電動車椅子のWHILLが北米の空港でもテストを開始

アムステルダムのスキポール空港、東京の羽田空港、およびアブダビ空港での試行に続き、自動車椅子のメーカーであるWHILLはそのロボティックモビリティー技術を北米に持ちこむ。テキサス州ダラスとカナダ、マニトバ州のウィニペグの空港では、移動に不自由のある旅行者がWHILLの車椅子をテスト利用できる。Scootaround経由で予約する。

イメージセンシング技術と自動ブレーキを利用して、WHILLの車椅子は混雑した空港でも障害物を検出し、利用者を素早くゲートに送り届ける。横浜に拠点を置くWHILLは、人の移動に自主性をもたらすテクノロジーを開発するべく、約8000万ドル(約87億円)を調達した。

「旅行中、チェックインや保安検査を経て時間内にゲートに到着することは、飛行機に乗り遅れないためには不可欠だ」とWHILLの創業者でCEOの杉江 理氏は語る。「移動機能に制約のある旅行者は、係員が車椅子を持ってきてゲートまで押してもらうために、人より多く時間がかかるのが普通で旅行中の余裕が少なくなる。当社は移動の不自由な旅行者が空港のA地点からB地点までスムーズ動けることで自主性を感じられるチャンスを提供したいと考えている」。

WHILLは数多くのスタートアップや既存企業とともに介護技術の巨大な市場の中にいる。

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障がい者の人口は世界で10億人を数え、介護技術製品の潜在顧客はヨーロッパ全体で7000万人に上る。必要とする人たちがいるという事実だけでは動き出さない未来の起業家たちも、高齢者と障がい者のための介護技術に消費される金額が2024年に260億ドルを超えるという数字を見れば気が変わるかもなしれない。

「アクセシビリティーはウィニペグ・リチャードソン国際空港の優先事項であり、WHILLとの協力関係によって移動の不自由な乗客が楽に旅行できるようになる。旅行者がWHILLの自動車椅子を試行できる北米で初めての空港の1つになったことを大変喜んでいる」とウィニペグ空港公社のCEOであるBarry Rempel(バリー・レンペル)氏は語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WHILLが新たに約20億円を調達、電動車椅子の枠を超えたパーソナルモビリティ事業に取り組む

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「次世代パーソナルモビリティ」の開発を手がけるWHILLは本日、総額1750万ドル(20億円弱)の資金調達を行ったことを発表した。Eight Roads Ventures Japan(旧Fidelity Growth Partners Japan)をリード投資家とし、未来創生ファンド、ゴールデンアジアファンドⅡ等が参加している。また、Eight Roads Ventures JapanのDavid Milstein氏がWHILLの社外取締役として就任すると発表した。今後、電動車椅子に留まらず、WHILLが掲げる「次世代パーソナルモビリティ」の普及を目指し、新たにシェアリング事業なども手掛ける計画だ。

TechCrunch Tokyo 2012のスタートアップバトルの優勝者でもあるWHILLは、ソニー、トヨタグループ、オリンパスなどメーカー出身のエンジニアを中心とするチームだ。CEOの杉江理氏も日産自動車出身だ。彼らが最初に取り組んだ「WHILL Type-A」は、手動の車椅子にモーターをアタッチする形式だった。その後、現在のモーターと車輪が一体型の「Model A」を開発し、2014年9月から一般販売を開始している。「Model M」は、アメリカでFDAの認可を得るために「Model A」の仕様を一部変更したモデルとWHILLの広報担当者は話す。FDAの認可を得ることで、医師が処方することができるようになり、保険も適用されるようになるという。「Model M」はFDAの電動車椅子としての要件をクリアするため、主に変更したのは背もたれの部分だ。様々な症状の患者に合わせてカスタマイズできるよう変更しているという。また「Model A」ではBluetooth経由でiPhoneアプリから車椅子を遠隔操作することが可能だが、「Model M」にはそれがない。いかなる環境でも安全、安心を追求するFDAの基準に則すためという。

2016年2月、FDAから商品の認可が下りたとWHILLの広報担当者は話す。現在、FDAによるWHILLの製造現場の調査が行なわれていて、順調に進めば7月からアメリカで「Model M」の一般販売を開始できる予定だという。アメリカのユーザーは代理店経由で車椅子を扱う約50店舗からWHILLを購入できるそうだ。

今後WHILLは、シェアリングサービスなどの事業開発を検討しているという。例えば、自転車の貸し出しやカーシェアリングのように、駅付近やアミューズメントパークなどの施設内でパーソナルモビリティを活用した事業を考えているそうだ。それに伴う機能開発、例えばパーソナルモビリティが自動で当初あった場所に戻るなどの自律走行機能などの開発を行うことも視野に入れているという。

今回Eight Roads Ventures Japanをリード投資家に迎えたのは、新たな事業を展開を行うためのアライアンスや機能開発で協力できる企業を探すためのネットワークに期待しているためという。また、主要市場と位置付けているアメリカ市場での販売強化と認知度の向上を図るための協力を得られることも理由の一つと話す。WHILLの2015年度の販売実績は日米合わせて500台だったとし、2016年度はその2倍、1000台の販売を目指す計画だそうだ。

WHILLは「電動車椅子という枠に超えて、新たな乗り物を提案していきたい。そしてこれに乗るのは楽で、かっこよくて、クールであるという認識を広めたい」と話している。2012年5月に正式に法人化したWHILLはこれまでに総額約1285万ドルを調達している。今回の調達で累計調達額は約3035万ドルとなった。