アプリに音声と動画によるコミュニケーション機能を組み込むVoximplantがベータ版をリリース

ここ数年、音声やビデオのコミュニケーション機能をアプリやサービスに統合するためのサービスが急増している。Twilioや、Googleが開発する自然言語処理(NLP)プラットフォームのDialogflowなどだ。

サンフランシスコを拠点とするVoximplantも同様のサービスを開発し、Avatarプロダクトのベータ版を公開した。同社はこれまでにBaring Vostok Capital Partners、RTP Ventures、Google Launchpad Acceleratorから1010万ドル(約11億6200万円)を調達した。

同社はすぐに使える自然言語処理サービスを提供しており、開発者はこれを利用してアプリに自然言語処理機能を組み込んでスマートIVR(自動音声応答システム)や音声ボット、チャットボットの機能を追加し、インバウンド通話の自動化、FAQ、インタラクティブなアンケート、NPS(ネットプロモータースコア)、コンタクトセンターの自動化などに活用できる。

Voximplantによれば、同社のサービスでは開発者が複雑なバックエンドのロジックを構築する必要はなく、ノーコードのエディターと会話型AIにより、AI搭載ボットを開発してチャットや電話と簡単に統合できるという。

同社はさらに、機械学習に関する部分はすべてプラットフォームが処理するため、開発者は基本的なJavaScriptの知識があれば十分だと説明している。

Voximplantの共同創業者でCEOのAlexey Aylarov(アレクセイ・アイラロフ)氏は発表の中で「次世代のCPaaS(Communications Platform as a Service)はインテリジェントなサービスとプログラミングが簡単なオムニチャネルのコミュニケーション機能を融合したものであり、これを実現することで現在と将来の当社顧客に最大の価値をもたらすと確信しています」と述べている。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

「思いつき」をShazamのように広範な知識ベースと検索、照合、整理してくれるメモアプリ「Weavit」

同名の新しいアプリで「Shazam for your thoughts(あなたのインスピレーションをShazamのように検索)」しようと試みるWeavit(ウィービット)。同社はボタンを押すだけで自分の考えをすばやくメモツールに取り込み、それをより広範な知識ベースのコンテンツと照合するという、今までになかった手段をユーザーに提供する。Weavitアプリでは、メモを連絡先、会議、トピック、その他のウェブリンクにリンクさせ、アイデアや思いつきを、構造化して整理しなくても、書き留めておくことができる。

Weavitの創業者によると、これは脳の働きに似ている、という。

共同創業者であるKomal Narwani(コマル・ナルワニ)氏は次のように説明する。「私たちの頭の中にあるアイデアは、いずれもまったく構造化されておらず、すでにあるノートには収まりません」「思いついたことを吐き出し、機械に整理してもらえば、後からその情報を取り出し、きちんと整理し直すことができます」。

このアプリでは、アイデアをタイプ(あるいは口述)してWeavitのデータベースに入力する。

アプリは自然言語処理(NLP)技術を用いて、メモの中の特定の項目を、人や場所、イベントなど、アプリにすでに存在するトピックにリンクさせる。例えばCESで誰かに会ったと入力すると、「CES」はイベントとして認識され、「CES」が含まれる他のコンテンツにリンクされる(Weavitは6000万以上のWikipediaのトピックに接続され、このようなリンクをサポートしている)。さらに、メモに出てくる人を特定し、その人の会社、過去に会った場所や会議などにリンクさせることもできる。

画像クレジット:Weavit

このような自動リンクにより、自分の既存の知識をベースにしてアイデアを書き留めることが容易になる。Weavitはハッシュタグや@メンションなどの一般的なツールもサポートしているので、必要に応じて手動でリンクさせることも可能だ。

Weavitの共同創業者、Emmanuel Lefort(エマニュエル・ルフォート)氏は、過去の銀行勤務の経験からこのメモアプリのアイデアを思いついた。銀行では、営業担当者が顧客に金融商品を販売する際、パーソナルネットワークの中にある潜在的な情報を十分に利用できていなかった。そこで同氏は、CRM(顧客関係管理)ツールに入力しなくても、自動的に情報を結びつけることができる手段があれば面白いかも、と考えたのだ。

まだ初期段階にあるWeavitでは、ユーザーのコンテンツを社内のような分散型ネットワークに接続することはできない。これはもっと長期的な目標である。

その代わり、Weavitのアプリに記録されたものはすべて非開示で暗号化されている(データは転送中も暗号化されるという)。

Weavitは今のところiOS版のみ。まだテストの初期段階で、アクセスコードを持つユーザーだけが利用できる。

このアプリを試したいTechCrunchの読者は、コード「braincrunch」を使ってほしい。

画像クレジット:Weavit

Markdownベースの知識管理ツールであるRoam ResearchObsidianのような、グラフデータベースを搭載した(あるいはグラフデータベースに似た)ツールがある中で、ナルワニ氏によると、Weavitはより親しみやすいアプリとしてニッチを埋めることができるという。これらの生産性アプリは、より複雑で強力である反面、特に技術的な知識を持たない一般のユーザーにとっては複雑で導入が難しい。これに対し、Weavitは、仕事や研究に関するメモだけでなく、おすすめの映画や子供の先生の名前、後で見たい特定のテーマに関するウェブサイトなど、日常的な情報を記憶し、整理してリンクしてくれる。

2020年、WeavitはFluxus Ventures(フルクサスベンチャーズ)が主導したシードラウンドで125万ドル(約1億4000万円)を調達。香港を拠点に6人がフルタイムで活動している。

最低限の機能だけを備えたアプリのプロトタイプは2021年から公開されていたが、同社はユーザーからのフィードバックをもとにアプリを再編成して、2021年12月に再ローンチした。つまり、現在公開されているバージョンは、まだApp Storeに公開されてから数週間しか経っていない。同社によると、新バージョンのWeavitは、最初の10日間で1500件のサインアップを獲得したという。

Weavitチームはウェブアプリにも取り組んでいて、ブラウジング中に画像やウェブページをキャプチャするChromeの拡張機能が間もなくリリース予定。自分の考えやアイデア、インスピレーションだけでなく、ウェブ上のコンテンツも収集できるようになる。チームはAndroidアプリも開発中である。

画像クレジット:Weavit

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

アトラシアンが自然言語理解のための独自のAIエンジンを開発するPercept.AIを買収

Atlassian(アトラシアン)は米国時間1月27日、Percept.AI(パーセプトエーアイ)を買収したことを発表した。Percept.AIはY Combinator(ワイ・コンビネーター)の2017年夏のバッチに参加したAI企業で、自然言語理解のための独自のAIエンジンをベースに、自動化されたバーチャルエージェントサポートソリューション(基本的にはチャットボット)を提供する。Atlassianはこのバーチャルエージェント技術を、ITチームが従業員や顧客に対してより良いサービスを提供するためのツールであるJira Service Management(ジラ・サービス・マネジメント)に統合する予定だ。

Crunchbase(クランチベース)によれば、Perceptは今回の買収に先立ちシードラウンドを実施し、Hike Ventures、Builders VC、Cherubic Ventures、Amino Captial、Tribe Capital、Y Combinatorなどから金額非公開の資金を得ていた。両社は、今回の買収の金額的詳細については明らかにしていない。

画像クレジット:Atlassian

AtlassianがJira Service Managementに多大な投資をしていることは間違いない。2020年には、企業のアセット管理を行うMindville(マインドビル)に加えて、Slack(スラック)ファーストのヘルプデスクチケッティングサービスを提供するHalp(ヘルプ)を買収した。また2021年にはAtlassianは、Jira Service Managementを強化するために、ノーコード / ローコードのフォームビルダーであるThinkTilt(シンクティルト)を買収した(これは、近年のJiraエコシステムに関する数多くの買収に続くものだ)。

AtlassianのIT ソリューション製品責任者である Edwin Wong(エドウィン・ウォン)氏は、サービスを拡大するためには買収だけに賭けているわけではないと語った。

「無機質な投資を行うだけではありません。私たちが行ってきたことは有機的に統合されているのです」とウォン氏はいう。「何かを買ってきて接続するだけではなく、もっと考え抜かれた戦略が必要です。何がフィットするかを考え、これまでに作られたものの上に構築して、1つの製品として統一された体験を生み出すのです。ですから『6つの異なるものを用意しました』と差し出して、お客様に『これらをまとめるには何が必要なのだろうか?』と考えていただく必要はありません。私たちが目指しているのは統合された体験を生み出すことなのです」。

画像クレジット:Atlassian

しかし、ITチームは、パンデミックの厳しい影響下でも、これまで以上に優れた顧客サービスを提供しなければならないというプレッシャーにさらされていることは間違いない。いまや企業顧客であっても一般消費者のような体験を求めているからだ。理想的にいけは、Percept.aiのような製品は、サポート質問の大部分を処理しつつユーザーにすばらしい体験を提供し、ITチームがより複雑なタスクに集中できるようにすることができるだろう。

それがJira Service Managementのような製品の目標であり、ウォン氏が述べたように、このサービスは現在、ほぼすべての業界から3万5000以上の顧客を集めている。

ウォン氏は、チームがPerceptに惹かれた理由として、サポートクエリの背後にある多くの文脈を理解できるエンジンの能力を挙げている。エンジンは内容、意図、感情を分析し、ユーザーのプロファイルと組み合わせて、パーソナライズされた応答を提供することができる。バーチャルエージェントが応答の限界に達すると、自動的に人間にインタラクションを移行する。チームは、ノーコードツールを使ってサービスの設定や調整を行うことができるが、これもPerceptがアトラシアンにとって魅力的である機能の1つだ。

今後その技術を、Jira Service Managementの中にネイティブに統合していく予定だ。一方、Atlassianはこのサービスの機能を拡張することも計画している。

「もう少し先を見据えた私たちのより広いビジョンは、あらゆる形態のサポートやサービスデスクのための統一プラットフォームを作ることです。それが私たちの究極の目標なのです」とウォン氏は説明する。「私たちは、そうした拡張が本当にさまざまな種類の製品、さまざまな機能をカバーすると信じています。例えばConfluence(コンフルエンス、JiraのWiki)スペースやそこに書かれた記事の知識を利用して、さまざまな質問に答えることはできないでしょうか?例えばTrello(トレロ、タスク管理)ボードなどの情報を利用することはできないのでしょうか?今回の買収はもちろん、お客様に優れたエクスペリエンスを提供するという、Atlassian全体のより広範な長期的ビジョンの一環なのです」。

今回の買収は短期間で行われたため(ウォン氏によると、両社は2021年末に話を始めたとのこと)、Percept.AIの既存顧客が今後どうなるかはまだわかっていない。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

画像クレジット:Peter Dazeley/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

精神疾患者向けカウンセリングAI実現のための大規模対話データベース構築に関する産官学共同研究プロジェクト

精神疾患者向けカウンセリングAI実現のための大規模対話データベース構築に関する産官学共同研究プロジェクト

精神障害者や発達障害者の教育・就労支援を行うフロンティアリンクは1月26日、日本初となる実際のカウンセリングの臨床データに基づいた大規模な対話データベースを構築し、「カウンセリングAI実現に向けたカウンセラーの効果的なコミュニケーションのパターン解析」を行うプロジェクトを開始すると発表した。これは、国立精神・神経医療研究センター東京工業大学との共同研究。また、国立精神・神経医療研究センター倫理審査の承認を得たものという(承認日:2021年11月15日、承認番号:B2021-084)。

日本では、100万人を超えるひきこもり者、400万人を超える精神障害者があり、その数は糖尿病やがんの患者数を上回るという。しかし、精神疾患の専門機関への相談は敷居が高いと感じる人が多く、カウンセリングを受けたことのない人が全体の94%に上っている(中小企業基盤整備機構。2019)。「潜在的には相談ニーズがあっても実際の相談行為に至らないというケースが多い」ということだ。

そうした潜在的相談ニーズをすくいあげるツールとして、AIがある。すでに音声アシスタントやホテルの受け付けなどで利用されている会話型AIを使うことで、相談の敷居が下げられる。場所や時間の制約も受けない。また、精神疾患者には外出が不安だったり、対人交流ができない人の場合、バーチャルのほうが自己開示しやすいという研究報告もある。

ただ、カウンセリングAIの開発には基盤となるデータベースが必要となる。研究の進んだ海外では、電子学術データベースを擁する出版社「Alexander Street Press」が体系的に整理された4000ものカウンセリングセッションの逐語データをオープンソース化するなど、対話型のAIカウンセリングシステムの発展に寄与しているが、日本では先行研究に使用できるデータが少なく、学生のロールプレイによる模擬データであったりするため、ユーザーの話を傾聴し、話を「深める」システムの発達について課題がある状況という。

そこでフロンティアリンクは、産官学共同で、実際のカウンセリングの臨床データに基づく大規模な対話データベースを構築し、このプロジェクトを開始した。ここでは、経験豊富なカウンセラーのカウンセリングデータを、600セッション収集することを目指す。また、自然言語処理、言語学、情報システム、精神医学、臨床心理学の専門家が、カウンセラーの効果的な発話の分析を行うとしている。

このプロジェクトで期待される効果には、精神疾患の重篤化を防ぐ早期発見、早期介入によるメンタルヘルスの増進のみならず、専門家の雇用促進、専門機関のネットワークの拡充、気軽に相談できる風土の促進が挙げられている。カウンセリングAIにより気軽に相談できる環境が整えば、それを通してユーザーを専門機関につなげるネットワーク作りも可能になるということだ。

画像クレジット:Volodymyr Hryshchenko on Unsplash

GPT-3に対抗してAI2がQ&Aを重視したオープンなライバルAIを披露

OpenAI(オープンエーアイ)のすばらしいAI言語モデルであるGPT-3は、多くの機能を備えているが、1750億個のパラメータを備えたそのモデルを、特にすっきりしているという人はいないだろう。このたびAllen Institute for AI(AI2、アレン・インスティチュート・フォー・エーアイ)が、GPT-3と同等もしくはそれ以上の質疑応答能力を持ちながら、サイズが10分の1というモデルのデモを行った。
AI2のモデルであるこのMacaw(マカー)は、標準的なテストで人間レベルのパフォーマンスを発揮するAIを作ることを目的として、非営利団体AI2で行われてきた研究から生まれた。

AI2の責任者であるOren Etzioni(オーレン・エチオーニ)氏は「非常に高いスコアを得た後、モデルはより難しい問題に移っていきました。人間にとって最も簡単な質問が、機械にとっては最も難しいというパラドックスがありますが、このときの最大のギャップは『常識』でした」と語る。

たとえば「トム・ハンクスが月に降り立ったのはいつですか?」と尋ねてみるのがその例だと彼はいう。GPT-3はこの質問に1995年と答える、なぜなら映画『アポロ13』が公開されたのが1995年だったからだ。しかしMacawは、私たちが知る限り、トム・ハンクスが実際に月に行ったことはないと正しく指摘する。

AI2は、その違いを示す例題(「デモ」という言葉は少し過剰な表現かもしれない)を公開しているが、その中ではトリッキーな質問やそれほどでもない質問に対してMacawの方がしばしばより良い答えを行っている。

どちらもかなりの高確率で失敗したり、不合理な答えを出したりすることがあるので、両者を比べてみるのはおもしろい。Macawは誰が何をしたかを追跡するのは得意だが、蛇には足があると信じている。GPT-3の回答は(おそらく過剰なほど)自信に満ちていてしかも読みやすいが、その内容が、新型コロナウイルスは「実験的で危険な新薬」であるというような陰謀論的なものであってもその態度は変わらない。

いくつか例を挙げてみよう。

  • 結婚生活をより安定させるにはどうしたらいいですか?
    Macaw:コミュニケーション。
    GPT-3:私なら自分が常に正しいということを確認するでしょう。
  • もしも鳥に翼がなかったら、どのような影響があるのでしょうか?
    Macaw:飛ぶことができなくなります。
    GPT-3:それは質の悪い鳥ですね。
  • クランベリージュースを自分で注いだ後、うっかりしてティースプーン1杯ほどのグレープジュースを注いでしまいました。見た目は大丈夫です。その匂いを嗅いでみましたが、風邪をひいていたので何の匂いもしません。ともあれ、あなたはとても喉が渇いています。だからそれを飲むことにします。次はどうなりますか?
    Macaw:気持ち悪くなる。
    GPT-3:たぶん死ぬ。
  • ヘビはどうやって移動するの?
    Macaw:四つん這いで進みます。
    GPT-3:ヘビは筋肉で地面を押して移動します。どの方向にも動くことができますが、後ろ向きに動くことはできません。

子どもでも答えられるような、基本的な質問に失敗しない質疑応答AIの実現はまだまだ遠そうだ。しかし、MacawがGPT-3と同程度の成功を、はるかに少ないデータ量の処理で達成していることにも注目したいと思う。エチオーニ氏は、これはGPT-3に取って代わろうとするものではなく、世界中で行われている言語の生成と理解に関する研究の新たな一歩であることを明言した。

彼は「GPT-3はすばらしいものですが、1年半前にローンチしたばかりで、アクセスも限られています」という。GPT-3が示す能力はすばらしいものの「しかし、私たちは、より少ない資源でより多くのことができることを学んでいます。たとえば1750億個のパラメータが必要となるようなものでも、私たちならおそらく100億個のパラメータでできるでしょう」とエチオーニ氏は語る。

優れた質疑応答AIは、パーティーの余興に役立つだけでなく、音声による検索などで中心的な役割を果たす。簡単な質問に外部と通信することなくすばやく正確に答えられるローカルモデルは、基本的に価値がある。たとえばAmazon Echo(アマゾン・エコー)自身がGPT-3を実行することはまずないだろう、それは、スーパーに行くために大型トレーラーを買うようなものだ。大規模なモデルはこの先も有益だが、今後はよりコンパクトなモデルが使われるようになるだろう。

ここでは示されていないものの、AI2チームによって積極的に追求されているMacawの機能の1つが、その答を説明させることだ。なぜMacawはヘビに足があると思っているのか?それが説明できないと、どこでモデルが間違ったのかがわからなくなってしまう。しかし、エチオーニ氏は、これはそれ自体が興味深く難しいプロセスであるという。

「説明の問題点は、本当に誤解を招く可能性があることです」と彼はいう。彼は、Netflixが視聴者に番組を推薦した理由を「説明」している例を挙げたが、それは複雑な統計モデルに関係した動作理由の説明ではない。人は機械に関係する説明を聞きたいのではなく、自分の心に関係する説明を聞きたいのだ。

エチオーニ氏は「私たちのチームは、こうした『誠実な説明』を開発しています」と語り、今回いくつかの研究成果を発表したものの、まだ一般に公開できる状態ではないと述べた。

しかし、AI2が開発しているほとんどのものと同様に、Macawもオープンソースだ。気になる人は、ここにコードがあるので、是非とことん遊んで欲しい。

画像クレジット:Andrii Shyp / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

突然文章が書けなくなる……、Sudowriteの強力なツールがあなたに代わって筆を走らせる

オフィスビルや工場、高層ビルが林立し、光と影が織り成す光景は、夜の街に生命の息吹を感じさせる。この都会のジャングルに生息するのが我々の卑劣なヒーロー、Amit Gupta(アミット・グプタ)だ。彼から漂うのは洗濯物とヘアジェル、そしてかすかなペパーミントの香り。シルクのスーツにはたっぷりのコロンと、革とムスクの柔らかくて暖かな香りがブレンドされている。ウールハットは明るいトーンのベージュ、ネクタイはダークトーンのピンク色だ。スタートアップ創業者である彼の肌は、生まれたての赤子のように柔らかで温かい。握手は力強く、物腰は柔らかである。深い信念を持つ彼の会社の名はSudowrite(スドウライト)だ。共同創業者の名はJames Yu(ジェイムス・ユー)。ユー氏はParse(パース)を設立し、後にFacebook(フェイスブック)に売却した人物でもある。同社は名だたるエンジェルの数々を投資家として持ち、資金調達額は3百万ドル(約3億4000万円)におよぶ。

クルマの騒音、子どもの遊ぶ声、テレビの音、ラジオの音、火災報知器の音、パトカーのサイレンの音、酔っぱらいのつぶやきなど、都会の不協和音と膨大なシンフォニーが流れる中、グプタは血も涙もないニュースを受け取った。白血病と診断されたのだ。彼の人生は完全に狂ってしまった。自分の人生を見つめ直し、自分にとって何が大切なのかを真剣に考える時が来たのだ。彼は深呼吸をしてみる。自分にはもう時間が残されていないのか、それともこれは単なる警告なのか。

Sudowriteにスタートアップとは何かを説明してもらうと、息が止まるほど笑える結果となった。実におもしろい(画像クレジット:Sudowrite)

ドローンのレンタルカメラ用の奇妙なアクセサリークリエイティブな写真マウントのアイデアで知られていた既存のスタートアップ、Photojojo(フォトジョジョ)もいまや昔のこと。会社を売却した彼は、次に何をすべきかを考えなければならなかった。会社を売却して得たお金は、薄い黒い葉のように貧弱で、悪魔の翼のようによじれている。紙のように薄く、煙のように薄く、絹のように薄く、まるで蜘蛛の巣のようだ。

ここまでの記事が奇妙に感じるのは、筆者がSudowriteというツールを使って説明文を書いたからだ。爆笑ものだが、信じられないほど強力なツールでもある。常に意味をなすとは限らないが、重要なのはそこじゃない。このツールはライターに完全に取って代わるものではなく、要約したり拡大したり、時には執筆過程で不足している創造力に火をつけるためのものなのである。この記事の最初の部分が完全に狂っていることからもわかるように、そういう意味でこのツールは非常に良く機能している。

「2014年に病気になり、人生を見つめ直すことになった時にPhotojojoを売りました。私はシリコンバレーを完全に離れて旅に出ました。自分の死ぬまでにしたいことリストにあったことはすべてやりました。しかし移植から5年が経過し、おそらく白血病で死ぬことはないだろうということになったのです」とSudowriteの創業者でCEOのグプタ氏は振り返る。「それで、じゃあこれから人生で何をしようかと考えました。しばらくはコーチングをしていました。そして、ここ数年はSF小説を書いていて、それに夢中になっていました。どん底から這い上がっていくのはとても楽しいことでしたし、私にとってはとても新しいことでした」。

SF作家としての道を歩む中で、グプタ氏はほとんどの作家が経験する問題に直面した。「ライターズブロック」である。書くという作業はここまで難しいことだっただろうか?

「Sudowrite はさまざまな問題を解決してくれると思いますが、その具体的な内容は作家ごとに異なります。私が感じるところの執筆作業における問題点の1つは、非常に孤独であるということでした。すべてが協力的なスタートアップの世界から来たためなおさらでしょうか。役に立っているのかもよくわからない週に一度の読書グループ以外には何の出口もなく、キーボードの前にただ座って行き詰まると机に頭を叩きつけ、とても孤独に感じていました。私たちが最初に考えたのは、隣に座っている創造的なパートナーのような役割を果たすものを作れないか、ということでした。行き詰まったときに彼らに向かって『これが解明できないしうまくいかない。アイデアをくれないか』と相談できる何か。それが当初の目的でした」とグプタ氏は説明する。

創業者のアミット・グプタ氏とジェイムス・ユー氏は、山頂で発見された。彼らは一般的な家猫よりも少しだけ大きく成長することで知られている。墓というよりはゴミ山のような土の中に人骨がごちゃごちゃと横たわっていて、眼窩はまっさらな空を見つめている。創設者らは下駄についた泥を払い、戦いに備えて知恵を絞る。ドラゴンの息づかいがすぐそこに迫っている(写真のキャプションはSudowriteによるもの。キャプションの正確性については確認していない)

「人間のリーディングパートナーのように、うまくアイデアを出し合える相手を作りたいと考えたのです。また、脚本家などのエンターテインメント業界の人々と話をしているうちに、特定のニーズがあることに気がつきました。例えば自分が書いた脚本があって、それの1ページ版と3ページ版を作成しなければならない場合などがあります。非常に特殊な業界の仕事ですが、AIにとってはとても簡単なことです。これはあまりクリエイティブな作業ではないため、Sudowriteのようなツールを使えば彼らがしなければならない嫌な作業を何時間も省くことができるのです。用途はたくさんあると思いますが、インスピレーションを刺激して仕事の流れを良くするのが主な目的です」。

1つの文章をSudowriteによって創造的に膨らませてみた。より細かく描写したものや、心の葛藤を表したもの、またはより簡潔に説明したもの(筆者の最も苦手とするもの)など、AIの力によってシンプルな文章からいくつものバージョンが出来上がる

グプタ氏は作家の孤独感を解消するためにSF小説のライティンググループに参加していたのだが、そこで出会ったのが共同創業者で元Parse創業者のユー氏である。2人はGPT-3をベースにしたアプリの初期バージョンをともに作りあげ、有料の顧客を獲得し始めたところで資金調達を決意した。

関連記事:Copy.aiのAI利用記事作成システムは「使える」レベルの驚異的な出来、日本語も対応

「当初このプロジェクトを立ち上げるために100万ドル(約1億1300万円)程度の資金を集めようと考えていました。最終的には300万ドル(約3億4000万円)を調達しましたが、そのほとんどが個人投資家によるものでした。これは意図的なものです。ベンチャーキャピタルからのプレッシャーを感じることなく、自分たちのペースで実験したり、奇妙なことに挑戦したりするのを許容してくれる人たちが欲しかったのです」とグプタ氏は話している。

同社のエンジェル投資家リストはそうそうたる顔ぶれで、Medium(ミディアム)およびTwitter(ツイッター)の創業者であるEv Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏、Gumroad(ガムロード)の創業者であるSahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏、Parse(パース)の創業者であるKevin Lacker(ケヴィン・ラッカー)氏、WordPress(ワードプレス)の創業者であるMatt Mullenweg(マット・マレンウェッグ)氏、Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)の創業者であるPatrick Lee(パトリック・リー)氏などが名を連ねている。また、Big Fish(ビッグフィッシュ)やAladdin(アラジン)の脚本家であるJohn August(ジョン・オーガスト)氏、Bourne Ultimatum(ボーン・アルティメイタム)やOceans Twelve(オーシャンズ12)の脚本家兼監督であるGeorge Nolfi(ジョージ・ノルフィ)氏など、エンターテインメント界の名だたるメンバーが揃っている。

現在、同社のユーザー数は300人から400人で、プラットフォームの利用料は月額約20ドル(約2300円)だ。今回の資金調達ラウンドにより、創業チームはチーム規模を少し拡張することができたようだ。

「今回の資金調達で実現したことは、何といっても人材の確保です。当社にとって初となる機械学習担当者、開発者、リードデザイナーを採用しました。この3つのポジションを確保することができましたが、しばらくはこの規模を維持するつもりです。当社のユーザーは皆、口コミで集まってきた人たちで、幅広いジャンルの方がいます。小説や脚本を書いている人もいれば、Substack(サブスタック)のニュースレターを作っている人もいます。また、職業として文章を書いているユーザーもいます。変わった使用例もあります。Sudowriteを使って説教を作る宗教指導者や、瞑想のための文書を書く人、また、ロールプレイングゲームを作るユーザーもいます。非常に幅広い層に支持されています」。

Sudowriteは、これまでクローズドベータ版を提供していたが、これからは自身でベータ版に登録して試すことが可能だ。

以下に、グプタ氏が記録したデモビデオを添付しておく。数カ月前のものだが、このツールがどう機能するのかをより詳しくおわかりいたけると思う。

画像クレジット:Sudowrite

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

何かと忙しい会議をスマート化、行動につなげやすくするAvomaが13.7億円調達

Avomaの共同創業者。左からアルバート・ライ氏、ディベンドラ・ロールカー氏、アディチャ・コタディア氏(画像クレジット:Avoma)

会議中にメモをとるのは、聞きながら入力し、その2つをしながら次にいう気の利いたことを考えるマルチタスクが求められる芸術的な技だ。アプリを3つか4つ準備して使い、会議後の行動につなげなくてはならない。

パロアルトを拠点とするAvomaは、会議中にやることや使うアプリが多すぎて抜けてしまうことがあるはずだと考えた。同社は会議のワークフローを自動化し、話し合いを行動につなげやすくするソフトウェアを開発した。

米国時間12月22日、AvomaはシリーズAで1200万ドル(約13億7000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはHeadlineで、Storm Ventures、Global Founder Capital、Zoom Apps Fund、Operator Partners、Industry Venturesが参加した。これまでに投資していたK9 Ventures、Dragon Capital、Twin Venturesも参加した。Avomaのこれまでの調達金額は1500万ドル(約17億1000万円)になった。

2017年にAditya Kothadiya(アディチャ・コタディア)氏、Devendra Laulkar(ディベンドラ・ロールカー)氏、Albert Lai(アルバート・ライ)氏が創業したAvomaは、AIを活用した会議アシスタントを開発した。このアシスタントは議題のテンプレート、メモとビデオの記録、リアルタイムの文字起こし、メモの要約、参加者に対する行動喚起の機能を備えている。

CEOのコタディア氏が以前に創業したShopalizeが2013年に顧客獲得およびエンゲージメントのソフトウェアとサービスを提供する[24]7.aiに買収され、同氏は[24]7.aiに在籍した。同氏は、Avomaを使うと週に数時間を節約でき、会議の成果は平均 30%向上するという。

同氏は次のように語る。「私はプロダクトリーダーとしてしょっちゅう会議に出席し、メモを取るのに時間を費やしていました。新しいプロダクトはお客様やプロダクトマーケティングチームの手に渡りますが、会議中はメモを取るのに忙しくてどうなっているかを聞いていませんでした。これを解決するためにテクノロジーを使って何も取りこぼさないようにしたいと思ったのです」。

Avomaの会話メモ(画像クレジット:Avoma)

生産性向上ツールは新しいものではなく、世界的なコロナ禍でみんなが在宅勤務をするようになって注目を集め、採用されている。しかしコタディア氏は、Avomaは会議管理、AIアシスタント、会話インテリジェンスを1つのツールにまとめたところが他との違いで、いくつものツールを購入し続けることがなくなると考えている。

企業のCRMと統合して情報を追加したり、会議中にいつ、誰が主に話したかを見ることもできる。さらにキーワードで検索し、その時点から録音を聞く機能もある。

コタディア氏は「AIが最初の下書きをして、その後はメモを振り返って重要なところを見つけ、必要に応じてさらに補足できます」と説明した。

Avomaは新たに得た資金をAI、ユーザーインターフェイス、ワークフロー統合の3つの柱に使う計画だ。機械学習と自然言語理解機能の改善を続けて、メモを取る機能などの利用ケースを会議のライフサイクル全般にわたって自動化していく。

プロダクト開発にも投資して、フリクションの少ない優れたユーザーエクスペリエンスを提供していく。さらにAIアシスタントや企業の既存システムとの統合についても開発を続ける。

今回はAvomaが順調に成長しているタイミングでの新たな資金調達となった。同社の売上は過去3年間で毎年400%以上成長しており、顧客数は300社を超える。

同社はこの成長を小規模なチームで実現してきた。現在の従業員数は15人で2020年12月と比べると倍増しているが、コタディア氏は今回の資金により、今後1年間で北米とインドのさまざまなポジションで従業員数を4倍にするとしている。

HeadlineのパートナーであるJett Fein(ジェット・ファイン)氏は「夢中になっている顧客」を持つプロダクトに特に関心があるという。同氏はGopuffやAvomaをそうしたプロダクトと見ており、Avomaは中堅企業に選ばれ、新しいリモートの世界でセールスのプロセスをまとめる接着剤になるだろうと考えている。実際、Headlineは社内で投資としてAvomaを使い始め「たいへん気に入りました」という。

ファイン氏は次のように述べた。「Avomaによって我々のプロセスが改善されました。我々が話をしたAvomaのお客様は夢中になっていて、多くの人がこれなしではやっていけないと言っています。お客様はAvomaを使うことで仕事の効率が大幅にアップしたと言います。そうした声を頻繁に聞いて、我々の興味は大いにかきたてられました」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

AWSがチャットボット設計の作業時間を大幅短縮できる新機能を発表

ラスベガスで米国時間12月1日に開催されたAWS re:Inventにおいて、AWSは自動化によってチャットボットのトレーニングとデザインのプロセスを簡略化する新機能、Amazon Lex自動化チャットボットデザイナーのプレビュー版を発表した。

Amazon AIの副社長Swami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、同日のAIと機械学習のキーノートで「数週間かかっていたボットの設計を数時間に短縮する新機能、Amazon Lex自動化チャットボットデザイナーを発表できることをうれしく思います」と述べた。

これは、深層学習技術を用いた高度な自然言語理解を活用することで実現している。実際、開発者は過去の通話トランスクリプトを使って設計された基礎的なチャットボットを、わずか数クリックで作成できる、とシバスブラマニアン氏は語った。

「Amazon Lexの自動化されたチャットボットデザイナーは、通常、数時間で1万行のトランスクリプトを分析し、『新しい請求をする』や『請求状況を確認する』などの意図を特定することができます。これらの意図がしっかりと分離されていて、重複していないことを確認してくれるので、試行錯誤する必要がありません」。

この自動化がなければ、非常に手作業的で面倒な開発者の仕事になってしまう、と同氏は指摘する。「チャットボットの組織設計は非常に複雑で、手作業であり、エラーが発生しやすいものです。話し言葉のニュアンスや人間同士のやりとりを理解する必要があり、このような特別な専門知識がないと、開発者はよくあるユーザーの要望や、この問題を解決するために必要な情報などを見つけるために、過去の通話トランスクリプトをすべて念入りに調べるのに何百時間も費やすことになります」。

AIの一般的なユースケースを考えると、確かにチャットボットが思い浮かぶ。新しいコンピューターの注文方法や、生まれたばかりの子どもを会社の健康保険に加入させる方法などの質問に答えるといった、社内用に設計されている場合もあれば、重要な情報を収集して簡単な質問に答え、複雑な質問は人間のカスタマーサービス担当者につなげる顧客サービスのフロントエンドとして機能する場合もある。

より精度の高いチャットボットを簡単に作れるようにするために、多くのスタートアップが取り組んでいるが、Amazonのような企業にとっては、顧客が他のAIや機械学習プロジェクトと合うプラットフォーム上のソリューションを求めているかもしれず、敷居の低いものとなっている。

Amazon Lexの自動化されたチャットビルダーは、本日からプレビューで利用できる。開発者は、プレビュー段階ではこの機能を無料で使用することができるが、一般提供が始まると、ツールがトランスクリプトを分析して意図を特定するのにかかる時間に応じて課金される。

画像クレジット:Amazon

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

AWS第3のカスタムチップ「Trn1」は機械学習モデルのトレーニングを高速化

顧客のワークロードのパフォーマンスを上げるためにカスタムチップに頼る企業が増えているが、Amazonもその例外ではない。同社は2019年に、機械学習の推論学習を高速化するためにInferentiaチップを導入した。その後、同社は2020年に機械学習のモデルの学習専用である第2のTrainiumチップをローンチした。そして本日、AWSはこれまでの流れの続きとして、最新の機械学習チップ「Trn1」を発表した。

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初めてAWS re:Inventのキーノートを担当するAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏は米国時間11月30日、最新のチップに関する発表を行った。

「Trainiumからパワーをもらっている新しいチップ、Trm1を発表できることに、私はワクワクしています。Trm1はクラウドでディープラーニングモデルをトレーニングするための最高のコストパフォーマンスと、EC2での最速のパフォーマンスを提供してくれるでしょう」とセリプスキー氏は語った。

続けて「Trn1はEC2のインスタンスとしては初めて、最大で毎秒800ギガバイトの帯域を提供します。そのため、大規模なマルチノード分散型トレーニングのユースケースには絶対に最適です」という。これは画像認識、自然言語処理、不正検知、予測などのユースケースに有効なはずだとのことだ。

さらに、これらのチップをネットワーク化して「ウルトラクラスター」とすることで、より強力なパフォーマンスを発揮することができる。

「これらを一緒にネットワーク化して、何万もの訓練アクセラレーターがペタバイト規模のネットワーキングへ相互接続した状態を、私たちは『ウルトラクラスター』と呼んでいます。そうしたウルトラクラスターの訓練を、強力な機械学習スーパーコンピューターが行い、パラメータが何兆個もあるような複雑な深層学習のモデルでも快速で訓練できます」とセリプスキー氏はいう。

セリプスキー氏によると、同社はSAPなどと協力して、この新しい処理能力の利用を追究していく計画だとのことだ。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Verbitの文字起こしプラットフォームは人工知能と人間の知能を組み合わせて高い精度と早い納期を実現

1億5700万ドル(約178億6000万円)を調達したシリーズDラウンドからまだ半年足らずにもかかわらず、AIを活用したトランスクリプション&キャプションのプラットフォームであるVerbit(ヴァービット)は、同社を20億ドル(約2275億円)と評価するシリーズE投資ラウンドを、2億5000万ドル(約284億3000万円)でクローズしたと発表した。今回の資金調達により、同社の資金総額は5億5000万ドル(約625億6000万円)を超えた。

この新たな投資ラウンドは、Third Point Ventures(サード・ポイント・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるSapphire Ventures(サファイヤ・ベンチャーズ)、More Capital(モア・キャピタル)、Disruptive AI(ディスラプティブAI)、Vertex Growtht(ヴァーテックス・グロース)、40North(フォーティノース)、Samsung Next(サムスン・ネクスト)、TCPが参加した。

VerbitのCEO兼創業者であるTom Livne(トム・リブン)氏は、この資金を製品開発への投資と、垂直方向および地理的な拡大の継続に使用すると述べ、買収戦略も倍増させると付け加えた。

シリーズEをクローズしたことで、Verbitは近い将来に予定されているIPOに一歩近づいたと、上場計画について訊かれたリブン氏は答えた。

Verbitは、それまで法律の分野でキャリアを積んでいたリブン氏によって2017年に設立された。リブン氏は、テープ起こしの納期の遅さに不満を感じることが多かったが、弁護士としてその問題に正面から取り組むためのツールを持っていなかった。そこで同氏は、AIを活用したトランスクリプションとキャプションのプラットフォームを提供するスタートアップを設立し、AI駆動の自動トランスクリプションサービスとプロのトランスクリプターを結合させた。

約300億ドルと推定されるトランスクリプション業界は、非常に細分化されており、小さな家族経営の会社がたくさんある。この市場は統合の準備ができていると、リブン氏はTechCrunchにメールで語り、Verbitは5月に、2番目の買収先であるVITACを5000万ドル(約56億7000万円)で買収完了したと付け加えた。

Verbitのプラットフォームの特徴は、人工知能と人間の知能の両方の力を利用して、業種に特化したトランスクリプションやキャプションを提供し、各業界に適したソリューションを構築していることだと、リブン氏はいう。

「当社のAIは、特定の業種や顧客に基づいてトレーニングされているので、当社のプラットフォームは、時間の経過とともに改善されるカスタムモデルを構築することができます。つまり、Verbitの顧客は、法律、教育、メディア、企業などの分野にいて、それぞれに、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)やSOC IIコンプライアンスなど、独自の業界固有の規制や基準に準拠したトランスクリプションやキャプションを提供することができるということです」と、リブン氏は述べている。

さらに、機械学習と自然言語処理(NPL)を用いたモデルにより、99%以上の精度と、業界標準より10倍も早い納期を実現していることも、同社の大きな差別化要因であると、リブン氏は語った。

Verbitは、メディア、教育、企業、法律、政府機関など、2000社以上の顧客にサービスを提供している。リブン氏によれば、その顧客の中には、CNN、Fox(フォックス)、Disney(ディズニー)、Coursera(コーセラ)、Stanford(スタンフォード)、Harvard University(ハーバード大学)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、AT&Tなどが含まれるという。

同社は急速に成長しており、前年同期比で6倍の収益成長を遂げ、年間の経常収益は1億ドル(約113億円)を超えていると、リブン氏は続けた。また、同社はキャッシュ効率に優れ、163%という高い顧客維持率を誇っており、これらは顧客からの信頼を示す重要な指標であると、同氏は付け加えた。

同社がトランスクリプションの分野で競合する企業として、リブン氏はRev.com(レブ)や3Play Media(スリープレイ・メディア)の名前を挙げた。

英国とオーストラリアで強い存在感を示しているVerbitは、ドイツ、フランス、スペインなど、欧州へのさらなる拡大を計画していると、リブン氏は述べている。これらの国々は、かなりのインバウンド関心が見られるため魅力的であると、リブン氏は付け加えた。

「市場機会は非常に大きく、業界リーダーとしての当社の立場を考えれば、我々はこれらの市場に迅速に参入することができます」と、リブン氏はいう。

Verbitは、ニューヨーク、コロラド、ピッツバーグ、パロアルト、カナダ、テルアビブ、キエフの470人を超える従業員と、世界中に3万5000人のフリーランスのトランスクリプターと600人のプロのキャプション担当者を擁している。

「今回の資金調達は、トランスクリプション分野におけるマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにする当社の能力に対する信頼の証です」と、リブン氏は語る。「この業界を近代化するための強力な技術プラットフォームを構築し、垂直統合された音声AIソリューションを構築する当社の戦略は、私たちのお客様に多大な価値をもたらし、お客様のビジネスをよりわかりやすいものにしてきました」。

「Verbitは、トランスクリプション市場において卓越した技術によるオーガニックとインオーガニックの成長を兼ね備えた特別な企業です」と、Verbitの取締役会に加わるThird Point Venturesのマネージングパートナー、Rober Schwartz(ローバー・シュワルツ)氏は述べている。「このような大規模で断片化された市場で、デジタルトランスフォーメーションと同時進行の統合の機が熟している時に遭遇できるチャンスは、滅多にありません」。

画像クレジット:Verbit

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Google Cloudが自然言語処理スタートアップCohereと提携しインターフェースの革新を目指す

Google CloudCohereとの複数年のパートナーシップを発表した。このアーリーステージスタートアップは、デベロッパーが自分のアプリケーションに自然言語処理(NLP、Natural Language Processing)をさまざまなかたちで組み込めるために、そのプラットフォームを提供している。ソリューションはインフラストラクチャのリソースを大量に必要とするため、Google Cloud Platform(GCP)がパートナーシップに基づいてそれらを提供していくことになる。

両社はまた、市場化のための取り組みも共同で計画し、それによりCohereはスタートアップとしての力をつけ、GCPの営業チームの力を借りてそのユーザー数や売上を伸ばしていく意向だ。

Google CloudのCEOであるThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏によると、CohereはGoogle CloudのTensor Processing Unit(TPUs)チップのすばらしいユースケースを提供しており、Googleが内部で行ってきたことをベースとして利用している。

「第一に、これは私たちがGoogleで自分たちが使うために作ってきた技術の完璧な例です。私たちは現在、それらを他のプラットフォームが利用できるようにクラウド上で提供していません。しかしCohereのケースでは、利用できる能力を彼ら自身が見つけて、モデルを構築し、それらをTPUsの上で訓練しています。そのことによって彼らには、極めて差別化された能力が備わっています」とクリアン氏はいう。

Cohereの共同創業者でCEOのAidan Gomez(エイダン・ゴメス)氏は以前Google Brainにいた。同氏によると、彼の企業は、この高度なテクノロジーをすべてのデベロッパーが利用できるためのNLPソリューションを作ろうとしている。「私たちは大量のデータをほじくり返して巨大なモデルを作り、それらをTPUの巨大なポッドで訓練しています。また、その極端に大きなモデルをほとんどどんなプロダクションシステムでもレイテンシーの許容範囲に収めるために、最適化にも努めている」と語る。

彼によると、ワークロードを最適化することによって、Cohereはこの高度な技術のすべてへのアクセスをオープンにし、デベロッパーがモデルにアクセスでき、Cohereが提供しているモデルに基づいてNLPベースのソリューションを構築できるようにしている。今起こりつつある重要なシフトは、テキストベースのUIから、自然言語による対話的なインターフェースへの移行であり、Cohereなどはその変化の動因の1つだ。

クリアン氏は続けて「今の最先端技術では、大多数の人たちのコンピューターの使い方がGUIや画面を介するものになりつつあります。しかし多くの人は、コンピューターをたった1つの使い方で体験したいとは思っていません。彼らはコンピューターといろいろな方法、しかも自然な方法で対話したいと望んでいるため、人びとがシステムと対話する方法の進化の次の大きな段階は言葉だ」という。

三大クラウドのCEOが、ただのいちスタートアップとの提携で記者発表を行なうなどまずあることはない。しかしクリアン氏によると、TPUの使い方としてこれは特別に強力でクリエイティブな例だ。「Cohereの技術を実際に使ってみれば、それがとてもエレガントに動くことに気づくでしょう。それは、Aidanのチームが作ったソフトウェアと、TPUが提供する計算インフラストラクチャの組み合わせによるものだ」とGoogle Cloudのトップはいう。

Cohereは2019年に、ゴメス氏とNick Frosst(ニック・フロスト)氏とIvan Zhang(イワン・チャン)氏がトロントで創業した。同社はこれまで、Index VenturesやRadical Ventures、Section 32、そしてAIエンジェルの人名録のトップを飾るような著名エンジェル、Geoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)氏やFei-Fei Li(フェイ・フェイ・リー)氏などから、計4000万ドル(約45億7000万円)を調達している。

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NVIDIAが多機能でリアルなAIアバター・AIアシスタントが作れるプラットフォーム「Omniverse Avatar」を発表

NVIDIAは11月9日、仮想コラボレーションとリアルタイムシミュレーションのためのプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」(オムニバース)上で使えるインタラクティブなAIアバターが作れる機能「Omniverse Avatar」(アバター)を発表した。

Omniverse Avatarは、単にインタラクティブに動かせるレンダリングされた3Dキャラクターを作るだけではなく、音声、AI、自然言語理解、レコメンデーションエンジン、シミュレーションといったNVIDIAのテクノロジーが駆使され、見たり、聞いたり、多言語で話したりができるAIアシスタントとして機能する。NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・フアン氏はこれを、「インテリジェントな仮想アシスタントの夜明け」と称している。

NVIDIA Omniverseの新機能として追加された「Omniverse Avatar」には、次の要素が盛り込まれている。

  • 音声認識:複数言語の音声を認識するソフトウェア開発キット「NVIDIA Riva」をベースに会話の応対を行う
  • 自然言語理解:「NVIDIA Megatron 530B大規模言語モデル(Large Language Model)」をベースに、複雑な文書の作成、幅広い分野の質問への回答、長いストーリーの要約、他言語への翻訳などを行う
  • レコメンデーション エンジン:大量のデータを処理し、賢明な提案を行うことを可能にするディープラーニング レコメンデーション システムを構築するためのフレームワーク「NVIDIA Merlin」を利用
  • 認知機能:ビデオ分析用のコンピュータービジョン・フレームワーク「NVIDIA Metropolis」を活用
  • アバターのアニメーション:2Dおよび3DのAIによるフェイシャルアニメーションとレンダリングの技術「NVIDIA Video2Face」と「NVIDIA Audio2Face」を使用
  • これらの技術がアプリケーションに組み込まれ、「NVIDIA Unified Compute Framework」を使ってリアルタイムで処理される

フアン氏のアバターを使ったデモでは、同僚とのリアルタイムの会話が披露され、生物学や気象科学などの話題について語った。また、別のデモでは、レストランの2人の客にカスタマーサービス担当アバターが対応し、ベジタブルバーガーとフライドポテトと飲み物の注文を受けることができた。さらに、騒々しいカフェでビデオ通話をする女性の音声を正確に聞き取り、その言葉をリアルタイムで書き写し、その女性と同じ声とイントネーションで、ドイツ語、フランス語、スペイン語に翻訳して見せたとのことだ。

Tableauが自然言語で質問してSlack内でデータのクエリができる統合機能を発表

組織全体にわたって多くの人がデータをもっと利用しやすくすることを目指すTableauが、米国時間11月9日の#Data21カスタマーカンファレンスで、自然言語で質問するとSlack内でデータのクエリができる機能を発表する。これは、Slackとのこれまでの統合をさらに発展させるものだ。

最高製品責任者のFrancois Ajenstat(フランソワ・アジェンスタッド)氏は米国時間11月8日、カンファレンスに先立って開催されたプレス対象のイベントで、この新たな統合によりTableauのデータのフルパワーをSlackで利用し、さまざまな方法で共同作業ができると述べた。注目しているデータが変化したときにアラートを受信し、しかもアプリを切り替えることなくSlack内でデータを扱える。

同氏は「Slackがデータについて問い合わせをする場にもなるので、1つのインターフェイス上ですべてのコンテンツが見つかります。Slackを離れる必要はありません。Tableauのリポジトリ全体を検索できます。すべてのダッシュボード、すべてのデータソースをSlackで利用できるのです」と説明した。

重要なのはデータのクエリができることだ。同氏は「見たいものを見つけたらすぐに質問(の入力)を開始できます。この場合、Tableauの自然言語クエリインターフェイスである『Ask Data』を用いて、自然言語で質問します。本当に簡単で誰にとっても使いやすいものです」と述べた。

Amalgam InsightsのCEOでチーフアナリストのHyoun Park(パク・ヒョウン)氏は、実はこの統合は以前にTableauが発表したAsk DataやExplain Dataなどの機能をベースにしていると述べている。同氏は、こうした機能、特にクエリの機能によって、これまではデータを深く扱うことがなかった人々にもデータ分析の扉が開かれると考えている。

パク氏は筆者に対し「自然言語を使う分析ソリューションとSlackの統合にはThoughtSpotなどがありました。しかしSlackとTableauを簡単に連動し、自然言語で幅広い分析ツールを利用できる機能はこれまでで最大級のニュースで、データのスキルを身につけているわけではない多くの人々がTableauの分析結果を深く検討できるようになります」と語った。

同氏は、Tableauのこのようなアプローチはデータを広く活用できるようにするだけでなく、本質的にはSlackをTableauのコアプロダクトのユーザーインターフェイスにするものだと述べ、この機能はTableauでSalaeforceのAIエンジンを活用するためのEinstein Discovery for Tableauもベースになっていると指摘した。

TableauはEinsteinの機能について「仕事の流れの中で予測をするものです。ビジネスパーソンは重要度の高いデータに対してAI予測を実行し、主な要因を特定して次のアクションを提案するインテリジェントな予測を得ることができます」としている。

Salesforceは2019年に157億ドル(約1兆7700億円)でTableauを買収し、2020年末には270億ドル(約3兆480億円)でSlackを買収した。このような巨額な買収をしたとあってSalesforceが高価な買い物をうまく組み合わせようとするのは当然で、今回の発表はSalesforceプラットフォーム全体のさまざまなところでSlackをインターフェイスにしようとする取り組みの1つだ。

Salesforceは2021年8月にSalesforce製品ファミリーとSlackの初の統合を発表し、Slackは同年9月にさらに別の統合を発表していた。

画像クレジット:Tableau

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

CoinbaseがAI駆動型カスタマーサポートの印Agaraを約45億円超で買収へ

Coinbase(コインベース)は、AI駆動のカスタマーサポートプラットフォームを運営するスタートアップAgara(アガラ)を買収する。両社が米国時間11月2日に発表した。暗号資産(仮想通貨)取引所であるCoinbaseは、ユーザーがサービスを利用したりサポートを求めたりしやすくしようとしているようだ。

両社は買収に関する財務面での詳細を明らかにしなかったが、取引の規模は4000万〜5000万ドル(約45億〜56億円)の間だとこの件に詳しい2人が筆者に語った。Coinbaseの広報担当者はコメントを控えた。また、Agaraの共同創業者で最高経営責任者のAbhimanyu(アビマニユ)氏も、守秘義務契約を理由に取引規模についてのコメントを却下した。

データインテリジェンスプラットフォームのTracxnによると、インドで創業して4年目のAgaraは、今回の買収前にBlume Ventures、RTP Global、UTEC Japan(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、Kleiner Perkinsから約700万ドル(約8億円)を調達していた。

Agaraは機械学習と自然言語処理に関する深い専門知識を構築し、それをユーザー体験の向上に役立てている。40人以上の従業員を擁する同社は、世界中に複数の大口顧客を抱え、Salesforce、Shopify、Twilioなど多くの人気サービスに統合されている。買収後、AgaraはCoinbaseにフォーカスを移すとアビマニユ氏はTechCrunchとのインタビューで答えた。

「我々は、大きく分けて2つのことに注目して会社を立ち上げました。1つはカスタマーエクスペリエンスとサポート。2つ目は機械学習です。MLテックスタックを作り、それをカスタマーケアに応用するという考えでした」とアビマニユ氏は話す。「我々が行っている複雑な業務の中には、電話での問い合わせがあります。電話によるサポートのすべてではないにしても、その多くを自動化することに取り組んできました」と述べた。

同氏によると、Agaraのテックチームは、その大部分がインドで勤務しており、買収の一環としてCoinbaseに加わる。両社は年内に取引を完了する予定だ。今回の動きの数カ月前に、Coinbaseはインドにテックハブを構築する戦略を打ち出し、Google Payの元幹部であるPancaj Gupta(パンカジ・グプタ)氏を採用していた。

「Agaraの強力な技術を活用して、当社のカスタマーエクスペリエンス(CX)ツールを自動化し、強化する計画です。ここ数カ月でサポートスタッフの人数を5倍に増やし、年末までに24時間365日の電話サポートとライブメッセージを提供することを発表しました。今回の買収により、パーソナライズされたインテリジェントでリアルタイムなサポートオプションを顧客に提供することができるようになります」とCoinbaseのエンジニアリング担当EVPであるManish Gupta(マニッシュ・グプタ)氏は声明で述べた。

画像クレジット:TechCrunch / Flickr

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

バーチャルアシスタントが慢性疾患に関する質問に答える仏Wefight、約13.2億円調達

Wefightはフランスのスタートアップ企業で、慢性疾患に苦しむ人々を支援するために10種類以上のアプリを開発している。基本的なチャットボットのインターフェースを使って、人々は自分の病気について質問し、答えを得ることができる。

同スタートアップはこのたび、Digital Health VenturesとImpact Partners、そして既存の投資家であるInvestir&+とBADGEのビジネスエンジェルから1160万ドル(1000万ユーロ、約13億2000万円)の資金調達を実施した。

Wefightは、慢性疾患ごとに異なるアプリを開発した。それらはすべて、Vikという同じバーチャルアシスタントをベースにしている。現在、うつ病、喘息、複数のタイプのがんなどに関するアプリが10数種類ある。

Vikは基本的に、患者とWefightのコンテンツとの間のインターフェースとして機能する。自然言語処理技術から、Wefightが新しいアプリを作るために活用するフレームワークまで、すべて自社で開発している。

患者が質問をするたびに、このサービスは質問の意味を理解しようとし、知識データベースから関連する情報を見つけ出す。

そして、コンテンツを中継して患者に提供する。コンテンツはプロの薬剤師によって書かれており、できるだけ情報を提供し、中立的な立場であることを心がけている。これにより、必ずしも次の診察日を待たずに、自分が持っている質問のリストを見ていくことができる。

共同設立者兼CEOのBenoit Brouard(ブノワ・ブルワール)氏はこう語った。「Vikは、ケア経路の誰かを置き換えるものではありません。ギャップを埋めるためにあるのです」。

ギャップがあるのは確かなようだ。これまでに、40万人以上の人がこのサービスを利用している。Vikは500万件の回答を配信しているという。Wefightでは今、70人のスタッフが働いている。Wefightは、患者団体とつながることで、新しいユーザーを見つけようとしている。

ビジネスモデルとしては、製薬会社と協力して新しいアプリに資金を提供している。治療法を商業的に成功させるためには、患者が自分の患っている慢性疾患を特定できるようにする必要がある。そして、Vikはトップオブファネルのコンテンツプロバイダーとしての役割を担っている。

「当社は、臨床的惰性(Clinical Inertia)を減らします。臨床ラボが『Vik Asthma』への融資を決定した場合、そのラボは私たちが作成するコンテンツに影響を与えることはありません」とブルワール氏はいう。「そうしたラボ(製薬会社)は、喘息に苦しむ患者さんに呼吸器科医の診察を受けてもらいたいと思っているのです」。

そうすれば、特定の薬を購入する可能性のある患者の数が増える。製薬会社にとっては複雑な販売戦略だが、Vikのような方法は、患者の生活の質を向上させる可能性がある。

10月25日の資金調達により、同社はベルリンに新しいオフィスを構え、他の国への進出を計画している。Wefightは、新しい市場でアプリを発売するたびに、現地の医療従事者を雇用し、現地の患者団体と関係を作る。長いプロセスだが、そうやってWefightは世界中の患者に正しい情報を提供することができるのだ。

画像クレジット:Wefight

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

バーチャル会議が多い人のための新しいカレンダーアプリ「Hera」、自然言語処理でスケジューリングを簡単に

カレンダーを仕事のメインのインターフェイスにすることを目指すアプリ、Heraを紹介しよう。Heraは自然言語処理で会議のスケジューリングを簡単にし、あなたの空いている時間をメールやメッセージングアプリで共有する。それ以外の業務用ツールとの統合も進められているので、会議前に重要な情報を確認し、会議後に情報を取り出すこともできる。

Heraは、Eurazeo(当時のブランド名はIdinvest)と数人のビジネスエンジェルによるプレシードラウンドで46万5000ドル(約5300万円)を調達した。その後、YコンビネーターのS21期に参加し、Eurazeoが主導するシードラウンドで170万ドル(約1億9000万円)を調達した。

Heraに投資したビジネスエンジェルには、Alexis Bonillo(アレクシス・ボニーロ)氏、Thibaud Elzière(ティボー・エルジエール)氏、Kyle Parrish(カイル・パリッシュ)氏、Calvin French-Owen(カルヴァン・フレンチ・オーウェン)氏、John Gabaix(ジョン・ガベックス)氏、Karthik Puvvada(カールティック・プバダ)氏がいる。他にNotion CapitalとKima Venturesも投資した。

もともとHeraは会議中にメモをとることを主眼としたカレンダーアプリとしてスタートした。Yコンビネーターに参加した後、プロダクトは大幅に進歩した。現在は、たくさんの(バーチャル)会議に関わる多忙な人がイベントのライフサイクル全体を管理するアプリになっている。

まず、Heraは会議の予定を立て、準備をするのに役立つ。わずか数クリックで複数の時間帯を選択できる。その後、わかりやすいテキストが自動で生成され、このテキストをコピーして、メールやWhatsAppの会話など次の会議について話している場のどこへでもペーストできる。

これはメッセージを受け取る人にとって、これまでの会議スケジューリングツールよりもずっと親しみやすいインターフェイスだ。発信元の人はリンクを生成する必要がなく、相手はリンクをクリックして会議の日時を確認する必要がない。

画像クレジット:Hera

次に、Heraは今後の会議の関連情報を取り出す。会議をする相手に関する情報はすでにたくさんあるはずだ。メールを送受信したりする他、CRMを使っているかも知れないし年に数回会っているかも知れない。

共同創業者でCEOのBruno Vegreville(ブルーノ・ベグレビル)氏は筆者に対し「我々はプロジェクト管理プラットフォームになるつもりはありません。ユーザーがすでに使っているツールと統合しようとしています」と述べた。

Heraを使って会議の前に大切なことを忘れないようにメモを作成することができる。会議中にメモを追加し、その後はこのデータをNotionなどメモを記録するアプリに書き出せる。

画像クレジット:Hera

現時点ではHeraはGoogleカレンダーをレベルアップしたい人に最も向いている。今後は複数人数で使えるコンポーネントが追加される予定だ。例えば自分と相手の両方がHeraを使っていればスケジューリングがもっと楽になるだろう。自分のカレンダーから直接、他のHeraユーザーに言及して会議のフィードバックをもらうことも想像できる。

ここ数カ月間、Heraはプライベートベータだった。同社のビジョンは明確だ。Superhumanなどの生産性ツールはスレッドを整理して受信メールに対応する際の効率を上げてきた。会議をスレッドと考えれば、HeraはカレンダーのSuperhumanになる可能性がある。

画像クレジット:Hera

画像クレジット:Hera

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

コンピュータービジョンにとどまらず企業の非構造化データを管理するClarifaiが68億円調達

Clarifai(クラリファイ)は、開発者、ビジネスオペレーター、データサイエンティストの日常に人工知能を導入し、モデル開発の自動化と高速化を実現を目指している。

Matt Zeiler(マット・ザイラー)氏は2013年、ニューヨークを拠点とし、コンピュータービジョンに特化した同社を創業した。2016年の3000万ドル(約34億円)のシリーズB以来、画像、ビデオ、テキスト、オーディオデータファイルといった企業の非構造化データを対象とした新機能や製品を展開している。

新機能には、自然言語処理、音声認識、スキャン、そして2020年発表した自動データラベリング機能「Scribe」などがある。また、高出力サーバーからカメラ、ドローンまで、さまざまなローカルハードウェアを使用して、データストリームの上にAIを重ねる「Edge AI」機能も展開している。同社は、10月20日に開催される深層学習の年次カンファレンス「Perceive 2021」で、さらに多くの情報を公開する予定だ。

こうした活動の中で、またこれらを継続すべく、Clarifaiは10月15日に6000万ドル(約68億4000万円)のシリーズCラウンドを発表した。New Enterprise Associatesが主導し、既存の投資家からMenlo Ventures、Union Square Ventures、Lux Capital、LDV Capital、Corazon Capital、NYU Innovation Venture Fund、新規の投資家としてCPP Investments、Next Equity Partners、SineWave Ventures、Trousdale Capitalが参加した。今回のラウンドで、同社の資金調達総額は1億ドル(約114億円)に達した。

「私たちは、追加の資金調達をせずに、なんとか長い間を過ごしてきました」とザイラー氏はTechCrunchに語った。「当社は、コストを抑えて効率的に運用しながら、収益を大きく伸ばしてきました。そして、チャンスを迎え、資金を調達しました」。

そのチャンスには、優れた法人向け販売チームを立ち上げることも含まれていた。会社設立当初は市場が未成熟だったため、中小企業や個人への販売から始めた。現在では、市場の成熟化に伴い、フォーチュン500の企業と取引を行っている。

同社にとって「非構造化データ」とは、画像や動画、テキストなど、人間の脳は得意とするが、コンピューターは苦手とするデータのことだ。実際、企業のデータの95%は非構造化データであり、Clarifaiに「大きなチャンス」をもたらしているとザイラー氏は話す。

そうしたシグナルを大企業が市場に発するようになったタイミングで、シリーズCを実現した。また、同社はSnowflakeと提携し、Snowflakeが最近リリースした非構造化データ支援とClarifaiを連携させるための統合を行った。

「Snowflakeは、構造化データに関して1000億ドル(約11兆円)規模のビジネスを展開していますが、今は非構造化データにも取り組んでいます」とザイラー氏は付け加えた。「顧客がSnowflakeでデータを保存している場合、そこから価値を得ることができますが、それを意味のあるものにするためにはClarifaiのAIが必要です」。

Clarifaiの製品パイプライン。画像クレジット:Clarifai

一方、同社は2020年1年間で収益を2倍以上に伸ばし、ユーザー数も13万人を突破した。今回のシリーズCの資金調達により、現在100人のグローバルチームの規模を来年までに倍増させる計画だ。

また、営業やマーケティング、国際的な事業拡大にも投資する。同社は、すでにエストニアにオフィスを構えているが、ザイラー氏は多くの顧客を獲得しているオーストラリア、インド、トルコも視野に入れている。また、最初の顧客を獲得したばかりのEdge AI製品にも引き続き取り組む。

今回の投資の一環として、NEAのパートナーであるAndrew Schoen(アンドリュー・ショーン)氏がClarifaiの取締役会に加わる。同社は数年前から注目されていたが、ショーン氏は当時、投資には早すぎると感じていた。

「最初の頃、AIの風は構造化データを中心に吹いていました。データの90%は非構造化でしたから、これはすぐに手に入る果実だと言えました」とショーン氏は語った。「エコシステムが成熟した今、企業は構造化データからできる限りのことを絞り出したことがボトルネックになっていることに気づきました。今、企業の手元には使えない非構造化データが残り、それがきちんと整理されていません。Clarifaiは、この問題を解決することを目的としています」。

ショーン氏は、ClarifaiがAIと機械学習を解明し、民主化すると考えている。同社は早くから非構造化データに着目していたため、アーリーアダプターを獲得することができた。現在ではこの分野をリードしている。

さらにショーン氏は、同社の収益予測は過去12カ月の間に変曲点を迎え、ビジネスは「順調に成長している」という。

「Clarifaiはこれまで、顧客を獲得し、市場を教育しなければなりませんでした。今では市場に対して自社の製品をプッシュするのではなく、プル型になっています。企業側がソリューションを探し、Clarifaiが適切な製品だと見ているのです」と付け加えた。

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIコピーライティングツールのCopy.aiが2021年2回目の資金調達を完了

Twitter(ツイッター)でCopy.ai(コピーエーアイ)を発表してから1周年を迎えた同社が、再び資金調達ラウンドを確保した。Copy.aiは、GPT-3 AIを搭載し、ビジネス顧客向けにコピーライティングツールを生成するプラットフォームだ。

同社は1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズAラウンドを引き寄せた。Wing Venture Capitalがリードし、既存投資家からCraft VenturesとSequoia、新規投資家としてTiger GlobalやElad Gilなどが参加した。3月に発表した290万ドル(約3億3000万円)のシードに続くラウンドとなった。資金調達総額は1390万ドル(約15億8000万円)に達した。

Copy.aiのソフトウェアは月額35ドル(約4000円)かかる。例えば、数行の文章をもとにブログ記事のアウトラインを用意したり、Facebook広告用のリンク説明文を作成したり、さらには会社のモットーを作り出すこともできる。

CEOのPaul Yacoubian(ポール・ヤコビアン)氏とChris Lu(クリス・ルー)氏が共同で創業してから1年、まだ利益は出ていないが、年間経常収益はゼロから240万ドル(約2億7000万円)に増えた。また、従業員も3人から13人になったと、ヤコビアン氏はTechCrunchに語った。

2021年初めに資金を調達したものの、ヤコビアン氏とルー氏はシリーズAの時期がきたと感じていた。チームを拡大し、新しい製品機能実現に向けエンジニアを増員するためだ。最近の機能としては、ユーザーがアプリ内で直接、考えを整理したり、アイデアを保存したり、メモを編集したりすることができる「Editor」がある。Copy.aiは、長編コンテンツ制作のための製品も開発している。

「AIはパターンマッチングに長けており、ビジネスに関する情報を多く与えると、そのビジネスが何なのかを推定することができます。そのため、私たちはチーム製品も開発しています。AIがより多くを学習すると、他のビジネスユーザーを招待して登録することができます」とヤコビアン氏は付け加えた。

同社は、新たな資本を採用に投入する。完全なリモートチームで、全国に従業員がいる。eBay、Nestlé、Ogilvyなど、すでに30万人以上のマーケターがCopy.aiのツールを利用している。シードラウンド以降、25万人以上が無料トライアルに登録し、5000人以上のプレミアム顧客を抱える。

ヤコビアン氏によると、Copy.aiはAIによる自然言語生成に早くから取り組んでいる。まだ表面的なものにすぎないため、今後もアプリのコアとなる体験や生成するテキストの質を向上させていくとのことだ。

創業者らは、Wing Venture CapitalのパートナーであるZach DeWitt(ザック・デウィット)氏とも意気投合した。ヤコビアン氏によると、デウィット氏は、Copy.aiのビジョンと人工知能がどれほどマーケターの役に立つかを理解しているという。

「AIのクリエイティブな能力を前にして、自動化が仕事を奪うという話はよく聞きますが、自分や自分の会社のために価値を生み出すという語り口はあまり聞きません」とヤコビアン氏は話す。「AIが進化すれば、エンパワーメントの源となり、無限の可能性を秘めたもう1つのツールとなるでしょう。人的資本を解放し、フルタイムの代理店を雇う余裕のない小規模な企業に対し、迅速でシンプルな問題解決ツールを提供できる点が興味深いと思います」。

デウィット氏は、デジタル化の進展とともに、顧客はオンラインへ移行する一方であり、企業はニュースレター、ブログ、ソーシャルメディア、電子メールなど、顧客が読むものに合わせて対応する必要があると述べた。

同氏は、Copy.aiを利用する中小企業の顧客と話をする中で、書かれたコンテンツの量に圧倒されている人がいること、また、マーケターや創業者が優れたコピーを書けるようにするには、AIを利用するのが最適であることを感じたという。

デウィット氏自身、この製品を使って、最初の社内向けのメールを作成した。また、毎週ブログを書き、Twitterでも活動しているため、ブログ記事のアイデアやコンテンツのフォーマットを考える際にCopy.aiの製品を重宝しているという。

さらにデウィット氏は、Wing Venture Capitalが出会った若い会社の中でも、Copy.aiは最も急速に成長している会社の1つだと付け加えた。また、ソーシャルメディアを活用し、Copy.aiの諸数値を公開している。それがロイヤリティを生むとともに、当初Wingがこの会社に惹かれた側面を他の人も公に知ることができる。

「今回のラウンドは大幅な申し込み超過でした。会社への関心の高さ、チームの質の高さ、勢いの強さを感じていただけると思います」とデウィット氏は付け加えた。「クリスとポールには、将来の成功のために投資家を選ぶ贅沢がありました」。

画像クレジット:Copy.ai

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヘルスケアデータを構造化するScienceIOがステルス状態から脱出

Gaurav Kaushik(ガウラブ・カウシク)氏は、混乱した医療データの世界を整えるために今回立ち上げたステルス事業の数年前からすでに、より良い視覚化が医療結果にどのような影響を与えるかについて、少しずつ構想を深めていた。2018年にこの新進起業家は、ボストンのがん研究企業ならびにFlatIron Health(フラットアイアン・ヘルス)と協力して、がん患者、がんの変異、健康状態の結果のすべてがどのように関連しているかを調べていた。

最終的には、特に有色人種の女性に酷い結果をもたらすトリプルネガティブ乳がんの患者が、免疫療法によく反応するという分析結果を得た。

カウシク氏は、整理されていない患者データを治療計画に結びつけることのインパクトを理解して、元ティールフェローでDorm Room FundのマネージングパートナーであるWill Manidis(ウィル・マニディス)氏と共同で、新しいスタートアップScienceIO(サイエンスIO)を創業した(マニディス氏がCEOを務めている)。このスタートアップは、自然言語処理とデータ分析を用いて患者データの巨大なデータベースを構築し、関係者が患者をよりよく理解し、総合的に治療することに役立てようとしている。

「地図がなければ旅ができないのに、医療には地図がないのです。例えば、どの患者さんが切実で満たされていないニーズを抱えていて、特別な配慮や新たなソリューションを必要としているのか、あるいは希少疾患に対する新しい治療法を見つけようとしているのかなどの、基本的なことを理解しようとすると、何千時間もの労力と何年もの期間が必要になるのです」とマニディス氏は述べている。

ヘルスケアデータの状況をなんとかしようとするスタートアップは、ScienceIOが初めてではない。そして、それはおそらくこれが最後のものでもないだろう。だが、このスタートアップの差別化ポイントは、何年もかけて、最も代表的なデータを集めたデータベースを構築してきたことだ。

カウシク氏は「私たちは過去2年間をかけて、この種のものとしては初のヘルスケアAIプラットフォームを構築しました。私たちは、データファーストのアプローチを人工知能に適用し、バラバラのヘルスケアデータを高品質で計算可能なデータに変えるために必要な技術を開発しています。ヘルスケア分野では、データを活用したソリューションを構築する機会が非常に多く、当社のプラットフォームや幅広い自然言語処理ルネッサンスから恩恵を受ける、企業のエコシステムが生まれることを期待しています」という。

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NLP(Natural Language Processing、自然言語処理)とは、人間の音声をコンピュータが理解しやすくするための最新技術だ。同社は、ソーシャルメディアの投稿を見て、その投稿を行った人間がどのように感じているかを予測する技術であるセンチメント分析に、NLPがどのように利用できるかを説明した。ScienceIOのNLPアプリケーションは、機械学習と組み合わせられることで、900万以上の医療条件、薬剤、機器、遺伝子を潜在的な手がかりとして、患者の健康に影響を与える変数を見つけ出す。

ScienceIOの動作画面(画像クレジット:ScienceIO)

幅広いというのは、その製品がさまざまな潜在的顧客に適用できるということを意味する。例えば臨床医が患者の背景に基づいて患者の全体像を把握できるようになると、カウシク氏は考えている。

「扱う患者さんにはさまざまなヘルスケアイシューがありますので、それに対してがんをよく理解しているとか、社会経済状況を別途理解しているというだけでは十分ではないのです」とカウシク氏はいう。「あらゆる分野に驚くほどの深さがありますし、そうした問題を最小化することなく患者全体を把握することが必要なのです」。

さらに彼は「3年間、世間には公表しないままこのデータセットを構築してきた理由は、患者をバイオリスクに還元するのではなく、患者を医師が見るべきものとして表現するためだったのです」と付け加えた。

マニディス氏は、保険会社が毎日、莫大な数の医療プランや、請求コード、コスト、症状などのデータを受け取っていることを例に挙げた。

マニディス氏は「そこでは、請求をどのように優先させるか、裁定に回すか、不正行為の検出などを行うかで常に悩まされています。そこでScienceIOを使えば、データを構造化し、請求内容を理解して、患者への保険金をより早く、正確に支払うことができます」という。

注目すべきは、ScienceIOはトラッキングを行うのではなく、データをより検索しやすくし、有用な洞察を生み出すことのできる分析結果を作成するのだということだ。ScienceIOは、現在いくつかの顧客とパイロットプログラムを行っているということだが、具体的な名前は明かしていない。カウシク氏によれば、これらのパイロットの結果によって、一般公開までの現実的なスケジュールが左右されるということだ。

これまでの進展によって、これまで秘密裏に行われていたビジネスが、800万ドル(約9億1000万円)のシード資金を調達することができた。今回のラウンドには、Section 32やSea Lane Venturesなどの機関投資家の他、Lachy Groom(ラッチー・グルーム)氏やJosh Buckley(ジョシュ・バックリー)氏といった起業家も参加している。

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画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)

小売業の未来「会話型コマース」を構築するWizardが正式な立ち上げに先立ち約55.8億円調達

2021年初めにWalmart(ウォールマート)の米国eコマース部門の責任者を退任したMarc Lore(マーク・ローレ)氏は、eコマース分野の新しいスタートアップ企業である「Wizard(ウィザード)」を支援している。ローレ氏は「会話型コマース」分野のB2BスタートアップであるWizardの共同設立者、取締役会会長、投資家としての役割を担っている。Wizardは、将来のモバイルコマースはテキストで行われると信じている。同社の正式な立ち上げに先立ち、米国時間10月6日、同社はNEAのTony Florence(トニー・フローレンス)氏が主導する5000万ドル(約55億7600万円)のシリーズAを発表した。

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このラウンドには、ローレ氏とAccel(アクセル)も参加している。フローレンス氏、ローレ氏、AccelのSameer Gandhi(サミアー・ガンジー)氏は、Wizardの共同創業者兼CEOであるMelissa Bridgeford(メリッサ・ブリッジフォード)氏とともに役員を務めている。

このスタートアップは、興味深い創業ストーリーを持っている。というのも、多くの人が思っているほど新しい企業ではないからだ。

かつてニューヨークで金融のキャリアを捨てたブリッジフォード氏は、オースティンを拠点とするStylust(スタイラスト)を設立・運営し、消費者が買い物をする際のアシスタントを提供することを目的としたテキストベースのショッピングプラットフォームを提供していた。ユーザーは、スクリーンショットや写真をテキストで送信すると、ウェブサイトにアクセスすることなく、テキスト上で購入可能な商品のオススメを受けることができる。Stylustは、AIと画像認識機能を活用して、消費者に購入すべき商品の選択肢を提供した。また、StylustにはB2Bの要素もあり、ブランドに「ワンテキストチェックアウト」の体験を約束している。キャッシュとして残っていた同社のウェブサイトによると、同社は35%のコンバージョン率、もしくはウェブベースの商取引の10倍のパフォーマンスを謳っていた。

WizardはStylustを「買収した」と言っているが、チーム全体(9月に最高責任者として新たに採用された数名を除く)はStylustで働いていた社員で構成されている。買収当時、Wizard は市場に製品を出していなかった。

厳密にいうとまったく新しい会社ではあり、現在はローレ氏のeコマースにおける経験に頼ることができ、一流の投資家の支援を受けることができる。

ブリッジフォード氏は、Wizardを「我々のビジョンをより大きなスケールで構築し、リテールテックの分野で非常に優れたビジョンを持ち、実績のある創業者であり、実績のある経営者であるマーク氏とパートナーを組むことができる」機会だと表現している。

「会話型コマースが小売業の未来であるというビジョンを、私たちは共有しています」とブリッジフォード氏は付け加えている。

しかし、同社はまだ製品の詳細については語っていない。その代わり、このB2Bサービスについて、ブランドや小売業者が消費者とテキストで取引できるようにするものだと説明している。このサービスは、加入から検索、支払い、配送、さらには再注文までカバーした、モバイルでの「エンド・ツー・エンドのショッピング体験」と位置づけられている。

これらのテキストベースのチャットは、これまでのメッセージングアプリのチャットボットとの煩わしいやりとりとは違うと、ブリッジフォード氏は主張している。

「私たちは、自動化と人間味の組み合わせによって、最適なユーザー体験を提供すると同時に、バックエンドには拡張性のある強力なテクノロジーを構築することができました。それこそが『聖杯』なのです」と彼女は説明している。「これこそが、会話型コマースの未来像なのです。私たちは、チャット機能や自然言語処理を組み込んでいます。これらの技術はどれも急速に進歩しているものです」。

言い換えれば、1、2年前にチャットボットで経験したイライラするような体験は、今日の体験ではないかもしれないということだ。

「このテクノロジーの最終目標は、実際にはテクノロジーによって実現されているにもかかわらず、人間と話しているように感じさせることです」とブリッジフォード氏は付け加えた。

Stylustは、今回の買収により、Wizardとのブランド提携をもたらした。

以前の Stylust のウェブサイトには、Laughing Glass Cocktails(ラフィング・グラス・カクテル)Desolas Mezcal(デソラス・メスカル)Pinhook Bourbon(ピンフック・バーボン)Marsh House Rum(マーシュ・ハウス・ラム)Neft Vodkas (ネフト・ウォッカ)などの顧客情報が掲載されていた。また、Austin Biz Journalの特集では、ワインやスピリッツの小売に力を入れていることが紹介されていた。しかし、Florida Funders(フロリダ・ファンダーズ)が2020年にStylustを支援するという記事では、Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)、Walmart、Sephora(セフォラ)、Allbirds(オールバーズ)などの一流小売店との関係が記されていた。

Wizardとどことの関係が継続されるのか、また、アルコールブランドや他の小売業者に焦点を当てていくのかは、同社が資金調達以降の事業に関する詳細について言及を避けているため、不明だ。

同社は、今回の資金をAI、機械学習、自然言語処理などの分野や、営業、財務、業務などの非技術系の職務における採用に充てる予定だ。その中でも特に注目しているのが、チーフピープルオフィサー(最高人事責任者)の採用だ。現在のチームは、ニューヨークとオースティンにあるオフィスで働いているが、Wizardはリモートの技術チームのポジションの空きを埋めるために全国で採用活動を行っているとのことだ。

Wizardには、特にテキストマーケティングの分野で、同社のビジネスの特定の側面に対応するサービスを提供する競合他社がすでに存在する。しかし、もっと広く言えば、消費者がメッセージを介してブランドと交流する方法は他にもあり、それらが時間の経過とともにより完全な形の製品へと進化する可能性もある。現在、消費者はFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのソーシャルメディアで商品を見つけ、商品に関する質問をMessengerやダイレクトメッセージで行うことが多い。WhatsApp(ワッツアップ)は、消費者がアプリ内で直接製品やサービスを発見できるよう、企業向けの製品カタログを構築している。Apple(アップル)もBusiness Chatでこの市場に参入し、すでにiMessageのチャットで購入できるようになっている。

Wizardは、専用のメッセージングアプリや、例えばiMessageを搭載したiPhoneを必要とせず、SMSに注力することで、競合他社との差別化を図ることができる。しかし、テキストベースのスパム詐欺増加しているSMSに賭けることは、よりリスクの高い賭けでもある。しかし、ローレ氏はそれをいとわない。

「これまでのキャリアのほとんどをeコマースで過ごしてきた私にとって、会話型コマースが小売業の未来であることは明らかでした」とローレ氏はいう。「ディープラーニングが普及していく中で、極度にパーソナライズされた会話型のショッピング体験を実現する能力は、人々の買い物の仕方を変えていくでしょう。メリッサ氏とWizardのチームが構築しているものは、その変革をリードするものだと確信しています」と述べている。

画像クレジット:racorn Shutterstock

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)