)、Square(スクエア)、Stripe(ストライプ)など世界でも有数のテック企業に関わっている。起業家としての経験も豊富だ。2013年から2016年12月までColor Genomics(カラージェノミクス)の共同創業者兼CEOを務め、現在は会長に就任。カラージェノミクスの創業前はTwitter(ツイッター)でコーポレート戦略バイスプレジデントやM&A 、事業開発チームの担当を務めた。ツイッターに参画したのは、共同創業者兼CEOを務めていたMixer Labs(ミキサーラボ)がツイッターに買収されたことがきっかけだった。それ以前は、グーグルに在籍し、モバイルチームの立ち上げなどに関わった。

「爆速成長マネジメント」はギル氏の知見と、シリコンバレーで活躍する投資家、起業家たちとのインタビューを多数収録し、レイターステージのスタートアップが直面する資金調達やマネジメントの課題に対する具体的な対応策が学べる1冊となっている。

今回、私は本書の翻訳に関わった縁で、ギル氏をインタビューする機会を得た。インタビューは2021年4月15日にClubhouse(クラブハウス)上で行い、本書を共訳した翻訳者で連続起業家の浅枝大志氏と日経BPの担当編集者である中川ヒロミ氏も参加した(各人から記事化の了承を得ている)。今回のインタビュー記事は前編と後編に分け、前編は数多くのスタートアップと関わってきたギル氏が指摘するスタートアップが陥りやすい落とし穴とその回避策について、後編は今後のスタートアップ業界の動向についてまとめている。記事はギル氏の発言通りに翻訳しているが、分かりやすさと簡潔さのために多少編集を加えている。

起業家へのアドバイス

はじめに、本書を書くことになったきっかけについて教えてください。

ギル氏:アーリーステージファウンダー向けのアドバイスはたくさんありますが、急激に成長しているスタートアップ向けのものはあまりありません。その理由は、スタートアップの多くは急激な成長する段階まで到達しないからです。ほとんどのスタートアップは失敗します。なので、レイターステージのスタートアップやファウンダーからよくある質問に対する答えと、スタートアップがスケールするための戦術をまとめようとしたのが始まりです。

もともと本ではなくブログ記事をまとめたスタンドアローンのウェブサイトを作る予定でした。けれど、サイトをローンチする数日前に、ストライプの創業者の1人であるJohn Collison(ジョン・コリソン)に見せたところ、「本として出版した方がいいんじゃないか」と言われ、Stripe Press(ストラププレス)(注釈:ストライプの出版事業)から出すことになりました。

本書には起業家向けのアドバイスが多く載っていますが、初めて起業する人は特に何に注意すべきでしょうか?

ギル氏:アーリーステージの会社はレイターステージの会社とは状況が大きく異なるので、ステージごとに気をつけたい点は違います。アーリーステージの優先事項の1つは、プロダクトマーケットフィットに到達することで、これを達成するのは非常に難しいでしょう。2つ目は、共同創業者と喧嘩しないで会社をうまく回すことです。これも非常に難しい場合があります。この2つを達成できれば、第一歩が踏み出せるはずです。

レイターステージに入ると、より多くのことを達成するためにどのように組織を作ってスケールさせるか、ユーザーのニーズにどう対応するか、海外展開、M&Aなど、注力すべき点が変わっていきます。これらを突き詰めると、やるべきことは、社員全員に明確な方向性を示すこと、その方向性を追求するために必要な資金を確保すること、磐石な経営陣を揃えることの3つであると言えます。経営陣が揃えば、会社が小さかった頃には着手できなかったことができるようになります。

CEOが間違えやすい、ミスしやすいのはどういうところでしょうか?

ギル氏:これはCEOの過去の経験によると思います。例えば、初めて起業したCEOと2回目のCEOを比べると、つまり事業をスケールさせたことがある人とない人という意味ですが、2回目のCEOはかなり早い段階から強力な経営陣を揃え始めます。けれど、初めての起業家はそれを疑問に思うでしょう。なぜ上層部ばかり強化するのか、なぜそんなに多くのVP(バイスプレジデント)が必要なのかと。しかし、一度急激なスケールを経験していると、経営陣を揃えることがいかに重要かが分かります。これが1つ目です。

初めての起業家がよく間違える2つ目のポイントは、最初のプロダクトをマーケットに投入した後のイノベーションの頻度についてです。一般的に、早くから2つ目のプロダクトを開発してノベーションを起こせる会社は、その後も継続してイノベーションが起こせます。一方でイノベーションが遅い会社は、2回目のイノベーションがなかなか起こせません。具体例として、ストライプは決済やローンに関わるプロダクトを次々と出しているのに対して、eBay(イーベイ)はいまだに2つ目のプロダクトを出せていません。

3つ目はSaaSやB2Bの分野に特化した話にはなりますが、プロダクトやエンジニアリングを重視するファウンダーは、営業チームを作ることを後回しにしてしまいがちという点です。ボトムアップのグロースや顧客獲得にばかり注力してしまうと、より大きな法人契約を獲得するチャンスを逃してしまいます。例えば、slack(スラック)は法人営業のチームを早くから追加してこなかったため、Microsoft(マイクロソフト)のような会社との戦いで苦戦を強いられています。

「経営陣の構築」「イノベーションの頻度」「営業の採用」と初めての起業家が間違えやすい点を3つ指摘していましたが、これらを回避するにはどうすればいいでしょうか。

ギル氏:経営陣を採用するところに関しては「スケールするために経営陣が必要」というマインドセットに変える必要があります。

営業チームについては、営業を採用することに対しての恐怖心を脇に置くことです。先日、営業を雇うのに抵抗を感じる理由についてのブログ記事を読んだのですが、その理由はたいてい、企業文化に合わないのではないかとか、営業チームを整える準備ができていなのではないかとかいう不安やボトムアップでの顧客獲得しかしたくないという感情的な理由がほとんどであると指摘していました。これに関しては率直に言って、そうした感情を振り切り、実行するしかありません。慣れないことをやるということですが、慣れないことをやるのが大抵の場合、最良の施策なのです。

「イノベーションの頻度」についてはどうでしょうか?

ギル氏:これにはいくつかポイントがあると思っています。会社の初期の段階では事業に注力し、コアプロダクトの再現性があるかしっかり確かめなければなりません。それはつまり、1000万ドル(約11億円)から3000万ドル(約32億円)ほどの収益があり、SaaS企業ならマーケットアプローチの方法を確立していて、コアビジネスをスケールさせるために社内にマネジメント層の基盤ができているか確認するということです。まずはコアビジネスがうまく回っている状態にすることが先決です。

2つ目は、新規事業のためにいくらか独立したリソースを用意することです。新規事業にはリーダーとなる人材やエンジニア、その他社内のリソースが必要になります。また全社員に「この新規事業は会社にとって重要で注力する価値がある」と納得してもらわねばなりません。なぜなら、社内のコアビジネスに携わる人は、リソースがあるなら自分たちのところに投入してほしいと考えるからです。彼らはコアビジネスをスケールさせる中で手薄になっている部分があると感じているでしょう。そのため彼らは会社が新しい事業を始めるのに対して疑問を持ちます。優先順位と組織内での線引きを明確にし、新規事業を作ることが会社にとって重要であると社員に分かってもらうようにしなければなりません。

CEOとして成長する方法

CEOはさまざまな問題に対処しなければなりませんが、CEOとして成長するためにはどのようなことができますか。CEO仲間を作ること、VCからアドバイスをもらうことなどが考えられますが、何が一番有効でしょうか。

ギル氏:私の知っている中で、うまくファウンダーとして、あるいはCEOとして活躍している人は、いくつかのことをしています。

1つは、CEOのネットワークを作っています。同じステージの会社のCEO、あるいは自分の会社より2年先を進んでいる会社のCEOとのネットワークを作っています。2年先の相手は、自分たちの抱える問題に共感でき、タイムリーで今の状況に合った良いアドバイスができます。5年、10年離れていると、劇的に状況が変わっていることがあるのです。

2つ目は、自分の会社とはまったく違うビジネスをしている人と話をしています。例えば、大規模な売上のある非上場のファミリービジネスのCEOの話を聞きに行くようなことです。何十億ドル(何千億円)規模の売上のある会社に話を聞きに行き、どうやって会社を運営しているのか、どうような報酬体系を採用しているのか、問題が発生した時はどのように対処しているのかなどを聞いています。優秀なCEOは成功の原則を普段とは違う場所で探し、自分のビジネスにも適用できそうなアイデアを学んだり、抽出したりしようとしています。

自分と近い分野で動いているCEO仲間から学ぶことに加え、まったく違う分野だけれど、とてもすばらしい成果を出している人から学ぶこと。この2つを組み合わせるのが良いのでしょう。

アドバイスという点でVCに期待できることはありますか。

ギル氏:VCは役に立つことはありますが、そのVCによります。その人が誰で、どんな経験を持っているのか、その人から何を学びたいのかによるということです。例えば、会社の上場に関わってきた経験が多いVCの取締役がいれば、その人から会社を上場させる方法について優れたアドバイスが聞けるでしょう。一方で、会社のオペレーションに関わったことのないVCもいます。その人は経営の戦術的なところでいくらか助けになってくれるかもしれませんが、毎日のオペレーションで役立つアドバイスはあまり期待できないかもしれません。

VCは基本的にアドバイス、ガバナンス、資金の3つを提供するものと考えています。お金は比較的どこからでも調達できます。ガバナンスに関しては、経験があって信用できる人を探すのがいいでしょう。アドバイスは、会社のステージとどんな事業をしているのかによります。アーリーステージでは的確なアドバイスができる人でも、レイターステージの会社には良いアドバイスができない人もいるということです。会社が成功するまでには10年くらいかかるので、その間に経営陣をどう進化させていくかをしっかり考えるべきでしょう。

【編集部】後編は4月21日午前9時に公開予定

カテゴリー:VC / エンジェル
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