屋内専⽤の産業⼩型ドローンIBISを手がけるLiberawareが4.2億円調達、自律飛行・AI強化で点検・計測・分析推進

屋内専⽤の産業⼩型ドローンIBISを開発するLiberawareが4.2億円調達、自律飛行・AI強化で点検・計測・分析推進

屋内空間専⽤の産業⼩型ドローンIBIS(アイビス)を開発するLiberaware(リベラウェア)は9月1日、第三者割当増資による約4億2000万円を発表した。引受先は、リード投資家のBonds Investment Group、また凸版印刷、オリックス、セントラル警備保障、みやこキャピタル、Drone Fund。これによりシリーズCラウンドの資⾦調達を完了し、累計調達額は9億7000万円となった。

調達した資金により、ドローン技術や画像処理技術にみがきをかけ、IBISの増産およびアップデート、自律飛行型ドローンの実用化、AIの開発、海外展開の足がかり構築を実施する。

2016年8月設立のLiberawareは、「正しく作る、自由に動かす、社会を変える」をモットーに、自由な発想でモノづくりに取り組むエンジニア集団。Liberawareという社名は、ラテン語で「自由な」を意味する「libera」と、「気がつく」を意味する「aware」、そしてhardwareやsoftwareの「ware」を組み合わせたものという。

同社のIBISは、製鉄業や電力業、建設業などにおける設備の点検、構造物のデータ化において活用が進んでいるという。また、建設現場の施工進捗管理、⼯場内の定期チェックや倉庫内の在庫管理、屋内施設巡回警備など、自律飛行型ドローンの引合いも増えているそうだ。2021年7月にはJR東日本グループと合弁会社「CalTa株式会社」を設立し、鉄道・インフラ業界のDXを促進するための事業展開も図っている。

2人乗りの自律型デモ航空機「Maker」をArcher Aviationが公開、商業運航への「足がかり」に

Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)は「Maker」(メーカー)と名づけられた自律型電動2人乗り航空機を米国時間6月10日に発表した。同社は同機を、2020年3月に発表済の、より大型の操縦士付き5人乗り航空機の認証取得に向けたテストに使用する予定だ。

6月10日に発表された航空機は、2024年に商業運転を開始した際に空を飛ぶものではない。だがArcherの認証責任者Eric Wright(エリック・ライト)氏は、TechCrunchに対して、自律型航空機から始めることでより効率的にテストプロセスを進めることができると語っている。

ライト氏は「2人乗りのMakerは、認証取得への足がかりとなるものです」と説明する。そして「これは飛行制御システムや電気推進装置など、私たちが認証を受ける航空機に搭載するものについての知識や認識を深めるためのテストベッドです。同時に私たちの試験を通して米連邦航空局(FAA)によるその設計への信頼を深めることができるようにするためのものでもあるのです。もちろん、FAAもその開発を見守ることになります」と述べている。

Makerと、まだ名前の決まっていない5人乗り航空機は、どちらも全部で12個のローターを持ち、そのうち前部6個のローターが傾く「ティルトローター」を採用しているという仕様上の共通点を持つ。このティルト機構により、航空機はヘリコプターのように垂直に上昇し、飛行機のように前進することができる。

両機はまた、それぞれ安全のために6つの独立したバッテリーパックを搭載しており、1つのバッテリーが故障しても残りのバッテリーが作動するようになっている。このバッテリーにより、両機は時速150マイル(時速約241.4km)で60マイル(約96.5km)の航続距離を実現している。2人乗り機は、翼幅が40フィート(約12.2m)で、重量は約3300ポンド(約1498.2kg)だが、より大きな機体ではもっと重くなるだろうとライト氏はいう。

画像クレジット:Archer

パロアルトに本社を置くArcherは、Makerが2000フィート(約608m)の上空から発する音は、わずか45dBだと予想している。この騒音仕様は、エアタクシーへの展開を目指している電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーにとって特に重要なものだ。一般の人々や規制当局に、同機の大量導入が受け入れられる可能性が出るのは、航空機が十分な静粛性を備えている場合に限られる。

Archerは、United(ユナイテッド)航空から10億ドル(約1096億円)の受注を獲得したと発表した後、2人乗り機の高品質なレンダリング画像を公開するなど、ここ数カ月の間にMakerに関する情報を少しずつ提供してきた(なお、このレンダリング画像の公開によって、ライバルのeVTOL開発会社であるWisk Aero [ウィスク・エアロ]から企業秘密の流用を主張する訴訟が起こされた)。米国時間6月10日のイベントは、38億ドル(約4167億円)の評価を受けている同スタートアップが、実際の航空機を一般に公開する初めての機会となった。

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このデビュー機が自律型である理由を聞かれたライト氏は、そのことでテストや検証のプロセスをより効率的に進めることができるからだと答えた。ライト氏は「航空機を自律的に動かすことで、航空機のパイロットが実際に操縦する必要なしに、より迅速に物事を進めることができます」という。「そうすることで、入力に対する機体の反応を、自律的な観点から、より早くより効率的に見ることができるのです」。

自律型エアタクシーが都市部で人々を運ぶようになるのはまだ先のことかも知れないが、Archerは他のeVTOL開発企業と同様に、長期的な青写真の中で、自律型エアタクシーを単に大型機の認証プロセスを促進するものではなく、運用可能な航空機として捉えているのだ。

ArcherのCEOであるBrett Adcock(ブレット・アドコック)氏は、別のインタビューの中で次のように述べている「輸送の世界に本当に大きな影響を与えようとするなら、長期的には、操縦士を使った方法でそれを実現することは本当に難しいと思っています。航空業界に入り、認証を受け、それをすぐにでも実現するという意味では、操縦士を使うやり方は確かに正しい方法だと思います。そして将来的には、乗客とネットワークの両方の安全性を高めるために、自律的な航空業界への移行が重要になってくると思っています。だから、業界がうまくスケールして大きくなるためには、ある程度の自律化は避けられないと思っています」。

創業3年目のこの企業は、2024年にロサンゼルスとマイアミを皮切りに商用運行を開始することを目指している。同社のシステムシミュレーションチームは、VTOL機離着陸場をどこに配置するかを決めるために、Prime Radiant(プライムラディアント)という名のシミュレーションツールを使っている。同チームを率いているのは、2020年12月にJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)に売却された、Uber(ウーバー)のエアモビリティ部門Uber Elevate(ウーバー・エレベート)の、元データサイエンス責任者だ。

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またアドコック氏は、エアタクシーのルートを考える際には必ず必要となる、ファーストマイルとラストマイルの車での移動を統合するために、ライドシェア会社との間で話し合いを進めているのだという。

同社の共同創業者であるGoldstein(ゴールドスタイン)氏は、2024年のローンチ予定に先立ち、パートナーである自動車メーカーのStellantis(ステランティス)と2つの施設についての作業を進めていると語った。1つは従来の航空産業のように年間数百機を提供する施設で、もう1つは将来的にさらに大量の航空機を製造する施設だ。

Archerには、自動車メーカーと同様の製造上のニーズがあるとゴールドスタイン氏はいう「多くの部品に軽量のカーボンファイバーを使用し、自動車と同様に電気モーターやバッテリーを使用するのです」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Archer Aviatio自律飛行eVTOLエアタクシー

画像クレジット:Archer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

空中親機ドローンと子機水中ドローンを合体させた世界初の「水空合体ドローン」が開発、2022年度の商用化目指す

空中親機ドローンと子機水中ドローンを合体させた世界初の「水空合体ドローン」が開発、2022年度の商用化目指す

KDDIKDDI総合研究所、2015年1月設立の産業用ドローンメーカー「プロドローン」(PRODRONE)は6月10日、ダム・港湾設備の点検や水産漁場監視を行う「水空合体ドローン」を開発したと発表した。モバイル通信を利用して、点検現場まで空中を自律飛行し、潜水型子機を切り離して水中での測位、映像伝送を行う。この形式のドローンは、KDDI総合研究所の調べによると、2021年6月10日現在世界初となる。3社は今後、2021年度中に各用途に応じた実証を行い、2022年度の商用化に向け開発を行う。

水産養殖や水域インフラの点検分野では、人手不足が深刻化し、水中ドローンの需要が高まっているものの、従来の水中ドローンは船で点検現場まで運ばなくてはならなかった。一方この水空合体ドローンは、点検現場まで自律飛行するため、船を出す必要がない。親機である空中ドローンは、現場の水面まで飛行し子機である水中ドローンを切り離す。水中撮影、映像の伝送などの作業を遠隔操作で行った後、空中ドローンは水中ドローンを回収して、また飛んで帰ってくる。

自律飛行中の水空合体ドローン

着水した水空合体ドローン

潜行する子機

子機を回収し離水する水空合体ドローン

機体の開発はプロドローンが担当し、KDDIは、ドローンを日常生活を支えるインフラにすることを目的に開発したモバイル通信によるドローン管制システム「スマートドローンプラットフォーム」を提供。KDDI総合研究所は、水中の音響計測技術を提供し、プロジェクト全体の統括を行っている。

水空合体ドローンは、6月14日から開催される展示会「ジャパンドローン2021」のKDDIブースに出展予定。

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カテゴリー:ドローン
タグ:KDDI(企業)KDDI総合研究所(企業)ドローン(用語)プロドローン(企業)日本(国・地域)

55機のキングエア航空機に自律飛行機能をステルスモードを脱したMerlin Labsが搭載

Merlin Labs(マーリン・ラボ)の創業者であるMatt George(マット・ジョージ)氏は、バーモント州で飛行機の操縦を学んでいた時、バーリントン空港に入ってきたJetBlue(ジェットブルー)の航空機とあと少しで事故になる危機一髪の体験をした。それは「不安な体験」だったと、同氏はTechCrunchに語った。しかし、この体験は彼の心にずっと残ったという。その数年後、自身が設立した交通輸送の企業であるBridj(ブリッジ)がシンガポールのTransit Systems(トランジット・システムズ)に買収されたことをきっかけに、自律走行という地上の交通機関で起きているイノベーションを、どうやったら空に持ち込むことができるかと考えるようになった。

Merlin Labsを設立してから2年半が経過した現在、同社はステルスモードから脱し、航空ソリューション企業のDynamic Aviation(ダイナミック・アビエーション)と提携を結んだことを発表した。これにより、Dynamic Aviationが所有する55機の航空機に、Merlin Labsが開発した自律飛行機能が搭載されることになる。同時にMerlin Labsは、シード資金として350万ドル(約3億8500万円)、シリーズAラウンドで2150万ドル(約23億6000万円)を調達したことも明らかにした。それぞれFirst Round Capital(ファースト・ラウンド・キャピタル)と、Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)から名称変更したGVが主導し、Floodgate(フルードゲート)、Harpoon(ハープーン)、WTI、Ben Ling(ベン・リン)、Box Group(ボックス・グループ)、Shrug Capital(シュラッグ・キャピタル)、Howard Morgan(ハワード・モーガン)が追加出資している。

ジョージ氏によると、Merlin Labsはこれまで3世代の実験システムで、離陸から着陸までの自律飛行ミッションを「数百回」実施してきたという。同社は試験飛行をモハベ航空宇宙港にある専用施設で行っている。その最新のシステムは数カ月前に完成したばかりで、ジョージ氏はこの「Murray(マーレイ)」と呼ばれるシステムについて、あらゆる航空機に適用可能な後づけ自律操縦キットと表現している。人間のパイロットは地上で機体を監視し、緊急時には操縦を引き継ぐことができるが、Merlin Labsのシステムを後付けした航空機は、それだけで運航することができる。

画像クレジット:Merlin Labs Merlin Labs

しかしながら、同社のシステムを取り付けた55機のBeechcraft(ビーチクラフト)製双発ターボプロップビジネス機「King Air(キングエア)」が商業運航として空を飛ぶ前に、Merlin Labsは米国連邦航空局から追加型式設計承認を取得する必要がある。ジョージ氏は、Merlin Labが承認を取得するタイムラインについては言及しなかったが、規制が厳しく当然ながらリスクを嫌うこの業界では、必要なプロセスだ。

また、同社は航空管制官が航空機に直接「話しかける」ことができる機能も証明しようとしている。これは自然言語処理を用いて航空機が人間の言葉を理解し、行動に移すことができるというもので、機体は「高度な認知能力」を持って応答できるようになると、ジョージ氏は語っている。

「私たちは航空管制官が、パイロットの搭乗している他の航空機と同じように、航空機と対話できる必要があると確信しています」と、同氏はいう。「特別なインターフェイスは必要とせず、管制官が航空機に話しかけると、航空機がそのアクションを実行し、返答できるようにしなければなりません。これは私たちが取り組んでいる非常に重要な部分です」。

将来、Merlin Labsは航空会社になるつもりも、自ら航空機を運航するつもりもないと、ジョージ氏はいう。その代わりに、Dynamic Aviation(民間で最も多くのKing Air機を所有する)や、UPSやFedEx(フェデックス)などの大手物流企業に、サービスとして自律飛行機能を提供することを考えている。

「自律飛行は世界を飲み込みつつあります」と、ジョージ氏はいう。「空域を自動化できるということは非常に重要です。人々を結びつけ、世界全体をつなぐデジタルインフラを築くことができるのです」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Merlin Labs飛行機自動運転自律飛行資金調達

画像クレジット:Merlin Labs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)