採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーが1億円の追加調達、量産化に向けた開発・薬事戦略を加速

採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーがシリーズAファイナルとして1億円調達、薬事承認に向け展開加速赤外線レーザーを用い、採血をしなくても血糖値を測定可能な非侵襲血糖値センサーを開発するライトタッチテクノロジー(LTT)は2月4日、シリーズAファイナルラウンドとして、1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、MPI-2号投資事業有限責任組合(MedVenture Partners)。2017年の創業以来の資金調達総額は、補助金などを含め累積調達額約5億円となった。

調達した資金により、量産化に向けた試作器の開発を用いて、臨床試験、薬事承認に向けた展開を加速させる。

世界で4億人ともいわれる糖尿病患者は、毎日指などに針を刺して採血し、血糖値の測定を行っている。そうした患者の痛みや精神的ストレスの他に、体に針を刺すことから感染症のリスクもあり、さらに測定に利用した針やチップは医療廃棄物となるという問題もある。そこでLTTは、従来光源(黒体放射)に比べて10億倍の明るさがある高輝度赤外線レーザーを開発し、高精度の非侵襲血糖測定技術を世界で初めて確立した。これにより、採血なしに約5秒で血中グルコース濃度の測定を可能にした。採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーがシリーズAファイナルとして1億円調達、薬事承認に向け展開加速

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つずに血糖値を測定する

糖尿病の人やその疑いを持たれたことのある人なら、指に針を指し血を1滴とって棒に付ける作業を、指がしびれるまでやったことがあるだう。指先穿刺式血糖値検査は事実上の標準だが、AI企業の Scanbo(スカンボ)はこれを終わりにして、その1滴の血液を市販の診断ツールと強力なデータ分析で置き換えようとしている。

この会社が開発したプロトタイプは、3電極の心電計(ECG)とフォトプレチスモグラム (PPG)を組み合わせた装置だ。60秒間の測定結果を一連のアルゴリズムに送り込むことによって、非常に信頼できる測定値を得られる。装置は非侵襲的に血糖値のモニタリングを行うが、同社のファウンダーは、同時に血圧測定も行うことができると言っている。

私はTechCrunchのバーチャルCES特集取材の一環で、同社ファウンダーでCEOのAshissh Raichura(アシーシ・ライチュラ)氏からテクノロジーの詳細を聞いた。彼はデモンストレーションもしてくれて、まず自身の血液を市販の指先穿刺血糖値検査器で測定し、つぎに同社のプロトタイプを使った。測定値はそれぞれ6.2と6.3mmol/Lで、両者の差は数%以内だった。

「3本の電極はECGデータおよびPPGの追加測定に使用します。60秒間測定したら、原データを機械学習畳み込みニューラルネットワークとディープ・ニューラルネットワークで分析します。すべてのデータを合わせ、3種類の機械学習アルゴリズムを使った結果から血糖値を分析します」とライチュラ氏がデモの準備をしながら私に話した。「私たちの製品を商品化したいので、現在、FDA(米食品医薬品局)とカナダ保健省の認可を取得するつもりです」。

動作中のScanboプロトタイプ(画像クレジット:Scanbo)

血糖値の非侵襲測定が可能だと知って私は驚いた。いわゆる非侵襲的方法の多くは、体内埋め込みセンサーフィラメントセンサーワイヤーを使用して測定している。Scanboが使用している方法は、医学論文誌で研究結果が報告されている。この手法を使った製品をこれまでにFDAが認可したことはないようなので、製品を市場に出すためには時間のかかる医療承認プロセスに直面することは間違いない。

同社は、血圧測定も可能だという。通常は診療所や自宅でカフを巻いて測定するものだ。

「心電図データを取得した後、それをshort wave transmission lengthというものに変換します」と、ライチュラ氏は血圧データを取り出す方法を説明した。「それに基づいて、非侵襲的でカフ不要な方法で血圧を計算します。このアルゴリズムも特許出願中です」。

これらのテクノロジーを手にしている同社には、楽しみな選択肢がある。自身でハードウェア装置を製造するか、アルゴリズムとテクノロジーを、PPGやECG機能のあるデバイスをすでに販売している企業にライセンスするかだ。

「現在出願中の特許が2件あります。純粋なハードウェア、設計方法、電極の合金化方法、あらゆるパラメータを一度に取得できるセンサーなどに関するものです」とライチュラ氏は説明し、あらゆるデータを一度に測定しようとしていることをほのめかした。「従来の機器を見ると、1度に1つのものを測定していて全部まとめてではありません。私たちの場合、装置に指を4本置いてもらえれば、全データを取得して、アルゴリズムを使って患者の健康に関するさまざまな側面から結果を報告できます」。

Scanboはこのテクノロジーを、自宅で現在使われている医療に関する技術や技法のいくつかを置き換えるものになると期待している。

「私たちはAIとMedTechを組み合わせた会社です」とライチュラ氏は述べ、市場が注目し始めていることに言及した。「このプロダクトを手に、会社はまさにスタートを切ったところです。Medtronic(メドトロニック)、Samsung(サムスン)、LG(エルジー)などの企業がすでに当社との協業ができないか声をかけています。私たちは世界でさまざまな市場に進出するための戦略的提携をいくつか結ぶつもりてす。世界で4億人の2型糖尿病患者が「血糖値測定器」を必要としていますが、ほとんどの人たちは買うことができません。継続的な血糖値測定など考えられません。私たちのコスト削減効果は膨大です。価格は月額20ドルまで下げられます。生物学的廃棄物も使い捨て器具もありません、検査紙も何もいりません、純粋な機械学習アルゴリズムと充電式デバイスだけです」。

会社はまもなくこのプロトタイプと臨床試験結果を武器に、シードラウンドを実施して、認可を取得し最終的に商品を市場に出すためのスタートを切ろうとしている。

画像クレジット:Scanbo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

血糖値に基づきリアルタイムでその人だけの減量アドバイスをするSignos、シリーズAで約14.8億円調達

日常的に歩数を数えて心拍数を測り、週に1度体重計に乗って体にどのくらいの変化が起きているかを時折確認する、というのでは効果はあまり期待できない。質量を告げるガラスのオラクルの上に1日に何度か立ってみても、実際には体重は後を追う指標であり、何が起きそうかではなく、何が起きたかを示すものだ。主要な指標の1つとなるのが血糖値だが、減量スタートアップのSignos(シグノス)は、自分の代謝の違いに興味がある人がリアルタイムの血糖値モニタリングに登録したり、健康状態を維持するためのアラートに登録することに期待を寄せている。そして同社の1300万ドル(約14億8000万円)のシリーズAラウンドをリードするという観点から、GVも同様の考えを持っていることが伺える。

基本的な科学は次の通りである。オートミールを1杯食べると血糖値が急上昇する。散歩やランニングをすると血糖値が下がり、体重増加が抑えられる。筆者の体の反応は、異なる日、異なる時間に、異なる種類の食べ物を接種することでさまざまな影響を受けているかもしれないし、自分の体に関する予測不能のあらゆる要素や、自分が何を食べ、その日どうしているかによっても違ってくるかもしれない。重要な点は、筆者の体を例に挙げても意味がないということだ。あなたの場合は違ったものになるだろう。Signosは、継続的に測定することで、人々が各自の健康に必要なデータを手に入れることができると考えている。少なくとも情報を得ることができれば、体に何を入れるべきか、体重を落とすためにどのくらいの頻度で体を動かすかを選択できる。

同社は米国時間11月10日、総額1700万ドル(約19億4000万円)の資金を調達したことを明らかにした。これには1月にCourtside Ventures(コートサイド・ベンチャーズ)、1984 Ventures(1984ベンチャーズ)、Tau Ventures(タウ・ベンチャーズ)がリードした400万ドル(約4億6000万円)のシード資金も含まれる。現在のラウンドはシリーズAで、GVがリードし1300万ドルを調達している。

同社の創業者は、減量の課題にはかなり密接な個人的関係があると筆者に語り、始まりの経緯を概説してくれた。

「私はかなり太りすぎの、肥満気味の子どもとして育ち、10代の前半まではそういう状態でした。それからスポーツを始め、減量し、実質的にまともなアスリートに成長しました。最終的には大学にホッケーをしに行き、NHLでのプレーの誘いを2回受けるまでに至りました」とSignosのCEOであるSharam Fouladgar-Mercer(シャラム・フーラドガー=マーサー)氏は語る。トップレベルのスポーツを経験した後、同氏の体は再び変化し、体重も大幅に増加した。「数年前にはまたかなり太ってしまい、私は何か良いガイダンスはないかと探し求めるようになりました。標準的なアドバイスとして、成人男性の1日のエネルギー摂取量は2500キロカロリーとされていますが、4000~5000キロカロリーを摂取しながら体重を増やしたことのない友人を持つ人も多いでしょう。また、1500キロカロリーの摂取量で体重を減らせない人もいます。そして私の家族が糖尿病と診断されたときに、持続血糖モニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)のことを知りました。家族からその仕組みの説明を受けながら、CGMを使って代謝が実際に体重減少にどのように影響するのかを解明したいという思いを抱いたのです」。

手短にいうと、フーラドガー=マーサー氏は会社を設立し、構築に取りかかった。

「すべての人の体に特有の代謝ニーズを可視化しています。以前はカロリー削減やマクロ栄養素の計算、炭水化物の除去にこだわっていましたが、現在では、効果のないダイエットを効果的なプランに変えるために、人々と協働できるようになっています」とフーラドガー=マーサー氏は説明する。「数日から数週間のうちにプランを考案し、最適な体重管理と全体的な健康のために時間をかけて洗練させていくことができます。優秀なアスリートや入念なダイエッターは多くの場合、膨大な量の試行錯誤を重ねて結果を出しますが、それと同じ成果を短期間で実現できます」。

Signosのプラットフォームは、何を食べるか、いつ食べるか、どのようなエクササイズが減量に役立つかといった基本的な質問に対する、パーソナライズされた回答を出すのに役立つ。このシステムの心臓部には、Dexcom(デクスコム)のG6持続血糖モニタリングデバイスが組み込まれている。これは一般的に糖尿病患者に使用されているものだ。Dexcomは戦略的投資家として、Signosの最新の投資ラウンドにも参加している。

ユーザーの血液中のグルコース濃度を数分ごとに測定するハードウェアコンポーネントに加えて、SignosはAIを強化したアプリを開発し、持続的な体重減少を促すためのリアルタイムデータとレコメンデーションを提供する。Signos体験の最初に、ユーザーは自分が食べたものをログに記録し、Signosのプラットフォームが特定の食べ物に対する体の反応を学習できるようにする。一度調整されると、Signosはそのデータを使用して、各ユーザーに最適な食品や、いつ食事を摂るべきか、いつ運動をすれば血糖値が最適な減量範囲内に戻るかなど、個別の栄養アドバイスを提示する。

「このデバイスを10日間、フルタイムで装着します。シャワーを浴びたり、ランニングをしたり、睡眠をとったりしながら、測定を続けます。測定が終わるとビープ音が鳴り、取り外して新しいものと交換するときが来たことを知らせます」とフーラドガー=マーサー氏は説明し、デバイスの性質上、環境に優しい技術という面では、ここしばらく私たちが目にした中でベストな水準には達していないことを認めた。リサイクルも再利用もできない。「これは医療機器であり、廃棄する必要があります」。

持続血糖測定デバイスを装着するには、地元の薬局に立ち寄って、小さな電子吸血鬼を内臓に解き放つだけでは不十分だ。医師がデバイスを処方する必要がある。

「米国では、CGMを取得するために医師の処方箋が必要であり、そのオーダーに対応するために薬局も必要です。私たちはすべてのオペレーションを水面下で行っています。サイトを訪問してくだされば、私たちがプロセス全体をご案内します」とフーラドガー=マーサー氏は続ける。「それを終えると、適切な州で認可された薬局を経由して、あなたの元にすべてが入った箱が届きます。さらに、ダウンロード可能な当社のソフトウェアも必要です」。

このシステムの魔法は、ほぼリアルタイムのモニタリングとアラートシステムにある。夜寝る前にスマートフォンをチェックし、午後1時35分に血糖値が急上昇したことを知っても役に立たない。行動を起こす適切な時期は、血糖値が上昇しているときだと同社は主張する。

「長期にわたってこのようなフィードバックループを即時かつ継続的に行うことで、当社のメンバーが達成しようと試みる健康上の成果を実現することができるのです」とフーラドガー=マーサー氏は強調した。

同社によると、10万人以上の潜在顧客がこのプロダクトの利用開始を待っているという。今回の資金調達により、2022年のどこかの時点で、このプロダクトが全米で利用可能になる見込みである。

画像クレジット:画像クレジット:Signos

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ナノテクを用いた針不要の血糖値モニターのためにGraphWearが約23億円調達

血糖値のモニタリングに対し、針不要のアプローチを追求するGraphWearは、シリーズBラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。このシリーズBラウンドは、GraphWearのアプローチ、つまり「皮膚をまったく傷付けずにブドウ糖のような体内の重要な指標を監視する手法」に対する投資家の信任投票のようなものだといえる。

GraphWear Technologiesは2015年、Rajatesh Gudibande(ラジャテシュ・グディバンデ)氏とSaurabh Radhakrishnan(サウラブ・ラダクリシュナン)氏によって創設された。2人はともにペンシルベニア大学でナノテクノロジーの修士号を取得している。具体的にいうと、GraphWearはグラフェン(この材料については後で詳しく説明)で作られた皮膚表面レベルのウェアラブルを開発している。このセンサーは小さく、Apple Watchと同じサイズだが、中核となる重要なテクノロジーは実は裏側部分にある。薄いグラフェン片をウォッチの裏や、下腹部に貼るステッカーの上に設置して使用する。

グディバンデ氏によると、このシリーズBは、同社が以前行ったこのウェアラブルの検証研究を踏まえ、極めて重要な試験を完了し、FDAへの承認申請を提出することに焦点が絞られている。このラウンドはMayfieldが主導し、MissionBio Capital、Builders VC、VSC Venturesが参加して行われた。

「追求すべき重要な課題は、皮膚に穴を開け血液を取るための道具を使わず、血液の中でなにが起きているかを本当に知ることができるのか、ということでした。GraphWear は進歩を遂げつつあり、何百万という人にお届けできる製品を実際に作り出す最初の企業の1つになる可能性があると考えています」とMayfieldの工学生物学投資部門の共同リーダーであるUrsheet Parikh(アーシート・パリク)氏は述べた。

持続血糖モニタリングは、糖尿病関係者の中で注目を集めている。2017年にFDAに承認を受けたFreeStyle Libreなど、いくつかの持続血糖値モニターが近年承認されている。このデバイスは現在でも血糖値を計測するのにアームパッチに取り付けられた皮下フィラメントを利用している。

これらのデバイスは1型糖尿病の糖尿病患者(体がインスリンをほとんどまたはまったく生成しない人々)にとって明確なメリットがある。そうした患者は米国だけでも160万人  いる。米国糖尿病学会は、定期的にインシュリンを注射しているほとんどの患者に対し、持続血糖モニターを含め、血糖値を自己監視できるテクノロジーの使用を「促すべきである」と同学会発行の2020年ガイドラインの中で、述べている。

2型糖尿病の患者(米国では3400万人)、または定期的にインシュリンを注射していない患者の場合は、議論が行われている。一部の人々は、これらの患者にとって、、モニターを用いて定期的に血糖値をモニタリングすることは(これこそ持続血糖モニターが行うことであるが)、それほど意味がないと主張している。例えば、2017年に行われたJAMA Internal Medicineが行った調査によると、患者が血糖値を定期的に自己監視して1年経過しても、患者の A1cレベル(糖尿病の重要なバイオマーカー)は改善しないことが判明した。しかしこの調査は非侵襲的な血糖値モニターではなく、指から血を採血するフィンガースティックテストを定期的に使用していた患者を対象にした調査であった。

しかし、米国糖尿病学会は、インスリン治療と組み合わせて適切に持続血糖モニターを使用することができれば、2型の人々にとってもこのツールは有用になり得ると 述べている

GraphWearの持続血糖モニターのセンサーには、ナノテクノロジーに基づくアプローチが取られている。このデバイスは、小さな引き込み式フィラメントやフィンガースティックを必要とする他の持続血糖モニターと異なり、皮膚をまったく傷付けずに済むとグディバンデ氏はいう。

「グラフェンには分子を引き上げる電場があります。約200の分子が対象になります。次にグラフェンはそれを『吟味』し、電気信号に変換し、Bluetoothを介してユーザーの携帯電話に転送します。携帯電話は、血糖値を持続的にグラフ化して表示することができます」。とグディバンデ氏は説明する。

これらのセンサーは血液中のブドウ糖ではなく、実際には間質液中にあるブドウ糖を計測している。しかし、米国糖尿病学会の2020年のガイドラインによると、間質液中の血糖値は「血漿ブドウ糖とよく相関している」という証拠があるため、この方法で測定された値は糖尿病の患者にとって臨床的に適切なものである。グディバンデ氏は「私たちの経験的臨床データでも同様のことが示されています」と付け加えた。

GraphWearはすでに1型と2型の両方について、40人の患者を対象にこのウェアラブルセンサーの実行可能性調査を実施した。同社は、静脈血から収集した血糖値とこのデバイスがモニタリングした値を比較する検査をしたのだが、結果はまだ公表されていない。しかしグディバンデ氏によると、GraphWearの精度は従来のセンサーの精度と「同等」だったとのことである。

ブドウ糖のモニタリングはさておき、GraphWearについて語る際に、他に注目すべき点は、センサーの素材であるグラフェンだ。

グラフェンは単一原子からなる薄いカーボンシートであり、大変よく電気を通し、強く、軽く、柔軟性がある。グラフェンが2004年に発見されて以来、この素材は大変な注目を集め、まだ完全にそうなってはいないが、次なるシリコンになるだろうと喧伝された。

英国、中国、EUはグラフェンの生産に大々的な投資を行っており、グラフェンを使った製品が少しずつ市場に登場するようになっている(2019年のレビューペーパーで強調されていたいくつかの用途をあげれば、自転車、靴、センサー、テニスラケットがある)

グディバンデ氏によると、GraphWearは、センサーの中で使用されているグラフェンを「新品の状態」に保つことができるため、グラフェンのブドウ糖分子に対する感度を非常に高い状態に保てるという。同社は大規模にその素材を製造することもでき、またナノテクノロジーを用い、ブドウ糖のセンサー以上に有益な新しい用途を開発中である、とパリク氏は述べた。具体的には、同社は分極化された液体をトランジスタとして用いる方法で特許を取得している。

「ブドウ糖分子が皮膚上にあれば、それは一時的なトランジスタのように立ち表れて作用します。これは新しいカテゴリーのトランジスタで、本格的なイノベーションといえます」とパリク氏。

しかし、血糖値モニタリングは GraphWearにとって賢い最初の一歩と言える。というのも承認への道筋がはっきりしているからである。GraphWearの重要な試験が他の持続血糖モニターと同類であることを示せば、同社はFDA 510(k) 承認を求める可ことができる。ただしグディバンデ氏が認識しているように、予測できない落とし穴がいくつかあるかもしれない。例えばGraphWearの非侵襲的なアプローチのために、このデバイ氏が独自のカテゴリーに分類されてしまうことも考えられる。

「ですから、私たちが510(k)になるのかどうかわからない、というリスクはあります。しかし、いずれにしてもそのプロセスは6カ月から14カ月ほどです。当社のゴールは試験を通過して規制機関に承認をもらえるよう申請することです」とグディバンデ氏はいう。

GraphWearがグラフェンプラットフォームを用いて他のバイオ分子を計測できる製品を実現できれば、そのプラットフォームを利用して他の分子を検出したり、あるいは体内でなにが起こっているかを持続的にモニターすることができる。しかしこのシリーズBラウンドは「臨床的に評価された、グラフェンを用いたセンサー」という最初のステップを実現することに焦点をあてている。

画像クレジット:GraphWear

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

ウェアラブルな血糖値トラッカーを掲げるフィットネスプラットフォームUltrahumanが19億円調達

フィットネスプラットフォームのUltrahumanが、アーリーステージ企業を対象としたファンドであるAlpha Wave Incubation、Steadview Capital、Nexus Venture Partners、Blume Venturesの他、Utsav Somani(ウトサヴ・ソマニ)氏のiSeedファンドからの出資を受け、1750万ドル(約19億円)のシリーズB資金調達を正式に発表した。

ベンガルールに本社を置く同スタートアップのシリーズBには、Tiger GlobalのScott Schleifer(スコット・シュライファー)氏、ZomatoのCEOのDeepinder Goyal(ディピンダー・ゴヤル)氏、CredのCEOであるKunal Shah(クナル・シャー)氏、unacademyのCEOおよび共同創業者のGaurav Munjal(ガウラヴ・ムンジャル)氏とRomain Saini(ロマン・サイニ)氏など、数多くの創業者やエンジェル投資家も参加している。今回の資金調達により、同社のこれまでの累計調達額は2500万ドル(約28億ドル)となっている。

このサブスクリプションプラットフォームが登場したのは2019年のこと。以来、同社は自宅向けのワークアウトビデオ、マインドフルネスのコンテンツ、睡眠セッション、心拍数トラッキング(Apple Watchなどのサードパーティ製ウェアラブルとの統合)など、比較的馴染みのあるプログラムを提供してきた。しかし、同社最新のフィットネスツールはかなり斬新なものになっており、ユーザーのグルコースレベル(つまり血糖値)をトラッキングすることで代謝活動を監視できるよう設計されているのだ。

糖尿病を患っている人々にとって血糖値の管理は欠かせない。しかし、米国だけでも何百万人もの人が糖尿病予備軍、つまり血糖値が正常値よりも高く、本人が分かっていないだけで実際は糖尿病になる危険性が高いグループに属している。

さらに、Ultrahumanは世界中で10億人以上もの人々がメタボリックヘルス障害に苦しんでいると主張しており、同社が目をつけている潜在的市場の大きさを物語っている。

血糖値が高い状態が続くとさまざまな健康上の問題が発生するため、食事や運動などの生活習慣を改善させて血糖値を管理することが望ましいとされている。生活習慣の改善は血糖値の上昇を抑え、健康への悪影響を軽減したり、あるいは糖尿病予備軍の人が本格的な糖尿病を発症するリスクを回避したりすることさえできるという。

しかし、人によって、それぞれの食べ物に対する血糖値の反応は大きく異なるため、どのような食事療法や運動療法が自分に合っているのかを知ることは難しく、試行錯誤を繰り返すことになりかねない。

これらの反応は個人の代謝の健康状態に左右されるものであり、さらにマイクロバイオームの多様性、ストレスレベル、時間帯、食品の成分や品質などさまざまな要因に影響を受ける。(関連記事: パーソナライズされた栄養改善アドバイスを提供するスタートアップZoeは、同様に血糖値に注目しているものの、彼らはビッグデータとAIを使ってマイクロバイオームを解読しようとする幅広い取り組みのうちの一要素として扱っている)。

代謝の健康状態には個人差があるため、継続的なグルコースモニタリングが広く普及する可能性は極めて高いと言えるだろう。そのプロセスと価格帯が広く受け入れられるようなものならば、なおさらである。

Ultrahumanは現在、それを達成すべく、フィットネス愛好家に向けたデバイスの製品化に取り組んでいる。6月には最初のデバイスのベータ版を発表しているが、ターゲットとしている価格帯はかなりプレミアムなものとなっている。

創業者兼CEOのMohit Kumar(モヒット・クマール)氏によると「Cyborg」と名付けられた同製品(ウェアラブルとサブスクリプションサービス)は、皮下の間質液からグルコースを抽出する皮膚パッチを備えており、そのデータが分析と視覚化のための付属アプリに供給される仕組みとなっている。

画像クレジット:Ultrahuman

食事中、運動中、睡眠中など、着用者の日常生活における血糖値をこのパッチがトラッキング。バイオマーカーがアプリのトリガーとなって、ユーザーに「ライフスタイルの最適化」を促すシステムだ(Ultrahumanのウェブサイトによると、高血糖イベントを警告し、レベルを下げるための運動を提案するなど)。

継続的な血糖値モニタリングを簡単に行う、とうたうこの製品が実際に効果を発揮すれば、ジャンクフード好きの人は大好きな菓子を食べたらすぐに送られてくる、自分の体の反応に対するフィードバックにショックを受けることになるだろう。

ウェアラブル技術の具体的な内容について尋ねると「スポーツテクノロジーの分野で過去6〜7年にわたって使用されてきた医療グレードのセンサーを使用しており、精度もまずまずです」とクマール氏は回答。(ここでいう「ウェア」とは、センシングハードウェアを素肌に直接装着することを意味する)

Ultrahumanのプラットフォームには一般のフィットネスコンテンツも数多く含まれているが、同社は現在「メタボリックフィットネス・プラットフォーム」と称して開発中の同製品を前面に押し出している。ただし、このサービスは現在のところクローズドベータ版となっている。

現在は技術に磨きをかけながら、登録待ちのリストを受け付けている最中である。

「数千人」もの人々がこの血糖値トラッカーサービスに登録し、その利用を待っているとUltrahumanは伝えている。また、登録者数は前週比で60%増加しており、製品の一般普及は「2022年初頭」を予定しているとのことだ。

シリーズBの資金の一部は、製品の本格的な発売に向けてグルコースバイオマーカーの品質を向上させるために使用される予定だ。

強化面においては、ウェアラブルの改良を進める中で同社は「より正確な方法でグルコースを捉え、14日間以上使用できるような他のフォームファクターや他のタイプのセンサー」を検討しているとクマール氏はTechCrunchに語っている。(現在の皮膚装着型センサーは2週間しか使用できず、その後は別のパッチに交換する必要がある)

「HRV(心拍変動)、スリープゾーン、呼吸数などのバイオマーカーを追加して、代謝の健康状態が回復や睡眠に与える影響や、またその逆を理解してもらえるようにしたいと考えています」と同氏。

グルコースはフィットネスやウェルネスに関するさまざまな問題を数値化するためのプロキシとして使用でき、個人の健康シグナルを測るのに非常に役立つ(可能性のある)指標となるため「主要なバイオマーカー」としてグルコースのトラッキングに焦点を当てることにしたと、Ultrahumanは伝えている。

同スタートアップの技術が血糖値の変化を十分な感度で検知し、ユーザーごとに意味のある提案ができてこその製品である。

「グルコースは運動、睡眠、ストレス、食事などの影響を直に受けるリアルタイムのバイオマーカーで、とても興味深いものです。私たちは、栄養、睡眠、ストレス、運動など、さまざまな要素から人々のライフスタイルを変える手助けをすることができます。また体の反応に合わせ、非常にパーソナライズされたガイダンスを提供することが可能です」とクマール氏は話している。

この製品を使い、どのようにしてユーザーの食事や運動に有益な調整を行うことができるかという例をクマール氏は説明してくれた。例えば、同製品は今食べた食事が「健康的な代謝反応」をもたらすものなのか、それとも「より最適化が必要」なものなのか(血糖値の急降下を避けるため)を特定でき、また体内のグルコース消費率に応じて、ユーザーのライフスタイルに合わせた「最適な食事のタイミング」を特定することもできるという。

また、アスリートやフィットネス愛好家に向けて、センサーを装着したユーザーが最適なパフォーマンスを発揮するため、運動前にどのような食事を補給すればよいかなどのアドバイスも提案してくれるという。

また、1日の最後の食事を最適化することで、睡眠効率を高めることも可能だ。

UltrahumanのCyborgが(我慢できる程度に)装着可能な皮膚パッチと巧妙なアルゴリズム分析でこれらすべてを行うことができるとすれば、セルフトレーニングトレンドの次を行くものになるだろう。

シンプルな貼るタイプのセンサー&アプリは、体内の生体信号を受動的に増幅し、個々のバイオマーカーを実用的なパーソナライズされた健康情報にリアルタイムで変換するもので、これは予防医療の分野における大きな始まりの一歩になるかもしれない。

ただし、繰り返し書くがUltrahumanの初期価格設定を見ると、ここでこの製品を購入できる人は限られてくるだろう。

クマール氏によると、クローズドベータ版のアーリーアダプターは、サブスクリプションサービスに毎月80ドルを支払うことになっている。そして少なくとも今のところ、同社は今後より多くの機能を追加しようと目論んでいる。「製品の価格設定はほぼ同じままですが、さらにサービスやプレミアム機能を追加する可能性があります」と同氏は述べている。

しかし健康的な食事をするためのコストや、運動をして自分の体をケアできるだけの余暇を持つというのは、社会経済的に厳しい制限である。どんなにスマートであっても、こればかりはウェアラブルによって解決できるものではない。

画像クレジット:Ultrahuman

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)