【コラム】3億円のNFTを買っても著作権は手に入らない

編集部注:本稿の著者Harrison Jordan(ハリソン・ジョーダン)氏は、HP.LIFEの創設者兼CEO。

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現代アーティストにとって、作品を非代替性トークン(NFT)という形でブロックチェーンに紐づけることは、アートをオンラインで販売するための安全で検証可能な方法のように思えるかもしれない。

いくつかの点では、それは正しい。ブロックチェーンは本質的に、すべてのトランザクションについてタイムスタンプ付きのデータを記録し、分散型台帳上で所有権を永続的に示すものだ。ブロックチェーンのトランザクションを見れば、NFTがいつ取引されたのか、誰がその取引に関わったのか、いくら使われたのかを知るのに、必要な情報がすべて得られる。

しかし、NFTのオーナーシップの実態は、想像以上に複雑だ。新しい暗号資産クラスであるNFTは、現行の規制システムにほとんど縛られずに存在しているように見える。しかしアートと組み合わせた場合、考慮すべきオーバーラップがある。現代のNFTエコシステムの法的落とし穴を理解することが、その可能性を引き出すための最初のステップとなるだろう。

ブロックチェーンに著作権は存在するのか?

NFTが著作権の代替となる可能性に大きな期待が寄せられており、NFTが著作権そのものであると信じている人も多い。額面通りに見れば、その混乱は容易に理解できる。

実際には、NFTは資産を表すトークンに過ぎず、資産そのものとはまったく別物だ。すべてのNFTは唯一無二の資産であるため、オリジナルと同じ価値を維持したまま複製することはできない。多くの人はこの独占的な所有権を作品そのものの所有権と同一視しているが、その違いを強調しておく必要がある。

この誤解はさらに奥深くなる。NFTになり得るものの範囲は、著作権の対象となる作品と驚くほどよく一致している。「著作物」の定義は各国・地域で異なるが、本質から大きく外れることはない。例えばカナダでは、著作権の保護は、文学的、芸術的、演劇的または音楽的な作品に加えて、演奏、録音、その他の関連作品にまで及ぶ。創作者がこれらの保護を申請する必要はなく、作品の創作時に国が本質的に提供するようになっている。

もちろんこの保護は、NFT化されるオリジナル作品に対しても保証されている。アート作品が制作され、NFTマーケットプレイスでオークションに出品された場合、その著作権はアーティストに帰属し、対面での取引とほぼ同様に機能する。国際法に準拠した著作権取引のインフラが整っていないため、現在のプラットフォームでNFTの著作権をやりとりすることは不可能だ。

つまり、アーティストと購入者の間で外部契約が交わされない限り、NFTのさまざまな著作権はオリジナルアーティストに帰属することになる。NFTの購入者が所有するのは、ブロックチェーン上のユニークなハッシュと、トランザクション記録、作品ファイルへのハイパーリンクだけだ。

法的パラメータがなければ、不正行為は避けられない

盗難や詐欺の可能性を考えると、NFTの著作権追跡の問題はさらに厄介なものになる。NFTがブロックチェーンに追加されるためには、アップロードした者が「署名」する必要がある。画家が自分の絵にサインするのと同様に、この機能はNFTとその作成者を結びつけることを目的としている。しかし、トークン鋳造者が自分の身元を偽った場合には問題が起こる可能性もある。多くのNFTプラットフォームでは、これは珍しいことではない

この問題は、NFT市場に強力な法的枠組みがないことに起因する。プラットフォームによっては、作成者本人でなくてもツイートやアート作品、ニャンキャットのgif画像でさえもNFT化することができる。その結果多くのアーティストが、自分の作品が盗用され、同意なしにNFTの形で販売されていると報告している。従来のアート市場であれば、明らかに著作権侵害となるところだ。

この問題は、特にNFTツイートのやり取りの中で広まっている。2021年初めには、@tokenizedtweetsと呼ばれるTwitterボットが大量にNFT鋳造を行い、Twitter(ツイッター)とNFTコミュニティに衝撃を与えた。このボットは、作者の同意や通知なしにバイラルツイートからNFTを作成するという方針をとったため、俳優やアーティストなどのクリエイターから反発を買った。「スタートレック」で知られる俳優のWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏は「@tokenizedtweetsがコンテンツを盗み、私がアップロードした画像や私のツイートなど、すべて私の著作権のもとにあるものが無断でトークン化され、販売されている」と懸念を表明した。

強力な法的インフラを持たないプラットフォームでは、盗難や詐欺は当然の結果だ。現在Twitterの利用を禁止されている@tokenizedtweetsの行為は、この問題をよく表している。

何が足りないのか?国際的なコンプライアンス

これまでのところNFTプラットフォームは、NFT販売が表すアートの著作権について、国際的なコンプライアンスの領域に踏み込んでいない。それが起これば、NFTのエコシステムにとって非常に大きな飛躍となるだろう。著作権の行使を強化することで不正行為を最小限に抑えるだけでなく、国際的なコンプライアンスを実現することにより、ブロックチェーン上でのトークンによる著作権交換が可能になるからだ。

1886年に締結されたベルヌ条約は、179の加盟国において著作物が創作された時点で標準的な著作権保護を保証する国際協定であり、そのおかげですでに下地はできている。例えば2014年にはシンガーソングライターのTom Petty(トム・ペティ)が、Sam Smith(サム・スミス)のヒット曲「Stay With Me」が自身の「I Won’t Back Down」とメロディがほぼ同じであるとしてサム・スミスを著作権侵害で訴え、この条約が試された。この訴訟と、トム・ペティの財産へのロイヤルティ支払いを含む和解は、ベルヌ条約の継続的な機能を証明している。

1996年のWIPO著作権条約により、デジタルアートの領域にベルヌ条約の原則が正式に導入されたが、ベルヌ条約加盟国の多くはこの条約に署名しなかった。新たな条約の目途が立たない中、世界政府が残した不足を民間セクターが補わなければならないかもしれない。

国際条約で統一が図られているにもかかわらず、NFTの世界では世界各地の著作権法の多様性に対応できていないのが現状だ。業界を投機的なものからグローバルな機能性へと移行させるためには、国際的な著作権コンプライアンスをこの新興エコシステムに組み込む必要がある。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:コラムNFTアート著作権アーティスト

画像クレジット:John M Lund Photography Inc / Getty Images

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(文:Harrison Jordan、翻訳:Aya Nakazato)

米最高裁がオラクルに対する壮大な著作権侵害訴訟でグーグルを支持

米国の最高裁判所は今週、テクノロジーに関して多くの意見を述べた。同最高裁判所は米国時間4月5日の月曜日、Google(グーグル)とOracle(オラクル)による長期にわたる法廷闘争に対し、オラクルに80億ドル(約8800億円)の賠償金が支払われる可能性があった勝利をくつがえした。

最高裁は6対2の判決で、グーグルがオラクルのソフトウェア言語ことJavaの一部を自社のスマートフォン用OSに組み込んでも、著作権法に違反していないと判断した。グーグルはオラクルのAndroid用Java APIのコードをコピーしており、この裁判は確立されたAPIの再利用と著作権に関する1年に及ぶ議論の口火を切った。

2018年に連邦控訴裁判所は、グーグルがAPIを使用することで実際に著作権法に違反しており、その実装はフェアユースに該当しないとの判決を下していた。

「この決定を検討するにあたり、私たちは議論のためにその素材が著作権による保護の対象であると仮定します。しかしここで問題となっているコピーはそれにもかかわらず、フェアユースを構成していたと判断します。したがって、グーグルのコピーは著作権法に違反していないのです」と、Stephen Breyer(スティーブン・ブレイヤー)判事はオラクルへの以前の勝訴をくつがえした判決文の中で述べている。なお、Samuel Alito(サミュエル・アリト)判事とClarence Thomas(クラレンス・トーマス)判事は異議を唱えた。

関連記事:OracleがJavaの著作権侵犯裁判でGoogleに勝利

「グーグルがJava SE APIをコピーしたことは、プログラマーがその才能を活かして新しい変革的なプログラムを開発するために必要なコードだけを含んでおり、法律上はその素材の公正な使用にあたります」とブレイヤー氏は記している。

グーグルのグローバル問題担当シニアヴァイスプレジデントを務めるKent Walker(ケント・ウォーカー)氏はこの判決について、下に埋め込んだドキュメントのように「イノベーション、相互運用性、コンピューティングにおける大きな勝利」と述べている。

判決文はこちらで確認することができる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleOracle裁判著作権

画像クレジット:Knotel / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

オンラインでの著作権とその支払いを管理するプラットフォームPexがTencentなどから約60億円調達

自身のコンテンツがどのように使用されているか、あるいはオンラインで再使用されているかに関するコントロールを著作権所有者に与えようと、スタートアップPex(ペックス)が新規ラウンドで5700万ドル(約60億円)を調達した。

既存投資家のSusa Ventures、Illuminate Ventures、Tencent、Tencent Music Entertainment、CueBall Group、NexGen Ventures Partners、Amaranthineなどが本ラウンドに参加した。

2014年創業のPexはこれ以前に700万ドル(約7億4000万円)を調達していた。そして2020年、音楽著作権のスタートアップDubsetを買収している。創業者でCEOのRasty Turek(ラスティ・トゥレック)氏は、同氏が言うところの「著作権所有者が、著作権侵害を発見するためのGoogleのような検索エンジン」から生まれたプロダクトが広範なプラットフォームになったが、著作権とオンライン支払いを管理するより良いシステムを構築するというビジョンは変わらないと筆者に語った。

Pexは、コンテンツの著作権を有する個人や企業、コンテンツのライセンス供与やリミックスをしたいクリエイター、コンテンツがシェアされている大手デジタルプラットフォーム、これらを監督したい法執行機関を集合させた自社のAttribution Engineを「インターネットのためのライセンスインフラ」と表現する。

プロダクトには6つのモジュールがある。資産レジストリ、資産が新しいコンテンツで使用されたときに資産を特定するシステム、ライセンス供与、論争解決システム、支払いシステム、自分のコンテンツがどのように使われているかを確かめるデータと報告だ。

トゥレック氏はPexが「世界で最も大きな著作権保有者の大半」によって使用されており、コンテンツすべてをオンラインで取り締まるためのリソースを持たない「ロサンゼルスの路上にいる苦しんでいるミュージシャン」がアクセスできるよう構築さしたと話した。

PexのCEOであるラスティ・トゥレック氏

トゥレック氏はまた、より広範な規制環境がPexのようなソリューションを求めているとも述べた。たとえばEUは2021年発効が予定されている新しい著作権指令を採択し、米国でも新たな著作権法が検討されている。EUの法案は大手プラットフォームが先制的に幅広いコンテンツをブロックすることにつながるかもしれないと批判されたが、トゥレック氏は「オーバーブロッキングの反対となる、オーディエンスを求めている多くのコンテンツがある」と主張した。

関連記事:米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案

Pexは全体として規制監督当局に頼っているわけではない。同氏は、Pexがプラットフォームを使用している異なるグループの需要のバランスを取るようになっていると述べた。そしてPexはライセンス供与のディールから売上を上げるために、そのバランスを取るためのインセンティブも持っており、同社は「真にスイスのような中立国、真に中立派になる」ことにフォーカスしている。

「もし当社がシステムを悪用しようとしたら、私たちも失うという考えに基づいて事業をデザインしました。誰かがシステムを悪用したときは私たちは収益を上げず、すべてがうまく機能したときのみ利益を得ます」と同氏は述べた。

トゥレック氏はまた、パブリックドメインとCreative Commonsライセンスが同プラットフォームで「第一級市民」であり、Attribution Engineを使用している著作権所有者の多くが必ずしも金銭的補償を求めているわけではない、と主張した。「多くの人が認知のために著作権を守りたいのです。我々は社会性の動物です」(加えて認知は金儲けの機会につながり得る)。

Pexは新たに調達した資金で、引き続きAttribution Engineを拡大できると話す。

「投資は妥当性の確認だとは考えていません。義務に近いものだとと思っています。投資はあなたが正しい方向に向かっていることを証明しています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pex著作権資金調達

画像クレジット:Pex

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

ユーチューバー向け高品質フリーミアム音楽プラットフォームUppbeatがサービス提供開始

新しい音楽プラットフォームUppbeat(アップビート)は、YouTuber(ユーチューバー)やその他のコンテンツ制作者たちが、制作する動画に使用できる高品質の無料音楽を、簡単に見つけられるようにすることを狙っている。このシステムは、アーティストに公平な補償を行いながら、複雑な著作権処理を行えるようにデザインされている。既存の無料音楽プラットフォーム、たとえばYouTube(ユーチューブ)のオーディオ ライブラリやクリエイティブコモンズから提供される動画用音楽などに代わるものを提供することが目的だ。

このスタートアップのアイデアは、約6年前から運営されているまた別の音楽ライセンス企業である英Music Vine(ミュージックヴァイン)の共同創業者であるLewis Foster (ルイス・フォスター)氏とMatt Russell(マット・ラッセル)氏によるものだ。

2020年、2人の創業者たちは、これまでとは毛色の少し違うクリエイタースペース製品に取り組む機会が増えていることに気づいた。

「私たちはYouTuber、ストリーマー、ポッドキャスターといったクリエイタースペースが巨大化していることに気がついたのですが、こうしたタイプのユーザーのために、良い仕事をしている音楽プラットフォームがなかったのです」とフォスター氏はいう。「そこで私たちは、クリエイターにとって完璧な音楽リソースとはどのようなものかをじっくり考えてみたのです。それがUppbeatを作るきっかけになりました」。

彼らは2020年9月からUppbeatのウェブサイトの開発に着手し、英国時間1月11日に公開した。

クリエイター側の視点でみた場合、Uppbeatが重視しているのは、特にYouTubeを中心とした著作権処理に対する面倒を取り除くことだ。

現在は、もしあるYouTuberが動画の中の音楽に対して著作権を主張されると、収入が失われる原因となり得る。YouTubeは、この問題に対処するために、何年にもわたってコンテンツIDマッチシステムへの新機能追加や変更を行ってきたが、依然として問題は残されている。

「もしあるYouTuberが著作権の主張を受けたら、(YouTubeは)そのYouTuberの動画の収益を停止することが可能です。そして、YouTubeの問題処理システムを通して解決を行った場合には、最長で30日もかかることがあるのです。これがYouTuberにとって、かなり大きな不満なのです」とフォスター氏はいう。

だがUppbeatの音楽を使えば、ほぼ瞬時に著作権処理が行われる。

画像クレジット:Uppbeat

Spotify(スポティファイ)と同様に、Uppbeatのウェブサイトはフリーミアムモデルを活用している。クリエイターは、まず無料アカウントを手に入れることができる。このアカウントでは、およそ1000曲ほどのカタログの約半分にアクセスが可能で、毎月10回までダウンロードを行うことができる。一方、有料プランでは、カタログへのフルアクセスが可能で、ダウンロード制限もない。

無料ユーザーはYouTube動画の概要説明にクレジットを追加するだけで、著作権処理主張をクリアすることができる、一方、有料ユーザーは承認済みリスト(ホワイトリスト)に追加されるので、この余計なステップを省くことが可能だ。

無許諾使用を撃退するために、音楽トラックはフィンガープリントを取られているため、著作権の主張は継続して可能だ。しかし同社によれば、その解決は何日も何週間もかかるものではなく、5分程度で処理が行えるものだという。Uppbeatシステムは、動画の説明文をチェックして必要なクレジットを確認したり、その有料ユーザーのリストと照合することで、権利請求をクリアする。これはすべて自動化されていて、それもスピードアップにつながっている。

画像クレジット:Uppbeat

一方、アーティストに対しては、彼らの音楽が利用された場合には、たとえそれが無料ユーザーによる利用でもUppbeatが支払いを行う。

有料サブスクリプションや、もうすぐ始まる広告からの収入は、個別のダウンロード数に比例して、毎月アーティスト間で分配される。

「アーティスト側の視点から見ると、平均的には、有料側のトラックから無料側のトラックと同じ金額を稼ぐことになります」とルイス氏はいう。「つまり無料で利用されていても、お金がもらえるということです」と付け加えた。

また、トラックを閲覧したり、音楽を聴いたりする際に再生される音声広告で収益化も行う(とはいえ、これは有料プランを推進するための時限的な措置だ)。

Uppbeatのカタログも見やすい構成だ。音楽がジャンル別、テーマ別、スタイル別に整理されていて、YouTuberが必要とする音楽やビートの種類を示すカラフルな列の中に配置されている。たとえばバックグラウンドで使用するためにカスタマイズされた音楽や、inspiring(インスピレーションを与える)、calm(穏やかな)、happy(楽しい)、dramatic(ドラマチック)といった、さまざまな雰囲気に対応するトラックが用意されている。数カ月後にはSFX(効果音)のカタログも追加される予定だ。

UppbeatはMusic Vineを通じたプロデューサー、作曲家、ソングライターといった既存の音楽業界のつながりが、他の無料音楽サービスよりも高品質の音楽トラックを入手するのに役立つと考えている。

現在のところ、このスタートアップはMusic Vineからの収入での運営を行っているが、フォスター氏によればVCからの打診もあったという。創業者たちは、当面はほとんどの部分の所有権を、社内で維持したいと考えている。

Uppbeatは、紹介プログラムと利益分配スキームの両方を実験している。後者は、Uppbeatへ新規顧客を連れてきたYouTuberに対して、2年間はその顧客からの収益を完全に手渡すようにするというものだ。

「私たちは多大な犠牲を払っています」とフォスター氏は認めている。「しかし私たちは、Uppbeatを早くリリースしてYouTuberの間で有名になればなるほど、(その収益を)共有できてハッピーになることができると考えています。大きな民間投資を行うのではなく、YouTuberコミュニティ内でそうした収益共有を行うことはクールなアイデアだと思っているのです」と彼は指摘する。

同社はまた、何人かの大規模YouTuber向けの収益共有も検討している、とフォスター氏は付け加えた。

現在Uppbeatは、英国のリーズを拠点に、従業員8名とフリーランサー12名で構成されるチームだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Uppbeat音楽YouTuber著作権

画像クレジット:Uppbeat

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(翻訳:sako)

米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案

米国時間12月21日に米議会が承認した新型コロナウイルス流行に対する追加経済刺激策について、TechCrunchではすでにいくつか記事を掲載してきた。その中には、ブロードバンドアクセスを増やすための資金や、新エネルギーへの取り組みのための資金(未訳記事)も含まれる。

だが、テクノロジーやメディアの世界に深刻な影響を及ぼす可能性のある項目が他にもある。その1つが、利益目的の違法なストリーミングを懲役10年以下の重罪(The Hollywoodr Reporter記事)とする軽犯罪ではなく)という、Thom Tillis(トム・ティリス)上院議員(ノースカロライナ州選出の共和党員) からの提案を含む法案だ。

ティリス議員が2020年12月初めにこの提案の草稿を発表したとき、インターネットのオープン標準 / 知的財産に関与する非営利団体Public Knowledge(パブリック・ナレッジ)は声明を発表し、「著作権侵害のための更なる刑事罰」の必要性はないと主張したものの、この法案は「狭く仕立てられており、ユーザーを犯罪化することは避けている」、そして「無認可の作品をストリーミングに含む可能性があるストリーマーを犯罪化しない」ともいっている。そうではなく、その目的は商業的利益のために海賊行為を行う人々を対象としている。

そしてもう1つは、CASE法(少額賠償における著作権代替執行法)案だ。これは米国著作権局内に新たな著作権主張委員会を設け、少額裁判所に代わって著作権の請求を裁き、最高3万ドル(約310万円)までの支払いを命じることができるようにするというものだ。

2019年、米国下院でこのCASE法が議論されていた(The Verge記事)際、賛成派は独立系アーティストが著作権侵害の申し立てを簡単に行えるようになると擁護したが、一方でアメリカ自由人権協会や電子フロンティア財団などの団体は、個人のインターネットユーザーに悪影響を与える可能性があると述べている。

Techdirt(テックダート)のMike Masnick(マイク・マスニック)氏は米国時間12月21日、この法律は「トロール(荒し行為)を減らすために法律を修正する必要があるときに、まさに著作権トロール(金儲けを目当てに著作権侵害の疑いを探し回る人々)を急増させる」と主張した(Techdirt記事)。

下院と上院が承認した現在、この法案はドナルド・トランプ大統領の署名に向けて送られようとしている。全文は米国時間12月21日に発表されたばかりなので、今後数週間から数カ月の間に、その影響について多くの議論が交わされることを期待したい。

【更新】ティリス上院議員もリリース(ティリス議員公式サイト)を発表。この法案はPatrick Leahy(パトリック・リーヒ)上院議員(バーモント州選出の民主党員)が共同で主導したものであると指摘し、「営利目的の商業的な海賊ストリーミングサービス」のみに適用されることを強調している。

「オンラインによるストリーミングコンテンツへの移行は、著作権で保護された素材を違法に配信する犯罪的なストリーミングサービスを生み出し、毎年300億ドル(約3兆1000億円)近くの損失を米国経済に与え、米国人が楽しむ創造的なコンテンツの制作を阻害しています」と、ティリス氏は声明で述べている。「私はクリエイター、ユーザーグループ、およびテクノロジー企業の意見を取り入れて起草されたこの常識的な法案が法律になることを誇りに思っています。これは犯罪組織を標的にしたものであり、個人的なストリーマーが起訴の恐れを心配する必要がないことを保証できます」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アメリカ音楽ストリーミング動画配信著作権

画像クレジット:Patrick Foto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

全米レコード協会がYouTubeダウンローダーに目を付けた

海賊行為が横行していたその昔(未訳記事)、全米レコード協会(RIAA)は日常的に削除通知を送りつけていた。私も何度か受け取ったことがある。しかし、海賊行為の追跡が難しくなり、通知はほとんど姿を消した。それでも、RIAAはいまもあのうるさいやつを出し続けている。その相手は、著作権を侵害する行為に利用される「恐れのある」ソフトウェア、例えばYouTube(ユーチューブ)用ダウンローダーなどの作者だ。

多くの開発者が利用している人気ソフトウェアに「YouTube-DL」(ユーチューブ・ディーエル)があるが、Freedom of the Press Foundation(報道の自由財団)のParker Higgins(パーカー・ヒギンズ)氏が米国時間10月24日早く伝えた(Twitter投稿)ところによれば、RIAAから脅しをかけられてGitHub(ギットハブ)から削除されてしまったという。

これはしかし、2000年代初め(未訳記事)によく出された、私たちの記憶にも残るあの削除通知とは性質が違う。あれはDMCA(デジタル著作権法)に基づいて大量に発行された通知だった。内容は「あなたのウェブサイトにはこれこれの保護されたコンテンツが含まれているため、削除してください」というものだ。もちろん、それはいまでも存在するが、ほとんどが自動化されている。例えばYouTubeなどのサイトでは、著作権侵害の動画は公開前に自動的に削除される仕組みになっている。

今回、RIAAが行ったのは、基本的にDRM(デジタル著作権管理)を回避するものを禁じた米国著作権法1201条(何人も本権利で保護された作品への利用を実質的に管理する技術的保護手段を回避することはできない)に違反するとの理由によるYouTube-DLの削除要請だ。

つまりこの法律は、単に海賊版ブルーレイディスクなどの配布を禁止するだけでなく、その前の段階でプロテクトを破ってコピーすることも違法だといっている。

その理屈を少し拡大すれば、YouTube-DLも含まれてしまう。これは、コマンドラインで使用するツールで、YouTubeのURLから動画や音声の元のデータの場所をユーザーに知らせるというものだ。当然、それらのデータはどこかのサーバーに保管する必要がある。通常、動画や音声のファイルが置かれている場所は、YouTubeのウェブプレイヤーにストリーミングされてくる。それを見れば、ユーザーは動画をダウンロードして、オフラインで見たりバックアップしたりできるわけだ。

だが、もし誰かがこのツールを使ってTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の「Shake It Off」のオフィシャルミュージックビデオ(MV)をダウンロードしたとしたら?ショック!ホラー!海賊行為! YouTube-DLはそれができてしまう。だから削除すべき、と彼らは述べている。

いつものように、RIAAがずっと前に諦めた類似の(アナログな)状況に陥るのは時間の問題だ。例えば画面と音声をキャプチャーユーティリティーソフトを使って同じことをしたらどうなのか?ビデオカメラならどうだろう?その点でいうならカセットテープレコーダーは?これらはみな、テイラーのMVのオフラインコピーを著作権者の許可を得ずに作る際に、その動画を保護しているDRMを「回避」するために使われている。

もちろん、RIAAは著作権侵害からの保護という責務を担っているため、人々がYouTubeの公式アカウントをほじくってアーティストの全作品の高品質な海賊版を作るのを黙って見ているわけにはいかない。しかし、こうした単純なツールを追いかけ回すやり方は、古くさくて説得力のない「自宅用の複製は音楽産業を殺す」といったかけ声と同じだ。誰も耳を貸さない。もし、アーティストの作品を大量に盗むような行為を問題視するのであれば、まずはRIAA自身を立て直す必要があるだろう。同協会の恩恵で得られるストリーミングサービスの報酬は雀の涙だ。それよりは、Bandcamp(バンドキャンプ)で売った方がいい。

YouTube-DLのようなツールは、カセットテープやカメラやトンカチとも同じく、合法的にも非合法にも使える技術だ。フェアユース(公正使用)の原則によれば、こうしたツールは善意の行動のための使用は許される。例えばGoogle(グーグル)が興味を失ったために消失していまいそうなコンテンツをアーカイブにして保管したり、広く利用されている個人向けの無料コンテンツのコピーを何らかの理由で手元に置いておきたい場合などだ。

YouTubeも他のプラットフォームも同様に、明らかなそして大規模な著作権侵害を難しくする可能な限りの対策を誠実に行っている。最新のヒット曲トップ40の脇には「ダウンロード」ボタンを配置せず、代わりにその曲を購入できるサイトへのリンクが示される。コピーを自分の動画の背景に使った場合、それが自分で購入したもののコピーであっても、YouTubeには最初から投稿できないようになっている。

YouTube-DLをGitHubから一時的に削除したところで、この事態に関しては誤差以上の規模にはなり得ない問題への短絡的な対処でしかない。アカウント不正共有(未訳記事)の被害額のほうが大きいかもしれない。それや、それとよく似た他の何かが、すぐにまたもう少し賢くなって、もう少し性能をよくして帰ってきてはRIAAの仕事をさらに複雑化する。そしてそれが繰り返される。

RIAAは「モグラ叩き」ゲームの作者から、その知的財産権侵害で訴えられかねない。

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タグ:ネットサービス
カテゴリー:YouTube著作権

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:金井哲夫)