Skyryseは離陸から着陸まですべて自動操縦可能なヘリの飛行技術をデモ

Skyryseは3年前に創立された運輸系のスタートアップ。他のほとんどの会社と比べて、異なる角度から航空の未来にアプローチしている。新しいタイプの航空機を製造するスタートアップは、よく見かけるだろう。たとえば、電動パワートレイン、複数のローターを備えた垂直離着陸機など、いろいろある。Skyryseは、もっと基本的かつ包括的なレベルから始めるのがスマートなアプローチだと考えている。それは、自動操縦技術の「スタック」だ。あらかじめ、安全に飛行できることが実証されている航空機でも動作するもの。

Skyryseのモデルは、創立者でCEOのマーク・グローデン(Mark Groden)氏が私に説明してくれたように、幅広い適用性、信頼性、冗長性、および安全性をすべて満たしている。同社の主力製品は、「Skyryse Flight Stack」と呼ばれ、今回、Robinson R-44ヘリコプターを実際に飛ばすモンストーレーションとともに公開された。この技術スタックには、以下のような様々な機能が含まれる。つまり、完全な自動操縦としても人間のパイロットのアシスタントとしても動作するシンプルなフライト制御機能、故障が発生しても安全に動作するフライト制御自動化機能、安全な操縦限界の監視と操縦への介入機能、監視と警告機能を備え、ネット接続されたインテリジェントなヘリポート、既存のFAAシステムと連携するように設計された航空管制コンポーネントなどだ。

Skyryseとそのアプローチは、次のようなグローデン氏の信念に基づいたもの。つまり、都市の内側、あるいは周辺の移動を管理するソリューションが、グリッドを調整したり、ネットワークの経路に沿って人や物の流れを変更するだけでは対処できない段階まで、都市のインフラストラクチャが発達してしまった、という信念だ。それに対して彼は、利用可能な潜在的なソリューションに関する、ずっと基本的な認識の転換こそが必要なのだと考えている。

「私はかなり若いときに、自動車を前提としたインフラストラクチャ上に構築された輸送システムは、もはや私たちの都合に合わせてくれないことに、基本的なレベルで気付きました」とグローデン氏は説明する。「むしろ反対に、今は私たちの方が、交通システムに仕えている状態です。たとえば、私や、Skyryseで働く多くの人々が住むロサンゼルスの場所は、交通システムの都合で決められてしまいます。通う必要のある場所に通えるかどうかどうかによって、住む場所が決まってしまうのです」。

「現実的には、この100年間、ほぼ進化していないということです」と彼は付け加えた。「私たちは、既存の運輸インフラストラクチャについて、できるだけ多くのスループットを得ようと努力しています。しかし、この問題を解決する唯一の方法は、インフラストラクチャというものから脱却することなのです。インフラストラクチャに依存するアプローチには、得られるスループットに限界があります」。

グローデン氏の論拠は、自動操縦の航空輸送技術を探求している他の人々と、それほどかけ離れたものではない。たとえば、Kitty Hawk(キティホーク)とGoogle(グーグル)による自動運転車プロジェクトの創立者、セバスチャン・スルン(Sebastian Thrun)氏は、同じような理由で、空中での自動操縦に取り組むほうが、地上の自動運転よりも、実際にはずっと簡単に成果が得られるだろうと、常々話している。ただし、Skyryseのアプローチは、この問題に取り組む他のアプローチとは異なっている。というのも、Skyryseが考えているのは、単に空飛ぶ車ではなく、システム全体を開発することだからだ。

「私たちは、最も速く、最も安全な輸送システムを、人々とコミュニティのために提供したいと考えています」とグローデン氏は言う。「自動化は、手の届くような価格を実現し、いずれは誰でも使えるようなものにするために不可欠だと考えていますが、自動化以上のものが必要です。これは、ある意味列車システムに喩えられるようなものなのです。「機関車」が「線路」の上を走っていくには、まず線路が必要ですし、ポイントも必要、通信のためのアーキテクチャも必要、その他もろもろが必要となります。それを自動化するには、さらにいろいろ必要となるでしょう。このような輸送システムをサポートするフルスタックのテクノロジーシステムこそが、私たちが注力しているところなのです」。

そのためにSkyryseは、有能な運輸の専門家とエンジニアで構成されたチームを抱えている。そのメンバーには、Airbus(エアバス)、Boeing(ボーイング)、Ford(フォード)、JetBlue(ジェットブルー)、Moog(ムーグ)、SpaceXといった企業での勤務経験を持つ人が加わっている。SkyryseのCTOは、ゴンザロ・レイ(Gonzalo Rey)博士が務める。以前は、MoogでCTOを務め、ボーイング787とエアバス350のフライトコントロールの作動システムの開発を監督した経験も持つ。一方、COOのブライアン・コールター(Brian Coulter)氏は、かつて、JetSuite AirとJetBlue、両方を共同創立した。さらに航空産業での業務経験も併せ持っている。

今回、同社はその技術が既存の航空機と、航空管制システムの環境で機能することを実証した。これは、実世界での実現可能性という観点からして、この業界で見られる多くの新機体のデモよりも、ずっと有望な成果と言える。Skyryseはまた、昨年8月に発表したシリーズAに加えて、1300万ドル(約14億2400万円)を獲得し、合計3800万ドル(約41億6300万円)の資金を調達したことを明らかにした。今回のラウンドには、フォード自動車のビル・フォード(Bill Ford)会長も参加している。これはSkyryseのアプローチが、従来の運輸モデルをひっくり返す可能性があるという兆しだと、グローデン氏は自信を深めている。

カーシェアリング、配車システム、そして最近ではオンデマンドの電動自転車とスクーターのサービスは、どれも、都市の混雑と交通渋滞を緩和できると主張している。しかしこれまでのところ、いずれも問題を解決する助けにはなっていない。自動操縦の航空輸送は、実際に違いをもたらすソリューションとなり得るだろう。Skyryseは、フルスタックによるアプローチで、それを可能にするスタートアップなのかもしれない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米国空軍がRE2に従来型飛行機のためのロボットパイロット製作を依頼

自律飛行システムと航空機は既に米国空軍(USAF)やその他の防衛機関たちが試験中だ。だが今回更に、人間によって操縦される旧来の飛行機を、簡単に自律型飛行機に転換することができるようなロボットパイロットの製造のために、RE2 RoboticsがUSAFによって選ばれた。

RE2は、その実現のために米国空軍から資金を調達する。そしてそのプログラムには、同社のドロップインシステムが、機械的に飛行機に対して用いることができることを、テストを通して披露することも含まれている。そして制御装置の操作、視覚による計測器の読み取りと意思決定能力が、飛行機側には一切の手を加えることなく、飛行機を自律的に操縦する機能として統合される。

この「飛行機側には一切の手を加えない」という点が、全ての努力の鍵となる部分だ。RE2のロボットパイロットは純粋にプラグアンドプレイ型派生産業ソリューションであり、本質的にはロボットをパイロットの代役として利用しようとするものである。もちろん制御装置のインターフェースや情報読み取り装置は人間向けのものをそのまま使うということだ。通常自律的飛行テクノロジーは、直接的な統合を必要とし、高価で一般的には他に転用不可能なカスタム航空機または制御システムさえも必要とする。

これに対し、ドロップインロボットパイロットは柔軟な改造を可能にし、必要ならば航空機を人間の制御するものへと戻すことができる。現場における自律飛行機能の配備作業を簡単に行うことも可能になる。ロボットを出荷してパイロットシートに座らせるだけなら、飛行機を回収して改造したり、オンサイトで改造することよりも遥かに簡単だ。

RE2は、最終的には航空機だけでなく、地上の車両や水中作業用のドロップインパイロットを作成したいと考えている。これらのすべてが現在人間による操作を前提にデザインされているので、すべての状況に対処できる1つのタイプのロボットを構築することも可能であり、効率とコスト削減の点でもさらに有益なのだ。

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(翻訳:Sako)