ビールの醸造かすを生分解性フィルムに変えるMi Terroが1.7億円調達

あるやり手の起業家が、ビール醸造大手AB Inbev(ABインベブ)と家庭用品の大手Unilever(ユニリーバ)が主催する100以上のアクセラレータープログラムに参加し、あるパターンを発見した。醸造所には大量の醸造かすがあり、家庭用消費財にはプラスチック問題がある。この2つの問題の架け橋となるべく登場したのが、農業廃棄物をタンパク質に加工し、プラスチック代替品や飼料などとして利用できるようにするMi Terro(ミテロ)だ。同社は、生産規模を拡大するために150万ドル(約1億7000万円)を調達した。

Mi Terroの創業者Robert Luo(ロバート・ルオ)氏は「洗濯洗剤ポッドTide Podsを思い浮かべてみてください」と話す。「私たちの製品は、Tide Podsで使われているポリビニルアルコールに似ています。唯一Tide Podsと違うのは、マイクロプラスチックが含まれていないことです。私たちの製品は水溶性で、室温で水に分解することができます。また、生分解性を有してもいます。当社のデータでは、自然分解には1年ほどかかるとされています。工業用堆肥化施設では、180日以内に分解できます」と説明する。

ルオ氏は2018年に、中国の叔父の酪農場を訪れたことがきっかけで、会社を立ち上げた。そこでは大量の牛乳が廃棄されていた。そして、腐った牛乳をただ捨てるのではなく、何か価値のあるものを作れないか、と興味を持った。最初に開発したのは、牛乳の搾りかすを使った繊維製品だ。この繊維は10万ドル(約1100万円)分ほど売れ、今でも日本に顧客がいる。しかし、この分野ではB2Cモデルは非常に難しいことが分かった。そこで、アクセラレータに参加し、同様のプロセスで産業用途があることを発見した。

「中国のBudweiser(バドワイザー)とつながりができ、価値の低い醸造かすを大量に抱えていることを知りました。彼らは、メタンや地球温暖化の間接的な原因となる牛の飼料として処理するよりも、もっと良い利用方法を考案したいと思っていました」とルオ氏は説明する。「そこで、私たちが以前開発した方法を用いることで、農業廃棄物を堆肥化できる包装材に変える新しい解決策を導き出すことができました。そして、これが当社が2020年からやっていることです」。

AstanorがMi Terroの150万ドルラウンドのリードインベスターで、同社の価値を1000万ドル(約11億円)と評価した。Astanorは少し前に食品と農業技術を専門者とするファンドを立ち上げ自律走行トラクターマイクロプラスチックの除去植物由来の食品気候リスクの脅威分析、そして今週初めには温室用のAI技術など、さまざまな企業への投資でこの分野において急速にその名を知られるようになってきている。

Mi Terroの従業員は現在5人で、この中には中国にいる製品専門家も含まれる。同社は中国に製造拠点を設け、また米国にオフィスを設置する計画だ。今回の投資は主に生産規模の拡大に使われる予定で、ラボでのやり方に若干の変更を加えることになる。

プラスチックに代わる生分解性フィルムに入っているMi Terroのプロトタイプの洗剤ポッド(画像クレジット:Mi Terro)

「生産規模を拡大するためには、加工の方法が変わり、設備も変わってきます。そしてもう1つ、ビール醸造所から当社の施設まで醸造かすを配送するための物流コストも考慮しなければなりません」とルオ氏はいう。「そのために最適な場所を探す必要があり、生産拡大に向けてはその点も考慮しなければなりません。輸送費がかさみ過ぎないように、慎重にならざるを得ないのです」。

Mi Terroのプロセスには2つのステップがある。農業廃棄物からタンパク質、繊維、デンプンなどのポリマーを抽出し、ポリマーを分離した後、モノマーを結合して他の製造工程で使用できるポリマーにするというグラフト化で改良を行う。このようにしてできた素材は、パスタを作るのと同じように、液体のような素材をスリットから押し出し、形成できるため、現在プラスチックが使われている多くの用途に使用することができる。ストローや容器、箱などを作ることが可能だ。同社が最初に作る製品は、ビールのラベルやTide Podsなどのパッケージのようなフレキシブルフィルムだ。

「現在、顧客向けに2つのソリューションを開発しています。1つは水溶性で、水溶性が必要な用途に適しています。もう1つは耐水性です」とルオ氏は話した。

画像クレジット:Mi Terro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

持続可能な低炭素ジェット燃料開発のAlder Fuelsに航空大手UnitedとHoneywellが出資

航空産業は脱炭素化が難しいことで悪名を馳せている。これは部分的には航空機が石油ベースの燃料を使って飛んでいるからだ。

Alder Fuels(アルダーフューエルズ)はそうした状況を変えたいと思っている。Bryan Sherbacow(ブライアン・シャーバコウ)氏率いる新興のクリーンテック企業である同社は、既存の航空機やエンジンに手を加えることなく石油燃料と100%互換性のある燃料として使うことができる低炭素のジェット燃料を開発中だ。現在市場で入手可能な持続可能航空燃料(SAF)はまだ従来の燃料との50対50の割合でブレンドする必要があるため、同社の取り組みは注目に値するものだ。

同社のテクノロジーは航空産業の興味をかき立ててきた。Alder Fuelsは現地時間9月9日、航空大手United(ユナイテッド)とHoneywell(ハネウェル)から数百万ドル(数億円)もの出資を受けることで契約を交わした、と明らかにした。またUnitedとは燃料15億ガロンの購入契約も締結した。航空産業におけるSAF契約としては過去最大となる。

Unitedは年40億ガロンの燃料を消費している、と同社の広報担当は語る。つまり、今回の購入契約は同社が1年間に消費する燃料の40%近くに相当することになる。

ただし、Alder Fuelsの燃料がUnitedの航空機を飛ばすようになる前に、さまざまな種類の材料や製品の基準を定める国際組織、ASTM Internationalが定めた規格を満たさなければならない。その後、AlderとHoneywellは2025年までにテクノロジーを商業化する見込みだ。

Alder Fuelsは2021年初めに正式に事業を開始したが、シャーバコウ氏はここ5年ほど同社のテクノロジーを査定してきた、とTechCrunchとの最近のインタビューで述べた。低炭素燃料を支えるテクノロジー、そして特に原材料はスケーラブルで広範に利用できるべき、ということが同氏のこれまでの取り組みで明白になった。

「我々が模索しているのは、こうした炭素を排出する前の油にどのようにアクセスして、既存の精製インフラの中で使えるものに効率的に変換するのか、ということです」とシャーバコウ氏は話した。

その問題を解決するために、同氏は農業廃棄物のような炭素が豊富な木質バイオマスに目を向けた。農業廃棄物は航空燃料を作るのに使うことができる原油に変わる。Alder Fuelsは、バイオマスを液体に変え、既存の製油所に流し込むような方法で扱える、熱分解ベースのテクノロジーを使っている。同社はまずHoneywellが持つ「Ecofining」水素化処理技術を活用する。最終的な目的はすべての精製設備に合う新燃料を作ることだ。

「すでに産業的に集約されているものの、今日まだ経済的価値がなかったりかなり少なかったりする、かなりの量の木質バイオマスがあります」とシャーバコウ氏は説明する。「しかし我々が利用できるカーボンの貯蔵であるため、我々にとっては大きなチャンスです」。林業、農業、そして製紙産業の企業にとっても新たなマーケットを開拓することになる可能性がある。そうした分野の企業はすでに有り余るバイオ廃棄物を生み出している。

Alder Fuelsの研究は米国防兵站局とエネルギー省から支援を受けており、シャーバコウ氏は航空産業の脱炭素化を進める上での官民提携の重要性を強調した。ジョー・バイデン政権にとって気候変動は大きな関心事であり、持続可能な航空燃料に対するインセンティブは議会が現在議論している3兆5000億ドル(約385兆円)支出案に含まれる可能性大だ。

「移行をサポートするのは政府の役目の1つです。企業の行動を変えるためにインセンティブを与える必要があります。そうでもしなければ、企業は破壊的な変化に抵抗するでしょう」と同氏は述べた。

画像クレジット:United

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi