医療機関向け治療用アプリを手がけるCureAppの「高血圧症向け治療用アプリ」が薬事承認取得、ソフトウェア単体で日本初

医療機関向け治療用アプリを手がけるCureAppの「高血圧症向け治療用アプリ」が薬事承認取得、ソフトウェア単体では日本初

医療機関向けの治療用アプリを開発するメドテック企業CureApp(キュア・アップ)は3月9日、本態性高血圧症のための治療用アプリの薬事承認を取得したと発表した。薬だけに頼らず、アプリで生活習慣を修正するデジタル療法を実現する「高血圧症治療用アプリ」誕生の第1歩になるとのこと。ソフトウェア単体での薬事承認は国内初であり、高血圧領域における治療用アプリの薬事承認了承は世界初だという。これは、自治医科大学内科学講座循環器内科学部門との共同研究によるもの。

原因がはっきりしない本態性高血圧症の治療には生活習慣の修正が重要となるが、患者の価値観や意欲、生活環境に左右されるため継続が難しく、医療機関は介入しにくい。そのため、患者の70%は降圧目標が未達成もしくは未治療の状態だという。

このアプリは、そうした課題に対処するべく、患者ごとに個別化された治療ガイダンスを提供する。血圧と生活習慣の記録から、その人に合わせた食事、運動、睡眠などに関する情報を示すことで行動変容や継続的な生活習慣の修正を促し、正しい生活習慣の獲得をサポートすることで治療効果をもたらすことを目指している。患者の生活習慣の修正状況は、医師用アプリで医師が確認できるため、診療の質の向上も期待できる。

CureAppは、「アプリが病気を治療する効果を持つ」と考え、「治療アプリ」の開発を行っている。2020年8月には、ニコチン依存症治療アプリとCOチェッカー「CureApp SC」が薬事承認を取得し、保険適用になっている。現在は、非アルコール性脂肪肝炎向け、アルコール依存症向け、がん患者支援、慢性心不全向けの各治療アプリの開発に取り組んでいる。

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つずに血糖値を測定する

糖尿病の人やその疑いを持たれたことのある人なら、指に針を指し血を1滴とって棒に付ける作業を、指がしびれるまでやったことがあるだう。指先穿刺式血糖値検査は事実上の標準だが、AI企業の Scanbo(スカンボ)はこれを終わりにして、その1滴の血液を市販の診断ツールと強力なデータ分析で置き換えようとしている。

この会社が開発したプロトタイプは、3電極の心電計(ECG)とフォトプレチスモグラム (PPG)を組み合わせた装置だ。60秒間の測定結果を一連のアルゴリズムに送り込むことによって、非常に信頼できる測定値を得られる。装置は非侵襲的に血糖値のモニタリングを行うが、同社のファウンダーは、同時に血圧測定も行うことができると言っている。

私はTechCrunchのバーチャルCES特集取材の一環で、同社ファウンダーでCEOのAshissh Raichura(アシーシ・ライチュラ)氏からテクノロジーの詳細を聞いた。彼はデモンストレーションもしてくれて、まず自身の血液を市販の指先穿刺血糖値検査器で測定し、つぎに同社のプロトタイプを使った。測定値はそれぞれ6.2と6.3mmol/Lで、両者の差は数%以内だった。

「3本の電極はECGデータおよびPPGの追加測定に使用します。60秒間測定したら、原データを機械学習畳み込みニューラルネットワークとディープ・ニューラルネットワークで分析します。すべてのデータを合わせ、3種類の機械学習アルゴリズムを使った結果から血糖値を分析します」とライチュラ氏がデモの準備をしながら私に話した。「私たちの製品を商品化したいので、現在、FDA(米食品医薬品局)とカナダ保健省の認可を取得するつもりです」。

動作中のScanboプロトタイプ(画像クレジット:Scanbo)

血糖値の非侵襲測定が可能だと知って私は驚いた。いわゆる非侵襲的方法の多くは、体内埋め込みセンサーフィラメントセンサーワイヤーを使用して測定している。Scanboが使用している方法は、医学論文誌で研究結果が報告されている。この手法を使った製品をこれまでにFDAが認可したことはないようなので、製品を市場に出すためには時間のかかる医療承認プロセスに直面することは間違いない。

同社は、血圧測定も可能だという。通常は診療所や自宅でカフを巻いて測定するものだ。

「心電図データを取得した後、それをshort wave transmission lengthというものに変換します」と、ライチュラ氏は血圧データを取り出す方法を説明した。「それに基づいて、非侵襲的でカフ不要な方法で血圧を計算します。このアルゴリズムも特許出願中です」。

これらのテクノロジーを手にしている同社には、楽しみな選択肢がある。自身でハードウェア装置を製造するか、アルゴリズムとテクノロジーを、PPGやECG機能のあるデバイスをすでに販売している企業にライセンスするかだ。

「現在出願中の特許が2件あります。純粋なハードウェア、設計方法、電極の合金化方法、あらゆるパラメータを一度に取得できるセンサーなどに関するものです」とライチュラ氏は説明し、あらゆるデータを一度に測定しようとしていることをほのめかした。「従来の機器を見ると、1度に1つのものを測定していて全部まとめてではありません。私たちの場合、装置に指を4本置いてもらえれば、全データを取得して、アルゴリズムを使って患者の健康に関するさまざまな側面から結果を報告できます」。

Scanboはこのテクノロジーを、自宅で現在使われている医療に関する技術や技法のいくつかを置き換えるものになると期待している。

「私たちはAIとMedTechを組み合わせた会社です」とライチュラ氏は述べ、市場が注目し始めていることに言及した。「このプロダクトを手に、会社はまさにスタートを切ったところです。Medtronic(メドトロニック)、Samsung(サムスン)、LG(エルジー)などの企業がすでに当社との協業ができないか声をかけています。私たちは世界でさまざまな市場に進出するための戦略的提携をいくつか結ぶつもりてす。世界で4億人の2型糖尿病患者が「血糖値測定器」を必要としていますが、ほとんどの人たちは買うことができません。継続的な血糖値測定など考えられません。私たちのコスト削減効果は膨大です。価格は月額20ドルまで下げられます。生物学的廃棄物も使い捨て器具もありません、検査紙も何もいりません、純粋な機械学習アルゴリズムと充電式デバイスだけです」。

会社はまもなくこのプロトタイプと臨床試験結果を武器に、シードラウンドを実施して、認可を取得し最終的に商品を市場に出すためのスタートを切ろうとしている。

画像クレジット:Scanbo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルのサプライヤー、英スタートアップRockley Photonicsが採血なしで血糖値を測定できる非侵襲センサーシステム発表

アップルのサプライヤー、英スタートアップRockley Photonicsが採血なしで血糖値を測定できる非侵襲センサーシステム

Rockley Photonics

将来のApple Watchに非侵襲性の血糖値モニター、つまり「注射器で採血することなく、手首に装着したデバイスで血糖値を測定できる」機能が搭載される噂が以前より繰り返されています。そんななか、アップルのサプライヤーがそのソリューションを正式に発表しました。

今回の声明は、イギリスのスタートアップであるRockley Photonics社が発表したものです。同社は今年5月、スマートウォッチの背面から赤外線を照射して血圧や血糖値、血中アルコール濃度などを読み取る次世代センサーを開発していることや、アップルと継続的な「供給・開発契約」を締結していることを明らかにしていました

現在のApple Watchに搭載されたセンサーは、赤外線と可視光を組み合わせて心拍数と酸素飽和度を測定しています。Rockleyの次世代センサーは、これより感度が高い上、より多くの数値が測定できる完全上位の技術というわけです。

さてRockleyの発表によると、完全なフルスタック(複数種類)の「clinic-on-the-wrist」デジタル健康センサーシステムを開発したとのこと。

公開されたリストバンド型デバイスは、ハードウェアとアプリケーションファームウェアを統合しており、コア体温(体内深部温度)や血圧、身体の水分補給、アルコール、乳酸(ラクテート)、血糖値の傾向など、複数のモニタリングができると謳われています。

このセンサーは、非侵襲的に皮膚の下を探り、血液、間質液(体液)や真皮のさまざまな層を分析して、重要な成分や物理現象を検出するとのこと。こうしたバイオマーカーは、これまではベンチトップ型(卓上に置いて使う)機器でしか測定できなかったとされています。

また本技術は今後数ヶ月のうちに社内でテストが行われてから、2022年前半には第1世代の製品が商業的に利用できるようになる見込みとのことです。つまり2021年秋に発売と見られるApple Watch Series 7(仮)には間に合わないとの噂が裏付けられたかっこうです。

Rockley社のテストが成功するのか、上手くいったとしてApple Watchに採用されるのかはまだ未知数というほかありませんが、少なくとも数年のスパンでは期待を持てる状態になったと見てよさそうです。

(Source:Businesswire。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Apple / アップル(企業)Apple Watch(製品・サービス)ウェアラブルデバイス(用語)血圧 / 血圧計(用語)血中アルコール濃度(用語)血糖値スマートウォッチ(用語)センサー(用語)糖尿病乳酸(用語)Rockley Photonics(企業)

スマホを臨床的に認められた血圧計にするアプリをSiri開発者と科学者の「Riva Health」が開発中

科学者のTuhin Sinha(トゥヒン・シンハ)氏とSiriの共同創設者であるDag Kittlaus(ダグ・キトラウス)氏が設立したRiva Healthは、臨床的に認められた方法で人々が血圧を測定できるようにしたいと考えている。血圧を測定し、心臓疾患の初期徴候を確認することで、リスクのある患者が実際のリスクが発生する前に問題に対応することができるからだ。市場に出回っている他のハードウェアソリューションも同じ目的を掲げているが、Rivaはエンドユーザーが持っていると同社が考えるハードウェア、つまりスマートフォンと統合する純粋なソフトウェアソリューションを目指している。

突然姿を現し、米国時間3月17日にローンチした同社は、Menlo Venturesが主導し、True Venturesが参加したラウンドで1550万ドル(約17億円)のシード資金を調達した。そのうちUC HealthとUniversity of Colorado Innovation Fundが500万ドル(約5億5500万円)を出資した他、GoHealthのBrandon Cruz(ブランドン・クルーズ)氏やMadison IndustriesのLarry Gies(ラリー・ギース)氏などのエンジェル投資家が参加している。投資前に3年間シンハ氏と交渉を行っていたMenloのGreg Yap(グレッグ・ヤップ)氏が取締役に就任する。

AIアシスタント「Viv」の創設者でもあるキトラウス氏は、自身が深刻な健康問題を経験した後、デジタルヘルスに変化をもたらす方法について考え始めたと述べている。キトラウス氏は2016年に膵臓の神経内分泌癌と診断されたが、これはAppleの最高経営責任者だった故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏が患っていた癌と同じ種類のものだった。

「私は血液測定に関するアイデアを検討することに多くの時間を費やしていたのですが、そこには以前自分がいた両方の会社にあったものが欠けていました。世界を動かす力を持ったすばらしい技術的イノベーションが欠けていたのです」と彼はいう。

キトラウス氏は、友人のShawn Carolan(ショーン・カロラン)氏とこの夏に交わした内輪の会話について触れた。Siriに最初に投資したこの友人は、Rivaに使われている技術を長年開発してきた科学者トゥヒン・シンハ氏を紹介してくれた。

Rivaは、スマートフォンでアプリを開いて「Go」をタップするだけで利用できる。スマートフォンの背面カメラのフラッシュが起動し、ユーザーはその上に指をかざすように誘導され、適切な位置にロックされるまでアプリが調整してくれる。その後、Rivaはこのライトを使って血圧の変化を追跡し、画面上にそのレンダリングを生成する。

Riva Healthが計画しているデザイン。変更される可能性がある(画像クレジット:Riva Health)

「この技術でよく知られているのは、血管に光を当て、そこから波を取り出すことです」とシンハ氏は説明する。「当社の技術の新規性は波の形で、それが血圧とどのように関係しているかという点にあります。そして当社の企業秘密は、波の形の変化を厳密かつ包括的な方法で検証していることです」。シンハ氏はその検証方法については明らかにしなかったが、さまざまなシナリオ(立っている、座っているなど)で血圧を測定し、効果があるかどうかを確認することが鍵だと語った。

Rivaが心拍数5〜7回分のデータを追跡すると、測定対象者のその時点での血圧を包括的に把握できる。

データはHIPAAに準拠しており、高血圧をはじめとするリスクがあるかどうかを分析するためにかかりつけの医師または診療所に送ることができる。

「スマートフォンのようなプラットフォームへの移行は(健康と疾病管理の)測定と管理をモバイル型にするものです」 とシンハ氏はいう。Riva Healthは純粋なソフトウェアソリューションだ。

同社は現在Android携帯でそのソフトウェアを検証している最中だが、キトラウス氏は「今日あるどの携帯でも必要な信号を取得できるはずです」という。

ヘルステック企業、特にRivaにとっての大きなハードルは、臨床使用に関してFDAの認可を得ることができるかどうかである。同社は現在、FDAの承認手続きに取り組んでおり、2021年夏にリリース予定の無料アプリを試験利用するユーザーに対し、承認手続きを促進するための試験とデータ収集への参加を求める予定だ。

現在、Rivaはその技術を使って、臨床現場での血圧の変化を追跡しており、後半には自宅での使用データも集める。実世界でのシステムの使用状況を追跡することで、同社の病気管理技術が研究室や自宅の環境で動作し、有効であることを証明しようとしているのだ。

「血圧測定ができると主張する機械やガジェットはたくさんあります。それらはそれなりの血圧測定を行うことはできますが臨床基準は満たしてはいません」。とキトラウス氏は続ける。血圧カフや、iPhoneのようなスマートデバイスに接続するカフレスウェアラブルのようなその他のソリューションは、非臨床使用で血圧を測定するもので、精密なものではなく、血圧に関する明らかな問題を知らせるだけだ。

Rivaの目標は、医師も頼りにできるような正確さを日常にもたらすことであり、それは収益を上げる手段でもある。UC HealthのチーフイノベーションオフィサーであるRichard Zane(リチャード・ゼイン)博士はこの技術は「万全」であると述べている。過去3年間に700社以上の企業がゼイン氏のチームと協力しようとしてきたが、Rivaはその目標を達成した数少ない企業の1つだ。

「私たちのチームがテストしてみたところ、最初から問題なく機能していました。これは稀なことです」。とゼイン氏は述べている。同氏はさらに、参入への最大の障壁の1つはデバイスを必要としていたことであったことに言及し、Rivaは「患者がすでに持ち歩いているものに組み込まれ、心臓病や高血圧を管理できるようになる、実用的な新しい技術」をもたらすものだと付け加えた。

「Rivaのコアプロダクトは医療成果です」とシンハ氏は語る。同社は、成果に基づく医療が今後重要になってくると信じているスタートアップの1つであり、医師が1日に完了する診察回数ではなく、結果に対して報酬が支払われるようなモデルを念頭に置いている。このビジョンの下、Rivaは結果を病院のシステムやプロバイダーに販売することで収益化を図ろうと計画している。医師が患者を手術から遠ざけ、以前よりも早く問題を指摘できるツールを提供できれば、病院側がなぜそれを採用すべきかについて確固とした議論をすることができる。

価値ベースのモデルを採用しているのは医療機関のわずか20%であるため、同社の考え方が適切であったとしてもこれはビジネスの障害になるだろう。サービスを軌道にのせるために、当面は保険会社と協力していくとキトラウス氏は話している。Rivaは、高血圧の治療と管理に対して払い戻しを受ける。

「保険が適用され、消費者にも医師にも無料で利用できるようにしたいと思っています」と同氏は語った。

FDAがこの技術を承認しても、医師や医療従事者は「依然として懐疑的な姿勢を取る」と思われるが、最終的にはカフよりも正確で継続的な結果が得られることを納得するだろうとキトラウス氏は述べている。

「薬の代わりに、アプリを処方しているのです」と同氏はいう。

FDAの承認を待っているこのアプリは、2021年の終わりか2022年の初めに一般提供される予定だ。Rivaの今後数カ月が、その成功と有効性を決定する鍵となるだろう。チーフサイエンティストのシンハ氏は、厳格かつ迅速に作業を進めていると語る。同氏は、会社の成功と個人的なつながりを持っている。

シンハ氏は、59歳になる前に心臓病で5人の叔父と1人の叔母、そして父親を亡くしている。そしてこのアプリには、家族を失った状況を追跡する機能が搭載されている。

「胸に時限爆弾を抱えているような気がします」と同氏は吐露した。「どちらかといえば、私は自分のためにアプリの開発をしています」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Riva Health血圧計スマートフォン資金調達Siri

画像クレジット:Riva Health

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)