iOS版Telegramのアップデートが再開――Appleが凍結を解除

一日のあいだに物事は良い方向にも悪い方向にも変わるものだ。6月1日、TelegramのCEO Pavel Durovは、6週間におよぶ凍結期間を経てiOS版Telegramのアップデートを再開すると発表した。凍結期間のあいだ、Appleは世界中のApp Storeに登録されたTelegramには手をつけず、すでに同アプリをインストールしたユーザーに対するプッシュ通知も許可していたが、アップデートは受け付けていなかったのだ。弊誌が確認したところ、現在ではTelegramのアップデートを許可していることをAppleも認めた。

「素晴らしいニュースだ。たった今、Appleが最新のiOS版Telegramのアップデートのレビューを無事終え、ようやく待ち望まれた修正や改善を含む新バージョンのアプリをApp Storeにアップロードできるようになった」とDurovは同日語った。

このAppleによる方針変更のたった一日前には、iOS 11.4のリリース後TelegramのiOS向けのアップデートが世界中のApp Storeでブロックされたため、アプリに一部不具合が生じているとDurovが発言したところだった。なお、アップデート版をユーザーのもとに届けられなかったため、TelegramはEU一般データ保護規則(GDPR)にも準拠できないままでいた。

しかし依然、そもそもなぜAppleがTelegramのアップデートをブロックし、そしてこの段階でアップデートの再開を許可したのかはわかっていない。

ロシア政府がTelegramを取り締まろうとしていることと、この度の凍結には何か関係があるとDurovは主張する。というのも、ロシア連邦通信局(RKN)がAppleに対してTelegramをApp Storeから削除し、すでに同アプリを利用しているユーザーに対してはプッシュ通知を停止するよう求めたという報道の直後にアップデートが凍結されたからだ(実際のところ、RKNは本件について数日前に声明を出していた)。

しかし結局Appleはアップデートを受け付けなくなったものの、TelegramをApp Storeから削除することはなく、プッシュ通知もそのままだった。

「ロシア当局がAppleにTelegramをApp Storeから削除するよう求めて以降、Appleは世界中のApp StoreでTelegramのアップデートを受け付けなくなった」とDurovは5月31日の時点で記している。なお、GoogleやMicrosoftさらにMacのアプリストアに登録されたTelegramは何の影響も受けていない。

弊誌はTelegramに何がこの方針転換の背景にあるのか確認しているが、Appleは本件に関するコメントを控えている。

Telegram上の暗号化されたメッセージを復元する手段を求めるRKNに同社が応じなかったことから、RKNがTelegramの利用を禁じて以降、同アプリをめぐってはさまざまな争いが巻き起こっている。

ロシアでは、国内で利用できるいかなるアプリやサービスの運営者も、政府がデータにアクセスできるようサーバーを現地に置いたり、バックドアを作成したりしなければならないと法律で定められている。政府は安全保障という大義名分のもとにこのような制度を設けているが、多くの企業は同法に異論を示しており、Telegramのように(イデオロギー的な反対は別にして)政府の要請を叶えるようなキーを提供することは不可能だと主張する企業も存在する。

Durovは、以前立ち上げたソーシャルサイトVkontakte.com上での表現の自由をめぐっても当局と衝突した経験があり、それが現在Telegramに導入されている仕組みを作るきっかけのひとつとなった。

ここ数週間のあいだ、Telegramはこの問題に対する一時的な解決策として、ユーザーにVPNを使って同アプリにアクセスするよう勧めると同時に、当局にデータを渡さずにサービスを継続しようとするTelegramに共感するホスティング企業のサービスを利用し、IPアドレスを次々に変えながら生きながらえてきた。

かつてRKNがTelegramのIPアドレスホッピングを阻止しようとした結果、一時は合計1900万件以上ものIPアドレスがブロックされ、Googleを含むさまざまなサービスがダウンしたことがあった。そのときは多くの人々がデモに参加し、結果的にTelegramと事件に関する報道が世界中に広まっていった。しかし、これまでのところAWSやGoogle Cloud Platformは、TelegramにIPアドレスホッピングをやめるようには要請していない。

Telegramは世界中に2億人ものユーザーを抱えており、そのうち約1400万人がロシア国内のユーザーとされている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Image Credits: Thomas Trutschel/Photothek via Getty Images