メイン州ポートランドで顔監視を禁じる住民投票が可決

いまは米国時間11月3日に行われた選挙結果ことで、心も頭も忙しいと思うが、でもそのかげでメイン州ポートランドでは、プライバシー擁護派の小さいけど重要な勝利があった。メイン州の地方紙Bangor Daily Newsによると、ポートランド市は行政と警察による顔認識技術の使用を禁じる住民投票を可決した。

その趣旨は次のとおりだ。

ポートランドにおける公務員による顔監視を禁じる条例は、ポートランド市とその各部局および職員が、公衆のいかなる集団や成員に対しても、いかなる顔監視ソフトウェアでも、その使用と認可を禁じ、また公衆の成員に顔監視データが不法に収集/利用された場合には訴訟できる権利を提供するものである。

これは、11月3日夜に同市で議決された4つの進歩的な政策の1つだ。市議会を通過したその他の政策は、時給15ドル(約1560円)の最低賃金と、家賃増額の上限などとなる。同様の法案は、サンフランシスコとボストン、そしてオレゴンのポートランド市でも議会を通過した。オレゴンのポートランド市は2020年9月に、かなり包括的な禁令を成立させている。

一方、ワシントンDCでは今週初めに、顔認識を利用した逮捕があった(The Washington Post記事)。その人物は、Twitter(ツイッター)上の画像を使って特定されたという。

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ポートランド市の顔認識技術禁止条例は民間企業も対象になる

米国時間9月9日、オレゴン州ポートランドの市議会は顔認識技術に対する禁止法案を可決した。地方自治体の禁止令としては、これまでで最も強力だと広く知られているものだ。

ポートランドは2つの法令により、市の各部局がこの異論の多い技術を使うことを禁じ(ポートランド市リリース)、また民間企業が公共の場でそれを利用することを禁ずる(ポートランド市リリース)。オークランド(Daily Beast記事)と、サンフランシスコ(Vox記事)、ボストン(Boston Globe Media 記事)も、行政府が顔認識技術を利用することを禁じているが、しかしポートランドの、公共の場での企業の利用に対する禁令は新しい視点だ。

民間に対して使用を禁じているその条例案は、顔認識システムに黒人や女性、高齢者などへの偏見が織り込まれているリスクに言及している。これらのシステムにおける偏見のエビデンスは、研究者が広範に観察しており(MITプレスリリース)、連邦政府ですら昨年発表された調査(米国立標準技術研究所資料)で認めている。これらのシステムにある既知の欠陥は、法執行機関による利用などで深刻な結果を招く偽陽性に導くこともありえる。

市議会の委員であるJo Ann Hardesty(ジョ・アン,ハーデスティ)氏は、ハイテクの法執行ツールに対する懸念を、3カ月以上前からポートランドで起きている抗議活動に結びつけている(Facebook投稿)。米国保安局は先月、小型の航空機使ってポートランドのダウンタウンにある抗議活動の中心地である、マルトノマ郡ジャスティスセンターの近くで群衆を監視した(Willamette Week記事)ことを認めた。

ハーデスディ氏によると、地方の法執行機関が顔認識技術を使うことを禁ずる決定は、ポートランドの現状においては「特別に重要」とのこと。

同氏は「自分の顔のようなプライベートなものが、写真に撮られ、保存され、利益のためにサードパーティに売られることは、誰においてもあるべきではありません。また、テクノロジーのアルゴリズムが罪のない人を誤認したために、刑事司法システムの中へ不正に押し込められるようなことは、誰においてもあるべきではありません」と語る。

ACLU(米市民的自由連合)も9月9日の票決を、デジタルプライバシーの歴史的な勝利として祝った。

ACLUのオレゴン州暫定取締役のJann Carson(ジャン・カーソン)氏は「本日の票決で、当市では真の権力を持つ者が私たちであることを、コミュニティが明らかにしました。私たちはポートランドを、警察や企業などが私たちを行く先々で追跡する監視国家には絶対にしません」とコメントした。

顔認識技術の使用を公共と民間の両方に対して禁ずるポートランドの二重の禁令は、同様のデジタルプライバシー行政を模索しているそのほかの都市にとって指標になり、プライバシーの擁護者が望んでいた結果が実現するかもしれない。

Fight for the FutureのLia Holland(リア・ホランド)氏は「今や全国の都市がポートランドに見習って自分たちの禁令を通すべきです。今の私たちには勢いがあり、この危険で差別的な技術を撃退する意志があります」とコメントした。

関連記事:物議を醸したClearview AIが再び米政府機関と顔認識ソフトウェアで契約

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米格安航空会社のSpirit Airlinesがバイオメトリクスによるチェックインを試験中

米国時間9月3日、格安航空会社(LCC)のSpirit Airlinesは、シカゴ・オヘア国際空港の同社チケットロビーにバイオメトリクスのチェックインを導入した。「チェックインの処理を円滑化し、新型コロナウイルスの感染蔓延の間の同社従業員と乗客が顔を合わせる機会を減らしていく」と発表した。

その新しい処理は単純明快だが、それでも最初にカスタマーサービスの係が乗客のIDをチェックしてから、新しいチェックインとバッグドロップ(自動手荷物預け機)の装置へ向かう。乗客がこの自由選択制のバイオメトリクス方式を選んでいたら、IDがまずスキャンされて写真と顔のスキャンと比較する。今後同社は、係がIDをチェックする最初の部分を省略したい意向だが、それにはTSA(運輸保安局)の承認が必要だ。

すべてが計画どおりに進めば、乗客はバッグを預けて先へ進む。途中、TSAのチェックポイントがあるが、これは航空会社の仕組みとは関係ない。
Spiritの社長でCEOのTed Christie(テッド・クリスティ)氏は本日の発表で「Spiritは2019年に『お客様に投資する』というスローガンを掲げ、その一環としてチェックイン体験の改善を目指しました。最初からチェックインの処理を円滑にするのは自動化とバイオメトリックな写真照合だとわかっていました。そして2020年になってからは、チェックインが空の旅を快適にする重要な要素であることがわかってきました。触る場所や、係と顔を合わせる機会が減れば、空港の運営方式も変わるでしょう」とコメントしている。

新型コロナウイルスの感染蔓延前には、チェックインカウンターの社員数を減らすことは単純なコスト削減努力だった。自動手荷物預け機のセルフサービス化は、すでに当たり前になっている。しかし今では、旅客数が記録的に減っていても、自動化は正しいやり方だと感じられている。

現在オヘア空港では、1日に600名の乗客がSpiritの自動手荷物預け機を利用している。テストでわかったのは、新しい処理だと平均処理時間が70秒短くなることだ。

Spiritが強調するのは、いかなるデータも政府の手に渡っていないこと、Spiritの社内から外に出ることはないことだ。バイオメトリクス、中でも顔認識は、少なくとも米国では空港での利用も長年論争のマトだった。米国では例えば国土安全保障省が、国際線の搭乗前のバイオメトリクススキャンをテストしたし、今ではTSAが乗客がセキュリティラインを超えるときのセルフサービスのチェックポイントを試験している。今では、セキュリティを通るときの、CLEARシステムによる指紋や顔のスキャンを不快とは思わない乗客も増えているが、やはり不快に思う乗客も少なくない。今は新型コロナウイルスの感染蔓延の非常時で、しかもデータは政府と共有しないと航空会社が主張しているにもかかわらず、気持ち悪いと感じる人もいるのだ。

画像クレジット: Spirit/Getty Images

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ニューヨーク州議会が顔認識技術の学校導入を2年間停止することを決定

米国ニューヨーク州は今週、学校における顔認識技術のいかなる実装も向こう2年間中止すると票決した。ニューヨーク州の下院上院が米国時間7月22日に認めたこの一時停止は、今年初めに州北部の校区がこの技術を採用して親たちからの訴訟に発展した(Washington Post記事)ことに対応している。その訴訟は6月に、親たちの代理としてNew York Civil Liberties Union(ニューヨーク自由人権協会、NYCLU)が起こしたものである。州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏がこの法案に署名すれば、学校におけるいかなる顔認識システムの使用も2022年6月1日まで凍結される。

今週初めにはカンサス州トピーカの校区(KNST記事)が「学校再開計画の一環として職員のための検温ボックスに顔認識技術を採用する」と発表した。しかしながらそのようなシステムは、新型コロナウイルスのもっとも厄介な性質であるウイルスの無症状の拡散を防ぐことができない。

新型コロナウイルスのパンデミックはまだ米国で猛威を揮っているので、学校の再開は深刻な政治問題になっている。今月初めの記者発表でホワイトハウス報道官であるKayleigh McEnany(ケイリー・マケナニー)氏は、「科学が学校再開の妨害をすべきでない」と発言した。

カンサスで提案されている顔認識技術の学校における実装に関して、デジタル人権団体のFight for the Futureの活動部長であるCaitlin Seeley George(ケイトリン・シーリー・ジョージ)氏は「顔認識は新型コロナウイルスの拡散を抑止しないし、学校がこのようなたわごとを取り上げるべきではない」と述べた。

ニューヨーク州における顔認証技術導入の一時停止は、デジタルのプライバシーを擁護する人々の大きな勝利と見なされている。彼らは、監視技術が一般市民の自由を侵すことを恐れている(South China Morning Post記事)だけでなく、テクノロジーが主張している自由や人権、プライバシーなどの目標を達成する能力が、テクノロジー自身にはないのではないかという疑念も持っている。テクノロジーの効力に関するこのような批判は、顔認識技術の高い偽陽性率(MIT Technology Preview記事)やシステム本体にコーディングされている人種的偏見を証明する研究で何度も繰り返されている。

NYCLU教育政策センターのStefanie Coyle(ステファニー・コイル)氏は「私たちは何年も前から『顔認識などのバイオメトリックの監視技術は学校にあるべきものではない』と主張してきた。州議会の今回の議決は、生徒たちをこの種の人権侵害的な監視から護るための大きな一歩だ(NYCLU記事)」と述べている。「学校は子どもたちが学習し成長するための環境であるべきであり、欠陥と人種的偏見のあるシステムがたえず生徒たちを監視しているような学校は、それを不可能にする」と続けた。

関連記事:アマゾンが顔認識技術を地方警察には1年間提供しないと表明、FBIへの提供についてはノーコメント

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マイクロソフトは警察には顔認証技術を売らないと公言

Microsoft(マイクロソフト)は、IBMAmazon(アマゾン)との協議を通じて、少なくともより厳しい規制が設けられるまでは、顔認証技術を警察が利用することに反対する立場を固めた。

今朝、ワシントンポストのライブイベントで行われたリモートインタビューで、マイクロソフト社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏は、同社のテクノロジーを適切に使用するための「原則的立場」を、同社はすでに取っていると話した。

「私たちが導入した原則に従い、私たちは顔認証技術を、現在の米国の警察署には売らないことにしました」とスミス氏。「しかしこれは、もっとよく知り、もっとよく学び、もっと行動せよと私たちが呼び掛けられている時期なのだと、私は強く思っています。それを受けて私たちは、人権に基づいてこの技術を管理できる国法が制定されるまで、米国の警察署には顔認証技術を販売しないことを決断しました」。

さらにスミス氏は、この技術を「他のシナリオ」で使用する場合の管理に用いる新しい「審査要素」を追加するとも話していた。

ワシントンポスト・ライブ:マイクロソフト社長ブラッド・スミス氏は「人権に基づく」国法が制定されるまで、同社は顔認証技術を今の米国の警察署には売らないと語った。

George Floyd(ジョージ・フロイド)氏殺害を受けて発せられたこうしたコメントは、米全国、そして全世界での抗議活動を招き、人種間の平等や法執行に関する幅広い議論を促す結果となった。

マイクロソフトの立場は、より厳重な規制が施行されたときにこの問題を再検討することを示唆したアマゾンの立場に似ている(ただし、どちらの企業も民主党議員が提出した「警察の正義」法案が警察署によるこの技術の使用を制限できるかに関して、明言は避けている)。双方とも、顔認証技術の販売を全面的に取り止めると発表したIBMほど踏み込んではいない。

ACLU(アメリカ自由人権協会)北カリフォルニア支部のテクノロジーおよび人権担当弁護士Matt Cagle(マット・ケイグル)氏は、このニュースに対して次の声明を発表をした(以下は抜粋)。

「顔認証の開発企業ですら、危険だとの理由でその監視技術の販売を拒否した今、政治家はもう、それによる私たちの権利と自由への脅威を否定できなくなりました。全国の議会と規制当局は、警察の顔認証の使用を速やかに禁止しなければなりません。そしてマイクロソフトなどの企業は、人権コミュニティーと(敵対するのではなく)協力して、それを実現させるべきです。これには、警察の顔認証の使用を合法化し全国の州に広めるための法律の制定を推進する取り組みを中止することも含まれます」。

「これらの企業が、ほんのわずかにせよ、またずいぶん時間がかかったにせよ、ようやく行動に出たことを私たちは歓迎します。私たちはまた、これらの企業に、黒人や有色人種のコミュニティーに不条理な危害を加える監視技術を含む、彼らを過剰に監視する卑劣なアメリカの歴史に永遠に幕を閉じるための努力を強く求めます」。

一方、アムネスティー・インターナショナルは、大量監視のために警察が顔認証技術を使うことを全面禁止するよう訴えている。

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画像クレジット:Riccardo Savi / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

ビットキーが集合住宅向けの顔認証入退館システムを開発、マスク装着状態の認証にも対応へ

ビットキーは6月11日、集合住宅向けに「レジデンス向け顔認証ソリューション」を公開した。第1弾として、エントランスのオートロックを顔認証で解錠可能にするシステムを販売する。なお、同システムはすでに東京都江東区の「プラウドタワー東雲キャナルコート」での実証実験が始まっている。

この顔認証ソリューションを導入するには、顔認証用のタブレット端末とカメラの設置のほか、オートロックシステムと連動させるための工事が必要となる。顔の登録自体は同社の指定アプリもしくはウェブサイト上で実行可能だ。

同社では今後、集合住宅での入退館以外の用途についても顔認証を利用できるように、自社での製品開発はもちろん、他社製品やシステムとの連携を進めるとのこと。また、2020年7月にはマスクをつけたままでの顔認証を可能にするほか、今後はパスワードなどの複数の認証方法を組み合わせた多要素認証にも対応するという。

ビットキーは、スマートロックの「bitlock」シリーズを展開するスタートアップ。製品の販売だけでなく、カギのシェアが可能なスマートロックの特徴を生かして、居住者が不在時の宅配・家事代行・クリーニングなどのサービスも展開している。スマートロック自体の目標としては、2020年中にシリーズ累計で100万台の受注を目指す。

なお、顔認証のシステム自体は台湾拠点のサイバーリンクが開発した「FaceMe」を利用している。FaceMeは、認識速度が最速0.2秒以下、本人識別率が最高99.7%のAI顔認証エンジン。カメラに対して角度がついた状態で正しく顔を認識する広い認識範囲が特徴とのこと。具体的には垂直(上下)は50度、左右(水平)は60度の範囲で認識可能だ。

対応OSも幅広く、Windows、Android、iOS、Linux(Ubuntu x86、Ubuntu ARM、RedHat、CentOS、Yocto、Debian、JetPack)などで利用可能なので、認証端末にはWindowsタブレットやAndroidタブレット、iPadなどを利用できる。