Birdがニューヨークで電動車いす用アタッチメントをテスト

共有型マイクロモビリティ企業であるBird(バード)は、障がい者がアクセスできるモビリティを増やすために、車いす用バッテリー駆動アタッチメントの試験的導入を限定的に開始する。

この新しい「adaptive program(アダプティブ・プログラム)」は、この夏に拡張されるニューヨーク市ブロンクスのeスクーター試験走行の一部となる。試験地域の個人はこのプログラムに申し込むことができ、参加資格があれば、Birdのチームが直接アタッチメントを届け、セットアップと使用方法を教える。

「セットアップは、Birdの技術者により30分から1時間かかります。最初に取り付けた後は、デバイスは数秒で車いすにラッチオン / オフするはずです」と、Birdの広報担当者はいう。

このプログラムは、Birdが、障がい者がアクセシブルなクルマを探して予約し、支払うことができるようにしたScootaround(スクータアラウンド)というオンデマンドのアクセシブルモビリティプログラムを拡大した数カ月後に登場した。

競合のLime(ライム)は、Lime Able(ライム・エイブル)という同様のアクセシビリティプログラムを行っており、Limeが障がい者や標準的なスクーターでは自信がない人に、3輪スクーターや座席付きスクーターなどの適応型車両を宅配(24時間レンタル)している。

Birdによると、同社の車いす用アタッチメントは、350ワットのモーター、軽量で取り外し可能なリチウムイオンバッテリー、前進と後退の別々のスロットルを備えており、利用者が時速12マイルまで進むことができる。同社は、このアタッチメントが、ライダーの傾斜地の移動や市街地の長距離移動をより容易にするという。

「Birdのadaptive programは、すでに私がより速く移動し、より多くのことを達成するのに役立っています」と、最初のプログラム参加者の1人であるブロンクス在住のEduardo Hernandez(エドゥアルド・ヘルナンデス)氏は声明の中で述べている。「新しいスピードは最高です。スーパーマーケットやその他の用事が非常に楽になりましたし、通常であれば非常に疲れる上り坂でも、信じられないほど役に立っています」。

多くの車いすは保険で賄われているため、このようなアタッチメントが保証を無効にするか、保険の規定に反するかどうかは不明で、Birdはこの件に関する説明に回答しなかった。しかし、Birdは、同社がニューヨーク市交通局、ニューヨーク市長室障がい者課、地元のニューヨーク市障がい者支援団体と協力して、参加者を探していることを明らかにした。

このサービスは現在、ブロンクス区の参加者に無料で提供されている。

画像クレジット:Bird

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

韓国LG Energyが約1700億円を投資し米国でのバッテリー生産を拡大

Tesla(テスラ)、Lucid Motors(ルシッドモーターズ)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Proterra(プロテラ)に電気自動車用バッテリーを供給する韓国のLG Energy Solution(LGエナジーソリューション)が、米国時間3月11日、14億ドル(約1697億円)を投じてアリゾナ州クイーンクリークに円筒形バッテリーの工場を建設することを発表した。

このことは、LG Energyが米国での存在感を高めていることを改めて明確にした。1月には、21億ドル(約2546億円)を投じてゼネラルモーターズと共同で、米国3番目のEV用バッテリー工場を建設する計画だと発表した。また2021年には、Stellantis(ステランティス)がLGとバッテリーセルとモジュールを北米で生産する契約を締結している。

今回のLGのアリゾナでの出資は、北米市場において、瞬発力を必要とする電動工具やEV・電動自転車などのモビリティ機械などに対する、円筒型セルや円筒型電池の応用需要が高まっている時期に行われる。需要が高まる理由は、LGの広報担当者によると、この種のバッテリーが比較的小さくエネルギー密度が高いからだという。

11ギガワット時規模の工場建設は、2022年第2四半期に開始され、2024年には量産が開始される予定だ。

LG Energyによると、同工場はEVメーカーに供給される円筒形バッテリーの、北米で初めての製造工場となる。ロイターの報道によると、Tesla、Lucid、ProterraなどのEVメーカーがその潜在的な顧客となる可能性があるという。LGは、契約手続きは進行中だと語ったが、アリゾナ工場がどの企業に供給するのかは明言を避けた。

LG Energyは、米国での生産能力の追加を検討しているという。1月には、LG Energyは新規株式公開により100億ドル(約1兆2145億円)以上を調達した

バッテリー製品をTeslaにも供給している日本のパナソニックは、オクラホマ州かカンザス州に工場建設用地を探していると、2月にNHKが報じている。また、トヨタは米国にバッテリー工場を建設し、2025年の生産開始を目指している。

米国でバッテリーを開発する海外バッテリー企業の流入は、ジョー・バイデン大統領が国家的なバッテリーサプライチェーンの確立のために数十億ドル(数千億円)の資金を確保するインフラ法案の産物なのかもしれない。

LGは、このようなサプライチェーン構築のために米国から提供される資金の受給資格があるかどうかの問い合わせには、締切までには回答しなかった。

関連記事:GMがシボレー・ボルトのリコール損失約1100億円をLG Chemに請求すると表明

画像クレジット:LG Energy Solution

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

ラストマイル配送用の電動自転車サプライヤーZoomo、三菱UFJイノベーション・パートナーズなどから約23億円調達

デリバリーワーカー用の実用電動自転車を作っているオーストラリアのZoomoが、この度、さらに2000万ドル(約23億円)を調達して同社のシリーズBを完了した。

2021年11月、同社は株と債務の両方で6000万ドル(約69億円)のシリーズBを調達し、ソフトウェア開発と自転車の増産に投じた。今回の追加投資により同社の調達総額は1億150万ドル(約117億円)になり、それらはすべて同社のグローバルな雇用増と、自転車の生産量増加、自転車店などのメカニクスと顧客企業の両方へのマネジメントの提供、そしてライダーのためのアプリの開発に使われる。

同社は、フォームファクターとアクセサリーを一新するZoom Oneと呼ばれる高性能な実用自転車を開発中している。

Zoomoはその電動自転車(eバイク)を、ギグワーカーに週20ドル(約2300円)、米国では30ドル(約3450円)でレンタル、料金にはサービスやサポートも含まれる。またUberEatsやDoorDashなど同社が提携しているアプリ利用のデリバリー企業に登録しているワーカーなら、安くなることもある。また同社はドミノ・ピザのような大企業顧客には、サードパーティ製のモペットを含むこともあるeバイク車隊を提供する。

Zoomoは2017年に創業。北米とアジア太平洋と、2021年加わったスペイン、フランス、ドイツなどのヨーロッパなど6カ国16都市に展開している。同社は、2021年はグローバルな売上が4倍、エンタープライズビジネスは20倍に増えたというが、「いつ」に対しての増加なのか、よくわからない。

「2021年はZoomoにとって変革の年であり、ギグワーカーに加え、企業やフリートマネージャーも当社の革新的なプラットフォームの恩恵を受けることができました。Zoomoでは、今後10年以内に、すべてのラストマイル配送が、Zoomoのエコシステムに支えられた軽電気自動車で完了する世界を見ています。私たちの投資家は、この実現に一歩近づくための手助けをしてくれるでしょう」と、Nada(ナダ)氏は声明で述べている。

今回のリード投資家はCollaborative Fundで、これに戦略的投資家として三菱UFJイノベーション・パートナーズとSG Fleet、Akuna Capital、そしてWind Venturesが参加した。戦略的投資家の参加はこれが初めてであり、さらに今後の特にラテンアメリカや日本における将来の有益なパートナーシップやイニシアチブが予想される。すでにWind Venturesはラテンアメリカ最大のエネルギーと林業企業であるCOPECのベンチャー部門であり、またMUFG Innovation Partnersは、Mitsubishi UFJ Financial GroupのOpen Innovation Strategyの企業向けVC部門だ。

関連記事:ギグワーカー向け電動自転車サブスクのZoomoが12億円調達、社名もBolt Bikesから変更

画像クレジット:Zoomo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルも

電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルもLuupは2月15日、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」(Android版iOS版)の新ロゴとともに、視認性を向上させた新しい電動キックボードを発表した。電動キックボードの新機体への移行は東京から開始し、他エリアへの導入に関しても順次検討する。またこれを記念し、「LUUP for your City」と銘打ち、電動キックボードの安全な社会実装に向けたLuupのこれまでの取り組みと目指す未来をまとめたコンテンツを展開する。

さらに、今回のロゴの刷新と合わせ、小型電動アシスト自転車のデザインを一新したモデルを開発中と明らかにした。機体の小型化に引き続きこだわって開発している他、サドルの安定性の向上やスマホホルダーの装着など、ユーザーから得られた様々なフィードバックを参考に、全体的なバージョンアップを施しているという。2022年の夏までの導入を目指して開発中しているそうだ。

電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルも

Luupが新しく開発中の小型電動アシスト自転車の新モデル イメージ

Luupは、「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」をミッションに、マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を展開している。電動アシスト自転車や電動キックボードのみならず、電動・小型・1人乗りのマイクロモビリティを包括的に取り扱い、将来的には高齢の方も乗ることができる新しい機体の導入を見据え、すべての人が自由に移動できる未来を目指している。

会社設立から3年半を迎えたLuupは、より身近な存在として、日々のファースト・ラストワンマイルの移動を支える次世代のインフラ的存在になるために歩みを進めるべく、コーポレートロゴおよびサービスロゴを刷新し、電動キックボードのデザインの視認性を向上させたという。電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルも

新ロゴについては、LUUPのもたらす移動に関する価値を基に、「expand you」というコンセプトでデザイン(制作 : kern inc.)。交通工学分野で採用されている緩和曲線(線路や道路などで、直線部と円曲線部をなめらかにつなぐために設ける曲線)から着想を得て、複数の曲率で「U」を描きなだらかなフォルムを作ることで、LUUPに乗った人々の身体性が拡張され、軽やかで自由な移動が実現するさまを表現しているという。を指す。また、ロゴを囲む枠線は、LUUPの機体が置かれるポートの線を元にしているそうだ。電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルも

また電動キックボードについては、「LUUPがもたらす価値をロゴだけではなくサービスの顔である機体でも表現し届けたい」「次世代のインフラ的存在を目指すにあたり、電動キックボードの視認性を向上させる必要がある」と考えたことから、デザイン変更に至った。

機体の色は、インフラとして街にやさしく馴染みつつ、どこか先進性や高級感を感じられるようなオリジナルのブランドカラーであるLUUP GREEN・白・黒によって構成。今回のリニューアルでは、機体上部を白、下部をLUUP GREENにすることで、開放感や自由さを感じさせながらブランドカラーが印象付けられるよう設計した。なおLuupは、現在に至るまで、安全に乗れるよう、電動キックボードの安定性や各種パーツの操作性の向上など11回のアップデートを重ね、改善を進めているという。電動マイクロモビリティシェアのLUUPがロゴ刷新、視認性を向上させた新電動キックボード発表―小型電動アシスト自転車新モデルも

LUUP for your Cityでは、電動キックボードの走行ルールと安全な利用方法を案内する「電動キックボードのご利用ガイドブック」、Luupが目指す未来、実施してきた実証実験の背景と、安全への取り組みについてまとめたウェブページ、交通ルールについて解説した動画を公開する。また一部ポートでは、スタッフが乗り方や走行ルールのレクチャーを行い、「電動キックボードのご利用ガイドブック」を配布するという。

韓国のマイクロモビリティスタートアップSwingが成長と日本への進出を目指し約27.6億円を獲得

韓国のeスクーターおよびマイクロモビリティのスタートアップ企業であるSwing(スイング)は、現地時間2月7日、同社の成長と日本への進出に拍車をかけるため、シリーズBラウンドで2400万ドル(約27億6600万円)を調達したことを発表した。

今回の資金調達は、ベルリンのTier Mobility(ティア・モビリティ)にも出資しているWhite Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)が主導し、既存の出資者であるHashed(ハッシュド)なども参加した。今回の新たな資金により、Swingは2019年の創業以来、合計約3300万ドル(約400億ウォン/約38億円)を調達したことになる。

Swingの創業者兼最高経営責任者(CEO)のSan Kim(サン・キム)氏はTechCrunchに対し、同社はこの資金をマイクロモビリティの車両を増やし、日本市場にさらに浸透させるために使う予定だと語った。Swingは2022年に、互いに交換可能なバッテリーを搭載した10万台のeスクーター、eバイク、eモペットを配備し、自社使用とオプションとして他社用の充電ステーションを200基設置する予定だ。Swingは現在、eスクーターやeモペットを含む3万5000台の電気車両を運営している。

Swingのアプリとは別に、このシェアマイクロモビリティスタートアップは最近、配達ライダーが充電の手間なく1日か2日だけeモペッドやeスクーターをレンタルできる「Dayrider」という新しいアプリを発表した。

ソウル市は9月、温室効果ガス削減のため、2025年までにeモペットを含むeバイクを6万2000台増やし、電動充電スタンドを20万台追加設置すると発表した。ソウル市はまた、配送業務に使用する3万5000台のオートバイを100%電気モーターに置き換えるとも発表した。

Swingが目指すのは、市場の奪取だ。同社によると、韓国には必要な需要を満たす適切なeモペットのモデルがなく、販売、修理、再販ができるサプライチェーンもなく、eモペットの潜在的ユーザーにサービスを提供するための充電ステーションもないとのことだ。

そこで、同社はフランチャイズ方式を採用したのだ。Swingの最高執行責任者であるJason Shin(ジェイソン・シン)氏は、同社がフランチャイズモデルを採用することで、同業他社よりも小資本で迅速に車両を拡大することができると述べている。Swingは、ブランド化した車両をフランチャイズ加盟事業者に販売する。そして、そのフランチャイズ加盟事業者はSwing独自のソフトウェアを使って、eスクーターの充電とメンテナンスを行う。現在、同社のフランチャイズ・パートナーは50社以上にのぼるという。

「市場の可能性を疑う者はいませんでした。問題は、誰が競争に勝つかということです。投資家の資金をつぎ込むよりも、社内に強力な運営チームを作って、スクーター1台1台を確実に収益につなげるという戦略をとり、それが功を奏しました」とシン氏は語る。

Swingは創業2年目から純利益を出しているが、狙った数字を期待通りに達成することはできなかったと、同氏はいう。さらに、2021年のeスクーター規制強化の影響で、新規ユーザーの利用が減少していることも付け加えた。

韓国では、eスクーターに関する規制が改正され、国内のeスクーター会社が打撃を受けているのだ。2021年5月に施行された改正道路交通法では、eスクーターのライダーは16歳以上で、有効な運転免許証を持ち、ヘルメットを着用することが義務づけられている。利用者がこの新しい規制に従わない場合、罰金が課されることになる。また、eスクーター利用者は自転車専用道路を使用し、人や車から離れた場所に駐車しなければならない。ソウル市は7月、違法駐車されたeスクーターをレッカー移動し、罰金を課すと発表している。

韓国では現在、20社以上のeスクーターレンタル会社が営業をしており、この分野では運行台数や会社数に制限はない。業界関係者はTechCrunchに対し、eスクーター業界では2021年から統合が始まったと語っている。2年前に韓国市場に参入したベルリンのeスクーター・プラットフォームWind Mobility(ウィンド・モビリティ)は、2021年10月にソウルでの事業を停止している。

日本への進出

2021年、同社は日本に子会社を設立し、現在2022年前半に東京でサービスを開始することを目指している。

キム氏は、日本の顧客と都市は、スマートフォンの普及率が高く、eバイクの利用も多く、駅間距離があるためラストマイルの移動に大きな需要があり、eスクーターに最適だと述べた。

「2021年、日本政府は概念実証を通じて、合法的にeスクーターのシェアリングを開始する扉を開きました。ソウルのスタートアップであるSwingは、非常によく似た環境での優れたオペレーションと蓄積されたデータにより、日本でのマイクロモビリティ導入をリードすることができます」とキム氏は語る。

「日本市場では、政府がガイドラインや規制の微調整を行うために実証実験を行っており、eスクーターの普及に向けたエキサイティングな時期に来ていると思います。White Star CapitalとSwingのパートナーシップは、Swingの技術力と韓国で長年培ってきたオペレーションノウハウを利用できる日本のステークホルダーにとって非常に有益なものとなるでしょう。日本ではラストワンマイルのロジスティクスが依然として課題となっていますが、Swingがこうした問題に対処し、ユーザー、ライダー、企業、公共部門に優れたモビリティ体験を提供できるよう支援できることを楽しみにしています」とWhite Star Capitalのベンチャー・パートナーである長尾俊介氏は述べている。

White Star Capitalのベンチャーパートナーである同氏は「欧州のTier Mobility(ティア・モビリティ)やFinn Auto(フィン・オート)といったリーディングカンパニーと提携する幸運にも恵まれ、モビリティは私たちにとって大きなフォーカスとなっています。大手企業との緊密なパートナーシップにより開発された強固なガイドラインと規制は、欧州が技術革新的なモビリティとその環境に対するプラスの影響を受け入れるための舞台を提供します。我々は、韓国と日本がこのトレンドに密接に追随し、マイクロモビリティが今後数年で重要な変曲点に達すると予想しています」とWhite Star CapitalのパートナーであるEddie Lee(エディ・リー)氏は述べている。「White Star Capitalは、サンと彼のチームと密接に協力し、日本への進出と新しいDayrider事業による物流能力の拡大を通じて、Swingのグローバル企業への野心的なビジョンを支援していきます」。

Swingは、韓国で100人以上、日本で4人の従業員を抱えてる。

画像クレジット:Swing

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

欧州のマイクロモビリティスタートアップのDottが約80.5億円獲得

アーバンモビリティスタートアップであるDott(ドット)は、シリーズBラウンド延長を獲得した。もともと2021年春の発表で同社が8500万ドル(約97億7800万円)のシリーズBラウンドを調達した際には、株式と資産担保債務のミックスだった。そして米国時間2月1日、同社はこのラウンドにさらに7000万ドル(約80億5200万円)を追加した。今回も再び株式と債務のミックスとなる。

Dottは、スクーターシェアリングサービスでよく知られるヨーロッパのマイクロモビリティスタートアップ企業だ。最近、同社は一部の都市でeバイクのシェアリングサービスも開始している。

abrdn(アバドン)はDottの既存投資家Sofina(ソフィーナ)とともにシリーズBの延長を主導している。その他、EQT Ventures(EQベンチャーズ)やProsus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)など、既存の投資家がさらに多くの資金を投入している。

Dottは、ヨーロッパで他のマイクロモビリティスタートアップと競合している。最も直接的な競合相手は、Tier(ティア)Lime(ライム)Voi(ヴォイ)である。価格設定やスクーターに関してはよく似ており、そのほとんどがOkai(オカイ)と協力してスクーターデザインを手かげている。しかし、必ずしもまったく同じ市場で事業を展開しているというわけではない。

現在、Dottはヨーロッパ9カ国の36都市をカバーしている。4万台のスクーターと1万台のバイクを管理している。Dottは収益の数字を共有していないが、同社は2021年に2020年に比べて130%多い利用を処理した。

マイクロモビリティ事業者の差別化要因として、他にロジスティクスと規制がある。ロジスティクスに関しては、Dottはプロセスを可能な限り内製化しようとしている。サードパーティの物流業者とは提携せず、自社で倉庫と修理チームを持ち、保有する車両のケアを行っている。

規制に関しては、同社はパリやロンドンといった憧れの市場で営業許可をいくつか獲得している。しかし、パリは現在、スクーターシェアリングサービスを厳しく規制しようとしており、新たに最高速度を時速10km(つまり時速6.2マイル)に設定した。現在、パリには最高速度時速10kmの低速ゾーンが700カ所ある。

関連記事:パリ、スクーターシェアリングサービスに時速10kmまでの制限を要請

ここで、2つの重要なポイントがある。まず、マイクロモビリティの会社を作るには、膨大な資本が必要だということだ。スクーターの購入にはお金がかかり、バッテリーの充電にもお金がかかり、すべてを円滑に進めるために人を雇うのにもお金がかかるので、これは驚くには値しないだろう。

第二に、規制の状況はまだ進化しており、スクーターのスタートアップにとってはまだ不確定要素があるということだ。Dottは電動バイクで製品を多様化させているが、これは賢い選択だと思う。また、充電の最適化を図り、より費用対効果の高いサービスを提供する計画にも注目したい。

画像クレジット:Dott

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

インドの電動スクーター企業Ola Electricが新たな資金調達で約5690億円の評価額に

インドの配車サービス大手のスピンオフであるOla Electric(オラエレクトリック)は初の電動スクーターの展開に苦労し、また同社の労働文化に疑問が呈されている中で、現地時間1月24日に新たな資金調達ラウンドで2億ドル(約230億円)を調達したと発表した。

Tekne Private Ventures、Alpine Opportunity Fund、Edelweissなどがこの新ラウンドに出資し、評価額は2021年9月の30億ドル(約3420億円)から50億ドル(約5690億円)になったと、ベンガルールに本社を置くOla Electricは明らかにした。

同社の共同創業者でCEOのBhavish Aggarwal(バビッシュ・アガワル)氏は声明で「投資家の方々の支援に感謝するとともに、EV革命をインドから世界へと広げるために彼らと協力することを楽しみにしています」と述べた。自動車を含め、より多くのカテゴリーに拡大することを検討していると、アガワル氏は語った。

Tiger GlobalとAlpha Wave Globalを既存投資家に持つOla Electricは2021年に、Ola S1という同社初の電動スクーターを発表した。価格は約1350ドル(約15万円)で、バッテリーを搭載したこのスクーターのフル充電時の航続距離は121キロメートル(75マイル)だ。

同社はスクーターの出荷を何度か遅らせているため、この数字はほとんどの人にとって仮説あるいは未検証の主張だ。せいぜい予約した顧客のごく一部しか受け取っていないのが現状だ。

一方、同じベンガルールに本社を置くスタートアップのBounce(バウンス)は、独自の電動スクーターを発表し、多くのアナリストがOlaの製品よりも優れていると話している。

インドで販売される車両のうち、全体の4分の3以上を二輪車が占めている。大手メーカーだけでなくスタートアップによる推進は、好意的に受け止められている近年の政府の奨励策と相まって、インドのEV推進を正しい方向に向かわせ始めている。UBSのアナリストは1月17日の週に発表したレポートで、2020年代末までにインドの全二輪車の37%が電動になると推定される、と書いている。

しかし、この予想が実現するためには、多くの要因が正しく作用する必要がある。

その1つは、インド最大のスタートアップの1社であるOlaの労働文化かもしれない。インドのメディアMorning ContextがOlaの有害な労働文化と不信感のある最高経営責任者について報じた結果、OlaとOla Electricではここ数カ月で複数の主要幹部が社を去った。アガワル氏は、最近73億ドル(約8310億円)の評価額で増資したOlaの共同創業者兼最高経営責任者でもある。

画像クレジット:MANJUNATH KIRAN / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

CESに登場したEV充電企業は家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

EV充電企業各社はここ数年間、CESで自社商品を展示してきた。2022年は、利害関係、そしてオポチュニティの度合いが若干高まっている。

数年以内に数十車種もの電気乗用車や商用車が市場に投入されると予想されており、EVはメインストリームになりつつある。より大きな市場には価格がついてくる。メインストリームの消費者は、ガスの燃料補給時間に匹敵する充電時間を期待し、優れたユーザーエクスペリエンス設計には慣れている。そしておそらく、ピーク時とオフピーク時のエネルギーグリッド時間について考える必要性はなかったであろう。

2022年のCESに登場した充電企業や小規模スタートアップはこのシフトを認識しているようで、迅速性、コネクティビティ、利便性、設置の容易性、電力網との連携において向上が図られたプロダクトのピッチを行った。特筆すべき点として、この大きな顧客基盤へのリーチに注力するEV充電企業各社は、商用車の充電から家庭での充電、Vehicle-to-Grid技術から充電器の広告スペースの収益化に至るまで、あらゆるユースケースに対応できるように設計されたプロダクトを披露している。

世界のEV充電器市場は2020年の32億3000万ドル(約3721億円)から2025年には110億ドル(約1兆2671億円)近くに成長すると予測されている。業界にはまだ新規参入者のためのスペースが残されているものの、その多くはデモやニュースでCESを飾ることはなかった。CESで技術を顕示した小規模企業は、独自のソリューション、豊富なコネクティビティ、充電速度のアップグレードという点で際立っている。

Blink Charging(ブリンク・チャージング)

Blinkは2022年、4つの新しい充電プロダクトを発表した。1つはDC高速ウォールマウント充電器であり、残りの3つはレベル2充電器で、フリートおよびマルチユニット用、家庭用、広告ディスプレイの統合用にそれぞれ設計されている。すべての充電器には、4G LTEおよびWi-Fi接続に加えて、フリート管理統合、負荷共有技術、エネルギー使用管理などのスマート性能が備わっている。

Blink MQ 200、フリートEV充電ステーション用

フリート、ワークプレイス、マルチファミリー向けに特別に設計されたこの50アンペアの充電器は、プラグアンドチャージ機能が搭載されており、車両から充電ステーションへの一意かつ暗号化された情報の流れを通じて車両の識別を自動的に行う。この機能は、その名前が示すように、ドライバーがプラグインするだけで充電セッションを開始できることを意味する。

2022年の第1四半期末までに利用可能になる「MQ 200」には、複数の充電器にまたがる直接ユーティリティ通信およびローカル負荷管理のためのスマートグリッド機能が付属しており、一回線に2〜20台の充電器を設置することができ、夜間のフリート充電に理想的である。また、Blink充電器をクラウドに接続するソフトウェアであるBlink Network(Blinkネットワーク)や、CESでローンチされたBlink Fleet Management Portal(Blinkフリート管理ポータル)とも通信する。同ポータルでは、フリート管理者向けに、充電および負荷管理、充電器、車両、ドライバーを追跡するダッシュボードを提供している。

Blink HQ 200、次世代家庭用充電器

「HQ 200」はBlinkの最新の家庭用充電器で、前世代の30アンペアから50アンペアのレベル2充電器にアップグレードされた。他のEV充電企業でも見られるように、家庭での付加的な電力供給は、各社が充電時間を短縮する方法を求めて競い合う中、2022年のトレンドとなっている。

消費者は基本的な充電器を選ぶ傾向にあるとはいえ、このスマートなWi-Fi対応バージョンは、実に私たちを魅了するものである。HQ 200はBlink初のV2G(Vehicle-to-Grid)技術搭載充電器の1つであり、ピーク以外の時間帯にはEVを充電し、ピーク時にはEVのバッテリーに蓄えられたエネルギーを電力網に戻すことができる。

HQ 200はさらに、Blink Mobile App(Blinkモバイルアプリ)に接続することで、即時の充電開始、充電時間のスケジュール設定、リマインダーの設定も可能になる。2022年の第1四半期末までに利用可能になる予定である。

同時に2台充電できるDC高速ウォールマウント

50キロワットのDC高速ウォールは、壁に取り付けたり、台座に設置したりすることができ、さらに同時に2台の車を充電することが可能で、車両、小売店、街角での充電、交通量の多い場所での使用に最適なものとなっている。最大出力150アンペア、V2G技術、10インチのタッチスクリーンディスプレイ、そして時間、キロワット時、あるいはセッションごとに課金する機能を備えている。また、Blink Networkを介したリモート管理とエネルギー使用量レポートが可能となっている。メンバーカード、RFIDクレジットカード、またはモバイルアプリを持つユーザーは、RFIDリーダーを使用して充電を開始することもできる。

「DC高速充電の予算がないと感じている店舗にとって、プライスポイントも魅力的になるでしょう」とBlinkの広報担当者はTechCrunchに語っている。「現在の既存の機器は通常3万5000ドル(約400万円)からですが、DCウォール50キロワットのコストは2万ドル(約230万円)未満です」。

Vision IQ 200(ビジョンIQ 200)、広告用

このレベル2充電器には、ダイナミックデジタルメディアディスプレイ用の30インチLCDスクリーンが1つまたは2つ付属している。小売店、ホスピタリティ事業、自治体施設や交通量の多い場所に理想的なフルサービスの広告性能を備えている。不動産保有者には充電と広告収入の両方の収益分配機会が提供され、後者はサードパーティーベンダーを通じて管理される。

「Vision IQ 200」は、80アンペアのIQ 200の充電器を1つか2つ搭載しており、RFID、Apple Pay、Google Walletおよびすべての主要クレジットカードによる支払いが簡単にできる他、リモート管理やリアルタイムのエネルギー使用状況レポートなどのスマート機能も備えている。

Blinkによると、DC高速ウォールは年内に利用可能になる予定である。

E-Lift(Eリフト)

E-LiftはCESで、カスタマイズ可能な新しいポップアップ式充電ステーション「E-LIFT GS」を発表した。このオランダの会社は、近くこれを北米でローンチすることを目指している。この小さなステーションには同時充電用のプラグが最大4つ付属しており、E-LiftのSustainable and Smart Energy Management System(SENSE、持続可能でスマートなエネルギー管理システム)に接続するセンサーを装備することができる。

SENSEプラットフォームは、ユーザーのモビリティとエネルギーのニーズを管理するシステムとして機能する。同社は声明の中で、顧客は遠隔地からログインして、モビリティとエネルギー消費データのモニタリングと管理を行うことが可能で「費用対効果の高いエネルギー転換が実現し、再生可能エネルギー資源の利用によって将来を再構築しようとしている政府や企業にとって有益なものとなる」と述べている。

JuiceBar(ジュースバー)

コネチカット州を拠点とし、Made in America基準を本格的に推進しているEV充電会社JuiceBarは、CESで同社初の家庭用充電器「Cheetah(チーター)」を発表、この名称は迅速さに由来すると同社は述べている。

Cheetahは2022年中に販売される予定で、同社によると、新しい充電器と交換される古い充電器すべてに対して1000ドル(約11万4600円)ずつ支払われるという。JuiceBarは米国とカナダで数百台の商用充電器を取り扱っており、この新しい家庭用充電器も同じ市場に投入される。

Cheetahは16、32、40、48アンペア構成で、入力電圧は120、208、240ボルトとなっている。Blinkの出力を見る限り、JuiceBarは市場で最速のレベル2にはならないが、近いところにある。CheetahはBluetooth、イーサネット、Wi-Fi、クラウド接続にも対応しており、スマートグリッドの充電に役立つ。25フィート(約7.6m)のコードが付属しており、絡まないコードリトラクターもオプションで用意されている。

家庭で充電するときの安心のために、Cheetahは二重のセーフティリレーを装備している。第1のリレーが閉じてヒューズが切れた場合に、第2のリレーが回路を開閉する。JuiceBarによると、充電器の電力は、充電器のカーボンフットプリントをオフセットする、100%認証済みのカーボン削減プロジェクトによって支えられているという。同社は初年度分のカーボンオフセットを購入することになっている。購入者はその後も、週1ドル(約115円)未満の会費でカーボンオフセットを購入できる。

Cheetahは第2四半期の終わりか第3四半期の初めに消費者向けに提供されると広報担当者はTechCrunchに語っている。当初は米国やカナダにおいて、自動車ディーラー、住宅建設業者、電力会社などの第三者を通じて販売される。

Wallbox(ウォールボックス)

Wallboxは、2022年のCESで「Quasar 2(クエーサー2)」を発表した。これは電気自動車の所有者が自宅や送電網に電気自動車を充電したり、放電したりすることを可能にするだけではなく、停電時に、それが自然災害によるものであっても、自宅を送電網から隔離し、EVをバックアップ電源として使用できる機能を提供する。Wallboxによると、Quasar 2は停電中でも3日間以上家に電力を供給できるという。

Vehicle-to-Home(V2H)機能は、特に電力料金が需要に関係する州で、EV所有者が家庭のエネルギーコストを節約するのに役立つはずだと同社は述べている。ユーザーは、レートが低いときに充電セッションが実行されるようにスケジュールを設定できる。また、太陽光発電を設置しているユーザーは、使用率が低いときにEVに余剰のエネルギーを蓄えることができる。

Quasar 2は48アンペアの電力を供給し、Jaguar I-PaceやBMW i3などの急速充電車に対応するCCS互換で、Wi-Fi、Bluetooth、イーサネット、4G経由でmyWallbox app(マイWallboxアプリ)に接続する。

Wallboxは、Quasar 2の価格を明らかにしなかったが、約4000ドル(約46万円)のQuasar 1相当になると説明した。2022年末までにローンチする予定である。

Meredot(メレドット)

この市場に出回るクルマは電気自動車だけではない。マイクロモビリティのクルマにも愛が必要だ。それこそが、Meredotが電動スクーター、電動モペッド、そしてフードデリバリーロボットや車椅子などの乗り物向けに設計された初の商用ワイヤレス充電器を発表した背景にある。この充電器は、地面の上または下に設置できる物理的なパッドの形態をとっており、受信機を搭載した車両がその上に駐車したときに充電が行われる。

Meredotは、同社のワイヤレス充電器において、マイクロモビリティOEMとフリート事業者をターゲットにしている。同社は、車を充電するための斬新で手間のかからない方法を提供したいと考えている企業向けに、自社の技術を市場に出してライセンス供与する準備が整っている。特にマイクロモビリティのフリートにとって、交換可能なバッテリーを持っていたとしても、スクーターやバイクの充電は大きなコスト削減要因の1つであり、この種の技術はゲームチェンジャーになる可能性がある。

「Meredotのワイヤレス充電器は新しい分散アーキテクチャを提供し、サイトの資本効率とスケーラビリティを向上させ、エネルギーとコストを節約します」とMeredotのCEOで共同創業者のRoman Bysko(ロマン・ビスコ)氏は声明の中で述べている。「Meredotのワイヤレス充電器は、新しいマイクロモビリティ充電エクスペリエンスのインフラ基盤となり、オペレーターとライダーの双方にメリットをもたらします」。

同社によると、従来のケーブル充電システムに比べて、同じ表面で電動スクーターを50%多く充電できるため、充電サイトのコストを大幅に削減できるという。

画像クレジット:Blink Charging

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

Limeの新しいeバイクはスクーターにも使える交換可能なバッテリーを搭載

Lime(ライム)は、2021年3月に新しいハードウェアの導入計画を発表して以来、ついに第4世代目のeバイクを街中に送り出すという約束を果たした。今回の新しい自転車には、Limeの最新世代のeスクーターと交換可能なバッテリーが搭載される予定だ。

企業広報のシニアディレクターであるRussell Murphy(ラッセル・マーフィー)氏によると、このマイクロモビリティ事業者は水曜日(米国時間1月12日)にワシントンD.C.で250台の新型自転車を導入し、4月までに2500台のeバイクを徐々に置き換えていく計画だという。Limeは今後1年間、世界の各都市で旧世代と新モデルの入れ替えを行いながら導入を続けていく予定だ。

この動きは、同社が新型eバイクの開発と北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドのさらに25都市への展開に向けて導入した、5000万ドル(約57億5000万円)投資の一部である。

前世代のLime製eバイクはロンドン、シアトル、パリ、デンバー、そしてまもなくサウスカロライナ州チャールストンを含む世界50都市で導入される予定だ。同社は当初、2021年夏に第4世代モデルを発売することを目指していたが、サプライチェーンの問題により、昨秋の数回のパイロットを遅らせなければならなかったと、マーフィー氏はいう。

交換可能なバッテリーは、Limeの緑と白の新型バイクの最も注目すべき特徴だ。Limeの最新スクーター「Gen4」の外観ともマッチしたデザインだ。

「これは業界にとって飛躍の可能性を秘めています」と、マーフィー氏はTechCrunchに語った。「車種間でバッテリーを1つに統一すれば、より合理的でマルチな運用ができます」。

Limeは、バッテリーのアップグレードが、車両あたりのコストの改善につながると期待している。充電のために車両を持ち込む必要がなくなるため、共有型マイクロモビリティ事業の運営にともなう最も高いコストの1つになりがちな運用業務が減ることになるのだ。同時に、バッテリーを交換するだけで済むので、より多くの車両がより長く路上を走行することになり、利用者への信頼性が向上し、収益を上げる可能性も高くなるとマーフィー氏はいう。

「また、これまでバイクとスクーターの充電チームが分かれていたのが、1つのチームになり、すべての充電関連業務をこなせるようになります」と同氏はいう。

新しいeバイクは、ライダーが坂道をより簡単に登れるように改良されたモーター、スマートフォンを充電できる電話ホルダー、Gen4スクーターのものと同じ新しいハンドルバーディスプレイ、そして、モーターを動かすために少しペダルを踏む必要がない、よりスムーズにスタートできる自動2速トランスミッションも搭載される予定だ。

Limeがeバイクの規模拡大を続ける計画は、保有車両の大部分を一新し、より多くの都市に進出し、新たな技術を開発してさらなる都市からの提案要請を勝ち取るという、同社が掲げる目標に沿うものだ。同社は11月に、転換社債とタームローンによる5億2300万ドル(約602億円)の資金調達を完了したが、これは2022年株式公開を予定している同社にとって、最後の資金調達となる可能性がある。

Limeは株式公開に向けて準備を進める一方で、より効率的な運営を行い、ハードウェアを充実させることで、業界における支配力を強化しようとしており、今回のアップグレードしたeバイクの導入はそれを補強するものとなっている。一方、同社が手に入る限りの認可をかき集めようとする一方で、Ford(フォード)が所有する競合のSpin(スピン)は先週、公開認可市場から撤退するためのリストラの一環として、従業員の4分の1を解雇する計画を明らかにした。Spinは現在、米国の一部の市場、ドイツとポルトガルの全市場での事業を縮小しており、早ければ2月にもスペイン市場も閉鎖される可能性があるという。

画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

CES 2022に出展された電動自転車や電動スクーターは、よりパワフルに、よりスマートに

ラスベガスで開催されたCES 2022の会場には「eMobility Experience(eモビリティ体験)」というテストコースが設置され、電動スクーターや電動自転車など、マイクロモビリティの試乗が行われた。

たくさんの製品が出展されたものの、その多くは実際にはまったく新しいものというわけではなかった。例えば、Bird(バード)社の「Bird Bike(バード・バイク)」「Bird Flex(バード・フレックス)」「Birdie(バーディ)」といった一般消費者向け新製品や、Zoomo(ズーモ)社のユーティリティー電動アシスト自転車、Euphree(ユーフリー)社のステップスルー型電動アシスト自転車「City Robin(シティ・ロビン)」、Arevo社(アレボ)やSuperstrata(スーパーストラタ)社の3Dプリントで製造されたカーボンファイバー製e-bike(イーバイク、スポーツ電動アシスト自転車)などだ。その他にも、電動スクーター、自転車、モーターサイクル、コネクテッド・テクノロジーの新バージョンを展示している興味深い企業がいくつかあった。

2022年のメインテーマは、いわゆるスマート・コネクテッド・ビークルだ。これらの小型電動車には、従来より強力なオンボード・コンピューターが搭載されており、アプリと同期することで、乗り手は自分の車両を見付けたり、フィットネスの目標を追求したり、鍵やライトなどの機能をコントロールしたりすることができる。

この記事では、CES 2022で発表された新しい自転車、スクーター、そしてコネクテッド・テクノロジーをまとめてご紹介しよう。

Segway(セグウェイ)

画像クレジット:Segway-Ninebot

個人向け車両の販売だけでなく、世界の多くのレンタル事業者に車両を供給している電動マイクロモビリティ・メーカーのセグウェイは、キックスクーターの新ライン「Pシリーズ」と、新しい原付クラスの電動スクーター「E110a」を携えてCESに参加した。

「P60」と「P100S」は、幅広のフットボードとハンドル、自動車グレードのオールシーズンタイヤ、前後にスプリングサスペンションを備える。ターンシグナルやテールライトも装備されており、複数の方法でロック/アンロックできる。E110aは2人乗りで、豊富な収納スペースとスマートな機能を備えているとのこと。セグウェイは、そのスマート機能が具体的に何であるかという詳細な情報を明らかにしなかったものの、もし前世代モデルと同じような機能なら、バッテリー管理システムと、スマートフォンに接続する機能、そしてそのためのSegway-Ninebot(セグウェイ・ナインボット)アプリなどだろう。

CAKE(ケイク)

画像クレジット:Cake

スウェーデンの軽量電動バイクメーカーが「CAKE :work(ケイク・ワーク)」シリーズを米国に初上陸させた。この仕事用電動バイクのシリーズは、欧州ではすでに発表されているが、米国ではまだだった。CES期間中に発表されたCakeのさらに大きなニュースは、コネクティビティ・アプリ「Ridecake(ライドケイク)」のアップデートだろう。このアプリには、企業の車両管理担当者が、各車両を監視・管理するための機能も含まれる。

新たなコネクティビティ機能は、データサービスに対応したCake Connect(ケイク・コネクト)モジュールを搭載している車両のすべてのライダーが利用できる。これにはすべての現行および次期モデルと、既存のCakeバイクの大部分が含まれる。今回のアップデートで、カスタマイズ可能なライドモード、リアルタイムのライディング情報、ライド履歴、盗難防止のセキュリティが、このアプリに追加された。

Cakeのクラウドベースの管理システムを使用している車両管理担当者は、リアルタイムでデータを取得することができる。これには、管理車両すべての現在位置、走行距離、航続距離、バッテリーの状態、診断データへのアクセスなどが含まれる。また、無線通信を介してファームウェアのアップデート、盗難防止機能へのアクセス、カスタムライドモードの設定なども可能だ。

Delfast(デルファスト)

画像クレジット:Delfast

米国とウクライナのスタートアップ企業であるDelfastは、1回の充電で最大200マイル(約322km)の距離を走行可能な電動バイク「Top 3.0」のアップグレードモデルを発表した。このスマートバイクにはコンピューターが搭載されており、ソフトウェアのアップデートを受信したり、盗難防止のために車両をロックすることができる。また、同社の新しいモバイルアプリと同期することで、スマートフォンからオンデマンド分析、バイクのロックとアンロック、盗難防止アラームの作動と解除、総走行距離と積算走行距離および走行速度の記録、バイクのパワー確認と航続距離の推定、車両の位置確認、照灯の制御などの機能が利用できる。

Niu(ニウ)

画像クレジット:Niu

中国の電動スクーター企業であるNiuは、2022年のCESに新型e-bike「BQi-C1」を出展した。この電動自転車は同社がすでに予告していたものだが、CESでついに価格と技術仕様が公開された。

ステップスルー型のフレームには、定格出力500W、最大出力750Wを発生するBAFANG(バーファン)製のハブモーターを後輪に搭載。米国では最高時速28マイル(約45km/h)を発揮することができるが、欧州ではe-bikeの規制が厳しく、モーターの出力は250W、最高時速は15.5マイル(約25km/h)に制限される。また、米国仕様ではスロットルとペダルアシストの両方が装備されているが、欧州ではペダルアシストのみとなる。BQiはアプリと接続して多くのスマートセキュリティ機能を利用できる。米国での販売価格は1499ドル(約17万3000円)と、このようなパワフルなe-bikeにしてはかなりお買い得だ。

Okai(オカイ)

  1. EB20-1

    Okui EB20 e-bike
  2. ES600

    Okui ES600 シェアリング向けキックスクーター
  3. ES800

    Okui ES800 オフロードキックスクーター
  4. SH10-1

    Okui SH10 スマートヘルメット
  5. SH10

    Okui SH10 スマートヘルメット
  6. SP10

    Okui SP10 スマートバックパック

Okaiも、多くの大手シェアード・モビリティ業者に車両を供給している中国のメーカーで、今回のCESには5つの製品を出展したが、乗れるのはそのうち3つだけだ。まずはそちらから見ていこう。e-bike「EB20」は、プロ用グレードのマウンテンバイクの部品を使用し、軽量なカーボンファイバー製フレームを採用。12段変速で、750Wのモーター、交換可能なSamsung(サムスン)製バッテリー、2.8インチの大型LEDタッチスクリーンを搭載する。

Okaiはまた、成長する電動キックスクーター・シェアリング業界の需要に対応するために「ES600」も発表した。このシェアリング向け電動キックスクーターは、交換可能なバッテリーシステムと、各バッテリーに備わるハンドル、最適化された重量配分、低重心、油圧式サスペンションシステムなどを特徴とする。サイドとフロントにはウインカー、LEDヘッドライトとテールライト、そして車体サイドにリフレクターを装備する。そして「ES800」は、本格的な1800Wのモーター、12インチのオフロード用タイヤ、デュアルショックアブソーバーを装備するオフロード・パフォーマンス・キックスクーターで、最大35%の勾配を登坂できる。重量は一般的な電動キックスクーターより30%重く、高い安定性を誇るヘビーデューティーな一台だ。

さて、それでは乗ることができない製品の話に入ろう。Okaiはより安全で衛生的な移動のために、抗菌素材を使用したスマートヘルメット「SH10」を発表した。これは、都市部でヘルメットの装着が義務付けられつつあるシェアード・キックスクーターのユーザーにも向けたものだろう。

このヘルメットにはBluetoothが内蔵されており、Okaiアプリに接続すると、ライダーはフロントとリアのLEDディスプレイをカスタマイズ設定して、視認性を向上させることができる。また、内蔵されたスマートスピーカーにより、ライダーは路上で聴覚による認識力に影響を与えることなく、音楽を聴くことも可能だ。

そしてもう1つ、Okaiがラスベガスで発表した製品は「SP10」と名付けられたスマートバックパックで、これは紫外線殺菌機能、セキュリティロックを解除する指紋センサー、デバイス充電機能、バイクとカラーを同期できるカスタマイズ可能なRGBストリップを備える。

Bosch(ボッシュ)

ボッシュは、e-bike用のコネクテッド・スマート・システムを2022年のCESに出展した。厳密にいうとこれは新しい製品というわけではないが、CES Innovation Awards(CESイノベーションアワード)で栄誉ある賞を受賞した。

このシステムは、キーの役割を果たす「eBike Flow(eバイク・フロー)」アプリと、コントロールユニット、ディスプレイ、充電式バッテリー、ドライブユニットで構成される。CESで発表された他の製品と同様、このシステムを装備したコネクテッド・バイクは、無線によるアップデート、個人の走行情報やフィットネスデータの記録、ライディングモードのカスタマイズが可能で、バッテリーの充電状態や次回のサービス予約などの情報をホーム画面に表示することができる。

Moonbikes(ムーンバイクス)

画像クレジット:Moonbikes

そろそろ飽きてきた読者の興味を惹き付けるため、最後にご紹介するのは、Moonbikesだ。

この会社の電動雪上車も、決して新しい製品というわけではないが、多くの人々が実物を見ることができたのは今回のCESが初めてだろう。これは3kW(4馬力)を発生する電気モーターを搭載したシングルトラックのスノーモービルで、最高速度は時速26マイル(約42km/h)に達する。

重量は182ポンド(約82.5kg)と、一般的なスノーモービルよりもはるかに軽いので、より簡単に操縦して遊ぶことができそうだ。リアには雪上トラックベルト、フロントにはシングルスキーが装備されており、バッテリーはスポーツモードで約12マイル(約19.3km)、エコモードで約22マイル(約35.4km)の距離を走行できる。フル充電には約5時間ほどかかる。

画像クレジット:Delfast

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(文:Rebecca Bellan, Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロモビリティ2022:さらに洗練され、成熟し、テクノロジーを満載に

2021年は、コンセプト、ソリューションそして生き方としての「マイクロモビリティ」が定着し始めた年だった。

シェア式マイクロモビリティの増加と新型コロナ禍中の公共交通機関は、人びとに小型電気車両を自分で購入する可能性を考えさせることになった。その結果、2021年は電動自転車の年となり、7月までの12カ月間で売上高は240%増加した。この新しい習慣によって、都市は10年前なら本当に信じられなかったインフラストラクチャ計画を採用することとなった(パリを見て欲しい!)。

2021年は、人びと、特に都市の人びとが、電気自動車の登場よりも間違いなく大きいマイクロモビリティの炭素排出量削減への影響について、オープンに話し始めた年でもある。

2021年、シェア式マイクロモビリティ企業たちは、このような電動スクーターや電動自転車に向かい始めた考え方の変化を受け、市場での支配的な地位を利用して、その運用効率を高め、ハードウェアをより適切なものにしようとしてきた。

では以上のような背景を踏まえて、2022年のマイクロモビリティ分野の今後の展望を見ていこう。

みんなの電動自転車

特に米国などの国々では、新しい電動自転車の購入に対して最大900ドル(約10万3000円)の補助金が出されていることから、電動自転車のトレンドは2022年も続くと予想されている。しかし、このブームは個人消費者にとどまるものではない。Segway(セグウェイ)のグローバル・ビジネス開発担当副社長のTony Ho(トニー・ホー)氏によれば、マイクロモビリティ企業からの電動自転車の需要も大きく伸びているという。Segwayは、Lime(ライム)やBird(バード)といったシェア式マイクロモビリティの巨人たちに、電動キックボードや電動自転車を供給していることで知られている。

「Limeは当初、シェア自転車の会社でしたが、キックボードを始めるまではうまく行っていませんでした。キックボードの方が安価で、導入しやすいという理由もあります」とホー氏はTechCrunchに語っている。「今では、電動自転車の人気が高まっているようで、構成比が平準化し始めているようです。それに伴いシェア向け電動自転車の注文が多くなっています。また都市にとっても、もともとシェア自転車プログラムを持っていたわけですから、問題ありません」。

新しいVCマネーは枯渇する

BirdやHelbiz(ヘルビズ)のような大手企業が上場し、Limeも2022年の上場を約束しており、業界は全体として数社の大手企業に集約されてきた。そのため、VCの資金や新規参入者が増えるのではなく、現在の市場が成熟していくことが予想される。

ホー氏は「BirdとLimeのブームの後、投資家たちは、Coco(ココ)の歩道ロボット配達員のような、別のものに移ったと思います」という。「このビジネスに参入するにはまだかなりの資金が必要ですし、個人的には、小規模な事業者にとっては、特に都市部ではライセンス料を払い保険に加入する必要があるため、より困難だと思います。実はもう、小さなスタートアップ向けのゲームではないのです。最後の波を生き延びた者が、おそらくここに留まることになるのでしょう」。

残っている企業は、コストを下げ、より効率的で持続可能なものにして、市の規制に準拠するために全力を尽くしている。

だが……ライドシェア企業が再び登場するかもしれない。

ホー氏は「私たちが得ている注文と引き合いは、多くの企業が戦いに戻ってきていることを示しています。ですから、人びとがパンデミックから抜け出す来年には、マイクロモビリティが優先課題になるでしょう」という。「ライドシェア企業のような大手企業を含め、いくつかの企業が戻ってきています」。

2020年の夏は、パンデミックによるロックダウンの影響でマイクロモビリティは不調だった。たとえばUber(ウーバー)はマイクロモビリティのJump(ジャンプ)をLimeに売却し、その後両社の統合が進んだ。2020年5月には、Lyftも手を付けていた電動キックボードプログラムの多くを終了したが、もしホー氏の観察が正しければ、UberとLyftはすべての市場シェアを失う前に、ゲームに復帰しようとするかもしれない。

より多くAIが利用され、よりスマートな自動車の登場が期待される

都市は、キックボードが歩道に乗り入れたり、駐車したりするのをとても嫌がる。あまりに嫌がられるので、多くの企業が技術革新を行い、非常にスマートなスクーターを生み出している。Spin(スピン)、Helbiz、Voi(ボイ)などの企業は、カメラを使ったシステムをすでにテストしており、ライダーが歩道を走っていたり、歩行者にぶつかりそうになっているのを検知し、リアルタイムで走行を停止する機能まで備えている。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)やBirdのように、高精度な位置情報を利用したアプローチを利用して、同様の高度なライダーアシスタンスシステムを実現しているところもある。企業がコストを抑える方法を見つけ、世界中の都市がこの楽しさを奪うテクノロジーの匂いを嗅ぎつけるようになれば、このトレンドはますます一般的になるだろう。

マイクロモビリティのADAS(先進運転支援システム)は、シェア市場を超えて広がっていくだろう。すでにStreetlogic(ストリートロジック)やTerranet(テラネット)などが、一般消費者市場で電動自転車ライダーがより安全に走行できるようにするために、潜在的な危険性を検知して衝突警告を出す機能持つコンピュータービジョンベースのシステムの製造に取り組んでいる。こうしたシステムは、自動車での移動を電動自転車での移動に置き換えたいと考えている一般的な人びとに、安心感と安全性を提供する。

「マイクロモビリティ」という言葉を生み出した業界アナリストHorace Dediu(ホレス・デディウ)氏は、マイクロモビリティの車両にセンサーを追加することが、企業にとってデータの収益化への道を開くことにもなるという。

デディウ氏は、TechCrunchの取材に対し「今後は、より多くのセンシングが行われるようになるでしょう。それは基本的にドライブレコーダーで行われ、多くのイメージングが行われることになるでしょう」と語った。「これが自動車の世界にやってくることは明らかですが、自動車の世界で起こることはすべてマイクロの世界でも起こりますし、多大な投資をしなくても1億台の車両に展開できるので、より早く起こることが多いのです」。

マイクロモビリティの車両の前後にカメラを設置することで、現在のドライブレコーダーのように全周囲を撮影することができます」とデディウ氏はいう。もしこれらのシステムがすでに歩道や歩行者専用道路を検知できているなら、路面状況を検知して、道路のメンテナンス問題に関する共有データベースを通じて都市行政側に知らせることができるだろう。あるいは、マイクロモビリティ企業がその情報をGoogleのような地図会社に売って、世界をもう少し良く映像化できるようにするかもしれない。

ユーザーからの動きを計測するトルクセンサなど、現在のマイクロモビリティができる他の機能を考えると、企業はウェアラブルデバイスに連携する「Peloton(ペロトン、オンラインフィットネス)のようなサービス」を提供できる可能性があるとデディウ氏は予測している。

マイクロモビリティとメタバース

「Meta(メタ)つまりFacebook(フェイスブック)や、Microsoft(マイクロソフト)やApple(アップル)は、頭に何かを装着している人とどうやって対話するかを探究するために、何十億ドル(何千億円)もの投資をしてきました」とデディウ氏は述べている。「私は、この2つの考えを単純に組み合わせて、どうせヘルメットをかぶるなら、スマートなヘルメットにしたらどうだろう?と言いたいのです。そして、せっかくスマートヘルメットをかぶるのであれば、そうしたくなるような刺激的でおもしろいものにしたいですよね?」。

街を移動する際に現実を拡張してくれるスマートバイザー付きのヘルメットは、ライダーが周囲の環境をより意識して安全を高められる可能性があるだけではなく、さまざまな体験を解放して人びとが外に出て動きたくなるようにすることができると、デディウ氏はいう。

「マイクロモビリティとメタバースは、お互いのために作られているのです」と彼はいう。「それは『見上げること』です。一方、車の体験の拡張は、下を向いて孤立していくことに他なりません。では、上を見るのと下を見るのとどちらがいいでしょうか?」。

注意:この組み合わせは2022年には起こらないかもしれないが、デディウ氏は今後数年の間に何らかの形で起こることを確信している。

新しく、より頑丈なフォームファクター

毎日キックボードや電動自転車、電動バイクに乗って仕事に向かう上で唯一の問題は、雨が降ったらどうなるかということだ。戦略アドバイザーでエンジェル投資家でもあり、ディウ氏と「Micromobility Podcast」(マイクロモビリティポッドキャスト)を共同ホストとして提供しているOliver Bruce(オリバー・ブルース)氏は、この問題を解決し、さまざまなユースケースに対応するために、消費者市場とシェア市場の両方で、新しい、よりヘビーデューティーで、閉じた屋根のある形状が登場する可能性があると述べている。

ブルース氏は、最近Tilting Motor Works(ティルティングモーターワークス)を買収したArcimoto(アーキモト)やNimbus(ニンバス)のような企業が、傾斜電気三輪車(方向転換の際に車体が傾く三輪車)の開発に取り組んでおり、2022年には市場に投入される予定だと語っている。

ブルース氏は、TechCrunchの取材に対し「COP26で話し合った気候変動に関する目標を真剣に達成するためには、新しい電気自動車が登場し、急速に普及する必要があります」と語った。「しかし、現在の状況で電気自動車を普及させようとすると、本当に大変なことになります。私たちにはその余裕がないのです」。

交通システムに組み込まれたマイクロモビリティ

ブルース氏は「2022年には、公共交通機関の一部にマイクロモビリティが組み込まれるようになり始めると思っています」という。「例えば地下鉄を降りて電動自転車に乗るようにすれば、お互いにメリットのある移動となります」。

ブルース氏によると、これは、世界中の都市(主にヨーロッパ)で私たちが目にしている、より多くの自転車専用道路を建設するインフラ事業の副次的影響の一部になるという。しかし、それはマイクロモビリティ企業が車両1マイルあたりのサービスコストを大幅に削減することにもつながる。

「マイクロモビリティ事業者が輸送機関に大量に移動距離を販売することで、その経済性はますます大きなものとなっていきます。そうした輸送機関は、地下鉄カードやアプリを使ってキックボードのロックを解除することができるのです。世界の都市の中には、これを公共交通機関に組み込むところも出てくるでしょう」。

マップとの連携強化

「おそらく2022年から先は、ソフトウェアの年になるかもしれません」とデディウ氏はいう。

今日、GoogleマップやMoovit(ムービット)のような移動計画や地図アプリは、ユーザーに提供する目的地までの複数の方法の中に、マイクロモビリティのオプションを統合し始めていている。このような統合により、マップが検索エンジンの役割を果たし、移動手段の上位ヒットを数秒で確認できるようになるはずだ。

「現在は、AからBに行きたいと指定すれば3つか4つの選択肢が出てきます、しかしそこに乗車に対する入札結果は提示されません」とデディウ氏はいう。「わたしはそこに15件の入札結果を見たいと思っています。乗車依頼をするたびにオークションが開催されるようになって、Google検索の結果のよう表示されて欲しいですね。こんな当たり前の話にもかかわらず、2022年を目の前にしてまだ実現されていないことにショックを受けています」。

「でもその主たる原因は仲介するプラットフォームがないからです。適切なAPIが欠けているのが原因なので、もしそれが実現すれば、シェアオペレーターがGoogleマップ上で入札する機会が爆発的に増えるはずです。そうなればマイクロモビリティから莫大な収益が発生するでしょう。こうして、マイクロモビリティの収益化は、発見を通して行われるようになるのです」。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

コンピュータービジョンを利用するStreetlogicの電動自転車用衝突警告システム

Streetlogic(ストリートロジック)は、電動アシスト付きスポーツ自転車のライダーがより安全に道路を走行できるようにしたいと考えている。同社は、210万ドル(約2億3800万円)のプレシード資金を調達するとともに、主力製品であるサラウンドビューカメラの発売を発表した。このサラウンドビューカメラは、前方、側方、後方からの衝突を予測してライダーに知らせ、事故を未然に防ぐというものだ。

米国、カナダ、欧州では、2021年11月23日より、Streetlogicの電動自転車用先進運転支援システム(ADAS)の先行予約を30ドル(約3400円)の頭金で開始した。Streetlogicの創業者でありCEOでもあるJonathan Denby(ジョナサン・デンビー)氏によると、最終的な小売価格は300ドル(約3万4000円)から400ドル(約4万5000円)程度になる予定で、同システムの最初の量産ロットは2022年末までに納品される予定だ。Streetlogicの拠点であるサンフランシスコの購入者は、2022年初頭から招待制の限定的なベータ展開プログラムを通じて、いち早く同システムを試すことができる。

マイクロモビリティのADASシステムを考案したのは、Streetlogicが最初というわけではない。2020年、イスラエルのスタートアップであるRide Vision(ライドビジョン)は、同様のAIベースのシステムを発表した。このシステムは、ライダーの周囲の交通状況をリアルタイムに分析し、前方衝突警告、ブラインドスポットモニタリング、後方からの近接車両の警告などを提供する。Streetlogicと同様に、ライドビジョンのシステムは、走行を記録するだけでなく、安全に関わる事故の記録を保存して後から見直すことができるドライブレコーダーとしても機能する。

関連記事:AIベースのオートバイ用安全システムのイスラエルRide Visionが約7.3億円を調達

最近では、Luna(ルナ)やDrover AI(ドローバーAI)などのコンピュータービジョン企業が、同様のテクノロジーをVoi(ヴォイ)やSpin(スピン)などのシェアマイクロモビリティ事業者が運用するeスクーター向けに開発している。このテクノロジーは似通っているが、ターゲットとする市場が異なる。

デンビー氏はTechCrunchに対し「違いは、当社がビジョンシステムをカスタマイズして、電動自転車のライダーにスマートな安全機能を提供しているのに対し、LunaやDrover AIはビジョンシステムを使って、eスクーターのライダーが街中をより快適に走行できるようにしていることだ」と説明する。また「それらの機能は、歩道の検知や駐輪システムのルールを守ってもらうためのものであり、eスクーターのライダーが適切にシェアシステムを利用していることを示すために必要なものだ。一方、当社のADASシステムの機能は、ライダー自身の安全を重視している。例えば、交通量の多い道路を走っているときに、自分と衝突する恐れのある車を検知した場合には、早期の警告によりライダーは安全を確保できる」と述べる。

もう1つの大きな違いは、ライダーが歩道を走るなど不適切な走行をしていると、LunaやDrover AIのシステムはスクーターのOSに接続し、減速して停止させることができることだ。Streetlogicの製品は、厳密には衝突警告システムだが、特に都市部では非常に有用なツールとなる。

「安全の面では、常に周りを見ているわけではありません。無理ですよね。また、通勤途中は、自分のめい想時間のようなもので、よく考え事をしてしまいます。少なくとも私の場合、安全については考えていません。仕事に行くことや、その日にすべきことに思いを巡らしています」と、Streetlogicの初期のベータテスターの1人で、毎日電動自転車で通勤しているTaylor(テイラー)氏は、同社のウェブサイトに掲載されている体験動画の中で述べている。

米国における回避可能だった自転車の死亡者数は、2010年の793人から2019年には1089人と6%増加しており、そのうち843人は自動車との事故で亡くなっている。電動自転車の販売が伸びても、自転車に関わる死亡事故の78%が発生する都市部では、自動車は依然としてマイクロモビリティの導入を妨げる脅威だ。自動車から電動自転車への乗り換えを検討している消費者は、ADASシステムのような安全機能が備わっているかどうかを確認するとよいだろう。

デンビー氏はTechCrunchに対し「道路や都市部に自動車よりも多くの電動自転車が走っているようなすばらしい世界、ユートピアのようなビジョンを持っている」と述べる。そして「ある程度の自動車は必要だが、大部分は自転車に置き換えることができるはずだ。電動自転車を日常生活における主要な移動手段として、より頼りになるツールにすることが、ユートピアを実現するための鍵になると考えている」と続ける。

Streetlogicのシステムは、自転車の前部と後部の両方に実装されており、すべてデバイス上で処理されるコンピュータービジョンに基づいている。ライダーを取り巻く車両の動きを追跡し、ライダーが車両と衝突する可能性がある場合には早期に警告を発する。これらの処理や警告は、完全にローカルなデバイス上のシステムで行われるため、クラウドへ接続する必要はない。また、サービスが提供されていない地域にいても機能する。

ライダー目線で見たStreetlogicのコンピュータービジョン製品。自動車との衝突を警告している(画像クレジット:Streetlogic)

ライダーはまず、デバイスが発する音声による警告を聞くことになる。これは、例えばライダーの後ろにクルマが急接近してきた場合に「Car Back(後方にクルマ)」といった内容のものだ。ライダーのスマートフォンには、障害物となる可能性のある方向がひと目でわかるシンプルな視覚的警告が表示される。ただし、この機能は、ライダーがハンドルバーのホルダーにスマートフォンを装着している場合にのみ有効になる。

LunaやDrover AIは、すでに歩行者や車線などの物体を検知するシステムを持っているが、eスクーターのライダーに衝突の可能性を積極的に警告することはない。しかし、両社のテクノロジーを持ってすれば、不可能ということはないだろう。

ドローバーAIのCEOであるAlex Nesic(アレックス・ネシック)氏は、TechCrunchに対し、電動自転車の警告システムは、ハイエンド市場における「次のレベル」の機能としては意味があるものの「当社が現在注力しているシェアマイクロモビリティ用途に必要な低いコストに抑えることは難しい」と述べる。

Streetlogicにとってはまだ始めたばかりだが、デンビー氏によると、アルファテストではこのテクノロジーは「驚くほどうまく機能した」という。また、サイクリストにとって自動車との衝突やニアミスが最も多い問題であるため、今のところシステムは自動車のみを追跡しているとのことだ。

「しかし、コンピュータービジョンの良いところは、後から機能を追加できることだ」と同氏はいい「例えば、他の自転車や歩行者、道路にできた穴やひび割れ、道路に飛び出す動物などを追跡することができるようになるだろう。これらはすべて、そのうち組み入れることができる。自動車の追跡だけでも、大部分の事故を防ぐことができた」と述べる。

Streetlogicでは、これらの検知機能を組み入れるために、さらに多くのデータを収集して機械学習モデルを学習させる必要がある。今回の資金調達の主な目的はそのためだ。同社によると、プレシードラウンドには、LDV Capital(LVDキャピタル)、Track Venture Capital(トラック・ベンチャー・キャピタル)、およびLyft(リフト)の元自律走行担当副社長であるLuc Vincent(リュック・ビンセント)氏などのエンジェル投資家らが参加し、調達した資金はチームの規模拡大のために使用されるという。先週、2名のチームメンバーを新たに雇用し、現在はフルタイムの従業員6名で構成されているが、予約注文に対応することに加え、システムの成熟度向上に向けた生産性確保のために、従業員を拡充したいと考えている。

「ハードウェア面ではApple(アップル)とUber(ウーバー)から、ソフトウェア面ではCruise(クルーズ)から、精鋭が集まっている」と、デンビー氏は語る。

デンビー氏自身もUberの出身で、後にLime(ライム)に買収された同社のスクーター「Jump(ジャンプ)」のコンピュータービジョンシステムのアドバイザーを務めた他、360度アクションカメラ「Rylo(ライロ)」の開発チームを率いていた。

Streetlogicは、早期に軌道に乗せるためにB2C製品として立ち上げたが、将来的には自転車メーカーとの統合を進めていきたいと考えている。

画像クレジット:Streetlogic

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

食料品を15分で届けるクイックコマース「Grovy」、東欧進出と持続可能性で差別化を図る

Grovyのファウンダーたち(画像クレジット:Grovy)

また1つ、食料品を15分配達の「クイックコマース」スタートアップがこの分野に参入し、山ほどの企業があふれるこの市場に加わろうとしている。しかし、Grovy(グロービー)は、混み合っているヨーロッパ西部を避け、東部で日常デリバリーのリーダーになることを目指している。

300万ユーロ(約3億8000万円)の調達ラウンドをLighthouse Ventersのリードで完了した同社は、フランクフルトとマインツでドイツ市場への参入を果たした後、すでにプラハ、ブカレストにオフィスを構え、中央および東ヨーロッパへの拡大を図っている。

多くの企業が、最大20%にのぼる高い手数料と低賃金のギグワーカーに依存しているのに対し、Grovyはフルタイム労働者のみを雇い、配送手数料を5%に固定し、40ユーロ(約5120円)以上の注文では無料だと同社は語る。

同社のもう1つの特徴は持続可能性で、配達には自転車とEV(電気自動車)のみを使用し「見た目の悪い」野菜や賞味期限の迫った生鮮食品を割引販売している(食品廃棄物の軽減に役立つ)他、食品廃棄物のスタートアップであるToo Good To Goらと提携し、カーボン・オフセット・プログラムも導入している。

Grovyの共同ファウンダーでCEOのJustin Adams(ジャスティン・アダムス)氏は「フランクフルトとマインツというクイックコマース需要の高い地域は実験に理想的でした。しかし、このモデルをドイツの他の都市へ展開するのではなく、未だに10分配達が目新しくスケーリングの可能性が膨大な中央・東ヨーロッパ地域の大都市へこのモデルを持ち込むことにしました」。

筆頭出資者であるLighthouse VenturesのマネージングディレクターMichal Zalesak(マイケル・ザレサク)氏は次のように語った。「Grovyは、通常の食料品チェーンなら1年かかることをわずか数週間で成し遂げました。膨大な競争圧力にもかかわらず、クイックコマースにおける同社独自のアプローチは、ドイツで驚くべき成功を収めました。私たちは彼らのヨーロッパ中東部への進出を支援します」。

Grovyには、ドイツのGorillas(ゴリラズ)とFlink(フリンク)、ワルシャワのLisek(リセック)などの直接的な競合がいるが、同社が運用しているヨーロッパの他の都市の大部分では、Bolt(ボルト)やDeliver Hero(デリバリー・ヒーロー)などの1時間配達のライバルしかいない。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】Urtopiaのeバイクはまるで車輪付きコンピューター

自転車の電動化といえば、これまでは単に「自転車に電動モーターを搭載したもの」を意味していた。上位モデルには、便利な機能がいくつも搭載されているかもしれないが、基本的には「シンプル・イズ・ベスト」とされていた。しかし、中国を拠点とする最新のeバイク(電動アシスト付きスポーツ自転車)ブランドUrtopia(ユートピア)の考えは違う。そのデビューモデルは、これまで見てきた中でも最もハイテク仕様のeバイクの1つであり、そのスペックシートは、次世代eバイクというよりも、まるでスマートフォンのようだ。

例えば、3段階のライディングアシスト機能を備え、推定航続距離は30~80マイル(50~130キロメートル)とされる250Wのハブモーターの他、ドットマトリックスディスプレイ、指紋リーダー、GPS、4G通信(eSIM利用)、車両検知用のミリ波センサー、内蔵アラームなど、数々の機能が搭載されている。

バイク自体は、2021年最も先進的なテクノロジーを備えたモデルであることを隠すことなく、印象的な美しさを放つ。BMW(ビーエムダブリュー)やIKEA(イケア)などでのキャリアを持つMathis Heller(マティス・ヘラー)氏がデザインした、滑らかな曲線とレーシングラインのフレームが特徴的だ。また、すべてのワイヤーをフレーム内部に隠すことで、ステルス爆撃機のような外観を実現している。ユートピアはシティサイクルとして売り込まれており、取り外し可能なバッテリーは目立たないものの、単なる足漕ぎ自転車ではないことは一目瞭然だ。

このバイクが届いたとき、筆者は組み立てるのが不安だった。これまでの経験から、複雑ではなくとも、セットアップのために、それなりの時間と場所を確保する必要があると考えたためだ。しかし実際には、筆者が試したプロトタイプモデルでは、前輪を装着し、ポンプでタイヤに空気を入れるだけで、問題なく使用できた。

画像クレジット:James Trew / Engadget

ガジェットファンにとっての魅力は、間違いなく「スマートバー」と呼ばれるハンドルバーに内蔵されたオンボードコンピューターだろう。ハンドル中央に据えられたドットマトリックスディスプレイは、まさに「未来から来たバイク」という雰囲気を醸し出している。また、ハンドル右側の通常ベルがある位置には、コンピューターをいくつかの方法で操作するための指紋リーダーがある(デジタルベルでもある)。そして、左側には4方向のDパッド(十字キー)があり、モードや設定を変更したり、バイクの電源をオンにしたりできる(オフにはできないが、これについては後述する)。

スマートな機能が数多く列挙されているが、筆者の試用のために送ってもらった試作機では、そのすべてを試すことは出来なかった。ミリ波センサーのハードウェアは実装されているものの、それを起動する方法がない。また、GPSとeSIMの動作にはコンパニオンアプリが必要だが、これもまだ用意されていない。残念ながら、これらの非常に興味深い機能については、今後の状況を見守る必要があるが、その他のほとんどの機能は正常に動作している。

興味深い機能の前に、パワー、スピード、距離などのeバイクとしての基本的な機能について見ていくと、これまでに筆者が試乗した他のハブモーターバイクと同等であるように感じた。例えば、最近テストしたTenways(テンウェイズ)のシティサイクルは、250Whのバッテリーと250Wのモーターを搭載している。対するユートピアのバッテリーセルは360Whだ。しかし、どちらも250Wトルクベースのブラシレスハブモーター、および同じGates(ゲイツ)製のカーボンベルトを使用している。

バイクの電源を入れると、さらにエキサイティングなことが起こる。スマートバーのスピーカーからは「ビューン」という音が聞こえ、ディスプレイに会社のロゴが表示された後、デフォルトのスピードメーター表示に戻る。一部のサウンドはユーザーが設定できるようになっているとのことだが、それにはサウンドをオフにするオプションも含まれていることを期待する。まず乗る前には、操作方法に慣れておきたいものだ。Dパッドを上下に動かすと、アシスタンスレベルが切り替わる。アシスタンスレベルには「ペダル」「エコ」「コンフォート」「スポーツ」のモードがあり、スロットルモードに相当する「ターボ」モードもある。

ユートピアのeバイクは、方向指示を地面に投影する。

画像クレジット:James Trew / Engadget

Dパッドを左右にタップすれば、方向指示が地面に投影される(ライトが点灯しているときは点灯したままだが、左右に曲がり始めると点滅に変わる)。しかし、実際にライトを点灯させるためには、バイクに話しかける必要がある。つまり、手動での操作はできず、音声でのみ操作ができるということだ。

ここからが少しおかしな点だが、ユートピアはプレス資料の中で、音声認識システムは完全には「学習」していないと警告している。しかし、筆者の場合は完璧に動作した。もしかしたら、くもった声のイギリス人でしか学習していないのだろうか。とにかく、ライトを点灯させるには、指紋リーダーに指を置き少し待つと、ディスプレイに顔のアイコンが表示され、Knight Rider(ナイトライダー)のMichael Knight(マイケル・ナイト)のようにコマンドを発することができるのを知らせてくれる。これはすばらしいことだが、それでもやはり、公共の場で自転車に話しかける必要がないように、物理的なスイッチが欲しいところだ。また、特に走行中は風の音などでスマートバーに声が届きにくくなることもある。そのため、ちょっと立ち止まったり、ハンドルに顔を寄せて走ることになるが、どちらもあまりエレガントとはいえない。

現在、音声で操作できるものは、アシストモードの変更、バイクのロック、方向指示、スマートバーの音量変更などだ。これらのうち、音量(とライト)以外は、物理的な操作も可能だ。音声での操作は、ハンズフリーの選択肢を提供する気の利いたアイデアだが、実際には、ボタンを押すだけの操作よりもどれほど便利なものかは疑問だ。

また、必ずしもテクノロジーが行き届いていないと感じる機能としてベルがある。このバイクでは、指紋リーダーに内蔵されており、指紋リーダーを長押しすると音声認識が作動し、短押しすると「リンリン」というデジタル音が鳴る。機能はするのだが、物理的なベルのように反応がよいわけではない。人の後ろから近づいていったとき、自分の存在を知らせたいと思って指紋リーダーを押しても、すれ違ってから0.5秒後にベルが鳴るということもあった。また、ベルを鳴らすために2、3回押してみなければならないこともあった。

画像クレジット:James Trew / Engadget

アラームの使用感についても、少し改善の余地がある。自転車を「ロック」した状態で離れたときに、誰かが動かすとアラーム音が鳴るというアイデアは気に入っている。問題は、ユートピアをロックしている間はいつでもこの機能が働くということだ。基本的に「ロック」とは「スタンバイ」であり、バッテリーを接続するとすぐに自転車がこのモードになることを知るまではこの問題に気づかない。つまり、バッテリーを接続した後、バイクを玄関から運び出そうとすると、アラームが鳴ってしまうのだ。

これを簡単に止める方法はあるが、完全に解決するというわけではない。eバイクの電源を入れれば、アラームは解除される。公正な立場でいえば、これはプロトタイプであるがゆえの不完全さだ。製品モデルでは、指紋センサーやコンパニオンアプリでアラームを無効にすることができるとのことだが、筆者がテストしているバイクでは確認できない。現時点では、バッテリーを取り外す以外にこのeバイクの電源を切る方法はないが、これらの不備が発売までに解消されることを祈っている。筆者はユートピアの担当者にそういった計画について訪ね、その予定であることを確認した。

さて、技術的な話はさておき、実際の乗り心地はどうなのだろうか。座ったときの姿勢は、一般的なシティサイクルのような直立姿勢ではなく、ロードレーサーのような前傾姿勢になる。Velo(ベロ)のサドルはかなり硬く、ゲルクッションが施されているようには見えず、もう少しお尻に優しい方がよいかもしれないが、中・長距離ライドをしても快適だった。最長で11マイル(約18キロメートル)走ったが、まだまだ走れると感じた。

ペダルモードでは、このタイプのハブでありがちなモーターからの気になる抵抗はない。カーボンファイバー製のボディのおかげで、13kg、30ポンドとeバイクとしてはかなり軽量だ。つまり、バッテリーを使用しない場合でも、普通の自転車として機能する。しかし、Dパッドをタップすると、すぐに快適になる。他のeバイクと同様に、ユートピアは地域によってパワーアシストに制限がある。米国モデルでは時速20マイル(時速32キロメートル)に達するまでアシストが働き、EUモデルでは時速16マイル(時速25キロメートル)がアシストの上限となる。

画像クレジット:James Trew / Engadget

3つのパワーモードは、いずれもかなり速く感じられる。つまり「エコ」モードでも、快適に走れるということだ。「コンフォート」モードにすると、目的地にたどり着くまでに必要なパワーがほぼすべて得られ、運動とアシストのバランスが取れる。「スポーツ」モードでは、上限が標準設定されているにもかかわらず、非常に速く感じられる。他の人が近くにいるときは、よい意味できびきびとした操作感が得られるため、よくコンフォートモードに戻していた。

eバイクにすべてを任せ、リラックスして走りたい場合は、ターボモードがある。Dパッドの「上」を長押しすると、軽いペダリングでもすぐに時速20マイル(時速32キロメートル)に達する。レーシングスタイルの外観と前傾姿勢となるシートポジションのため、ほとんど力を加えず快適に走ることができる。

それを踏まえて、航続距離についても触れておく必要があるだろう。ユートピアは、30~80マイル(50~130キロメートル)のアシストが可能だとしている。もちろん、これは地形やどのパワーモードを使用しているかによるため、かなり幅のある推定値となっている。筆者はまだバッテリーを使い切っていないが、10マイル(約16キロメートル)の走行でも、スマートバーのバッテリーインジケーターは、かなり少なくなっているように見えた。これがプロトタイプゆえの特性なのか、単にバッテリーの減りが早いだけなのかはわからない(これについては、最終モデルの出荷までに最終的なファームウェアで改善されるのかどうかは不明だ)。

GPSと4G接続について、ここまで触れていなかったのはそのためだ。筆者にとって興味深いセールスポイントは、ほぼいつでも地図上でバイクの位置を確認できることだ。同社によると、4G接続用のデータバンドルを年間約30ドル(約3400円)で提供する予定とのことだが、万が一、バイクが行方不明になっても、どこにあるか位置を特定できるという安心感を考えれば、かなりリーズナブルといえるだろう。疑問は、スタンバイの状態でGPSと4Gを作動させていた場合、バッテリーの消耗にはどの程度の影響があるのかということだ。残念ながら、この疑問の答えは最終モデルの販売を待つことになる。

ミリ波センサーについても同様の疑問があるが、これも現在はテストできない。

画像クレジット:James Trew / Engadget

現時点でこのeバイクについてわかったことは、乗っていてとても楽しく、軽量なおかげでかなり扱いやすいということだ(筆者はアパートの5階に住んでいるため、小さなエレベーターに押し込めるのはありがたい)。テクノ調のスタイリングは、万人受けするものではないかもしれないが、筆者はとても気に入っている。そして何よりも、たとえ一部の主要な機能がまだ準備できていなかったとしても、これほどまでに先進的なテクノロジーを見ることができたのはうれしいことだ。準備ができればまた試してみたいし、同社と話した限りでは、まださらに何かありそうな気がした。冗談で、スマートバーのスピーカー(このeバイクにはBluetoothが搭載されている)で音楽を聴けるようにすべきだと提案したところ、同社はそういった新機能を提供するために必要なOTA(Over-The-Air、4G接続による)アップデートは可能だといってくれた。

現在、ユートピアはIndiegogo(インディーゴーゴー)で先行予約を受け付けている。そのため、正規の注意事項が適用されるが、筆者が受け取ったプロトタイプが最終モデルに近いことを考えると、これ以上の開発は必要なく、残っている機能の微調整を行うだけのように思われる。予約注文をすると、2000ドル(約22万7000円)で購入することができる。これは、このeバイクの追加機能が有効になっていないとしても、十分に魅力的な価格だ。キャンペーンによると、この価格は、小売店に並ぶときには2倍近くになるとのことなので、このeバイクに魅せられた方には早めに購入する価値があるだろう。

編集者注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJames CrewはEngadgetのエディター。

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(文:James Trew、翻訳:Dragonfly)

中古の電動自転車を売買するオンラインマーケットプレイスを構築する仏Upway

フランスのスタートアップUpway(アップウェイ)をご紹介しよう。同社は電動自転車の中古マーケットプレイスを構築している。同スタートアップは、Sequoia CapitalとGlobal Founders Capitalから500万ユーロ(約6億4000万円)のシードラウンド資金を調達したばかりだ。

クルマのオンラインマーケットプレイスの世界に詳しい人なら、Upwayのやり方にも馴染みがあるだろう。同社は、消費者と企業の両方から電動自転車を買い取っている。買い取った電動自転車はチェックして、不具合がある場合には修理を行っている。その後、Upwayは自社のウェブサイトにそれらの電動自転車を掲載し、販売している。

現在、同社はパリ近郊のジュヌヴィリエに倉庫を構えている。5人の修理担当者のチームが、20種類のテストリストをもとに、届いた自転車を1台ずつチェックしている。Upwayは、ハンドルとペダルをフレームから切り離した状態の自転車を、段ボールで梱包して顧客に送る。

平均して、バイクは元の価格より20%から50%安くなる。Moustache(マスタッシュ)、VanMoof(バンムーフ)、Cowboy(カウボーイ)、Canyon(キャニオン)など、電動自転車業界ではおなじみのブランドの製品が多数揃っている。すべての電動自転車には1年間の保証がついている。

なぜ普通の自転車ではなく、電動自転車を扱うのだろうか。共同創業者でCEOのToussaint Wattinne(トゥーサン・ワッティンヌ)氏は、電動自転車は自転車業界で最も成長している分野だという。2020年、フランスでは50万台の電動自転車が販売されたが、これは前年に比べて30%の増加だった。とはいえ、サプライチェーンの問題もあり、すぐに新しい電動自転車を見つけて購入するのは簡単ではない。

さらに、個人が中古の電動自転車を購入する際には、モーターがまだ問題なく動くかどうかわからず、手に入れたときにバッテリーを交換しなければならないかどうかもわからないので、抵抗が大きくなる。そしてもちろん、電動自転車は高価な商品なので、購入に面倒を伴いたくないのだ。

Upwayは自転車を直接購入しているので、電動自転車の在庫を実際に保有していることになる。資本集約的なスタートアップになりそうだ。しかし、中古車市場の分野で成功している企業はたくさんある。Upwayも同じ道を辿り、電動自転車業界とともに成長していくことができるだろう。

画像クレジット:Upway

画像クレジット:Upway

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(文: Romain Dillet、翻訳:sako)

パリ、スクーターシェアリングサービスに時速10kmまでの制限を要請

パリでスクーターに乗ることは、もうすぐ信じられないほど遅く感じるようになる。パリ市は、スクーターのシェアリングサービスが、最高速度を時速10kmに制限するべきだと発表した。この決定は、スクーターと歩行者の負傷事故が多発したことを受けたものだ。

パリは、スクーターシェアリング企業にとって重要な市場だ。パリは自転車専用道路のネットワークがある密集した都市だ。また、パリを探索するためのさまざまな方法を探している多くの観光客がいる。

そういった理由から、少し手に負えない状況になっていた。ある時点では、16の異なるスクーターのスタートアップが、パリでスクーターを運営したがっていた。結局、パリは3社を選び、一連のルールを導入した。Dott(ドット)、Lime(ライム)、Tier(ティアー)の3社は、2年間、電動スクーターの共同運行の許可を得た。

それ以来、この3社の活動は順調だ。2021年だけでも、Dottは8500万ドル(約96億2600万円)を株式と資産担保付きの負債で調達し、Tierは最近2億ドル(約226億5100万円)を負債と株式で調達し、Limeは5億2300万ドル(約592億3300万円)を転換社債とタームローンで調達した。ただし、スクーターは利用者だけでなく、道を歩いている人にとっても公共の安全に関する問題となった。AFP通信によると、スクーターは2021年だけで298件の事故を起こしている。329人が負傷し、2人が死亡している。

特に、2021年6月に衝撃的な出来事があった。2人の女性が夜のセーヌ川の近くでスクーターに乗っていた。2人は歩行者をはね、そのまま放置した。その数日後、はねられた彼女は病院で亡くなった。

この事故の後、パリ市とスクータースタートアップの関係は、決して元に戻ることはなかった。7月1日、パリはチュイルリー公園やパレ・ロワイヤル庭園、バスティーユ広場やレピュブリック広場など、歩行者の密度が高い12のエリアをリストアップした。スクーターシェアリング会社は、リアルタイムのジオロケーションを利用して、これらのエリアでは最高速度を時速10kmに制限することに合意した。

2021年9月に、パリ市は各区役所にスクーターの最高速度を時速10kmに制限すべきエリアのリストアップを依頼した。その結果は、700のスローゾーンのパッチワークだった。そして、スクーターのスタートアップ企業は、それぞれのサービスでこれらのゾーンを導入することに合意した。

しかし、パリ市はそれよりもさらに先を目指している。自転車、スクーター、その他のマイクロモビリティのための広い車線を持ついくつかの通りを除いて、街全体がスクーター・スタートアップにとってスローゾーンになった。もちろん、自分のスクーターを持っている人は、その制限は個人のデバイスには適用されない。スクーターのシェアリングサービスに対する新たな規制は、12月前半に実施される予定だ。

唯一の朗報は、スクーターの入札が半年間延長されたことだ。Dott、Lime、Tierは、2023年2月までスクーターの許可証を維持する。しかし、今日の新しいルールは、パリでの利用にいくつかの重要な影響を与える可能性がある。

モペッドの規制

その他のニュースとして、パリ市は自由に浮遊する電動モペットの規制も行う予定だ。現在、パリではCityscoot(シティスクート)、Cooltra(クールトラ)、Lime、Yego(イエゴ)、Troopy(トルーピー)の5社が運行している。その他の企業もパリでの発売に向けて動いている。

パリでは、モペッドを許可制にしたいと考えている。これは、スクーターの許可証と同じような仕組みだが、許可証の有効期限は5年になる。パリでモペッドを走らせることができるのは、2か3社に限られる。新システムは2022年9月1日に開始される。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

【コラム】電動スクーター事業者は34.6兆円規模の産業でどう収益化していくのか?

自動車に比べて、電動スクーターは、都市部のモビリティと環境にポジティブな影響を与えることができる低炭素で静か、かつ安価な交通手段だ。しかし、その有望な可能性にもかかわらず、都市住民の大多数は、電動スクーターをおもちゃか、公共の安全を脅かすものと認識している。

それにともない、この業界へのベンチャー投資の額もわずかなものとなっている。2010年以降、共有型マイクロモビリティは世界全体で90億ドル(約1兆円)の投資を受けたのだが、それに比べて2021年の第3四半期だけで米国のスタートアップ企業が調達したのは723億ドル(約8兆3400億円)だ。人々が一斉に自動車ではなく低炭素マイクロモビリティを選択するような、真に持続可能な都市環境を目指すのであれば、このビジネスを収益化する方法を見つけなければならない。

当初、電動スクーター事業者は、できるだけ多くの電動スクーターを市場に投入することで利用者の注目を集めようとしており、物理的な存在が成功を意味していた。都市が規制を導入してライセンスを付与するようになると、事業者の関心は市当局からの承認を得ることに移った、なぜならライセンスはエンドコンシューマーへのアクセスを確保し、長期的な計画を立てるための信頼感を与えるからだ。

このライセンスは、投資家の負担を軽減し、ライセンスを取得したスタートアップは資金調達が急増した。例えば2021年には、Tier(ティアー)、Voi(ヴォイ)、Dott(ドット)などの企業が累計4億9000万ドル(約5652億円)の資金を調達した

この事実は、市場での競争を目指す他の電動スクーター事業者に、投資を集めて成長したいのであれば、まず都市部での地位を確立しろという明確なメッセージを送っている。現在のところ、これは主に、インフラが整備されており、マイクロモビリティの輸送やビジネスモデルのテストサイトとして機能しているヨーロッパに当てはまる。

しかし、マイクロモビリティが都市コミュニティにとって効率的であることが証明されれば、これらの手法は、主要都市ですでに自転車レーンの整備が進んでいる米国など、他の地域にも広がっていくだろう。2030年には、世界のマイクロモビリティは3000億〜5000億ドル(約34兆6000億〜57兆6842億円)規模の産業になると予想されていることを考えると、努力する価値は十分にある。

しかし、単に入札に勝っただけでは十分ではない、なぜならライセンスを取得した事業者は次の競争に進むからだ。事業者は、エンドコンシューマーと投資家の両方の期待に応えなければならない。つまり、最高の製品と製品体験を提供しながら、収益性を達成しなければならない。

これまでのところ、電動スクーターのシェアリングビジネスは収益性が高いとはいえず、既存のビジネスモデルには改善の余地がたくさんある。最も顕著な問題は、コストの60%を占めるといわれる高額な充電とオペレーションであり、ここを少しでも最適化することだけでも有益になる。

では、なにができるだろうか?

オペレーションは会社によって異なるかもしれないが、充電のシナリオはほとんどない。マイクロモビリティ事業者は、1日の終わりに手作業で車両を回収して充電倉庫に持ち込むか、死んだバッテリーを手作業で新しいバッテリーに交換している。どちらも人手を要し、このコストを削減することを目的としたソリューションを提供するプレイヤーが現れている。

台湾の電動スクーターメーカーGogoro(ゴゴロ)は、充電作業をライダーに引き継ぐスワッピングステーションを展開した。今のところ、それは2つの電動スクーターブランドにしか対応していない。ドイツのTierも同様のアプローチを選択し、最近Tier Energy Network(ティア・エナジー・ネットワーク)を開始した。これにより、Tierの利用者は、地元のパートナーショップに設置されたPowerBox(パワーボックス)を使って、自分でバッテリーを交換できるようになった。しかし、バッテリー交換を行うには、自社で保有する電動スクーター1台につき最低2個のバッテリーを用意しなければならず、バッテリーセルは最も高価なハードウェア部品だ。

また、そのブランドのバッテリーがある場所での電池交換のためにルートを変更しなければならないことは、一部の消費者にとって商品体験を悪化させる可能性があり、競争が厳しいときに極めて重要な事業者のユーザー数を制限することになる。

さらに、マイクロモビリティへの需要が高まると、ステーションには同時に多数の車両を収容できることが求められるようになる。それにより、ユニバーサルなインフラの需要が生まれる。Kuhmute(クムート)やPBSC Urban Solutions(PBSCアーバンソリューションズ)などの企業は、この問題に部分的に取り組んでおり、さまざまなeモビリティ車両のタイプやブランドに対応したユニバーサル充電器を開発しているが、そのようなソリューションの多くは電気接触式であるため、一度に対応できる車両の数は限られている。その上、ステーションは2〜3カ月で接触酸化しやすく、街の景観を変えてしまう。

そうなると、次のステップとしては、駐車スペースを大幅に拡大したワンタッチ充電器を展開するのが自然だ。しかし、駐車スペースの話になると、都市が重要なステークホルダーとして登場する。都市はすでに多くの住宅用地を自動車用の駐車スペースに転用する必要があるのに、電動スクーターの充電用にも転用する必要がある。スワップステーションも充電ドックも地上に設置する必要があるからだ。

この問題に取り組み始めているプレイヤーもいるし、電気自動車の分野ではすでにそのような製品が存在している。例えば、米国のWiTricity(ワイトリシティ)は、その上に駐車すると、無線で充電することができる地上用充電パッドを開発している。この充電器には地上のハードウェアがないため、通常の道路や歩道と同じように使用することができる。また、破壊可能な部品がないため、破壊行為への対策にもなる。

この技術を電動スクーターの分野に応用すれば、余分なバッテリーや交換・接続のための手作業を省くことができ、ユニットエコノミクスの向上につながる。このような標準化は、エンドコンシューマーにとっても、マイクロモビリティ企業にとってもメリットがある。

編集部注:本稿の執筆者Roman Bysko(ローマン・ビスコ)氏は、次世代の電気充電ステーションを開発するモビリティ・インフラストラクチャ企業Meredotの共同創立者兼CEO。

画像クレジット:Inside Creative House / Getty Images

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(文:Roman Bysko、翻訳:Yuta Kaminishi)

TenwaysのCGO 600は通勤に最適な都市向けベルトドライブ式電動アシスト自転車、価格約20万円から

ホンダがモバイルバッテリーをシェアサイクルに活用、電動自転車の「電池切れ」解消へ

E-Bike(電動アシスト付きスポーツ自転車)メーカーのTenways(テンウェイズ)は先頃、最初のモデルである「CGO 600」を、クラウドファンディングサイトのIndiegogo(インディゴーゴー)で発表した。価格は約20万円と、e-bikeとしては比較的手頃な価格帯の製品だが、目の肥えた顧客でも満足できそうな多くの特長を備えている。

本題に入る前に言っておかなければならないのは、CGO 600が出品されているIndiegogoのようなクラウドファンディング・プラットフォームでプロモーションされている新製品を購入するには、常に固有のリスクがあるということだ。

しかし、良いニュースは、Tenwaysがこの自転車の生産をすでに開始していると断言していることであり、それは明らかに事実のようだ。確かに、筆者に送られて来た試乗用モデルは、サイトに掲載されている最終的な仕様のハードウェアがすべて搭載されており、この主張を証明するものになっている。さらに、TenwaysはIndiegogoをマーケティング的に利用している企業であり、製品を開発・製造するための資金を集めるというよりは、製品を宣伝するためという意味合いが大きい。

画像クレジット:Tenways

では、この都市向け電動アシスト自転車は購入を検討する価値があるだろうか?短く答えれば「イエス」だ。

長く答えるなら次のようになる。

まず最初に、都市環境に最適化されたE-Bikeというものについて話しておきたい。

確かに、CGO 600は都市向けに作られているように見える。電気モーターとバッテリーは一般的なE-Bikeよりも目立たず、それによってメッセンジャーバイクを思わせるクールなスタイリングに仕上がっている。また、金属チェーンに代わりカーボンベルトドライブシステムを採用しているため、静粛性が高く、給油や調整も不要のメンテナンスフリーに近い。同様に、油圧式ディスクブレーキシステムも、それほど頻繁なメンテナンスを必要としない。

画像クレジット:Tenways

乗り心地もよく、重量は15kgと軽いので、階段を昇ったり降りたりするときにも楽に持ち運べる。スロットルはなく、ペダルアシストはトルクセンサーによって作動する仕組みだが、これがうまく機能している。

250Wのモーターは、坂道や平坦な道を走るときに十分な力を発揮して乗り手をアシストするが、さらにその出力レベルは3段階から選ぶことができる。

画像クレジット:Tenways

バッテリーは比較的小さな252Whで「理想的な条件」では1回の充電で130kmの走行が可能だとTenwaysは主張する。これはおそらく楽観的な数値だろう。しかし、130kmもの距離を通勤で走る人がどれだけいるだろうか?結局のところ、これはそういう使い方のために設計されている自転車なのだ。充電のためにバッテリーを取り外すのは簡単ではないため、自転車をそのままプラグにつないで充電する方がシンプルだろう。

Tenwaysは9月からCGO 600の出荷を始めているという。「都会的」なヒップスターであれ、平均的な通勤者であれ、このような特長を備えたルックスの良いE-Bikeを欲しくない人はいないだろう。

画像クレジット:Tenways

メーカーが公表しているTenways CGO 600の技術仕様は以下のとおりだ。

適応身長:2サイズ用意、165cm~200cmをカバー
重量:15kg
バッテリー使用可能距離:70km~130km
充電時間:100%充電まで2.5時間
最高速度:25km/h
保証期間:2年
コントロールモード:車載スマートLCDコントローラーまたはスマートフォンアプリ

車体
フレーム:航空宇宙用アルミ合金6061
フォーク:航空宇宙用アルミ合金6061
ベルト:Gates(ゲイツ)社製CDXカーボンドライブベルト、 3万kmの寿命を実現
ブレーキ:油圧式ディスク
タイヤ:CST製700C×35mm耐パンクタイヤ

電装品
モーター:カスタムデザインのリアハブモーター、最高出力250W / 最大トルク40Nm
コネクティビティ:Bluetooth
バッテリー:7Ah、252Wh
充電器:カスタムデザインの36V / 3A充電器
モバイルアプリ: iOSおよびAndroid
デジタルコントローラー:ハンドルバー搭載、3段階のペダルアシスト、パスワードによるセキュリティ電源
価格:Indiegogoでは1万4033香港ドル(約20万6000円)から

画像クレジット:Tenways

画像クレジット:Tenways

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東京理科大学が効率的なバイクシェアリングの自転車再配置のための数学的手法を提案

電動キックボードシェア「LUUP」が京阪電気鉄道・京阪宇治駅にポート導入、京都府初のサービス提供開始
東京理科大学が効率的なバイクシェアリングの自転車再配置のための数学的手法を提案

配送車が自転車の回収と補充を行う際の例

東京理科大学は10月27日、バイクシェアリングで使われる自転車の再配置を効率的に行うための数学的手法の提案を発表した。バイクシェアリングでは、各ポートに置かれる自転車の数の偏りが問題になっている。それに対処したこの研究結果は「便利で快適なバイクシェアリングシステムの構築と運用を可能にする重要な基礎となる」とのことだ。

バイクシェアリングのポートでは、自転車が往復だけでなく片道だけで利用されることも多く、どうしても置かれる自転車の台数に偏りが出る。ポート数が少ない場合は、これまでにも適切な再配置を可能にするアルゴリズムが提案されていたが、ポート数が増えると、それが使えなくなるという問題があった。

そこで研究グループは、「これまで解決されなかった再配置作業の時間的制約や実行可能性などを踏まえ」、この問題をバイクシェアリングシステム・ルーティング問題(mBSSRP)として定式化し、ポート数が大きく増えても「現実的な時間内に最適解を求めることができないか」を考えた。

そして、これまで提案されていた「メタヒューリスティックな手法」を用い、mBSSRPの実行可能な解空間と、不可能な解空間を動的に探索する制御手法を導入したアルゴリズムを提案。これにより、mBSSRPの最適解を現実的な時間内で求めることに成功した。

東京理科大学工学部情報工学科の池口徹教授は「配置が偏った自転車に対して配送車の最適配置問題を効率よく解くための手法を開発することは、我々の現実社会における実課題としても解決すべき重要な課題と考えています。今回提案した手法により、便利で快適なバイクシェアリングシステムの構築・運用が可能となります」と話している。

この研究は、池口教授、博士後期課程2年の對馬帆南氏、日本工業大学先進工学部情報メディア工学科の松浦隆文准教授からなる研究グループによるもの。

ホンダがモバイルバッテリーをシェアサイクルに活用、電動自転車の「電池切れ」解消へ

ホンダがモバイルバッテリーをシェアサイクルに活用、電動自転車の「電池切れ」解消へ

電動アシスト自転車の“電池切れ”をモバイルバッテリーで解消する──。そんなことが可能になる「シェアサイクル用2電源システム」をHondaが開発しました。2022年にシェアサイクル事業者との共同実験を行い、事業化を目指すとしています。

このシステムは、普段持ち歩くモバイルバッテリーをシェアサイクル用の電動アシスト自転車に接続するという至って単純な仕組み。これにより、走行時の電池切れを防げるほか、停車時に自転車への充電も可能です。

いまや公共交通機関やクルマのラストワンマイルを支える“モビリティ”に欠かせない手段となった自転車ですが、Hondaによれば、車両の充電を含めたシェアサイクル事業者のオペレーションコストは、売上の半分以上を占めるとのこと。

Hondaは、このシステムを活用することで、シェアサイクル事業者が車両を充電するためにかかるコストを削減し、事業収益の改善に貢献できる点もアピールしています。

ちなみに、このシステムのネーミングの由来については、「モバイルバッテリーと車両本体のバッテリーの2つから同時に電力を供給することができるシステムという意味を表現した」としています。

・本田技研工業株式会社 執行職 モビリティサービス事業本部長 高見聡氏のコメント

現在、都市における移動手段として利用が拡大するシェアサイクル領域ですが、事業者のオペレーションコスト削減が課題となっています。シェアサイクル用2電源システムはシンプルなアイデアから生まれましたが、ユーザーには利便性を高め安心して利用いただくことができ、事業者の課題である充電切れ解消や電池交換コスト削減にも貢献することができると考えています。Hondaは、こうした課題解決を通じ、モビリティサービスの更なる充実にチャレンジしていきます

(Source:HondaEngadget日本版より転載)