Googleはニュース発行者の著作権をめぐる仏当局の罰金を不当として控訴

Googleは、フランスの競争当局(日本の公正取引委員会に相当)から7月に課せられた5億ドルあまりの罰金に控訴をしている。

その罰金は、コンテンツの再利用に関してニュースの発行者に使用料を支払う件における、アドテック巨人(Google)のやり方に関連している。

Google Franceの副社長でカントリーマネージャーであるSebastien Missoffe氏は今日の声明で、その罰金は「不釣り合いな」性格のものであり、ニュースの発行者と契約し、改定された著作権規則に準拠しようとしているGoogleの「努力」に照らして正当化できない、と主張している。しかしそれは、弁護の声明としては相当ひどいものだ。

Missoffe氏は次のように付言している: 「2020年の4月から8月までの交渉に基づいてフランスの公正取引委員会が行った決定に、われわれは控訴する。われわれは、いくつかの法的要素に同意しないし、その罰金は、合意を求め新たな法に準拠しようとするわれわれの努力に対して不釣り合いである」。「にもかかわらずわれわれは、関連する権利を認め、この事案の解決のために献身し、取引の正常化に努めていく所存である。これには、オファーを1200社の発行者に拡大することと、われわれの契約の諸側面を明確にし、またフランス公正取引委員会の7月の決定で求められているよりも多くのデータを共有することが含まれている」。

関連記事: フランスがグーグルに650億円の罰金、記事使用料交渉で命令に従わず

さかのぼって2019年に、欧州連合は、ニュース記事のリード文を著作権の対象に含めるする改定デジタル著作権法に合意した。その部分はGoogle Newsのようなニューズアグリゲーターが何年も前から毎日のように削り取って表示していた断片記事である。

EUの加盟国はアップデートされた全EUの改革を自国の法律に転置しなければならない。それを最初にやったのが、フランスだった。

また、改定法をGoogleに強制する件でも、フランスの競争当局が先陣を切り、昨年、このテクノロジーの巨人に対して発行者と交渉するよう命じた。そして発行者がGoogleの交渉態度に不平を言ったとき、超弩級の罰金を課した。

今夏に罰金を発表するときフランスの競争委員会は、このテクノロジー巨人が別の罰金や課金義務などの発生を避けるために、ローカルな発行者に対してグローバルに運用しているニュースライセンスプロダクトを一律に課そうとしていると非難した。EUとフランスの法律では、そういう発行者とも、個別に交渉すべきことが定められている。

Googleの手口に対する当局の不平不満のリストは膨大である。これに関し、本誌の初期の記事はここにある。だから、今度の控訴も、どこまでが単なる時間稼ぎなのか、よく分からないのだ。

ロイターによると、仏競争委員会は、控訴で罰金が一時棚上げになることはないし、すでに(7月に)発せられている期限が変更されることもない、と言っている。それによると、Googleがオファーの改定や発行者への必要な情報の提供に費やせる時間枠は、7月の時点で2か月しか残されていない。そのときまでにすべての要件を満たさなければ、日額90万ユーロの罰金が新たに発生する。その締切は、あと2週間後だ。

Googleは、控訴を発表したことによって発行者の心をそっちに集中させ、どんな代案でも受け入れる気持ちにさせる、と踏んでいるのかもしれない(そのための対象発行者の1200社への拡大か)。控訴の訴状にある「契約の諸側面を明らかにし」と「もっと多くのデータを共有し」などはすべて、Googleが仏当局から厳しくお尻ペンペンされた領域だ。

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Chesnot/Getty Images/Getty Images

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オープンソース版の登場に対してWhat3Wordsがセキュリティ研究者に法的警告を送付

デジタル・アドレス・システムWhat3Wordsを開発しているイギリスの企業がセキュリティの研究者に法的警告を送り、オープンソースのソフトウェアの共有を他の研究者たちに持ちかけたことは著作権を侵犯していると主張している。

XMissionのシステムズアドミニストレータAaron Toponce氏は、木曜日(米国時間4/29)にWhat3Wordsを代表している法律事務所から、オープンソースの代替システムWhatFreeWordsに関連するツイートの削除を求める書簡を受け取った。その書簡は、彼がそのソフトウェアのコピーを共有した者の身元を同法律事務所に開示し、今後そのソフトウェアを作らないことと、彼が現在保有しているコピーを削除するよう求めている。

その書簡は、要求遵守の日限を5月7日とし、それを過ぎれば「貴殿に対する関連の主張を追求するいかなる資格をも放棄する」、つまり、これ以上あれこれ主張するのをやめて告訴に踏み切る、と言っている。

当のToponce氏は「これは戦う価値のない戦闘だ」とツイートし、本誌には、今後の法的影響が怖いから要求には従った、と語った。削除せよと言っているツイートのリンクをその法律事務所に尋ねたが、答はなかったそうだ。「ツイートによっては、従わないこともありうる。その内容次第だ」、と彼は述べた。


Aaron Toponceに送られてきた法的警告(画像: 本人提供)

英国の企業であるWhat3Wordsは、世界全体を一辺が3メートルの正方形に分割して、そのそれぞれに他と重複しない3語のラベルをつける。それのどこが良いのかというと、緊急時などに現場の正確な地理的座標をいちいち調べて電話するよりは、3つの言葉を共有する方が簡単だからだ。

しかしセキュリティ研究家のAndrew Tierney氏が最近発見したところによると、What3Wordsは、1マイルも離れていない二つの正方形に似た名前をつけることがあるので、人の所在などで混乱を招くことがある。その後の記事でTierney氏は、安全性がきわめて重視される状況でWhat3Wordsを使うのは適切でないと言っている。

欠点はそれだけではない。批評家たちはかなり前から、「救命」を謳っているWhat3Wordsのプロプライエタリなジオコーディング技術は、問題の性質やセキュリティの脆弱性を調べづらくする、と批判してきた。

関連記事: Extra Crunch members get unlimited access to 12M stock images for $99 per year(未訳、有料記事)

What3Wordsがオープンでないことへの懸念も、WhatFreeWordsの開発に導いた動機のひとつだ。そのプロジェクトの現在のWebサイトにはコードがないが、オープンソースバージョンはWhat3Wordsをリバースエンジニアリングして作った、と言っている。そのWebサイトは曰く、「仕組みが分かったので私たちはその実装をJavaScriptとGoで書いた。What3Words社の著作権を冒さないために、彼らのコードはいっさい使っていない。相互運用性のために必要な最小限のデータを含めただけである」。

しかしそのプロジェクトのWebサイトは、いずれにしてもWhat3Wordsの弁護士たちが提出した著作権取り下げ要求の対象になってしまった。コードのコピーのキャッシュやバックアップの所在を示すツイートも、弁護士たちの要求でTwitterにより削除された。

Toponce氏はセキュリティの研究者としてTierneyの研究に協力し、Tierney氏は彼の所見をツイートした。Toponce氏によると、彼はWhatFreeWordsのコードのコピーを他の研究者たちと共有し、What3Wordsに対するTierney氏の当時進行中の研究を助けた。Toponce氏は本誌に、コードの共有を持ちかけたことと、What3Wordsの問題点を見つけたことが合わさって法的警告という結果になったのかもしれない、と言っている。

What3Wordsは、Toponce氏宛の書簡で、WhatFreeWordsには同社の知財が含まれており、同社はそのソフトウェアの「流布を許容できない」と言っている。

しかし、そのコードのコピーはすでにいくつかのWebサイトにあり、Googleで検索できる。そして本誌が見たところによると、Toponce氏が法的警告を公表してから、WhatFreeWordsのコードのリンクのツイートがいくつか登場している。Tierney氏は自分の研究にWhatFreeWordsを利用していないが、ツイートでは、What3Wordsの反応は「今やオンラインで誰にでも簡単に見つかるものに対して法的権利を主張するなんて、常軌を逸している」、と言っている。

本誌はWhat3Wordsに、裁判所がWhatFreeWordsの著作権侵犯を認めたら本当に訴訟をするのか、尋ねてみた。What3WordsのスポークスパーソンMiriam Frank氏は、コメントの複数回の要求に、応じなかった。

関連記事: Talkspace threatened to sue a security researcher over a bug report(未訳)

(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: TechCrunch(スクリーンショット)

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ショートムービーから著作権音源を自動検出する技術を擁する中国のACRCloud

TikTokをはじめとするショートムービーアプリの台頭には、音楽が中心的な役割を果たしている。この人気の高まりの中で果実を収穫しようとしているのは、ショートムービープラットフォームばかりではない。音楽の著作権を持つ人たちも、ユーザーが作ったちょっとしたショートムービーに使われている無数の音楽から、利益を引き出そうとしている。

著作権のある音楽を検出するには、レコードレーベルであれパブリッシャーであれ、音響指紋と呼ばれる技術に頼らざるを得ない。現在、そのツールで先駆者的な存在は現在はApple(アップル)が所有するShazam(シャザム)だ。

北京とデュッセルドルフに拠点を置く創設5年目のスタートアップであるACRCloud(エイシーアールクラウド)は、Audible Magic(オーディブル・マジック)やNielsen(ニールセン)が所有するGracenote(グレースノート)(Nielsen記事)などと競合しながら、このサービスを提供している。同社は、数百万曲を収納する参照データベースを使い、ターゲットとする曲の「指紋」またはID(決め手となるテンポや音調などの特徴)を素早く照合できる。

音響指紋、つまり音声信号のデジタル概要(画像クレジット:ACRCloud

ACRCloudは、提携関係が秘密であるため社名は明かせないものの、数社の西側の最大手クラスの音楽レーベルによる著作権の使用状況の監視を手伝っている。レコードレーベルは、ACRCloudの自動コンテンツ認識(Automated Content Rcognition、ACR)アルゴリズムを利用して、ラジオやテレビの番組で流される曲、YouTubeやTikTokなどのプラットフォームでユーザーが作ったコンテンツで使われている曲、またはどのようなサービスであれ、著作権者に代償を支払うべきものを監視している。

知的財産を監視するのは、パブリッシャーやレーベルばかりではない。コンプライアンス遵守の目的で、放送局やUGC(ユーザー作成コンテンツ)サービスもまた、自身のチャンネルで流される曲の監視を積極的に行っている。

生まれたばかりのショートムービー業界では、大手レーベルは天文学的な額の一律料金をUGCプラットフォームに課すのが普通になっていると、ACRCloudの共同創設者Tony Li(トニー・リー)氏は話す。そしてその料金は、実際の利用のコストに比べて不釣り合に高額だという。その経費の削減しようと中国の大手ショートムービーアプリ企業数社は、最近になって、ACRCloudの音響指紋アルゴリズムを利用してユーザーが動画に使った曲を記録するようになってきた。

その一方で、小規模な著作権所有者やレーベルは、使われている音楽に著作権があるか否かを自動的に判別するシステムを持たないため、著作権料を徴収できずにいる。

そこで役に立つのがコンテンツ識別だ。「UGCプラットフォームは、音響指紋サービスを使って著作権料報告書を作成すれば、UGCプラットフォームにも著作権所有者にも、音楽の利用状況が透明化されます」とリー氏はTechCrunchに話した。

UGCサービスは、盗用が発覚すれば莫大な罰金を課せられる。今年の初め、音楽パブリッシャーとソングライターのグループは、著作権侵害でTikTokを訴えると恐れがあると報じられた(Financial Times記事)。TikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)が音楽のライセンシングを強化(Billboardの記事)し、ビッグレーベルに依存しないで済むよう独自のアーティストの開拓に乗り出したと聞いても別段驚くにあたらない。

もうひとつ、よく知られている音響指紋の市場事例に音楽認識がある。Shazamが先陣を切って開発した技術だ。2012年から2014年までリー氏はそこで働き、中国進出を手伝っている。Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、Vivo(ビボ)などのスマートフォンメーカーは、ACRCloudの音楽認識技術をデバイスに組み込んでいる。

リー氏はずっと音声技術の世界にいた。中国のShazamで少しだけ働いていた以外にも、彼はファーウェイのアフリカ市場での着信音事業に携わっていたことがある。リー氏は、これまで、ACRCloudのために外部の資金を調達したことがなく、従業員はわずか10人と常に少数精鋭のチームをまとめている。
画像クレジット:ACRCloud

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(翻訳:金井哲夫)

Flickrの新しいビジネスモデルでCreative Commonsの作品は消されるのか

昨日(米国時間11/2)は Flickrの改革プランについて、新オーナーのSmugMugから一連の発表があったが、それにより重要な懸念も生じた: 無料のアカウントの写真の点数を1000に制限すると、Creative Commonsから利用できる写真の数も制限されるのではないか?。

アメリカの非営利団体Creative Commonsは、写真などのクリエイティブな作品にいくつかのタイプの著作権ライセンスを設け、作者が自分の作品をどんな形で共有したいか、設定できるようにしている。たとえば多くのクリエイターたちは自分たちの写真を、彼らの名前とプロフィールやオリジナル作品へのリンクをつけてなら無料で使ってよい、としている。〔クリエイティブ・コモンズ・ジャパン。〕

Flickrは長年Creative Commonsのパートナーで、今では何百万枚もの写真を、さまざまなタイプのライセンスで提供している。

しかしFlickrのストレージ削減プランのもとでは、これらの、合法的に無料で使える貴重な写真集は今後どうなるのか。

Creative CommonsのCEO Ryan Merkleyがブログにこう書いている: “無料アカウントの容量制限によってCCの何百万枚もの写真が削除されることを、多くのユーザーが心配している。今後について多くの人から質問を受けたが、私は解が見つかると確信している。人間の善意と、共同的クリエイティビティーの重要性が理解されることを、私は信じたい”。

彼によると、この非営利団体はすでに今、Flickrとその親会社SmugMugとの話し合いを開始している。それにより、Commonsとその将来の成長を保護し確保するつもりだ。

“ユーザーが自分たちの作品を共有し、永続的にオンラインで可利用にすることが、彼ら自身のすばらしい体験でもあることを、私たちは確証したい”、とMerkleyは語る。

SmugMugの新しいオーナーたちと同様彼もまた、買収前のFlickrのビジネスモデルは破綻していた、と考えている。大量の無料のストレージとその利用に伴う帯域を、Flickrほどの規模(写真点数数十億)で提供すれば、その費用も膨大だ。彼は、Flickrが存続するためには別のオプションを探究すべき、と理解している。

Flickrもまさに今それを、アカウントプランの変革でやろうとしている。無料アカウントのユーザーは、最大1000枚の写真を保存できるが、容量無制限のストレージは年額50ドルになる。

では、Creative Commonsは一体どうなるのだろうか。Merkleyによると同団体は、Creative Commonsの作品が削除されそうになったら、新しいFlickrのやり方に介入する最初のユーザーになるだろう、という。

また彼は、Flickrの新しいオーナーたちにはこの前会ったが、感触は良い、とも言っている。

しかしFlickrがCreative Commonsのサポートを続けるとしたら、CC側としてはそれをどのように支援するのか。同団体はそれを今模索中であり、答はやがて得られるだろう、と言っている。

SmugMugはまだ何もコメントをくれないが、得られ次第この記事をアップデートしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

デジタル著作権法が消費者に歩み寄ってきた――DMCA除外決定で今週からスマートアシスタントも脱獄できる

スマートフォンを持っていても所有していることにはならない。アメリカの著作権法の明文は消費者によるソフトウェアのある種の改変を禁止している。そんなことをすれば保証が無効となるだけでなく、契約を打ち切られたり、いっそう恐ろしいことに訴訟を起こされたりする危険性がある。しかしこの状況は徐々にではあるが変わりつつある。

政府は消費者が自分のデバイスを修理する必要性(権利、というべきだろう)があることを認め始めた。著作権局(Copyright Office)はさまざまなデバイスについて消費者に従来よりはるか大きな自由を認めるようになった。ただし理想からはまだ遠い。

簡単に振り返ってみると、Amazon Echoやスマートフォンにプロバイダーが認めない方法でサードパーティーのソフトウェアをインストールすることを禁じる根拠は、合衆国における著作権を律するDMCA(Digital Millennium Copyright Act)の1201条にある。1201条はソフトウェアやメディア・コンテンツの保護を無効化する行為を違法としている。ところがこの条文は当初の意図を超えて広く使われるようになった。.

企業は1201条をいわばデジタル化の箱のカギとして、ここにあらゆるものを詰め込み始めた。これによって販売するデバイスを消費者が修理したり、改造したりすることを禁止したわけだ。
iFixitのKyle Wiens始め個人のデジタル権利を擁護する活動家は長年この種の行為と戦い、最近いくつかの面で前進することに成功している。

著作権局では3年ごとに会合を開き、1201条の除外例を見直して、その結果を成文化してきた。この委員会はDMCAが適用されるべきでない状況やデバイスを決定してきた。たとえば、病院が医療機器に重大な問題を発見したにもかかわらずメーカーがただちに適切なサポートをしなかったとしたらどうなるだろう? 病院は機器を再起動したり、重大なバグにパッチを当てたりできないのか? もちろんこうした除外例は法そのものではなく、著作権局の決定に過ぎないので恒久的なものではなく定期的に見直し(と議論の再燃)の対象となる。

前回、2015年の除外例は明らかに不合理な例を是正したが、2018年の決定では消費者の選択の自由に重点が置かれた。ここでは、先週まで違法だったが今後は可能になる例をいくつか挙げてみよう。

  • 新しい携帯電話のアンロック.: 信じられないことに、これは今まで違法だった。中古の携帯のアンロックはもちろん合法だ。しかし、箱入りの新品、たとえばVerizon(TechCrunchの親会社の親会社であり、著作権局の今回の決定にはおそらく不満なはず)などが販売するスマートフォンのソフトウェアを改変してAT&Tで使えるようにすることはDMCAによる禁止の対象だった。しかし著作権局は今回、これを合法とした。
  • Amazon Echoe、Google Home、Apple HomePodの「脱獄」: この種の音声を認識できるスマートアシスタントは 2015年にはまだ存在しておらず、取扱が明文でカバーされていなかった。現在多くの人々がEchoを分解したりオープンソースのソフトウェアをインストールするなどして楽しんでいる。著作権局はこれらの行為を合法と認定した。.
  • スマートホーム・デバイスの修理:. スマートホーム・デバイスのプロバイダーが倒産したりユーザーがサブスクリプションを中止したりすれば手元にはスマート文鎮が残ることになる。 しかし今後、ユーザーはルート権限を取得し、再起動したり別の用途(セキュリティーやカメラの制御)に使うことができる。
  • 車両ソフトウェアへのアクセス、改変:自動車(特にトラクター)はDRM(デジタル著作権管理)によって幾重にも防衛され、ユーザーはおろか修理工場でさえデジタル化された部分に触ることができなかった。現在の自動車はいわば走るコンピューターなのでこれは不都合なことだ。著作権局は修理の目的でデジタル情報を読取ること、また修理行為そのものを合法と認めた。ただし走行安全性を損なうような改変は一切認められない。
  • 合法的な修理、改変のために他人を雇うこと:.上記の除外例はデバイスや車両のオーナーにのみ許される。これには十分理由があることだが、オーナーであっても必要な知識、技能があるとは限らない。そのような場合、サードパーティーに依頼して作業をさせることも合法であることが確認されたのは重要なポイントだ。

こうした適用除外の拡大が中古市場を活気づけ、スマートフォン、自動車、スマートデバイスの寿命を延ばすことが期待できる。ただし、これらはすべて3年ごとの見直しの対象だということに留意すべきだろう。もちろん一方では消費者のデジタル権利擁護活動家はリストを拡大しようと努力している。

実際、除外例に含められるべきなのにまだ含まれていない例が多数ある。ゲーム専用機も除外例には含まれなかったが、著作権局では海賊行為の危険性が高いと判断したのだろう。飛行機や船のソフトウェアも以前の自動車のソフトウェア同様保護の対象となっている。これらは十分理由のあることと思われる。

しかし合法とされた上記の作業を行うために必要なツール、ブートローダーやジェイルブレイク・キットなどを販売することは依然違法だ。ただしこういうパラドックスは他の場合でもまま見られる。たとえば多くの州でマリファナの所有は合法化されているが、栽培や販売は違法だ。

こうした適用除外は有用であるが、DMCA自体の改正により恒久的なものとすることが必要だろう。われわれが持つデバイスはわれわれの所有物であるべきだ。法の改正には時間と努力を要するだろうが、これまでのデジタル著作権における消費者の勝利や権利の拡大ををみれば、トレンドはわれわれに味方していると考えていい。

画像:Taylor Weidman/Bloomberg / Getty Images

〔日本版〕合衆国著作権局(U.S. Copyright Office)は議会図書館の一部をなす部局でアメリカの著作権法の運用を担当する。

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滑川海彦@Facebook Google+

欧州議会、著作権をめぐる改革案を否決ー議論続行へ

312対278で、欧州議会はデジタル著作権改革案をめぐる議論を続行させることを決めた。法令化するのに最短ルートをとるのではなく、今後さらなる議論や綿密な調査が行われることを意味する。

大議論を巻き起こした提案を改めるチャンスがあるというのは、重要な意味を持つ。

先月、欧州議会の法務委員会は著作権についての法案の最終文案を承認したがー最も議論を巻き起こしている2つの条項の承認も含むー“リンク税”、“検閲マシーン”に反対する人々は、欧州議会議員に議論を再度行うよう、そして法案を改めるよう最後まで運動を展開した。

著作権改革案では主に2つの条項が議論を起こしている。

・第11条ーGoogle newsのようなニュースアグリゲータービジネスモデルを標的にするために、報道コンテンツスニペットの著作隣接権をつくる。メディアは長い間、自分たちのコンテンツからニュースアグリゲーターが不正に益をあげていると主張してきた。

似たような著作権の法律がドイツとスペインで施行されている。スペインではライセンス取得がフレキシブルではなく、Google ニュースは見出しや批評、交通情報に至るまでスペイン語版全てを閉鎖した。

・第13条ーユーザーがアップロードするコンテンツを大量に扱うインターネットプラットフォームが、著作権違反に問われるようになる。これは、例えばYouTubeのようなプラットフォームは、ユーザーがコンテンツをアップロードした時点で事前にフィルターをかける必要に迫られる。もしアルゴリズムが著作権のある作品を使用しているのを見落とした場合は大変な事態となるかもしれない。

どちらかというと、第13条の方が議論の対象となる要素が強く、これについて改革案反対者は特に抗議している。しかしながら、この改革案はミュージシャンや音楽業界からは支持されている。彼らは、Youtubeはミュージックビデオ視聴に関してプラットフォーム上で法的に保護せず、本来より少ないロイヤリティしか払っていないと何年も訴えてきた。

反対キャンペーンでは、デジタル権利団体、スタートアップグループ、インターネット企画者、コンピューターサイエンティスト、研究者、ウェブ制作者らで構成する連合ーSir Tim Berners-Lee、Vint Cerf、Bruce Schneier、Jimmy Wales、そして先月のオープンレターに名を連ねたMitch Kaporも含むーは第13条が“インターネットを、シェアやイノベーションのためのオープンプラットフォームから、ユーザーを自動監視したりコントロールしたりするためのツールへと変えてしまう、その変化へ一歩を踏み出すものになる”と主張している。

欧州委員会は、オンライン百科事典は第13条適用外としていたにもかかわらず、今週、Wikipediaのいくつかの欧州言語版が改革案反対の姿勢を表すためにコンテンツを黒く表示した。

しかしながら、反対を唱える人々の主張は…

欧州議員に法案を改めることができるように投票するよう求めるオンライン請願には、投票までに85万超の署名が集まった。

投票の直前、欧州議員は改革案についての賛否の概要を聞いた。

賛成派の議員Axel Vossー先月改革案を可決した法務委員会の報告者ーは「インターネット上で欧州アーティストが搾取されている状態に終止符を打つのが狙いだ」と述べた。

「我々は、欧州で創造されたもので莫大な利益を得てきたGoogleやFacebookといったメジャーな米国のプラットフォームについて話をしている。我々はこうした行いをやめさせなければならない」。そして「アメリカ第一主義というのはデータや我々の偉大な作品の乱用だと言う人々がいる一方で、別の人々はこのインターネット資本主義をサポートするというのはまったく不可解だ。我々は欧州のクリエイターの側に立つべきであり、さもなければクリエイターたちは破産してしまうリスクがある」とも述べた。

「著作権違反を防止するのになぜ反対するのか。クリエイターたちが真っ当な報酬を得ることになぜ反対するのか。そして巨大なプラットフォームに、より責任を持ってもらうのになぜ反対するのか」「我々が向かってきている反対運動は、Googleや、欧州議員の子供たちの目に触れるFacebookによるものだ。このキャンペーンの全てが嘘に基づいている。ユーザー個人に適用される制限などはなく、全ての人がリンクを貼ったり、法的な確証を持ってコンテンツをアップロードしたりできる」と付け加えた。

これに対する改革案反対の主張を展開したのはー“幅広い、事実に基づく議論”と形容するのを許容するとしてー域内市場・消費者保護委員会の報告者、Catherine Stihler議員だ。この委員会は第13条に関してコンピテンシーを持つが、法務委員会の賛同を得られた「必要なバランスを欠いている」という文言にはStihlerの姿勢は考慮されていない。

「欧州のアーティストや文化的多様性を守るという共通するミッションのために我々全員が団結している。委員会では、価値観の違いについて意義ある進展をみながら、と同時に欧州のインターネットユーザー、中小企業、スタートアップを保護するという、幅広い和解に至った」と Stihlerは述べている。

「表現の自由への第13条の影響について本当に懸念されることは、国連の特別報告者David Kayeからワールドワイドウェブ発明者sir Tim Berners-Leeに向けて注意喚起された。法務委員会の権限に反対する100万人近くの署名が集まった請願を私は昨日受け取ったばかりだが、真の懸念は市民の声の中にある。私が思うに、この法律の背景には意見の一致というゴールがある。現段階では正しいものではなく、その提案された手法について大きな議論がまだ残る。幅広いサポートを得るために、我々は専門家や株主、市民に対し、必要な議論を提供する義務を負っている」。

今日の採決の結果は、賛成派、反対派どちらの著作権ロビイストたちにとって忙しい夏になることを意味している。改革案の改正や次の投票のチャンスがあり、欧州議会での投票は9月に行われる。

欧州消費者機関BEUCは、今日の採決結果を評価している。

Monique Go総裁は発表文の中で「大規模かつシステマティックなオンラインコンテンツのフィルタリングを防ぐ戦いを展開してきた中で、今日の採決は大きな決定だ。立法府の議論の方向性をすぐさま正す必要がある。インターネットは引き続き、消費者が自分の作品や意見、アイデアを自由にシェアできる場所であり続けるべきだ。欧州議員は、著しくバランスの欠いたレポートを改め、著作権がコンシューマーとクリエイターの両方にとって機能するものとなるようにするチャンスがある」。

全くハッピーでない人たち:著述家ソサエティや、作曲家と音楽出版社(Sacem)だ。Sacemの事務局長David El Sayeghは「逆行しているが、終わりではない」と表現した。

「Sacemは引き続き、クリエイターの権利が認識され、彼らの作品価値に対して相当の報酬が払われるように努力する」と彼は発表文で述べた。「我々は今日の採決結果で落胆することはなく、音楽業界の未来を保護する、正当な合意に至るという希望を持って、世界中のミュージシャンや音楽愛好家のサポートを駆り集め続けるつもりだ」。

「我々は、21世紀のデジタル環境の中に身を置くクリエイターの権利を十分認識するようなフレームワークを、欧州議会がゆくゆくはサポートするものと確信している」。

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(翻訳:Mizoguchi)

Wikipediaのスペイン語イタリア語ポーランド語ページがEU議会の著作権改定に抗議して黒塗りに

【抄訳】
Wikipediaのイタリア語とスペイン語のページが、著作権の改革に関するEU議会の明日(米国時間7/5)の票決に抗議するために一時的にアクセスを遮断している。

アップデート: ポーランド語のWikipediaも、この黒塗り抗議に参加した。

EU議会の法務委員会が先月決めた‘改革案’には、この抗議活動を惹起した問題箇所が二つある:

[第13条] 著作権物のユーザーが直接的に著作権侵犯者になるので、アップロードされるすべてのコンテンツを事前にフィルタしなければならず、表現の自由を損なう。

[第11条] ジャーナリストのコンテンツの断片(部分引用など)を利用するニューズアグリゲーターのようなビジネスモデルは、著作隣接権侵犯とされる。これは、‘リンク税’と揶揄されている。

EU(やその外)の多くの部分で、Wikipediaの訪問者たちは、EU議会の問題の法案に抗議してオープンなインターネットを守ろうとするバナーを目にする。抗議文は法案を‘検閲マシン’と呼び、‘Wikipediaのベースである価値観と文化とエコシステムを弱体化する’と主張している。

‘call your MEP’(議員に電話しよう)のリンクボタンをクリックすると、第13条反対運動のWebサイトsaveyourinternet.euへ飛び、自分の国の議員を検索したり、彼らに抗議のメールを送ったりできる。この運動は、EFF, Open Rights Group, Center for Democracy & Technologyなど、有力な人権市民権団体も支援している。

スペイン語のWikipediaの説明には、“この法案が承認されたら、ソーシャルネットワーク上でニュースを共有したり、検索エンジンからそれにアクセスすることが、とても難しくなり、Wikipediaも危険にさらされる”、とある。スペイン語Wikipediaは、7月5日の10時(UTC)から始まるEU議会の票決の間、黒いままにされる。

イタリア語のWikipediaは、昨日(米国時間7/3)、黒塗りになった。

なお、これらの抗議的表現は、各国のWikipediaコミュニティの意思によるものであり、Wikipedia全体の決定事項ではない。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookで著作権のある楽曲が使用可能に――口パクカラオケ、Lip Syncでテスト中

Facebookのユーザーは著作権のある楽曲をBGMなどに使っても削除要請を食う心配が少なくなった。Facebookは音楽ビジネスに力を入れている。主要レーベルや多数のインディーと契約を結んでいるだけでなく、今日(米国時間6/5)、ティーンエージャーに大人気のMusicallyに対抗して口パクカラオケ、Lip Syncのテストを始めた

Facebookの新しいサービス、Lip Sync Liveのユーザーはリストから好きな曲を選び、自分が歌っているつもりで口パクを録画する。結果が気に入ればビデオを共有できる。Facebook Liveで放映してもよい。Lip Syncにはカミラ・カベロのHavana、Guns N RosesのWelcome to The Jungle、DrakeのGod’s Planはじめ人気の曲が何百曲か用意されている。

楽曲の著作権に関する新ルールの適用後、ユーザーがBGMを利用したビデオをアップロードすると、FacebookのRights Managerシステムは楽曲の著作権者に通知する。著作権者が承認すればそのまま公開されるが、著作権を得ていない、あるいは著作権に関して異議が申し立てられているビデオの場合、音声はミュートされる。Facebookは適正に利用された楽曲についてレーベルとアーティストに著作権料を支払う。ただしライセンスの額や料率がアップロード1件ごとに算定されるのか再生回数によるのかなどは明らかにされていない。

今回の新しい音楽サービスは昨年12月にFacebookがスタートさせたサウンドコレクション機能とは異なる。 こちらはビデオをアップロードする際に著作権フリーのジェネリックな楽曲や効果音が利用できるというものだった。Facebookはユーザーが著作権のある人気楽曲を選んでビデオで利用できるようなツールないしサービスを(まだ)提供していない。この機能はTechCrunchが以前から必要だと主張しており、Facebookも一時、Instagramで実験していた

ただ残念ながらアップロードの前に楽曲をビデオに追加する編集機能のあるアプリをスマートフォンにインストールしているユーザーは少ない。しかしカフェなどでバックグラウンドに音楽が流れているところを撮影した場合、そのビデオが著作権者によってブロックされるという可能性はだいぶ減ることになる。Facebookによれば数ヶ月以内に「Facebookストーリーズに好みの楽曲を追加できるようにする実験を開始する」という。これはわれわれがレポートしたInstagramでの実験とほぼ同様のものになるはずだ。

Instagramが実験した(ただし一般公開されなかった)人気楽曲をスタンプとしてストーリーズに追加する機能.

今日の発表は無名の曲や効果音ではなく、人気楽曲の共有を可能にするもので、音楽の利用に関してFacebookが正しい方向に大きく一歩進んだことを意味する。いくら友達からのニュースフィードでも画面がぐらぐらするありきたりの内容のビデオを見るのはつらい。ストーリーズで共有できるようになった15秒以上の長いビデオでであればなおさらだ。しかし人気の曲がサントラに入っていればビデオが退屈でも見てしまうだろう。内容にマッチした楽曲であれ素晴らしいものに一変するかもしれない。

人気曲を付加されたビデオは視聴時間を大きくアップさせる。バイラルな拡散に依存しなくともFacebookへのユーザー・エンゲージメントを強化する効果があるだろう。これはユーザーの精神状態に不必要な負荷をかけないという意味でも好ましい。【略】

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebookがコンテンツクリエイターへの収益配分のために、コンテンツ権利管理スタートアップのSource3を買収


Facebookは、独立したコンテンツクリエイターたちが、ニュースフィードを通して作品を共有するように誘惑しようと、強いプッシュを行っている。しかしFacebookは、同時にクリエイターたちに対して、権利侵害の蔓延を許すことなく、コンテンツの収益化を助けることができることを証明する必要がある。それこそがコンテンツ権利管理スタートアップSource3のチームと技術を、Facebookが買収した理由だ。

スタートアップの説明によれば「Source3は、ユーザーが作成するコンテンツの中にある、ブランド化された知的財産を認識、整理、分析することに着手しています。そしてスポーツ、音楽、エンターテイメント、ファッションなどさまざまな分野でプロダクトの識別に成功しています」ということだ。その技術は、ユーザーが作成したコンテンツや、商品取引市場内でのブランドIPを認識し、ブランドの露出度を測定したり、著作権や商標を侵害した者に対して行動を起こすことを可能にする。

Facebookの広報担当者であるVanessa Chanは、次のように語る「私たちはSource3チームと共に働き、彼らが知的財産権、商標権、そして著作権に関して作り込んできた専門知識を学ぶことを、とても楽しみにしています」。Source3はこの取引についてサイト上で発表し、その内容がRecodeによって取り上げられた。同社は「私たちはFacebookと共に旅を続けることを決めました」と書いている。そしてそのチームは、FacebookのNYC事務所で働く予定だ。

Source3はこれまでに400万ドル以上を調達しているが、その大部分はContour Venture Partnersが主導した2015年のシードラウンドによるものだ。 共同創業者であるのPatrick F. Sullivan、Benjamin Cockerham、そしてScott Sellwoodは、以前音楽著作権管理プラットフォームRightsFlowをGoogleに販売したことがある。Source3は、元々3Dプリンティングの著作権管理会社として、2014年にニューヨークに誕生した。しかし、消費者市場における3Dプリンティングが停滞した後、そのスコープをデジタルエンターテインメントへと広げたようようだ。

そのチームと技術は、FacebookのRights Managerソフトウェアを拡張することになるだろう。このソフトウェアはYouTubeのContent IDのように動作し、クリエイターが自分の動画を識別できるようにした上で、Facebookへの許可されていないアップロードをブロックしたり、その非公式なコピーから利用料を回収したりすることができるようにする。Source3は、Rights Managerを通じて、ブランドやクリエイターが承認されていないコンテンツやIPの露出を特定することを助けることが可能だ。

先月のVidConで、Facebookは、クリエイターがファンとコンテンツを共有するための特別なスタンドアロンアプリを開発中であると発表した。Facebookは既に、月間20億人という最大のオーディエンスを抱えている。今やFacebookはクリエイターたちにとって、ソーシャルネットワークが、彼らの努力を投じる場所としてふさわしい場所である収益の上がる場所だということを証明しなければならない。

1つの方法として、Source3の技術を使用して、Web有名人が着用または使用しているブランドを認識し、それらを当該ブランドまたは同様のものに結びつけて、スポンサードコンテンツまたは商品注文へと誘導する方法が考えられる。Facebookはこうした取引の一部を報酬として受け取ることが可能になり、これによってクリエイターたちのコンテンツのマネタイズを、これ以上煩わしい広告を投入することなしに実現することが可能になる。

Vineの終了、Snapchatのゆっくりとした成長、そしてPewDiePieスキャンダルによるYouTubeの混乱の中で、FacebookとInstagramはファンにリーチしようと考えるクリエイターたちに対して、中心的なハブになることにできる絶好の位置にいる。問題は、友人のたちの写真やニュースリンクを見るために作られたFacebookが、明日のモバイルミニ映画スターのユニークなニーズに応えることができるかどうかということだ。

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(翻訳:Sako)

著作権管理ブロックチェーンのBindedが、朝日新聞などから95万ドルを資金調達

Bindedは、ブロックチェーンを使う公開データベース上に著作権の恒久的な記録を作ることによって、写真家が自分の知財を容易に保護できるようにする。

それまでBlockaiという名前だった同社は、今日からBindedになる。テクノロジーっぽい名前から、ユーザーが得る利益、すなわち法的拘束力(binding)のある記録を作ること、を前面に打ち出した名前に変えたのだ。これなら、ビットコインやブロックチェーンを知らない人たちにもアピールするだろう。

ついでに同社は今日、新たな95万ドルの資金調達を発表した。その投資家は、Mistletoe, Asahi Shimbun, Vectr Ventures, M&Y Growth Partners, Tokyo Founders Fund, そしてSocial Startだ。Mistletoeを率いるTaizo Sonはゲーム企業GungHoの創業者で、SoftBankのMasayoshi Sonの弟、Asahi Shimbunは日本の新聞「朝日新聞」だ。これでBindedの資金総額は150万ドルになる。

BindedのCEO Nathan Landsは、日本の投資家が顔を揃えたことで、同社が著作権管理のグローバルスタンダードになる道が拓(ひら)けた、と示唆している。

なぜそんなスタンダードが必要なのか? さよう、たとえばアメリカの場合なら、作品は作られたときから著作権を有するが、それが法的効力を持つためには特許庁に権利を登録しなければならない。Landsが主張するBindedのメリットは、それが権利発生と法的有効化との中間に位置する点だ。登録に比べると時間もお金もかからないが、それでも第三者による記録として法的価値を持ちうる。

“著作権というものを簡易化し大衆化したいんだ”、と彼は述べる。

その主張に即してLandsは、Bindedのコアプロダクトを“つねに無料”、としている。そして今後加えていくさまざまなサービス…登録代行など…を有料化して、収益源にするつもりだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

お店のBGMが変わる―、”B2BのSpotify”Soundtrack Your Brandが2200万ドルを調達

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Spotify世界最大のコンシューマー向け音楽ストリーミングサービスの座に君臨し続ける中、彼らの地元ストックホルム発の(かつSpotifyも投資している)スタートアップが、エンタープライズ向け音楽ストリーミングサービスを牽引すべく、大規模ラウンドで資金を調達した。

そのスタートアップの名はSoundtrack Your Brand(SYB)。元Spotify幹部とBeats(現在はAppleの一部)の共同ファウンダーが手を組んで設立した同社は、この度のラウンドで2200万ドルを調達した。調達資金は海外展開や、お店でBGMをかけるのに使われている同社のシステムの改良に充てられる予定だ。彼らのサービスは、スーパーなどにありがちな安っぽくて退屈な音楽を変えようとしている。もちろん、たまたま小売店が求めているのが安っぽさや退屈さであれば話は変わってくるが。

既にSYBはかなりの成長を遂げており、マクドナルドやTAG Heuer、Toni & Guyといったグローバル企業が彼らのサービスを利用しているほか、100ヶ国で「何千」という数の企業(スウェーデンのスターバックスのように、大規模チェーンの各国の統括企業を含む)を顧客に抱えている。

同社はさらにSpotify Business(Spotifyのインフラを利用したエンタープライズ向けサービス)を、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドで運営している。SYBによれば、同社の売上と顧客ベースはどちらも400%以上伸びているが、具体的な売上額や顧客数は明かされていない。

Balderton CapitalとスウェーデンのIndustrifondenが中心となった今回のラウンドを受け、SYBの累計調達額は約4000万ドルに到達した。今回のシリーズCには、そのほかにもTelia、Northzone、Creandum、H&MのファミリーオフィスであるHMP、この業界をよく知るJörg Mohauptらが参加していた。

既存株主であるSporify、PlayNetwork、Wellingtonは今回のラウンドには参加しなかった(お気づきかもしれないが、Spotifyの株主の多くがSYBにも投資している)。

SYBは、2014年にAndreas Liffgarden(元々Spotifyでビジネスディベロップメント部門のトップを務めていた)とOle Sars(Beatsの共同ファウンダー)によって設立された。彼らは以前在籍していた企業でも起業仲間を募っていたが、ふたりともエンタープライズ向け音楽ストリーミングサービスに大きな可能性を感じているということがわかり、ふたりでSYBを立ち上げることに決めた。多くのお店は、数が限られていながら面白みに欠け、ときには法に触れる可能性のある選択肢の中からBGMをかける手段を選ばなければならず、彼らはその問題を解決しようとしているのだ。

一般的には、お店の人が自分でまとめたCDやミックステープが店内でかかっていることが多い。中にはそのようなメディアを送ってくれるサービスもあるが、どちらも曲をアップデートする手間やコストを考えると理想的な方法とは言えない。ほかにも衛星・無線ラジオをかけているお店もあるが、この方法だと自分で曲を選ぶことができない。さらにSpotifyのような音楽ストリーミングサービスは、非商業目的の個人利用しか許可していないので、この方法をとると法律を破ってしまうことになる。

確かにエンタープライズ向け音楽ストリーミングサービスのニーズはあるようだが、だからといってSYBだけがそれに気付いたわけではない。Mood Media(Muzakの親会社で、アメリカではPandoraとパートナーシップを結んでいる)やPlay Network(Soundtrack Your Brandの投資家でもある)のほか、イギリスのImageSoundなどヨーロッパにも競合企業は存在する。

しかしLiffgardenとSarsは、SYBのサービスには他社とは違う点がいくつかあると言う。

まず第一に、同社のサービスを利用したい場合はサインアップするだけでよく、既にお店にある音響システムとインターネット環境を除けば、追加でハードウェアを準備する必要はない。料金は月々34.99ユーロ(37ドル)に設定されている。

次は提供されている楽曲数と、楽曲に関する同社の将来的なプランだ。世界中に5000〜6000万曲が存在すると言われている中、コンシューマー向け音楽ストリーミングサービスの中には3000万曲もの楽曲を揃えているものもある。しかし話の本題はここからだ。

ほとんどのストリーミングサービスに関し、繰り返し再生されている人気曲の数はせいぜい「数百万」曲だとLiffgardenは話す。「去年私たちのサービス経由で20万曲が再生されており、競合サービスの再生曲数も同じくらいでした」と彼は付け加える。SYBの競合サービスが現在配信している楽曲の数は約100万曲ほどで、SYBもSpotifyやPlayNetworkのようなプラットフォームと手を組んで、大体同じくらいの数の楽曲を配信できるよう現在リライセンスの努力を重ねている。

しかしSYBは、長期的には直接レコード会社とライセンス契約を結んでいきたいと考えている。Spotifyのような企業にとってライセンス契約は悩みの種となっており、ある情報筋によれば、Spotifyは利益を増やすために現在レコード会社と契約内容の変更について交渉しているという。

一方、今まさにレコード会社との契約交渉を進めているLiffgardenとSarsは、SYBがエンタープライズ向けサービスであることから、Spotifyと彼らの事情は違うと説明する。コンシューマー向けサービスに比べて、エンタープライズ向けは利用場面が限られていることから、同社は最終的に1500万曲程度のライセンス契約を結べればいいと考えているのだ。

これだけの楽曲数があれば、サービス内容においてSYBは競合との差を大きく広げられるだろう。さらに他のプラットフォームへの依存度も抑えることができる(これこそ以前同業界で活躍していたSoundropがサービスを続けられなかった理由のひとつで、Spotifyがプラットフォーム上でのアプリのサポートを終了した途端に、彼らのサービスは使えなくなってしまった)。

さらに競合他社に比べて高く設定されたユーザー当たりの料金も、最終的にSYBの利益率向上に貢献するだろう。

SYBが競合を打ち負かそうとしているポイントの3つめが、顧客に提供しているサービスだ。もちろん顧客は、同社が予め準備したプレイリストを流したり、好きな曲をオンデマンドでかけることができる。

しかしSYBはビッグデータやデータ解析の技術を利用し、顧客の売上や来客数、さらには店舗での滞在時間を増加させるため(さらには、もしかしたらお客さんをはやく店から出ていかせるため)にどの曲をかければいいのかという、選曲サポートサービスまで提供しようとしているのだ。

これはもはや音楽サービスの域を超えているとSarsは言う。「このサービスが完成すれば、小売テクノロジーやビジネスのデジタル化というもっと大きな領域に進出していくことになります」

以前TechCrunchではSYBに対して、なぜSpotifyは自社の幹部にSYBのようなサービスをB2B事業として社内で開発するよう促さなかったのかと尋ねた。その答えは今も変わっておらず、なかなか興味深いものだ。簡単に言えば、Spotifyはコアとなるコンシューマー向け事業を確立し、拡大していくことに現在注力しており、エンタープライズ向け事業をはじめるのに必要な交渉や戦略、リソースについて考えている暇がないのだ。

その一方で、皮肉なことにSYBは成長を続け、他サービスから独立しようとしているが、SpotifyはSYBが成長すれば投資家としてその恩恵にあずかれるため、最終的に両社はWin-Winの関係にあると言える。さらに万が一Spotifyがエンタープライズ向けサービスをはじめたいと思ったときのために、おそらくSYBの買収に関し、Spotifyは何らかの拒否権を持っていると私は考えている。

SYBがレコード会社と独自のライセンス契約を結ぼうとしているというのも、私の考えと辻褄が合う。彼らは独立した契約をレコード会社と結ぼうとしており(現在のところSYBは北欧外ではPlayNetworkの楽曲を利用している)、これが形になれば、SYBがSpotifyやその他の企業に買収されたとしても、契約内容について再度交渉しなくてすむ。

なお、今回のラウンドを受けて、以前はUberとDropboxでモバイル部門のトップを務めていたBaldertonのLars Fjeldsoe-Nielsenが、SYBの取締役に就任することとなった。

「私はこれまでディスラプションが起きるのを間近で見てきました。Dropboxはストレージサービスを変え、コンシューマー向けからエンタープライズ向けへの転換を果たしました。一方、Uberは私たちの交通手段に対する考え方を大きく変えました。今度は、Soundtrack Your BrandがBGMを変えていくでしょう」と彼は声明の中で語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebookで自作ビデオに有名曲が使用できるようになるかもしれない

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FacebookやInstagramのユーザーが、TwitterやSnapchat上のビデオより面白いものを作るためにはどうしたらいいだろうか?その答えは、耳に残るサウンドトラックだ。現在Facebookはライセンス契約獲得に向けて、レコード会社との交渉に力を入れている。

交渉が上手く行けば、両プラットフォームのユーザーは、自分の作ったビデオに人気曲を挿入できるようになり、撮影時に流れていた曲の著作権侵害を理由に、ビデオがブロックされるということもなくなるだろう。さらに以前私たちが提案していたように、ユーザーがビデオをアップロードするときに、人気曲をサウンドトラックとして挿入できるようなツールさえFacebookは開発できるかもしれない。

facebook-identify-tv-and-music同社は遅くとも2015年にはレコード会社との交渉を開始しており、当時The New York TimesはFacebookがユーザーのフィード上に音楽ビデオを配信するつもりなのではと報じていた。他にも、FacebookがSpotifyと競合するような、本格的な音楽配信サービスをローンチするのではと憶測している人までいた。

一方、昨年末にBillboardは、Facebookが以前開発した盗作(freebooting)動画を検出できる著作権管理ツール(Rights Manager)を補完する形で、音楽用にも著作権侵害対策ツールを開発しようとしていると報じた。そしてBloombergは、Facebookがユーザーの作ったビデオに含まれる音楽の著作権を守るために、一層の努力を重ねてきたと記している。

レコード会社との契約が形にならなければ、Facebookは著作権で保護されている楽曲を使用したビデオのアップロードを禁止したり、既にアップロードされているものを取り下げたりしなければならず、ユーザーの失望や怒りを買うことは必至だ。例えば、お父さんお気に入りのロック曲を挿入した家族旅行のビデオは、そのうちアップロードできなくなるかもしれない。また、車の中でふざけあっている友だちの様子を撮ったビデオも、撮影時にラジオから流れていたヒット曲をマイクが拾っているという理由で、ブロックされてしまう可能性があるのだ。

このようなことが起きれば、ユーザーはFacebookにビデオをアップロードしなくなり、同社は最もお金になる新鮮なコンテンツを失ってしまうことになる。

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YouTubeはこの問題を解決するために、Content IDシステムを導入した。このシステムは、動画内に含まれる著作権で保護された楽曲を検出し、著作権者に対して動画全体をブロックするか、動画に広告を表示させて収益の一部を受け取るかといったオプションを提供している。後者を選べば、ユーザーは自分のビデオがブロックされて苛立つことがなく、アーティストは楽曲のプロモーションができ、レコード会社も所有する楽曲から収益を生み出すことができるなど、関わっている人全員が何かしらのメリットを享受できる。

Facebookは既に独自の音声指紋テクノロジーを開発し、2014年に公開していた。ユーザーはこの音声指紋機能を使って自分が聞いている音楽の情報を入手したり、視聴している番組をステータスにタグ付けしたりできたのだ。あとは、レコード会社が動画に挿入された楽曲から収益をあげられるような契約がまとまれば、この問題を解決することができる。

つまりレコード会社は、Facebookというチャンネルや収益化の可能性を無駄にせず、問題をうまく解決するような選択をすることができるのだ。なお、Facebookはタイミングを見計らったかのように、元々Google・YouTubeの音楽パートナーシップ担当ディレクターを務めていたTamara Hrivnakをチームに迎え、今後彼女が音楽関連の戦略立案やレコード会社との交渉を担当していくことになる。

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残された問題は、楽曲がビデオを補完する付随物として利用されている場合と、ビデオが楽曲を収める箱のように使われ、実際はユーザーが楽曲を検索して無料で聞くことを目的にしている場合という、ふたつのケースの間にFacebookが上手く境界線をひくことができるかどうかだ。レコード会社の幹部が嫌う、後者のような楽曲の使用方法はYouTubeでよく見られる。

あくまで音楽はユーザーが作成するビデオに付随するもの、という位置づけの契約を結べば、プロが作った音楽ビデオを含め、レコード会社とFacebookのパートナーシップの幅が広がるかもしれない。さらにFacebookは、レコード会社との関係を使って、実際に動画に挿入するサウンドトラックを提案するようなツールを開発できる可能性もある。

しかし今のところ、Facebookはとりあえず主力サービスから、成長の妨げとなる要素を取り除こうとしているだけだ。ほとんどの人は、ビデオグラファーとしてもサウンドエンジニアとしても大した技術を持っていないので、ユーザーが作ったビデオの中には、つまらないものやひどい音声が収録されたものもある。しかし映像に合った楽曲が使われれば、パーティーの様子を収めた手ブレのひどいビデオやぎこちないパノラマビデオも、突然見ごたえのあるものへと変身する。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スタートアップのための知的財産戦略

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【編集部注】著者のBenjamin Lehbergerは登録特許弁護士で、St. Onge Steward Johnston & Reensのパートナーである。

知的財産保護は、ほとんどのスタートアップにとって重要な考慮事項である。特許などの知的財産権保護手段を取得することによって、競争を最小限にし、他者からの侵害請求に対する防衛手段として利用することができる。知的財産権はまた、資金とパートナーシップを引き寄せ、強固なものにすることができる。スタートアップのための知的財産戦略を策定する際には、以下のことを考慮して欲しい。

申請は迅速に、それまでは秘密に

特許申請のためのあなたの時間は限られている。開発の初期段階で特許は想定されているべきである。米国の場合、発明者は、最初に発明を公開してから特許申請を行うまでに1年間の「猶予期間」が与えられている。その後では手遅れだ。とはいえ、そんなに長く待つべきではない。2013年に、米国の特許制度は、先発明主義から先願主義に切り替わった。この用語上では僅かに違うだけの変更が、特許保護を遅らせた者への悲劇へと繋がる可能性がある。

従前の先発明制度の下では、たとえ先に申請をした者がいたとしても、あなたが最初に考案したという証拠を示し、発明に対する地道な努力を続けていれば、その発明に対する最初の考案者と認められ特許を得ることが可能だった。しかし今日では、特許庁に駆け込む早さを競うレースになっている。誰がその発明を最初に考案したものかに関わらず、最初にその特許を申請したものが「勝つ」のだ。

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。

また、特許出願をするために1年間の「猶予期間」は、米国以外のほとんどの国には存在しないことに注意することが重要だ。海外でも特許保護を求めることを計画している場合には、特許出願を提出する前に発明を公表すると、海外における知的財産権を危険な状態に晒すことになる。したがって、申請は迅速に、それまでは秘密に。

発明が進化するにつれ、追加申請を

あなたのスタートアップが自社の製品を開発し続けていく過程では、それぞれの新しい機能に対して特許保護の可能性を検討して欲しい。初期に特許を申請しただけで、その後申請を行わなかったスタートアップは、実際に特許が発行されたときに、作っている製品が最初の特許の適用範囲を遥かに逸脱していることに気がつくかもしれない。そのとき製品は、保護が範囲が不足しているか、あるいは特許で全く保護されなくなっている可能性もある。

定期的に特許保護を再評価し、発明の新機能に対する申請を考慮することが重要である。製品が急速に進化している場合は、特許出願をするまでの1年以内に、仮特許出願あるいは連続した仮特許出願を行うことを考慮して欲しい。

特許の発行を待つことはない

特許には時間がかかる。審査を早める方法も存在しているが、平均的には、米国特許庁によって付与される特許のためには2年以上が必要である。特許出願の約30パーセントは全く受け入れられずに終わる。

発行された特許を持つことは、あなたのスタートアップのための資金を集め、マーケットにおける地位を確保することに役立つ。しかし、発明の商品化を、特許の発行まで待っていてはならない。常にスタートアップを前進させ、開発を続けよう。その過程で更なる問題を解決し、それがさらに重要な発明に導く可能性もあるのだ。また一方で、あなたのブランド、評判、収益を構築することになる。

意匠特許を検討しよう

特許の議論をする際に、焦点はしばしば通常特許(utility patent)に向かいがちだが、意匠特許(design patent)も包括的な知的財産戦略の一環として考慮されるべきである。一般に、通常特許は製品の使われ方や動き方を保護するものであるのに対して、意匠特許は製品の見た目を保護するものである。2015年の終わりまでに、米国特許庁は920万件以上の通常特許を発行したが、意匠特許の件数はわずか74万6000件ほどに留まっている。

意匠特許は通常特許を補足したり、通常特許が適用できないときの代替として利用したりする際に、重要な価値を提供することができる。ソフトウェア特許は、米国ではまだ適用可能である。しかし、AliceとCLS Bankが争った訴訟に対する最高裁の判断により、ソフトウェアに関連した発明の通常特許の取得は、より難しく予測できないものになっている。意匠特許は、ソフトウェア関連発明に関する特定の特徴、特にグラフィカル・ユーザ・インターフェースを保護するためには有効な選択肢である。

意匠特許の有効期間は15年で、通常特許の20年と比べるとやや短いが、これもコストのうちである。また、意匠特許は多くの場合、通常特許よりもはるかに迅速に得ることができる。

特許のみに依存してはならない

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。スタートアップが成功するには、まず第1に良い製品やサービスを必要とする。特許庁は新規性があり自明ではない発明に対して特許を与える。しかしながら、特許を受けたからと言って、必ずしも良い発明であるとか、誰かが購入したいと思うものであるというわけではない。あなたが保護しているものが、保護に値するものであるかを確認して欲しい。

そして第2に、ユニークなブランドを構築して、登録商標でそれを保護すべきだ。商標とは、ある者の商品の由来を識別子、他のものと区別するための、単語、フレーズ、シンボル、あるいはデザインだ。強く分かりやすい商標を持つことは、競争相手からあなたを区別するためにとても重要な価値がある。そして特許とは異なり、登録商標は使用し続ける限り、期限切れになることはない。商標は、特許のような厳格な申請期限を持っていないが、早期に行動を始めて商標のクリアランスを検索し、あなたがその商標を使う際の競合がないことを確認することがベストだ。

最後に、スタートアップ事業の種類に応じて、著作権及び企業秘密保護もまた、知的財産戦略の中で考慮されるべきである。スタートアップを始める際には、知的財産の専門家と、どのようなタイプの知的財産戦略があなたの企業に相応しいかについて、相談して欲しい。

(訳注:本文中の特許関連の話題はすべて米国の話である。文中にもあるように長らく続けられてきた先発明主義は先願主義へと切り替わったため、比較的日米でも似たようなコンセプトで考えられるようになった。参考:米国の特許制度

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(翻訳:Sako)

ブロックチェーンをベースにしたツールでMediachainはアーティストの著作権管理を目指す

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インターネット上で言う「アグリゲーション」とは、実際は誰も賛美しない最上級の社交辞令となっている。

あらゆる形式のコンテンツは、デジタル時代において、徐々にコモディティーや通貨に変わりつつある。しかし、世界中どこでも瞬時にコミュニケーションができるスピードと簡便さ、そして無制限にコピーできるキャパシティーの実現により、クリエイターと彼らの作品が切り離されやすくなってしまった。

ブルックリンに拠点を置くMediachainはそれを変えたいと考えている。

ブロックチェーンに似た分散化メディア・ライブラリとコンテンツ認証テクノロジーを組み合わせることで、Mediachainのツールから誰でも作品を登録したり、クリエイティブ作品をインターネット上やアプリからトラックしたりすることができる。

「Mediachainは世界規模のメディア・ライブラリで、その構造はビットコインのブロックチェーンにヒントを得ています。また、ShazamやGoogle画像検索で活用されているのと似たコンテンツIDテクノロジーを利用しています」とMediachainの共同ファウンダーであるDenis Nazarovは言う。

アプリ開発者は、コンテンツのメタデータを使って自動で作品の帰属を設定し、コンテンツ利用などの履歴を保存する。また、コンテンツがどのように使用されているかというアナリティクスも提供する。

Mediachainは同社のサービスについて、ブログで次のように説明している。

フィードに流れてきたバイラルGIFのアーティストを知ることができる状況を想像してみてください。あるいは、どんな画像でも発祥や歴史を知ることができたり、あなたが音楽の再生ボタンを押す度にそのミュージシャンに自動で報酬が入ったりすることも可能です。世界の文化に関する情報を発見したり、再利用したりすることが可能なツールを使って、開発者はこのような仕組みを構築したり、さらに拡張的な仕組みを作ることもできます。

Mediachainは、同社のレポジトリにはすでに200万以上の画像があるという。同社のコンテンツライブラリには、The Museum of Modern Art(MoMA)、Getty Images、the Digital Public Library of America and Europeanaなどの団体のメタデータの記録もあるという。

「もしインターネット上にある全ての情報が共有されていたらどうでしょう。Mediachainを使うと、どこで使用されているメディアであっても、その作者を特定し、画像のストーリーを知ることができます」ともう一人の共同ファウンダーであるJesse Waldenは言う。

Waldenによると、最終的な目標はコンテンツ利用をスムーズで効率化することという。「現在、画像がバイラルに広がって何百万人がそれを見たとしても、その画像のクリエイターは真っ当な評価を受けることができないこともあります」とWaldenは言う。

そして、オンラインでは著作権の帰属という概念は浸透していない。著作権への帰属がなされていなかったり、盗作が相次いでいる。

いつまで経っても同じことが繰り返されている。

「希少性を主張するのは実りの少ない努力です」とWalden。「これは人為的な希少性をコントロールしたり、創作したりするのとは違います」。

Waldenによると、既存のコピーライト団体が取り組みが失敗している理由はそこにあると話す。

WaldenとNazarovのどちらも、ほぼ無料で全てのファイルを共有できる時代を過ごしてきた。NapsterもBitTorrentもTumblrは基本的に無料で、そして基本的に無秩序なファイルシェアリングのためのプラットフォームだ。

これらのプラットフォームはイノベーションには役立ったが、Mediachainの共同ファウンダーの両名は、クリエーターが自身の作品のオーディエンスと関わることができない形で、著作権が奪い取られていることに気がついたと話す。

一つの問題は、作者が作品のコントロールをオーディエンスに失っていること、そしてもう一つは作品を支持する人に、本来の作者が見えなくなってしまっていることだ。

Andreessen、Union Squareといった投資家やその他Digital Currency Group、LDV Capital、Alexis Ohanian、William Mougayar、Kanyi Maqubela、David Lee、Mathieu Drouin、Brian Messageらもファウンダーの考えに同意している。

「オンラインのエコノミーは、注目度が重要なエコノミーです」とWaldenは言う。「誰もがクリエイターです。InstagramやTumblrに何かを投稿し、他の誰かがライクしたり、フォロワーができたりします。プラットフォーム経由でマネタイズできますが、作品の所有権を渡すことでしかマネタイズできないのです」と言う。

Mediachainでは、作者がシステムに登録し、Mediachainのノードを作成することで所有権を示すことができる。開発者は、Mediachainのプロトコルを使用してコンテンツを登録する。ログインする開発者が増えるほど、Mediachainのデータセットを他のプラットフォームにも普及させていくことができる。

NazarovとWaldenのどちらにとっても、著作権の帰属の問題は学術的な意味にとどまらない。Nazarovはプログラマーの世界に入る前には、ファインアートの写真家だった。Waldenは、Solange Knowlesといった作曲家のマネジメント会社をローンチするのを手伝っていた。

「最終的な長期ビジョンは、配信先とは独立した形で、作品経由でクリエイターが認識されるようになれば、クリエイターは配信の全てのプロセスを保有し、最終的にこれまで不可能だった方法でマネタイズができようにすることです」とWaldenは言う。

「私たちはメディアがどのように配信されるか自由に選べる市場の世界で生きています」という。今のモデルは変わらなければならないとMediachainのファウンダーは考えている。配信先のプラットフォームではなく、クリエイター自身に権限があるモデルを目指している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Googleの「公正使用」勝訴後も残る著作権に関する疑問

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OracleがGoogleを相手取った長きに渡る裁判に関し、もしも陪審員がどのような判断を下したか知らなければ、昨日(米国時間5月26日)の両社の弁護団の様子からは、その結果について推測することはできなかっただろう。判決が読み上げられた直後、両サイドの知的所有権を専門とする弁護団は、それぞれ肩を寄せあって小声で話し合っていた。その光景からは、OracleがGoogleのポケットから最高で90億ドルを手に入れる可能性のあった、重要な戦いに敗れたということは見てとることができなかった。

陪審員の、GoogleによるAndroid上でのJava APIの利用は公正使用である、という判断は、Googleが巨額の小切手を切ることを防いだだけではなく、Javaを利用したソフトの開発者にも一息つく間を与えた。しかしながら、前回の裁判では、APIが著作権による保護の対象とされるという判決が下っており、公正使用を認める判決さえ覆される可能性があるという意味で、Googleにとっては複雑な勝訴であったといえる。さらに、Oracleは既に控訴の意向を示している。

デューク大学でコンピューターサイエンスの教授を務めるOwen Astrachan氏は、今回の判決に関し「APIに著作権が認められていることを考えると、今回の判決は興味深い」と語る。Astrachan氏は、著作権に関する前回の裁判と、今回の公正使用に関する裁判両方で、Google側の鑑定人として証言しており、ホテルの部屋で、Twitter上に現れた判決に関するニュース目にしたときには、喜びで飛び跳ねたという。「Java APIの利用について、それが一件ずつ公正使用かどうか裁判で争わないといけないということでしょうか?面白いですね。Oracleは誰に対しても裁判を起こせるくらい十分なお金を持っていますし」

開発者には、これから自分たちの製品を裁判で守る必要があるかどうか、という問題がまだ残されている。彼らのJavaの再実装が、公正使用と認められる可能性はあるものの、誰もOracleのような資金力のある会社を相手に、裁判で戦おうとは思わないだろう。EFFのような支援団体は、ラベルAPIに著作権さえ認めない方が、開発者のコミュニティーにとってはよりシンプルで安心できると主張する

Googleの弁護団は、公正使用の四大原則をもとに議論を作り上げ、Astrachan氏いわく、これが陪審員に対してうまく効いたようだ。弁護士と証人は、コードの実装について一風変わった例を示した。問題となっていたAPIは、2週間に及ぶ審理の中で、キャビネット、ハンバーガー、コンセント、ハンドルさらにはハリーポッターシリーズにまで例えられていた。しかし、結果的にこの奇妙な例えが、望まれていた効果を発揮したのだ。

「多分、ハンバーガーとコンセントとハンドルの例えに効果があったんだと思います」とAstrachan氏は語り、さらに陪審員による評決が発表された後、「私たちはハンバーガーを食べにいこうかと冗談を言っていました」と話した。

一方、Googleの弁護団はシャンパンで勝訴を祝っていた。

しかし、祝福ムードはOracleのオフィスまでは届いていなかった。今回の裁判でOracle側に立った、知的所有権専門弁護士のAnnette Hurst氏は、LinkedIn上で判決内容を非難するブログ記事を公開した。Hurst氏は、今回の判決で、Oracleが不意打ちを食らったと示唆し、「GoogleによるAPIの使用法が、公正使用にあたると予想した著作権の専門家はいなかったでしょう」と綴っている。

「この度の判決が覆されることがなければ、世界中のクリエイターが苦しむことになるでしょうし、フリーソフトウェア運動自体も今大きな危機に直面しているといえます。」とHurst氏は付け加えた。「著作権で保護されている全てのソフトウェアの所有権が、この結果を受けて今後どのように守られていくのかわかりません。ソフトウェア企業は、ソフトウェアそのものとしてではなくサービスとして製品が管理されるよう、今からクラウド化を加速させなければなりません」

Hurst氏の、GoogleによるAndroidの開発でオープンソース・ソフトウェアが痛手を負ったという主張は、Oracleの共同最高経営責任者であるSafra Catz氏が証言中に述べたコメントと内容を同じくする。Catz氏は、Androidの導入によってJavaのオープンソースコミュニティーが分裂し、開発者をふたつのプラットフォームに振り分けることになってしまったと語っていた。

Hurst氏は、開発者コミュニティーを強く非難しながら、フリーでオープンなソフトウェアを推進する運動の草分け的活動家でプログラマーでもあるRichard Stallman氏の名前を挙げ、ブログ記事を締めくくった。「この戦いであなたたち開発者は、Oracle側に立つべきでした。Googleの言うフリーは、Richard Stallman氏が言っていたフリーとは意味が違うんです」

5年におよぶ法的論争をもってしても、Oracleの辛口批評家の大多数がその意見を曲げることはないようだ。しかし、そこには控訴という手段が残っている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Oracle敗訴―陪審員はGoogleのAndroid中のJava APIを「公正使用」と評決

2016-05-27-oracle-google

多くのモバイル・アプリのデベロッパーが安堵のため息をついたはずだ。陪審員はGoogleの37件のJava APIのAndroidのコードへの利用を公正使用〔fair use〕と認めた。ただしOracleの弁護士はいち早く控訴の意向を明らかにしている。

Googleの広報担当者は「GoogleによるJava APIの利用を公正仕様と認めた今回の評決はJavaのプログラミングのコミュニティーだけでなく、オープンかつ無償のプログラミング言語を信頼して革新的なプロダクトを消費者に届けようとするあらゆるソフトウェア・デベロッパーにとっての勝利だ」と述べた。

もしこの訴訟でJava言語を所有するOracleが勝っていれば、デベロッパーはサードパーティーが開発したAndroidプログラムのJava APIを再利用することを恐れるようになっていたはずだ。これはきわめて一般的な慣行となっている。

OracleがGoogleを訴えたのは2010年にさかのぼる。 Oracleは「GoogleはOracleが所有権を持つJavaプログラミング言語を許可なく利用した」としてGoogleに対する訴訟を起こした。一審ではGoogleの行為は著作権侵害に当たらないと判決されたが、控訴審はこの判決を破棄し、争点となっているAPIには著作権が及ぶと認めて事件を下級審に差し戻した。このため争点はGoogleのAPI利用が一定の条件の下で使用が認められる公正使用に該当するかどうかとなった。

OracleにはJava言語をライセンスする権利がある。しかしGoogleは問題の37件のAPI利用は、オリジナルの内容を独自に改変して別のプラットフォーム、つまりAndroidで使用しているため公正使用に当たると主張していた。もしOracleが勝訴していれば、約90億ドルの損害賠償を得られるはずだった。

EEF(Electronic Frontier Foundation)の上級スタッフで弁護士のMitch Stoltzは著作権問題を専門としているが、「これはソフトウェア開発ビジネス全体の勝利だ。この評決でAPIを再利用するソフトウェア・デベロッパーは訴えられる心配をする必要がいくらか減った」と述べた。しかし Stoltzは「(APIに著作権が及ぶとした)上級審の判決は依然有効であり、小規模なデベロッパーがテクノロジーの巨人から訴えられる危険性は残っている」と指摘した。

この訴訟では、Googleの共同ファウンダーでAlphabetのCEO、ラリー・ペイジが証言し Oracleの主張に反駁した。ペイジは陪審員に対し、「私は著作権がAPI宣言に及ぶという定義に反対する。Java APIの宣言コードの利用はデベロッパー間に広く行われている慣行だ」と述べた。

William Alsup判事は前回のOracle対Googleの訴訟も担当しているが、「判断に当たってきわめて思慮深いアプローチを取っている」としてたびたび陪審員を賞賛している。またいささか異例ではあるが、Alsup判事は最終弁論の前に陪審員が事実を検討する時間を得るためにメモを自宅に持ち帰ることを許可した。

しかしOracle側は控訴の意向を明らかにしているため、訴訟はこれからも続くことになる。【略】

進行中の事件のため、この記事はアップデートされることがある。

画像:: corgarashu/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+