Boxが語るイノベーションへのアプローチ

毎日使っているソフトウェアとサービスが、どのように作られているのかを真剣に考える人はとても少ない。ただアクセスしたいときにそこにあり、ほとんどの場合うまく働いてくれると思っているだけだ。しかし会社というものは、ただ闇雲に出現したり拡大しているわけではない。イノベーションを続けるためにはきちんとしたプロセスと方法が必要だ、もしそうでなければ長続きはしないだろう。

Boxは、2005年の創業以来成長を続け、その年間収益は5億ドルを超えるまでになった。成長の過程で同社は、その中心を消費者むけのものから、企業のコンテンツマネジメントへとシフトした。そしてオンラインとファイル共有が主力サービスだったプラットフォームを拡張し、さまざまなコンテンツサービスをクラウドの中で提供するものとなっている。

私はつい最近、プロダクトならびに戦略責任者のJeetu Patelと話をする機会をもった。Patelの仕事の大きな部分を占めているのは、同社の開発チームを維持すること、そしてBoxプラットフォームを強化し、新しい顧客を引きつけ、収益を増加させる新しい機能に集中することだ。

基本的な考え方

問題を解決しようとする前に、まずその問題に取り組む適切な人びとのグループが必要となる。Patelによれば、チームを構築のためには、製品とチームの開発の指針となるいくつかの主要原則がある。それは、イノベーティブなソリューションを生み出し、資金と人員という意味でのリソースをどこに投入すべきかに集中させてくれる、ルールと行動基準から始まる。

図表:Box

イノベーションに関して言えば、市場の変化する要件に対応できるようにチームを構成しなければならず、今日のテクノロジー業界ではアジャイル(敏捷)であることが、これまで以上に重要だ。「チームに邪魔が入らず、十分なスピードと自律性が与えられるような、正しい構造を得るためには、イノベーションエンジンをチーム、モチベーション、人材採用の視点から構築しなければなりません」とPatelは説明する。

そして、顧客と市場を十分に把握する必要がある。そのためには、市場の要求を絶えず調査し、その要求に応えるためのプロダクトと機能の構築を目指さなければならないし、それらの賞味期限にも気を配らなければならない。

顧客から始めよう

Patelによれば、つまるところ、同社はそのプロダクトの不備な点を埋めていくことで顧客の役に立ちたいのだと言う。企業理念の観点の中心から眺めるとき、それは顧客から始まる。ひょっとすると、それは顧客への迎合を意味しているように聞こえるかもしれないが、ゴールを心の中にしっかり持てば、それが全体プロセスのための指標として働いてくれると彼は語る。

「私たちは心に持つ中核理念を元に、企業の中で働くひとたちの全てが、顧客の問題を起点に逆算して働くように仕向けなければなりません。しかし、その戦いの90%を占めるのは、解くべき正しい問題を選び出すことです」と彼は言う。

難しい問題を解決しよう

Petelは、解くべき問題の品質がプロジェクトの成果物の品質に直接比例すると強く信じている。その一部は、実際の顧客の苦労を解決することだが、エンジニアたちに挑戦することでもある。簡単な問題なら、ほとんどの場合には首尾よく解決することができる。しかし、その場合には最高のエンジニアリングの才能をもつ人たちを集める必要はない。

「もし多くの使命と目的を伴う真に難しい問題を考えていれば、本当に最高のチームを引きつけることができるのです」と彼は言う。

これは多くの価値を追加できる問題を探すことを意味する「あなたが時間を費やすために選ぶ問題は、現在市場に存在するものに対して10倍もの価値を独自に提供できるものでなければなりません」とPatelは説明する。もしそのレベルに達していないなら、顧客を動かす動機を与えることはできず、従って追求する価値のないものだと彼は信じている。

小さなチームを作れ

大きな問題を特定することができたら、その問題への取り組みを始めるためのチームを作る必要がある。Patelはチームを管理可能な大きさに保つことを推奨する、そして彼はAmazonの「2枚のピザチーム」アプローチの信奉者である…つまり2枚のピザでまかなえる8人から10人ほどのチームということだ。チームが大きくなりすぎると、調整が難しくなり、革新ではなく計画に時間が浪費されすぎるようになる。

「はっきり定義された程よい大きさのミッションを持つこと、そうしたミッションを遂行するための(小さな)チームを持つこと、そしてそうしたチームが敏捷性を保てるように大きくなりすぎないようにすること。そうしたことがプロダクトを開発する上でとても大切なコア運用原則です」とPatelは言う。

会社規模が拡大するに従って、それはさらに重要になる。そのための鍵は、成長するに従って、少数の大きなチームではなく、多数の小さなチームで構成されるような組織にしておくということだ。そのようにすれば、チームミッションをより正確に特定できる。

Box製品の開発

Patelは、Boxで新製品を最終的に構築する際には、4つの重要な領域を見ている。まず第一に、それはエンタープライズグレードでなければならない、すなわち安全で信頼性が高く、スケーラブルでフォールトトレラントといった特性が必要なのだ。

もちろんそれが第一だが、コンテンツマネジメント市場で、これまでBoxを特別なものにしてきたのは、その使いやすさだ。彼はそれこそが、ソフトウェア主導のビジネスプロセスから、多くの障害を可能な限り取り除くものだと考えている。

次に、企業内のプロセスをインテリジェントにしようとすることで、コンテンツの目的を理解することになる。Patelによればそうした検討には、より良い検索 、コンテンツのより良い表出、そして、企業内のワークフローを通じてそのコンテンツを移動させる自動トリガーイベントなどが含まれると言う。

最終的には、それがワークフローの中にどのように収まるかを見ることになる。なぜならコンテンツは、企業内の空洞の中にただ置かれているわけではないからだ。それは一般的に明確な目的を持ち、コンテンツ管理システムは各コンテンツを目的のためのより広いコンテキストの中に、容易に統合できなければならない。

2回測定せよ

これらの小規模なチームにミッションを設定したら、素早く作業を進めることができるようにルールとメトリクスを確立する必要があるが、さらに彼らが会社にとって価値のあるプロジェクトに取り組んでいることを判別するために、守らなければならないマイルストーンも定義しなければならない。悪いプロジェクトにさらに金を注ぎ込みたくはない。

PatelとBoxの場合は、チームが成功しつつあるのか、それとも失敗しつつあるのかを示すメトリクスが、常に存在している。こう聞くとシンプルなものに思えるが、マネジメントの観点からミッションとゴールを定義し、それを定常的に追跡するためには、多大な労力が必要とされる。

彼はそこには3つの要素があると言う:「考慮することは3つあります、作るものに対するプランは何か、作るものに対する戦略は何か、そして私たちそれぞれの協調レベルはどの程度なのかです。こうしたことが実際、作るものが成功するか失敗するかに大きく関わってくるのです」。

結局のところ、これは反復的なプロセスである。そのプロセスは企業が成長し発展するにつれて進化を続け、それぞれのプロジェクトや各チームから学んでいく。「私たちは常にプロセスを見て、調整が必要なものは何だ?と問い続けています」とPatelは語った。

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(翻訳:sako)

画像:Michael Short/Bloomberg/Getty Images