鳥のように空を飛ぶロボットPigeonBot

地球上の最も進んだロボット科学者ですら、どんなに頑張っても鳥が空を飛ぶときのあの軽快で優雅で効率的な運動を再現することは大変難しい。だが、スタンフォード大学の研究者が、鳥の羽根による独特な飛行特性を研究し実証するPigeonBot(ピジョンボット)で、その状況を一歩進めることができた。

見た目PigeonBotは、なんというか言わせてもらえば子どもの工作みたいな感じだ。しかし、適当に作ったみたいなこの装置には、膨大な見識が詰め込まれている。鳥の飛び方は、実はあまりよくわかっていない。動的な翼の形状と、それぞれの羽根の位置の関係が超絶に複雑なためだ。

機械工学科のDavid Lentink(デイビッド・レンティンク)教授は、数名の受け持ちの大学院生とともに、「鳥類の翼の変形メカニズムの生体力学の分析と、そこから得た見識を、実際の風切り羽を使用したバイオハイブリッド・ロボットに応用する」ことに挑戦した。一般的なハトをモデルにしているが、その復元力にはレンティンク教授も驚いていた。

サイエンス誌のインタビューの中で、彼は以下のように説明している。

まずは博士課程の学生Amanda Stowers(アマンダ・ストウワーズ)君が骨格の動きを分析し、私たちのロボットが20本の所列風切り羽根と20本の次列風切り羽を動かすためには、手首と指の動きだけを模倣すればよいことを突き止めました。2番目の学生Laura Matloff(ローラ・マットロフ)君は、骨格の動きに反応した単純に直線的な運動で羽根が動くことを解明しました。ここで得られたロボット工学的見識は、鳥の翼は巨大な劣駆動システムであり、鳥は、それぞれの羽根を常に個別に制御しているわけではないということです。むしろ、手首と指の運動が、羽根を骨をつないでいる弾力性のある靱帯を通じて自動的にすべての羽根に伝わるのです。羽根の位置の制御を大きく単純化する、よくできた仕組みです。

個々の羽根の制御が、手動ではなく自動だったという発見に加え、研究チームは、羽根の中の微小な構造が、一方向性のマジックテープのような特性を生み、あちらこちらに隙間ができることなく、一体化した表面を形作っていることも突き止めた。その他のものも含め、今回の発見はサイエンス誌に掲載された。「3番目の学生」Eric Chang(エリック・チャン)君がまとめ上げたロボット本体については、サイエンス・ロボティクス誌で解説されている。

実際のハトの40枚の羽根と超軽量なフレームを使い、チャン君とそのチームは、簡単な飛行機を製作した。先端にプロペラを備えており、羽根で揚力を生み出すわけではないが、鳥が滑空中に行うように、羽根を湾曲させたり変形させたりして、方向変換やその他の姿勢を制御する。

翼そのものの生物学的特性を研究し、PigeonBotシステムの観察と調整を行うことで、研究チームは鳥は(PigeonBotも)、翼を少し折り畳むときに「手首」を使い、開くときには「指」を使って飛行を制御していることを発見した。しかしそれは、必要とする意識やメカニズムを最小限に抑えた非常にエレガントな方法で行われる。

PigeonBotの翼。羽根は弾力性のあるジョイントで接続され、ひとつが動くと別の羽根も動く仕組みになっている

これには、1世紀以上も前に確立された原理に多くの点で依存する現代の飛行機の、翼のデザインを改良できる可能性がある。当然のことながら、いきなり急降下したり宙返りしたりといった動きは旅客機には無縁だが、ドローンや小型飛行機には、この能力が大変に役立つかも知れない。

「ここで紹介した劣駆動可変翼の原理は、航空機やロボットの、これまで考えられていたよりも高い自由度の、より経済的でシンプルな可変翼の設計に影響を与える可能性がある」と研究チームはサイエンス・ロボティクスに掲載された論文に書いている。

今後彼らは、別の種類の鳥も観察して、この技術が共通のものなのかを確かめる予定だ。レンティンク教授は、この翼に調和する尾の研究に取りかかっている。またこれとは別に、鷹からヒントを得た生体模倣ロボットの研究も行っている。それには脚や鉤爪が付く可能性がある。「アイデアはたくさんあります」と彼は打ち明けている。

関連記事:我々にぴったりの空飛ぶ生体模倣ソフトロボットBat Bot(未訳)

画像クレジット:Stanford University

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

ロールスロイスがエンジン整備の未来像として虫型ロボットを披露

ロールスロイスが、今週開催されたFarnborough Airshowで、エンジン保守の新しい未来像を発表した。ひょっとすると皮膚がムズムズする感覚に襲われるかもしれない。

同社が、IntelligentEngine構想(今年の初めにSingapore Airshowで発表済)の一部として、ロボットスネークとゴキブリのようなミニチュアロボット群の計画を披露したのだ。理屈の上では、それらは協調して働き、エンジン全体を取り外すことなく、飛行機のエンジン内部を検査する。

どの技術も実用化という意味ではまだ成熟していないが、どのように動作すべきかは以下のように考えられている:

ハーバード大学ならびにノッティンガム大学との提携の下に、ロールスロイスは10ミリの大きさの協調型ロボットの開発に取り組んでいる。これらはSWARMと呼ばれるロボットで、小型カメラを介してエンジン内部のライブ映像を人間のオペレーターに提供することができる。

こうしたロボットたちを小型化することは、同社と協力者たちにとっての挑戦だが、実はこれは、ハーバード大学の研究者たちにとっては8年越しの挑戦なのだ。このことは展示会において、ハーバード大学の研究者Sebastien de Rivasの声明によって明かされた。

SWARMがエンジン内部にアクセスするためには、これらの小さなロボットたちはFLAREに乗り込むことになる。FLAREというのは一対の内視鏡に似たロボットで、機械の大きな部品の内部のあらゆる隙間にくねくねと入り込み、SWARMを検査したい場所へと送り込む。同社はまた、内部で応急的な補修を行うFLAREの計画も進めている。

これらの野心的な計画に加えて、Rolls-Royceはもう少しばかり成熟した技術も披露した。例えばエンジン内部に恒久的に設置されて、定常的な局所的整備を行う潜望鏡に似たINSPECTロボットのネットワークや、専門エンジニアの操作によって、複雑な保守タスクを助けることのできるボアスコープ型の遠隔作業ロボットなどだ。

エンジニアリングのこのような進化は、これまでは内部センサーデータと人手による作業に頼っていた大型機の整備作業を、よりコスト効率の高いものにしていくことができる。ロールスロイスのオンウィングメンテナンス(機体からエンジンを外さずに行う整備)技術の専門家James Kellが、The Engineerに語ったところによれば、従来の人手による作業には最大5時間ほどもかかっているそうだ。SWARMのようなロボットを使えば、こうしたプロセスは早ければ5分ほどに短縮できるだろう、とKellは語っている。

ただ、こうしたロボットアシスタントの効率は否定することはできないものの、その精度と信頼性についてはまだ実証されておらず、また自分の登場する飛行機がインテリジェントなロボット群によって検査されたということを知った乗客たちが感じる快適度に関しても、まだはっきりしていない。

[原文へ]
(翻訳:sako)