Uberがアプリで警察にテキスト送信する機能を導入へ

性的暴行やその他の安全に関わる問題は、残念ながらライドシェアリングビジネスにおける現実だ。いくつかそのような疑惑をかけられているUberは、乗客がアプリ内で911(日本の110番に相当)にテキストを送る機能を導入したと発表した。

乗車中、Uberの利用者はUberアプリの安全ツールキットを使って、車のナンバーや行き先、正確な現在位置など予め用意された必要情報を含むメッセージを911に送ることができる。

「緊急時には1秒も無駄にできないことを我々は知っている」とUberのプロダクトマネジメント担当シニアディレクター、Sachin Kansal(サチン・間ソール)氏が本日9月26日のUberイベントで語った。「アプリから911にメッセージを送れるだけでなく、正確な位置情報を伝えられるのは画期的なことであり、警察関係者からはこれで命が救われる可能性があると言われた」

この少し前に、Uberの調査チームが会社の責任を制限しようとしていることをワシントンポスト紙が報じた。またCNNは、2014年から2018年にかけて103名のUberドライバーが乗客への性的暴行または暴言などで訴えられたことを報じている。

Uberは2018年5月にRapidSOSと提携して911通報アシスタントを導入した。今回のテキストメッセージ機能は、来月ロサンゼルスで地元警察の協力を得て開始される。今後Uberは全米の都市に同機能を追加していきたい考えだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Carbyneは緊急通報をUber化する――イスラエルのスタートアップがスマホ対応の新システム開発

イスラエルのスタートアップ、Carbyneがまったく新しい緊急通報処理システムを開発した。これは最近普及してきたインターネットによるライブ・ビデオストリーミングや位置情報サービスの機能を最大限利用するシステムだ。

ファウンダー、CEOのAmir Elichaiは2013年にテルアビブのビーチで泥棒にあい、警察に通報したが、必要な情報を伝えるために延々と会話しなければならなかったという(「あなたが現在いる場所を教えてください。何が起きたのですか?」等々)。このときに感じたフラストレーションがCarbyneを創立するきっかけになった。「Uberのドライバーもピザの配達係もワンクリックで私がどこにいるのか知る。それなら911でも同じことができるはずだ」とElichaiはいう。

Carbyneが現在最優先の課題としているのが「発出時間」だ。つまり通報電話をかけてから警察や消防が対処要員を派遣するまでにかかる時間を短縮することに集中している。これを実現するためには。現場の正確な位置と対処すべき事態の内容という2つの情報が必須だ。Carbyneではデバイスのロケーション機能を活用するのはもちろん、一歩進めて、屋内の位置検出テクノロジーを利用して指令員が通報者の位置をすばやく知ることができるようにしている。数秒以内に1メートル以内の精度で位置を特定できるという。

また、Carbyneシステムには状況把握のためにライブ・ビデオストリーミング機能が組み込まれている。通報者の許可を得れば指令員は通報者のデバイスのカメラにアクセスすることができる。「この2つのテクノロジーを組み合わせることで要員の派遣までに要する時間を60%から65%減らすことができる」とElichaiは説明する。

次のステージは医療情報のすばやい伝達

現在の緊急通報システムは基本的に固定回線のテクノロジーを前提としている。そのためカメラ、チャット、GPSなど今やスマートフォンで普通となった機能を活用することが難しい。現在のレガシーシステムに新機能を組み込もうとするのではなく、緊急通報システムをスマートフォン時代に適合した全く新しいプラットフォームに置き換えようというのがCarbyneの考えだ。同社では新しいシステムをイスラエルだけでなくアジア、ヨーロッパ、中南米に導入している。最近、アメリカについてもジョージア州ファイエット郡と契約を結んだという。

新システムのメリットは明らかだが、最大のハードルは各種の規制だ。これは郡や市などの自治体ごとに大きく異なる。Elichaiは「まず当局を納得させる必要がある。新しいテクノロジーを活用しようと意欲的な自治体もあるが、サイバーセキュリティーなどの面に不安を感じる自治体もある。またCarbyneシステム導入にともなって警察や消防の活動自体も変化するので十分な研修や再訓練が必要になる。このシステムによってどういうメリットが得られるのかよく分かるようにデモしなければならない」とと語った。

Carbyneが現在取り組んでいるのは対処時間の短縮だが、次の課題は救急医療サービスとの連携だ。対象者の状態、症状を写真やビデオを活用していち早く伝えれば救急車や受け入れ側の病院は器具、設備などを適切に準備できる。「こうした緊急通報ネットワークのエコシステムは非常に巨大で複雑なものになる。Carbyneを世界に普及させるためにわれわれがなすべきことは多い」とElichaiは結んだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

1度は退場した犯罪報告アプリVigilanteがCitizenとして復活、「事件報告」ボタンは削除予定

Vigilante(自警団員)アプリを覚えているだろうか?この論争を呼んだ犯罪報告アプリは、リリース後間もない昨年の11月にAppleStoreから追い出された。Appleが、このアプリは一般市民を所謂…自警主義(vigilantism)に巻き込むと判断したからだ。そのアプリが、異なるブランドとして戻ってきた。ニューヨークで運営が始まった新しい”Citizen”アプリは、リアルタイム犯罪レポートを911コールに基いて送ってくるだけでなく、利用者に犯罪現場のライブストリーム配信とコメントを行う手段を提供する。

Vigilanteアプリは、そのローンチに際しブログ上で、「平均的でごく普通の」市民たちが「集団で」犯罪の問題に取り組むべきだという元警察官の言葉を引用していた。「自警団員」というアプリの名前は、そのユーザーたちに、自分たちを非常に危険な状況に晒したり、あるいは警察 抜きに事態に直接対処することを後押しをするかのような響きがあった。

新しいCitizenアプリでは、ユーザーによる事件への直接の関与のトーンは薄まっている。Citizenはその代わりに、ユーザーが犯罪や事件のライブストリーミングを行い、他の人びとがそれ視たりコメントを書くことを促している。またアプリの説明のために、「決して犯罪現場に近付かないこと、事件に干渉しないこと、警察の邪魔をしないこと」を「強く指導する」ウィンドウがポップアップされる。

しかし、911コール(日本の110番に相当する緊急通話)からキュレーションされるアプリのコンテンツは、いまひとつ基準がはっきりしない。

「ニューヨークでは1日あたり1万件の911コールがありますが、私たちは平均して300から400件を通知します」と語るのはsp0nのCEOであるAndrew Frameだ(sp0nはアプリの開発メーカー)。

同社によれば、アプリによってリストされるのは、「公共の安全」に対する脅威に限られるということだ。

まだ作業途中であるからという理由で、使われている審査基準は公開されていない。Frameは「不審な人物」、「不審なバッグ」あるいはスーツケース、および薬物事件に関するコールは、現時点ではアプリには示されていないと述べている。

しかし、アプリでは、地図上の赤い点として事件の発生を知ることが可能なので、特定のエリアを回避するための、ある程度の役割を果たすことができる。これは仕様によるものだ。

この犯罪マッピングへの取り組みは、公開データを用いて白人たちが、「危険」と想定される隣人である非白人たちを避けることを助ける恐るべきアプリ “GhettoTracker”や“SketchFactor”とは少々異なったアプローチだ。しかしCitizenは911に通報される現在の事件を表示し、それが継続している間プッシュ通知で警告を送り続ける。

こうして、もし「Applebeeで喧嘩が発生」(これは今日(米国時間12日)起きた実際の事件だ)したなら、その店へ食事に行くことを控えることができる。

しかし The Outlineの記事が、ユーザーが犯罪や事件をその場で報告できる機能は生きたままであることを指摘している。そして実際に、新しいアプリには「事件報告」ボタンが備わっているのだ。

報告される全ての事件が、アプリで再通知される基準を満たすわけではなく、この機能は殆ど使用されることはない、とFrameは述べている。しかし、それは事実存在していて、アプリの意図は不明瞭だ(それはユーザー生成コンテンツを欲しているのか、いないのか?)。 課題は残る。

Frameによれば、このアプリの次期バージョンではこのボタンは削除されるという。

「誤解が多いようです。うまく説明できるようにする必要がありますね」と彼は言う。「私たちはとても慎重に事を運んでいます。それが通報ボタンがアプリの奥に埋め込まれている理由です。もし『事件報告』ボタンがアプリの中心に陣取っていたなら、アプリを開けた瞬間にそれを押したくなる誘惑に駆られる、強調ポイントとなるでしょう」。

外部から見ている人には明らかだが、人びとが「不正投票」をスマートフォンで通報するが奨励されているトランプのアメリカでは、ユーザーが各自の判断で犯罪を通報する機能をもったアプリの提供は危険な領域に向かいかねない状況だ。Nextdoorで起こったことを見てみるが良い、アプリ内での人種プロファイリングが蔓延してしまったために、同SNSはそれを防ぐために大幅な作り直しを余儀なくされたのだ。

「このボタンを削除することは約束しますよ」ユーザー報告ボタンがアプリのコアミッションを損なうことを認めながら、Frameは言った。アプリの使命は「犯罪を減らすことで、人びとをつつきまわすことではありません」と彼は主張します。

しかし The Outlineは他にも利用者に事件のライブストリーミングを促すことは、別の問題に繋がる可能性があることを指摘している。記事では、WITNESS(証人)のプログラムディレクターであるSam Gregoryの言葉を引用しながら、重要な証人の身元が判明してしまう可能性について指摘した。WITNESSは、人権侵害に繋がる可能性のある動画を倫理的に正しく用いる方法を訓練する非営利団体だ。彼はまた、Citizenが「誰かが暴行されている、信じれなはいほど屈辱的な動画」や、「誰かを、本当は無罪なのにあたかも有罪であるかのように写した動画」の共有に使われかねない、という懸念を表明している。

Frameはこれらの課題に対しては、最初そうした事態はまだ起きていないと答えただけだった。

より詳細な回答を迫ると、彼は以下のように付け加えた「これは透明性のあるアプリなのです。透明性がバイアスを取り除きます。透明性が、起きたことに関する不安と周りのすべての誤解を解消します。透明性の結果は、私たちにはコントロールできません」。

Frameに、デイヴ・エガーズの「ザ・サークル」を読んだことがあるかと尋ねたが、彼の答は「ない」ということだった

もうすぐ映画が公開されるこの小説には、Googleのようなハイテク企業が登場し、それが提供する「SeeChange camera」を人びとは24時間装着している。そうした人びとの中には「透明性」を強調したい政治家たちも含まれている。それらのカメラは、市民たちによっても、密かにあらゆる場所に設置されているのだ。

基本的に「1984年」の焼き直しだが、「ビッグブラザー」がクラウドソーシングになっている点が異なっている。

「私たちは、全ての場所が適切にモニターされているとは思っていません」とFrameは主張する。「このアプリでライブ配信を行って良いのは、事件が起きたときだけです」と彼は言う。

しかし、スマートフォンのおかげで、カメラはどこにでも存在している 。そして、Citizenの考える前提は、犯罪を減らすためには、公共の安全を脅かす犯罪はすべて集約され、ストリーミングされ、そして罰を与えられるべきだというものだ。

しかしながら、犯罪を減少させるためには、雇用、高賃金、そして教育の方が、よりよい手段だと主張することもできるだろう。

Cizizenは、Peter ThielのFounders Fund(FF Angelを経由して)、Slow Ventures、RRE Ventures、Kapor Capital (NAACPの元CEOであるBen Jealousを経由して)、その他のエンジェル投資家たちから、300万ドルのシード資金を調達している。

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(翻訳:Sako)