Beewiseのロボット巣箱が世界のミツバチを救う?

ここに残念な統計がある。毎年、ミツバチのコロニー(蜂群)の約30%が消滅しているというのだ。科学者たちは、世界のミツバチの個体群における破壊的な継続的傾向を言い表すために「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)」という言葉を作った。その原因は特定されていない。しかし、専門家の間では、生息地の破壊や殺虫剤など、多くの人為的な原因が指摘されている。

そこで、ミツバチの個体数を回復させるために人間ができることはないだろうか、という疑問が浮かび上がってくる。2018年にイスラエルで設立されたBeewise(ビーワイズ)というスタートアップ企業は、ロボットによる解決策を提供している。同社は、外に設置して一種の自動養蜂場として機能するように設計された箱を製作した。太陽光発電装置を備えたこの箱は、蜂の巣を監視し、気温制御と自動収穫を行う。ペットの侵入といった問題が起きないように監視する一方で、内部の環境を調節して入居者の群れ行動を防ぐように設計されている。

画像クレジット:Beewise

現在、Beewiseは同製品を月額400ドル(約4万9000円)のRaaS料金+初期配送・設定料2000ドル(約24万円)で養蜂家に提供している。これには24のコロニーと継続的なメンテナンスが含まれる。その見返りとして、この技術は収穫量の向上や、周囲の農作物の受粉といった利益を約束し、さらにうまくいけば、問題となっているミツバチの個体数減少に対しても正味の利益をもたらす。

同社は今週、8000万ドル(約9億8000万円)のシリーズC資金調達を実施したことを発表した。Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)、Corner Ventures(コーナー・ベンチャーズ)、lool ventures(ロール・ベンチャーズ)、Atooro Fund(アトゥーロ・ファンド)、Meitav Dash Investmentsが(メイタフ・ダッシュ・インベストメント)が参加した今回のラウンドにより、このアグリテック企業がこれまでに調達した資金の総額は、1億2000万ドル(約147億円)を超えた。

「ミツバチを救い、蜂群崩壊という流れを逆転させようとする私たちの献身、粘り強さ、情熱を理解してくれるすばらしい投資家たちからシリーズCの支援を受けられることに、Beewiseのチームは感激しています」と、Saar Safra(サアー・サフラ)CEOは声明で述べている。「この数カ月だけでも、米国では数千の注文がありました。今回の資金調達により、Beewiseは製造を拡大して市場の大きな需要に応え、さらなる製品の改良を行い、受粉の環境をさらに改善することが可能になります」。

画像クレジット:Beewise

今回、同社は資金調達のニュースとともに、その「Beehome(ビーホーム)」と呼ばれるシステムの新バージョンも公開した。新しい筐体は従来のものより32%小さく、20%軽くなっており、より迅速な収穫と、改良された給餌・暖房システムを特徴としている。

画像クレジット:Beewise

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKER(スペースウォーカー)は3月31日、シードラウンドとして、コンバーティブル・エクイティおよび社債などによる5億5000万円の資金調達を2022年3月に完了したと発表した。引受先は個人投資家など。累計資金調達金額は12.16億円となった。

調達した資金により、サブオービタルスペースプレーン(有翼式再使用型ロケット)の技術実証、商用機開発、および新たに立ち上げた複合材事業への設備投資、これらに伴う人員強化、広告宣伝費などの運転資金などにあて、さらなる事業拡大を目指す。

スペースウォーカーは、誰でも飛行機に乗るように自由に地球と宇宙を往来する未来を目指し、持続可能な宇宙輸送手段を提供するために、サブオービタルスペースプレーンの研究・開発を行っている東京理科大学発スタートアップ。

また、2021年7月には複合材事業も立ち上げている。同社が宇宙開発において培われた軽量な複合材製容器は、宇宙のみならず、陸海空にまたがる脱炭素化社会に向けた水素サプライチェーン・プラットフォームの構築において、特に重要な要素である水素の貯蔵容器としても注目されているという。

Zoom・Teams・TikTok対応、AIで自分の外観をDXできる「xpression camera」正式版リリース―1.5億円の資金調達も

Zoom・Teams・TikTok対応、AIで自分の外観をDXできる「xpression camera」正式版リリース―1.5億円の資金調達も

「学習し模倣するAI」を「想像し創造するAI」へ進化させることをミッションに掲げるテック企業EmbodyMe(エンボディーミー)は、ビデオ会議などで自分の映像を別のものに置き換えられる「xpression camera」(エクスプレッションカメラ)の正式版をリリースした。WindowsとMacに対応し、無料で使うことができる。アプリはこちらからダウンロードできる。

また同社は、FreakOut Shinsei Fund、DEEPCORE、キャナルベンチャーズ、山口キャピタルを引受先として、1億5000万円の資金調達を実施したことも発表した。

xpression cameraは、使いたい画像が1枚あれば、それをAIにより自分の外観と置き換えて、リアルタイムでコミュニケーションができるようになるというツール。Zoomのほかに、Teams、YouTube、TikTokなどあらゆるビデオアプリで利用できる。たとえばパジャマ姿でも、スーツを着た自分の画像に置き換えてリモート会議に参加するということが可能になる。自分だけでなく、顔として認証されるものなら、絵画や動物の写真を使うこともできる。

 

2020年9月からベータ版を提供していたが、AIのコアエンジンを一新してクオリティーを高め、バーチャル背景などの機能も追加した。映像の録画・読み込み・画像検索・バーチャル背景の編集が可能な有料版の「Pro Plan」もある。さらに、企業向けの「Enterprise Plan」の提供も予定しており、現在はパイロットプログラムへの参加企業を募集している。

EmbodyMeは、「最終的にはAIで目に見えるあらゆるものを誰もが自由自在に作り出せるツールになることを目標とし、今まで想像もできなかったようなまったく新しいメディア、業界をも創造していきます」と話している。

レーザー核融合商用炉の実用化を目指す大阪大学発EX-Fusionが3100万円調達、装置開発・技術実証を推進

レーザー核融合商用炉の実用化を目指す大阪大学発EX-Fusionが3100万円調達、装置開発・技術実証を推進

レーザー核融合商用炉の実用化を目指すEX-Fusionは3月31日、第三者割当増資による3100万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、OUVC2号投資事業有限責任組合(大阪大学ベンチャーキャピタル。OUVC)。調達した資金を活用して、連続的に核融合反応を発生させるための装置開発および技術実証を進める。

EX-Fusionは、レーザーにより発生させた核融合反応によって発電する「核融合発電」の実現に挑戦する大阪大学発のスタートアップ企業。長年にわたりレーザー核融合を研究してきた大阪大学レーザー科学研究所や光産業創成大学院大学の研究者らによって設立されており、レーザー核融合発電の実現に向けた課題である、連続的・効率的に核融合反応を発生させる技術を活用した核融合商用炉の開発を進めている。

同社は、日本を拠点とするレーザー核融合エネルギーのスタートアップとして、実用化に必要な技術開発を加速していきながら、商用炉実現を目指す過程で得られる最先端の光制御技術・知見等を活用し、エネルギー分野にとどまらず、様々な産業分野の技術開発に貢献するとしている。

コスメD2Cブランドなど展開するDINETTEが8億円のシリーズB調達、OMO施策で販売チャネル拡大・アジア圏のマーケ推進

コスメD2Cブランド「PHOEBE BEAUTY UP」(フィービービューティーアップ)と美容メディア事業を展開するDINETTE(ディネット)は3月30日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資と融資による総額8億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、大和企業投資、セレス、MTG Ventures。借入先はみずほ銀行。

調達した資金により、サブスクリプションをメインに販売するPHOEBE BEAUTY UPについて、OMO(Online Merges with Offline)施策に投資を行い販売チャネルを拡大、アジア圏へのマーケティング活動を行う。女性の悩みに寄り添うビューティーカンパニーになるべく、2022年度より多様なブランドを多数創出するために商品開発に投資するという。

PHOEBE BEAUTY UPは、DINETTEが運営するSNS美容メディアに寄せられた顧客の声を基に誕生した、オリジナルブランド。「今日なりたい『私』を叶える」をブランドミッションとし、プロダクト体験を通じてより多くの顧客の「なりたい」を実現することを目指している。

コスメD2Cブランドなど展開するDINETTEが8億円のシリーズB調達、OMO施策で販売チャネル拡大・アジア圏のマーケ推進

金融教育サービス「ABCash」などを展開するABCash Technologiesが約12億円のシリーズC調達

金融教育サービス「ABCash」を展開するABCash Technologies(エービーキャッシュテクノロジーズ)は3月30日、シリーズCラウンドとして、第三者割当増資による総額約12億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は三菱UFJイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、Aflac Ventures LLC(Aflac Ventures Japan)、SV-FINTECH Fund、Hamagin DG Innovation投資事業有限責任組合(横浜銀行、デジタルガレージ)、マネックスグループ、FFGベンチャービジネスパートナーズ。

調達した資金は、データ・テクノロジーの活用強化、ブランディング強化、FinTechサービス拡大にあてる。2022年4月より高等学校で金融教育が開始されるなど社会全体での金融教育のニーズの高まりを背景に、金融教育FinTech事業の推進強化を目的とする資金調達を実施したという。金融機関や親和性の高い株主と事業レベルの連携を深めつつ「貯蓄から投資へ」という流れを加速していくとのこと。

2018年2月設立のABCash Technologiesは、「お金の不安に終止符を打つ」をミッションとして掲げるFinTechスタートアップ。個人向けのお金のパーソナルトレーニングサービスのABCashと、法人向けお金の福利厚生サービスABCareを2本の柱にしてサービスを提供している。

データサイエンティストを対象とした専用データベースのPineconeが34億円調達

Pinecone(パインコーン)が2021年の創業時に発したメッセージは、データサイエンティストのニーズに特化したサーバーレスベクターデータベースを開発するというものだった。このデータベースは同社が行っていることの中核を成すものだが、同社はAI駆動型検索を中心に、より洗練されたデータベースの用途へと向かっている。「干し草の山の中から針を見つける」データサイエンティストを支援することを目指している。

Pineconeの創業者でCEOのEdo Liberty(エド・リバティ)氏に2021年、1000万ドル(約12億円)のシードラウンドの際に話を聞いたときはちょうど、同社がデータベースを開発しながらその道を歩んでいるところだった。同氏はAmazon(アマゾン)で、SageMakerというデータベースサービスの構築に携わっていた。それからがずいぶん長い道のりだったと同氏は話した。

「シードラウンドの発表から、いろいろと変化がありました。まず何よりも10月にきちんとした有料サービス製品を立ち上げました。それ以来、採用数も収益も急増しており、本当に順調です」とリバティ氏は語る。

シードラウンドの際、データサイエンティスト向けの専用データベースを用意した理由をこう説明した。

機械学習モデルが期待するデータは、JSONレコードではなく、高次元ベクトルなのです。それは特徴のリストか、エンベッディングと呼ばれる、この世に存在するアイテムやオブジェクトの数値表現です。この形式は、機械学習におけるセマンティックの観点で、豊かで実用的なものです。

現在では、この意味優先のアプローチが顧客にPineconeを利用してもらえる原動力になっているという。「ベクトルデータベースの主な用途は検索で、しかも広い意味での検索です。ドキュメントを検索するわけですが、ここでは検索を、情報入手全般、ディスカバリー、レコメンデーション、異常検知などと考えることができます」と語った。

システムは、Pineconeデータベースのデータを処理するために設計されたリソースのセットである「ポッド」で構成されている。同社は、顧客が製品に慣れ、簡単な概念実証を行うために、1つのポッドを無償で提供している。その後、ポッドの数に応じて支払いを開始する。

リバティ氏は、同社が数十億個のオブジェクトに拡張できるよう設計したシステムに自信を持っている。「ソフトウェアが実用に耐え、実際にオーケストレーションできる範囲まで拡張することができるのです。私たちは、インデックスを作成して使用できるデータ量に明確な制限がないようにシステムを設計しました」と同氏は説明した。

サーバーレスデータベースであるため、顧客はプロビジョニングについて心配する必要はないが、処理を要するデータ量に応じて、毎月いくら使えるかをPineconeに伝える必要がある。

「ざっくりとした計算に基づき、データ容量と性能の点から、こういう用途にはXポッドで十分だろうという判断が下され、それで完了です」。後はサインアップして、コンソールを数回クリックし、APIを呼び出してインデックスを作成するだけで、すぐに使えるようになる。

リバティ氏は、成長率や従業員数を明かしたくないとのことだったが、2023年にはスタッフ(それがどういう意味であれ)が2倍になる見込みだという。注目すべきは、シード発表時の同社の従業員数は10人だったことだ。

多様性に関して同氏は2021年「リクルーターには積極的に動き(より多様な応募者を見つけるために)、すばらしい候補者を逃さないように、そして多様な候補者を連れてくるように指示しました」と話した。実際には、その結果、2022年の新規技術職採用者の(従業員総数の)50%は女性だという。

同社は米国時間3月29日、2800万ドル(約34億円)のシリーズAを発表した。Menlo Venturesがリードし、新規投資家からTiger Globalが、また既存投資家から同社のシードラウンドをリードしたWing Venture Capitalなどが参加した。これにより、同社は累計3800万ドル(約46億円)を調達したことになる。

画像クレジット:SAND555 / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

高純度間葉系幹細胞を開発する島根大学発バイオスタートアップPuRECが総額7億円調達、製品開発を加速

高純度間葉系幹細胞を開発する島根大学発バイオスタートアップPuRECが総額7億円調達、製品開発を加速

島根大学発の細胞医薬スタートアップ「PuREC」は3月29日、第三者割当増資による総額7億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は持田製薬、山陰合同銀行、ごうぎんキャピタル、中内啓光氏(スタンフォード大学教授)。累計調達額は13億7000万円となった。

調達した資金は、製品開発をより加速することにあてる。それによりこれまで十分な医療効果が得られなかった疾病に対し、少しでも早く高純度間葉系幹細胞RECを活用した再生医療を届けることを目指す。

2016年1月設立のPuRECは、島根大学発のバイオ領域スタートアップ。独自開発した手法で得られた高純度間葉系幹細胞「REC」(Rapidly Expanding Cells)の臨床応用を進めている。間葉系幹細胞が持つ細胞機能の増殖能と分化能、またその均一性や遊走能を利用して、安全かつ効果的な幹細胞治療を実現することを目指しているという。これまでに日本医療研究開発機構(AMED)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、持田製薬などと連携し、低ホスファターゼ症、関節疾患、脊椎関連疾患など様々な疾患を対象とした細胞医薬品開発を進めている。

プライバシーに配慮したIDを生成するCloakedが30.4億円のシリーズA調達

オンラインアカウント作成時に、ユニークな電子メールアドレスと電話番号を生成できるようにする、ボストンのスタートアップCloaked(クロークド「覆い隠す」という意味)が、シリーズAラウンドで2500万ドル(約30億4000万円)を調達した。

Arjun(アージュン)とAbhijay Bhatnagar(アブジェイ・バトナガー)の兄弟が2020年に設立したCloakedは、プライバシーを気にする個人が、ユニークなIDを作成できるようにする。アプリやブラウザの拡張機能として提供されるこのサービスは、任意のオンラインサービスに対して、電子メール、電話番号、パスワード、クレジットカード番号などの、ユニークな「覆面」IDを作成することができる。Cloakedはパスワード管理ソフトのように振る舞うが、ユーザーのパスワードを保存するのではなく、生成した「覆面」データで個人情報を置き換えるプラットフォームだ。

Apple(アップル)のHide My Email(ハイド・マイ・Eメール)のような、識別子を生成するタイプのサービスとは異なり、Cloakedのスマートな設定を使うことで、各識別子がどのように機能するかを簡単にパーソナライズおよびカスタマイズすることが可能だ。例えば、個人が何を、いつ、どこで、誰と情報を共有するかを選択できるし、メールアドレスや電話番号ごとにオン/オフ、スヌーズ(一時無効化)、期限切れ、漏洩した場合の自動更新などが可能となる。また、個人宛のメールや電話番号にメッセージを自動転送するか、Cloakedの中にとどめておくかをユーザーが選択することができる。

Cloakedは、個人情報を最初から非公開にしているという。すべてのユーザーは、個人情報のすべてが保存されている暗号化されたデータベースを所有し、いつでも管理・削除できるキーが与えられる。

「みんな、この『知られているけれども監視されているわけではない』という考え方が好きなのです」と、アブジェイ・バトナガー氏はTechCrunchに語っている。現在、初期プレビュー版のCloakedを使っている人たちは、オンラインバンキングからオンラインデートに至るさまざまなIDを作っているという。「私たちは、人々とデータの関係だけでなく、テクノロジー全体との関係も再構築したいと心から願っています」と彼はいう。

Cloakedは、パスワード管理ソフトのようなサービスだが、オンライン上のIDを生成するためのサービスだ(画像クレジット:Cloaked)

Cloakedは現在は無料サービスだが、フリーミアムモデルへの移行を計画している。同社がTechCrunchに語ったところでは、Lux CapitalHuman Capitalが共同で主導した今回のシリーズA資金調達によって、製品の開発を進め、ベータ版を終了できるだろうという。スタートアップは、現在26名のフルリモート社員で構成されており、採用活動も行っている。「この先もリモートファーストにこだわるつもりです」とアージュン・バトナガー氏はいう。「そうすることで、世界中のどこからも、最高の人材を採用できる可能性が広がりますし、チームを最高の人材で固めたいのです」。

Cloakedは、バトナガー兄弟が設立した2社目のスタートアップだ。彼らは、今回のベンチャーを立ち上げる前に、「Hey! HeadsUp(ヘイ!ヘッズアップ)」というオンラインプラットフォームを創業して売却している。Hey! HeadsUpは、複数のカレンダーを共有したりイベントの招待状を送ることなく、他の人のスケジュールにタスクを追加できるオンラインプラットフォームだ。

画像クレジット:Cloaked提供

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:sako)

日本でも販売されているスマートグラスのNrealが1年間で約244.2億円を調達

中国のARスタートアップ「Nreal」(エンリアル)が好調だ。軽量で明るいスマートグラスを作ってARの普及を目指す同社はシリーズC拡張ラウンドで6000万ドル(約73億2600万円)を調達し、この1年間で2億ドル(約244億2000万円)の大型調達を果たした。

今回のラウンドを主導したのはAlibaba(アリババ)だ。Alibabaは投資に関しては最大のライバルであるTencent(テンセント)よりも、これまでずっと実用性を重視しつつTencentほど積極的ではなかった。Alibabaは、その巨大な小売エコシステムを補完するピースになり得るスタートアップの経営権に関わる持分を獲得すると言われている。

しかしNrealに対するAlibabaの投資は純粋に資金面でのことだ。理論的には、両者が戦略的なシナジーを生み出す可能性はある。Alibabaが自社のゲームやビデオのストリーミング部門とNrealの協業に乗り出したり、最近音声コントロール付きヘルメットを着用するようになった膨大な数のフードデリバリーのライダー向けにスマートグラスをNrealに開発してもらうことは容易に想像できる。しかし中国では独占禁止法の取り締まりが厳しくなり、中国のテック大手が不公正な競争を助長すると受け取られかねない投資に注意を払うようになっていることは間違いない。

それに、Magic Leap(マジックリープ)の従業員だったChi Xu(徐驰、カイ・シュイ)氏が創業したNrealには、すでに注目すべきパートナーたちがいる。Nrealの戦略的投資家には、中国の新興EV企業のNio(ニーオ)、TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるショートビデオアプリのKuaishou(快手)、Baidu(百度)が支援するビデオストリーミングプラットフォームのiQIYI(爱奇艺)などがある。Qualcomm(クアルコム)は投資はしていないが最先端のSnapdragonプロセッサを供給し、開発者エコシステムの構築に関して緊密に連携している。著名な機関投資家であるSequoia Capital China(セコイアキャピタルチャイナ)、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(雲鋒基金)、Xiaomi(シャオミ)の創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei Capital(順為資本)の他、プライベートエクイティ大手のHillhouse(高瓴資本)、CPE(CPE源峰)、CICC Capital(中金資本)もNrealを支援している。

Nrealは中国を拠点としているが、中国市場をターゲットにするのではなく、消費者の購入意欲を日本や米国など海外の6カ国で最初にテストした。同社はデバイスの販売に関して各国の通信事業者の協力を得ている。例えば米国ではVerizon(ベライゾン)がNrealの複合現実グラスであるNrealLightの販売に協力している。NrealLightは600ドル(約7万3000円、日本ではauオンラインショップで6万9799円)と比較的手頃な価格で、5G対応のAndroidデバイスに接続できる。

Nrealは今回調達した資金で、ついに2022年に中国での事業に乗り出す。また今回の資金は研究開発や、ユーザー獲得に欠かせないコンテンツやアプリのエコシステムの成長にも使われる。

画像クレジット:Nreal

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

職域向けオンライン診療など健康支援プログラムを提供するリンケージが約5.5億円のシリーズA調達、上場準備室も設置

職域向けオンライン診療など健康支援プログラムを提供するリンケージが約5.5億円のシリーズA調達、上場準備室も設置

予防医療テックで職域向けにオンライン診療などの健康支援プログラムを提供するリンケージは3月30日、第三者割当増資による資金調達を実施した。引受先は、マイナビ、Medical Development Support 1号投資事業有限責任組合、個人投資家の竹内真氏、上沢仁氏など。これにより、シリーズAラウンドの累計調達額は約5億5000万円、また累計調達額は8億円となった。調達した資金は、主にプロダクトの機能拡充、質の高いサービス提供のための人材採用にあてる予定。

また同社は、さらなる企業成長を見据え、上場準備室を設置した。ヘルスケアスタートアップとしてのノウハウを活かした事業展開で健康総合支援企業となるビジョンを体現し、次のステージへの到達を目指す。

「テクノロジーとのつながりで健康意識の温度をあげる」をミッションに掲げるリンケージは、2011年6月の設立以来、「オンライン禁煙診療」や、オンライン問診を起点に従業員の心身の健康課題を可視化し、必要な医療へのアクセスや組織の生産性向上につなげる「Rasika」「FEMCLE」などの企業向けヘルスケアサービスを展開。のべ174組合、企業1550社への健康サポート実績があり、加入者数約600万人以上のネットワークを有している。

Rasikaは、テレワークなどの新しい働き方にも対応したメンタルウェルネスサービス。東京大学医学部附属病院心療内科との共同研究により開発した独自ストレスチェックの質問項目により、テレワークや生活習慣との相関を含め、従業員のストレス要因を多角的に分析可能という。またFEMCLEは、働く女性の健康課題を可視化し、専門医のフォローで労働生産性を改善する法人向け女性ヘルスケアサービス。NPO法人日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)、豊富な経験・実績を持つ約100名の専門医のサポートのもと展開する、働く女性の健康課題に着目したサービスとなっている。

同社が考える「健康」とは、「自分らしくあることを阻害する、こころとからだの不調がないこと」という。あらゆるネットワークを活用し、企業コミュニティを通じて人々の健康意識を高めており、厚生労働省「国民医療費の概況」にある医科診療費の傷病別内訳では、生活習慣病、老化に伴う疾患、精神疾患、その他(腎不全など)の順となっており、リンケージではこれらの領域のほとんどをカバーしているとした。職域向けオンライン診療など健康支援プログラムを提供するリンケージが約5.5億円のシリーズA調達、上場準備室も設置

自動インシデント対応プラットフォームを構築するShorelineがシリーズBで約43億円を調達

Shorelineの創業者でCEOのAnurag Gupta(アヌラグ・グプタ)氏は、同社を創業する前は8年間、AWSでインフラストラクチャに携わっていた。AWSのシステムがスローダウンしたり停止したりするインシデントに対応するシステムの責任者を務めていた。

これは大仕事で、同氏はインシデント対応を自動化する社内システムの構築に関わっていたが、マーケットプレイスには他社がそうした自動化に役立つツールが不足していることに気づいた。ソフトウェアのテストと導入、本番システムの監視、インシデントが起きた時の対応をするツールはあるが、同氏は欠けているものがあると見ていた。

同氏は、インシデントのチケットが発行され必要な人が対応を始めると、何がおかしいかをつきとめて修復するのは通常は手作業が極めて多いプロセスになると指摘する。システムがダウンすると1分ごとにコストがかさむ。ソフトウェアとシステムが複雑になり、こうした問題に対処する責任者であるSRE(サイト信頼性エンジニア、Site Reliability Engineer)が根本原因をつきとめて修復するのはさらに難しくなっている。

グプタ氏は「ほぼすべてのケースで手作業のプロセスとなり、人間は消耗してミスをします。たくさんの人手に頼る作業です。そして人間は機械よりも長い時間を要するのでダウンタイムが発生するのです」と説明する。

同社はジュピタースタイルのノートブックを作ってシステムによくある問題への対応を記録し、自動化する。問題を解決するためのステップ・バイ・ステップの手順を示し、可能な場合には対応を自動化するのだ。狙いは問題が起きた時に対応する負荷を軽減することだ。

グプタ氏は、システムの問題が発生した時にそれを解決する必要性が高まりSREの役割は急速に大きくなっているが、問題に体当たりしていくのは持続可能なアプローチではないと語る。

Shorelineに投資しているInsight PartnersのマネージングパートナーであるGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏は、機械と人との協力で問題の解決を早めるのだという。

マシュー氏はShorelineに投資した理由を「ハイレベルの役割を人間が果たし、ローレベルの役割を機械学習のアルゴリズムで自動化できれば、この分野においてはたいへん魅力的なチャンスです」と説明する。

Shorelineが創業したのは2019年だが、このような自動化ソリューションを構築するのに2年半かかり、シリーズAでは2200万ドル(約27億600万円)を調達した。このプロダクトを発売してからすでに約半年が経ち、従業員はすでに50人近くいる。

グプタ氏は創業に関し、自社が事業をしている世界を反映した従業員を有することが自分にとって重要なゴールであると語る。

同氏は「当社の従業員はテックの世界ではなく社会全般と同じようでなくてはならないと強く確信しています。テックの世界には組織的なバイアスがすでにあるからです」と語る。つまり、従業員の比率を実際の人口比に一致させようとしている。

「私が変わることなく信じているのは、雇用のプロセスに多様性を取り入れれば、結果として企業は多様になるということです」と同氏はいう。

米国時間3月28日、ShorelineはInsight Partnersが主導し、Dawn Capitalが参加した3500万ドル(約43億500万円)のシリーズBを発表した。Shorelineによれば、今回のラウンドでこれまでの調達金額の合計は5700万ドル(約70億1100万円)となった。

画像クレジット:Dansin / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

スマート配電盤で一般家庭の電化を進めるSpanが約110億円調達

あの地味なブレーカーパネルは、特に愛されることもなくすでにまるまる1世紀存在しているが、そこに登場したのがSpanだ。同社は現代的でスマート、そして魅力的な配電盤を作っており、その進化を継続するために、このほど9000万ドル(約110億円)を調達した。同社は電化とマイクログリッドの均衡化という問題の解決を目指しており、それにより未来のスマートホームが自らの電力消費の状況をもっとよく把握できるようにする。

Spanは2年前に1000万ドル(約12億円)を調達し、Alexaを統合して、さらに2022年初めにはスマートパネルと相性がいいよりスマートなEV充電器をローンチした。

SpanのCEOで創業者のArch Rao(アーチ・ラオ)氏は、2022年初めのインタビューで次のように語っている。「初期のTeslaに入って、後にTesla Energyになるもの設計に最初から関われたことは、とてもラッキーでした。私は、Energy Groupの初期のリーダーの1人でした。みんながよく知っているのはPowerwallバッテリーだと思いますが、私はそのプロダクトチームのリーダーで、一般住宅用製品や産業用製品、それに公益企業が使うような規模の製品をハードとソフトの両面で設計、開発そしてデプロイしていました。また、ソーラールーフや太陽光発電の導入など、ガラス屋根の製品も担当しました」。

「家庭用バッテリーやソーラーシステム、電気自動車の充電システムを世界中で展開する中、私が直接目にしたことの1つに、インフラと結びついた根本的な問題があることです。特に、電化が私たちの目指す『脱化石燃料』の重要な一部であると考えるのであれば、インフラは分散型クリーンエネルギー導入の足かせになってしまいます。化石燃料を使用した家電製品を優れた電気製品に置き換えるには、家庭用電気パネルから始まるインフラの大規模なアップグレードが必要になるのです」。

「私たちは家庭の電化を実現するために、拡張性のある方法の中核となる配電盤を再発明することから始めました。しかし消費者はそれ以上のものを求めています。新しい資本を投入して、家庭の脱炭素化を実現する製品を拡大し、Spanが独自に提供する家庭のエネルギー管理という比類のないアプローチを開発し続けられることに興奮しています。」とラオ氏は語る。

SpanのシリーズBをリードしたのはFifth Wall Climate TechとWellington Managementだ。その他の投資家はAngeleno Group、FootPrint Coalition、Obsidian Investment Partners、そしてA/O PropTechとなる。同社の説明によると、資金は主にSpan Homeシリーズのエネルギー製品およびソリューションの開発の継続により、同社の商業的成功を引っ張り家庭の新しい電化を加速していくことに向けられる。

画像クレジット:Span

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

HarvestXが1.5億円調達、植物工場での実証実験に向け開発加速―実証結果踏まえた製品バージョンのベータリリースも計画

HarvestXが1.5億円調達、植物工場での実証実験に向け開発加速―実証結果踏まえた製品バージョンのベータリリースも計画

農業用ロボットを手がけるHarvestXは3月30日、総額1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ANRI 4号投資事業有限責任組合(ANRI)、オープンイノベーション推進 1号投資事業有限責任組合(東京大学協創プラットフォーム。東大IPC)、DEEPCORE TOKYO 2号投資事業有限責任組合(ディープコア)。

レタスなどの葉物類の植物工場が展開を広げる一方、イチゴのような果実類の生産にはハチ・ハエを媒介とした虫媒受粉または人の手による授粉が必要で、収量の不安定さ、高コスト、ハチの短いサイクルでの使い捨てが課題となっているという。そこでHarvestXは、ハチに代わるロボットを活用した授粉技術の開発に取り組み、世界で初めてロボットによるイチゴの授粉の実証に成功した。社内の研究施設「HarvestX Lab」内で実証試験機「XV-1」「XV-2」による授粉の実証実験を実施しており、ハチや人間を超える精度での授粉を行えるそうだ。

また現在は、HarvestX Labに植物工場と同等の栽培設備を導入し、植物工場事業会社での授粉ロボットおよびソフトウェアシステムの実証実験に向けたプロトタイプの開発を進めているという。

調達した資金により、パートナーである植物工場事業会社との実証実験に向けたハードウェア・ソフトウェアの開発、および実際の植物工場での実証実験を通じてオペレーションの検証やさらなる授粉精度の向上を進める。さらに、その実証実験の結果を踏まえた製品バージョンのベータリリースを計画している。

さらに、日本初の取り組みとして徳山工業高等専門学校提携。高専内に事業所を開設し、授粉・収穫用ロボットの共同研究を行う。

「テスターのためのAWS」構築を目指すLambdaTestが55.2億円を調達

ウェブ開発者は何百ものタスクを実行しなければならないが、それらを自分のマシンで実行することができる。しかし、開発会社が(大規模に)同様の活動を行う場合には、ローカルにタスクを実行するために必要なコンピューティングパワーをいつでも自由に確保できるとは限らないし、日頃から持っていたいとも思わないものだ。

「開発者やその会社が、普通なら4〜5時間かかる作業を10分に短縮できるようなプラットフォームを、構築できるでしょうか?」とAsad Khan(アサド・カーン)氏はいう。

カーン氏は10年かけてこの問題を解決しようと努力を重ねてきた。彼は、最新のベンチャー企業であるLambaTest(ラムダテスト)で、そのソリューションを製品化した。

創業4年のスタートアップである同社のクラウドベースのサービスを利用することで、ユーザーは自分のウェブサイトやアプリを、ブラウザー、OS、デバイス、そしてそれらの異なるバリエーションの3000種類以上の組み合わせでテストすることができる。

彼はTechCrunchのインタビューに対して「テスターのためのAWSを構築しました」と語っている。「私たちは単なるテストツール企業ではなく、開発者があらゆる言語やフレームワークで書かれたあらゆる種類のテストを実行できるようなエコシステムを実現する会社です。このプラットフォームは、いつでもどこからでも、どんな規模のタスクでも実行できるようにします」。

そして、急成長するスタートアップにはありがちだが、LambdaTestの有効性は、投資家の関心を集めている。

インド時間3月29日には、Premji Investが主導するシリーズC資金調達ラウンドで4500万ドル(約55億2000万円)を調達したことを発表した。既存の投資家であるSequoia Capital India、Telstra Ventures、Blume Ventures、Leo Capitalに加え、ソフトウェアテスト会社Tricentis(トリセンティス)の元最高経営責任者Sandeep Johri(サンディープ・ジョリ)氏も参加し、スタートアップのこれまでの資金調達額は7000万ドル(約85億7000万円)に達した。

LambdaTestによれば、現在130カ国で500社以上の企業、100万人の開発者とテスターが同社のプラットフォームを利用しているという。またこれを使った同社の顧客は1億回以上のテストを実施し、市場投入までの時間を95%短縮し、リリースの生産性を62%向上させ、ローンチ前に67%の問題を特定することに成功したという。LambdaTestのホームページには、Microsoft(マイクロソフト)、Apple(アップル)、Xerox(ゼロックス)、Postman(ポストマン)、Yale(イエール)、Directi(ディレクティ)などの顧客が名を連ねている。

カーン氏は、このパンデミックも、多くの潜在顧客をLambdaTestに引きつける上で重要な役割を果たしたのだという。スタートアップは2021年、ビジネスを300%成長させたという。

カーン氏はいう「私たちは、テストのオーケストレーションと実行に関して、開発者とQAチームの仕事をより簡単にすることに強い重点を置いています。ほんの数カ月前、私たちは、企業がエンド・ツー・エンドの自動テストを可能な限り最速で実行できるよう支援する、次世代スマートテストオーケストレーションプラットフォームのHyperExecute(ハイパーエクスキュート)をリリースしました。私たちは間もなく、テスト情報プラットフォームのTest-at-Scale(TAS)をローンチする予定です。すでにベータ版として運用中です。また、当社の中核となる実行プラットフォームの能力も継続的に強化しています」。

LambdaTestの提供するサービスの一部は、評価額40億ドル(約4901億6000万円)のスタートアップBrowserStack(ブラウザースタック)と競合している。競合の名前は挙げなかったが、カーン氏によれば、LambdaTestの製品ははるかに包括的であり、スケーリングに対するアプローチもユニークだという(一方、BrowserStack側は確かにLambdaTestをライバルと見ているようだ。例えばLambdaTestをGoogleで検索すると、先週はBrowserStackがスポンサーリンクとしてトップに表示された)。

同社は今後、提供するサービスをさらに拡大し、従業員数も増やしていく予定だ。現在、インドと米国を中心に約250人の従業員が働いている。今回の資金調達で、カーン氏はベイエリアでのチーム拡大を積極的に進めるという。

Premji InvestのパートナーであるAtul Gupta(アトゥルグプタ)氏は声明の中で「LambdaTestは、コスト効率と拡張性に優れたソリューションを提供することで、企業がテスト実行をオーケストレーションできるよう支援するとともに、既存のインフラに対する追加を行うことなくコントロール性を向上させます。彼らは、テスト実行のスピード、信頼性、パフォーマンスの境界を押し広げているのです。テスト実行のあり方を変えようとする、この超野心的なLambdaTestチームと協力できることをうれしく思います」と語っている。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:sako)

個人向け自動資産運用サービス「SUSTEN」のsustenキャピタル・マネジメントが15億円調達、利便性向上や新サービス開発

個人向け資産運用サービス「SUSTEN」を展開するsustenキャピタル・マネジメント(サステン・キャピタル・マネジメント)は3月28日、第三者割当増資による総額15億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、マネーフォワード、NOWが運用するファンド、東京理科大学ベンチャーファンド。調達した資金は、既存サービスの利便性向上をはかる改良、個人投資家のニーズに応える新サービス開発、本格的なマーケティング活動にあてる。

SUSTENは、利用者がアプリ上で質問に答えるだけで、利用者ごとに適した運用ポートフォリオを診断し運用まで自動で行うという資産運用サービス。投資の知識がない人でも、金融工学理論と機械学習を融合させた分散投資を利用できるとしている。世界の株式に投資する従来型の運用だけでなく、株式以外の収益源を活用する絶対収益追求型戦略も用意しているそうだ。

また同社は、完全成果報酬型の費用体系を導入。資産が増える時のみ費用が発生し、相場が軟調な間は、同社に対する費用は発生しない。顧客の投資資産を保全する信託銀行に支払う受託者報酬、投資対象上場投資信託に支払う経費など、投資金額に対して年率0.022~0.099%(税込)程度の実質的な費用は発生する。

衛星データ解析によるソリューション提供や小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspectiveが119億円のシリーズB調達

衛星データ解析によるソリューション提供や小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspectiveが119億円のシリーズB調達

2022年3月1日に2機目の小型SAR衛星打上げ成功

衛星データ解析によるソリューション提供および小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspective(シンスペクティブ)は3月29日、シリーズBラウンドとして、第三者割当増資および融資による119億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、損害保険ジャパン、野村スパークス・インベストメント、シンガポールPavilion Capital Pte. Ltd.など。累計調達額は228億円となった。

調達した資金は、主に小型SAR衛星の開発・製造・打上・運用、量産施設の準備、衛星データソリューションの開発とグローバル展開などにあて、さらなる事業拡大を目指す。

2018年2月設立のSynspectiveは、小型SAR衛星の開発・運用と衛星による観測データを活用したソリューションサービスの提供をワンストップで行う企業。2026年前後に、小型SAR衛星30機からなるコンステレーションを構築することで、広範囲、高頻度の地上観測を可能にするシステムの構築・運用を目指す。

ハイパースペクトル衛星画像提供するPixxel、衛星コンステレーションの打ち上げに向けて約31億円調達

軌道上から撮影する人工衛星画像は、新しい宇宙産業で注目されている分野の1つだが、それには(人間の)目に見えるもの以上のものがある。Pixxel(ピクセル)は、地球のハイパースペクトル画像を提供する衛星コンステレーションの打ち上げに向け2500万ドル(約31億円)を調達した。ハイパースペクトル画像は、通常のカメラでは見えないあらゆる種の細部を明らかにすることができる、より広いスライスの電磁スペクトルだ。

基本的に、地球を数キロ上空から見下ろすことができるということは、あらゆる可能性を提供する。しかし、研究室では基本的なデジタルカメラ以上のものが必要なのと同じように、軌道上の画像もまた基本的なもの以上が必要だ。

研究室でよく見かける別のツールが分光器だ。これは、物体や物質に放射線を当て、どの周波数がどれだけ吸収されたか、あるいは反射されたかを記録するものだ。すべての物には異なるスペクトルの特徴があり、例えば同じ鉱物の2つのタイプなど、密接に関連した物質であっても互いに区別することができる。

ハイパースペクトル画像は、これと同様の処理をカメラで行ったもので、宇宙からこれを行うことで、1枚の画像から地域全体のスペクトルの特徴を見つけることができる。米航空宇宙局(NASA)などの機関は、惑星観測のためにハイパースペクトルを使用しているが、Pixxelはこれまでの研究を基に、ハイパースペクトルをオンデマンドで提供する人工衛星コンステレーションを打ち上げようとしている。

Pixxelの衛星のCGレンダリング画像

創業者でCEOのAwais Ahmed(アウェイス・アーメッド)氏は、他の新興の宇宙産業と同様、小型化の技術力と頻繁かつ安価な打ち上げの組み合わせが、このビジネスを可能にしたと語る。アーメッド氏は、NASAのおかげであることを率直に認めたが、Pixxelは税金で開発された技術を単に再利用しているわけではない。EO-1ミッションとHyperionハイパースペクトルデータセットを初期の市場調査だと考えてもいい。

「Hyperionの解像度は約30メートル(1ピクセルあたり)ほどで、科学的な目的には最適です。しかし、5メートル程度まで下げないと、私たちがやっていることには意味がありません」とアーメッド氏は説明した。

Pixxelの衛星コンステレーションは、2022年後半の打ち上げ時には6機と決して多くはないが、約48時間ごとに地球の大部分で5メートルの解像度を提供できるようになる。すでに試験衛星がサンプル画像を送っており、来月には第2世代の衛星が打ち上げられる予定だ。量産型はより大きく、撮影画像の質と量を向上させるべくより多くの機器が内蔵されている。

アーメッド氏によると、テスト衛星から送られてくる画像だけでなく、最終的に提供されるデータに対して、すでに数十の顧客を抱えているとのことだ。これらの企業は、農業、鉱業、石油・ガス産業など、広大な土地の定期的な調査が事業にとって重要である場合が多い。

5メートルの解像度は、小さなスケールでは失われたり平均化されたりしてしまうような地形を捉えるのに有効だ。大陸をマッピングするのであれば、30メートルの解像度はやりすぎだが、湖の縁に有害な化学物質がないか、田畑が乾燥状態かどうかをチェックするのであれば、できる限り正確に把握したいと考えるだろう。

画像クレジット:Pixxel

ハイパースペクトル画像では、可視光線がメタンなどの排出物を通過したり、まったく異なる物質が同じような色に見えることから、より多くのことを明らかにすることができる。湖の端が黒く変色している場合、それは藻類か水面下の棚かそれとも工業製品の流出か、「青」と「紺」だけだと判断が難しい。しかし、ハイパースペクトル画像は、はるかに多くのスペクトルをカバーしていて、人間には直感的に理解しがたい豊かな画像を生成する。鳥や蜂が紫外線を見ることで世界の見え方が変わるように、1900ナノメートルの波長を見ることができれば、世界がどのように見えるのか、我々には想像するのは難しい。

このスケールを示す簡単な例として、NASAが提供するこのチャートは、3つの鉱物の波長0〜3000ナノメートルのスペクトルの特徴を示している。

Robert Simmon / NASA

見てわかるとおり、テーブルはたくさんのことを意味している。

「何百もの色を使って遊ぶことができるのです。特定の栄養素を含む土壌で、それが飽和状態なのか、そうでないのか見るのに役立ちます。ハイパースペクトル画像では、こうしたことが滑らかなスペクトルのわずかな変化として表れます。しかし、RGBでは目に見えません」とアーメッド氏は話した。

Pixxelのセンサーは、通常のカメラが赤、青、緑の3色しかとらえられないスペクトルを、数百の「スライス」として収集する。衛星はさらに有用なスライスをいくつか持っており、マルチスペクトル画像と呼ばれるものを作成している。しかし、何十、何百ものスライスを組み合わせると、より複雑で特性を伝える画像を得ることができる。上のチャートでは、スライスの数が多いほど、カーブの精度が高くなり、より正確である可能性が高いことを意味する。

軌道からのハイパースペクトル画像を追求している企業は他にもあるが、現在データを送信している稼働中の衛星を打ち上げた企業はなく、Pixxelが行っている5メートルの解像度とスペクトルスライスの範囲を達成した企業もない。そのため、この分野ではいずれ競争が起こるだろうが、Pixxelのコンステレーションは先陣を切ることになりそうだ。

「当社のデータの質は最高です。しかも、より安価な方法でそれを実現しています」とアーメッド氏は話す。「最初のコンステレーションを通じて資金を完全に調達しています」。

2500万ドルのシリーズAはRadical Venturesがリードし、Jordan Noone、Seraphim Space Investment Trust Plc、Lightspeed Partners、Blume Ventures、Sparta LLCが参加した。

調達した資金はもちろん衛星の製作と打ち上げに使われるが、顧客がゼロからハイパースペクトル分析スタックを構築する必要がないよう、Pixxelはソフトウェアプラットフォームにも取り組んでいる。今あるものを再利用するだけではダメだ。このようなデータは文字通りこれまでなかったものだ。そこでPixxelは「モデルや分析を組み込んだ汎用的なプラットフォーム」を構築しているのだと、アーメッド氏は語った。しかし、まだ公にできる段階ではない。

宇宙関連に付き物の不確実性にもよるが、Pixxelは2023年の第1四半期か第2四半期の運用開始が見込まれている。

画像クレジット:Pixxel

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドローンを使って森林をモニタリングするTreeswiftが約5.9億円のシードラウンド調達

過去10年間で、ドローンは森林モニタリングの重要なツールになりつつある。自然のバランスを大きく崩すことなく、多くのデータを一度に収集できる、迅速で効果的な方法だからだ。2020年にペンシルバニア大学のGRASP(General Robotics, Automation, Sensing and Perception)研究所からスピンオフして設立されたTreeswift(ツリースイフト)は、その可能性を推進するために活動してきた。

共同創業者のSteven Chen(スティーブン・チェン)氏、Elizabeth Hunter(エリザベス・ハンター)氏、Michael Shomin(マイケル・ショミン)氏、Vaibhav Arcot(ヴァイバヴ・アーコット)氏は、ドローン群と林業に関する専門知識を結集し、フライスルーで広範囲のデータを収集できるシステムを構築した。搭載カメラやセンサーで収集された情報は、森林減少のモニタリング、二酸化炭素回収の測定、森林火災の防止など、さまざまな用途に活用することが可能だ。

「私たちのミッションは、自然界のためのデータエコシステムを構築することであり、森林の林冠の下から重要なデータを取得することでそれを達成します」と、このスタートアップのCEOであるチェン氏はリリースで述べている。「より透明性が高く検証可能、かつ正確な地球の姿を底辺から観るのにTreeswiftの技術が役立つと期待しています」。

今週、同社は、それにふさわしく、シードラウンドを発表した。Pathbreaker Venturesが主導したこの480万ドル(約5億9400万円)の資金調達で、累計調達額は640万ドル(約7億9200万円)になった。

画像クレジット:Treeswift

「Treeswiftのソリューションは、これまで不可能だった方法で自然界を測定することができます」とPathbreaker VenturesのRyan Gembala(ライアン・ジェンバラ)氏はいう。「商業林業や二酸化炭素回収などに大きな影響を与えるでしょう。彼らの技術導入から得られたデータは、今後数十年にわたり自然ベースのソリューションとマネジメントにおける最大のチャンスの基盤となると考えています」。

フィラデルフィアを拠点とする同スタートアップの主要製品は「SwiftCruise」で、樹木単位でメトリックを収集することができるハードウェアとソフトウェアの組み合わせのソリューションである。この情報は、搭載された機械学習(ML)アルゴリズムによって処理され、クラウドベースのデータダッシュボードに収集される。これは、従来、衛星や飛行機の画像で収集されていたものよりも、より詳細な画像である。

画像クレジット:Treeswift

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

衛星コンステレーション構築を目指すアークエッジ・スペースがシリーズA追加クローズとして約6.3億円調達

衛星コンステレーション構築を目指すアークエッジ・スペースがシリーズA追加クローズとして約6.3億円調達超小型衛星の開発・運用などを手がけるアークエッジ・スペースは3月29日、シリーズA追加クローズとして6億3500万円を調達したと発表した。引受先は、新規株主のスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー、シンガポールのPavilion Capital、既存株主のインキュベイトファンド、三井住友海上キャピタル。

同社は、シリーズAラウンドとして、リード・インベスターのインキュベイトファンド、またリアルテックファンド、三井住友海上キャピタルを引受先として、約17億円の調達を2022年1月に実施している。シリーズAラウンドにおける調達額は累計23億円となった。シードラウンドからこれまでに調達した資金調達は累計総額で約27億円となっている。

今回の調達した資金は、採用などにより衛星開発体制の構築・強化を加速させ、すでに着手しているSDGs対応向けのIoT通信、地球観測、海洋VDES衛星などの6U衛星コンステレーションの構築を確実に実現する。また2025年をめどに、月面活動にむけた衛星コンステレーション構築に必要となる超小型衛星の開発・実証に取り組む。衛星コンステレーション構築を目指すアークエッジ・スペースがシリーズA追加クローズとして約6.3億円調達