感情を読み取れるVRヘッドセット―、ユニコーン企業MindMazeが新製品MASKを発表

ソーシャルVRには、人間のコミュニケーションの境界に大きな変化をもたらす可能性がある。Facebookが同分野に何十億ドルもの資金を投じたのもそんな背景があったからだ。

しかしVRを通じたコミュニケーションを意義あるものにするためには、話している相手の感情が分かるようにしなければならない。そこでMindMazeは、VR空間にいるユーザーの表情から感情を読み取れる、MASKと呼ばれるデバイスを本日発表した。

今回私は、CEOのTej Tadiに話を聞くと共に、この感情トラッキングデバイスを試すことができた。そして実際にMASKを顔に装着してみたところ、スクリーン上のアバターがものすごい反応速度で私の感情を再現できることがわかった。

このプロダクトの素晴らしいところは、天才的なデザインにある。複数の電極が、ユーザーの顔に当たるパッド部分に取り付けてられているため、ヘッドセットを装着すると、パッドと共に電極もユーザーの顔にピッタリくっつくようになっているのだ。この電極が顔の筋肉の動きを感知しており、ユーザーの表情が変わる1000分の数秒前に感情を予測することさえできる。

このデバイスが感知できる感情(表情)は、現時点では笑顔、しかめっ面、ウィンク、不敵な笑み、驚いた顔くらいだが、ここにボディーランゲージが加われば、かなり多彩な感情をVR空間で伝えられるようになるだろう。さらに、ここに大手VRヘッドセットメーカーが現在開発中のアイトラッキング技術が合わされば、VR空間でのエクスペリエンスがもっとリッチなものになる。

このデバイスを開発したMindMazeは、昨年10億ドルの評価額で1億ドルを調達し、VR企業としては初のユニコーン企業となった

さらに同社は、VR業界にいるほとんどの企業と比べても恵まれた立場にある。というのも、彼らは自社開発したヘッドセットを病院に販売しているため、コンシューマー市場やOculusの販売台数などを気にしなくても良いのだ。

「プレッシャーは少し和らぎましたね」とTadiも認めている。

MindMazeは、既にヨーロッパやアジアにある50軒もの病院に導入され、脳しんとう患者や手足を失った人たちのリハビリに利用されている。

MindMazeによるコンシューマー市場進出には不安要素もあるが、TadiはMASKが「脳・VR間のインターフェースの商業化」という、MindMazeの本業である医療機関向けプロダクトのゴールに適っていると主張する。

MindMazeがソーシャルハードウェアを発表する以前の昨年末には、Facebookがプラットフォームの拡張について発表していた。Facebookのデモでは、可愛らしいアバターがユーザーの感情に合わせて表情を変える様子が紹介されていたが、その後、アバターはユーザーの腕の動きに合わせて笑ったり驚いたりしているだけだったということが明らかになった。

一方MindMazeは、人の表情を直接読み取ることで、より多くの消費者をひきつけようとしている。

MASKのデザインは素晴らしく、同社は最終的に一般販売されたときのMASKの価格は40ドル以下になるだろうと語っている。しかし、VR機器を直接消費者向けに販売するというのがなかなか難しいビジネスであることを考えると、彼らにとっての主要な課題は、いかに大手VRヘッドセットメーカーにMindMazeの技術を採用させるかということになってくるだろう。実際にTadiは既に複数のメーカーと話を進めていると語ったが、企業名は明かされなかった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter