医師が子供の肺の音を遠隔で聴くことができるStethoMeのスマート聴診器

自分や子どもが呼吸器系の病気になったとき、何が起きているのかを時々刻々と探り、そして治療がどの程度うまくいっているのかを把握することは、ストレスやフラストレーション、不安をともなう作業だ。現在のような呼吸器系疾患のパンデミックの中では、それは本当に大変なことだと思う。

今週開催のTechCrunch Disrupt Startup Battlefieldに参加するチームStethoMe(ステソミー)は、喘息持ちの子どもとその親のために、この問題を少しでも軽減しようと考えている。同チームが作成したのはスマートなコネクテッド聴診器だ。この聴診器は親が自宅で肺の検査を行う際に役立つもので、子どもの主治医に対して高音質の録音を送ったり、機械学習を利用して潜在的な懸念事項を発見したりすることができる。

これがその装置だ。

画像クレジット:StethoMe

デバイスの電源を入れ、携帯電話から検査内容を指示すると、ビルトインスクリーンが手順をガイドしてくれる。胸のどの位置に機器を置くか、部屋の中が静かかどうかなどをデバイスが教えてくれるのだ。6〜8カ所を測定した後で、呼吸数や心拍数、そしてウィーズ音(笛のような音)やラッセル音(液体によるゴボゴボした音)、クラックル音(ブツブツ、プツプツ、バチバチなどの破裂性、断続性の音)などの音声異常を検出したかどうかなどの詳細なレポートを提供する。

そこから、レポートへのリンクを子どもの主治医に直接送ることができて、医師は胸の各ポイントから録音された音声を聞くことができる。一方、音響分析グラフ(スペクトログラム)は、各録音の概要を視覚的に示し、システムが検出した異常をフラグとラベルで表示する。そのレポートは以下のようなものだ。

画像クレジット:StethoMe

この情報は、両親や医師が喘息発作をより早く、より正確に発見するのに役立ち、また薬の長期的な効果を判断するのにも役立つ。つまり、検知しにくい症状を緩和するために、ある薬が他の薬よりも優れているかどうかという判断だ。投与量を少し増やして効果はあっただろうか?

共同創業者のWojciech Radomski(ヴォイチェフ・ラドムスキー)氏によれば、彼らの製品は、すでにEUではAIとデバイスの両方に対してCEマークを取得して医療機器として認証されていという。また米国におけるFDA認証プロセスは現在進行中だ。

TechCrunch Disruptで同社は、ポーランドの保健省が1000台のデバイスを購入し、今後半年間で100人以上の医師とパイロットテストを実施するという契約を締結したことを発表した。ラドムスキー氏は「この1カ月間だけで、すでに7万回以上の録音が行われたました」という。

個人的な話になってしまうかもしれないが、私はこのアイデアがとても気に入っている。私は幼少期に喘息を患っていた。一時期私は喘息に支配されていて、たとえお医者さんが一旦喘息を鎮めてくれたとしても(ああ、科学の力に感謝します)、6歳の私は喘息の発作が起きているか、起きようとしているといつも思い込んでいた。息ができないという恐怖感が、押しつぶされそうな不安感を引き起こし、それが息ができないと思い込ませたのだ。現時点では、私がこの製品の効果について語ることはできないが(それはFDAの仕事だ)、私はこの製品を梱包してタイムマシンに入れ「これを使って、楽に息をしてくれ」というメモも添えて1993年の幼い私に送り返すことができたらと思う。(そしておそらく「追伸:ビットコインを早めに買うこと」とも書き添えて。まああまり過去を狂わせてはいけないだろう)。

StethoMeによれば、現時点で数回のラウンド(40万ドル[約4400万円]のプレシード、200万ドル[約2億2000万円]のシード、250万ドル[約2億7500万円]のシリーズA)を実施し、ポーランドの国立研究開発センターから300万ドル(約3億3000万円)近くの助成金を受けている。

画像クレジット:StethoMe

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(文: Greg Kumparak、翻訳:sako)

州の中絶禁止法に対する解決策を提供、バーチャルクリニックのHey Janeが約2.4億円調達

より多くの州が人工妊娠中絶を禁止するある種の法案を可決する中、遠隔医療による妊娠中絶ケアを提供するバーチャルクリニックのスタートアップHey Janeは米国時間8月26日、220万ドル(約2億4000万円)の資金調達を発表した。オーバーサブスクライブとなったこのラウンドには、Koa Lab、Gaingels、Foursight Capital Partnersを含む投資家グループが参加した。

リモートファーストを目指すHey Janeのアイデアは、2019年に同社の創業者でCEOのKiki Freedman(キキ・フリードマン)氏が数人の友人と交わした、ミズーリ州は妊娠中絶クリニックが残り1つとなっている6つの州のうちの1つだという会話から生まれた。中絶医療提供者への攻撃を避けるために仮名を使うフリードマン氏は、実際にはこのクリニックはその夏に閉鎖が予定されており、それはミズーリ州が中絶ケアをまったく持たない最初の州になることを意味していたと説明する。同クリニックは最終的には開業を続けることができた

「当時、私が目にした新興の遠隔医療クリニックの多くは男性のウェルネスに焦点を当てており、女性の健康については語られていませんでした」とフリードマン氏はTechCrunchに述べている。「このバーチャルモデルは、安全かつ慎重な中絶ケアに使えると考えました」。

匿名を希望するHey Janeの投資家の1人は「フリードマン氏とHey Janeに投資することに大いに期待を抱いた」のは、女性の健康が十分なサービス提供を受けていないカテゴリーであることに同意したからだと話す。男性の医療とは異なり、女性の医療では中絶ケアが分離されている。これは、レーガン大統領が中絶ケアを病院と切り離すよう義務付けたことに端を発している。

Planned Parenthoodによると、女性の4人に1人が45歳までに中絶するという。しかし、米国では2021年だけで90件以上の中絶に関する規制が制定されており、その数は総計1320件にのぼることが、Guttmacher Institute(性と生殖に関する健康と権利の向上に取り組む非営利の研究・政策組織)により明らかにされている。アーカンソー州とオクラホマ州では現在、患者の生命が危険にさらされている場合を除いて、中絶をほぼ全面的に禁止している。一方、アイダホ州、サウスカロライナ州、テキサス州では、妊娠6週以降、あるいはごく限られた例外を設けて中絶を禁止している。

2020年7月、連邦判事は女性が医師の診察を受けずに妊娠中絶薬を入手することを認めた。このことは、Hey Janeやその他の企業が妊娠10週未満の人々に「非接触」サービスの提供を開始する道を開いた。

249ドル(約2万7000円)の同社の治療には、医師によるスクリーニング、FDAが承認した薬の処方と患者の自宅への翌日配送、フォローアップのためのバーチャル訪問、そしてプロセス全体における医師とのチャットが含まれる。Hey Janeのチームも、テキストメッセージを通じて患者を頻繁にチェックする。

同社によると、金銭的な障壁を取り除くことは「Hey Janeにとって極めて重要な優先事項」であるという。同社はまだ保険を受け付けていないが、非営利の妊娠中絶基金パートナーReprocareを通じて経済的援助を行っている。この組織は、患者の負担が139ドル(約1万5000円)に抑えられるよう、249ドルの治療費のうち最大110ドル(約1万2000円)を助成している。

今回の資金調達により、Hey Janeは新たな州への展開を図り、7人のチームを増強してプロダクトおよび自動化プロセスの構築と法的調査を進めて、各州における遠隔医療の法制と遠隔医療の妊娠中絶に関する法制の動向を常に把握し、対応できるようにしていく。

Hey Janeが従うべき規制要件は州ごとに複数あり、その中には、臨床医が診療を行うのはライセンスを受けている州の患者に限定されることなどが含まれている。このため、同社は事業を展開する各州でライセンスを取得した臨床医を擁しており、適切な時期に薬を処方する準備ができている。また、必要に応じて精神的な苦痛を和らげる専門家も待機している。

Hey Janeは8月下旬からカリフォルニア全域で活動を開始し、ニューヨークとワシントンでもサービスを展開している。つまり、Hey Janeのサービスエリアは現在、米国で年間に行われる人工中絶の34%をカバーしているとフリードマン氏はいう。「カリフォルニア州とニューヨーク州では年間の中絶件数が最も多いため、これらの州が最初に選ばれました」と同氏は言い添えた。

「これらの州の人々はクリニックへのアクセスが比較的容易になっているかもしれませんが、Hey Janeによるケアは安全で効果的であり、クリニックでのケアの半分の費用で済むため、彼らはHey Janeの治療からより大きな恩恵を受けることができるでしょう」とフリードマン氏。「移動や育児のための費用や時間を必要とせず、プライバシーと裁量を確保し、精神的なサポートを追加することができます」。

フリードマン氏は、2021年末までに10州への進出を果たし、今後数年のうちに50州すべてで治療を提供できるようになることを期待している。しかしながら、19の州で遠隔医療による中絶へのアクセスを制限する規制上の障壁が存在する。Hey Janeは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAdvancing New Standards in Reproductive Healthの研究グループと組んで、そのための情報を集めている。

「私たちは一流の研究者と協力して、この治療法が安全かつ効果的で、患者に好まれていることを示す、豊富にある既存の証拠の拡充に努めています」と同氏は続けた。「この研究が規制の厳しい州での議論をさらに前進させ、最終的には古い規制に対する、より必要とされる患者中心のアップデートにつながることを願っています。遠隔医療による中絶の安全性と有効性に関する既存のデータは、これが中絶医療の未来であることを明確に示しています」。

Hey Janeは現在、同サービスを利用する患者数を四半期ごとに250%増やしている。同社は成長に伴い、連携したケアや新プロダクトのための追加ツールに力を入れている。

妊娠中絶は、審判的な扱いや差別の心配から秘密にされることが多い。患者が慎重を期して自分の経験や感情を共有できるような、切望されていた手段をHey Janeは提供していくとフリードマン氏は語っている。

「私たちは利便性とプライバシーを重視しています。3分の2の女性が自分の経験について話すことを望んでいないため、私たちはそうした女性たちのためのスペースを提供したいと考えています」。

女性の健康問題は、極めて個人的なものである。あなたやあなたの知人が女性の健康に関する個人的な問題に悩んでいる場合は、主治医やかかりつけの地域医療クリニックに詳細を問い合わせて欲しい。

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

スマホでできるパーキンソン病などの神経変性疾患のデジタル治療を開発するNeuroglee

シンガポールに本拠を置くNeuroglee Therapeutics(ニューログリー・セラピューティクス)は、神経変性疾患患者のためのデジタル治療処方を開発しているスタートアップ企業だ。同社はシリーズAの資金調達ラウンドを実施し、1000万ドル(約11億円)を調達したと発表した。この資金は、バーチャルな神経学クリニックの設立や、Neurogleeのボストンへの移転をサポートするために使用される。今回の投資ラウンドはOpenspace Ventures(オープンスペース・ベンチャーズ)とEDBIが主導し、Mundipharma(ムンディファーマ)の前CEOであるRamen Singh(ラマン・シン)氏、Biofourmis(バイオフォーミス)の共同設立者であるKuldeep Singh Rajput(カルディープ・シン・ラジプート)氏とWendou Liu(ウェンドウ・リウ)氏、そして2020年Neurogleeの前ラウンドを主導した日本の製薬会社であるエーザイが参加した。

創業者兼CEOのAniket Singh Rajput(アニケ・シン・ラジュプット)氏は、同社がボストンへ移転する理由について、メールでTechCrunchに次のように語った。「ボストンは世界最大のデジタルヘルスハブの1つです。アルツハイマー病のような治療が困難な神経変性疾患に関連する軽度認知障害を治療するための最初のソリューションを開発することに専念している企業として、ボストンはそのための戦略的支援を私たちに提供してくれると信じています」。

Neurogleeは現在、Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)と共同で、Neuroglee Connect(ニューログリー・コネクト)と呼ばれる新しいプラットフォームを開発している。これは、神経変性疾患の可能性がある軽度認知障害者を対象にメイヨー・クリニックが実施している10日間の対面式プログラム「HABIT(Health Action to Benefit Independence and Thinking、自立と思考のための健康行動)」をベースに、Neurogleeの技術でその規模を拡大し、患者や介護者が自宅で利用できるようにするものだ。Neuroglee Connectのユーザーは、24時間体制で対応するヘルスナビゲーターや、評価や干渉を行う臨床治療チームからも、サービスを受けられるようになる。

Neurogleeの製品パイプラインには、パーキンソン病や脳卒中のデジタル治療処方も含まれている。

Neurogleeは、2020年12月に前回の資金調達を発表して以来、アルツハイマー病向けのデジタル治療処方箋ソフトウェアである「NG-001」の製品開発に成功するなどのマイルストーンを達成してきた。現在はNG-001がFDA(連邦食品医薬品局)からBreakthrough Designation(画期的新薬指定)を獲得するための概念実証試験に着手したところだと、ラジュプット氏は語っている。

Neurogleeのアダプティブラーニング(適応学習)テクノロジーは、患者の認知機能、気分、行動に関連するバイオマーカーと機械学習を利用して、各患者にパーソナライズした治療プランを自動的に作成する。患者は自宅から、スマートフォンやタブレットを介してこのソフトウェアを利用できる。

「例えば、患者の指が動く速度、ゲームやタスクを完了するまでの時間、デバイスのカメラで確認した患者の顔の表情などに基づいて、タスクやゲームの数や種類が調整されます」と、ラジュプット氏は語る。「このソリューションには、患者の過去の映像を使ってポジティブな記憶や感情を呼び起こし、認知機能を向上させる回想療法も組み込まれています」。

画像クレジット:Neuroglee

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)