コンテンツクリエイターに無料の音楽を提供する英国のUppbeatが約7億円を調達

英国を拠点とする音楽プラットフォームのUppbeatは、コンテンツクリエイターがYouTubeやTwitch、TikTokなどのプラットフォームで公開する動画に使用できる無料で高品質の音楽を簡単に見つけられるサービスを構築し、現在50万人以上のユーザーが利用している。同社はビジネスを成長させるためにシリーズAで460万ポンド(約7億500万円)を調達したと発表した。

Uppbeatを構築したのは、英国を拠点とする音楽ライセンス企業のMusic Vineを共同で創業したLewis Foster(ルイス・フォスター)氏とMatt Russell(マット・ラッセル)氏だ。2人は、自分たちの専門性を活かしてクリエイターの間で高まっている無料の音楽リソースのニーズに応えるチャンスがあると考えた。現在、1億人以上がソーシャルプラットフォームでコンテンツを共有しているが、無料でありながら高品質の音楽の選択肢は多くないと2人は確信していた。

Uppbeatは2021年1月にサービスを開始し、費用のかかる音楽ライセンスプラットフォーム、あるいはYouTubeのオーディオライブラリやクリエイティブ・コモンズの音楽といった無料の音楽に代わる選択肢を提供することで、クリエイターが作るコンテンツで使われる音楽の著作権に関する頭痛の種を取り除いている。

Uppbeatはフリーミアムのモデルを活用して、クリエイターがアカウントを作成するとサイトのカタログの約50%にアクセスでき、1カ月に10件ダウンロードできるようにしている。プレミアムのサブスクリプション(月額6.99ドル、約800円)ではすべてにアクセスし、無制限にダウンロードできる(3年間と永続のサブスクリプションも用意されている)。

2021年9月にはサイトを拡張して、音楽だけでなく「ミームスタイル」のコンテンツに適した効果音とクリップのライブラリも提供している。

画像クレジット:Uppbeat

曲にはライセンスのない使用への対抗策としてフィンガープリントが必要であるため、Uppbeatの音楽を使う際に著作権の主張が発生することもある。しかしおよそ5分以内でシステムが必要なクレジットを確認してから主張を自動で処理する。無料ユーザーはYouTubeの動画の説明にクレジットを追加して著作権の主張をクリアすればよい。YouTubeを利用するプレミアムユーザーは自分のチャンネルをホワイトリストに登録して自動で著作権の主張から保護することができる。

このシステムはYouTube限定ではない。音楽と効果音はストリーマー、ポッドキャスター、ブロガー、その他のソーシャルメディアクリエイターが利用する、ほぼすべてのプラットフォームで動作する。

一方、Uppbeatのアーティストは音楽の所有権をすべて保持し、レベニューシェアベースで報酬を受け取る。

Uppbeatによれば、毎月7万5000人以上の新規ユーザーを獲得し、サイトへのトラフィックは月間100万セッションを超えるという。リテンションは高く直帰率は10%未満の低さであると、同社はTechCrunchに対して語った。セッションタイムの平均は5分以上だという。

Uppbeatのカタログはサービス開始時の1000曲から3000曲以上へと増えている。2500種類の効果音とクリップも追加された。同社は、年間収益ランレートは71万8000ドル(約8300万円)で、Music Vine全体としてはおよそ240万ドル(約2億7600万円)と発表している。

同社は、シリーズAの投資家は戦略的支援者でありこの分野のリーダーで、当人が公表を望まないため発表できないと述べた。

今回の資金調達により、Uppbeatは同社の音楽をYouTubeで公開してブランドのプレゼンスをさらに高め、オンラインのコミュニティとこれまで以上に直接関わっていくとしている。バックエンド全体を見直して、パーソナライズ機能を備えたスマートなユーザーインターフェイスの構築も予定している。

さらにクリエイター向け新機能を公開する計画もある。例えばクリエイターが独自のプレイリストを作成して共有する機能が挙げられる。これによりUppbeatのアーティストの露出が増え、クリエイターの収益化につながる可能性もある。すでに同社はユーチューバーと連携し、厳選された「パートナーのプレイリスト」を公開してユーチューバーが自分のチャンネルでよく使う音楽を紹介している。

従業員も現在の9人から増員し、新しいオフィスに移る予定だ。

共同創業者でCEOのフォスター氏は次のように述べた。「Uppbeatの公開以来、クリエイターコミュニティの反応はまさにすばらしいものです。クリエイターの積極性とフィードバックによりこのプラットフォームは現在の地位を得ることができました。Uppbeatがエキサイティングな新しい展開を始めるにあたり多額の投資を受けられたのはクリエイターのみなさんのおかげです。今回の調達はUppbeatが目指す成長戦略の資金となるゲームチェンジャーであるだけでなく、クリエイターコミュニティにとってエキサイティングな出来事であり誰もが自由に創作活動ができるようにするという我々の道のりにおける大きなマイルストーンです」。

画像クレジット:Uppbeat

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作った作品」要件を満たさず

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作ったもの」要件を満たさず

Stephen Thaler/Creativity Machine

米著作権局(USCO)は、人工知能が生み出した芸術作品に対する著作権取得の申請を2019年につづいて再び却下しました。これは自らが開発した人工知能(AI)が生み出した”アート作品”に関して、各国での著作権取得を試みているImagination EnginesのCEO、スティーブン・タラー博士による最新の試みでしたが、USCOは前回と同様「著作権は人間によって作られた作品でなければ認められない」としています。

今回、タラー博士はAIによって作成された「A Recent Entrance to Paradise」と題した芸術作品の著作権取得を目指していました。今回の”アート作品”は「Creativity Machine」と呼ばれるAIによって生み出されたものですが、これをCreativity Machineの所有者に雇用されて生み出された作品として登録申請していました。また、2019年の裁定に対しても、「人間の著作物」という要件は憲法違反ではないかと主張しています。

しかし、USCOの見解としては「人間の心と創造的な表現の結びつき」が著作権の重要な要素であり、また過去の同種の裁判、たとえば猿がシャッターボタンを押して撮られた写真についての裁判でも「人間以外による表現物は著作権保護対象外」だとする判断が一貫して下されて来たとしました。

ただ、芸術作品ではないもののタラー博士による「AIの権利取得の試み」が認められた例も、いくつか存在します。博士は昨年、世界各国で「DABUS」と名付けられたAIによって考案されたいくつかの発明に関して特許出願を行いました。これに対し、米国特許商標庁、英国知的財産庁、欧州特許庁などはやはり発明者が人間でないことから出願を却下する判断を下していました。しかしオーストラリアでは、AIが考案した発明に関する特許申請においてAIを発明者と認めることができる可能性があると裁判所が判断し、南アフリカでは実際に特許も認められたことが伝えられました

とはいえ、なにかの製品の動作や仕組みを定義する発明とは異なり、芸術作品は創作者のユニークな発想や才能によって生み出されるものとの考え方が強く、やはり人間ではないものに著作権を与えることは難しそうです。

(Source:United States Copyright Office(PDF)。Via the VergeEngadget日本版より転載)

【コラム】所有の新しいかたち、P2Pファイル共有から音楽NFTまで

Outkast(アウトキャスト)の海賊版が販売されていた2003年に、そのMP3のコピーを所有することでロイヤリティー(著作物使用料)を得られる世界を想像できただろうか。

NFT(非代替性トークン)やWeb3への批判が高まる中、ヒップホップ界のレジェンドでありイノベーターであるNas(ナズ)は、自身のシングル2曲をNFTでリリースしている。ファンはこれを購入することにより、ストリーミングのロイヤリティを得ることができる。音楽NFTの人気の高まりにより、次のような非常に興味深い議論に注目が集まっている。ブロックチェーンは、トレントの自由でオープンであるという利点に相反するものだろうか。ブロックチェーンは、コンテンツの違法コピー製作者と同じように、ゲートキーパーを排除しようとしているのだろうか。

アーティストとファンの対立

デジタルエンターテインメントの歴史の中で最も対立が激しかったのは、Napster(ナップスター)が登場してきた時期と、2000年代、BitTorrent(ビットトレント)が広く普及した時期だ。この時期、音楽業界、映画業界が大きく変わり、アーティストとファンが対立した。2000年代の終わりには知的財産権の行使が急増し、同時に、Spotify(スポティファイ)、Netflix(ネットフリックス)、Apple Music(アップルミュージック)などに代表されるような、デジタル商品の消費者向けオプションが大幅に拡充した。

Web3への移行が始まり、デジタル所有権、知的財産マネジメント、クリエイターの権利といった概念に再び注目が集まっている。Web3を批判する人たちはトレントの特性と比較して否定することが多い。トレントは「知的財産権への革新を求める抵抗」の表れで、コンテンツがよりオープンで自由で利用しやすいインターネットを生み出したのに対し、ブロックチェーンはその逆のことを行っている、というのがその言い分だ。

これには的外れな点がある。まずユーザーがトレントを利用する理由として、金銭面の節約という人もいたが、多くの人にとっては公式の有料コンテンツに比べて利便性が圧倒的に高いからというものだった。トレントの動きは、急速な技術革新によって引き起こされた、時代遅れのビジネスモデルに対する消費者の反発と捉えると、非常にわかりやすい。その意味で、Web3はまさにトレント時代の精神を継承したと言える。

もう1つの問題は、Web3を批判する人たちが当時の実際の論点を忘れてしまっていることだ。哲学的な考えを持った当時の違法コピー製作者たちは、その行為の大義名分として、アーティストは中間業者のせいで不利益を被っていると指摘していた。

「アーティストはツアーで稼いでいるから問題ない」というのがその時の目立った主張で、大規模な音楽出版社はたいてい悪者とされた。実際には、トレントがレコードの売上に影響を与え、音楽出版社とアーティストの両方の利益が損なわれた可能性が高い。トレントの動きをWeb1.0支持者によるWeb2.0移行への反発としてのみ捉え直すのは、コンテンツの違法コピーにより不利益を被る人たちを無視する「バラ色のメガネ」をかけた楽観主義だ。

また、自らの権利を主張し、音楽出版社側に付いていたと思われる多くのミュージシャンもファンの反感を買ったが、これによりトレントの道徳的優位性が高まるということはなかった。

一方、Web3では、コンテンツへのアクセスだけでなく、そのコンテンツで何ができるかということも重要視されている。言い換えれば、コンテンツの実用性と価値、とりわけこの問題の中心であるクリエイターにとってのそれが重要になる。ゲートキーパーを排除しようとする点では、Web3の構築者とトレントのサービス提供者は多くの同じ目標を共有している。

しかしWeb3は、強力な希少性、透明性、完全な所有権、明確な出所など、トレントよりはるかに優れた武器をこの戦いのためにクリエイターやファンに提供する。アーティストが自分のコンテンツを直接所有し、自分のコミュニティとのつながりを維持することは、これまで以上に容易になってきている。Web3はある点ではトレントに敬意を表しつつ、アーティストとそのファンにとってより有意義で、彼らに経済的な力を与えることのできるインフラを提供している。

ゲートキーパーの排除

トレントとブロックチェーンは、どちらもピア・ツー・ピアの分散型テクノロジーであるという点で類似している。また、NFT人気の高まりにより、ブロックチェーンはコンテンツを配信するためのより一般的な方法になりつつある。コンテンツ配信はビットトレントが手がけるサービスでもある。これらのテクノロジーの大きな違いの1つは、知的財産権に対するそれぞれのユーザーのアプローチだ。

トレント時代、Web3時代のどちらにおいても常に認識されているのは、創作活動は難しく、楽しく、利益や称賛に値するという事実だ。知的財産権は、このような創作活動が継続的に行われることを保証する1つの方法である。これまでの知的財産権の制度では、創造活動の価値は、ゲートキーパー、レントシーカー(既得権者)、中間業者によって圧倒的に掌握されていた。こうした枠組みでは、中間業者は価値を「発掘」するための手段に過ぎないということが見逃されている。

私と同じようにシャワーを浴びながら好きなように歌う人たちには好感しかないが、アーティストが何もない部屋に閉じこもって創作活動をしても、家賃を支払う助けにはならない。そのために、音楽出版社、レーベル、管理会社、代理店などが登場してきたのだ。賛否両論あるものの、こういった中間業者は、テクノロジーや配信手段の特質を考えると、非常に長い間、信じられないほどの成功を収めてきた。それでも、決して価値の発掘が大きな問題としてなくなったわけではない。もっと詳しいことが知りたい方には「shill on Twitter(Twitter上のサクラ)」の部屋がある私のNFT Discord(ディスコード)を紹介したい。

ともあれ、トレント時代に激しい対立が生まれた要因は、これらの中間業者が、支援するべき才能あるクリエイターが手にするよりはるかに大きな力と価値を持つようになったと考えられたことにある。とりわけ急速に技術革新が進む時代にありながらである。

Web3の大きなゴールは、トレントのサービス提供者が追い込んできたゲートキーパーを根本的に排除することだ。Web3に問題があるとすれば、その1つは、ゲートキーパーが数多く存在するということだ。このような透明で分散化されたツールを使えば、自分が苦労して稼いだお金が支援したいクリエイターやプロジェクトに直接使われているのを実感できることが増えていく。

オープン台帳やスマートコントラクト、ホワイトペーパーは、かつてクリエイターが強制的に結ばされていた不可解で機密性の高い契約とは際立って対照的だ。これまでは知的財産権がクリエイターを保護してきたが、これからは新しいメカニズムがその役割りを果たすことが期待されており、利益を得るのはクリエイター自身であると確信できるようになった。あるアーティストの言葉を借りれば、このテクノロジーによって「クリエイターを増やし、音楽を増やし、そして人間としての体験を増やしていく」ことが可能になるのだ。これを「昔は知的財産権は悪だったが、今は知的財産権は善だ」とまとめては、両者の動きの核心を完全に理解していないことになる。

権利を求める戦い

NFTは、アルバムや物理的なアートと完全に置き換わるものではない。音楽を聴いたり美しいものを集めたりするのに、暗号資産ウォレットは(おそらく)必要ないだろう。NFTはファンに新しい体験を提供すると同時に、権利設定とクリエイターの自活能力の両方に大きな影響を与える。

私は4年以上かけてTwitch(ツイッチ)の音楽サービスを構築し、そのうちのかなりの時間をDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の調査に費やしたため、米国のデジタル知的財産権の行使には頭痛がともなうをことをよく知っている。

NFTは、それよりはるかに明確で、透明性が高く、相互運用性があり、効率的なビジネス手法だ。すべての所有権の詳細は法律用語に埋め尽くされることなく、単純なコンピューターでも理解できる言葉で書かれている。さらにこれらの契約がシンプルであれば、ライセンスの利用が大幅に促進される。これは、購入しやすいMP3への移行が音楽ストリーミング産業の始まりとなった流れと同様だ。人々はやるべきことをしたいと考えており、それを容易にかなえられる製品があれば、それを実行に移す。

つまり、NFTはコラボレーションへの障壁を下げ、ファン自らもクリエイターを志せるきっかけなるということだ。ファンがアルバムを所有すれば、そのアルバムを使ってリミックスやサンプリングができるようになるだけでなく、ストリーミングしたり、バーで流したり、映画やポッドキャストのサウンドトラックに入れたりする権利も得られるというのであれば、それはとてもすばらしいことだ。

当然のことながら、NFTの利用に際して譲渡される権利はアーティストが所有しているか、権利者により譲渡される必要がある。これが独立系アーティストがこの領域でのイノベーションと早期導入を後押しする理由だ。彼らは自分たちのために公正な権利プロファイルを保持しており、そのおかげで活動の余地がさらに広がる。

契約を結んでいるアーティストにも参加のチャンスはある。自分の肖像や制作したアートをベースにしたアートやコレクター向けのNFTを発行することができるだろう。私は、クリエイターがNFTをメリットバッジやコンサートなどのライブイベントへのアクセスパスとして活用しているを見るのが好きだ。多くのミュージシャンがこのような新しい手法を使い、自分たちのファンクラブを変えることに成功している。そこでは、完全な所有権と、一緒にコミュニティを構築する機会を得られる。

訴訟ではなく、コラボレーション

ブロックチェーンのテクノロジーは、自分のファンを把握する、中間業者を介さずにファンに物を贈ったり売ったりする、共有されたアーティファクトやシグナルでコミュニティを形成することなどを可能にして、アーティストがファンとのコミュニティを構築するための直接的な方法を提供する。

こういった活動を組み合わせることで、アーティストは20年前(特にファンを訴えていたころ)をはるかにしのぐコミュニティ形成力が得られる。そしてこれらのことはすべて、かつて消費者へのアクセスを管理していた中間業者を介さなくとも実行可能だ。

さあ、一息ついて、クリエイターたちにこの新しい領域を開拓する余地を与えよう。そして、これから構築される新しい物事を保護するために知的財産法が役立つのであれば、それを称えよう。私たちは、近年の技術的な動きにおいて最も重要な原則が、いまだ有効であることを喜び、そして理解することができる。その原則とは次のようなものである。「作品を生み出すというのはたいへんなことであり、クリエイターとその作品は保護されるに値する」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Chris Fortier、翻訳:Dragonfly)

著作権問題に積極的に取り組むTwitch、インディーズ音楽ライセンス団体Merlinと提携

Twitch(ツイッチ)は、インディーズ系デジタル音楽ライセンスグループのMerlin(マーリン)とパートナーシップを結ぶ。Amazon(アマゾン)傘下のライブストリーミングプラットフォームであるTwitchがレコード業界と密接に連携するための最新の取り組みだ。

この契約は、Merlinのインディーズ系アーティストがTwitchのライブストリーミングエコシステムをどのように活用できるか、ひいてはそうしたアーティストが、ゲーム以外のコンテンツにさらに進出するというTwitchのビジョンをどのように強化するかを強調している。

MerlinとTwitchは、提携によって「世界中のライブ体験が解放され」、Twitchのミュージシャン向けインキュベーター「The Collective」などを通じて、Merlinのメンバーに新しいマーケティングチャネルが開かれることになる、と述べている。

Merlinは、Anjunabeats、Armada Music、Beggars Group、Empire、MNRK Music Group、Epitaph Records、Lex Records、Mad Decent、Secret City、Sub Popなど世界の数万ものインディーズレーベルを代表している。

ここ数カ月でTwitchは、著作権執行に対する同社の甘いアプローチを批判していた大手レコード会社数社との関係を強固なものにしている。無策という評判が広まった後、Twitchは方向転換し、ライブストリームでライセンス許可されていない音楽を再生するユーザーを厳しく取り締まっている。

Twitchは現在、完全な音楽ライセンス契約には至らないものの、予備的な契約を締結して中間的な立場を模索しているようだ。両社は、この提携の金銭条件については明らかにしなかった。

MerlinのCEO、Jeremy Sirota(ジェレミー・シロタ)氏はTechCrunchに「Merlinと当社のメンバーは、Twitchとこのパートナーシップを締結し、我々の関係を発展させることに興奮しています。どんなパートナーシップにも出発点があり、TwitchとMerlinのメンバー、そのアーティストの間に長く実りある関係を築くことを楽しみにしています」と述べた。

パンデミック発生に伴い、多くのDJやミュージシャンがオーディエンスを構築し、引きつけるためにTwitchに目を向けた。両社は、今回の契約により、アーティストがTwitchで成長するための新たな道が開かれ、プラットフォーム上で「献身的なサポート」を提供することになると指摘した。

「Merlinとの提携により、Merlinの会員であるインディーズ系アーティストに、献身的で熱心なTwitchコミュニティへの参入の道が開かれます」と、Twitchの音楽部門責任者Tracy Chan(トレイシー・チャン)氏は声明で述べた。

AmazonとUniversal Music((ユニバーサルミュージック)は1月24日の週に、Amazon MusicのユーザーがUniversalの膨大なカタログでより多くのHD音楽にアクセスできるようにする契約を発表した。この契約の一環として、TwitchはUniversalと協力し、同社のアーティストにファンと関わる「商業的機会」を提供するとともに、Twitchプラットフォーム上にアーティストとレーベルのチャンネルを開設する。

Twitchは2021年9月にもWarner Music Group(ワーナーミュージックグループ)と同様の契約を結び、Warnerやその他の音楽権利者に、ライセンスを受けていない音楽を共有するストリームに対処する新しいシステムも提供すると発表している。今のところ、TwitchとMerlin、Warner、Universalとの契約は、クリエイターが利用できるライセンス音楽のカタログを広げてはいないが、そうした踏み込んだ動きはより深い関係への道を開く可能性がある。

2年前、Twitchはストリーマーがライセンス供与された音楽を見つけるのを助けるSoundtrackというツールを立ち上げたが、当時は主要レコードレーベルとの関係がまったくなかった。このツールは、ストリーマーを限られた数のライセンス供与楽曲に誘導し、ミュートあるいは削除されたVOD(ビデオオンデマンド)アーカイブ、未認可のオーディオを使用したユーザーのアカウントに対する警告などの事例を減らすように設計されている。

2020年以降、Twitchはクリエイターのストリームに無許可の音楽が現れると、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく取り締まりを行ってきた。同社の対応に関しては、警告なしに突然アーカイブされた動画を削除したTwitchにストリーマーが反発しており、論争の的になっている。2020年後半、このようなDMCAの取り締まりを受けたTwitchのストリーマーたちは、通知を受けた後、どのコンテンツが音楽ライセンス規則に抵触した可能性があるかを特定する方法がないと不満を述べていた。

この積極的な姿勢は、音楽業界の主要プレイヤーからの圧力の高まりに対応するものだった。アメリカレコード協会(RIAA)のCEOであるMitch Glazier(ミッチ・グレイザー)氏は2020年に、Twitchとメジャーレーベルの緊張が高まる中「Twitchは、同じユーザーが繰り返し法律に違反していることに目をつぶり続け、一方で録音音楽の大量の無断使用による収益を懐に入れている」と指摘した。

Twitchは2021年9月に、全米音楽出版社協会(NMPA)と協定を結び、権利を所有していない音楽を意図的に使用していないストリーマーを報告するための「より柔軟で寛容な」システムを確立し、代わりにコンサートのライブ配信のような「明白な」違反に重点を置いた。新システムでは、ストリーマーは不注意による違反でアカウントレベルの制裁を受ける前に警告を受ける。

画像クレジット:MARTIN BUREAU / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

PUBGの開発元が著作権侵害を主張、ライバルのゲーム会社とアップルやグーグルを提訴

人気バトルロイヤルゲーム「PlayerUnknown’s Battlegrounds(プレイヤー・アンノウンズ・バトルグランド)」の開発元であり、2021年の世界的なモバイルゲーム売上ランキングで第6位となった「PUBG Mobile(PUBGモバイル)」のメーカーであるKrafton(クラフトン)は、ライバルゲームメーカーであるGarena Online(ガレナ・オンライン)の「Free Fire(フリーファイア)」が著作権を侵害しているとして、アプリストアとGarenaを提訴している。

この訴訟では、Garenaのゲームが、オープニングからゲームの構造や遊び方、武器や防具、独自のオブジェクトの組み合わせと選択、ロケーション、全体的な配色や素材、テクスチャーなど、自社のゲームの数多くの側面をコピーしていると、Kraftonは主張している。

また、Google(グーグル)傘下のYouTube(ユーチューブ)も、侵害された素材の動画をホストしているとして、訴訟にその名を挙げている。

Garenaはこの訴訟に対して声明を発表し「Kraftonの主張は根拠のないものです」と、同社の広報担当者は述べた。

訴状によると、Garenaは、2017年にKraftonのBattlegroundsが発売された直後に、このゲームの要素をコピーした疑いのあるゲームの販売をシンガポールで開始したとされている。Apple(アップル)とGoogleは、アプリストアでこのゲームのモバイル版の販売を開始していた。このゲームは当初「Free Fire:Battlegrounds(フリーファイア:バトルグランド)」と呼ばれていたが、現在は「Free Fire」と呼ばれている。シンガポールでの訴訟は両社の間で和解に至ったものの、KraftonはGarenaとライセンス契約を結んだわけではないと、訴状には記されている。

その後、2021年9月28日にGarenaは「Free Fire MAX(フリーファイア・マックス)」という新タイトルをリリースした。これはAppleやGoogleのアプリストアで配信されている別のモバイルゲームだが、Free Fireと同じユーザー体験を提供することを目的としており、Battlegroundsの数多くの要素も侵害していると、Kraftonは主張している。同社は、この侵害したゲームが世界的な売上から「数億ドル」の利益を得たと指摘。AppleとGoogleも、このゲームをアプリストアを通じて配信することによって、手数料という形で利益を得ている。

その一方で、Kraftonは「Free Fire」および「Free Fire MAX」のゲームプレイの動画を配信しているYouTubeも、訴訟の対象として名前を挙げている。これらの動画は何億回も視聴されており、動画によっては1本で100万回以上も再生されている。また、YouTubeは、Battlegroundsの権利を侵害してドラマ化した長編実写映画も公開していると、訴状では述べられている。

Kraftonは、AppleとGoogleが問題を解決しようとしないため、裁判所に頼ることにしたという。同社によると、2021年12月21日にゲームの配信を停止するよう、両社のアプリストアに求めたが、拒否されたとのこと。また、YouTubeも侵害している動画を削除しようとなかった。

今回の訴訟は、Kraftonの後続タイトルである「PUBG:New State(PUBG:ニューステート)」が11月にリリースされた直後のことであり、このタイトルには多くの新要素が含まれている。この問題が解決されなければ、同社は最新作も「コピー」されることを懸念しているのだろう。

人気アプリやゲームのクローンは、アプリストアではよく見られる問題であり、サブスクリプション市場の成長により、その行為はますます増えている。実際、例えばAppleは今週、人気オンラインゲーム「Wordle(ワードル)」のクローンを、App Storeから一掃しなければならなかったばかりだ。Appleはクローンアプリで利益を失った別の開発者からの訴訟にも直面している。Wordleと同様、数年前に人気を博した「Threes(スリーズ)」や「Flappy Bird(フラッピーバード)」などのゲームもクローンの被害に遭っている。しかし多くの場合、これらのゲームはよりシンプルで、コピーしやすく、人気が落ちるのも早かった。しかし、PUBG Mobileのようなゲームの場合、コピーされることによる経済的な影響は、はるかに大きな規模となる。

アプリ情報分析会社であるSensor Tower(センサータワー)のデータによると、PUBG Mobileは2020年に27億ドル(約3070億円)を売上げ、2021年には29億ドル(約3300億円)に伸びている。ちなみに、Garena Free Fireの2021年の売上は約12億ドル(約1365億円)だった。

この訴訟は、2022年1月10日にカリフォルニア州中央地区の米国地方裁判所に提出された。Kraftonは、この問題を解決するために陪審員裁判を要求している。Kraftonが勝つためには、単に類似した「バトルロイヤル」スタイルのゲームを提出するだけでなく、Garenaが法的に侵害していることを裁判所に証明しなければならない。

Kraftonは、最近ではチーター(不正行為プレイヤー)に対する訴訟で勝訴するなど、しばしば自社のゲーム帝国を守るための行動を起こしている。Kraftonの子会社であるPUBG Corporation(PUBGコーポレーション)も、同じくPUBGのクローンをめぐってNetEase(ネットイーズ)を著作権侵害で訴え、和解に至ったことがあるが、2018年には「Fortnite(フォートナイト)」をめぐりEpic Gamesに対して同様の訴訟を起こしたものの、後にこれを取り下げている

なお、今回の訴訟に関してKraftonはコメントの要請に応じていない。

画像クレジット:PUBG MOBILE

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

始まる前から終わっていた6人のベストセラー作家によるNFTの世界、「廃墟の王国」の顛末

米国時間10月25日の朝「The Ruin stirs, and the Five Realms rumble(廃墟が復活し、五つの世界の争いが始まる)」というサイトがウェブで公開された(現在はアーカイブ化されている)。サイトには次のように記されている。「New York Timesのベストセラー作家であり、数々の賞を受賞しているMarie Lu(マリー・ルー)、Tahereh Mafi(タヘラ・マフィ)、Ransom Riggs(ランサム・リッグス)、Adam Silvera(アダム・シルヴェラ)、David Yoon(デビッド・ユーン)、Nicola Yoon(ニコラ・ユン)が共同制作したファンタジー大作「Realms of Ruin(廃墟の王国)」に、みなさまをご招待いたします」と。

著名なヤングアダルト作家である彼らは、この発表をソーシャルメディアで共有し、ファンのためにTwitter、Instagram、Discordサーバーを開いて、従来の出版業界をWeb3の新たな時代に押し上げる、話題の新しいプロジェクトについて話し合った。Web3とは、プライバシー、データの所有権、作品(ファンによる創作物も含むと考えられる)の報酬に焦点を当てた分散型インターネットの進化形である。

この共同幻想作品を進めるにあたり、まず6人の作家が、彼らが著作権を持つ架空の世界について元となる12の物語を投稿する。ファンは(それをベースに)二次創作物を書き、それをSolanaブロックチェーンでNFT(非代替性トークン)としてミント(作成・発行)し、「Realms of Ruinに提出する。作家たちがファンが書いた二次創作物をおもしろいと思えば、それをプロジェクトの公式な物語の一部として宣言する。

数時間後、ファンがDiscordサーバーでプロジェクトへの懸念を展開した。作家が作った世界についての二次創作物をファンが書いた場合、その二次創作物の所有権は誰が持つのか?二次創作物をNFTとしてミントすると、二次創作物の著作権はどうなるのか?さらに、作家たちがターゲットとする読者は、CoinbaseやGeminiのようなプラットフォームで暗号資産を購入するには若すぎることを考えると、懸念はさらに悪化するのではないか?

ハーバード大学ロースクール、フランク・スタントン憲法修正第1条の教授、Rebecca Tushnet(レベッカ・タシュネット)氏は、この状況を次のように的確に表現する。「人々が理解できないターダッキン(七面鳥にダックとチキンを詰めて焼いた料理、詰め込まれた状況の例え)のようなものだ」。つまり、一般的なNFTの問題に加えて、著作権の問題や、二次創作作家が商業的な環境で作品を収益化することに躊躇してきたという歴史的な問題が詰め込まれているのだ。

6人のヤングアダルト作家と9人の開発者チームは、2カ月間、昼夜を問わず休暇も取らずにRealms of Ruinの実現に向けて取り組んだが、発表から数時間後、大きな反響を呼んだこのプロジェクトは中止された。

TechCrunchは、Realms of Ruinプロジェクトに詳しい関係筋から匿名で話を聞いた。関係筋によると、開発者チームと協力してプロジェクトを進めていた作者たちは、得るものよりも失うものの方が大きいと判断してプロジェクトを終了したとのことだ。

プロジェクトはさまざまな要因が重なって最終的に破綻した。ターゲットとしていたユーザー層はNFTのミントによる環境への影響を懸念していたものの、NFTの仕組みを十分に理解していたわけではない。プロジェクトのさまざまな要素も事前に十分に検討されていなかった。また、ファンは自分の二次創作物を収益化することで生じる法的な問題を懸念していた。

新興技術のディストピア

「Realms of Ruin」に参加したマリー・ルーやタヘラ・マフィの作品のような、気候変動などの現実の問題に対する不安を反映したディストピア小説に惹かれるヤングアダルトの読者は多い。マリー・ルーの未来小説は、気候変動による大惨事が差し迫っていることを予見させるもので、それを読んだユーザーは、NFTをミントする際の環境コストに関心を持っていた。

イーサリアムやビットコインのようなブロックチェーンは「Proof of Work(PoW、プルーフオブワーク、暗号資産とブロックチェーンを紐づける仕組み)」という取引の正当性を検証するアルゴリズムで「計算」を行っている。この計算はエネルギーを大量に消費し、効率が悪い。

そのため、Twitterなどでは、自然災害の頻度が増加しているという投稿と、米国の平均的な家庭の1週間分の電力と同じだけのエネルギーを消費する暗号取引で高価なJPGを購入するユーザー、というニュースが混在し、認知的不協和が生じている。しかし、Realms of Ruinは、Solanaブロックチェーンを使用していることをアピールして、こういった懸念を軽視していた。

アーカイブされる前のプロジェクトのウェブサイトには次のように書かれていた。「Realms of Ruinは、環境への影響を最小限に抑えた低コストの取引を実現するためにSolana上に構築されています」「ここまで読んでくれたあなたは、Solanaブロックチェーンで物語からNFTをミントする際に必要なエネルギーよりも多くのカロリーを消費しています」。

現在イーサリアムでミントされるNFTとは異なり、SolanaでNFTをミントするための取引手数料は1セント以下になる。Solanaブロックチェーンの開発元、Solana Labs(ソノララボ)のコミュニケーション責任者であるAustin Federa(オースティン・フェデラ)氏は、TechCrunchの取材に応じ「SolanaでNFTをミントする際に必要なエネルギーは、30mlの(室温の)水を沸騰させるのに必要なエネルギーよりも小さい」と話す。これはSolanaが部分的に「Proof of Stake(PoS、プルーフオブステーク、PoWの代替システム)」という、PoWよりも検証に必要なエネルギーが少ないアルゴリズムを利用しているからだ。しかし、10代のファンがブロックチェーンの違いを十分に理解しているとは思えない。プロジェクト発表後のツイートの中には、NFTをミントすることをアマゾンの熱帯雨林の破壊に例えているものもあった。

このような理解の不足は、暗号化技術が解決しなければならない大きな問題、すなわち一般のユーザーにどのように理解してもらうか、という問題を象徴している。

フェデラ氏は次のように話す。「人はNFTと聞いて、クリスティーズ(老舗オークションハウス)で6900万ドル(約78億5000万円)で売買されるものか、非常に暗号化されたものかのどちらかを思い浮かべます」「私がRealms of Ruinにとても期待したのは、彼らがそのギャップを少しでも埋めようとしていたからです」。

計画性の欠如、説明不足による懸念

もう1つの問題は、NFTの、いわゆる「ガス代(手数料)」をめぐる誤解だった。

一般的にNFTをミントする際にはガス代がかかる。イーサリアムブロックチェーンでは、ミントにかかるコスト(ガス代)が高く未だに重大な参入障壁となっているが、Solanaブロックチェーンではわずか数円しかかからない(フェデラ氏は、Solanaネットワーク全体で長期的に手数料を低く抑えるように設計されていると付け加える)。Realms of Ruinの世界に創作物を提出する際は、NFTをミントするためにガス代の取引が発生するが、ファンの間では「二次創作物を書くために作者にお金を払わなければならない」という誤解が生じてしまった(実際は、ブロックチェーンでのミントの一環として手数料が発生する、が正しい)。

原作者がほとんど介入しない活発なファンコミュニティがオンラインで無料で展開される現在、こういった誤解は厄介だ。

ヤングアダルト作品を扱うエージェントであるMegan Manzano(ミーガン・マンザノ)氏は、TwitterでRealms of Ruinに対する懸念を表明している。「もっと検討できたのではないか、あるいはどこかに正しいことを説明するセクションが用意されていたのではないか……事前に説明できたはずの質問がたくさんあったように感じました」。

また、キャラクターのNFTを収集品として販売するというRealms of Ruinの計画も戸惑いの対象となった。プロジェクトのマーケティングでは、これらのデジタル収集品がストーリーの共同執筆という要素とどのように関わりあうかも不明瞭だった。

関係筋によると、キャラクターNFTの販売は、すでに暗号化技術に慣れている人を対象にすることを意図していて、利益は「Community Treasury(コミュニティトレジャリー)」に充てられ、ガス代の補助や、おもしろいストーリーに対する暗号化技術でのインセンティブの提供など、コミュニティが定めるあらゆるベネフィットのために利用されるという。しかし、キャラクターのNFTを持っていないとそのキャラクターが主人公の創作物を書くことができないと思い込むファンも存在し、プロジェクトの開発者はRealms of Ruinのウェブサイトで、それが誤りであることを適切に説明していなかった。

この関係筋は、Community Treasuryの内容についても説明が不十分だったと認めている。

ある開発者はDiscordで次のようにコメントした。「近いうちにコミュニティでいつ、どのようにTreasuryを利用するかを決定します。そのような決定をするための仕組みを作っていきたいと思っています」。

ファンからは次のような質問があった。「このコミュニティは現在、事実上このDiscordだけで成立していますが、仮に私たち全員がトレジャリーの収益をすべてユニセフに寄付すると決めたら、そうするのですか?」。

「はい、そうです(もう少し複雑ですが)」と開発者は答え「みなさんが知りたいと思っているすべての質問に対する答えが準備できていないことがわかりました。質問に答えられるように努力します」とコメントした。

ファンからは「発表時にこれらの回答がないのは無責任だ」という指摘があったが、関係筋によれば、このプロジェクトは11月8日から展開される予定となっていて、今回の発表は(ローンチではなく)ティーザー(宣伝したい商品の要素を意図的に隠して注目を集める広告)を目論んだものではないか、と話す。

二次創作物と所有権、NFT

二次創作物は著作権や所有権といった厄介な問題をはらみながらも肥沃な市場である。

トップクラスの二次創作作家であれば、オンラインでの成功を現実の出版へとつなげることもできる。オンラインで何万人もの読者を獲得することができれば、オリジナルのキャラクターとオリジナルのストーリーで、 New York Timesのベストセラーリストに名を連ねることができても不思議はない。

最近の例としては、2019年に出版されたTamsyn Muir(タムシン・ミューア)の「Gideon the Ninth(第九のギデオン)」があり、New York Timesは「過剰な宣伝をすべて実現した壊滅的なデビュー作 」と評している。ミューアは、自分が二次創作物を書いていたことを隠してはいない。また、二次創作物をはっきりと支持しているのが、マッカーサー財団の「ジーニアスグラント」受賞者であり、権威あるヒューゴ賞の最優秀小説賞を3年連続で受賞した唯一の作家でもあるN.K. Jemisin(N.K. ジェミシン)だ。収益面では「Fifty Shades of Grey(フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ)」シリーズのE.L. James(E.L. ジェイムズ)が、二次創作物をオンラインに投稿することでキャリアを構築した作家の最も良い例かもしれない。このシリーズが世界的にヒットする前、彼女は「Twilight」の二次創作物を書いていた。

しかし、オンラインプラットフォームを通じた二次創作物の収益化はもっと面倒な問題だ。例えばTumblrが有料のサブスクリプション商品「Post+」を展開すると発表した際、同社はこの商品で利益を得られるコンテンツクリエイターの例として、二次創作作家を挙げたが、これを見た作家たちからは、二次創作物を有料化することで法的な問題が発生するのではないか、という懸念の声が聞かれた。

「私が一番心配していたのは、(Realms of Ruinプロジェクトの作家たちが)ファンにたくさんの作品を書いてもらい、その中から自分たちの世界に合うものを選ぶ、という点でした。彼らがすでにこの世界を構築し、著作権を持っている、というのが厄介です」とマンザノ氏は話す。同氏は、二次創作作家たちが自分の作品を使って今後何をすることができるか、あるいは作品を認められたり報酬をもらえたりするかどうかが不明瞭だ、と話す。

このプロジェクトに近いTechCrunchの情報源は異なる意見のようだ。創立にかかわった6人の作家がRealms of Ruinの著作権を所有しているとはいえ、(少なくともウェブサイトのアーカイブによれば)二次創作作家はフランチャイズの所有権を持たずに大規模な出版プロジェクトに参加することで報酬を得ることができる。例えばスター・トレックの小説は850冊以上出版されているが、その作家たちは「スター・トレック」の権利を有しているわけではない。

前述のレベッカ・タシュネット教授(大手二次創作サイト「Archive of Our Own」を運営する「Organization for Transformative Works(変形的作品のためのNPO)」の法務チームのメンバー)は、こうした疑問(に対する回答)はRealms of Ruinと作家の間で実際にどのような契約が結ばれているかによって異なる、と話す。

タシュネット教授はTechCrunchの取材に応じ「プロジェクトが権利を認めているのであれば、著作権侵害の問題ではなく所有権の問題になります。これは契約内容で決定されます。しかし、一般的に予想されるのは、二次創作作家には限られた権利しかない、ということです」と話す。Realms of Ruinプロジェクトは正式に開始される前に閉鎖されたため、契約の詳細は不明である。

「二次創作の権利は最も面白みのない話でしょう」とタシュネット教授は続ける。「作家が『私が作った世界を利用して遊んで欲しい。収益の一部も支払います』ということは珍しくありません。Kindle Worldsもこのような試みでしたが、最終的には採算が合わなかったようでAmazonはKindle Worldsを閉鎖してしまいました」。

二次創作作家たちの多くは、Kindle Worldsのようなプロジェクトは「企業がコミュニティから利益を得るための見え透いた手段」であるとして懐疑的である。こういった疑念は、Archive of Our Ownの設立時にまで遡る。

2006年「FanLib」というプラットフォームがベンチャーキャピタル投資で300万ドル(約3億4000万円)を調達し、著作権者(「スター・トレック」を所有するViacomCBSなど)が二次創作コンテストを開催してファンと交流できるプラットフォームを立ち上げた。しかし、当時の二次創作作家たちは「FanLibはコンテストに入賞しなかった人も含めて、すべての応募者に作品の権利を放棄させ、FanLibによる商業目的での使用を許可するよう要求している」とこれを批判した。これらの二次創作作家が「スタートレック」の著作権を所有していないことは当然だが、これらの作家にとっては、自分がページに載せた実際の言葉を所有すること、そしてViacomCBSが自分の作品を商業化したい場合は、自分が許可するかどうかを決定できる、ということが重要だったのだ。

推理小説作家で、自身も二次創作作家であることを公表しているNaomi Novik(ナオミ・ノヴィク)は、2007年にインターネット上のペンネームで画期的なブログ記事を投稿し、後に「Archive of Our Own」となるプロジェクトを提案した。Archive of Our Ownは広告のない、寄付ベースの、二次創作作家が運営する二次創作作家のためのプラットフォームで、二次創作物の合法性を前面に打ち出している。なお、FanLibは2008年までにディズニーに売却され、すぐに閉鎖された。

Archive of Our Ownは現在、PatreonやKo-Fiのようなサイトにリンクしてチップを募ることを禁止して、収益化によって起こりうる著作権の問題から作家を守るための活動をしている。

「二次創作物を収益化しようとする試みは往々にして多くの論争を引き起こします」とタシュネット教授は指摘する。「これまでの経験から、ファンのコミュニティを活性化できる最も良い解決策の1つは、コミュニティに任せ、実際には交流を制限することだとわかっています。その方がファンダム(熱心なファンや彼らによる文化、世界)にとっても、ファンダムを生み出す作品を作った作者にとっても、一番健全な状況を作れるようです」。

Realms of Ruinプロジェクトを知る関係筋は「Realms of Ruinをブロックチェーン上に構築することにしたのは、ブロックチェーンの技術で、二次創作作家が、その作家自身の作品であると保証されたうえで、合法的に作品の対価を得られる新しい方法を実現できるから」だと説明する。

ブロックチェーン上では、ストーリーがどのようにお互いに影響したかを系統で簡単に追跡することが可能で、作家同士がお互いの作品に刺激を与え合ったことを確認することができる。つまり、誰かが誰かのストーリーに呼応するストーリーを書いて、そのストーリーに紐づくNFTが高額で売却された場合は、インスピレーションを与えた作家にも報酬が支払われることになる。また、原作者にとってのNFTの魅力は、従来の創作文化での販売とは異なり、NFTが売れるたびに、原作者にも還元されるという点にある。従来の創作文化では、原作者が1万円で絵を売った後、買い手が10万円で転売した場合、(販売額の何パーセントかを原作者を受け取るという権利を明記した契約書がない限り、)原作者に対するロイヤリティは発生しない。

しかし、タシュネット教授は、二次著作物が直面する法的問題を解決するには、ブロックチェーンの利用だけでは不十分だと主張する。

教授は次のように話す。「NFTに没頭している人たちは、何か新しい問題を解決したと思っていますが、実際にはそうではありません。興味深い法的な問題があったとしても、それとNFTとの関連はただの偶然以上のものではなく、著作権に関する問題は現実世界の法律が決めることです」「この件に関して新しいことは何もありません。自分の原稿を船で送り出し、どこの国の法律が適用されるのかを調べなければならないということは、太古の昔から変わっていないのです」。

廃墟

結局のところ、Realms of Ruinは、数時間だけ公開され、アーカイブされてしまったプロジェクトだった。しかしながらRealms of Ruinの事例は、Web3を世界に広める際に、既存のインターネットコミュニティのスピリッツがどのように守られるのかについて(当然)懐疑的なコミュニティを説得しようとして直面するであろう課題を示している。

興味深いことに、Web3の価値観は、Archive of Our Ownのような二次創作物のメッカとあまり変わらない。どちらも現在よく見られるモデル、すなわちユーザーの関心の収益化と引き換えに無料のアクセスを提供する、広告付きのインターネットサービスを超えようとしている。

「この技術は、まだ信じられないほど初期の段階にあります」とフェデラ氏。同氏はRealms of Ruinに対する反発の多くは、ユーザーがブロックチェーンベースのプロジェクトを誤解していることによるもので、事実に基づくものではなかったと考えている。「しかしながら、いずれのプロジェクトも、暗号化技術とは何か、なぜそれをベースにプロジェクトを構築することにしたのかを、もっと上手に説明するべきです」。

Realms of Ruinを知る関係筋は、Web3を出版の世界に持ち込むのは時期尚早だろう、と話す。暗号化技術推進の先駆者たちが耳当たりの良い言葉で、作者がコンテンツに対して正当な報酬を得られる広告のないインターネットの世界を説いていても、多くのユーザーはこのエコシステムに懐疑的だ。ともすれば詐欺っぽい男性中心の暗号化技術のコミュニティで、外部からのアクセスも難しいように感じられる現状では、ユーザーを責めることはできない。

マンザノ氏は次のように話す。「導入にはまだ早すぎると思います」「著作権や、作家に期待されること、権利、商品化などを結び付けて考える必要があります。一定のルールや期待値が示されていないと、どっちつかずのいい加減なものになってしまうのではないかと心配しています。出版業界がこの分野を把握し、取引や商品化、ファンへの露出という問題に適切に統合するには、あまりにも新しすぎるのです」。

関係筋は、プロジェクトに協力している開発者と作家たちは、その辺り、すなわち、たとえばファンがRealms of Ruinのストーリーをオリジナルの小説にして販売した場合にどうなるのか、ということを十分に検討していなかったことを認めている。暗号化技術との連携よりも、Realms of Ruinの展開の不透明さの方が、プロジェクトの命取りだったのかもしれない。

「10代の頃の自分だったら、好きな作家が自分も参加できる何かを作っているのを見たら飛びついていたかもしれませんね」とマンザノ氏はいう。「ファンを集結して盛り上げるには、もっと緻密な方法があるように思います」。

画像クレジット:Grandfailure / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

フランスがグーグルに650億円の罰金、記事使用料交渉で命令に従わず

コンテンツ使用対価の支払いに関するメディアとの協議で重大な違反が認められたとして、フランスはGoogle(グーグル)に5億ユーロ(約650億円)の罰金を科した。コンテンツ使用での対価支払いは、著作隣接権をニューススニペットにも拡大したEU新デジタル著作権指令で求められている。

制裁金は、Googleが2020年10月に発表したニュース対価総額10億ドル(約1110億円)の半分を上回り、この規模はかなりのものだ。Googleは自社プラットフォームに表示される「高品質のコンテンツを制作してキュレートする」ためにメディアに対価を支払うと述べていた。

関連記事:グーグルがニュース新サービス立ち上げ、今後3年間で記事使用料約1050億円支払いへ

当時、Googleのそうした動きは、コンテンツを「ショーケース」する幅広い権利をGoogleに与える取引条件を受け入れるようメディアに迫ることで、コンテンツ再使用のためにメディアに対価を支払う法的義務を小さくしようという意図があったようだ。

フランスの監視当局はいま、声高にその慣行に制裁を科した。

ロイターによると5億ユーロという額はGoogleがフランスのメディアに払うとすでに同意した額をかなり上回り、このことも注目に値する。ロイターは2021年2月、Googleが今後3年にわたって7600万ドル(約84億円)を支払うことで121のメディアと契約を交わした、と報じた。

フランスの競争当局は7月13日、メディアの保護されたコンテンツの表示の対価を支払うためにメディアと誠実に協議するようGoogleに命じた2020年4月の決定に関して、同社が数多くの命令に従わなかったとして制裁金5億ユーロを科すと発表した

当初、GoogleはフランスでGoogle Newsに表示していたリンクとともにコンテンツのスニペットの表示を停止することで著作隣接権を回避することを模索した。しかし監視当局は、それは支配的な地位の乱用だととらえ、Googleに対し法律の回避をやめて誠意を持ってコンテンツ再使用の対価を払うためにメディアと交渉するよう命じた。

ただ、Autorité de la Concurrence(フランス競争委員会)はGoogleがこの命令に関して取った対応について快く思っていない。

多くのメディアが、交渉は誠実なものではなかった、Googleは支払いを知らせるのに必須の鍵となる情報を提供しなかった、と競争委員会に苦情を申し立てた。

雑誌出版社組合(SEPM)、出版社団体Alliance de Presse d’Information Générale(APIG)、フランス通信社(AFP)は2020年8〜9月に苦情を申し立て、監視当局による調査が始まった。そして7月13日の重大違反の発表に至った。

もしGoogleが監視当局の命令に反し、2カ月以内にメディアに必要な情報すべてを提供しなければ、1日あたり最大90万ユーロ(約1億2000万円)という罰金を追加で科すこともあり得る。

調査についての詳細を説明するプレスリリースの中で、競争委員会はGoogleが著作隣接権を「別の資産価値をともなわない付随するもの」として組み込むことを求めて、メディアとの協議の中でPublisher Curated Newsと呼ぶ提携のもとに「Showcase」というグローバルの記事ライセンスプロダクトを一方的に押し付けることを模索したと述べた。

競争委員会の調査によると、メディア側は著作権報酬の交渉は拒否されたとして対応することを求めている。

競争委員会はまた、Googleが保護されたニュースコンテンツの表示で発生する収入の範囲に関して、協議の幅を「不当に」狭めたとした。Googleはメディアにニュースコンテンツを表示するGoogle Searchページからの広告収入のみが報酬支払いのレベル決定で考慮される、と伝えていた。

他のGoogleサービスからの収入とコンテンツに関連する非直接的な全収入の排除は著作権法違反であり、先のコンプライアンス命令に反するものだと当局は判断した。

Googleはまた、政治および一般情報証明を持たないコンテンツを排除することで、著作隣接権に関する法律の範囲を「故意に制限した」。この点について監視当局は知的財産に関する基準の「誠意のない」解釈としてとらえた。

そして監視当局は、Googleがサードパーティのメディアによって使用された場合、そのコンテンツに関する支払いから通信社を排除しようと模索したことも確認した。「フランスの議員は通信社を含める必要性についてかなりはっきりとした考えを示してきました」と指摘することで、当局はGoogleのこの試みが2020年4月の命令に従わないものと強調した。

その他には、Googleは「報酬の透明性ある評価」のために「部分的」で「不十分」な情報をメディアに提供しただけだったとも指摘した。さらには、命じた期限のわずか数日前まで情報提供を遅らせ「遅い」とも非難した。

当局の調査は、著作権法で保護されているコンテンツがいかにGoogleのプラットフォームで表示されるかという点での中立の義務に関連する別の命令のコンプライアンス問題を強調している。これについて監視当局は次のように述べている。「Googleが導入した戦略はこのように、メディアにShowcaseサービスの契約条件を受け入れ、保護されたコンテンツの現在の使用に特に関連する交渉を放棄するよう、強く促してきました。これは、提案された条件を受け入れた競合相手より見劣る表示と支払いを行っているという違反に基づく差止命令の対象でした。ゆえに、Googleは保護されたコンテンツを自社のサービスで表示することに交渉が影響しないようにする必要な方策を取ったと主張することはできません」。

別の命令は、著作隣接権のためにメディアに支払った対価を相殺することで支配的な地位の利用をGoogleに模索させないようにするものだった。

これに関して監視当局は、Googleのプラットフォームでの表示のためにShowcaseがメディアにコンテンツのスニペットの制作だけでなく「大量のエキス」と全記事すら求めていると指摘し、このアプローチについても問題視した。

GoogleはShowcaseプログラムの参加を、Subscribe with Google (SwG)という別のサービスとリンクさせていることもわかった。これはGoogleが著作隣接権に関する交渉を、自社の収入につながり得る新しいサービスのサブスクと結びつけられるようにしている。

「極めて深刻な慣行」と糾弾している小見出しの下で、当局はGoogleの「意図的で念入り、かつ組織的な遵守しない戦略、そしてすでに数年にわたって展開している著作隣接権の原則とは「逆の戦略」の継続、そしてEUとフランスの法律に織り込まれた後に「著作隣接権の具体的な範囲をできるだけ最小化することを模索したこと」を非難した。

Googleは、メディアへの支払いを「可能な限り回避あるいは制限する」ための口実としてShowcaseを使い、と同時にサブスクやプレスタイトルなど、さらなる収入確保につながり得るメディアの新たなコンテンツへのアクセスを入手する機会として著作隣接権にかかる交渉を使うことを模索し、コンテンツ対価を国レベルで交渉するメディアの能力をなくすためにグローバル戦略を使うことを検討した、と当局は主張する。

「罰金5億ユーロの制裁は、確認された反則の重大さと、Googleが著作隣接権についての法律の正当な適用をさらに遅らせた行為を考慮しています。これはメディアや通信社のコンテンツの価値をさらに考慮に入れることを目的としています。当局は命令の適切な遂行について非常に神経を尖らせていて、不履行は過料につながります」と競争委員会の委員長Isabelle de Silva(イザベル・デ・シルバ)氏は声明で述べた。

5億ユーロの罰金と、もし当局の指示を無視し続けた場合、その慣行が1日ごとに科せられる罰金につながるという警告は、商業取引の詳細がフランスでは認められないことをGoogleに知らしめている。

「コンプライアンス」の利己的バージョンを形成しようという試みはおそらく当局からのさらなる制裁につながる。これは最近、Googleの広告事業の数多くの相互運用性の要件に適用され(2億6800万ドル、約296億円の罰金を科した)、メディアからの苦情に対処している。

Googleがフランスで著作隣接権問題に関して同意していることは、商業取引で少なくとも他のEUマーケットで達成できるものに対する基準を設けることだろう。EUマーケットでは著作権延長法も適用される。

フランス当局の制裁に関する声明で、Googleは調査の結果に失望を表明し、メディアとの交渉は誠意を持ってあたったと主張した。

「決定に非常に失望しています。当社はプロセス全体を通じて誠実に対応してきました。罰金は当社の合意を図る努力、ニュースがいかにGoogleプラットフォームで機能しているかという現実を無視しています。Googleはこれまでに著作隣接権に関する合意を発表した唯一の企業です。当社はまた、AFPとの合意をまとめるところでもあり、この合意にはグローバルライセンス契約、AFPの出版物の隣接著作権に対する報酬も含まれています」。

Googleは、当局の決定が「主に」2020年5〜9月に行われたフランスでの交渉に関するものであるとも指摘し、同社がそれ以降も「ソリューション」を見つけるためにメディアや通信社と引き続きやり取りしていると主張した。

その例として同社は、Alliance de la Presse d’Information Généraleと結んだ2021年1月のフレームワークエンゲージメントを指摘した。Googleはまた、Le MondeやCourrier International、L’Obs、Le Figaro、Libération、L’Expressなどを含むフランスの他のメディアとの合意も挙げた。

Googleはまた、AFPとのグローバルライセンス提携を結ぶことができるという自信も繰り返し示した。この提携に関してGoogleは、AFPの出版物の隣接著作権の対価も含めたい、と述べた。

フランス競争当局の「フィードバックを考慮し、当社のオファーを適応させる」と話し「当社の目的は変わりません。正式契約で物事を前に進めたいと考えています」と付け加えた。「CPPAPに認められている出版物をカバーすることで、『オンラインプレスサービス』として当社はすでにIPGを超えてメディアや通信社と関わっていて、我々の取り組みを評価する立場の独立したサードパーティを持つという申し入れを繰り返し、これにより事実についての議論をベースとできます」。

Googleが近年フランスで科された主要な罰金には、前述の広告テックの不正使用に関する先月の2億6800万ドル、2020年12月の同意なしのCookie使用に対する1億2000万ドル(約133億円)、2019年12月の不透明で一貫性のない広告ルールに対する1億6600万ドル(約184億円)、2019年1月のプライバシー違反での5700万ドル(約63億円)などがある。

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EU以外ではオーストラリアがこのほど、商業取引条件に同意しなかった場合、メディアのコンテンツ再使用に関してGoogleとFacebookにメディアとの強制仲裁を求める法律を成立させた

いかにパワフルなテックプラットフォームを制御し、インターネットによるデジタル出版への移行で収入面で打撃を受けてきた従来のメディア企業の持続可能性を確かなものにするかに議員たちが取り組むなかで、オーストラリアの法律は世界中からかなり注目された。

たとえば英国の競争・市場当局は、戦略的な市場支配力を使ったプラットフォームの乱用に積極的に競争当局が取り組めるようにするために英政府が前もって規制体制を整えるのに取り組んでいる中で、商業取引条件の交渉がうまくいかなかった場合の強制仲裁というオーストラリアの安全装置を「道理に適った」アプローチと表現した。

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オーストラリアの法律が採択されるのに先立ち、Googleはもし議会がそのまま法案を通せばオーストラリアでのサービスを停止せざるを得ないかもしれいないと警告し、加えてプロダクトの質を下げたりプロダクトを有料としなければならないかもしれないと示唆した。結局、Googleはオーストラリアでのサービス提供をやめなかった。

同社はまた、EUのニュースコンテンツのスニペットをカバーするためのデジタル著作権の拡大計画に対し、積極的なロビー活動を展開した。そして2019年にはニュースに決して支払わないと誓っていた。

それから数年後、コンテンツのライセンスを得るためにメディアに支払う10億ドルを発表した。しかしGoogleの他のジャーナリズムに便乗した広告事業のための最終的な請求書は10億ドルよりも大きな額になるかもしれない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:フランスGoogleメディア著作隣接権

画像クレジット:Vincent Isore

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi