IoT在庫・発注管理を提供するスマートショッピングが資金調達、累計調達額16億円に

IoTを使った在庫・発注管理のためのDXソリューション「スマートマットクラウド」および「スマートマットライト」を展開するスマートショッピングは11月26日、第三者割当増資による資金調達を行い累計調達額が16億円に到達したと発表した。引受先はエムスリー、スズケン。今回調達した資金は両サービスの利用者拡大に向けた施策にあてる。

スマートマットクラウドは、製造業や医療機関などのB2B向けに展開している、あらゆる在庫の管理・棚卸しや発注を自動化するSaaS。今回の資金調達により、サービス・製造業はもとより、医療機関など現場の在庫・発注管理ニーズにより応えられるよう、プロダクトのソフト・ハード両面を進化させる。また、様々な現場へのスムーズな導入を支援するカスタマーサクセスなどビジネス面の体制を強化する予定。

もう一方のスマートマットライトは、B2C向けのソリューション。面倒な日用品の買い物を自動化しゼロクリックショッピングを実現している。こちらでは、ユーザーとの共創によってさらにユーザビリティの高いプロダクト・サービスへの進化を加速させる。またそれに向けて、特にエンジニアなどキーとなるポジションの人材獲得を強化する。

スマートショッピングは「日々のモノの流れを超スマートに」をビジョンとして掲げ、2014年11月に設立。IoT重量計「スマートマット」を活用した在庫管理と発注の自動化ソリューションを開発し、これを基にB2B向けスマートマットクラウド、B2C向けスマートマットライトを提供している。

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなど合成データを生み出すシンセティックAIのデータグリッドが3億円調達

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなど合成データを生み出すシンセティックAIのデータグリッドが3億円調達

デジタルヒューマンやAIトレーニングデータなどの合成データを生み出すシンセティックAIの社会実装に取り組むデータグリッドは11月29日、第三者割当増資および融資による3億円の資金調達を実施したことを発表。引受先は、先端技術共創機構、アエリア、Deep30、京信ソーシャルキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、池田泉州キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、京銀リース・キャピタル、中信ベンチャーキャピタル、京都エンジェルファンド。累計資金調達額は約6億円となった。

データグリッドは「すべてのデータに、命を与える」をミッションに掲げ、2017年の創業以来、シンセティックAIの技術開発によって製造・通信・教育・アパレル・エンターテインメントなど多岐に渡る分野でプロジェクトを実施。同社開発のバーチャル試着技術を活かしたAIプロダクト「kitemiru」の提供や、シンセティックAIで自動生成したバーチャルアンバサダーの動画も公開している。

シンセティックデータ領域の技術成熟や、技術開発フェーズから実用化フェーズへの移行を背景に、今後も需要の拡大が見込まれるデジタルデータやコンテンツを生み出すAIソリューションを提供することで、データグリッドは人々がよりクリエイティビティを発揮できる社会を目指す。今回調達した資金は技術開発と新規事業開発の強化に充当し、シンセティックAIの社会実装をより加速させたいという。

宝くじをユーザーの代わりにゲットしてくれるアプリ「Jackpocket」、購入者層も変化

これまで実際にその場へ出向いて行わなければならなかったことを、バーチャルでできるようにしたアプリは過去20カ月間のパンデミック渦で飛躍的な伸びを見せているが、そのうちの1つが米国時間11月9日、好調な成長を背景に大きな資金調達を発表した。Jackpocket(ジャックポケット)は250万人のアクティブユーザーを擁するアプリで、ユーザーが同アプリを通して米国10州で宝くじのチケットを購入できるというものだ。その同社が今回シリーズDラウンドで1億2000万ドル(約136億9000万円)を調達した。CEO兼創業者のPeter Sullivan(ピーター・サリバン)氏は、宝くじ販売というコアビジネスからより幅広いモバイルゲームへと事業を拡大し、他社との提携も見据えて米国内外のより多くの市場に事業を展開していく計画であると話している。

「第1四半期末までに少なくとも5つの州に新しく進出する予定です」とサリバン氏は意気込んでおり、テクノロジーへ投資してeコマース、サブスクリプション、モバイルウォレットサービスの世界からの「ベストプラクティス」を導入しつつ、他の形態のゲームも検討していると付け加えている。

「多くの人はご存じないでしょうが、宝くじの何パーセントかは慈善活動に使われています」と同氏。Jackpocketは新たにラッフル、懸賞、ビンゴ、ソーシャルカジノゲームなどの分野を開拓しようとしている。「より楽しいゲームプレイと勝利のチャンスを提供し、より多くをお返しできる方法を考えています」。

Jackpocket最新のピッチデッキによると、同社の拡大戦略は以下の通りである。

今回の投資はLeft Lane Capital(レフトレーンキャピタル)が主導しており、コメディアンのKevin Hart(ケヴィン・ハート)氏、Whitney Cummings(ウィットニー・カミングス)氏、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Manny Machado(マニー・マチャド)氏などが参加している他、Greenspring Associates(グリーンスプリング・アソシエイツ)、The Raine Group(ザ・レインル・グループ)、Anchor Capital(アンカーキャピタル)、Gaingels(ゲインジェルズ)、Conductive Ventures(コンダクティブ・ベンチャーズ)、Blue Run Ventures(ブルーラン・ベンチャーズ)などの以前からの支援者、そして新たにSanta Barbara Venture Partners(サンタバーバラ・ベンチャーパートナーズ)が出資している(Jackpocketはニューヨークで設立されているが、カリフォルニア州サンタバーバラからも事業を展開しており、CEO兼創業者のピーター・サリバン氏はここを拠点にしている。この記事のためにインタビューをさせてもらった際も同氏はサンタバーバラにいた)。

サリバン氏は今回のラウンドでの評価額を公表していないが、これにより同社の調達額は2億ドル(約228億1000万円)弱となった。

もう少し背景を説明しよう。PitchBook(ピッチブック)のデータによるとJackpocketが最後に資金調達を行ったのは2021年2月の5000万ドル(約 57億円)のシリーズCラウンドで、その時の評価額は1億6000万ドル(約182億6000万円)(ポストマネー)だった。しかしそれ以降も同社は成長を続けており、現在のアクティブユーザー数は250万人、過去8カ月で300%の増加となっている。

サリバン氏によるとJackpocketのアイデアは「ニューヨーク州の宝くじをいつも買っていたがパソコンには弱い、ブルックリン生まれのブルーカラー階級」というサリバン氏の父親から一部着想を得ているという。

時は2012年、テック界における当時の大きなテーマの1つは、それまでオフラインであったサービスをデジタル化するという「アプリの台頭」だった。もう1つの大きなテーマは、モバイルゲームへの関心の高まりだ。サリバン氏はこれらのトレンドを考慮して、宝くじを注文するアプリを作るチャンスがあると考えたのだ。従来はコンビニに行かなければできなかったことが、携帯でできるようになればと。

「私たちは自身を宝くじ版のUber(ウーバー)やInstacart(インスタカート)のような存在だと位置づけています」と同氏は話す。

Jackpocketは宝くじ売り場であると同時に、宝くじ体験全体を仮想化するものだと考えて良い。サリバン氏が説明してくれたように、ユーザーはモバイルアプリを使って宝くじを注文する。バックエンドではJackpocketが独自に開発したソフトウェアを使って、プレイヤーに代わって実際のチケット購入を行い、プレイヤーが注文した各チケットの「スキャン」を行っている。プレイヤーはそのチケットを見ることができ、チケットにはJackpocketが透かしを入れているため真正性も維持することができる。

他のリアルマネーオンラインゲームと同様に、Jackpocketは年齢や地理的位置(Jackpocketが運営されている州に物理的に位置していないと注文できない)など、さまざまな規制に対応するためにあらゆる対策を講じている。GPS技術を使ってユーザーの位置を特定するだけでなく、VPNを使用していないかどうか、あるいは他のアプリケーションを使ってコンピュータに接続していないかなどもチェックしているようだ。また、プレイヤーは本人確認と年齢確認のために身分証明書をアップロードする必要がある。

また、同社はギャンブル界でより「責任ある」プレイヤーになることを目指しており、ユーザーの支出を監視して1日あたり100ドル(約11400 円)を上限として設定しているが、それ以下の価格に自身で制限することも可能である。

ビジネスモデルは、顧客から入金された金額に対して9%の手数料を取ることを基本としている。つまりアプリにお金を入れてチケットを購入すると9%の手数料がかかるわけだが、獲得したお金を使ってプレイする場合に手数料はかからない。また、お金を引き出す際の手数料がかかることもない。

かなり明確な市場機会があったにもかかわらず(当時の最大の競争相手は、細分化されたコンビニ市場のみ)、当初は資金調達が非常に困難だったという。

サリバン氏は初期の頃にサンドヒル・ロードで各投資家を個別にまわった経験を振り返る。「当時はリアルマネーゲーミングを行うことはタブーとされていました」。2021年のシリーズCまでに調達した資金が約2500万ドル(約28億6000万円)と比較的少なかった理由の1つがこれである。「9年前投資家は見向きもしてくれませんでしたが、私は宝くじが鍵を握ると信じていました。宝くじは最大のリアルマネーゲームにして最大のネットワークであり、他のフォーマットとのクロスセルにも適しているのです」。

FanDuel(ファンデュエル)などのリアルマネーゲームの成功を受けて投資の流れが本格的に変わり始めたことで、宝くじ、そしてJackpocketにも変化が訪れた。業界団体であるNorth American State and Provincial Lotteriesが発表したところによると、消費者が宝くじに費やす年間の総額は856億ドル(約9兆7805億円)と推定されるという。これは、印刷およびデジタル書籍(18億ドル、約2057億円)、映画チケット(119億ドル、約1兆3597億円)、ビデオゲーム(315億ドル、約3兆5996億円)、コンサートチケット(104億ドル、約1兆1884億円)、スポーツイベント(177億ドル、約2兆226億円)など、他のレジャーカテゴリー消費額の合計を上回る額である。

「父が宝くじを買っているのを見たことはありますが、それがどのくらいの規模なのかは知りませんでした」とサリバン氏はいう。また、Jackpocketが把握している宝くじ購入者の層は変化しており、購入者の約70%が45歳以下であることにも注目したい。サリバン氏は「テクノロジーに精通した裕福な購入者が増えています」と話しており、これはアプリベースの体験にも最適な条件である。

過去2年間の特殊な状況も、Jackpocketのような企業に大きな影響を与えている。以前は宝くじなどを買うために街角の店を訪れていた消費者が、新型コロナウイルスの蔓延を避けるためにソーシャルディスタンスを保って自宅で過ごす時間を増やした他、営業を続けていた小規模店舗の多くも配送サービスに切り替えるなどしたため、チケットを買いに行くことが容易ではなくなったのである。

サリバン氏がいうような他のフォーマットの「クロスセル」は、今後重要な分野になるだろう。他のタイプの宝くじ体験を販売することだけでなく、例えばインスタント食料品配送のスタートアップなど、これまで宝くじの小売業の糧となってきたコンビニのデジタル拡張である企業や他のゲーム会社と提携する可能性もあるだろう。その可能性こそが、まさに今多くの資金を集めている理由の1つなのである。

Left Lane Capitalの創設者兼マネージングパートナーであるHarley Mille(ハーレー・ミル)氏は声明の中で次のように述べている。「モバイルゲームと宝くじは今、エキサイティングで前例のないレベルの成長と拡大を経験しています。Jackpocketがこの進歩の先頭に立ち、この業界でかつてないペースで革新を続けていることが我々には明白です。我々はこの歴史的瞬間に参加する機会を得たことに胸を踊らせており、この状況下でJackpocketの役割をサポートできることを楽しみにしています」。

画像クレジット:adventtr / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

どんな企業でもAIが使えるようになるツールを提供するH2O.ai、約1810億ドルのプレマネー評価で約123億ドルを調達

H2O.aiは、オープンソースのフレームワークと独自のアプリケーションを開発し、あらゆる企業が人工知能ベースのサービスを簡単に構築、運用できるようにするスタートアップである。AIアプリケーションがより一般的になり、テック企業以外の企業もAIを取り入れたいと考えるようになっていることもあり、同社への関心が一気に高まっている。そんなH2O.aiが今回、同社の成長を促進するために1億ドル(約122億8000万円)を調達。今回の資金調達により同社の価値は、ポストマネーで17億ドル(約1918億4000万円)、プレマネーで16億ドル(約1805億5000万円)となった。

今回のラウンドはシリーズEで、戦略的支援者であるCommonwealth Bank of Australia(CBA、オーストラリア・コモンウェルス銀行)がリードしている。CBAは同スタートアップの顧客でもあるのだが、今回の支援を利用して両者のパートナーシップを深め、新しいサービスを構築していく予定だ。今回の資金調達には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Pivot Investment Partners(ピボット・インベストメント・パートナーズ)、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)、Celesta Capital(セレスタ・キャピタル)などが参加。今回の資金調達を活用し、H2O.ai全体の製品をさらに充実させ、同社のH2O AI Hybrid Cloudプラットフォームの拡大を続けるために人材を採用することなどが計画されている。

顧客が戦略的支援者としてラウンドをリードしたのは今回が初めてではなく、2019年にはGoldman Sachsが同社シリーズDの7250万ドル(約81億8000万円)をリードしている。PitchBook(ピッチブック)のデータからも見られるように、H2Oの評価額は4億ドル(約451億3000万円)と評価されていた前回のラウンドから飛躍的に上昇しており、同社の成長率、そして同社が行っていることに対する一般的な需要の大きさがうかがえる。マウンテンビューに本社を置くH2O.aiは、これまでに2億4650万ドル(約278億円)を調達している。

関連記事:AI利用のハードルを下げるH2O.aiがゴールドマンサックスのリードで約77億円調達

直近2回のラウンドがいずれも、H2O.aiの顧客でもある大手銀行が主導しているという事実は、同スタートアップにとってのチャンスがどこにあるかを物語っている。以前、Workday(ワークデイ)に買収されたPlatfora(プラットフォラ)の共同創業者で、同社創業者兼CEOのSri Ambati(スリ・アンバティ)氏がメールで筆者に話してくれたところによると、現在同社のレベニューの約40%は、非常に広範で包括的な金融サービスの世界からもたらされているという。

「リテールバンキング、クレジットカード、ペイメントなど、PayPal(ペイパル)からMasterCard(マスターカード)までのほとんどすべての決済システムがH2Oの顧客です」と同氏。株式の分野では、債券、資産運用、住宅ローン担保証券などのサービスを提供している企業の数々がH2Oの技術を利用しており、MarketAxess(マーケットアクセス)、Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)、BNY Mellon(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)も「強力な」顧客であると述べている。

また、他の業種からのビジネスも増えているという。Unilever(ユニリーバ)やReckitt(レキットベンキーザー)、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)などの消費財、UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)などの物流配送、Chipotle(チポトレ)などのフードサービス、そしてAT&T(エーティーアンドティー)は「当社の最大の顧客の1つです」と話している。

同社の成功には新型コロナウイルスの存在もひと役買っている。

パンデミックを振り返り「製造業はサプライチェーンの混乱とデマンドセンシングにより、急成長を遂げました。我々はH2O AI Healthを立ち上げ、病院やプロバイダー、Aetna(エテナ)のような支払会社、製薬会社の顧客を支援したのです」と話している。

注目すべき点は、自社のワークフローにAIを導入して、自社の顧客にサービスを提供したいと考えている他の技術系企業との連携をH2O.aiが強化しようとしていることである。「バーティカルクラウドとSaaS ISVが最近の私たちの勝因です」。

同社は設立当初からH2Oと呼ばれるオープンソースのサービスを提供しており、現在では2万社以上の企業に利用されている。人気の理由の1つはその柔軟性にある。H2O.aiによると、同社のオープンソースフレームワークは、既存のビッグデータインフラ、ベアメタル、または既存のHadoop、Spark、Kubernetesクラスタの上で動作し、HDFS、Spark、S3、Azure Data Lakeなどのデータソースから、インメモリの分散型キーバリューストアに直接データを取り込むことができるという。

「当社のオープンソースプラットフォームは、お客様が独自のAIセンターオブコンピタンスとセンターオブエクセレンスを構築するための自由と能力を提供します。AIを山に例えると、私たちはお客様が山を征服するのを支援するシェルパのTenzing Norgay(テンジン・ノルゲイ)氏ようなものです」とアンバティ氏は同社のオープンソースツールについて話している。

エンジニアはカスタマイズされたアプリケーションを構築するためにこのフレームワークを使用することができるが、一方でH2O.ai独自のツールは、次に何が起こるかについてより良い洞察を得るために大量のデータを取り込むことで利益を得ることができる不正検知、解約予測、異常検知、価格最適化、信用スコアリングなどの分野においてより完成度の高いアプリケーションを提供している。これらのアプリケーションは、人間のアナリストやデータサイエンティストの仕事を補完するものであり、また場合によっては人間が行う基本的な作業を代替することも可能だ。現在、トータルで約45のアプリケーションが存在する。

将来的にこのようなツールを増やしていき、各分野の「アプリストア」でそれぞれの需要に合わせた独自の事前構築済みツールを提供していく計画だとアンバティ氏は話している。

H2O.aiの成長の原動力となっているトレンドは数年前から勢いを増している。

人工知能にはエンタープライズITの世界から大きな期待が寄せられている。機械学習、自然言語処理、コンピュータビジョンなどのツールをうまく活用すれば、生産性を向上させることができるだけでなく、企業にとってまったく新しい分野を切り開くことも可能となるからだ。長期的には、企業の運用コストやその他のコストを何十億ドルも削減することができるだろう。

しかし大きな問題として、多くの場合、組織にはAIを使ったプロジェクトを構築および遂行するための社内チームが不足していることが挙げられる。ニーズやパラメータの進化に伴い、インフラもすべて更新する必要があるのである。今やテクノロジーは企業のすべてに関わっているが、すべての企業がテック企業というわけではない。

H2O.aiは市場におけるこのギャップを埋めることを目的とした最初の、あるいは唯一のスタートアップではないが、他のスタートアップよりもこのタスクにおいて幾分か先を行っている。

Microsoft(マイクロソフト)やNVIDIA(エヌビディア)などの大手テック企業からの多額の資金提供と賛同を得て設立されたのがカナダのElement.AIだ。同社はAIを民主化してAIツールを構築・運用するためのリソースが不足していても企業がAIから恩恵を受けることができるようにし、AIを推進する多くのテック企業にビジネスを奪われないようにするというアイデアに取り組んでいた。同社はインテグレーションに重点を置いていたものの(AccentureのAIサービスのように)、コンセプトからビジネスへと大きくジャンプすることができず、最終的には2020年にServiceNow(サービスナウ)に買収され、企業向けのツールを構築する同社の取り組みを補完することになったのである。

アンバティ氏は、H2O.aiのビジネスのうちサービス分野はわずか10%程度で、残りの90%は製品によるものだと話しており、あるスタートアップのアプローチが成功し、別のスタートアップが失敗する理由を説明してくれた。

「データサイエンスやAIのサービスに魅了されるのは当然です。私たちの製品のメーカー文化に忠実になり、なおかつお客様の深い共感を築いて耳を傾けることが成功には欠かせません。お客様は当社のメーカー文化を体験し、自らもメーカーになる。私たちは継続的にソフトウェアをより簡単にし、AI Cloudを通じてローコード、再利用可能なレシピ、自動化を民主化してデータパイプライン、AI AppStoresを構築し、お客様が顧客体験、ブランド、コミュニティの改善に利用できるサービスとしてAIを提供しています」。

「私たちは単なる木ではなく森を育てているということが他社との大きな違いです。H2O AI Cloud、ローコードアプリケーション開発であるH2O Wave、H2O AI AppStores、Marketplace、H2O-3 Open Source MLは、すでにAIアプリケーションとソフトウェアの中核をなしており、私たちは顧客とそのパートナーや開発者のエコシステムと提携しています」。

これは投資家にも好評なプレーであり、ビジネスでもある。

CBAのCEOであるMatt Comyn(マット・コミン)氏は、声明中で次のように述べている。「オーストラリア・コモンウェルス銀行は、毎日収集される数百万のデータポイントという大きな資産を保有しています。H2O.aiへの投資と戦略的パートナーシップは、人工知能における当行のリーダーシップを拡大し、最終的には当行が最先端のデジタル提案や再構築された商品およびサービスを顧客に提供する能力を高めてくれることでしょう」。CBAのチーフデータ&アナリティクスオフィサーであるAndrew McMullan(アンドリュー・マクマラン)博士が、H2O.aiの取締役会に参画する予定となっている。

画像クレジット:Mario Simoes / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Preferred Networks、自律移動ロボットの開発・販売を行うPreferred Roboticsを設立し20億円調達

Preferred Networks、自律移動ロボットの開発・販売を行うPreferred Roboticsを設立し20億円を調達

アマノのロボット床洗浄機「EGrobo」(イージーロボ)

深層学習とロボティクスのスタートアップPreferred Networks(プリファードネットワークス。PFN)は11月26日、自律移動ロボットの研究、開発、製造、販売を専門に行うPreferred Robotics(プリファードロボティクス。PFRobotics)の、会社分割による設立を発表した。またPFRoboticsは、普通株式を新規に発行し、そのすべてをアマノに割り当てることで20億円の資金調達を実施する。

「すべての人にロボットを」の実現を目指すPFNは、ロボット事業を迅速に展開できる最適な組織作り、適切なパートナーとの協業の推進、資金需要への柔軟な対応を加速する目的で、ロボット部門をPFRoboticsとして独立させた。

精密機器メーカーのアマノとのパートナーシップにより、アマノの顧客基盤、営業力、サポート力を活かして早期にロボット製品の販売体制を整えると同時に、業務用清掃ロボットを共同開発するという。アマノは、AIを活用したロバスト性の高いSLAM技術を採用し、自律移動性能を高めた次世代型業務用清掃ロボットをPFRoboticsと共同で開発し、両社で年間1000台以上の販売を狙うとしている。

2022年中には、PFRoboticsが単独で開発を進めている、さまざまな分野向けの自律移動ロボットも発売を開始するとのこと。

PFNは、今後もロボット関連基礎技術の開発と既存パートナーとの関連事業は継続し、「あらゆる場面でロボットが活躍する未来の実現を目指します」と話している。

要点をもとにAIが流れるようなEメール用文章を生成、受信トレイをゼロにするライティング生産性向上ツール「Flowrite」

TechCrunchがFlowrite(フローライト)に「強化されたGrammarly」ではないかと尋ねると、共同創業者でCEOのAaro Isosaari(アーロ・イソサーリ)氏は笑いながら、2020年夏の終わりから構築しているAIライティング生産性向上ツールに対しいつもそのようなコメントが返ってくると答えた。

このAIを搭載した相棒がいれば、電子メール作成のスピードアップによる「受信トレイゼロ」を目指すことも容易になりそうだ。少なくとも、毎日のように定型的なメールを大量に送信しているような人にとってはそうだろう。

Flowriteは具体的に何をするのか?Flowriteは、いくつかの指示(これを入力しなければなならない)を、本格的で読みやすい電子メールに変える。つまり、Grammarlyが文法や構文、スタイルなどの調整を提案して(既存の)文章を改善するのに役立つのに対し、Flowriteは電子メールやその他の専門的なメッセージングタイプの通信である限り、そもそも文章を書くのに役立つ。

電子メールは、FlowriteのAIモデルが訓練されたところだ、とイソサーリ氏はいう。そして、メール作成にどれだけの時間を費やす必要があるかという不満が、このスタートアップのインスピレーションとなった。そのため、GPT-3が使用されているコピーライティングなど、AIが生成する言葉の幅広い使用例ではなく、プロフェッショナルなコミュニケーションに焦点を当てている。

「以前の仕事では、電子メールやその他のメッセージングプラットフォームでさまざまな関係者とのコミュニケーションに毎日数時間を費やしていたので、これが自分の抱える問題であることはわかっていました。これは共同設立者である私たちだけの問題ではなく、何百万人もの人々が日々の仕事でより効果的かつ効率的なコミュニケーションをとることで恩恵を受けることができるのです」。

Flowriteの仕組みは次の通りだ。ユーザーが言いたいことの要点を箇条書きにした基本的な指示を出す。すると、AIを搭載したツールが残りの作業を行い、必要な情報を流れるように伝える完全な電子メールのテキストを生成してくれる。

丁寧な挨拶や署名を記入したり、求められているトーンや印象を伝えるための適切な表現を考えたりといった、文字数の多い作業は自動化されている。

電子メールテンプレート(電子メール生産性向上のための既存技術)と比較すると、AIを搭載したツールは文脈に適応し「固定されていない」ことが利点だとイソサーリ氏はいう。

当然のことだが、重要なポイントとして、ユーザーは送信する前にAIが提案した文章を確認し、編集や微調整を行うことができるので、人間はしっかりとエージェントとしてループに参加したままだ。

イソサーリ氏はセールスの電子メールを例に挙げる。この場合「すばらしい・電話で詳しい話をしよう・来週月曜日の午後」と指示を入力するだけで、必要な詳細情報に加えて「すべての挨拶」や「追加の形式」を含むFlowriteが生成したメールが送られてくる。

補足:FlowriteのTechCrunchへの最初の売り込みは電子メールによるものだったが、そのツールの使用は明らかに含まれていなかった。少なくとも、その電子メールには「この電子メールはFlowrittenされました」という開示はなかったが、後にイソサーリ氏から送られてきた(依頼されたPRを送るための)メールにはあった。これはおそらく、(AIを使って)スピードライティングしたい電子メールと、人間の頭脳をもっと使って作成したい(少なくとも自分で書いたように見せたい)電子メールの種類を示しているのではないだろうか。

イソサーリ氏はTechCrunchに次のように話した。「私たちは、あらゆる種類のプロフェッショナルが、日々のワークフローの一環として、より速く文章を書き、コミュニケーションを図ることができるよう、AIを搭載したライティングツールを構築しました。何百万人もの人々が、内外のさまざまな関係者との仕事上の電子メールやメッセージに毎日何時間も費やしていることを知っています。Flowriteは、人々がそれをより速く行えるようにサポートします」。

また、このAIツールは、失読症や英語が母国語ではないなどの特定の理由で文章を書くことが困難な人にとっても大きな助けとなる可能性があると、同氏はいう。

Flowriteは英語の電子メールしか作成できないという明らかな制約がある。GPT-3は他の言語のモデルを持っているが、イソサーリ氏は、そうした英語以外の言語の「人間らしい」反応の質は、英語の場合ほど良くないかもしれないと示唆し、よってFlowriteは当面の間、英語にフォーカスすると話す。

GPT-3の言語モデルを中核のAIテックとして使用しているが、最近では、自社で蓄積したデータを使って「微調整」を始めていて、イソサーリ氏は「すでに私たちは、GPT-3の上にラッパーを作るのではなく、さまざまなものを構築しています」と説明する。

また、この電子メール生産性向上ツールでは、AIがユーザーの文体に適応することを約束している。これにより、メールが速くなったからといって、無愛想なメールになることはない(「大丈夫?」と尋ねる新鮮な電子メールにつながるかもしれない)

この技術は、電子メールの履歴をすべてマイニングしているわけではなく、電子メールのスレッドの中で(ある場合は)直前の文脈だけを見ているとイソサーリ氏は話す。

Flowriteは、GPT-3の技術を利用しているため、現在はクラウド処理に依存しているが、今後はデバイス上での処理に移行したいと考えているという。当然ながら機密保持の問題にも対応できるはずだ。

今のところ、このツールはブラウザベースで、ウェブメールと統合されている。現在はChromeとGmailにしか対応していないが、今後はSlackなどのメッセージングプラットフォームにも対応していく予定だ(ただし、少なくとも当初はウェブアプリ版のみ)。

このツールはまだクローズドベータ版で、Flowriteは440万ドル(約5億円)のシード資金調達を発表したばかりだ。

同ラウンドはProject Aが主導し、Moonfire Venturesとエンジェル投資家のIlkka Paananen(イルッカ・パーナネン)氏(Supercellの共同創業者でCEO)、Sven Ahrens(スヴェン・アーレン)氏(Spotifyのグローバル・グロース・ディレクター)、Johannes Schildt(ヨハンズ・シルト)氏(Kryの共同創業者でCEO)が参加した。また、既投資家であるLifeline VenturesとSeedcampも今回のラウンドに参加した。

Flowriteは、どのようなタイプの電子メールや専門家に適しているのだろうか?コンテンツ面では「一般的に、返信する際に何らかの既存の文脈がある場合の返信」だとイソサーリ氏はいう。

「Flowriteは状況をよく理解し、自然な形でそれに対応することができます」と同氏は話す。「また、売り込みや提案のようなアウトリーチにも適しています。Flowriteがうまくいかないのは、非常に複雑なものを書きたい場合です。というのも、そのためには指示にすべての情報が必要だからです。そして、最終的な電子メールに近いかもしれない指示を書くのに多くの時間を費やす必要があるとしたら、その時点でFlowriteが提供できる価値はあまりありません」。

また「本当に短い電子メール」を送る場合には、明らかに実用的ではない。なぜなら、2、3の単語で答えるだけなら、自分で入力した方が早いからだ。

どのような人がFlowriteを使うのかという点では、ベータ版を利用しようとする幅広い層のアーリーアダプターがいるとイソサーリ氏はいう。しかし、同氏は主なユーザー像を「日常的に多くのコミュニケーションをとるエグゼクティブ、マネージャー、起業家」、つまり「自分自身について良い印象を与え、非常に思慮深いコミュニケーションをとる必要がある人」と表現している。

ビジネスモデルの面では、Flowriteはまずプロシューマー / 個人ユーザーに焦点を当てているが、イソサーリ氏によると、そこから拡大していく可能性があり、まずはチームをサポートすることになるかもしれない。また、将来的には企業向けに何らかのSaaSを提供することも想定している。

現在、ベータ版では料金を徴収していないが、来年初めには課金する予定だ。

「ベータ版が終了したら、収益化を開始します」と同氏は付け加え、2022年半ばにはベータ版からの完全なリリース(つまり、待機者がいなくなる)が可能であることを示唆している。

イソサーリ氏によれば、今回の資金調達は、主にエンジニアリング面でのチーム強化に充てられる。初期段階での主な目標は、AIと基幹プロダクトを中心としたツールアップだ。

また、機能の拡充も優先事項の1つだ。ここには、さまざまな電子メールクライアントとの併用など、ブラウザ間でツールを使用する「水平方向の方法」を追加することが含まれる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

絶えず変化するモバイルアプリ開発を支援、特化するBitriseが約68億円調達

世界中でますます多くの人々が、スマートフォンからあらゆることを行うようになっているため、それに合わせて、より優れたアプリをiOSおよびAndroid向けに構築する能力も必要とされている。Bitrise(ビットライズ)は、このような人々のモバイルに対する需要と、企業がアプリを迅速に提供する能力との間にあるギャップを解消し、すべての調整要素と複雑さのバランスをとるために役立つ最適な企業となることを目指している。

モバイルDevOps(デブオプス)企業のBitriseは、米国時間11月23日、シリーズCラウンドで6000万ドル(約68億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、既存投資家のPartech(パーテック)、Open Ocean(オープン・オーシャン)、Zobito(ゾビト)、Fiedler Capital(フィードラー・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)などが参加した。

このリモートファーストの会社は、2014年10月にBarnabas Birmacher(バルナバ・バーマチャー)氏、Daniel Balla(ダニエル・バッラ)氏、Viktor Benei(ヴィクター・ベネイ)氏が共同で設立した。2017年に320万ドル(約3億6000万円)のシリーズAラウンドを実施し、2019年にはシリーズBで2000万ドル(約22億7000万円)の資金を調達している。今回の新たな調達は数週間で計画・実行され、Bitriseの資金調達総額は1億ドル(約113億円)近くになったと、CEOのバーマチャー氏はTechCrunchに語った。

ブダペストに本社を置くBitriseは、2年前にY CombinatorのGrowth Program(グロース・プログラム)を経て会社の規模を拡大。現在では従業員を3倍に増やし、ロンドン、サンフランシスコ、ボストン、大阪にオフィスを開設している。

「モバイルは、この12カ月で2年分も3年分も進歩しました」と、バーマチャー氏はいう。「このことは、企業が競争力を維持するために、モバイルを利用しなければならないことを意味します。しかし、モバイルの開発はますます複雑になっています」。

開発者はプロセスの実行に追われ、顧客のために新しい価値を創造することに十分に集中できないと、同氏は付け加えた。

Bitriseが目指しているのは、モバイル開発のためのエンド・ツー・エンドのプラットフォームを構築することだ。このプラットフォームは、中核となるワークフローを自動化して、リリースサイクルを短縮し、新しいコードの部分が、実行中のアプリにどのような影響を与えるかをリリース前に把握できるようにすることで、企業が次のビッグリリースを顧客に提供することに集中できるようにする。

現在までに、6000以上のモバイル企業から、10万人以上の開発者がBitriseを利用している。同社の収益は前年比で倍増しており、エンジニアリング、プロダクト、セールス、グロースの各チームで働く従業員を、現在の160人から300人に増やすことを計画している。

新たに調達した資金を使って、Bitriseは人材の採用に加え、開発者が継続的インテグレーションとデリバリーの領域で、より容易に業務を行うことができるように、また、DevOpsのライフサイクル全体で可観測性を高められるように、製品を拡大していく予定だ。

今回の投資の一環として、Insight PartnersのバイスプレジデントであるJosh Zelman(ジョシュ・ゼルマン)氏がBitriseの取締役に就任し、同じくInsight PartnersのバイスプレジデントであるMatt Koran(マット・コラン)氏が取締役会のオブザーバーとして参加する。

「Bitriseは、8年前に設立されて以来、モバイルにおける現在の状況に向けて事業を築き上げてきました」と、ゼルマン氏は書面による声明の中で述べている。「モバイルは、世界中の人々にとって、コミュニケーション、エンターテインメント、商取引の主要な手段となっています。そしてBitriseは、企業がかつてないほどのペースでモバイルのイノベーションに対応していくことを可能にしてきました。Bitriseはモバイルのために設立された企業であり、同社はモバイルDevOps分野のリーダーとなっています」。

画像クレジット:Anna Lukina / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中南米の女性にデジタル口座を提供するチャレンジャーバンクJefaが2.2億円調達

フィテックスタートアップのJefa(ヘファ)は、中南米とカリブ諸国に住む女性向けに特別にデザインされた商品を構築するため、200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達した。同社は11万5000人の女性をウェイティングリストに呼び込むことに成功し、2020年のTechCrunchのStartup Battlefieldにも参加した

Jefaの投資家には、The Venture Collective、DST Global、Foundation Capital、Amador Holdings、The Fund、FINCA Ventures、Rarebreed VC、Siesta Ventures、Springbank Collective、Bridge Partners、Hustle Fund、Foundation Capital、Latitude、J20などが含まれる。また、Daniel Bilbao(ダニエル・ビルバオ)氏、JP Duque(J・P・デュケ)氏、Ricardo Shaefar(リカルド・シェーファー)氏、Jean-Paul Orillac(ジャン-ポール・オリラック)氏、Allan Arguello(アラン・アルゲロ)氏など、複数のビジネスエンジェル投資家もラウンドに参加した。

今回の創業ラウンドに加えて、JefaはVisa(ビザ)と契約を結んだ。複数年の戦略的パートナーシップだ。JefaはVisaのリソースや製品を活用して決済製品などを作ることができるようになる。

「Visaは女性を力づけることを信じています」と、Visa中南米・カリブ地域のフィンテック・パートナーシップ担当シニアディレクターのSonia Michaca(ソニア・ミチャカ)氏は声明で述べた。「金融とデジタルインクルージョンは経済を変革します。毎日の家計支出の大半を管理する女性は、この変革の中核を担うべき存在ですが、従来の銀行では女性はサービスを十分に受けられていません。中南米・カリブ地域の女性主導のプラットフォームであり、この地域の女性の金融ニーズに明確に応えているJefaと提携できることをうれしく思います」。

Jefaのチームは、銀行があまりにも長い間、女性を軽視してきたと考えている。そもそもチャレンジャーバンクでさえ、ほとんどが男性顧客向けに設計されている。女性がチャレンジャーバンクで口座を開設できないというわけではない。しかし、女性にとって不親切な要件もある。

Jefa創業者でCEOのEmma Smith(エマ・スミス)氏は、TechCrunch Disruptに参加した際、ラテンアメリカで現在銀行口座を持っていない人の多くが女性である理由をいくつか挙げた。例えば、最低残高要件は、統計的に男性よりも収入が少ない女性にとってハードルとなっている。

Jefaが事業を開始すると、モバイルアプリから無料で銀行口座を開設できるようになる。銀行の支店に行く必要はない。数日後には、Visaデビットカードが送られてくる。サービスには貯金機能や報酬プログラムも組み込まれる。

Jefaはまずメキシコで製品を展開し、次にコロンビアと中米に広げる予定だ。一元的な銀行サービスからの脱却を試みるチャレンジャーバンクはJefaが初めてではない。例えば、子ども向け銀行(GreenlightStep)、気候変動に焦点を当てた顧客向けの銀行(Aspiration)など、専門性を持つ銀行を作ろうとしているスタートアップがいくつかある。そして今、Jefaが女性に特化した銀行を作っている。

画像クレジット:Jefa

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Fractionalは友人(あるいは見知らぬ人)と一緒に不動産投資を行えるプラットフォーム

後払い決済のフィンテック企業であるAffirm(アファーム)で同僚だったStella Han(ステラ・ハン)氏とCarlos Treviño(カルロス・トレビーニョ)氏は、不動産業を営む家庭で育ったという共通のバックグラウンドで意気投合した。そこでAffirmの「自分のペースで支払う」というミッションと、不動産を所有することにともなう時間的な負担やコストの高さという実体験がぶつかり合い、その軋轢からFractional(フラクショナル)のアイデアが生まれた。

Fractionalは、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業で、不動産の所有をより身近なものにしたいと考えている。Y Combinator(Yコンビネータ)2021年冬のバッチに参加した同社のプラットフォームは、友人や見知らぬ人と投資用不動産を共同所有することを可能にするというものだ。これは不動産を探す際のロジスティックな問題を解決するとともに、小額の小切手を集合体に預けて、その集合体が不動産に投資するという方法によって、経済的な障壁を取り除くことができる。

このビジョンを掲げたベータ版には400人以上のユーザーが参加し、95件の不動産に共同投資を行った。そして会社には数百万ドル(数億円)の初期資金をもたらすことになった。Fractionalは先日、3000万ドル(約34億円)の評価額で総額550万ドル(約6億2000万円)の資金調達を実施したと発表した。同社のシードラウンドはCRVが主導したが、Y Combinator、Will Smith(ウィル・スミス)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Unusual Ventures(アンユージュアル・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダース・キャピタル)、On Deck(オン・デック)、Contrary Capital(コントラリー・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)が参加した。

Fractionalは、住宅所有のプロセスを3つの主要部分に分けている。まず最初に、共同所有者をマッチングするか、友人たちのグループに参加してもらって、引受プロセスを開始する。これには共同創業者のAffirmでの経験が生かされている。次に、法律や金融関連のソフトウェアサービスを通じて、不動産の購入を支援する。そして最後に、不動産管理会社やその他のサービスと提携して、共同所有する家屋が良好な状態を保てるようにする(新たに共同所有者となった人々には、時間的負担が掛からない)。

確かに、Fractionalは不動産を所有する際の経済的な負担を軽減してくれるが、友人同士でビジネスを始めることは、人間関係に大きなプレッシャーを与えることになるため、敬遠されるかもしれない。もし、その中の1人が生活的事情から先に売却したくなったらどうするか? あるいは、誰かがキッチンのアップグレードを拒否したらどうする?

Fractionalの共同創業者たちは、自分たちのバックグラウンドから、不動産業界でサービスとしてのアクセスの提供を拡大することは、他に類を見ないほど複雑であることを知っていた。そこで、ハン氏とトレビーニョ氏は、このプロセスをより深く理解するために、実際に資金を出し合ってメキシコに土地を購入することにした。トレビーニョ氏の家族がメキシコで建設業を営んでいたこともあり、2人は市場に出回らない好条件の土地を見つけ、最終的にはその土地に店舗を建てることができた。しかし、ハン氏は「手続きは非常にスムーズというわけにはいかなかった」と振り返り、手続きの仕組みを理解するために1時間750ドル(約8万5000円)ほどの弁護士費用を支払わなければならなかったと語る。

「私たちは弁護士を雇わなければなりませんでしたが、それは私たちが2人でどのように意思決定を行い、どのように対立を解決するかということの、良い実例をきちんと作っておきたかったからです」。

Fractionalの共同創業者ステラ・ハン氏とカルロス・トレビーニョ氏(画像クレジット:Fractional)

CRVのジェネラルパートナーであるSaar Gur(ザール・グール)氏は、Fractionalのソーシャルネットワーキング機能が「新しい投資家と経験豊富な投資家が共生する環境」であることが、同社の特徴的な要素の1つであると考えているという。「また、これによってFractionalは、実際の取引に留まらず、プラットフォーム上で一定のエンゲージメントを促進でき、積極的な有料マーケティングを使わず、有機的な口コミを通して成長を勢いづけることができます」と、グール氏は声明で述べている。

NFT(非代替性トークン)購入やプライベート・エクイティ・ファンドなどのオルタナティブ投資の台頭は、さらなる採用のきっかけとなるかもしれない。消費者は、伝統的な公開株式からポートフォリオを分散させるという考え方に慣れてきている。Fractionalは、世の中でよく知られている資産クラスの1つである不動産を活用したプラットフォームだ。

Fractionalのエンジェル投資家であるNot Boring Capital(ノット・ボーリング・キャピタル)のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏は、Fractionalについて、拡張性が高くて利益率の高いビジネスを、一般的には拡張性が低くて利益率の低いビジネスにもたらすと考えている。投資家であり作家でもあるマコーミック氏は、TechCrunchに次のように語った。「私が最も感銘を受けたのは、家を買って改築してからそれを売ったり、あるいは資産を買って人々に投資してもらうといったことを必要とする、非常に資産偏重の業界において、Fractionalは純粋なソフトウェアによるアプローチを採り、プロセスの容易さを妥協せず、しかも人々に家を所有する実感を与えることです」。

画像クレジット:Fractional

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

霜降り技術が売りの植物性ステーキ開発Juicy Marblesが5.1億円を調達

スロベニアのスタートアップJuicy Marbles(ジューシーマーブルズ)のおかげで、肉を食べる人に対し、環境にやさしい食事をするよう説得することが(それが矛盾に聞こえなければ)少し楽になるかもしれない。同社は、植物性のホールミートカット(塊肉)を作る方法を開発した。

「Fancy Plant Meat(すてきな植物性肉)」は、フィレミニョンステーキやその他の(動物)肉の「プライム」カットに代わる、ヴィーガン向けの同社製品を表現する力強い売り文句だ。

リュブリャナを拠点とするこのスタートアップは、植物性タンパク質の最高級品を市場に投入するため、450万ドル(5億1000万円)の資金調達を発表した。前述の(ヴィーガン)フィレミニョンを皮切りに、2022年第1四半期の発売を予定している。

なぜフィレスミニョンなのか。それは、独自に開発した「霜降り技術」を最もよく発揮できるカットだからだ。また、フィレミニョンを選んだのは、このカットが(肉の)ステーキの「王冠の宝石(重要部分)」と考えられているからだという。

さらに、高級フェイクミート市場は比較的競争が少ない。それに対し、ハンバーガーソーセージベーコンチキンテンダーなどの、派手さが少なく、カットがより小さい代替タンパク質製品は、製造する企業が多数存在する。そのため、大きなサイズでがっしりとしたものにすることは、盛り上がる代替タンパク質市場で目立つための1つの方法だ。

「他のホールカットに先駆け、まずはフィレスミニョンから始めることにしました。フィレミニョンはステーキ界の『王冠の宝石』であり、当社の霜降り技術が最もよく発揮されるからです。当社の明確かつ決定的なセールスポイントと言えるでしょう」とJuicy MarblesはTechCrunchに語った。

「私たちは、最も高価なカットだけではなく、サーロイン、ランプ、フィレ、トマホーク、和牛、そしてフィレミニョンで知られるようになりたいと思っています。長期的には、フィレミニョンをより手頃な価格で、植物性であることによる経済性の違いを考慮した上で、入手しやすいものにしていきたいと考えています」。

Juicy Marblesのフィレミニョンにかぶりつくとき、あるいはかぶりつくとして、実際に食べているのは何だろうか。主なタンパク質は大豆だ。大豆は栄養価が高く、環境的にも持続可能であると同社は主張している。

「大豆栽培が森林破壊を引き起こしているという問題があります。これは、大豆栽培が家畜を育てるために必要とされるからこその問題です。大豆生産量の97%は家畜の飼料として使われており、もし私たちの肉がすべて植物由来になれば、大豆栽培の悪影響は単純になくなってしまうでしょう」と同社はいう。「人間が食べるための作物として、純粋に人間が消費する大豆に必要な土地ははるかに少なく、現在必要とされている農地の3分の1以下になるでしょう」。

大豆は用途が広い。Juicy Marblesは、あらゆる形態で食べることができると指摘する。生、ドライ、プレーン、発芽、粉末、発酵といった状態の他、豆腐、ソース、スープ、デザート、飲み物などとして摂取することができる。同社は「大豆中心のフードカンパニー」となることで、より柔軟に料理を提供できると述べている。

例えば、大豆を使ったマグロのステーキなどのアイデアがある(動物性ではない、マグロ代替品を最初に市場に出す会社というわけではない。例えばYCが支援するKuleanaなどがある)。

「私たちのビジネスは、タンパク質の食感というコンセプトを基盤としています。これこそが、人々が安価な肉と比較してステーキに惹かれる決定的な要因なのです。植物性食肉のホールカットの分野では、あまり革新的な技術がなく、誰も高級品を模したステーキを開発することができませんでした」と同社は語る。「この分野でも脱炭素化や植物由来の代替品のニーズがあることを考えると、これは大きなライバル企業が開拓していない巨大な機会だと思います」。

画像クレジット:Juicy Marbles

「植物由来の製品といえば、現在はハンバーガーやソーセージ、ベーコンなどの安価なカットに限られています。また、チキンテンダーやツナ缶などの塊もありますが、ホールカットはありません」と付け加えた。

Juicy Marblesは、どのようにしてこのような大量のフェイクミートを製造できるのかを明らかにしていない(タンパク質の霜降り技術を解明しようと「多数の大手食品会社が嗅ぎ回っている」と主張している)。

しかし、同社は、自社の知的財産が確実に保護されるようになれば、より透明性が高まるとしている。

同社は、植物性ステーキが研究室で栽培されたものでも、3Dプリントされたものでもないことを明記した上で、特許出願中の独自の3D組み立て技術を使用しており、これによって「形状、食感、霜降り、味、香り、栄養を完全にコントロールした、A5等級の高級肉」を作ることができると主張している。

もちろん、これらの主張の真偽は食べることで明らかになる。しかし、Juicy Marblesは「高レベルの霜降り効果」と「大胆で豊かな風味」の両方で肉を食べる人は驚くはずだ、という。

また、発売時には「平均的な価格」のフィレミニョンと「同等」の価格を実現するが、最終的には(「2〜3年以内に」)ステーキ1枚あたりのコストがより手頃価格の肉を買うのと同じになるよう縮小していくとしている。

Juicy Marblesは、植物性ステーキには非飽和脂肪酸が使用されており、肉類に比べてナトリウムが少ないこともメリットだと指摘している。なので、植物性ステーキへの切り替えを検討する健康上の理由付けがあるかもしれない(地球上の生命の未来が十分に大きな理由ではない場合)。

今回のシードラウンドは、植林活動を行う検索エンジンEcosiaが新たに設立したWorld Fund(3億5000万ユーロ=約448億円の基金)がリードしている。同ファンドは、地球の脱炭素化に役立つテックに取り組んでいるスタートアップにフォーカスしていて、TechCrunchは2021年10月同ファンドの立ち上げを取り上げた(Juicy MarblesはWorld Fundの最初の投資先だ)。

このファンドのゼネラルパートナーDanijel Visevic(ダニジェル・ビシェビッチ)氏は、声明で次のように述べた。「近年、地球と自分の健康のために真の変化を起こしたいと願う世代によって、植物由来の代替品へのシフトが起こっています。しかし、多くの場合、代わり映えのしないものを目にしたり、ホールカット肉のようなちょっとした贅沢を諦めることができず、完全な植物性食品への移行に抵抗を感じたりしています。Juicy Marblesのチームは、これを真に理解しています。チームの現実的で熟考されたアプローチは、彼らの技術力、そして食欲(!)と相まって、植物性食品のパズルの主要な部分をついに解明しました。チームに加わり、今後数カ月、数年のうちにどれほどのインパクトを与えるかを目撃できることに興奮しています」。

今回のラウンドには、Agfunderの他、Y CombinatorやFitbitなどのエンジェル投資家が参加している。

Juicy Marblesによると、今回の資金調達は、植物由来のステーキを小売市場に投入するための生産規模の拡大に使用される。

同社は、こだわりのある食料品店やレストランだけでなく、スーパーマーケットへの販売も計画している。しかし、生鮮食品を個人の消費者に配送するための「地球に優しい」梱包は複雑であるため、消費者への直接販売は特別なオファーに限られるとのことだ。

また、同社はチームを拡大し、新しいカットの開発含むR&Dをさらに強化する予定だ。

「学習サイクルとして、次のラウンドでは、植物性肉のギガファクトリーを設立して事業規模を拡大し、植物性肉の価格をさらに下げることができます」とも話す。

ちなみに、Luka Sinček(ルカ・シンチェク)氏、Maj Hrovat(マジ・フロヴァット)氏、Tilen Travnik(ティレン・トラブニク)氏、Vladimir Mićković(ウラジミール・ミッチコビッチ)氏の創業チームにはヴィーガンと肉食のどちらもいる。

画像クレジット:Juicy Marbles

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Verbitの文字起こしプラットフォームは人工知能と人間の知能を組み合わせて高い精度と早い納期を実現

1億5700万ドル(約178億6000万円)を調達したシリーズDラウンドからまだ半年足らずにもかかわらず、AIを活用したトランスクリプション&キャプションのプラットフォームであるVerbit(ヴァービット)は、同社を20億ドル(約2275億円)と評価するシリーズE投資ラウンドを、2億5000万ドル(約284億3000万円)でクローズしたと発表した。今回の資金調達により、同社の資金総額は5億5000万ドル(約625億6000万円)を超えた。

この新たな投資ラウンドは、Third Point Ventures(サード・ポイント・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるSapphire Ventures(サファイヤ・ベンチャーズ)、More Capital(モア・キャピタル)、Disruptive AI(ディスラプティブAI)、Vertex Growtht(ヴァーテックス・グロース)、40North(フォーティノース)、Samsung Next(サムスン・ネクスト)、TCPが参加した。

VerbitのCEO兼創業者であるTom Livne(トム・リブン)氏は、この資金を製品開発への投資と、垂直方向および地理的な拡大の継続に使用すると述べ、買収戦略も倍増させると付け加えた。

シリーズEをクローズしたことで、Verbitは近い将来に予定されているIPOに一歩近づいたと、上場計画について訊かれたリブン氏は答えた。

Verbitは、それまで法律の分野でキャリアを積んでいたリブン氏によって2017年に設立された。リブン氏は、テープ起こしの納期の遅さに不満を感じることが多かったが、弁護士としてその問題に正面から取り組むためのツールを持っていなかった。そこで同氏は、AIを活用したトランスクリプションとキャプションのプラットフォームを提供するスタートアップを設立し、AI駆動の自動トランスクリプションサービスとプロのトランスクリプターを結合させた。

約300億ドルと推定されるトランスクリプション業界は、非常に細分化されており、小さな家族経営の会社がたくさんある。この市場は統合の準備ができていると、リブン氏はTechCrunchにメールで語り、Verbitは5月に、2番目の買収先であるVITACを5000万ドル(約56億7000万円)で買収完了したと付け加えた。

Verbitのプラットフォームの特徴は、人工知能と人間の知能の両方の力を利用して、業種に特化したトランスクリプションやキャプションを提供し、各業界に適したソリューションを構築していることだと、リブン氏はいう。

「当社のAIは、特定の業種や顧客に基づいてトレーニングされているので、当社のプラットフォームは、時間の経過とともに改善されるカスタムモデルを構築することができます。つまり、Verbitの顧客は、法律、教育、メディア、企業などの分野にいて、それぞれに、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)やSOC IIコンプライアンスなど、独自の業界固有の規制や基準に準拠したトランスクリプションやキャプションを提供することができるということです」と、リブン氏は述べている。

さらに、機械学習と自然言語処理(NPL)を用いたモデルにより、99%以上の精度と、業界標準より10倍も早い納期を実現していることも、同社の大きな差別化要因であると、リブン氏は語った。

Verbitは、メディア、教育、企業、法律、政府機関など、2000社以上の顧客にサービスを提供している。リブン氏によれば、その顧客の中には、CNN、Fox(フォックス)、Disney(ディズニー)、Coursera(コーセラ)、Stanford(スタンフォード)、Harvard University(ハーバード大学)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、AT&Tなどが含まれるという。

同社は急速に成長しており、前年同期比で6倍の収益成長を遂げ、年間の経常収益は1億ドル(約113億円)を超えていると、リブン氏は続けた。また、同社はキャッシュ効率に優れ、163%という高い顧客維持率を誇っており、これらは顧客からの信頼を示す重要な指標であると、同氏は付け加えた。

同社がトランスクリプションの分野で競合する企業として、リブン氏はRev.com(レブ)や3Play Media(スリープレイ・メディア)の名前を挙げた。

英国とオーストラリアで強い存在感を示しているVerbitは、ドイツ、フランス、スペインなど、欧州へのさらなる拡大を計画していると、リブン氏は述べている。これらの国々は、かなりのインバウンド関心が見られるため魅力的であると、リブン氏は付け加えた。

「市場機会は非常に大きく、業界リーダーとしての当社の立場を考えれば、我々はこれらの市場に迅速に参入することができます」と、リブン氏はいう。

Verbitは、ニューヨーク、コロラド、ピッツバーグ、パロアルト、カナダ、テルアビブ、キエフの470人を超える従業員と、世界中に3万5000人のフリーランスのトランスクリプターと600人のプロのキャプション担当者を擁している。

「今回の資金調達は、トランスクリプション分野におけるマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにする当社の能力に対する信頼の証です」と、リブン氏は語る。「この業界を近代化するための強力な技術プラットフォームを構築し、垂直統合された音声AIソリューションを構築する当社の戦略は、私たちのお客様に多大な価値をもたらし、お客様のビジネスをよりわかりやすいものにしてきました」。

「Verbitは、トランスクリプション市場において卓越した技術によるオーガニックとインオーガニックの成長を兼ね備えた特別な企業です」と、Verbitの取締役会に加わるThird Point Venturesのマネージングパートナー、Rober Schwartz(ローバー・シュワルツ)氏は述べている。「このような大規模で断片化された市場で、デジタルトランスフォーメーションと同時進行の統合の機が熟している時に遭遇できるチャンスは、滅多にありません」。

画像クレジット:Verbit

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

植物性の冷凍食品を届けるMosaic Foodsが約6.8億円調達、食餌療法を行うVCトップが高評価

植物性食品の食品企業Mosaic Foodsは、米国時間11月23日に600万ドル(約6億8000万円)のシード資金を獲得し、もっと多くの製品を開発していくと発表した。

2019年に食品の世界に登場したニューヨーク拠点の同社は、Matt Davis(マット・デイビス)氏とSam McIntire(サム・マッキンタイア)氏の2人が創業し、ピーナッツ豆腐ボウルやバターナッツ・スクワッシュ、セージパスタなどの菜食メニューのベジボウルを冷凍食品として提供している。

Mosaicを立ち上げる前のCEOのデイビス氏とCROのマッキンタイア氏は、それぞれBain & Coにいた。そこで彼らは、植物性のダイエット食品をおいしく食べて成功するためには工夫が必要で、特に肉がなくても満足できるおいしい料理が必要だと悟ったという。

Mosaic Foodsの核には、人間はもっと植物を多く食べて肉を減らすべきだという2人の信念がある。しかし彼らは、植物性の食事はおいしくないから食べないという言い訳をよく耳にする。

Mosaic Foods共同創業者のマット・デイビス氏とサム・マッキンタイア氏(画像クレジット:Mosaic Foods)

「植物を多く食べることへの言い訳をなくし、おいしくすれば、人々は植物を多く食べることを楽しみにするようになり、大きなインパクトを与えることができるでしょう」とマッキンタイア氏はいう。

また「私たちは、植物性食品をテイクアウトで注文するのと同じくらい簡単に食べられるようにしたいのです。自分たちの好きなレシピを料理することになり、最初の6品は私たちのキッチンから生まれました」とデイビス氏はいう。

Mosaicの仕組みは次のとおりだ。8食または12食のミールプランを選択、スキップやキャンセルも可能だ。朝食、昼食、夕食のオプションを選択し、冷凍庫に保存できる急速冷凍食品を受け取る。1食あたりの平均価格は4.99ドル(約570円)だ。

発売から2年で、商品数は6種類から50種類に増え、売上は15倍になった。ニュージャージー州に1万6000平方フィートのキッチンを開設し、カリフォルニア州にも出荷を拡大している。また、オートミールボウル、スープ、ファミリーミールなどの製品ラインアップを拡充するとともに、トップシェフやフードパーソナリティとのパートナーシップにより生み出された食事のキュレーションコレクション「Mosaic+」も開始した。

シードラウンドはGather Venturesが主導し、GreycroftとAlleycorpが参加した。今回の投資により、Mosaicの資金調達総額は約1000万ドル(約11億3000万円)となった。

「アダム(スルツキー)と一緒に仕事をすることは、大きなチャンスを掴むことになると思っている。資金調達で、より早く、より多くの人々に影響を与えることができるでしょう」とデイビス氏はいう。

Slutsky(スルツキー)氏はMoviefoneの創業者で、Mimeo.comの前CEO、そしてTough Mudderの元社長だ。彼は2019年にGatherを興し、植物ベースの企業だけに投資している。

ただしその部分は彼の個人的な領域で、42歳で心臓病と診断され食生活を変えさせられたことが契機だ。投資対象は自らの目と判断で選ぶため、1年に4件程度だ。

「現在、世界が便利さの追求から健康と環境とその他の倫理的価値の追求に変わりつつある。それが安価に手に入るならより良いことだ。Mozaicのメンバーはそれを行っている」とスルツキー氏はいう。

現在、従業員は40名で、東海岸を中心に全米の約50%をカバーしている(ただし、直近では7月にカリフォルニア州が加わった)。また、2021年末までに100万食の販売を達成する予定だ。

今回の新たな資金調達は、すでに配置されているチームの強化、自社キッチンの継続的な運営を含むインフラへの投資、および新製品の発売に充てられる。共同設立者らは、2022年の今頃には、DTCに加えて他のチャネルでも販売することを期待している。

画像クレジット:Mosaic Foods

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

複数の暗号資産取引所のデータを検索・比較できるモバイルアプリ「TabTrader」

当面は主要な暗号資産(仮想通貨)の多くが史上最高値付近で安定しているように見えるため、もう少し変動の大きいトークンに投機したいと考えているユーザーは、取引所を横断しながら良い情報を探している。

アムステルダムを拠点とするスタートアップ企業のTabTrader(タブトレーダー)は、このユーザーの動きに便乗し、数十にわたる取引所の価格とトークンの入手状況を集約したプラットフォームを提供している。ユーザーが取引所間のトークン価格を横並びに見ることができるプラットフォームは他にもあるが、その多くはデスクトップ用に最適化されたものだ。一方、TabTraderは、iOSとAndroid向けのモバイルアプリが大きな存在感を放っている。

新しいトークンの導入については取引所ごとにアプローチが異なるため、暗号資産トレーダーは複数の取引所のアカウントに登録して、複数のアプリで価格を追跡し、それぞれに複数の通知を設定しているケースが増えている。TabTraderが多くのユーザーに利用されているのは、特定のトークンが一定の値を超えたときや下回ったときにユーザーに通知する、取引所間を横断した価格アラート機能があるためだ。多くの取引所が独自のアプリ内でこの機能を提供しているものの、これらのプッシュ通知の信頼性やカスタマイズ性には一貫性がなかった。

CEOのKirill Suslov(キリル・スースロフ)氏がTechCrunchに語ったところによると、TabTraderアプリには40万人以上のアクティブユーザーがいて、特に欧州とアジアで強い存在感を示しているという。

このスタートアップ企業では、トークンの価格を集計して、ユーザーがアプリで購入する際に取引所からリベート手数料を受け取るという、旅行検索・料金比較アプリのKayak(カヤック)と同じようなモデルを採用している。ユーザーは自分のウォレット情報をアプリに入力しておくことで、接続された取引所で簡単に購入することができるが、スースロフ氏によると、TabTraderがユーザーの資金にアクセスすることはないそうだ。

これらのリベートの他に、TabTraderは、有料版の月額12ドル(約1370円)のサブスクリプションや、広告によっても収益を得ている。スースロフ氏によれば、同社の20人のチームは、有料のマーケティングを一切行わずに、現在の利用者を獲得するまでに成長したという。

何千万人ものユーザーがCoinbase(コインベース)やBinance(バイナンス)のような中央集権的な取引所にアカウントを作っている一方で、TabTraderの最大の好機は、ユーザーが他のユーザーとトークンを迅速に交換できるUniswap(ユニスワップ)のようないわゆる分散型取引所を受け入れることかもしれないと、スースロフ氏は語っている。

スースロフ氏の話によると、各取引所はバックエンドで優れた技術を構築しているものの、フロントエンドのインターフェースはユーザーにとってあまり使いやすくないため、TabTraderのようなアグリゲーターがユーザー体験を合理化することで、ユーザーが初めて分散型取引所を探索できるようにする余地があるとのこと。TabTraderでは、Serum(セラム)、Raydium(レイディアム)、Orca(オルカ)などのSolana(ソラナ)基盤の取引所から始めているという。

「(分散型取引所は)2021年の最もホットな話題です」と、スースロフ氏はいう。「我々はこのロケット船に乗るために賭け金を上げました」。

スースロフ氏はTechCrunchに、TabTraderが100X Ventures(100xベンチャーズ)、Hashkey Capital(ハッシュキー・キャピタル)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、SGH Capital(SGHキャピタル)、SOSV、Artesian Venture Partners(アーテシャン・ベンチャーズ・パートナーズ)から、シリーズA資金として580万ドル(約6億6000万円)を調達したと語った。

画像クレジット:TabTrader

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グルメコミュニティアプリSARAHや外食ビッグデータサービスFoodDataBankを運営するSARAHが2.2億円調達

グルメコミュニティアプリ「SARAH」(Android版iOS版)や外食ビッグデータサービス「FoodDataBank」などを運営するSARAHは11月25日、第三者割当増資により総額2億2000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のセブンーイレブン・ジャパン、Social Entrepreneur3投資事業有限責任組合(PE&HR)、DD Holdings Open Innovation Fund投資事業有限責任組合、クロスボーダーインベストメント、新規引受先であるインフォマート、エー・ピーホールディングス。累計調達総額は7億7000万円となった。

調達した資金は、各サービスのマーケティング・セールス・カスタマーサクセス、飲食店向け電子メニュー化サービス「Smart Menu」の体制強化と組織増強に投資予定。

SARAHが展開する事業は3種類。累計投稿数80万件(2021年10月現在)のSARAHは、レストランの1皿に対する投稿を中心としたグルメコミュニティアプリ。レストラン単位ではなくメニュー単位での投稿や検索が可能だ。FoodDataBankは、SARAH内の膨大なユーザーの声を抽出し分析することで外食市場とその顧客ニーズをデータで定量化する。Smart Menuは、2020年5月よりβ版が稼働中のサービス。SARAHのデータを組み合わせることで来店客ごとにお勧めのメニューを表示でき、客単価向上に貢献することを目標としている。

リモート施工管理SaaS「Log System」を開発するlog buildが総額1億円のプレシリーズA調達

リモート施工管理を実現するためのサービス「Log System」を開発しているlog build(ログビルド)は11月24日、プレシリーズAラウンドにおいて総額1億円の資金調達実施を発表した。引受先や融資元は、GMFホールディングス、Monozukuri Ventures、ヨシックスキャピタルなど。

同社は、建設業界において深刻な人手不足や膨大な移動時間が大きな社会課題となっており、テクノロジーを活用したDXが急務と位置付け。レガシー産業の代表といわれる建設業界を変革するとしている。

log buildは、湘南の建設会社であるecomoのVR・AI・ロボット事業部として発足し、2020年2月に設立した建設テックのスタートアップ。

Log Systemは、リモート施工管理を実現するため、「Log Walk」(ログウォーク)、「Log Meet」(ログミート)、「Log Kun」(ログくん)の3つのソリューションで構成されている。Log Walkは、360度カメラとスマホアプリにより建設現場をVR空間化し、現場管理のメイン業務である進捗管理・品質管理・情報管理・安全管理をリモートで行うことを可能とする。Log Meetは、リモート現場立ち会いに特化したオンライン施工管理アプリ。職人でも活用しやすいUIを備え、建設現場に関わるすべての人とビデオ通話機能でオンライン打ち合わせが行える。建設現場特有のコミュニケーションロスを防ぐための機能も持つ。Log Kunは、好きな時に現場を巡視できるアバターロボット。場所や有人無人を問わず、現場に配置したアバターロボットをスマホ・タブレット・PCで操作し、進捗確認や安全管理、品質チェックができる。これにより移動のロスがなくなるという。

ライブ配信で表情や雰囲気を確認できる、英語圏在住のアジア人向け恋活・婚活マッチングアプリEME Hiveが約8億円調達

ライブ配信でお互いの表情や雰囲気を確認できる、英語圏在住のアジア人向けマッチングアプリ「EME Hive」が約8億円調達

英語圏在住のアジア人向けマッチング・ライブ配信アプリ「EME Hive」(イーエムイー ハイブ。Android版iOS版)を運営する米国EAST MEET EAST(EME)は11月25日、第三者割当増資による700万ドル(約8億円)の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のディー・エヌ・エー、朝日メディアラボベンチャーズ、モバイル・インターネットキャピタル。

調達した資金により、画期的かつコロナ禍でも安心して利用できるマッチング×ライブ配信のシステムを強化する。さらに、ヒスパニック系をはじめとする多人種コミュニティのシェア拡大を進める。

EME Hiveは、英語を主要言語としたアジア人を主な対象とする恋活・婚活マッチングサービスで、2013年12月にニューヨークでローンチした。ユーザー登録数は累計14万人以上という。コロナ禍で直接会うことができなかった時期でもリアルタイムにコミュニケーションが取れたことから、ユーザー数が急増したそうだ。

従来のマッチングアプリでは、「相手の写真だけを確認し、チャットのみでコミュニケーションを行いその後に直接会う」といった形式が多く、「実際に会ってみると写真と違っていた」「チャットだけでは雰囲気がわからない」などの問題が起こっている。

これに対してEME Hiveでは、写真・チャットだけではなく、ライブ配信によりお互いの表情や雰囲気を確認できるため、安心してコミュニケーションを取ることが可能だ。また米国移住時の年齢、母国語など、アジア人の関心事項に的を絞った項目を検索条件に設定できる上、アルゴリズムを入れることによってマッチングの成功率を最大化している。共通の文化コミュニティを通じて、恋愛に向けた出会いだけではなく、同じ趣味の仲間を見つけることもできるという。ライブ配信でお互いの表情や雰囲気を確認できる、英語圏在住のアジア人向けマッチングアプリ「EME Hive」が約8億円調達

商用核融合エネルギーの実現に向けてHelion Energyが約2410億円を確保

クリーンエネルギー企業のHelion Energy(ヘリオン・エナジー)は、核融合によるゼロカーボン電力が豊富にある新時代の創造にコミットしている。同社は米国時間11月5日、5億ドル(約570億円)のシリーズEを完了し、さらに17億ドル(約1936億円)のコミットメントを特定のマイルストーンに結びつけたことを発表した。

このラウンドは、OpenAI(オープンAI)のCEOでY Combinator(Yコンビネーター)の元プレジデントSam Altman(サム・アルトマン)氏がリードした。既存の投資家としては、Facebook(フェイスブック)の共同創業者Dustin Moskovitz(ダスティン・モスコビッツ)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏のMithril Capital(ミスリル・キャピタル)、そして著名なサステナブルテック投資家であるCapricorn Investment Group(カプリコーン・インベストメント・グループ)などが名を連ねる。今回の資金調達には、Helionが主要な業績目標を達成するために必要な追加の17億ドルが含まれている。ラウンドリーダーのアルトマン氏は、2015年から投資家兼取締役会長として同社に関わってきた。

約60年前に制御された熱核融合反応が初めて達成されて以来、核融合エネルギーはクリーンエネルギー愛好家の熱い夢であり続けてきた。このテクノロジーは、ごくわずかなリスクで、稼働中の放射能量がはるかに少なく、放射性廃棄物が非常に微量であるという、現行世代の核分裂発電機に対するあらゆる利点を約束している。ただ、1つ難点がある。核融合プロセスはこれまでのところ、その反応を制御し続けるために消費するエネルギーよりも多くのエネルギーを生成することは難しいのが現状である。

Helionは企業として、科学実験としての核融合ではなく、より重要な問題に焦点を当ててきた。このテクノロジーは、商業規模で、そして工業規模で、電力を生成できるだろうかという問いである。

「熱やエネルギー、あるいはその他のことを論じている核融合領域のプロジェクトもありますが、Helionは発電に焦点を当てています。私たちは低コストで迅速にそれを取り出すことはできるのでしょうか。核融合による産業規模の電力を実現することは可能なのでしょうか」とHelionの共同創業者でCEOのDavid Kirtley(デビッド・カートリー)氏は問いかけるように話す。「私たちは輸送用コンテナほどの大きさで、産業規模の電力を供給できるシステムを構築しています。例えば、およそ50メガワットの電力です」。

重水素とヘリウム3は加熱後、磁石で加速され、圧縮されて誘導電流として捕捉される(アニメーションはHelion Energy提供)

2021年6月、Helionは民間の核融合企業として初めて、核融合プラズマを摂氏1億度まで加熱することを確認した結果を発表した。これは、核融合から商用電力への道を歩む上で重要なマイルストーンだ。その後すぐにHelionは、同社が「Polaris(ポラリス)」と呼ぶ第7世代の核融合発電機の製造プロセスの開始に向け、工場の建設に着手したことを明らかにした。

TechCrunchは、2014年の同社の150万ドル(約1億7000万円)というラウンドを知って驚いたことを記憶している。そのとき同社は、3年以内に核融合のネット発電を立ち上げ、稼働させることができると語っていた。それから7年が経過し、Helionはいくつかの問題に直面しながらも、その過程で焦点も見出したようだ。

「エネルギーの科学的マイルストーンにフォーカスするのではなく、より具体的に電力へ焦点を当てるために、方向性を少し変えることにしました。電力、そして電力の抽出という側面で、いくつかのテクノロジーを証明する必要があったのです。また、そうした技術的マイルストーンに到達するために必要な資金も必要でした」とカートリー氏は振り返る。「残念ながらそれには期待していたよりも少し時間がかかりました」。

人々にエネルギーを与えようと待機するHelionチーム(画像クレジット:Helion Energy)

投資ラウンドの一環として、サム・アルトマン氏は取締役会長からHelionの執行会長にステップアップし、同社の商業的方向性へのインプットを含む、より高度な活動を行うことになる。

「最初の資金調達ラウンドはMithril Capitalが主導し、Y Combinatorもその一部を占めていました。そこで私たちはサム(・アルトマン氏)に紹介されました。同氏はそれ以来、私たちの資金調達に関わってくれています。同氏は物理学を真に理解しているアンバサダーで、これは実にすばらしいことです。私たちは同氏が投資をリードすることに興味を持ってくれたことを本当にうれしく思っています。整合性が異なり、テクノロジーについてあまり深く理解していない外部の投資家を連れてくる必要はなかったのです」とカートリー氏は説明する。「同氏は成功を見て、その意味するところを理解してくれました。私たちは同氏を投資家としてだけではなく、より積極的な関与者として迎えることを楽しみにしています。これは私たちがタイムラインを加速できることを意味します。資金調達もその一部であり、テクノロジーもその一部です。最終的に私たちは培ってきたものを世界に送り出す必要があり、サムはそれを支援してくれるでしょう」。

「これまで目にした中で最も有望な核融合へのアプローチを行うHelionに投資できることをうれしく思います」とアルトマン氏は語る。「他の核融合の取り組みに費やされたものに比べてごくわずかな資金、そしてスタートアップの文化を持つこのチームには、ネット電力への明確な道筋があります。Helionが成功すれば、気候災害を回避し、人々の生活の質を向上させることができるでしょう」。

HelionのCEOは、最初の顧客はデータセンターになるのではないかと推測している。そこには他の潜在顧客に対するいくつかの優位性が存在する。データセンターは電力を大量に消費しており、多くの場合、バックアップ発電機を受け入れるための電力インフラストラクチャがすでに整備されている。また、人口密集地から少し離れている傾向がある。

「こうした施設はディーゼル発電機の予備電源を備えており、数メガワットの電力を供給します。これは、電力網の問題に対処するのに必要な時間だけデータセンターを稼働し続けるようにするものです」とカートリー氏は語りながらも、同社は単に予備のディーゼル発電機を置き換えるだけではなく、もっと野心的であることを示唆している。低コストで電力の可用性が高いということは、同社がデータセンター全体にデフォルト電源として電力供給を開始できることを意味する。「50メガワット規模であり、電力コストをキロワット時あたり1セントまで削減できることに大きな期待を寄せています。データセンターの動作を完全に変えることができ、気候変動への対応を本格的に始めることができます。私たちの焦点は、低コストでカーボンフリーの電力を作ることに置かれています」。

発電方法に物理的な制限があるため、同社の現世代の技術はTesla Powerwall(テスラ・パワーウォール)やソーラーパネルに取って代わることはできないだろう。発電機のサイズは輸送用コンテナとほぼ同じである。しかし、50メガワットの発電機は約4万世帯に電力を供給することができ、その電力量で、このテクノロジーは分散型電力網に非常に興味深いオポチュニティをもたらす可能性がある。

Helionの発電ソリューションにおける興味深いイノベーションの1つは、発電の中間段階として水と蒸気を使用しないことだ。

「キャリアの最初の頃、私は核融合の方法に注目し続けていました。そして、プラズマを含めて、すべてが電気的である美しいエネルギーがあるのだ、と確信しながら、それから何ができるだろうか、水を沸かして、古くて低効率な資本集約的プロセスを使うのだろうか、という思いがめぐりました」とカートリー氏は説明する。同社は水を使うのではなく、誘導エネルギーを使うことにした。「この時代を完全に乗り切ることができるだろうか、ガソリンエンジンを使わない代わりに最初からいきなり電気自動車を走らせるようなことができるだろうか。こうした問いへの取り組みに私たちは力を注いできました」。

同社は、2024年までに核融合炉の稼働に必要な量よりも多くの電力を発電できるようにすることを目指しており、現時点での目標は商業規模での発電であるとCEOは指摘している。

「当社の2024年のデータは、現時点では科学上の重要な証明ではありません。目標は、商業的に設置された発電を追求することにあります。巨大な市場が存在しており、これを一刻も早く世界に広めたいと考えています」とカートリー氏は最後に語っている。

「できる限り早く電力に到達するように注力することで、気候変動と二酸化炭素を排出しない発電について話す自然な会話の一部として、核融合を期待できるようになるでしょう。私たちはこの資金を確保できたことに大きな興奮を覚えています。そして調達してきた総合資金により、私たちはそこにたどり着くことができるはずです」。

画像クレジット:Helion Energy

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

SuborbitalがスケーラブルなサーバーアプリケーションWebAssemblyプラットフォームで1.8億円調達

スケーラブルなサーバーアプリケーションを作るためのオープンソースのWebAssemblyプロジェクト、Atmoを提供しているSuborbitalが、Amplify Partnersがリードする160万ドル(約1億8000万円)のシードラウンドを調達したことを発表した。このラウンドには、GitHubの前CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏やAtlassianのCTOであるSri Viswanath(スリ・ヴィスワナート)氏、FastlyのCTOであるTyler McMullen(タイラー・マクマレン)氏、Goliothの創業者Jonathan Beri(ジョナサン・ベリ)氏、RapidAPIのエンジニアリング副社長Vijay Gill(ビジェイ・ギル)氏、およびCommsorの創業者であるMac Reddin(マック・レディン)氏ら、多くのエンジェル投資家が参加した。

同社はまた、Suborbital Computeの公開ベータのローンチを発表した。一見するとこれは、ややおかしなプロダクトと思えるかもしれない。SaaSのサービスがベーシックなドラッグ&ドロップによる統合を超えて、自分のプロダクトに拡張性を持たせようとすると、そういう拡張をデベロッパーがプロダクトの中に書けるためのツールが必要だ。しかしそれらのユーザーファンクションは大量のセキュリティ問題を抱えてしまう。そこでデベロッパーがSuborbital Computeを使うと、SaaSのデベロッパーはエンドユーザーに、自分独自のファンクションを書き、WebAssemblyのサンドボクシングプロパティで自分のプロダクトを拡張する能力を与える。そのプロパティはAtmosや、Suborbitalのその他のオープンソースツールのベースであり、多くのガードレールを提供する。

しかし、それは単なるスタートだ。Suborbitalは、もっと野心的なプロジェクトだ。CEOで創業者のConnor Hicks(コナー・ヒックス)氏によると、同社のミッションは「私たちが1つの産業としてのコンピュートに関して考え、それをデプロイするときの考え方そのものです」。ヒックス氏は以前、1Passwordプラットフォームのチームで仕事をし、1Psswordのコマンドラインインターフェースや、そのエンタープライズプロダクトなどのツールを作っていた。その後は同社のエンタープライズプロダクトのR&Dのトップになったが、そこで彼はサイドプロジェクトとして、最初はDockeをベースとする「分散ファンクション・アズ・ア・サービス」のシステムを作っていた。しかし、Dockerではあまりに遅いため、WebAssemlyに移行した。しかし、それによって彼は、予想以上の複雑性に遭遇した。その大部分は、それが動くためのグルーコードを全部自分で書くことだった。でも、ほぼ2年前にやっと、すべてが順調に動き出した。

「そこで、そのときやってたことをもっと真剣に考えるようになり、時間も割くようになって、そこから出てきたものが、WebAssemblyのファンクションのスケジューラー、今日のReactrプロジェクトだでした」とヒックス氏は説明する。ReactrはGoのライブラリだったが、多くの人は純粋なWebAssemblyのサービスの方に関心を持った。そしてそれが今のAtmoプロジェクトになり、Suborbitalの中核的プロダクトになった。

「Atmoと名づけた大きな実験は、『宣言的に書かれているウェブサーバーのアプリケーションを、ユーザーがボイラープレートをまったく書かずに動かすにはどうするか』というテーマでした。そこで宣言的な記述と大量のファンクションでWebAssemblyをコンパイルして、このウェブサービスをビルドして動かすやり方、そのセキュリティ、自動的な高速化、そしてユーザーの手作業による配管工事の不要化、等々がわかってきました」とヒックス氏の説明する。

AtmoでSuborbitalは、サーバーサイドのWebAssemblyに賭け、デベロッパーはRustやSwiftやWebAssemblyなどの言語でコードを書ける。それらはWebAssemblyにコンパイルされ、Atmoがデプロイし管理して、サンドボックス化された環境で動く。Atmoの核は、WebAssemblyのモジュールを動かすスケジューラーであり、しかもネイティブに近いパフォーマンスを約束している。

ヒックス氏が考える今後の姿は、多くのアプリケーション、中でも特にエッジのアプリケーションのデプロイで、このやり方がコンテナの役割に挑戦することだ。「リソースに制約のあるエッジの小さな環境では、ベアメタル上のWebAssemblyがコンテナの必要性のかなりの部分を置き換えてしまうのではないか、と彼はいう。

しかし、なぜ今どきこんなニッチのプロダクトをローンチするのか?「Atmo Pro」のようなものの方が、もっと妥当ではなかったか?しかしヒックス氏の主張では、それはまだ早いという。考え方そのものがまだとても若いので、マーケットの状況はまだそれに対して熟していない。

「Atmoサービスをホストすればお金になるほど、広く普及してはいません。Atomのホスティングや、有料のプロバージョンで儲けるなんて不可能だと気づいた以来、私は『多くの人がお金を払ってでも購入したいと思うような、実際にビジネスを構築できるものは何か?』と自問しています」とヒックス氏はいう。

ヒックス氏によると、現在、チームは4名だがすでにパートナー探しを始めている。ただし2022年は、インフラストラクチャを大きくして、オペレーションの能力を上げることが先決だという。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フードテックPerfeggtが植物由来の代替卵販売に向け3.2億円調達

世界市場では、乳製品や肉などの植物由来の代替品の売上が急増しており、Perfeggtは卵でも同じことをしたいと考えている。

ベルリン拠点のフードテック企業Perfeggtは、2022年第1四半期にドイツ、スイス、オーストリアでニワトリが存在しない卵製品をデビューさせようとしている。まず製品を立ち上げ、その後2022年後半にヨーロッパで事業を拡大すべく、同社は現地時間11月25日、初のラウンドで280万ドル(約3億2000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドの出資者は、EVIG Group、Stray Dog Capital、E2JDJ、Tet Ventures、Good Seed Ventures、Sustainable Food Ventures、Shio Capitalだ。

PerfeggtのCEOであるTanja Bogumil(タンジャ・ボグミル)氏は、Lovely Day Foods GmbHの傘下にあるPerfeggtを、EVIGの創業者でCEOのGary Lin(ゲーリー・リン)氏、ドイツのベジタリアン・ビーガン食肉メーカーRügenwalder Mühleで長年R&D責任者を務めたBernd Becker(ベルント・ベッカー)氏と2021年初めに共同で設立した。

Perfeggtの共同設立者、左からベルント・ベッカー氏、ゲーリー・リン氏、タンジャ・ボグミル氏(画像クレジット:Patrycia Lukaszewicz)

「私たちはもっと良い食べ物を食べるべきだと心から信じています」とボグミル氏は話す。「私の母方の家系は小規模な農業を営んでいたので、私たちが食べるものがどこからくるのかを常に意識してきました。12歳のときにベジタリアンになったのは、叔父が屠殺場に連れて行ってくれて、自分が食べていたソーセージが正しい方法で作られていないことを教えてくれたからです。そこで起こっていることを完全に理解していたわけではありませんが、正しいとは思えませんでしたし、人道的とも思えませんでした」。

すでにサステイナビリティが確立されている乳製品とは異なり、卵はまだ未開発の部分が多いとボグミル氏は考えている。確かに、Simply Egglessや、2021年夏の初めに2億ドル(約230億円)を調達したJust Eatなど、同様の植物性代替品を製造する企業はある。しかし、世界では年間1兆3000億個以上の卵が生産されており、つまり成長の余地があり、用途も多様だとボグミル氏はいう。

Perfeggtの最初の植物性卵製品は、空豆から作られたタンパク質が豊富な液体の代替品だ。この製品は、フライパンでスクランブルエッグやオムレツのように調理することができる。同社はまず、外食産業向けに製品を発売する予定だ。

他の食品と同様、味が肝心だ。この製品では、口当たり、感覚、風味、食感が似ているものを目指したが、これらの要素はすべて、人々が植物性の代替品に切り替えるために必要だとボグミル氏は話す。

「これは、私たちが時間をかけて見つけ出したものです。私たちの製品は、これらの用途に必要な機能性を模倣するのに非常に適した空豆を中心に作られています」と同氏は付け加えた。

そのため、ドイツのエムスランドにあるPerfeggtの研究開発拠点では、生命科学の研究で知られるワーヘニンゲン大学・研究機関と緊密に連携し、動物性食品の栄養的・機能的特性に最も近い植物性タンパク源とその組み合わせを検証している。

今回の資金調達により、同社は本社と研究開発施設のチームを増強する。同社では現在、食品科学者、マーケティング、研究開発を担う人材を募集している。

一方、ボグミル氏は、卵の代替品の分野に参入する企業が増えることは、人々を植物性食品にシフトさせるというPerfeggtの使命につながると考えている。

「これは1人勝ちの市場ではありません」と同氏は話す。「代替タンパク質がこれほどまでにメインストリーム市場に近づいたことは、歴史上初めてのことです。明らかに、これは資本市場に反映されており、ニッチ市場の開拓だけでなく食の未来にも影響を与えています」。

E2JDJの設立パートナーであるStephanie Dorsey(ステファニー・ドーシー)氏は、声明文で次のように付け加えた。「私たちは、次世代の代替タンパク質を開発し、人間や地球、動物の健康を向上させるソリューションを見つけたPerfeggtの急速な技術進歩に、非常に感銘を受けています。卵市場は巨大な機会であり、これは始まりにすぎません」。

画像クレジット:Patrycia Lukaszewicz

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

寿命を延ばす研究に役立つオープンリサーチリソースを立ち上げるLongevicaが約2.8億円調達

ライフサイエンス企業であるLongevica(ロンジェビカ)は現地時間11月24日、オープンリサーチツールを立ち上げると発表した。医薬品試験を行う科学者や研究機関が、1000以上の薬理学的化合物の効果を追跡するデータセットにアクセスできるようにする。

これは、バイオテクノロジー企業である同社の最新の取り組みだ。同社は、健康的な加齢と寿命延伸メカニズムの研究のために、Xploration Capitalがリードしたラウンドで250万ドル(約2億8750万円)を調達した。

Longevicaは4月、研究成果に基づくサプリメントのラインナップを発表した。同社は11年以上前にスタートし、現在では長寿関連の投資家であり同社の社長でもあるAlexander Chikunov(アレクサンダー・チクノフ)氏をはじめとする投資家から1550万ドル(約18億円)以上を調達した。

関連記事:長寿スタートアップのLongevicaが長期研究に基づくサプリメントを発売予定

Longevicaの共同創業者でCEOのAinar Abdrakhmanov(アイナー・アブドラフマノフ)氏はTechCrunchに対し電子メールで、ステルス状態から抜け出した当初は、研究成果をできるだけ早く活用する最良の方法を見つけ出し、消費者向けの製品をいくつか市場に投入することに主眼を置いていたと語った。

「しかし、一連の深いインタビューを通して、長寿分野のほとんどの科学者にとって、インフラが不足していることがわかりました。私たちは、提携を通じた多くの研究の活用のために、社内のエンジンを共有することにしました。研究者にとって仕事に必要なデータプラットフォームを提供するのです」とアブドラクマノフ氏は付け加えた。

長く生きることは、人間とペットの両方を対象に、他の企業も取り組んでいる分野だ。世界のアンチエイジング医薬品市場は、2020年に約80億ドル(約9200億円)となり、2027年には倍増すると予測されている。

一方、Crunchbase Newsが7月に長寿分野のスタートアップ企業の状況を調査したところ、この分野で活動している30社以上が、合わせて数十億ドル(数千億円)の資金を調達していることがわかった。最近の例では、2700万ドル(約31億円)を調達したLoyalがある。同社は、動物の長寿を調べ、人間の長寿につなげるという長期的なビジョンを掲げている。

Longevicaが資金調達を開始したのは、エンド・ツー・エンドのオープンリサーチプラットフォームのアイデアを思いついたときからだ。今回調達した資金は、そのプラットフォームの開発と、同社の研究データセットの統合を支えるために使う。

アブドラフマノフ氏は、科学研究を消費者が使える製品にするパイプラインを検証することが目的だと述べている。

「加齢や寿命に関する仮説は数多くありますが、それらの仮説を実際に検証して、誰が正しいのかを見極めることが、明らかにボトルネックになっています」と同氏は付け加えた。「私たちのプラットフォームは、科学界が答えに少しでも近づくために役立つはずです」。

チクノフ氏とLongevicaの共同創業者であるAlexey Ryazanov(アレクセイ・リャザノフ)博士が主導した当初の研究では、1033種類の化合物をテストし、有意な寿命延伸効果を示した。その研究については、査読付き論文の発表が間近に迫っている。アブドラフマノフ氏は、これは「どちらかというとムーンショットプロジェクト」だという。この方向性であれば、より早く結果を出すことができ、業界全体にとっても有益であることを、同社の投資家たちは見抜いていたとも述べている。

新たな研究能力を手に入れたLongevicaは、ジャクソン研究所での新たな研究で、300種類の化合物をより深くテストする。また、2022年1月には、6月に開始される本格的な薬理学的スクリーニング実験で薬を試したい研究者から、申請の受け付けを開始する。

「また、1月に私たちは公開データベースを始めます。マウスを使ったほとんどの長寿関連の実験のマークアップデータを含み、公開されているものと、まだ発表されていないものの両方があります」とアブドラフマノフ氏は話す。「このプラットフォームはすべて無料のオープンソースで、プログラムコードもGitHubで公開されます」。

画像クレジット:Vinoth Chandar

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi