消費者向け遺伝子検査市場縮小を受けAncestryが6%の従業員を解雇

消費者向け遺伝子検査市場の活況が減速する兆しが続いている。過去2週間で、消費者遺伝子検査サービス最大手2社である23andme(23アンドミー)とAncestry(アンセストリー)をレイオフの嵐が襲った。Ancestryは2月5日、ブログ投稿で従業員を6%削減することを発表した。CNBCが最初に報じた

レイオフを発表したブログの投稿で、Ancestryの最高経営責任者であるMargo Georgiadis(マーゴ・ジョージアディス)氏は次のように述べた。

過去18か月間にわたりDNA市場全体で消費者需要が減速していることが確認された。アーリーアダプターのほとんどが市場に参加した今、DNA市場は転機を迎えている。将来の成長には、消費者の信頼構築と、人々により大きな価値をもたらす革新的な新製品の開発に継続して力を注がねばならない。Ancestryは、その革新をリードし、家族史と健康の両方で新発見を促すための良い位置にいる。

本日、市場の現実に合わせて当社の事業をさらに良い位置につけるため、焦点を絞った変革に踏み切った。これは難しい決定であり、従業員の6%に影響が及ぶ。従業員に影響を与える変更は、細心の注意を払って実行される。実施した理由は、AncestryHealth事業で見込まれる長期的な機会と中核事業である家族史事業へさらに注力し、また投資を強化するためだ。

Ancestryの動きは、1月下旬の23andMeの人員削減に続くものだ。23andMeは100人(従業員全体の約14%)の従業員を解雇した。

Business Insiderが昨年8月に報じたように、遺伝子検査会社のIllumina(イルミナ)は、DTC(Direct to Consumer、D2C)遺伝子検査市場の「やわらかさ」について警告した。

「以前はDTC市場の見込みを消費者需要に基づき予測していたが、予期しない市場の軟調を受け、近い将来の成長予測について慎重な見方をしている」と同社の最高経営責任者であるFrancis deSouza(フランシス・デソウザ)氏は第2四半期の決算報告で述べた。遺伝子検査の結果がどう使われるのか、消費者はプライバシーの問題に気づき始めたようだ。

「クレジットカードは解約できるがDNAは変えられない」と、市民団体Tactical TechのデジタルセーフティーおよびプライバシーのディレクターであるMatt Mitchell(マット・ミッチェル)氏は今年初めにBusiness Insiderに語った

プライバシーの専門家と法学者によると、米国のプライバシー法はDNA検査の結果がどのように使用されているのか、また潜在的に悪用される可能性についても現実に追いついていない。

「米国では、遺伝情報の保護に一般的なプライバシー法を適用せず、固有の問題として取り組んできたが、それは本当に悪いアイデアだったというのが関係者の結論だ」と、ブランダイス大学法学教授およびルイビル大学生命倫理健康政策法律研究所所長のMark Rothstein(マーク・ロススタイン)氏は5月にWiredに語った

GEDMatchと呼ばれるオープンソースの系図サイトから収集されたDNA証拠に基づき「ゴールデンステートキラー」の調査が行われ、最終的にJoseph James DeAngelo(ジョセフ・ジェームズ・デアンジェロ)が逮捕された一件は、消費者がこの問題についてじっくり考えるきっかけになったはずだ。

この事件では、デアンジェロの親類がサイトにアップロードした情報を、捜査官が犯罪現場でDNAと照合し、一致に近いことを確認した。その情報が他の詳細と関連付けられ、最終的に容疑者をデアンジェロに絞り込んだ。

消費者向け遺伝子検査サービスは苦戦しているかもしれないが、投資家の臨床遺伝検査に対する期待は高まる一方で、InVitaeのような上場企業の株価は上昇し、非上場会社であるColorはT. Rowe Priceのリードで投資家から約7500万ドル(約83億円)の資金を新規調達した。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

遺伝子検査のスタートアップ「Veritas Genetics」 で不正アクセスによるデータ漏洩が発生

DNA検査のスタートアップであるVeritas Geneticsは、データ漏洩によって一部の顧客情報が不正アクセスされたことを発表した。米国マサチューセッツ州ダンバース拠点の同社は、ユーザー向けポータルの情報が「最近」漏洩したと語ったが、「いつ」かは言わなかった。ポータルにはテスト結果や医療情報は置かれていなかったものの、具体的にどの情報が盗まれたかを会社は明らかにしておらず「影響を受けた顧客はわずかだった」とだけ伝えた。

同社は公式な声明を発行しておらず、ウェブサイトでもデータ漏洩があったことを記載していない。広報担当者のRodrigo Martinez(ロドリゴ・マルティネス)氏は、データの「盗難」を否定したが、それを裏付ける証拠は提示していない。声明にデータ漏洩の詳細は書かれていなかった。

Bloomberg(ブルームバーグ)が最初にこのニュースを報じた。Veritasの競合には、23andMe、Ancestry、MyHeritageなどがいる。個人のDNAを使ってヒトゲノムを分析・解釈することによって、ユーザーは将来自分が直面する、あるいはや子どもたちに引き継がれる健康リスクを知ることができると同社はうたっている。

盗まれたデータに個人の健康情報は含まれていなかったが、DNAやゲノムという繊細な情報を取り扱う会社がユーザーのデータを保護できなかったことで、いっそう懸念が再燃することは必至だ。

プライバシーは遺伝子検査における緊急な課題であり、警察当局が刑事事件の容疑者を特定するために、DNA収集会社や遺伝検査会社の協力を法的に要求していることから特に懸念されている。つい先日の報道によると、フロリダ州の警察署がDNA検査会社であるGEDmatchの全データベースを検索することを認めるという「画期的」な捜査令状が発行された。同データベースは昨年、連続殺人犯「ゴールデンステートキラー」の逮捕に警察が利用したことで知られている。

MIT Technology Reviewの調査によると、2600万人以上のの消費者が在宅遺伝子検査キットを使ったことがある

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook