インド警察が顔認識技術を使って暴動の容疑者1100人を特定

インド警察当局は、先月首都デリーで住民同士の暴力事件に関わったとされる1100名以上の身元を顔認識を用いて確認した。米国時間3月11日に下院の閣僚が語った。

インドのアミット・シャー内相は、同国でこの種の捜査が行われたことを初めて認め、警察機関は顔認識システムを導入しており、政府発行の個人認証カードの画像を、10億人以上のインド人および運転免許取得者に発行された12桁のAadhaar(アドハー)番号とともに認識システムに入力し、「他のデータベース」を組み合わせて、2月25、26日にデリー北東部で起きた住民間暴力事件の容疑者特定に用いたと語った。

「これはソフトウェアである。信仰は見ない。衣服も見ない。見るのは顔だけであり、人物は顔によって捕らわれた」とシャー内相は語り、罪なき人々を顔認識による監視に巻き込まないよう政府に要請した人物の質問に答えた。

この発表によって、インド政府が顔認識技術をその利用方法を監視する規制がないままに導入を急いだことも露呈した。評論家らは、政府に技術の導入前に協議して法律を整備するよう要請した

「司法の許可なくアドハーをこの目的に使用することは、KS Puttaswamy対インド政府の最高裁判決に違反している」と、ニューデリー拠点のデジタル権利擁護団体であるInternet Freedom Foundation(IFF)は語った。同団体は顔認識技術の制度についても疑問を呈した。

政府がデリーで用いた顔認識システムは、当初は行方不明の子供を識別するためにデリー警察が導入した。「2019年、同システムの精度はわず1%で少年と少女の区別もできなかった」と同団体と語る。

「すべては明確な司法の承認なく実施され、プライバシー権利判決(2017年インド最高裁)にも違反している」とIFF代表のApar Gupta(アパル・グプタ)氏は非難した。「顔認識技術は未だに発展途上であり、そのような技術を警察活動に使用するリスクは重大である」と同氏は語る。

インドでは一部の警察機関が数年前から顔認識を利用している。1月と2月はじめに、ニューデリーおよびウッタル・プラデーシュ州の警察が、 新しい市民法に対する抗議活動の際に顔認識技術を使用した。同法はムスリムを排除するものであると批判されている。

画像クレジット:Anindito Mukherjee / Bloomberg

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

英国警察、空港ドローン事件の容疑者を解放。ドローンが存在しなかった可能性を認める

謎のドローンが英国第二の空港でフライトを妨害し14万人のクリスマス旅行計画を大混乱させた事件から一週間足らず、警察は実際にはドローンなどいなかった可能性があることを認めた。

一日間の閉鎖のあとガトウィック空港は再開したが、捜査員らは実際何が起きたのかを解明するにはほど遠いままだ。

The Guardianによると、警察は拘束していた容疑者カップルを解放し容疑を晴らしたが、上級広報官は、「そもそもドローンの飛行活動はなかった可能性がある」と語った。

警察は目撃者——正確には67名——に頼っている状態で、証言を組み合わせて何が起きたかを探っている。先週BBCは、水曜日遅くに2台のドローンが「境界のフェンスを越えて滑走路付近」に侵入するところを通行人が目撃し、木曜日午前に3台目も発見されたと報じた。滑走路は水曜日の晩から木曜日の午前まで約6時間にわたって閉鎖され、3台目のドローンが目撃されたとされたあと、完全閉鎖された。

日曜日の晩、警察は容疑者のエレイン・カーク氏とポール・ゲイト氏を事件に無関係であると結論を下し解放した。この逮捕によって英国の新聞や解説者は、送検すらされる前からふたりを非難した。The Mail on Sudayは彼らが「クリスマスを台無しにした」と責め、テレビ司会者で元タブロイド記者のPiers Morganは、カークとゲイトに「道化師」のレッテルを貼ったことを謝罪させられた。

誤認逮捕で道を誤った警察は、空港北部で墜落し破損したドローンが回収されたあとも多くの仕事が残っている。現在は誰が操縦していたのかを示す痕跡を調査しているところだと The Guardianは書いている。

先週解説したとおり、英国には空港近くでドローンを飛ばすことに関する専用の法律があるが、正確に何が起きたかは未だ明らかになっていない。

英国は今年、空港から1 km 以内でのドローン飛行を違法とする修正を現行法に付け加えた。

5ヶ月前の安全に焦点を当てた法改訂でも、高度400フィート(120 m)以上のドローン飛行機を禁止している。ドローン所有者の登録構想も来年計画されている

現行の英国法では、航空機または航空機に乗っている人間を危険にさらす行為を行ったドローン操縦者は、最大5年の懲役か無制限の罰金あるいはその両方が課せられる。

しかし、ガトウィック空港の事例では単に滑走路付近でドローンを飛ばすことが、法的に航空機を危険にさらす企てに相当するかどうか明確ではない。安全を重視する空港が危険を冒さないことから、実際この事象が旅行者らに大きな混乱を与えたらことが明らかであってさえそうだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

警察のボディカメラが明らかにした、黒人に対する無意識の差別行動

警察のボディカメラは、ただ銃撃戦やその他の危機を記録しているだけではない。それらは毎日終日記録を続けている。このため警察官と人びとのやりとりに関して、前例のない詳細な観察結果が示されることになる。もしその膨大な量のデータを処理できるなら、本当にそれが可能になる。スタンフォード大学の研究者たちは、こうした事を可能とする手法を開発した。そして程なく研究者たちは、オークランドの警察官たちが、黒人たちと話すときには、礼儀正しさが抑えられた言葉を使っている傾向があることを発見した。

とはいえ、これはそれほど大きく目立っていた違いではなかった。オークランドの警察官たちの何千にも及ぶ会話で使われた、50万にも及ぶ単語が分析の対象になったのだが、量が集まる事で引き出すことのできる結果が示されたのだ。もしそうでなければ、この違いというのは、おそらく気のせいだろうと片付けられていたことだろう。

しかしそれは事実なのだ。もし職務質問で呼び止められた人物が白人の場合には、57%以上の警察官が、呼び止めたことに対する謝罪や感謝の意を表明する傾向にある。そして呼び止められた人物が黒人の場合には、61%以上の確率で、相手に対し手をハンドルの上に置き続けるように言ったり、”dude”とか”bro”(どちらもタメ口っぽい2人称)という呼びかけをしているのだ。このパターンは、研究チームが人種と不法行為の重大さを考慮して集計方法を調整しても相変わらず存在していた。

「全体として、黒人コミュニティメンバーとの警察官の対話は、白人コミュニティメンバーとの対話に比べてより困難の大きいものになっています」こうスタンフォードニュースの中で語っているのは、調査の共同著者であるJennifer Eberhardtだ。しかし彼女はまた「私たちの調査結果は、個別の警察官の偏見や良くない行いを証明するものではありません。礼儀正しい話し方に関する人種間格差の要因となるものには、多くのものが考えられます」と指摘している。

しかし違いが微妙であるということだけで、それが重要でないという結論にはならない。

「皆善良な警察官たちでした」ともう1人の共著者Dan Jurafskyは言う、「しかし、コミュニティメンバーとの会話の中で積み上げられた小さな違いが、広範な人種間格差となっていたのです」。

対象となった極めて長時間の職務質問を精査するために、研究チームはまず一般の人びとの会話記録を用いて、礼儀正しさ、フォーマル度、そして敬意などの指標を計測した。そして、それらの質に相関するフレーズが同定され、記録された会話の中からそれらのフレーズが探された。

図から読み取れるように、安全への気遣いや手間を取らせたことに対する謝罪は、白人を止めたときにより多く行われている。一方インフォールな呼びかけや「法的な権利の説明」(これは注意を喚起するという意味でネガティブな意味合いである)が黒人を相手にしているときにはより多く見受けられている。またそれほどはっきりとはしていないものの、警察官はどちらの側対しても、どちらの表現も使っていることはわかる。しかし時間が経てば統計的に有意なパターンが生まれてくるのだ。

しかしこの発見は、このパターンの起源を明らかにしている訳ではない。

「警察官による扱いの人種間格差は明らかで統計的に安定しているものの、この格差の原因はそれほど明らかではない」という報告がNational Academy of Sciencesのジャーナルに掲載されている。「これらの格差の一部がコミュニティメンバー自身のことば遣いや振舞いに起因していることは確かであろう。特にオークランドに於ける歴史的緊張関係や、警察の正当性に対する先入観が、恐れや、怒り、あるいはステレオタイプの脅威を引き起こしている可能性がある」。

私たちが今ここに手にしているのは出発点だ。別の言葉で言うなら、ボディカメラが生み出した雑音の多い膨大なデータから、入念な調査で徐々に明らかにされて来た検証可能なパターン(大事なことは、恣意的な選択ではないということ)だ。次は何だろう?より深い分析によって、声のトーンやスラング、あるいは居合わせた人や場所といった他の要因を取り込んで、他の側面を掘り下げることも可能かもしれない。

事実を軽視すること、全ての人種の警察官の会話に於ける負の傾向、ある人種の人びとへの偏り、こうしたことはいずれも私たちが議論を始めるためのきっかけとして十分だ。これまでに気が付いた人はいるのか?そうした人たちはこれを問題にしたのか?警察官たちは自分たちの行為に気が付いているのか?警察の行動をデータでコントロールすることは可能だが、警察の活動は最終的にはコミュニティサービスであり、こうした問題を真に解決するためにはコミュニティの中で取り組まなければならない。

「私たちが作ったもののような、情報処理ツールが開発されることによって、さらに多くの法執行機関がそのボディカメラの映像を、有罪無罪の証拠として使うだけでなく、理解のためのデータとして取り扱うようになることを希望しています」とEberhardtは語った。

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(翻訳:Sako)