Zoomのセキュリティ顧問が暗号技術開発のKeybaseを買収した狙い

Zoomはセキュリティ上の弱点を修正するために同社の創業者でCEOであるEric Yuan(エリック・ユアン)氏直属のコンサルタントとして元Facebookのセキュリティ専門家だったAlex Stamos(アレックス・スタモス)氏と契約した。Zoomに明確かつ首尾一貫したセキュリティ戦略を与えることが目的だった。

ビデオ会議をエンドツーエンドで強固に暗号化することがスタモス氏のアドバイスの1つであり、これが米国時間5月7日朝に発表されたKeybaseの買収として実現した。

【略】

スタモス氏はこの買収の背景や意図に対するTechCrunchの取材に「実はZoomが望んでいたようなレベルのエンドツーエンドの暗号化プロダクトは誰も作っていなかった。つまりZoomに導入してサービスを暗号化できるような既成のプロダクトは市場に存在しなかった。Zoomがエンタープライズ向けビデオチャットを暗号化しようとするならゼロからスタートしなければならなかった」と語った。

ZoomがKeybaseを選んだのはファイルやチャットの暗号化で同種の問題に十分経験を積んでいるからだった。このエンジニアチームならZoomの問題解決にすぐに役立つと考えたわけだ。

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現在進行中のプロジェクトなのでKeybaseによる暗号化がいつ一般に利用できるようになるか、正確な期日はまだ分からない。しかしスタモス氏はZoomは5月22日に暗号化計画の概要を発表する予定だと述べた。この概要をたたき台として広く意見を求め、設計を最終決定するという。

当初の目標は、エンドツーエンドの暗号化の採用によりセキュリティを確保したZoomミーティングの新しいバージョンをリリースすることだという。 暗号化はまずZoomクライアントあるいはZoom対応ハードウェアを使用している場合のみ利用できるようになる。つまり外部からその場でミーティングに参加してきた相手とのコミュニケーションを暗号化することはできない。

KeybaseがZoomに買収されたことでKeybaseのプロダクトの今後について懸念を抱く必要はないとしてスタモス氏は「Keybaseの暗号化のセキュリティで重要なのは誰がサーバーやシステムを所有しているかによって信用度が変わることはないという点だ」と述べた。

画像:TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナ不安の中、ゼロックスが3.7兆円のHP買収を断念

Xerox(ゼロックス)は、 HP敵対的買収提案を取り下げると発表した。このドラマは昨年秋、両社の怒りが増していく書面の交換と、Xeroxの対立的行動に始まり、Xeroxは買収に反対したHP取締役会を乗っ取ろうとまでした。

そのすべてが米国時間3月31日に消滅し、Xeroxは新型コロナによる世界経済の不安定性を理由に買収提案を取り下げることを正式に発表した。

「新型コロナによる現在の世界的健康危機とそれに伴うマクロ経済と市場の混乱は、XeroxがHP(NYSE:HPQ)買収を追求し続けるべきではない状況を作り出した。このため当社はHPを買収するための公開買付を取り下げ、当社が選出した極めて有能なHP取締役候補らの推薦も行わないことにした」と同社が声明で語った。

これに対してHPは、財務状況は良好であり、この結果にかかわらず今後も株主の持つ価値を上げていくつもりだと語った。

我々は今後もHP株主の価値推進に全力をつくす。HPはパーソナルシステム、プリンター、および3Dプリンティングとデジタル製造の各部門で業界をリードしている会社だ。健全な現金持ち高とバランスシートのおかげで、世界的パンデミックという予想していなかった事態に直面しても、将来への戦略選択性を維持することが可能だった。

そもそもこの提案は理解が困難だった。Xeroxは時価総額が40億ドルほどであり、250億ドル近い時価総額のHPよりずっと小さな会社だ。まさしく小物が大物を食おうという話だ。

しかしXeroxは本日も、敗北を認めながらも両社は1つになったほうがよかったと言い張った。それをHPが現実と感じたことはない。HPはXeroxにそんな大金をそろえることができるのか、仮にできたとして、このような取引をやり遂げるほど財務状況が安定しているのかと疑問を呈していたた。

関連記事:HP買収を諦めないゼロックスが提示額を1株24ドルに引き上げ

しかしつい先月にも、Xeroxは1株22ドルから24ドルへと提案金額増やし、株主を取り込もうとした。以前取締役を総入れ替えしようとする前には、取締役会を飛び越し株主と直接交渉すると脅したこともある。

HPは、この提案に内在する敵対心も、取引を強制しようとするXeroxの行動も気に入らなかった。先月HPは、株主にXeroxの提案を拒否させる努力の一環として、数十億ドル規模の配当を提示した。しかし、結局ドラマは世界規模の危機の中でたち消えることになった。

関連記事:HPがXeroxによる敵対的買収回避のために数千億円規模の配当を株主に提案

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

HP買収を諦めないゼロックスが提示額を1株24ドルに引き上げ

Xerox(ゼロックス)が2019年11月にHPの買収に乗り出してから、両社の間では攻防が繰り広げられてきた。ゼロックスは、ずっと大きなHPを買収することを強く望んでいるが、プリンターメーカーとして大企業のHPは、これまでゼロックスの進捗を妨げてきた。米国時間の2月10日、ゼロックスは条件を魅力的なものにすることを決定し、1株あたりのオファーを、これまでの22ドル(約2418円)から24ドル(約2638円)に引き上げ、総額で約340億ドル(約3兆7350億円)を提示することにした。

画像クレジット:KathyDewar/Getty Images

ゼロックスによれば、3月2日頃に正式に株式公開買付けを行う予定だという。株主を説得するための時間を確保するためだろう。ただしゼロックスは、すでにHPの大株主と話し合っていて、その大多数はこの買収を成立させる方向に動くと信じているという。以前、HPが乗り気でなかったことを考えれば、それがどうなるか、予断を許さない。

「ゼロックスは、HPの大手株主の多くと何度か会合を持つ機会もありました。そうした株主は、XeroxとHPの組み合わせによって、収益の向上、成長の見通しの改善、その分野で最高の人的資本の獲得を望んでいると、こぞって表明しています。本日発表した株式公開買い付けによって、いくらHPが頑なに拒否しようと、そうした株主はゼロックスの魅力的な条件を受け入れることになるでしょう」と、同社は今回の声明に記している。

両社間のやり取りは、2019年の秋に始まった。両社はうまく合体してプリンターの巨人になれるはずと、ゼロックスが考えたことに端を発する。ただし、HPの取締役会は満場一致で、その申し出を却下していた。

2019年11月の拒絶通知で、HPはゼロックスの提案を快く思わないし、歓迎もしないと表明した。

「ゼロックスはHPを大幅に過小評価しており、その提案を拒否します」。

「さらに、付帯条件がかなり多く不確実性の高いものです。特に提案された対価のうち、現金部分を引き上げるためのゼロックスの能力は、不確かなものだと考えられます。また、仮に資金調達が可能だとしても、それによって生じる負債が、合併後の株式の価値に対して大き過ぎるのではないかという懸念も拭えません」

2019年11月末、ゼロックスは株主に直接提案すると発表した。また最近には、以前の提案を拒否したすべてのHP取締役会のメンバーを、より友好的な指名候補者に入れ替えることを画策する可能性があると述べている。これについては、2020年4月のHPの株主総会で採決されることになっている。

HPは、この最新の申し出に反応していない。驚いたことに、HPの株価は前場で1株あたり0.12ドル(約13.2円)、つまり0.81%減少した。

編集部注:TechCrunchは、HPに対してコメントを求めたが、この記事の公開時点では、まだ返答を受け取っていない。今後状況の変化があれば、記事を更新する予定だ。

関連記事:ゼロックスが買収提案を拒否したHP取締役会の刷新を計画

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

タウンWiFi代表・荻田氏が“梁山泊”GMOへの株式譲渡を語る

今年も11月14日・15日の2日間にわたり開催された、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。このイベントで毎年、立ち見が出るほどの盛況を見せる目玉企画が、設立3年未満のスタートアップが競い合うピッチコンテスト「スタートアップバトル」だ。そのスタートアップバトルで2016年に審査員特別賞を受賞した、無料WiFi自動接続アプリのタウンWiFiは11月18日、株式譲渡により、GMOインターネットグループの傘下に加わることが明らかにしている。

TechCrunch Japanでは、タウンWiFi代表取締役の荻田剛大氏を取材。いきさつや思惑など、買収劇の舞台裏について話を聞いた。

「ここなら幸せにやれる気がした」

タウンWiFiは、ユーザーの近くの接続可能な無料公衆WiFiを探して自動で接続・認証してくれるアプリだ。2016年5月から提供されているタウンWiFiは、3年間でダウンロード数600万、月間利用者数(MAU)は約300万人、対応スポットは35万カ所となった。WiFi自動接続機能のほか、遅いWiFiや使えないWiFiに接続しない機能を備え、セキュリティ面のリスクに対応した専用のVPNサービスも提供している。

タウンWiFiではこのアプリを軸に、位置情報をもとにアプリのプッシュ通知を利用してクーポン情報などの広告を配信する「TownWiFi Ads」、店舗のWiFi接続を検知することで見込み顧客の来店測定を行う「TownWiFi Analytics」を企業や店舗へ提供し、収益を得てきた。

2018年4月に2.5億円の資金調達実施を発表し、2018年6月には同ラウンドで総額3億円を調達したタウンWiFi。このときには株主となった電通と、日本アジアグループ傘下の国際航業と業務提携を結び、マーケティングツール開発にも取り組んでいる。

こうして順調に事業が成長していたタウンWiFiだが、GMOインターネットグループへ株式を譲渡したのには、どのような背景があったのか。荻田氏は「ユーザー増を図りたかった」と語る。「アプリ利用者には、若い層だけでなく、40代の地方在住ユーザーが増えていた。通信料金に悩みがある、こうした層のユーザーも含めて、もっとタウンWiFiを広めたかった」(荻田氏)

ユーザー増のための手段として、資金調達、IPOと同時に、大企業の傘下に入ることも検討していた荻田氏。今年の5〜6月ごろから業務提携先を模索しており、GMOインターネットグループに紹介されたのは7月ごろのことだったという。

「両社の連携は、GMOのプロバイダビジネスにも良い影響があるし、グループには広告事業もあるのでシナジーもある。『通信をバリアフリーに』をうたうタウンWiFiと、『すべての人にインターネット』をステートメントとして掲げるGMOインターネットグループとは、サービスの質も近いのではないかとプレゼンした」(荻田氏)

プレゼンは好評で、荻田氏はその後、GMOインターネット代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏と会食する機会を持った。熊谷氏との会話の中で「僕自身についても『いいね』と言っていただいた」という荻田氏。そのころからGMOインターネットグループへのジョインを検討し始める。

「ただ、僕自身、会社を売ったことがないので、怖かった」と荻田氏は当時のことを振り返る。「自分にとってもそうだし、ユーザーにとって、会社のメンバーにとって、M&Aが幸せな決断になるかどうか、最初はすごく考えました」(荻田氏)

そんな折、荻田氏はGMOインターネットグループに参画する企業幹部の会で、ざっくばらんに話をする機会があったという。グループには現在、112社の企業が参加するが「それだけ多くの各社から来た代表が、みんな楽しそうで、誇りを持って仕事をしている。『いいグループだなあ』という印象だった」と荻田氏はいう。

「熊谷さんはグループの経営スタイルを“梁山泊経営”と表現し、『多くの企業がある中でマイクロマネジメントはできないし、すべきではない』と話している。ジョインした企業の社長が自分で決めて、事業を進めた方がうまくいく、という考え方だ。週1回、グループ企業幹部の会を開くといった(一丸となるための)マインド面での仕組みだけ用意して、あとは任せるという形を取っている」(荻田氏)

荻田氏は「熊谷さんの『信頼して、最終的には任せる』という姿勢に、器が大きいなあと思った」と語り、「ここなら参加しても、幸せにやれる気がした」と明かす。ほかの企業と進めていた資本提携などの話は全て断って、GMOインターネットグループ入りを決めたという。「はじめに訪問してから、決まるまでは数カ月と早かった」と荻田氏は振り返る。

こうしてGMOインターネットの連結子会社となったタウンWiFi。既存株主のうち、荻田氏をはじめとする役職員以外の外部投資家は全て株式をGMOインターネットとGMOアドパートナーズへ譲渡(売却)した(金額は明かされていない)。資本業務提携を結んでいた各社については、資本提携は外れたが、事業面での提携はそのまま続けるという。

また社内のメンバーもタウンWiFiに残り、業務を続けている。社員にはストックオプションが付与されていたということで、売却により「少ない給料でスタートアップに入ってきてくれた彼らに、報いることができてよかった」と荻田氏は語っている。

「エグジット先として、買収の成功事例も増えた方がいい」

GMOインターネットグループへ参画したことで、今後のタウンWiFiはどのような面に力を入れていくのか。既にGMO側からは、GMOアドパートナーズがタウンWiFiと共同でサービス開発を行い、2020年春には位置情報データを活用した広告サービスの提供を目指すという発表を行っている。

タウンWiFiとしては、当初のとおり「ユーザー数を増やしたい」考えだ。「資金面と送客面でGMOインターネットグループの支援を得て、1000万MAUを目指したい」と荻田氏は話している。

実は広告配信サービスなどにより、タウンWiFiの収益は向上していて「いつでも黒字化できる状態」だと荻田氏はいう。「顧客はドラッグストアやコンビニと、それらの店舗へ商品を提供するメーカーだ。O2Oの文脈で『顧客がいつ店に行くのか知りたい』とのニーズがある。ユーザーがいつも朝、立ち寄るコンビニがあるとすれば、店に行く前に広告のポップアップを表示する、ということがタウンWiFiの仕組みでできるのだが、これがうまくいっている」(荻田氏)

ただ、このままユーザー数を直線的に増やしていくだけでは、いずれ事業も頭打ちになると荻田氏。「今は投資モードで、一気にユーザー数を増やすことを考えたい」と話している。

また荻田氏個人としては、創業した会社のエグジットを果たし、この後の進退をどう考えているのだろうか。荻田氏は「次の会社を作るとか、そういったことは今は全く考えていない」と述べ、「いずれ辞めるという気持ちもなく、このままGMOインターネットグループに残りたいと思っている」と打ち明ける。

荻田氏は「エグジット先として、M&Aが増えてきている中で、買収の成功事例も増えた方がいい」と考えているそうだ。「買収後にスタートアップがやる気がなくなる状況は良くない。M&Aが成立したとき、エグジットを果たした起業家にはフォーカスが当たりがちで『おめでとう』と言われることが多いが、買収した側も事業シナジー、利益、人材の面で良かったと思えるのが正しいあり方なのではないか。成功例が増えることで『もっと投資していこう』というモードになるように、いい事例を作りたい」(荻田氏)

荻田氏は「(スタートアップ)エコシステムとしての大企業との連携は、もっとあるべき」と語る。「GMOインターネットグループにももちろん、スタートアップとして参画するときの課題はあるけれども、『もっとよくしていきたい』と僕も思うし、中の人も『良くない部分は変えていこう』と言ってくれている。数年後に『あのときグループにジョインしてくれてよかった』と思ってほしいし、そう思ってもらえるように、GMOインターネットグループをさらによくしていきたい」(荻田氏)

GoogleがヘルスウェアラブルFitbitの買収を交渉中か?

Googleの親会社であるAlphabetは、ウェアラブルデバイス大手の上場企業のFitbitと買収交渉を進めているとReuters(ロイター)が報じた。

報道によれば、交渉は現在も進行中でありすべて白紙に戻る可能性もあるという。しかしFitbit買収が実現すればウェアラブル市場におけるGoogleの立場が大きく強化されるのは間違いない。スマートウォッチ向けWear OSなどをリリースしてきたものの、Googleはこの分野で苦戦している。

GoogleのWear OSはあくまでスマートウォッチ市場向けであり、サードパーティやGoogle自身のGoogle Fitアプリによるヘルスモニター機能を内蔵しているものの、スマートウォッチはかなり高価なデバイスとなる。フィットネストラッキングに特化した専用の(かつ安い)デバイスには大きな市場がある。一方、Fitbitは非Wear OSのVersaシリーズでスマートウォッチ市場にも参入している。

Googleは今やPixelシリーズのスマートフォン、Google Hubなどのスマートホームデバイスをプロダクトに加えており、FitbitをGoogleグループ化できればこうしたハードウェア戦略が強化されるのはもちろんだ。2018年にGoogleはHTCのデザイン部門のかなりの部分の買収を完了させている。Googleは今のところ独自のスマートウォッチをリリースしていないが、Pixelシリーズのスマートウォッチを開発中だという噂をこのところよく聞く。

買収交渉の情報が流れるととFitbitの株価は一瞬で30%近くアップした。 2015年に上場した直後に48ドルの高値をつけたものの続落、2017年以降は6ドル前後となり、今年8月には3ドルの安値をつけていた。買収の報道を受けて現在は5.20ドルとなっている(日本時間10月29日朝時点では5.64ドル)。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

VMWareがCarbon BlackとPivotalを買収

米国時間8月22日、VMWareは、モダンクラウドネイティブシステムのセキュリティーに特化した上場企業のCarbon Blackを買収することを発表した。買収金額は約21億ドル(約2238億円)。

さらにVMwareは、Pivotalの買収も発表した。同社の会社価値は約27億ドル(約2877億円)。VMwareの前四半期の売上は24.4億ドル(約2600億円)だった。VMWareにとって記念すべき日となった。

「引き続き好調だった四半期を踏まえ、PivotalとCarbon Blackを買収する決断を下したことを発表する」とVMware CEO Pat Gelsinge(パット・ゲルシンガー)氏が本日の声明で語った。「この買収によって、我々はVMWareの事業にとって現在もっとも優先度の高い技術を導入する。エンタープライズ水準のモダンアプリケーションを構築すること、および企業のアプリケーションとクライアントを保護することだ。これらの契約によって、当社は契約者数拡大とSaaSサービスの提供を加速し、顧客のデジタル転換を推進するための能力を強化していく」。

実際、両社はまったく異なる分野の会社だが、Carbon Black、Pivotalともにモダンアプリケーションシステムに特化している。PivatalはCloud Foundryの経験と最近追加したKubernetesサポートを活かしてモダンアプリケーションの開発に集中している。一方のCarbon Blackはモダンアプリケーションとその基盤に必要なセキュリティー機能を提供している。、

今回の買収は、今年5月のBitnamiに続くもので、将来VM(仮想マシン)がソリューションの一部にすぎなくなるときに備え、VMWareのテクノロジーが必要としていた3社の買収がこれで完了する。

Carbon Blackは2002年に設立され、2018年に上場した。IPO当時の時価総額は約12.5億ドルだった。株価は今年始めに13ドルまで下がったが、21ドル以上まで盛り返している。VMwareは1株あたり26ドルを現金で支払う予定で、2020年1月末の契約締結を目指している。

「今日はCarbon Black、VMware、およびサイバーセキュリティー業界全体にとって記念すべき日だ」とCarbon BlackのCEOであるPatrick Morley(パトリック・モーリー)氏が発表文で語っている。「これで当社は、Carbon Blackのクラウドネイティブのエンドポイントセキュリティー機能をVMwareのあらゆるコントロールポイントに統合できる。IT業界、セキュリティー業界はこのような大胆な変化を長年心待ちにしていた。VMwareチームと協力してモダンセキュリティークラウド・プラットフォームを世界中の顧客に届けることを楽しみにしている。加えて、Carbon Blackの株主に大きな価値を提供できることを喜んでいる」

PivotalはもともとVMwareとEMC Corporationが育てた会社であり、今回の買収によって、アプリケーションの作成、テスト、展開が容易になるプラットフォームがVMwareにもたらされる。これまで開発ツールそのものよりも、インフラストラクチャーの提供を中心としてきたVMwareにとって、ストーリーを完結させる賢い行動だ。

「Kubernetesはマルチクラウドモダンアプリケーションのデファクトスタンダードになりつつある。我々はPivotalの開発プラットフォーム、ツール、およびサービスをVMwareのインフラストラクチャーと組み合わせることで、モダンアプリケーションの開発、運用、管理のための包括的Kubernetesポートフォリオを提供できる」とゲルシンガー氏は語る。「重要なのは、Pivotalをプラットフォームに加えることで、当社のAny Cloud、Any App、Any Deviceの適用範囲が広がりモダンなマルチクラウド・ITインフラストラクチャーのリーダーとしての当社の位置づけが強化されることだ」。

関連記事:VMwareがかつて同社をスピンアウトしたPivotalを買収か

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

VerizonがTumblrをWordPressの親会社Automatticに売却

6年前に米YahooはTumblr(タンブラー)を11億ドル(約1160億円)で買収した。いっときはマイクロブログのマーケットを支配したサービスだったが、Yahooの親会社であるVerizonがTumblrを売却することが明らかになった。引き受け手はWordPressオーナーのAutomatticだ。売却の条件など詳細は明らかにされていないが、Wall Street Journalの記事によれば「当初の価格に比べれば捨て値」だという。

AxiosはTumblrの売値は「2000万ドルをかなり下回る」という。それなら2013年の価格の2%以下にしかならない。

Tumblrのマイクロブログが大人気だった時代もあったのだが、Yahoo買収後の道どりは困難なものになった。ソーシャルネットワーク分野にFacebook、Instagram、Twitter、Redditが君臨するようになるとTumblreは路傍に取り残された。

ことにポルノを禁止するという最近の決定がビジネスに大打撃を与えたようだ。Sensor Towerの調査によれば、Tumblrのモバイルアプリをダウンロードするユーザーの数は対前年比で33%減少した。

そういう背景を考えれば今回のニュースもさほど意外ではない。Yahooの買収によってTumblrのオーナーになったVerizonはこの5月に買い手を探していると伝えられた。Tumblrは当時Yahoo最大の買い物でCEOだったマリッサ・メイヤーは「絶対に上手くやってみせる」と声明で述べていた。

しかしTumblrはYahooにとって良い買い物ではなく、Verizonとの適合性はさらに悪かった。Verizonは、Tumblrを短命に終わったがOath事業部に統合、さらにVerizon Media Group (TechCrunchの上部組織でもある)に移管した。Automatticは(少なくとも一見したところ)ビジネス上の適合性はVerizonよりずっと高そうだ。AutomatticのWordPressはインターネット最大のパブリッシングプラットフォームであり、プラグインのJetpackやノートアプリのSimplenoteも人気が高い。AutomatticはTumblrの200人の社員も引き受けるという。Tumblrはブログ記事にこう書いている。

同様の目的を持つ2社が力を合わせることになったのは最高だ。よく知られているように、WordPress.comはAutomatticのフラグシップだ。WordPress.comとTumblrは共にブログプラットフォームのパイオニアだった。Automatticには関心を共有することによって活動的なコミュニティを作るというビジョンがある。情報のパブリッシングを民主化し、誰もが自分が興味を持つ物語を共有できるようにしたいと考えている。特にその声がか細く、十分にコミュニティを作れていないならなおさらだ。

画像:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルがインテルのモバイル向けモデムチップ事業を約1000億円超で買収

TechCrunchはApple(アップル)がIntel(インテル)のモデム事業部の支配権を握る契約を結んだことを確認した。価格は10億ドル(約1087億円)前後で、知的所有権、製造設備、リース物件、社員の全てを含む。特に社員は 2200人全員がAppleに加わる。この契約により、Intelが保有していた分を加わることができたためAppleが保有するワイヤレステクノロジー関係の特許は1万7000件以上になる。

Appleのシニア・バイス・プレジデントであるJohny Srouji(ジョニー・スロージ)氏はプレスリリースで以下のようにコメントしている。

我々は長年にわたってIntelと協力関係にあった。消費者に世界で最高の体験を届けようとするAppleの情熱をチームは分かち合い、チームは一丸となってテクノロジーの進展に努めてきた。我々のセルラーテクノロジーグループは、買収より多数の優秀なエンジニアを迎え入れ、大きく成長する。Appleのクリエイティブかつダイナミックな企業文化は元Intelのエンジニアが活躍するのにふさわしいものと確信する。今回の買収により、我々はイノベーションの基礎となるべき重要な知的所有権を多数入手した。これは今後のApple製品の開発に大きく寄与するだろう。Appleの製品の差別化はさらに進む。

契約の締結発表はTechCrunchでも報じたとおり、しばらく前から流れていた情報が事実だったことを確認するものとなった。AppleがIntelのワイヤレスモデム事業を入手しようとした背景としてQualcomm(クアルコム)との関係がここ数年緊張したものになっていたことを考える必要がある。AppleはQualcommが設定したライセンス料金が高すぎるとして訴訟を起こした。両社はこの4月に和解し訴訟を終結させたものの、AppleはスマートフォンのモデムチップでQualcommに縛られることを強く嫌った。

この買収は Appleは2020年中にもスタートするはずのモバイルネットワークの5G化に向けた準備の一環だと見られている。5GテクノロジーはIntelとQualcommが二分しているが、Intelはこの10年間のスマートフォンブームに出遅れた感があり、5GソリューションではQualcommにやや劣るものと見られている。

Appleは最近デバイスのパーツをすべて内製しようとする攻勢を強めているが、今回買収もこの動きと整合する。CEOのティム・クック氏は10年前に内製化の方向を打ち出していた。クック氏は声明で「我々はプロダクトに使用される主要なテクノロジーを所有し、あるいはコントロールを握っておく必要があると考える。我々は自ら大きな貢献ができる分野にのみ進出すべきだ」と述べている。

今回の契約ではスマートフォン向け以外のモデム・テクノロジーを独自に開発しり権利をIntelは引き続き保持する。つまり各種のパソコン、IoTといったハードウェアだ。これには自動運転車も含まれる。IntelのCEOであるRobert Holmes Swan(ボブ・スワン)氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

今回の合意により、我々はさらに効果的に5Gネットワークの開発に注力することができるようになった。Intelが長年にわたって開発してきたモデムテクノロジーと知的財産を利用する権利は引き続き保持される。我々は以前からApple深い敬意を払ってきた。移籍するエンジニアにとってAppleは最良の舞台を提供するものと信じる。ネットワークのキャリア、接続プロバイダ、クラウド事業者などが必要とするテレコム機器の開発、製造に用いられるモデムチップを始め、Intelは引き続き消費者がもっとも必要とするワイヤレステクノロジーを提供し、5Gネットワークの実現に向けて全力を挙げていく。

この後、司法省の反トラスト法に基づくものなど規制当局の審査が行われるが、Appleでは第4四半期中にこの買収手続きを完了できると考えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルとインテルはモバイルモデム事業買収で交渉中、買収額は1000億円以上か?

この4月、Apple(アップル)はQualcomm(クアルコム)と和解し、巨額の小切手を書いた。これは5G iPhoneを市場に出すスケジュールを守るためだったが、アップルはいつまでもクアルコムに主導権を取らせておくつもりはなかったようだ。

米国時間7月22日、「インテルのモバイルモデムチップ事業をアップルが10億ドル(約1080億円)以上の価格で買収する交渉を進めている」とWall Street Journalが報じた。先月、Informationも同社がインテルのモデム事業を買収する可能性があると述べていた。

本日のニュースでは「早ければ来週中にも合意に達する」としている。もちろん破談になる可能性は残っている。

この買収が実現すれば、アップルは数百人の優秀なエンジニアと多数の基本特許を得ることになる。モデムチップなど現在クアルコムに多額のライセンス料金を支払っているモバイルネットワークへの接続を実現する各種デバイスを、アップルは独自に製造できるようになるかもしれない。

もちろんどんな契約が結ばれようと、クアルコムとの関係は短期的にはほとんど影響を受けないだろう。両社の和解条件には向こう6年間にわたってライセンスを許諾する条項が含まれいる。ただし和解内容の一部は現在も公開されていない。

アップルはこれまでもインテルのモデム事業部と密接に協力してきた。特にライセンス問題でクアルコムとの紛争が始まってからは距離がいっそう縮まっていた。ただしインテルのチームは、5Gモデムテクノロジーの開発でライバルに遅れを取っているという報道も出ていた。

アップルの広報はこの報道についてコメントを控えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook)

IBMが約3.7兆円でRed Hat買収を完了

昨年から既定路線ではあったが、IBMのRed Hat(レッドハット)買収が完了した。買収価格は340億ドル(約3.7兆円)とテクノロジー企業のM&Aとしては史上最大級となる超大型案件だった。

IBMがLinuxの巨人を買収しようとしていることを最初に発表したのは昨年10月だった。その後、米司法省はこの5月に合併を承認し、続いて先月下旬にEUが無条件で合併を承認したことで最終的に障害が取り除かれた。

IBMは「Red Hatは引き続き、CEOのJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏のもとで独立の企業として運営される」と述べている。 ホワイトハースト氏はIBMの経営陣に参加し、IBMのCEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏の直属となる。

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滑川海彦@Facebook

パーソルキャリアが仕事や転職の匿名相談サービス「JobQ」を子会社化

左からパーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏、ライボ代表取締役CEO 小谷匠氏、パーソルキャリア代表取締役社長 峯尾氏太郎氏、同社執行役員 岩田亮氏

転職サービス「doda」やアルバイト求人情報サービス「an」などを展開するパーソルキャリアは3月14日、キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ」を手がけるライボの発行済株式を全て取得し、完全子会社化したことを明らかにした。株式の取得価格は非公開だ。

直近では両社のサービス間で連携を進めるほか、将来的には両社の持つナレッジやHRデータを統合しながらキャリア選択を支援する新サービスの開発なども見据えていく計画。ライボに関しては創業者で代表取締役CEOの小谷匠氏が引き続き代表を務め、独立的に運営していく

現場のリアルな情報が得られる就職・転職版の「Yahoo!知恵袋」

ライボは2015年2月の創業。代表の小谷氏は新卒で入社したソーシャルリクルーティング(現ポート)にて営業やエンジニアとして働いた後、ライボを立ち上げた。

当初は友人間で転職をサポートし合うようなプロダクトからスタートし、そこから少し方向性を変える形で同年4月にJobQのβ版をローンチしている。

2015年6月にはサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)から最初の資金調達を実施。その後も同社や約10人のエンジェルから資金を集めつつ、時には「共同創業者と別れたり、キャッシュアウトを経験したり」しながらも約4年に渡ってJobQを育ててきた。

そんなJobQは、匿名のQ&Aコンテンツを軸に個人のキャリア選び・企業選びをサポートするユーザー投稿型のメディア(CGM)だ。

求職者が匿名で質問をすると、その内容に精通する個人から回答を得られる仕組みを採用。CGM型にすることで、現場を知る人からリアルな情報を低コストで入手できるのがウリだ。

個人的には「人材領域に特化したYahoo!知恵袋」と「『転職会議』や『Vorkers』のような企業クチコミサイト」が合体したようなサービスという印象で、実際キャリアや転職に関する投稿と特定の企業に紐づく投稿(クチコミ)が、それぞれ半分ずつくらいなのだという。

「(企業のクチコミサイトは複数ある一方で)他社が狙っていないような、働く悩みに関する投稿を蓄積しているのがひとつの特徴。これまでキャリアについて考える際、リアルな情報を手に入れるのが難しかった。たとえば転職エージェントに聞いてみても、エージェントとしては収益に直結しない部分でもあり、サポートできることに限りがある。JobQはそこを民主化するようなサービスだ」(小谷氏)

JobQのコンテンツは「●●社の研修制度について教えて欲しい」のように特定の企業に関するQ&Aから、「円満に退職する秘訣を知りたい」「面倒な飲み会の断り方」など働くことに関連する多様な相談まで幅広い。ちなみに小谷氏によると日曜日の夜間にトラフィックが伸びるそうだ

始めは転職ユーザー向けのサービスとして作っていたが「CGMの特性上、情報の非対称性が大きいとこで使われやすい」こともあり、次第に就職(新卒)ユーザー向けのQ&Aコンテンツも増加。今では3〜4割が就職関連の投稿となっている。

コンテンツが蓄積されていくことでサイトのトラフィックも増え、2019年2月時点では前年同期比で270%の成長を記録まさに数年間温めてきた事業が徐々に形になってきたフェーズで、成長をより加速するべく次の一手を考えていたそうだ。

決め手はJobQの持つ「働く悩み」全般に関するコンテンツ

一方のパーソルキャリア側では、転職活動中のユーザーだけに留まらず、転職前後や転職を明確に意識していない層までサービスの対象を拡大する方向にシフトしつつある。

転職先が決定した個人の内定から入社後までをケアする「dodaキャリアライフサポート」を2017年11月よりスタート。2018年10月には転職活動中のユーザー以外もサポートすることを目指しdodaのブランドを刷新した。

つい先日にはハイクラス人材を対象にした新たなサービス「iX(アイエックス)」を発表。今夏を目処に複数のサービスを順次展開する計画だ。

そんな流れがあったからこそ、JobQ上に投稿されているコンテンツに関心があったという。

「dodaを活用して転職するユーザーにとって企業のクチコミはすごく重要な情報になるので、その点で魅力を感じたのがひとつ。加えて、会社としてこれから転職活動の前後まで領域を広げていく中で、そこに対するコンテンツもJobQが保有していたことが大きな決め手だ。自分たちでこれらの情報をゼロから集めるのは難しく、非常に価値が高いと判断した」(パーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏)

もちろんdodaにもキャリアアドザイザーがいてキャリア全般の相談に乗ってはいるが、やはりメインは転職活動のコアの部分に寄ってしまう。過去には自社でJobQのようなサービスの立ち上げも検討したそうだが、サイクルを回すのが大変で時間もかかるため、ライボとタッグを組んだ方がいいと考えたという。

特にこの領域では昨年リクルートがGlassdoorを子会社化したり、ヴォーカーズがリンクアンドモチベーションから大型の資金調達を実施したりと、大きな動きが続きスピード感も増してきている。小谷氏も「最短距離で走るために最適な選択をする」ことを重視した結果、今回の意思決定に至ったと話す。

「自分たちのサービスがまだまだ小さい中で『この領域で1番のサービスにしたい』という思いが強かった。もともとは増資も含めて検討していたが、(パーソルキャリアと組めば)データや営業リソースなどを持ち寄ってサービスの成長速度を加速することができる。合わせて、自分たちは当初からtoC向けにプロダクトを作り続けたいと考えていて、そこを尊重してもらえたことも大きい」(小谷氏)

データ連携を通じて、より発展的なプラットフォームの構築も

冒頭でも触れた通り、まずは両社のサービス間で連携を進める。具体的には「JobQの企業クチコミをdoda上に表示したり、反対にdodaからJobQへ送客する導線を作るなど、双方がグロースできる取り組みから着手する」(村澤氏)計画だ。

また中長期的には「転職活動に限らず、さまざまな働く悩みに答えられるプラットフォーム」を開発する構想もある。

「そこに行きさえすれば、キャリアに関するどんな悩みでも解決する、そんな場所を作りたい。その時にCGMだけでなく、キャリアアドバザイザーのような専門家や企業の人事部スタッフから回答を得られる仕組みがあってもいい。今のJobQは定性的な情報が多いが、そこにパーソルが持つ定量的な情報を加えることもできる。双方のサービスに溜まったHRデータを統合することで、やれることはたくさんある」(村澤氏)

なおパーソルキャリアとしては、今後もHR Techに関わる企業との協業を積極的に進めていく方針とのこと。国内でもこの領域のスタートアップはかなり増えてきたように感じるし、これから人材系の大手企業とHR Techスタートアップのタッグを紹介する機会が増えていくかもしれない。

クイズ買取サイト「AQUIZ」がDMMに1円で事業譲渡、代表の飯野氏が目指す“新しいバイアウト”とは

DMM.comは12月13日、クイズ買い取りサイト「AQUIZ(アクイズ)」を運営するレイヴンから同サービスの事業譲渡を受けたと発表した。特徴的なのはその金額。DMM.comが支払ったのはたったの1円だ。

レイヴン代表取締役の飯野太治朗氏を含むメンバーである3人は今後DMM.comにジョイン。引き続きAQUIZの運営を続けるとともに、新サービスの創出に取り組む。TechCrunch Japanは飯野氏にインタビューを実施。「1円事業譲渡」の背景を聞いた。

事業の創出と売却を繰り返す

飯野氏はレイヴン創業以前から、新規事業の創出と売却を繰り返してきた。彼が最初に事業を立ち上げたのは19歳のときだ。

それは、業務スーパーで1つ30円のコーヒーを買い、それを喫煙所にいる人々に100円で売るというビジネス。当時大学生だった飯野氏は「バイトのような感覚」としてその事業を始め、1日1時間ほどの労働で月5万円の売上を立てていたという。

「いつか起業家になりたい、特に不動産をやりたい、とは思っていたが実際に行動してはいなかった。ミュージシャンを目指していた友人に『行動に移したら』と指摘したが、それがきっかけで自分の状況を見直し、その足で業務スーパーに行ってコーヒーを買いに行ったのが始まりだった」と飯野氏は語る。

その翌年の2011年、飯野氏は自費で移動販売車を買い、そこでタピオカドリンクを売るというビジネスを始めた。その事業も軌道に乗せることができたが、しばらくするとその移動販売車のビジネスも売却。売却代金を元手にWebサービスの受託開発を手がける企業を設立。

受託開発で稼いだお金で、彼らは2014年11月に現在のレイヴンを設立。フードデリバリー事業やウェディングメディアの「DIAER(ディアー)」を立ち上げる。この2つのサービスは両方ともすでに事業譲渡済みだ。

そして、その後2018年5月にリリースしたのが、今回DMM.comに売却することになった「AQUIZ(アクイズ)」である。

当初、AQUIZはクイズ特化型SNSとしてスタートしたが、2018年7月に現在のクイズ買い取りサイトへとサービスをリニューアル。現在のAQUIZは、ユーザーがPCかスマホでクイズを作成すると、レイヴンがそれを1問10円程度で買い取るというサービス内容になっている。また、運営やスポンサーが用意したクイズに解答することでお金を受け取ることもできる。

1円事業譲渡

移動販売車、フードデリバリー、ウェディングメディアとこれまで何度も事業を作っては売却するということを繰り返してきた飯野氏。しかし、今回の事業譲渡はそれらとはまったく違う性質を持つ。

これまでは事業の価値に対して相応の対価を受け取ってきた飯野氏だが、今回レイヴンが受け取るのはたったの1円。その代わり、レイヴンのチームはDMM.comにジョインし、AQUIZの成長、そしてDMM.com社内における新規事業の創出などの成果に応じて報酬を受け取るという条件になっている。

DMM.com COOの村中悠介氏は、「AQUIZがもつポテンシャルはもちろんだが、レイヴンのチームがもつ新規事業をつくる力と『事業をやり抜く力』を評価した。DMM.comはこれから、そういった人材の層を増やそうとしているところだ」と話す。

この1円譲渡の話を持ちかけたのは、DMMではなく飯野氏だった。その飯野氏は、この1円事業譲渡で起業家にとっての新しいバイアウトの形を示したいと話す。まず“ゼロイチ”で新しい事業を作り、その事業をリソースのある企業に対して“チームと一緒に売却”し、大きなリソースを武器に一気に加速するというやり方だ。その事業の「種」に対する報酬は、最初は1円でもいい。それが育つにつれて後から成果に応じた報酬を受け取れさえすればいい、という考え方だ。

「自力で新規事業の立ち上げを繰り返すうちに、“最強”なのは大きな会社のなかでゼロイチを行うことだと痛感した。DMMの事業マネージャークラスの人たちには、普通の起業家より経験値をもつ人たちがたくさんいる。DMMがもつ経験や、リソースを使えば、僕らがゼロイチでつくった事業を伸ばしていくことができる」(飯野氏)

ただ、この飯野氏がいう新しいバイアウトの形は、VCマネーを軸にした従来のスタートアップが容易に追随できるものではない。レイヴンはこれまで外部資本を受け入れていなかったが、もし外部資本を受け入れていれば、企業そのものや核となる事業を1円で売却することなど許されないだろう。それに、DMMのような、ある意味特殊な企業が“受け皿”として存在している必要がある。

しかし、飯野氏はその条件さえ整えば、「ゼロイチを連続でやりたい、そしてなによりプロダクトを成長させたいと願う起業家には最適な方法だ」と語る。「もちろん、お金のことだけを考えれば、大きく調達して大きく売るという方がいい。しかし、本当にプロダクトを成長させるには外部から得られるお金だけでなく、1を10にしたり、100にするというノウハウも必要になる。その点で、リソースとノウハウの2つをもつDMMは最適な売り先だと思った」(飯野氏)

今回の事業譲渡は、外部資金をこれまで受け入れず、ただゼロイチを連続的に続けていきたいと願う飯野氏と、巨大な非公開企業という立場で大小さまざまなサービスに対するノウハウを蓄積し、社員にも成果に応じた報酬を支払うことができるDMMという「2つの変わり者」がいるからこそ成り立った特殊な例なのかもしれない。

しかし、今後このような新しいバイアウトの形が日本のスタートアップ業界に根付く可能性はゼロではない。個人的には、従来のエグジットのあり方になんの文句もない。ただ、DMMのような企業の存在により、「VCから調達した資金をもとに事業を拡大させ、M&AかIPOでエグジットをする」というスタートアップのエグジットのあり方が「唯一無二のもの」ではなくなる日も来るかもしれない。

Google、インドで大人気の列車情報アプリを買収

Googleは、インドで大人気の交通アプリ“Where is my Train”の開発チームをさっと手中に収め、今後さらに同国の市場を開拓する。

このアプリの登録ユーザー数は1000万人で、名称から察しがつくように、列車の座席購入ならびに列車の到着・出発情報が入手できるというものだ。インドでは毎日、国中で1万4000本もの列車が運行されていることを考えたとき、このアプリがやっていることは決してたやすいことではない。Android向けのこのアプリは、オフラインでも、ネット接続が弱いところでも作動し、8言語に対応する。VCがサポートしているRailYatriやiXigoと競合する。

買収額は正式には明らかにされていないが、インドのEconomic Timesが伝えたところによると、3000〜4000万ドルとのことだ。同サイトは8月にGoogleが関心を示しているということを報道していて、そのとき買収サイド候補として中国のスマホメーカーXiaomiなどの名も挙がっていた。Googleの広報はTechCrunchに対し買収を認めたものの、額は明らかにしなかった。

このアプリを開発したSigmoid Labsは2013年に4人の元TiVoエグゼクティブによって設立された。従業員は10人とEconomic Timesは報じている。これまでいくら資金調達しているのかは不明だ。

同社は今日、買収を顧客に向けてウェブサイト上で伝えた。

「我々のミッションを達成するのにこれ以上の場所はないと考えている。Googleの仲間入りして、テクノロジーと情報をより多くの人に届けることを楽しみにしている」と創設者は書いている。

Googleは、Where is my Trainチームが現在のサービスを続けるとしていて、少なくともアプリがすぐにシャットダウンされるというわけではなさそうだ。

このサービスのかなりのユーザーベースをもとに、Googleはスコープを他のエリアにも広げるのかもしれない。たとえば、配車サービスアプリは、デイリーアプリという位置付けを生かし、エンターテイメントや支払い、食品デリバリーといった近接分野に参入した。

これは現段階では推測だ。現時点ではこれ通りではないだろうが、GoogleがこのサービスをGoogleマップのような他のアプリに取り込むというのは筋が通る話だ。

このディールはGoogleの“Next Billion User(次のユーザー10億人)”部門に置かれる。この部門は、新興マーケットでインターネットがより受け入れられるのをサポートするプロダクトやサービスを手がけていて、これまでインドにフォーカスしている。同国向けにGoogleは、YouTubeのようなデータ量負担の少ない人気アプリの“ライト”版を開発し、800万人超に使用されているインド列車ネットワークのための公共Wi-Fiなどに率先して取り組んでいる。

Googleはインドの顧客に情報と利便性を提供するアプリに視線を注いでいて、そうしたスコープにはサービスも含まれる。Googleは昨年、オンデマンドアプリモバイル支払いサービスを立ち上げ、今年はご近所Q&Aサービスをリリースした。Where is my Trainの買収はGoogleの戦略に沿うもので、インドにおけるGoogleの消費者向けサービスの基幹となるはずだ。

今回のディールは、インドで米国テック企業が買収したものとしては過去最大の一つだ。Facebook、Twitter、Google、そしてYahooもインドでチーム立ち上げるために買収し、人材を確保したりしているが、Where is my Trainの買収は明らかにプロダクトとしてより戦略的なものとなっている。

イメージクレジット: LightRocket / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

Apple、ミュージシャンの創作活動を支援するプラットフォームPlatoonを買収

Spotifyは、レコード会社を介さずにアーティストと直接協業するという意味深長な動きをとったが、Appleもオリジナルコンテンツでさらに大きなシェアを確保するために同様のアプローチに目をつけているようだ。

Music Business Worldwideの報道と、我々がこのディールに近いソースに確認したところによると、Appleは主にミュージシャンを、そしてライターのような他のクリエーターも支援しているロンドン拠点のスタートアップPlatoonを買収した。Platoonは、才能を売り出すために分析論を使いながらミュージシャンの作品をつくり(スタジオを持っている)、流通させ、そして販売する。またコンテンツのターゲットの仕方やマーケティングの最善策も考える:A & Rサービスの現代テック版だ。

我々はAppleとPlatoonの両社に買収を確認するために問い合わせている。分析を行う音楽スタートアップAsaiiを買収したときのように、時々Appleのディールは雇用は含まれるが完全な買収ではない、ということもある。しかしながら、彼らからの返事を待っている段階なのにもかかわらず、この件を記事化するのは、我々のソースがこれは“絶対に買収だ”と言っているからだ。

アップデート:Platoonの共同創業者とCEOもまたLinkedInでニュースを認めた

Platoonは2016年にDenzyl FeigelsonとBen Grabiner、そしてSaul Kleinが共同で立ち上げた。

PlatoonのCEOであるFeigelsonは、私が話した別の人物によると、“本物”の音楽業界ベテランだ。彼は以前AppleのiTunesでエグゼクティブを務め、退職後もAppleと良好な関係を保っている。自身のことをApple Musicやライブイベントのような分野においてAppleの“長期的アドバイザー”と表現している。

Appleに15年間在籍する前、Feigelsonは後にKobaltに買収されたAWALー“Artists Without A Label”の略だーを立ち上げた(皮肉にも、KobaltはGoogleがサポートするスタートアップで、ミュージシャンがデジタルストリーミングプラットフォームでロイヤルティーを直接回収するのを手伝う一方で、レーベルサービスも展開する)。

一方、GrabinerとKleinは2人ともVC会社Local Globeを通じてPlatoonと関わった。Local GlobeはPlatoonの唯一の投資家のようだ。PitchBookによると、Platoonはこれまで60万ドルの資金を調達し、最新の評価額は控えめに見積もって378万ドルだった。

GrabinerはPlatoonのGMになるためにLocal Globeを退職し、VCの共同創業者であるKleinはまだLocal Globeにいるものの、Platoonの役員を務める。

Appleの音楽サービスへの関心は、テック業界における同社を取り巻く傾向とも合致する。多くの国で携帯電話市場が飽和状態になっているという世界的なトレンドの一部として、iPhoneの売上は伸び悩んでいる。それに伴い、全体の売上の成長を維持するためにAppleはハードウェアのみに頼るのではなく、より多くのサービスに事業を拡大してきた。

メディア、特に音楽の事業は鍵を握る稼ぎ手で、Apple最大の買収のいくつかがこの事業を成長させている。

そうした買収には、BeatsShazamの件が含まれ、これによりApple Musicがプラットフォーム上でアーティストに提供する権限が、単なる音楽トラックへのアクセスを超えて拡大した(ここにはより多くの分析も含まれる。分析はAsaiiが注力していた分野で、偶然にもAsaiiもまた元Apple社員によって創業された)。

音楽産業の全てのセグメントに本気で取り組むために、Appleが音楽事業にフォーカスすること、最も競合しているSpotifyのサービスに匹敵するものを提供することに、何ら不思議はない。

レーベルー特に大きなレーベルーは覇権を握り続けるが、デジタル配給への大きなシフトとストリーミング台頭で、ミュージシャンはリスナーとつながることができるようになり、またそうした体験を通して金を稼ぐことができるようになった。

ミュージシャンがそうしたかったのは当たり前だ:音楽産業は昨年430億ドルを生み出したが、ミュージシャンの取り分はたったの12%だった。

Appleがアーティストのためのサービスに本格的に取り組むことは、マーケットプレイスの両面に参入することを意味する。

1つの面では、Appleはレーベルが才能あるミュージシャンを売り出すのをサポートする。実に、Platoonが発掘したミュージシャンの多くがいまでは大手レーベルと契約している(ここには、InterscopeのBillie EilishとJacob Banks、Universal/PolydorのStefflon Don、SonyのJorja Smithが含まれる)

別の面としては、レーベル契約に至らなかったミュージシャンに、そしてレーベルと契約したミュージシャンにも、Appleはミュージシャンが作品をつくって配給する幅広いツールを提供することで、彼らにとってのデジタルホームになるルートを確保する。これによりAppleをオリジナルコンテンツのカタログにアクセスしやすいものにし、オリジナルコンテンツがどこかで流されると分け前すら入り、ヒットの可能性ももたらされることになる。

イメージクレジット: Win-Initiative

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(翻訳:Mizoguchi)

LogitechとPlantronicsの交渉は決裂

Logitech Internationalは本日付の声明で、Plantronicsと買収に関する話し合いを行っていたが、交渉を打ち切ったと発表した。

この週末、本誌は両社が22億ドルの買収交渉をしているというReutersの報道を取り上げた。

同社は正式発表以外のコメントを出していない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米Logitech、22億ドルでヘッドセットのPlantronics買収か

キーボードやウェブカムなどの周辺機器の大手メーカー、米Logitech〔日本ではロジクール〕はbluetooth接続のヘッドフォン、ヘッドセットの有力メーカー、Plantronicsを買収する交渉に入っているという。 Reutersによれば、Logitecは買収価格として22億ドルを提示しているという。 これはLogitechとして過去最大の買収になる。

安価のデバイスの津波が中国から押し寄せ、アメリカのメーカーの利益率を削る中、買収による経営統合は両者のコスト削減に役立つだろう。Reutersの記事では買収交渉は早ければ来週にもの結果が出るという。

TechCrunchでは両社にコメントを求めている。何か分かり次第アップデートするつもりだ。

買収のニュースが流れるとNYSEの時間外取引のPlantronicsの株価はアップした。

Logitech、Plantronicは両社ともこのところ企業買収を積極的に進めてきた。 最近ではLogitechはポッドキャスティング用マイクロフォンのYetiとSnowballで知られているBlue Microphoneを買収した。

一方、カリフォルニア州サンタクルスに本拠を置くPlantronicsは今年Polycomを20億ドルで買収している。Plantornicsはジェット旅客機のパイロットであった共同ファウンダーが小型のヘッドセットの開発を試み、これにNASAが加わったことで急速にこの分野を代表するメーカーに成長した。しかしApple始め高品質で手頃な価格のプロダクトを提供するライバルの参入によって地位が脅かされる事態となっていた。

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滑川海彦@Facebook Google+

Ubuntuで自分のビジョンを追究したいCanonicalのMark Shuttleworthは買収よりIPOに関心あり

IBMがRed Hatを340億ドルで買収する計画を発表して以来、Red Hatと競合するSuseやCanonicalの今後の行方を云々する声が賑やかになってきた。しかしCanonicalのファウンダーMark Shuttleworthには、同社を売ることへの関心はまったくないようだ。少なくとも、今のところは。

今日ベルリンで行われたOpenStack Summitの会場近くで彼としばらく話をしたが、彼は、“重要なのは独立だ”、と言った。それはまず、彼は個人的にはお金を必要としていない、ということだが、CanonicalとUbuntuに懸けた彼のビジョンを最後までやり遂げたい、という意味でもある。

彼が1999年にThawte Consultingを5億7500万ドルでVerisignに売ったとき、人びとは彼に、死ぬまで休暇か?と尋ねた。そして彼はそのお金の一部を使って二人目の宇宙旅行者になり、慈善団体を立ち上げたが、そっち方面への関心がないことは、明らかだった。

しかし彼によると、売ってもよい状況が一つだけある。それは、彼のCanonicalのビジョンが加速されることだ。

しかし、何にでも価格はあり、そしてShuttleworthがお金を必要としていないとしても、売却は確実に、Canonicalの社員の多くにとって有意義な金銭的報奨になるだろう。

でも、よく知られているように、Shuttleworthの関心はCanonicalのIPOにある。今年の前半に彼は、それはまだ検討中、と述べたが、正しいタイミングというものも必要だ。最近同社は再びエンタープライズにフォーカスし、それとあまり関係のないUbuntu PhoneやUnityデスクトップなどを閉鎖した。結果は好調のようだから、IPOはまだ選択肢の一つとして生きている、と言える。

今週後半にShuttleworthへのもっと本格的なインタビューを予定しているので、お楽しみに。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Ford、電動キックスクーターのSpinを買収

Fordが電動キックスクーターのスタートアップSpinを買収する、とAxiosが報じている。この件に近い筋によると、“諸々含めトータル買収額は1億ドル近く”とのことだ。Axiosはその前に4000万ドル前後としていた。

Spinは現在、フロリダ州のコーラル・ゲーブルズ、ワシントンD.C.、ノースカロライナ州のシャーロットとダラム、ケンタッキー州のレキシントン、コロラド州のデンバー、ミシガン州のデトロイト、カリフォルニア州のロングビーチでスクーター事業を展開している。それらの都市に加え、5つの大学キャンパスでも利用できる。

Spinは、3月にサンフランシスコで最初にスクーター事業を展開した3社のうちの1社だった。BirdそしてLimeとともに、Spinは市当局が許可プロセスを決めるまで電動スクーターを街から撤去することを余儀なくされた。そして事業展開の許可をSpinはもらえなかったため、この業界で最も静かなスタートアップの一つとなっていた。しかし来週Spinはサンフランシスコでの電動スクーター事業の許可否認について市側と面会する。

情報筋によると、6月時点で、SpinはSegway傘下の電動スクーター製造のNinebotと、1カ月あたり3万台のスクーターを年末まで購入する契約を結んでいた。なぜFordが自前のサービスを展開するのにスクーター製造メーカーと提携する代わりにSpinを買収する必要があるのかについては、完全にクリアではない。

同じ6月、Spinは1億2500万ドルのセキュリティトークン発行を完了させる手続きをとっていた。Spinに近い消息筋によると、Spinのセキュリティトークンは、適格機関投資家から資金を調達するためのもので、この投資家にはSpinが電動スクーター事業であげる収益の一部が付与される。STO(セキュリティトークンオファリング)で、投資家は現実世界の金融商品とリンクするトークンを購入できる。Spinの場合、トークンは収入とリンクする。これまでにSpinは従来のベンチャーファンディングで800万ドルを調達している。

近年、FordはAutonomic、TransLocとともにコミューターシャトルサービスのChariotを買収している。

Spinは、南サンフランシスコとシアトルでステーションなしの自転車事業を開始したあとの2月、正式に電動スクーター業界に参入した。それまでSpinは自転車シェアプラットフォームを運営していただけだった。昨年8月、Spinはステーションなしの自転車シェアプログラムを、先行していたシアトルに続いて南サンフランシスコに導入。そして1月、ステーションなしの電動自転車を披露した。しかしながら関係筋によるとSpinはいま電動スクーターのみにフォーカスしているという。

過去1年かそこらで、電動スクーターはまったく見られない状態からどこにでもある状態へと変わっている。ここには、20億ドルの企業価値を持つサンタモニカ拠点のスタートアップBird、もう一つの電動スクーター企業のユニコーンで、このほどUberと提携したLimeUberのJUMP、Boosted Boardの共同創業者Sanjay DastoorのSkip、そしてLyftなどが含まれる。

現在FordとSpinにコメントを求めていて、反応があり次第アップデートする。

イメージクレジット: Spin

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(翻訳:Mizoguchi)

バンクがDMM.comからMBOにより独立——5億円で株式譲渡、「CASH」「TRAVEL Now」は継続

即時買取サービス「CASH(キャッシュ)」、あと払い旅行サービス「TRAVEL Now(トラベルナウ)」を運営するバンクは11月7日、MBO(マネジメントバイアウト)を実施し、親会社のDMM.comから独立したことを発表した。

MBO実施はバンク代表取締役兼CEOの光本勇介氏個人によるもの。DMM.comが保有するバンクの全株式を買い取ったということだ。バンクが提供するサービスは、引き続き新体制のもとで運営される。

DMM.comは2017年10月31日にバンクの全株式を光本氏から70億円で取得し、子会社化していた。DMM.comのリリースによると、光本氏への株式譲渡(売却)金額は5億円。ほかに買収後、運転資金として20億円の貸付があったということだが、この貸付金についてはバンクから5年で返済することで合意しているという。

バンクはMBOにともない、「よりスピーディーで柔軟な経営判断が行えるとともに、DMM.comのグループ会社として積んだ経験を活かしながら、CASHやTRAVEL Nowを中心に、 新規事業をふくめ、創業時からの経営理念『見たことのないサービスで新しい市場をつくる』を引き続き掲げ、バンクが得意とするインターネットビジネスによる新しい価値の提供に邁進していく」とコメント。

また、光本氏は自身のブログ上で以下のように述べている。

年末に近づき、来年の各事業のチャレンジや新規事業などを考えていく過程で、
私がイメージする投資規模やアクセルの踏み具合などを考えたとき、DMMから卒業をさせていただいた方が、
よりスピーディで柔軟な経営判断・動きが行えると判断をしました。十分な話し合いをさせていただいた結果、
DMMからもご理解をいただき、このようなアクションに至ることとなりました。

光本氏は、来週開催されるTechCrunch Tokyo 2018で、11月16日に行われるパネルディスカッションにも登壇予定。テーマは「新型旅行サービス」に関するものだが、今回のMBOについても、直接話を聞ける機会になるかもしれない。

Expedia、住宅短期レンタル市場攻略へPillowとApartmentJetを買収

米国の都市部での短期レンタル需要の高まりを受け、また住宅シェア大手Airbnbに対抗するため、旅行予約サイトのExpediaはVCから投資を受けているスタートアップPillowApartmentJetを買収対象として選んだ。

両社の従業員はExpediaに加わることになる。Expediaは今回の買収額を明らかにすることを断った。

PillowとApartmentJetの買収で都市部で広がっている機会にアクセスできるようになる。これにより、HomeAwayは展開する自社マーケットプレイス、そしてExpediaグループのブランドにわたるマーケットプレイスに幅広いタイプの宿泊設備を加えることができるようになる。そして旅行者はいつもパーフェクトな滞在場所を見つけることができる」とExpediaは発表文で説明している。

Expediaは、2015年のHomeAway買収で39億ドル支払った。このディールが宿泊施設業界で事業展開するにあたって初の大きな買収だった。と同時に、VCのお気に入りであるAirbnbをしのごうとするその後に続く動きの始まりとなった。最新の買収対象は、不動産管理者がHomeAwayやVRBOのようなAirbnbの競争相手で短期レンタルを簡単に管理することができるソフトウェアを提供している。

サンフランシスコに拠点を置くPillowは、住人がリース契約に違反しない形でアパートメントを短期レンタルに出すのを手伝っている。2013年以来、VCの投資で1650万ドル調達し、ここには昨年のMayfieldが主導しSterlingが参加した1350万ドルのラウンドも含まれている。投資家はVC、Peak Capital Partners、Expansion VC、Chris Anderson、Gary Vaynerchuk、Dennis PhelpsそしてVeritas Investmentsだ。

ApartmentJetは建物のオーナーが空き部屋にならないようにしながら稼ぐのを手伝う。2016年に創業し、シカゴに本部を置くこのスタートアップは報道されたところによるとNetwork VenturesとBlueTreeから120万ドルを調達している。

ベルビュー拠点のExpediaグループはHomeAway、VRBO、Travelocity、trivago、OrbitzそしてHotels.comなどを含むいくつかの旅行ブランドを有している。 Expediaはアクティブな投資家であり、またスタートアップ買収者でもある。

Expediaの株価は、第3四半期決算がアナリストの予想を上回ったことから木曜日に9.4%上昇した。売上高は32億8000万ドルで、これは昨年の29億7000万ドルを大きく上回った。

イメージクレジット: ApartmentJet

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(翻訳:Mizoguchi)