ブロックチェーンがサプライチェーンにもたらす変革

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編集部記:Ben DicksonはCrunch Networkのコントリビューターである。Ben DicksonはソフトウェアエンジニアでありTechTalksのファウンダーだ。

2世紀ほど前、サプライチェーンという画期的な概念が発明された。サプライチェーンはA地点からB地点までの商品やプロダクトの移動を可視化し、把握するための概念だ。しかし、現在の製造経路及びサプライサイクルには適さなくなってしまった。それらはあまりに細分化し、複雑になって、地理的に分散してしまっているからだ。

現在のサプライチェーンは不透明で不完全なプロセスであり、すべてを把握するのは非常に難しい。

このサプライチェーンの問題はブロックチェーンで解決できるだろう。ブロックチェーンはすでにいくつかの業界で透明化と効率化に寄与している新興テクノロジーだ。

サプライチェーンの問題

サプライチェーンは原材料からコンシューマーが手にする最終的な商品に至るまでの製造と物流のすべてのつながりを表す。現代のサプライチェーンは100以上の工程と数十以上の地理的に異なる拠点をつなぐ場合もある。これにより、サプライチェーンで起きたことを遡って確認したり、問題を調査したりすることがとても難しくなっている。

カスタマーやバイヤーは購入したプロダクトやサービスの本当の価値を確認したり、立証したりできる確実な手段はない。サプライチェーンの透明性が失われているためだ。それはつまり、私たちが商品に支払う金額は、製造における本当のコストを正確に反映していない状態であるとも言える。

サプライチェーンに影響を受ける、あるいは連動する物事はさらにトラックしづらい。例えば、商品を製造する時の環境へのダメージなどをトラックする方法は現状ほとんどないと言える。

また、サプライチェーン上で行われる違法な行為の調査や責任追求をすることも非常に難しい。例えば、プロダクトの偽造、強制労働、工場の劣悪な労働環境、あるいはプロダクトの利益が戦争犯罪や犯罪グループの資金源になるといった問題だ。モバイル端末を始めコンシューマー向け電化製品の蓄電器を製造するために使用するコルタンの事例もこれに当てはまる。

ブロックチェーンでサプライチェーンを変える

分散型台帳は透明性とセキュリティーの両方を担保していて、ブロックチェーンは既存のサプライチェーンの問題を解決できる可能性がある。サプライチェーンにブロックチェーンを単純に適応する方法を考えた時、品物の移動を台帳に登録する方法があるだろう。ブロックチェーンには品物に関わる事業者や価格、日付、位置情報、品質、プロダクトの状態を始めとするサプライチェーンの管理に必要な情報を登録することができる。

台帳は広く利用可能であるため、すべてのプロダクトはそれを作るのに使用された原材料の出発店まで辿ることが可能になる。分散化した台帳の構造により、1社が台帳を占有したり、誰かが自分にとって有利になるようにデータを書き換えることはできない。さらに暗号化され、トランザクションは不変であるという特徴により、台帳を改ざんすることも不可能に近い。専門家の中にはブロックチェーンはハック不可能だと考える人もいる。

サプライチェーンのより良い管理のためにブロックチェーンを用いようとする取り組みも複数始まっている。IBMはカスタマーがブロックチェーンを安全なクラウド上で走らせ、複雑なサプライチェーンを要す高価な商品をトラックするためのサービスを展開している。Everledgerはこのサービスを活用している。Everledgerはブロックチェーンを使ってサプライチェーンを透明化することで、強制労働が横行し、またアフリカの犯罪組織の資金源となっているダイアモンド市場を正そうとしている。

ロンドンに拠点を置くProvenance はビットコインやイーサリアムの基盤となるブロックチェーンを活用し、原材料からコンシューマーに届くまでのサプライチェーンの透明化で人々の信頼を得ようとしている。企業はサプライチェーンやプロダクトの製造方法に関して透明性を保つことができる。また環境への影響、プロダクトの製造場所、誰が製造したかまでのすべてを開示することも透明性の内容に含まれる。

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。

Provenanceの取り組みは、社会的に認められた運用方法を促進することにもつながる。例えば、プロダクトを製造する段階で奴隷を用いたり、搾取が発生したりしていないことを保証することになるからだ。

BlockVerifyはまた別の取り組みを行っている。彼らはブロックチェーンの透明性を用いて、プロダクトの偽造に対抗する。特に多大な経済的なダメージをもたらし、毎年何百何千もの人命を奪う医薬品の偽造に対抗することに注力している。

BlockVerifyは箱に印刷されたQRコードを読み取るのと同じくらいの簡単さで真正な医薬品の認証ができるようにしたい考えだ。各プロダクトはブロックチェーン上に個別の認証があり、所有者の変更の履歴が記録される。その情報には誰もが簡単に確認することができる。

透明性の他にもブロックチェーン技術とサプライチェーンを掛け合わせることにより生まれる明確な利便性がある。

フィンランドのスタートアップKuovola Innovationはサプライチェーンにおけるスマートな入札を可能とする ブロックチェーンのソリューションに取り組んでいる。RFIDタグのついた荷物を台帳にA地点からB地点に運ぶ必要があると登録する。運送業社は、その仕事を獲得するためにアプリケーションに入札する。RFIDは最も適切な条件を提示した入札者に渡り、ブロックチェーンにその取引が登録される。荷物の移動は、タグがサプライチェーンを進んでいる最中でも随時トラックすることが可能だ。

ConsenSysのRebecca Migirovは、「サプライサークル」の青写真について説明している。これはブロックチェーンに基づいたコミュニティーの製造と消費のシステムを表す。コミュニティーの協力関係とコラボレーションを促進し、また消費者が「プロシューマー」(消費者であるとともに各自が製造者でもある)となることを促すシステムだ。

ブロックチェーンとスマート・コントラクトのインフラが整うことで、地域の製造事業者は分散化プラットフォームによりサードパーティーに頼らず、それぞれのスキル、リソース、プロダクトを共有することが可能となる。

サプライチェーンの未来

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。サプライチェーンに透明性、トレーサビリティ、セキュリティーが加わることで私たちの経済の安全性は高まることが期待できる。信頼と誠実さを促進することでより信頼できるようになり、また不審な活動を未然に防ぐことにもつながるだろう。

Featured Image: Bryce Durbin

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Autodesk、3DロボットドローンとIoTaaSに将来を見据えた投資

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Autodeskといえば、デスクトップソフトウェアや従来型の製造を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、同社はその印象を変えるべく普段の努力を続けており、本日1億ドルのForge Fondから行う最初の3つの投資として、3Dロボットドローン企業、オンデマンドのマシンショップサービス、スマートコネクトされたIoTデバイスのプラットフォームを発表した。

1982年創業のAutodeskは、事業再興の道を模索してきたが、その1つが昨年末にローンチされたクラウドベースのForge開発プラットフォーム と、同社がそのプラットフォームで興味深いアプリケーションを作成するための1億ドルの資金だった。

Autodeskは今週、同社初となる Forge DevCon開発者会議を開催するが、これらの3つの企業は、明らかに平凡な1980年代のCADソフトとは一線を画した存在となるだろう。

3D RoboticsMakeTimeSeeboの3社は、すでに設立からある程度の期間が経過している。中でも3DRの創立は2009年で、これまでに1億2600万ドル以上の資金を調達している。AutoDeskは各社への投資額を明らかにしていない(著者が質問したが回答は得られなかった)が、3社にはForgeプラットフォーム上に新しい機能を構築するという共通項がある。

Forgeプラットフォームは、進化する一連のAPIからなり、この3社のような開発企業がAutodeskのサービスにアクセスできるようにする。たとえば3D Roboticsでは、ドローンで写真を撮ってその写真をAutodesk 3D Mesh APIを使って3Dメッシュに変換するために使っている。

MakeTimeは、プロジェクトとダウンタイムのあるマシンショップをマッチングするサービスを運用している。これには、設計図をさまざまなフォーマットに変換する必要があり、それを実現するために多種多様なAutodesk APIツールセットを使用している。

Seeboは、デザイナーが任意の製品をコネクテッドデバイス化するために、簡単にセンサー、GPS、加速度計などの部品をデザインに追加する手段となるSaaS(Software as a Service)を提供している。Seeboはプラットフォームに組み込まれたFusion IoT APIを活用している。

これらの企業(およびその他の企業)だけではプラットフォームに十分な数の開発者を引き寄せられなかったとしても、AutodeskはプラットフォームAPIへの無料アクセスと、カンファレンス後90日間無制限のAPI利用権という、極めて気前のよいオファーを用意している。無料期間後は、月間400ドルからの利用量に応じた料金体系が適用される。

すべてが魅力的な要素ではあるが、それを支えるモチベーションは、企業にプラットフォームの使用を奨励することであり、最終的にはモノづくりの将来においてAutodeskが繁栄する助けとなってもらうことだとAutodeskのクラウドプラットフォーム担当VPのScott Reese氏は言う。

Autodeskは、いつまでも20世紀の世界を生き続けることはできないことを明確に理解しており、3D製造を改善するためのクリエイティブなアプローチであるProject Escherは、同社が変化する世界に対応していけるように設計されている。

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(翻訳:Nakabayashi)