あらゆるウェブサイトを多言語化する仏WeglotがシリーズAで約60.6億円を調達

フランスを拠点とするスタートアップWeglotは、Partechを引受先とする4500万ユーロ(約60億5500万円)のシリーズA資金調達ラウンドをクローズした。同社は、ウェブサイト向けの翻訳ソリューションを構築している。この製品により、手間のかかる微調整をすることなく、また別のCMSやECプラットフォームに切り替えることなく、サイトに多くの言語を追加することができる。

そして、これがWeglotのポジショニングを理解する鍵になる。WordPress(ワードプレス)やShopify(ショッピファイ)の翻訳プラグインは、以前から存在していた。だがWeglotは、あらゆる種類のウェブ体験に対応するユニバーサルな製品を作りたいと考えている。

Weglotを活用するには、2通りの方法がある。1つ目の方法は、プラグインを使って既存のウェブサイトに追加するやり方だ。これはWordPress、Shopify、Wix、WooCommerceでWeglotが機能する方法だ。小規模の会社を経営していて、専任のウェブ開発者がいない場合は、コードを一行も書かずにWeglotをインストールすることができる。

もう1つの方法は、ウェブサイトのタグに数行のJavascriptを追加する方法だ。Weglotでは、Webflow、Squarespace、BigCommerceでこのアプローチを使用している。それに加えて、新しい言語用のサブドメインやサブディレクトリを作成するために、DNSレコードを調整する必要がある。

Weglotのサーバー上で、同社はサイトからコンテンツを自動的に検出し、取り込む。Weglotの顧客は、自動翻訳を利用して、新しい言語への対応を開始することができる。

また、同社が提供しているダッシュボードを利用することで、コンテンツを掘り下げ、よりよい翻訳を作成することもできる。プロの翻訳者にアクセスを許可し、そのインターフェースから翻訳を管理することができる。

これで、多言語サイトの完成だ。訪問者があなたのサイトをロードするときはいつでも、ウェブサイトはデフォルトでユーザーの優先言語でロードされる。また、複数のオプションを提供したい場合は、ウェブサイトの隅に言語スイッチャーを追加することができる。

翻訳はWeglotのサーバーに保存されるが、Weglotは各言語専用のサブディレクトリまたはサブドメインを作成する。こうすることで、Google(グーグル)やその他の検索エンジンは、顧客のウェブサイトの各言語版をインデックスすることができる。メタデータとキーワードも、Weglotで翻訳することができる。

このスタートアップは、必要な言語と単語の数に応じて、毎月のサブスクリプションを課金している。2021年、Weglotは年間経常収益1000万ユーロ(約13億4600万円)を達成した。2017年のシードラウンド以来、外部資本を調達していなかったスタートアップとしては悪くない。

画像クレジット:Joshua Fuller / Unsplash

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

マイクロソフトがZ-Codeを使ってAI翻訳サービスを改善

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間3月22日、同社の翻訳サービスを改訂したことを発表した。新しい機械学習技法によって、多数の言語間における翻訳が著しく改善されるという。「spare Mixture of Expert(Mixture of Expertを出し惜しみする)」アプローチを使用するという同社のProject Z-Code(プロジェクト・ズィー・コード)を基盤とする新モデルは、盲検法評価で同社の以前のモデルより3~15%高いスコアを記録した。Z-CodeはMicrosoftのXYZ-Codeイニシアチブの一環で、複数の言語を横断してテキスト、視覚、音声を組み合わせることによって、これまで以上に強力で有効なAIシステムを作る。

「Mixture of Experts」はまったく新しい技法というわけではないが、翻訳の場面では特に有効だ。システムはまず、タスクを複数のサブタスクに分割し、それぞれを「expert(エキスパート)」と呼ばれるより小さい特化したモデルに委譲する。次に、どのタスクをどのexpertに委譲するかを、独自の予測に基づいてモデルが決定する。ごく簡単にいうなら、Mixture of Expertsは複数のより特化されたモデルを内包するモデルと考えることができる。

画像クレジット:Microsoft

「Z-Codeを使うことで、驚くほどの進展が見られました。それは、単一言語と複数言語のデータに対して転移学習(transfer learning)とマルチタスク学習の両方を使って最先端の言語モデルを作ることができたからです。これで品質と性能と効率性の最善の組み合わせを顧客に届けることができます」とMicrosoftのテクニカルフェロー兼Azure(アジュール)AI最高技術責任者のXuedong Huang(シュードゥン・ホァン)氏はいう。

この結果、例えば、10種類の言語間で直接翻訳することが可能になり、複数のシステムを使う必要がなくなる。すでにMicrosoftは固有表現抽出、文章要約、カスタム文章分類、キーワード抽出など、同社AIシステムの他の機能の改善にZ-Codeモデルを使い始めている。しかし、翻訳サービスにこのアプローチを利用したのはこれが初めてだ。

翻訳モデルは伝統的に著しく巨大で、製品環境に持ち込むことは困難だった。しかしMicrosoftのチームはsparse(スパース)アプローチを採用し、タスクごとにシステム全体を動かす代わりに、少数のモデルパラメータのみを起動する方法を選んだ。「これによって大幅にコスト効率よく実行できるようになります。家の暖房を1日中全開されるのではなく、必要な部屋を必要な時だけ暖めるほうが安くて効率がよいのと同じことです」とチームがこの日の発表で説明した。

画像クレジット:Keystone/Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

映画字幕のように使えるWaverly Labsの対面式翻訳機「Subtitles」、レストランや小売店などのカウンターに最適

数年前からWaverly Labsを取材し、主に同社のウェアラブル言語翻訳機を紹介している。米国時間1月5日、CESでブルックリンに拠点を置くWaverly Labsはリアルな世界での対話のために設計され、インイヤーデバイスの共有が必要ない、同社技術の新たなフォームファクターを発表した(私たちが細菌を気にかけている現在、とてもポジティブなものに感じる)。

「Subtitles」と名づけられたその製品は、両面にタッチスクリーンのディスプレイがあり、レストランや小売店や銀行、空港、ホテルなどの場所でカウンターの上に設置する。ユーザーは自分の言語を選び、話をすると、その翻訳が反対側のディスプレイに「ほぼリアルタイム」で表示される。

翻訳だけでなく、聴覚障害者のための便利なツールになりそうだ。まるで、対面式のクローズドキャプションのように。Subtitlesという製品名は「字幕」という意味だが、同社はその使用体験を、翻訳された映画を見ることに例えている。

このシステムは、20の言語と42の方言を翻訳するWaverlyの技術に基づいて構築されている。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、アラビア語、ギリシャ語、ロシア語、ヒンディー語、トルコ語、ポーランド語、中国標準語、日本語、韓国語、広東語、ヘブライ語、タイ語、ベトナム語、オランダ語など、20言語42方言に対応している。現在CESで披露されており、第2四半期のどこかの時点で登場する予定とのこと。価格は発表されていない。

また、Waverlyはオーバーイヤー型翻訳機「Amasaddor Interpreter」の新バージョンも紹介している。Waverlyは次のように語る。

音声認識ニューラルネットワークと組み合わせた高度な遠距離フィールドマイクロホンアレイを使用して、驚くほど明瞭なレベルで音声を捕捉します。その後、クラウドベースの機械翻訳エンジンを使用して音声をシームレスに処理し、高速かつ流動的で高精度な翻訳を実現します。

こちらは、179ドル(約2万760円)で販売されている。

画像クレジット:Waverly Labs

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Mantraがマンガ特化の多言語翻訳システムで小学館「マンガワン」英語版展開を支援、海賊版サイトの作品取り下げにも寄与

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.8~11.14)

マンガに特化したAI翻訳技術の研究・開発を行うMantra(マントラ)は11月1日、小学館のマンガ配信サイト「マンガワン」の英語版展開を、多言語翻訳システム「Mantra Engine」で支援すると発表。共同による取り組みを開始した。


マンガワンの海外展開は、海外で広く普及している海賊版への対処でもある。Mantraが2021年に行った調査では、小学館が出版したマンガのうち、正規の手続きを踏んで翻訳された公式版に対して、海外海賊版は約5倍の量が流通していることがわかった。なかでも、「ケンガンアシュラ」と「ケンガンオメガ」のシリーズは、確認できた海外海賊版サイトだけでも閲覧回数が1億回を超えていた。

ただ、海賊版の制作者に対するアンケートでは、公式な翻訳版がないためという回答が67.7%あり、大好きなマンガを広めたいという気持ちが強い熱烈なファンによる行為であることがわかる。その証拠に、「ケンガンアシュラ」「ケンガンオメガ」の公式な翻訳版の配信予定が発表されると、海外海賊版制作グループは海賊版の制作を停止し、公開済みエピソードの配信取り下げを発表したという。

小学館では、そうした熱烈なファンの力を活用して、正規の翻訳版制作に取り組んでいる。上記の理由から、公式版の公開が急がれるが、そこでMantra Engineの能力が活かされることになる。このシステムでは、翻訳担当者に原稿データを送ることなくウェブブラウザー上で作業が行えるほか、AI技術による支援機能により安全性と効率性が両立され、制作時間が従来の約半分に短縮されるとのことだ。

翻訳を行うのは、Mantraが個別に面談し協力を依頼したマンガファン。彼らはMantra Engineで作業を行った英語版は、英語圏向けマンガ配信サービス「Comikey」から日本語版と同時に公開される。

シャオミが独自開発のスマートグラスを発表、ナビや翻訳機能も搭載

Xiaomi(シャオミ)がウェアラブル分野でFacebook(フェイスブック)に挑み、独自開発のスマートグラスを発表した

まっぷとはいえ、51グラムという重量は、Facebookの「Ray-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)」よりも少し重い。さらに、このメガネには、500万画素のカメラが使用されているときに表示されるインジケータライトも装備されている。

このシャオミのスマートグラスは、クアッドコアのARMプロセッサーを搭載し、Android(アンドロイド)で動作する。ディスプレイには有機ELよりも高輝度・長寿命で知られるMicroLEDのイメージング技術を採用。この技術はよりシンプルな構造にできるため、1ピクセルあたりのサイズが4μmというコンパクトなディスプレイを実現したと、シャオミは述べている。ただし、撮影した写真をカラーで見ることはできない。同社によれば「複雑な光学構造に十分な光を透過させるために」モノクロのディスプレイを採用したという。

同社は次のように説明する。

レンズの内面に刻まれた格子構造により、光が独自の方法で屈折し、人間の目に安全に届くようになっています。この屈折プロセスは、光のビームを無数に何度も跳ね返すことで、人間の目に完全な映像を見せることができ、装着時の使いやすさも大幅に向上しています。他社製品のように複雑な多重レンズシステムやミラーまたはハーフミラーを使用せず、すべてを1枚のレンズで実現しています。

シャオミによれば、同社のスマートグラスは、単なるスマートフォンのセカンドスクリーンではないという。単独で多くの機能が使用でき、例えばスマートホームからの警報や、大事な連絡先からのメッセージなど、重要な通知のみを選択して表示できる。ナビゲーション機能では、目の前に地図や道順が映し出される。電話をかけてきた相手の番号を表示し、このスマートグラスに内蔵されたマイクとスピーカーを使って通話することも可能だ。

このマイクは音声も拾うこともでき、それをシャオミ独自の翻訳アルゴリズムがリアルタイムで翻訳する。この翻訳機能は、カメラで撮影した画像の文字や文章にも対応している。残念ながら、シャオミはまだ、このスマートグラスの価格や発売日を明らかにしていない。発表があればすぐにお知らせするつもりだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Mariella MoonはEngadgetの編集者。

関連記事
フェイスブックがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から
【レビュー】フェイスブックのスマートグラス「Ray-Ban Stories」は「おもちゃ」レベルを超えている
Amazonのスマートグラスが12月から一般販売、スマートリングは廃番に
レノボが企業向けARグラス「ThinkReality A3」を発表、2021年半ば発売予定
KDDIが5Gスマホと接続し利用するスマートグラス「NrealLight」を12月1日発売

画像クレジット:Xiaomi

原文へ

(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Mantraと大日本印刷がマンガ用AI翻訳エンジン開発、大日本印刷独自のマンガ多言語化システムに搭載

Mantraと大日本印刷がマンガ用AI翻訳エンジン開発、大日本印刷独自のマンガ多言語化システムに搭載し2021年度中に実用化

大日本印刷(DNP)は9月8日、マンガに特化したAI翻訳サービスを展開するMantraと共同で、マンガのためのAI翻訳エンジンを開発したと発表した。これは、DNPが独自に開発したマンガを多言語化するシステム「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES」(モエス)に搭載されるもの。2021年度中の実用化を目指している。

海外での日本のマンガの需要が増加し、マンガを多言語化してグローバル展開するための体制整備が進められているが、マンガの翻訳については、話し言葉が多いことや、吹き出で文章が細切れになることなどから自動翻訳が難しく、翻訳タイトル増加のネックになっているという。コストや負担の面から翻訳タイトルの数を抑える出版社も多いとのこと。そこで、DNPとMantraは、マンガに特化して精度を高めたAI翻訳エンジンを開発した。

MOESは、マンガの翻訳・レンダリング・校正・進捗管理などを行うクラウドシステム。2016年から印刷物や電子書籍の翻訳版マンガ制作に利用されている。DTPソフトを使わずに、マンガのレイアウト上に直接翻訳文章を書き込めるため、文章の入れ違いなどのミスが防止できるほか、時差のある海外との作業では、データの授受や進捗管理を容易にして作業負担の軽減や時間短縮を可能にするという。これにAI翻訳機能が搭載されることで、ある翻訳会社の評価テストでは、翻訳作業時間が従来に比べて30%短縮されたという。

今後は、海外での需要が高い着色や縦スクロール化などの機能を開発し、MOESを軸とした海外版マンガ制作、製造体制を強化するとのこと。また、雑誌から単行本、海外版制作から電子コミックの配信という一連の流れを支援し「海外のマンガファンが多くの作品に触れる機会を創出」するという。さらに、サプライチェーンの最適化、コンテンツ価値の最大化などに取り組み、生み出した利益をコンテンツホルダーなどに還元することで、出版界の継続的な発展に貢献するとDNPは話している。

このシステムと国内外のマンガ制作関連事業で、DNPは5年後までに120億円の売上げを目指す。

2020年1月設立のMantraは、「世界の言葉で、マンガを届ける。」ことを目指し、マンガに特化したAI技術の研究開発およびサービスを提供するスタートアップ。2020年に公開したマンガの多言語翻訳システム「Mantra Engine」は、国内外のマンガ配信事業者・翻訳事業者・出版社に導入され、マンガ多言語展開の高速化に寄与しているという。2021年には、独自のマンガ機械翻訳技術が、人工知能分野のトップ国際会議AAAIに採択された。

 

YouTubeが検索機能をアップグレード、チャプターのプレビューと翻訳付き動画が見つけやすく

米国時間8月17日、YouTubeはユーザーが探しているコンテンツを見つけやすくするための2つの機能アップデートを発表した。1つはビジュアル検索機能で、もう1つはユーザーの母国語のキャプションがある外国語の動画を見つけやすくする。

デスクトップ版では従来から、YouTubeのユーザーが動画のサムネイルの上にマウスを合わせると短いクリップが再生される。今後、この機能はモバイルにも拡張され、しかも動画内のチャプターを閲覧する機能も追加され、検索ページから、最も関心があるチャプターに直接アクセスできる。

プロダクト管理のディレクターであるPablo Paniagua(パブロ・パニアグア)氏はブログで次のように語っている。「サワードウの良いレシピを探していて、しかももっと上手に生地をこねたいと考えている人は、新しい検索結果ですべてのステップを動画で見ることができます。生地にイースト菌を入れるところから、パンをオーブンから取り出すところまで。しかも、こね方のチャプターに直行できます」。

もう1つのアップデートは、外国語の動画をユーザーに勧めるとき、母国語のキャプションがあるものだけを選ぶ。たとえば上のサワードウの例では、ユーザーの言語がアイスランド語で、その言語の動画に良いのがなければ、YouTubeはアイスランド語の字幕のある英語のビデオを勧めるだろう。今は英語のビデオだけだが、今後はもっと多くの言語に拡大するという。

画像クレジット:YouTube

また、インドとインドネシアでは、YouTubeがGoogle検索から他のサイトへのリンクで検索結果を補完する機能をテストしている。

パニアグア氏の説明によると「知りたい内容を十分に満たす良質な動画がYouTube上だけで必ず見つかるとは限らないため」だ。

Google検索にはすでにユーザーが動画の途中に飛べる機能がある。しかも2020年の終わりごろには、YouTubeの親会社Googleは、TikTokやInstagramの短編動画を推奨するモバイル検索機能を実験した。ただしその動画は、ユーザーをGoogleの中にキープするために、TikTokやInstagramの中ではなく検索ページの中で開く。

関連記事:グーグルがTikTokとInstagramのショートビデオを集約する検索機能をテスト導入

画像クレジット:YouTube(スクリーンショットはTechCrunch)

YouTubeの検索機能のアップデートが行われたが、現在、プラットフォームの検索アルゴリズムをめぐる議論にまだケリが付いていない。 Mozillaは7月、調査結果を発表して、YouTubeのアルゴリズムが依然として「低級な視聴率稼ぎコンテンツ」を宣伝していると指摘した。Mozillaはブラウザの拡張機能RegretsReporterに参加したユーザーから、データをクラウドソーシングした。ユーザーに、YouTubeの本当は見たくなかったような動画を報告してもらう機能だ。Mozillaによると、そんな悪質動画は、英語以外のコンテンツが英語のものよりも60%多い。でもYouTubeは、外国語のビデオに母国語のキャプションを付けたものの推奨などは、悪質動画の排除に役立つかもしれないがMozillaの調査報告への答えではないと言っている。

「これらの機能は何カ月もかけて開発し、ハウツーやDIYなど、ユーザーが探しているものを見つけやすいようにしている」とYouTubeはいう。

関連記事
YouTubeの動画レコメンドAIは依然として悪行を重ねていることが大規模調査で判明
YouTubeが新しい収益化機能「Super Thanks」発表、個別の動画に対してクリエイターに投げ銭可能に
TikTokのライバル、最大60秒の動画を投稿できる「YouTube ショート」が日本を含む100か国以上で利用可能に

カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTube検索翻訳動画配信

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

マンガを独自技術でローカライズし短時間で世界中の読者に配信するシンガポールのINKR

デジタルコミックのプラットフォーム「INKR」のチーム(画像クレジット:INKR)

INKR(インカー)は、独自のローカリゼーション技術を用いることで、クリエイターが文化や言語の壁を越えて世界中の読者にリーチできるデジタルコミックのプラットフォームだ。これまで自己資金のみで運営してきた同社だが、米国時間7月28日、プレシリーズAの資金調達を行い、310万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。今回の資金調達はMonk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、マンガ配信会社TOKYOPOP(トーキョーポップ)の創業者兼CEOであるStu Levy(ストゥ・レヴィ)氏が参加した。

シンガポールに本社を置き、ホーチミンにもオフィスを構えるINKRは、2019年にKen Luong(ケン・ルオン)氏、Khoa Nguyen(コア・グエン)氏、Hieu Tran(ヒュー・トラン)氏によって設立された。同社によると、2020年10月に運営を開始して以来、月間平均ユーザー数は200%増加しているという。現在はFanFan(ファンファン)、Image Comics(イメージ・コミックス)、Kodansha USA(講談社USA)、Kuaikan(快看)、Mr. Blue(ミスター・ブルー)、SB Creative(SBクリエイティブ)、TOKYOPOP、Toon’s Family(トゥーンズ・ファミリー)など、70以上のコンテンツクリエイターや出版社と提携しており、これまでにマンガ、ウェブトゥーン、グラフィックノベルなど、800以上の作品を読者に提供している。

INKRのルオンCEOは、TechCrunchの取材に対し、このプラットフォームはまず、世界的なトップ出版社の翻訳コミックから力を入れていくものの、2022年には小規模な出版社やインディーズのクリエイターにも開放する計画があると語った。

INKRのプラットフォームの核になっているのは、独自のローカリゼーション技術だ。これによって、異なる市場に向けてコミックを準備するために必要な時間を、数日から数時間に短縮することができるという。

「コミックのローカリゼーションは、単に翻訳するだけではありません。ファイル処理、転写、翻訳、植字、効果音、品質管理など、多くの人が関わる多くの段階が必要な、時間のかかるプロセスです」とルオンCEOは語る。

INKRが配信している作品の一部(画像クレジット:INKR)

漫画の出版には、言語の違いだけでなく、日本の漫画、中国の漫画(manhua)、韓国の漫画(manhwa)、米国のコミックなど、世界各国のコミックスタイルの違いも考慮する必要がある。例えば、漫画には1ページずつレイアウトされているものもあれば、縦にスクロールして読み進めるものもある。左から右へ読む言語もあれば、右から左へ読む言語もある。

ルオン氏によると、INKRが独自に開発したAIエンジン「INKR Comics Vision(インカー・コミックス・ビジョン)」は、テキスト、セリフ、キャラクター、表情、背景、コマなど、コミックページ上のさまざまなフォーマットや要素を認識することができるという。また、人間の翻訳者のためのツール「INKR Localize(インカー・ローカライズ)」は、テキストの書き起こし、語彙の提案、タイプセットなどの作業を自動化することによって、正確な翻訳をより早く提供するために役立つ。

ローカライズ作業は、世界各地の異なる場所にいる人たちのチームによって行われるため、INKRはブラウザベースのコラボレーションソフトウェアを提供している。このプラットフォームは現在、日英、韓英、中英の翻訳に対応しており、今後も言語の追加が予定されている。快看漫画やMr.Blueなどの出版社では、中国語や韓国語で書かれた何千話もの漫画を英語に翻訳するためにINKRを使用している。

INKRはコンテンツ制作者に、広告サポート、購読料、各話ごとの支払いなど、収益化する手段の選択肢をいくつか提供している。ルオン氏によると、同社のプラットフォームはコンテンツを分析し、どの方法が収益を最大化できるかを判断してパブリッシャーに知らせ、得られた収益の一定割合を分配するという。

INKRと競って注目を集めているデジタルコミックプラットフォームには、他にもAmazon(アマゾン)が運営するComixology(コミクソロジー)や、韓国のNaver Corporation(ネイバー株式会社)が運営する出版ポータルのWebtoon(ウェブトゥーン)などがある。

ルオン氏は、INKRの競争力の強みとして、提供するコミックの多様性と価格の手頃さを挙げている。また、同社が起ち上げ前にデータとAIベースの技術に投資したことも、読者と出版社の両方に向けた強みとなっている。これによってユーザーは自分の読書活動に基づいてパーソナライズされた「おすすめ」作品を受け取ることができ、出版社は分析ツールを利用して消費傾向に基づく作品のパフォーマンスを追跡することができる。

Monk’s Hill VenturesのジェネラルパートナーであるJustin Nguyen(ジャスティン・グエン)氏は声明の中で、INKRの「独自のAIを活用したプラットフォームは、デジタル化とグローバル化を必要とするクリエイターやパブリッシャーの痛点に対応できます。多くの言語に、迅速かつ優れたコスト効率でローカライズすることが可能であり、それと同時に、分析ツールやパーソナライズされたインテリジェントなフィードによって、リーチと読者数の向上を支援します。私たちは、世界中の翻訳コミックに対する大きな需要に応えるために、彼らとパートナーシップを組めることを楽しみにしています」と述べている。

関連記事
GaudiyがNFTや分散型IDなどブロックチェーン技術を活用しファン体験を統合する新規ゲームIPパートナーを募集
集英社のアクセラレータープログラム「マンガテック2020」採択スタートアップ5社が公開
ブロックチェーン活用し「唯一無二」のアニメ原画データなどを販売する「AniPic!」が4000万円調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:INKRデジタルコミック電子書籍ローカライズ翻訳シンガポール資金調達人工知能

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

遠隔通訳プラットフォームのInteractioがコロナ禍でのビデオ会議需要急増で12倍の成長

国連、欧州委員会、欧州議会などの巨大機関やBMW、JPMorgan(JPモルガン)、Microsoft(マイクロソフト)などの企業を顧客に持つ遠隔通訳プラットフォームのInteractio(インテラクシオ)が、3000万ドル(約33 億円)のシリーズAをクローズした。新型コロナウイルスのパンデミックによってオンライン会議プラットフォームの需要が急増し、2019年から2020年にかけて同社のツールの使用率が12倍になったことがこの要因である。

今回のシリーズAは、Eight Roads Ventures(エイト・ローズ・ベンチャーズ)とシリコンバレーを拠点とするStorm Ventures(ストーム・ベンチャーズ)がリードしており、Practica Capital(プラクティカ・キャピタル)、Notion Capital(ノーション・キャピタル)の他、Skype(スカイプ)の共同創業者であるJaan Tallinn(ジャン・タリン)氏や、Samsung(サムスン)の元チーフ・ストラテジー・オフィサーであるYoung Sohn(ヤング・ソン)氏などの著名なエンジェル投資家が参加している。

リトアニアのヴィリニュスを拠点とするこのスタートアップは、会議と認定通訳者をつなぐデジタルツールを提供し、リアルタイムの通訳により会議参加者間の言葉の橋渡しを行っている。同社はビデオ会議プラットフォームも提供しており顧客はこれを使ってリモート会議を行うこともできるが、ZoomやWebexなどのサードパーティー製ソフトウェアとの統合も自由自在だ(2020年、同社のデジタルツールは43のビデオストリーミングプラットフォームで使用されたという)。

Interactioの通訳者は、会議が実際に行われている部屋に行くことも、会議のストリームを見聞きしながら完全にリモートでリアルタイムの通訳を行うこともできる。また、顧客の要望があれば遠隔地での通訳とオンサイトでの通訳を組み合わせることも可能だ。

会議に必要なすべての通訳者を提供することも可能で、同社は厳しい審査過程を経た認証された通訳者のみをプラットフォームに登録しているという。同社の通訳者を使わない場合、会議当日に物事が円滑に進められるよう、顧客の通訳者にツールの使い方のトレーニングも行っている。

現在Interactioは1000人以上のフリーランス通訳者と提携している他「通訳会社との強力な関係」を有していると謳っており、需要の増加に応じて通訳者の数を4倍に増やすことも可能だと豪語している。

同社のサービスではあらゆる言語の通訳を提供しており、1つのイベントで使用できる言語の数に制限はない。2020年は70カ国以上で1万8000件以上の会議を開催し、39万人の聴衆が参加したという。

新型コロナウイルスで引き続き出張に出向くことが難しい今、同社はシリーズAで得た豊富な資金を活用して、多言語によるオンライン会議が増加するであろう将来に向けて準備を進めている。

「当初私たちの最大の競合は、現場での同時通訳用ハードウェアでした。当時は、参加者が自身の携帯電話とヘッドフォン以外に別のハードウェアを使用する必要のない当社のソフトウェアを世に広めようと試みていました。しかし我々がフォーカスしていた機関にとってはハイブリッドな会議こそがカギだったのです。そこで同時通訳ハードウェアメーカーやインテグレーターと提携し、参加者はオンサイトでハードウェアを使用し、オンラインでは我々のサービスを使用するというハイブリッドイベントをともに行うようになりました」と広報担当者は話している。

「こうして、基本的にはケーブル1本でオンサイトのハードウェアと統合することができる完全なハイブリッドソリューションを提供することで、他社のプラットフォームと差別化することができました」。

「また市場のトレンドを見るとやはりZoomが最も使われているので、それを補完するために我々はプロフェッショナルな通訳ソリューションを提供しています」。

カスタマーサポートに重点を置くということも他社に差をつけるための戦略の1つとして同社は考えており、また、iOSとAndroidのアプリは総体的に高い評価を得ることができている(一方で過去のクレームの中には、大規模なオーディエンスへのサービスのスケーリングに問題があったことや、長年にわたってオーディオの品質などに問題があったことを示唆するものもある)。

2014年に設立されたこのスタートアップはすでに利益を上げているものの、今回のシリーズAはリモートワークブームの中で加速した需要と急激な成長に対応するための準備に充てたいと考えている。

具体的には、通訳を必要としている企業が簡単にアクセスできるようにするための技術やUX / UIの強化の他、通訳者が「置かれた場所で最高の仕事ができる」ようにするためのツールのアップグレードなどに使われる予定だ。

また、顧客基盤の拡大のためにも資金が投入される予定で、特により多くの企業や異なる種類の顧客の獲得を目指している(「欧州委員会、欧州議会、国連など、2020年から現在にかけて重点的に取り組んだ機関ではミスが一切許されず、最もプロフェッショナルなソリューションが求められています。顧客ベースを法人顧客や通訳を必要とするより多くの一般の人々に拡大することが次のステップです」と同社は話している)。

今回の資金は、これらの目標を達成するためのチーム規模の拡大の他、需要の増加に対応するための認定通訳者数の拡大のためにも使用される予定だ。

国連のような主要機関は、現場にしてもリモートにしても、人による通訳コストを節約して外交官や政治家に提供する通訳の質を落とすようなリスクをおかすことは決してないが、リアルタイムの機械翻訳技術が利用可能になったことで、プロフェッショナルなリアルタイム通訳のスケーリングには限界がでてくるかもしれない。リアルタイムの機械翻訳技術は、プロフェッショナル同士のカジュアルなミーティングなどのより簡単な会議の際に、より安価な代替策として活用できる。

例えばGoogle(グーグル)では、スマートフォンのプラットフォームのユーザーがGoogleの音声アシスタントAIを介してアクセスできるリアルタイム通訳モードを提供している。ハードウェアのスタートアップもリアルタイム通訳をターゲットにしようと試みている。AIを搭載した現実の「Babel Fish」への夢は依然として強いのだ。

どちらにせよ、こういったものは大規模な会議やカンファレンスをサポートするのには適さない。大規模な会議では、音質やその他の問題が発生した場合のトラブルシューティングを担当する集中型の配信サービスが不可欠である。

機械翻訳の性能が年々向上していることは間違いないが(ただし言語によって性能は大きく異なる)、機械が翻訳を間違えた場合に重要な情報が失われてしまうというリスクがある。そのため、リモートワークの増加(と海外出張の減少)がニューノーマルとなっていく今後、人間による通訳をデジタルプラットフォームでスケーラブルに提供することができれば、それが一番理に適った方法なのではないだろうか。

「迅速なソリューションを必要とし、品質を犠牲にしても構わない場合には、AIによる通訳が最適なツールです。私たちのクライアントは大企業や機関であるため、あらゆる誤解が決定的なものとなります。単に異なる言語で言葉を話すというのが目的ではなく、翻訳によって意味と文脈を正確に伝えることが重要なのです」と同社はいう。

「私たちは会話の本当の文脈や意味は人間にしか理解できないと強く信じています。声のトーンや感情、話し方によって、機械では気づかないような大きな違いが生まれることもあるからです」。

関連記事
Zoomが会議でのリアルタイム翻訳を実現するためにドイツのスタートアップを買収
世界中の視聴者にエンタメの門戸を広げるローカリゼーションサービス市場をリードするIyuno Media Group
ウェブを閲覧しながら外国語を学べるToucanが約4.9億円を追加調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Interactio通訳資金調達ビデオ会議機械翻訳

画像クレジット:Interactio

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)