巨大な電子レンジを使って短時間かつ安価に金鋳物を製造するFoundry Lab

Easy Bake Oveenを覚えているだろうか?色のついた粉と水を混ぜて生地を作り、それを型に入れてオーブンに入れると、いつの間にか「チーン!」と鳴って気持ちの悪いお菓子ができあがる。ニュージーランドを拠点とするスタートアップ企業のFoundry Lab(ファウンドリー・ラボ)は、化学物質と「オーブン」の代わりに、金属と電子レンジを使って同じようなことをする方法を発見した。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)のPeter Beck(ピーター・ベック)氏から支援を受けているFoundry Labは、米国時間11月29日に800万ドル(約9億900万円)のシリーズA資金を調達してステルス状態を脱した。同社は「文字通り、巨大な電子レンジ」を使って、金属の3Dプリントよりもはるかに早く金属部品を鋳造すると、創業者兼CEOのDavid Moodie(デイヴィッド・ムーディ)氏は述べている。

「ユーザーにとっては非常に簡単です。文字どおりの型を取り、冷たい金属の粉末や金属の鋳塊を投入し、電子レンジに入れてボタンを押して立ち去るだけです」と、ムーディ氏はTechCrunchに語った。「出来上がったときには、チーンと音も鳴ります。電子レンジで夕食を温めるのと同じくらい簡単です」。

(Foundryの電子レンジは、ニュージーランドの典型的なミートパイの調理にも使用されたことがある。わずか数秒で出来上がったものの、ムーディ氏によるとすばらしい味ではなかったそうだ)

インベストメント鋳造、3Dプリント、ダイキャストなどの一般的な鋳造方法では、製造に1週間から6週間かかる。Foundryによると、同社ではコンピューター支援設計(CAD)で3Dプリントした金型と巨大な電子レンジを使って、自動車用のブレーキシューを8時間足らずで完成させたことがあるそうだ。現在は亜鉛とアルミニウムに対応しているが、ステンレススチールの試作にも成功しており、将来的には銅や真鍮などの他の金属にも挑戦したいと考えているという。

Foundryの技術は、将来的には金属の3Dプリントがカバーできない製造業に適用することが考えられるものの、当面の目標は、自動車メーカーの研究開発チームが量産に入る前のテストや試作に使用できる、量産型と同じように機能する金属部品を開発するのに役立つことだ。

「私たちが交渉中のある企業では、1台の自動車が市場に出るまでに600台もの試作車を作っています。その間に変更や改良を繰り返すため、あっという間に費用がかさむことになります」と、ムーディ氏は語り「そのための工具の費用は5万ドル(約560万円)から10万ドル(1120万円)以上になることもあります」と付け加えた。

ムーディ氏は、Foundryを設立する前、工業デザインのコンサルタント業を営んでおり、大量生産のための製品を設計していた。試作品では3DプリンターやCNCマシンで製造された部品を使用しているため、量産品とは物理的な構造が違っている可能性があるという理由で、試験機関から常に申請を却下されることに、同氏は不満を感じていた。

「そこで私は、ニュージーランド人らしく物置に行き、運良く機能する方法を見つけたのです」と、ムーディ氏はいう。最近のニュージーランドでロックダウンが行われていた期間には、ムーディ氏が作業場に入れなかったため、実験の多くは一般的な電子レンジを使って行われたという。「我々が解決しようとしているのは、実際の鋳造であり、ダイキャストをシミュレートしながら、それをより速く、安く行うことです。ダイキャストを作るために工具で機械加工をすると、3~6カ月かかってしまうのが普通です」。

Foundryはまだ設立から間もない会社だ。現在はその超大型の電子レンジを数台しか所有しておらず、潜在的な顧客に試用してもらっている段階だ。今回のシリーズAラウンドは、オーストラリアで設立されたVCのBlackbird(ブラックバード)を中心に、GD1、Icehouse(アイスハウス)、K1W1、Founders Fund(ファウンダース・ファンド)、Promus(プロマス)、WNT Ventures(WNTベンチャーズ)が出資している。同社ではこの資金を使って、2023年末までに生産体制を整える予定だ。

さらに資金の一部は、スタッフの増員にも充てられる。同社はここ数カ月で急速に成長しており、資金調達を開始した当初は6人だったスタッフが、現在は17人のフルタイム社員を擁するまでになっている。さらに今後数カ月で35人に増やすことを目標としているものの、ニュージーランドでは新型コロナウイルス感染拡大の影響で国境が閉鎖されているため、難しい状況だ。

「国境が閉鎖されていることが、私たちに打撃を与え始めています」と、ムーディ氏はいう。「この国にはマイクロ波の専門家が2人いますが、2人とも仕事を持っています。これが特に大変です。だから、誰かに助けに来てもらおうとしているところです」。

ニュージーランドでは、今週オークランドがロックダウンを解除し、12月中旬には都市の境界線が国内の他の地域に開放されるなど、内部的な開放が始まっている。オミクロンの新種が事態を悪化させない限り、2022年4月30日からワクチンを接種した旅行者の受け入れを始める予定だ。そうすれば、Foundryをはじめとするニュージーランドのスタートアップ企業は、海外から人材を採用するチャンスを得ることができる。

Foundryはニュージーランドを拠点に開発を進めながらも、米国や欧州の市場をターゲットにしている。同社のロングゲームは、電子レンジの研究を続け、大量生産に必要な台数を製造できるようにすることだ。

画像クレジット:Foundry Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

需要に対する工場の対応力向上のため金属加工の製造サプライチェーン見直すFractory

新型コロナウイルスのパンデミックで甚大な被害を受けた製造業界。しかし最近、その活気を取り戻す兆しがいくつか見えてきた。その1つは、変動する経済やウイルスの感染拡大など不安定な要素によって需要が上下するなか、需要に対する工場の対応力を高めるべく、新たに取り組みが進められている点だ。柔軟なカスタム製造で新たに頭角を現しつつあるスタートアップ企業のFractory(フラクトリー)は、2021年9月初旬、シリーズAで900万ドル(約9億8900万円)の資金調達をしたことを発表し、その傾向を改めて際立たせる結果となった。

この資金調達は、初期成長やポストプロダクション、ハイテクのスタートアップなどに注力する欧州の投資会社、OTB Ventures(OTBベンチャーズ)主導で進められた他、既存の投資会社であるTrind Ventures(トリンド・ベンチャーズ)Superhero Capital(スーパーヒーロー・キャピタル)United Angels VC(ユナイテッド・エンジェルズVC)Startup Wise Guys(スタートアップ・ワイズ・ガイズ)、そしてVerve Ventures(ヴェルヴェ・ベンチャーズ)もこの調達に参加した。

Fractoryはエストニアで設立され、現在は英国・マンチェスターを拠点とする会社だ。従来、国内の製造業向けの強力なハブとして存在し、顧客と緊密な協力体制を築いてきた。そのFractoryが、カスタムの金属加工品を必要とする顧客がより簡単にアップロードや発注ができるよう、そして工場側もそれらのリクエストに応じて新規の顧客や仕事を獲得できるように、プラットフォームを構築したのだ。

FractoryのシリーズAは、当社のテクノロジーを引き続き展開し、さらに多くのパートナーをエコシステムに取り込む目的で用いられる。

現在までに、Fractoryは2万4000人もの顧客を獲得し、何百もの製造業者や金属関連会社と連携してきた。合計すると、250万個以上もの金属部品の製造を支援してきたことになる。

ここで整理しておくと、Fractory自体は製造業者ではなく、同社にはそのプロセスに参入する計画もない。業種はエンタープライズ向けソフトウェアであり、製造(現在は金属加工)を担当できる会社向けにマーケットプレイスを提供し、金属加工品を必要とする会社とやり取りしている。インテリジェントなツールを活用して必要な加工品を特定し、該当の加工品を製造できる専門の製造業者にその潜在的な仕事を紹介するというわけだ。

Fractoryが解決しようとしている課題は、多くの業界のそれと同じである。さまざまな供給や需要が発生し、変動が多く、一般的に仕事の調達方法が非効率なケースだ。

Fractoryの創設者兼CEOのMartin Vares(マーティン・ヴァレス)氏は、筆者に対し、金属部品を必要とする企業は1つの工場を得意客にする傾向があるようだと話す。だが、これはつまり、その工場が仕事に対応できない場合は企業が自力で他の工場を探さないといけないということだ。時間がかかるうえ、費用も重なるプロセスとなる。

「製造業は非常に断片化した市場で、製品の製造方法も幅広くあるため、その2つの要素が複雑に絡まり合っているんです」ヴァレス氏は続ける。「昔は、何かをアウトソーシングするには何通ものメールを複数の工場に送る必要がありました。とはいえ、30社ものサプライヤーに個別に送ることは到底できません。そこで、ワンストップのショップを立ち上げたのです」。

一方で、工場はダウンタイムを最小化するため、仕事の工程を改善できないか常に模索している。工場としては、仕事がない時間帯に作業員を雇ったり、稼働していない機械のコストを払ったりする事態を避けたいのだ。

「アップタイムの平均キャパシティは50%ですね」とヴァレス氏は、Fractoryのプラットフォームにおける金属加工施設(さらには業界全般の施設)についてこのように述べている。「使用中の機械よりも、待機中の機械の方がずっと多いんです。そこで、余剰キャパシティの問題を何としても解決し、市場の機能性を高めて無駄を削減したいと考えています。工場の効率性を高めること、これが持続可能性にもつながるのです」。

Fractoryのアプローチは、顧客をプロセスに取り込むスタイルだ。現在、これらの顧客は一般的に建築業界をはじめ、造船、航空宇宙、自動車といった重機産業に多く存在し、これらの顧客に、必要な製品を規定したCADファイルをアップロードしてもらっている。これらのファイルは製造業者が集まるネットワークに送信され、そこで仕事の入札と引き受けが行われる。フリーランス向けマーケットプレイスの製造業版といったようなものだ。その後、これらの仕事のうちおよそ30%は完全に自動で進められ、残りの70%については、仕事の見積書や製造過程、配達などのアプローチに関してFractoryが関与する形で顧客にアドバイスを行っている。ヴァレス氏によると、今後はさらにテクノロジーを搭載し、自動化できる割合を増やしていくとのことだ。RPAへの投資を拡大するだけでなく、顧客の希望や最適な実行方法をより良く把握するためのコンピュータビジョンについても投資を拡大する。

現在、Fractoryのプラットフォームは、CNC加工などの仕事を含め、レーザー切断サービスや金属の曲げ加工のサービスについて発注の支援を行っている。次の目標は、産業向けの3D印刷に対応することだ。石細工やチップ製造など、他の素材についても検討を進める。

「製造業は、ある意味では最新化がいつまでたっても進まない業界ですが、それも驚くことではありません。設備が重く、コストも高いため「壊れるまで修理はするな(触らぬ神に祟りなし)」というモットーは通常この業界では通用しないからです。そのため、せめて従来からある設備をより効率的に運用しようと、よりインテリジェントなソフトウェアを構築している企業が、ある程度基盤を固めることができているのです。米国で生まれた大手企業のXometry(ゾメトリー)は、同じくカスタム部品を必要とする企業と製造業者の架け橋を築いた企業ですが、そのXometryは2021年初めに株式を公開し、今では時価総額が30億ドル(約3,292億円)以上にのぼっています。他にも、Hubs(ハブズ)(現在はProtolabsによって買収)やQimtek(キムテック)などが競合として存在します」。

Fractoryが売り込んでいるセールスポイントは、一般的に顧客の地域に根差した製造業者を重視することで、仕事における流通の側面を低減させ、炭素排出量を抑えられるよう取り組んでいる点だ。ただし、会社の成長に応じて当社がこのコミットメントに遵守しつづけるのかどうか、そうであればどのようにそれを実現するのかは今後に注目だ。

現在のところ、投資会社はFractoryのアプローチとその急速な成長を証拠に、これからも業界に影響を及ぼすだろうと見込んでいる。

「Fractoryは、他の製造環境では見られないエンタープライズ向けのソフトウェアプラットフォームを生み出しました。急速に顧客を獲得している事実から、Fractoryが製造サプライチェーンにもたらす価値は明らかに実証されています。これは、イノベーション対応できるエコシステムを自動化し、デジタル化するテクノロジーです」Marcin Hejka(マルチン・ヘイカ)氏は声明でこのように述べている。「私たちはすばらしい製品と才能あふれるソフトウェアエンジニアのみなさんに投資しました。彼らは、製品開発に全力を注ぎ、圧倒的なスピードで国際的に成長しつづけています」。

画像クレジット:Fractory

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

コモディティ取引のデジタル化を進めるOpen Mineralが約36億円を調達

2018年に、コモディティ取引に透明性を取り込むことを目指しているOpen Mineral (OM)がどのようにして225万ドル(約2億5000万円)を調達したかを取り上げた。いやはや、長い道のりだった。そしていま、ようやくその時が来た。スイス拠点の同社はMubadala Investment CompanyがリードしたシリーズCラウンドで3300万ドル(約36億円)を調達した。既存投資家のXploration Capital、Emerald Technology Venturesに加えて、新規投資家のStatkraftとLingfeng Capitalも参加した。

Open Mineralは、サプライチェーン業者の活動を強固なものにするのに資金を使う、と話す。コモディティ取引マーケットは2000億ドル(約22兆円)の価値があり、今日でもいまだに紙の書類が飛び交っておりデジタル化が進行中だ。

Open Mineralのプラットフォームには世界の金属・鉱業の企業900社超が登録しており、コモディティサプライチェーンにわたってOpen Mineralの価格設定アルゴリズムを使用していると同社は話す。

業界のデジタル化と同様、売り手と買い手に「自然に優しい」ESG(環境、社会、ガバナンス)指標を組み込むためにサードパーティのプロバイダーと協業している、とも語る。

同社はまた「物理的な金属一次産品の取引をより効率的でよく情報が提供されたものに、そして収益性の高いものにする」自動化された材料ブレンド/製錬の最適化ソリューションを開発したと主張する。これらは炭素低排出への移行に影響を及ぼす、とのことだ。

CEOで共同創業者のBoris Eykher(ボリス・イーカー)氏は声明で次のように述べた。「金属取引産業の未来はデジタルデータと分析にあり、マーケット参加者がこれまでよりも迅速にコミュニケーションを取り、そしてすばやくデータ駆動の決定を行うことができます。eBayが買い手と売り手に多くの選択肢を提供して小売購入を刷新したように、当社はOpen Mineralプラットフォームのキュレートされ、信頼できる環境で物理的なコモディティ生産者のために同じことを行います」。

MubadalaでロシアとCISの投資の責任者を務めるFaris Al Mazrui(ファリス・アル・マズルイ)氏は「Open Mineralはデータ分析テクノロジーを活用することでコモディティ取引事業をディスラプトしています。卑金属商品の買い手と売り手はより効率的に取引し、そして恩恵を受けるためにユニークな専用データハブを利用することができます」。

画像クレジット:Open Mineral

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

熱プロセスも粉末も使わずコスト削減、金属3DプリントのFabric8Labsが約21.2億円調達

Fabric8Labsは、米国時間7月20日朝、1930万ドル(約21億2000万円)を調達したと発表した。今回のシリーズAは、Intel Capital(インテルキャピタル)が主導し、Lam Capital、TDK Ventures、SE Ventures、imec.xpand、Stanley Ventures、そして著名投資家のMark Cuban(マーク・キューバン)氏が参加している。2018年半ばに調達した400万ドル(約4億4000万円)のシード資金に続くものだ。

サンディエゴに拠点を置くこのスタートアップは、金属の3Dプリントに特化している。過去2年間にDesktop Metal(デスクトップメタル)やMarkforged(マークフォージド)がSPAC経由での上場を決定したことからもわかるように、ここ最近、ホットなカテゴリーである。Fabric8Labsは、低コストとエネルギー消費量の低減が同社のプロセスの利点の1つだとしている。

「当社のプロセスは本質的に異なっており、粉末や熱プロセスを利用しません。代わりに、室温で動作し、電力需要が大幅に低く、低コストの金属塩から作られた水性溶液を利用する電気化学的蒸着法を採用しています」とCEOのJeff Herman(ジェフ・ハーマン)氏はTechCrunchに語った。「汎用的な価格の原材料と電力効率の高いプロセスを組み合わせることで、総所有コストと部品あたりのコストを一段階削減することができます」。

同社によれば、今回の資金調達は、年末までに従業員数を2倍に増やし、既存技術の開発を強化し、高解像度の銅片を印刷する能力を披露するために使われるという。同社はこの技術を市場に投入することを計画しているが、一般的な市場での展開を目指すまでには数年を要すると述べている。

どのような積層造形であっても、スケーラビリティは常に最大の疑問点の1つだ。ハーマン氏は、Fabric8Labsは製造用の3Dプリントをしっかりと視野に入れているという。

ハーマン氏はこう語る。「当社の技術は非常にスケーラブルです。パートナーと共有しているビジョンは、未来の工場に大規模なスケールで当社の技術を導入し、大量生産に対応できるプロセス能力と経済性を備えたものにすることです。Fabric8Labsを導入した工場は、50以上の自動化されたシステムで構成され、大規模な原料タンクを共有することができます。これは、現在稼働している他の大規模な電気化学プロセスと同様です」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Fabric8Labs3Dプリント資金調達金属

画像クレジット:Fabric8Labs

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

金属加工のDXを推進する「Mitsuri」運営のCatallaxyが総額4.1億円調達で未来の製造業を目指す

Mitsuriサービスのイメージ

Mitsuriサービスのイメージ

特注金属部品における受発注の商取引プラットフォーム「Mitsuri」を提供するCatallaxyは3月22日、第三者割当増資により総額約4億1000万円の資金調達を行ったと発表した。引受先はインキュベイトファンドとSMBCベンチャーキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、長瀬産業、パビリオンキャピタル、エンジェル投資家となる。

金属部品の図面を工場に持ち込んで、職人と膝を突き合わせて話し合う。そんな当たり前に思える仕事を、オンライン上で完結するプラットフォームが「Mitsuri」だ。日本の金属加工技術は世界レベルである一方、現場は労働集約型で動いているという。

Catallaxyは2020年3月17日に約3億2500万円を調達したばかりだが、ここ1年の累計調達額は約7億3500万円となった。また、直近3年間でみれば累計調達額は約8億1000万円に上る。事業スピードを上げていく中、Mitsuriを通じてレガシーな金属加工業界のDXを進める。

依頼総額30億円を超えたMitsuri

日本の金属加工技術は世界レベルで、金属製品製造業は約15兆円という巨大産業であるものの、労働集約型のオペレーションによる競争力低下が大きな課題となっているという。経済産業省によると、2019年における金属製品製造業の事業所数は、従業員30人以上であれば約4400となる。一方、従業員が4人以上の場合は約2万5000であり、この小規模な事業所におけるDXの推進が特に急がれている。

Mitsuriは2018年のリリースされ、2019年には依頼総額が30億円を超えた。さらに2021年2月までには、全国300社の協力工場と、1万を超える発注社数を抱えるプラットフォームに拡大している。

Catallaxyは全国100カ所以上の工場に足を運び、業界の課題を直接ヒアリングした上で、Mitsuriを作り上げた。Mitsuriは、従来の発注業者が自社のCADオペレーターが作った図面を工場に持参して説明し、見積もりを依頼して、そして実際に発注するといった流れを根本から変えていく。

Mitsuriは金属加工の図面をアップロードするだけで、300社以上のパートナー工場から、同社が発注業者に合った加工業者をコーディネートする。発注業者はそこから見積もりや仕様など、条件に合った加工業者を選び、オンライン上で具体的な商談が始められるというものだ。

加工業者側からすれば、Mitsuri上で同社の専門スタッフと発注業者が上流工程を行っているため、製品製造に集中することができる。このため、納期遅れは全体の3%未満となっている。

また、発注業者が金属加工に専門的な知識を持っていなくても、金属部品を選び、見積り比較から発注までオンライン上でできる「Mitsuriカタログ」も提供している。Mitsuriカタログは、希望する金属部品がなければ、カタログ上で希望と近い金属の形状からカスタマイズできる。そこから自動で図面を作成され、そのまま発注も可能なセミオーダー方式となっている。

金属加工業の無人化を

Catallaxyは今回の資金調達によって、Mitsuriを通して金属加工業界における商取引・生産管理のデジタル化や見積りの自動化、ソフトウェア前提の部品製造を促進していく。

金属加工業界は依然、レガシーな業界構造だ。メール、FAX、対面、書面での営業活動、生産管理が常態化している。

Catallaxyは「現状、金属加工業界は商談や生産管理のスタンダードが確立されていない。各工場で Microsoft Excelや紙を中心とした管理をしており、生産性が低い状態が続いている。Mitsuriのウェブシステムを浸透させ、これまで工場内で営業職や管理職、CADオペレーターが担っていた業務を8割削減することで、業界スタンダードになることを目指す」と述べた。

また、見積りの自動化については、Mitsuriで3DCAD、2DCADの自動見積りを可能にし、これまで不透明だった特注部品価格を対応できる工場ごとに比較できるようにしている。自動化ではカバーしきれない場合、同社専門スタッフがCADファイルなどを解析し、解析内容と加工内容を紐づけて稼働時間を割り出すことで、見積り金額を算出する流れも作っている。

この他、Catallaxyは職人の知識や機械などの加工能力をデータ化に成功。協力工場に工作機械を動かすためのプログラムコードとして送り、工場ではそのプログラムコードを元に金属を加工できるようにしている。ソフトウェアを前提とした部品製造により、職人のスキルに依存せずに再現可能なQCD(Quality・Cost・Delivery)を提供することで、属人化していた金属加工業界を変えていく。

Catallaxyはこれらの施策をさらに推し進めることで、金属加工業の無人化を果たし、未来の製造業を作り上げる狙いだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Catallaxy資金調達金属加工DX日本