【米国】Google Payによる駐車料金支払いを音声でできるようになった

筆者: Jaclyn Trop

米国のAndroidユーザーはこれで、これまでのように駐車違反切符を切られることがなくなるかもしれない。少なくともそれが、最新のアップデートでGoogleがユーザーに約束していることだ。

Googleは木曜日(米国時間03/10)に、その最新のソフトウェアアップデート新しい機能をたくさん発表したが、その中には、ParkMobileとのパートナーシップにより、音声で駐車料金を払える機能がある。これによって、寒すぎたり、会議が予定より長引いたり、カップ・ホールダーの小銭が少ないときにメーターで払う苦痛とおさらばできる。

このパートナーシップは、最近のGoogleが交通に力を入れていることの最新の例だ。これまでは、Googleマップに自転車やライドシェアを加えたり、デジタルキーを開発したり、自動車メーカーと共同でAndroidオペレーティングシステムを車に統合したり、などがあった。

消費者の日常生活を便利にしようとGoogleが志したとき、中でも駐車は同社にとって易しい問題だ。Parkmobileとのパートナーシップにはやや制限があるが、でも過去の例を見るかぎり、パートナーシップの拡大はすぐだろう。

音声による駐車機能は、読んで字のごとしの機能だ。どこかに駐車して「Hey Google, pay for parking」(ヘイ、グーグル、駐車料金を払って)と言うと、あとはGoogle Assistantのプロンプトに従うだけだ。その決済は、Google Payが処理する。

Googleのキャッチフレーズは、「硬貨と混乱にさようなら(No more coins, no more confusion)」だ。

混乱の原因は、ダウンロードして使える駐車アプリの不出来にもある。今回の駐車料金支払い機能は、使いづらいアプリを無視してデフォルトでParkMobileを使う。これは、米国の400以上の都市の駐車場に対応している、最上位のアプリだ。

そのアプリのAndroid用のアップグレードでは、残り時間をチェックしたり、時間を増やしたりが音声コマンドでできる。「Hey Google, parking status」とか、「Hey Google, extend parking」と言うだけだ。

これが重要なのは、Googleが車からユーザーの個人情報を知るためにも使えるからだ。たとえば、車の現在位置が分かる。そしてデータ収集に関しては、GoogleがAppleに勝ちとなる。

AppleやGoogleやAmazonにとって、ユーザーの車から得られるデータは、サブスクリプションサービスを売ったり、あるいはそのデータをサードパーティに売って広告の個人化に使わせたりすることに利用できる。そんなデータが多くなれば、テクノロジー大手の売り上げも増える。

昨年GoogleとParkMobileは路上駐車の支払いをGoogle Mapsからできるようにしたが、でも今回の音声による支払いはAndroidユーザーとGoogleとParkMobileにとって大きな進歩であり、さらに、ターゲティング用のデータに飢えているサードパーティの顧客にとっても、すごくありがたい。

(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Getty Images

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駐車場管理アプリakippeが特定利用者のみに空き駐車場を貸し出せるakippe private機能追加、3月1日スタート

駐車場予約アプリ「akippa」(Android版iOS版)を運営するakippaは2月16日、駐車場のオーナーがマンション・寮など特定の住人のみに貸し出せる新機能「akippa private」(アキッパ・プライベート)の提供開始を発表した。3月1日より利用可能。マンション・アパート・学生寮などの入居者専用駐車場、公団での介護者専用駐車場、オフィスビル・商業施設の関係者専用駐車場などに活用できるという。

akippaは、駐車場のシェアリングサービス。契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などの空きスペースを、ウェブかアプリから事前予約・決済して安く利用できるというもの。空きスペースを持っている人ならば誰でも登録・貸出が行えるので、費用をかけることなく副収入を得られる。2022年2月現在で会員数は累計250万人(貸主を含まない)となっているそうだ。

akippaの新機能akippa privateは、マンション入居者など駐車場オーナーが指定したユーザーのみが予約・利用できる機能。一般のakippa会員は、駐車場詳細ページの閲覧や予約を行うことはできない。そのため外部収益とはみなされずに分譲駐車場の空き駐車場をシェアすることが可能になるという。

akippa privateの活用イメージ例

  • 分譲マンションでの入居者専用駐車場
  • 賃貸マンション・アパート・学生寮などでの入居者・来客専用駐車場
  • 公社などの団地での介護事業者専用駐車場
  • オフィスビルや商業施設の関係者専用駐車場
  • バスや搬入車両など大型車両専用駐車場
  • akippaマルシェ専用駐車場

akippaによると、近年都心部のマンションなどでは、住民の車離れにより付帯駐車場に空きが出てしまう物件が増えており、課題となっているという。

分譲マンションの駐車場を住民以外に貸し出した場合、その駐車場売上は「外部収益」とみなされ各種税金や税務申告の義務が生じるため、手続きなどで新たなコストが発生する。そのため多くの収益が見込めない場合は、マンション理事会の承認などの手続きが煩雑なこともあり駐車場シェアの導入は難しい。

これに対してakippa privateは、特定ユーザーのみが予約・利用可能とすることで、外部収益とはみなされずに空き駐車情のシェアが可能となる。現在は個人宅には対応していないが、将来的には対象駐車場の拡大も見込んでいるとのこと。

また予約対象者を絞れることから、住民と関係ない第三者がマンション・学生寮などセキュリティの整った場所に立ち入ることを防止可能。このほか、akippaの予約システムを活用し利用料金を徴収するため、クレジットカード、キャリア決済(docomo、au)、PayPay決済によるキャッシュレス決済が行える。管理会社は窓口業務の管理工数を削減できるほか、現金取り扱いリスクを回避できる。

アパートなど地下駐車場でのEV充電を容易にするHeyChargeがBMW主導で約5.4億円のシード調達

明らかな理由から、EV充電ビジネスは高成長を続けている。2007年以降、最大のプレーヤーの1つとなっているのは、広範なEV充電ネットワークを持つ米国の上場企業、ChargePoint(チャージポイント)だ。しかし、多くのスタートアップがそれに追いつこうとしている。

ドイツに本社を置くHeyChargeは、一般的にEV充電活動の約80%を占める地下駐車場でのEV充電に問題があることに気づいた。問題は、通常のスマート充電インフラにはインターネット接続が必要だが、地下ではそれができないことだ。そこで、HeyChargeは解決策を考えた。

それを実現するために同社は中央ヨーロッパ時間1月13日、BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Ventures(ChargepointやChargemasterの初期投資家でもある)主導のシードラウンドで470万ドル(約5億4000万円)を調達した。今ラウンドには、欧州の大規模な再生可能エネルギー発電会社であるStatkraftのVC部門Statkraft Venturesも参加している。

HeyChargeがYCの2021年バッチの一部だったときに、TechCrunchは同社を取材した。

HeyChargeのソリューションは、アパートやオフィス、ホテルなどの地下にあるEV用のインフラを対象としている。同社のSecureCharge技術は、現場でのインターネット接続を必要とせず、Bluetoothで接続するプラグ&プレイ(PnP)セットアップを採用している。

HeyChargeのChris Carde(クリス・カルド)CEOは次のように述べている。「欧州では40%、米国では37%の人がアパートに住んでおり、自宅で充電できないために電気自動車を利用することが困難な人が大勢います。HeyChargeのソリューションは、EV充電の拡張性を高めるだけでなく、費用対効果を高めてよりアクセシブルにし、どこに住んでいても、どこで働いていてもEV充電ができるようにします」。

BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(キャスパー・セイジ)氏はこう述べている。「今後数年でEV市場が急速に成長するのにともない、世界中で充電ソリューションのインフラ構築を進める必要があります。HeyChargeは、インターネットに接続しないEV充電ネットワークを可能にした最初の企業であり、これは未開拓のホワイトスポットをカバーするための重要な成功要因です」。

HeyChargeは、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Google(グーグル)、BMW、SIXTでの勤務経験を持つクリス・カルド氏とRobert Lasowski (ロバート・ラソウスキー)博士によって2020年3月に設立された。

画像クレジット:HeyCharge founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

BtoB特化の事業用駐車場マッチングプラットフォーム「at PROT」を運営するランディットが7000万円のシード調達

BtoB特化の事業用駐車場マッチングプラットフォーム「at PROT」を運営するランディットが7000万円のシード調達

BtoB特化の事業用駐車場マッチングプラットフォーム「at PORT」(アットポート)などを手がけるランディットは10月13日、シードラウンドにて約7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、インキュベイトファンド、mint、個人投資家。調達した資金は、主にプロダクト開発と組織体制の強化にあてる。

at PORTは、BtoB領域における駐車場を「貸したい」側と「借りたい」側をマッチングさせるプラットフォーム。デバイス1台で、借り手は検索・見積もり・予約・契約・決済・管理まで、貸し手は営業代行・顧客管理・契約管理・物件管理までが一括で可能になる。これまでアナログで行なわれていたこうした工程をデジタル化し取引を効率化することで、需要側・供給側のコスト削減、駐車場の稼働率向上に寄与するとしている。なお現在、at PORTアプリを開発中とのこと。

今後の展望としては、at PORTの開発、またat PORTの浸透を推進することで取引の非効率を解消し、顧客(借主・貸主双方)のコスト削減と駐車場の稼働率向上による売上向上に貢献するという。物件の借りる際の手間や物件を管理する際の工程に関して、自社開発ではコストのかかるソフトウェアを安価で提供し、業務の効率化に資するとしている。

また「マッチングプラットフォーム」と「業務効率化ツール」を土台に介在するデータとネットワークを活かし、「駐車場」の不動産価値を向上させる「不動産テック事業」や、車のIoTの進化・自動運転化を見据えた「モビリティインフラ事業」を進めているという。

BtoB特化の事業用駐車場マッチングプラットフォーム「at PROT」を運営するランディットが7000万円のシード調達

2021年5月設立のランディットは、「世の中を最適化し、豊かにする」をミッションに、建設業界・物流業界・モビリティ業界をデジタルによる仕組み作りによって支えるサービスを提供している。「事業用駐車スペースの確保にかかる手間」という課題は円滑な事業運営に影響を及ぼすことから、その解決ソリューション第1弾として、at PORTの提供を2021年6月より開始した。

市の現実的な問題を解決するオハイオ州コロンバスを「スマートシティ」に変えたテクノロジーたち

2015年、米国運輸省はSmart City Challenge(スマートシティ・チャレンジ)を主催した。米国全土の中規模都市から、データとテクノロジーを活用したスマートモビリティシステムに関する先進的な構想を募集するコンテストだ。全米から78の都市が応募し、オハイオ州コロンバス市が優勝した。

2016年、人口100万人弱のコロンバス市は、その構想を実現するための資金となる連邦助成金5000万ドル(約55億8000万円)を優勝賞金として受け取った。そのうち4000万ドル(約44億6000万円)は米運輸省、1000万ドル(約11億2000万円)はPaul G Allen Family Foundation(ポール・G・アレン・ファミリー財団)が出資している。

構想を実現するためのこのプログラムは2021年6月中旬に終了したが、コロンバス市は今後も同市の財源を使ってテクノロジーの統合を進めて「協働イノベーションの実験都市」としての役割を続け、社会問題に取り組んでいくことを発表した。とはいえ、これは具体的にはどういうことなのだろうか。

コロンバス市の「スマートシティ」は、トヨタが富士山麓で建設を急ピッチで進めている実証実験の街「ウーブン・シティ」とはまったく異なるものだ。そもそも、コロンバス市はウーブン・シティのようなものを目指しているのではない。

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Smart Columbus(スマート・コロンバス)構想の担当者であるMandy Bishop(マンディ・ビショップ)氏は、TechCrunchに次のように説明する。「私たちは、単にテクノロジーの実用化を目指してテクノロジーを導入しているのではありません。モビリティや交通についてコロンバス市が抱えている問題に注目し、それらの問題の一部に集中して取り組むためにコンテストの賞金を使っています」。

同市が抱える問題には、各種モビリティへのアクセシビリティの欠如、公共交通機関では十分にカバーされていないエリアがあること、駐車スペースに関する課題、運転マナーの悪さのせいで衝突事故が多発していることなどが挙げられる。ご推察のとおり、多くのスタートアップがこれらの問題を解決すべく取り組んでいる。本稿では、そのようなスタートアップが提供しているソリューションについて紹介する。

Etchによる「Pivot」アプリ

Etch(エッチ)は、コロンバス市を拠点とし、地理空間ソリューションを提供するスタートアップである。2018年に創業したばかりの同社にとって、スマート・コロンバス構想への参加は本格的な経験を積む機会となった。同社は、バス、配車サービス、カープール、マイクロモビリティ、個人用の乗り物を組み合わせてオハイオ州の中心部を移動するルートを検索するためのマルチモーダル交通アプリ「Pivot」を開発した。

EtchのCEO兼共同創業者のDarlene Magold(ダーリーン・マゴールド)氏はTechCrunchに次のように説明する。「コミュニティのみなさんに、どんな交通手段が使えるのかを伝えること、そして、コストや他の条件に応じてその手段を並び替えるオプションを提供することは、当社のミッションの一部でした」。

Pivotアプリは、OpenStreetMapやOpenTripPlannerなどのオープンソースツールを基に構築されている。EtchはOpenStreetMapを使って、特定のエリアの現在状況に関してコミュニティからクラウド経由で集まる最新情報を取得する。これは、Wazeに似た仕組みだ。OpenTripPlannerは、異なるモビリティ別にルートを組み立てるのに使われる。

「当社のアプリはオープンソースであるため、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする他のモビリティサービスと統合することによって、個人用の乗り物(所有している場合)以外にどんな交通手段が使えるのかを可視化する点で、ユーザーに多くのオプションを提供できます。このアプリによって、バスの現在地やスクーターの場所をリアルタイムで把握できるため、移動することや複数の交通手段を使うこと、Uberの利用、自転車やスクーターのレンタルにまつわる心配事を減らすことができます」。

前述の連邦助成金のうち125万ドル(約1億4000万円)が投じられたPivotアプリは、現在までに3849回ダウンロードされている。コロンバス市はPivotアプリの開発と利用促進のための資金を引き続き提供していく予定だ。

Pillar Technologyによる「スマート・コロンバス運用システム」

コロンバス市は、スマート・コロンバス構想の既存の運用システムをさらに発展させるために、スマート化向けの組み込みソフトウェアを提供するPillar Technology(ピラー・テクノロジー)を採用した。同社は2018年にAccenture(アクセンチュア)によって買収されている。2019年4月には、コロンバス市のモビリティ関連データ(2000のデータセットと209のビジュアルデータを含む)をホストするために1590万ドル(約17億7000万円)をかけて開発されたオープンソースプラットフォームが始動した。

「このプロジェクトは最低でも2022年1月まで続く予定です。コロンバス市は今後も、モビリティや交通に関する事例を積み上げて、運用システムの価値と活用方法をさらに明確にしていきます」とビショップ氏は語る。

スマート・コロンバス運用システムは、既存のデータセットに新たなデータを追加するよう他の企業を招待している。また、衝突率を低下させる方法や、駐車スペースを最適化する方法などの課題に関するソリューションをクラウドソーシングで募集している。

ParkMobileによるイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus」

ParkMobile(パークモバイル)は、スマートパーキングのソリューションを提供するアトランタ拠点のスタートアップだ。スマート・コロンバス構想では、駐車スペースを探し回ることを防ぐことによって渋滞と大気汚染の軽減を目指すイベント駐車場管理アプリ「Park Columbus(パーク・コロンバス)」を開発した。ユーザーは駐車場の検索、予約、支払すべてをアプリ内で完結できる。

コロンバス市の広報担当者によると、スマート・コロンバス構想のイベント駐車場管理アプリは、ParkMobileの既存ソリューションを強化する形で開発されたという。130万ドル(約1億5000万円)が費やされたこのアプリは、2020年10月から2021年3月までの期間に3万回以上ダウンロードされた。同アプリには今後、予測分析テクノロジーによって路上駐車スペースを表示する機能が追加される予定で、コロンバス市は引き続き同アプリに資金を提供していく予定だ。

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Orange Barrel Mediaによる「Smart Mobility Hubs」キオスク

Smart Mobility Hubs(スマート・モビリティ・ハブ)は、都市の風景になじむメディアディスプレイを開発するOrange Barrel Media(オレンジ・バレル・メディア)が設計したインタラクティブなデジタルキオスク端末だ。コロンバス市内で使える交通手段のオプションを1か所に集めて表示するこのキオスクは、Pivotアプリを物理的な端末にしたようなもので、キオスクから操作することも可能だ。無料Wi-Fiを提供したり、レストラン、店舗、アクティビティの一覧を表示したりするこのキオスク端末の開発にも、連邦助成金のうち130万ドル(約1億5000万円)が投じられた。

Orage Barrel Mediaは、コミュニティの情報を表示するこのようなキオスク端末から、広告やアートを表示するものまで、さまざまなディスプレイを提供している。スマート・コロンバス構想によると、同社のキオスク端末は6か所に配置され、2020年7月から2021年3月までの期間に6万5000回以上利用されたとのことだ。同市はまた、パンデミック後には利用回数が劇的に増加すると見込んでいる。このキオスク端末には、同市が展開する自転車シェアプログラム「CoGo(コーゴー)」も組み込まれている。CoGoでは、ペダル自転車、電動自転車、駐輪スタンド、ドックレススクーターシェアサービスと自転車シェアサービス専用の駐輪スペース、配車サービスの乗降車エリア、カーシェア用駐車場、EV充電ステーションに関する情報を入手できる。

Siemensとの提携による「コネクテッド・ビークル環境」

オハイオ州には他州に比べて運転マナーが悪いドライバーが多い。オハイオ州の高速道路パトロール隊が2021年発表した、州内における不注意運転に関するデータによると、2016年以降、不注意運転に起因する衝突事故が7万件発生しており、そのうち2000件以上が重傷事故もしくは死亡事故だという。コロンバス市は、2019年にとある保険会社が発表した、全米で運転マナーが悪い都市ランキングで第4位にランクインしたことがある。

コロンバス市がコネクテッド・ビークルの実証実験を行ってみたくなったのは、それが原因かもしれない。2020年10月から2021年3月にかけて、コロンバス市は、ビークルツーインフラストラクチャー(自動車と路上の通信設備との間で情報をやり取りすること、V2I)およびビークルツービークル(異なる自動車間で情報をやり取りすること、V2V)を実現するための車内用および路上設置用ユニットを提供するSiemens(シーメンス)と提携した。また、Kapsch(カプシュ)とDanlaw(ダンロー)といった企業も路上設置用ユニットを提供した。コネクテッド・ビークルは他の自動車および85か所の交差点(このうち7か所はオハイオ州中心部で衝突率が非常に高い交差点)に設置されたユニットに対して「話す」ことができる。このプロジェクトには、1130万ドル(約12億6000万円)が投じられた。

「このコネクテッド・ビークル環境の応用方法として、赤信号による警告、スクールゾーンの通知、交差点内での衝突警告、貨物車両や公共交通車両の信号優先通過など、11種類のさまざまな機能を考えました」とビショップ氏は説明する。

「住民が100万人あまりの地域に1100台の自動車を配置しました。そのため、衝突率が下がることは期待していませんでしたが、コネクテッド・ビークル環境から発信される信号無視防止のための警告をドライバーが活用しているのを見ることはできました。その結果、運転マナーの向上が見られており、長期的には路上の安全性を効果的に改善することにつながると期待しています」とビショップ氏は語る。

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Easy Mileによる自律運転シャトルバス「Linden LEAP」

スマート・コロンバス構想の自律運転車によるシャトルバスサービス「Linden LEAP(リンデン・リープ)」には230万ドル(約2億6000万円)が投じられ、2020年2月から2021年3月まで数回の休止期間をはさみながら運用された。開始当初は、リンデン地区の4つの停留所を2台のシャトルバスが運行して、公共交通機関によって十分にカバーされていないコミュニティに交通サービスを提供した。開始からわずか2週間後に、時速25マイル(約40キロメートル)ほどで走行していた自律運転バスが急停止して、乗客が何らかの原因により座席から投げ出されてしまったため、運行は停止された。そうこうしているうちにパンデミックが発生し、人を運ぶサービスの需要がなくなってしまったため、Linden LEAPは、2020年7月から2021年3月までの期間に、3598件の食材配達と13万件の出前サービスをこなした。

コロンバス市は、連邦助成金が終了した今、この自律運転シャトルバスサービスに資金を出し続ける予定はないという。

ビショップ氏は次のように説明する。「コロンバス市には、公共交通機関を運用してきた実績があまりありません。そのため、コネクテッド環境、自律運転、電気自動車に関する技術を公共交通機関に今後どのように組み込んでいくのか、中央オハイオ交通局(CoTa)の計画を注意深く見守りたいと思います。コロンバス市としては、次の取り組みは民間企業によるものになること、そして、最終的には交通局の主導へと切り替わっていくことを期待しています」。

フランス発のスタートアップであるEasy Mile(イージー・マイル)の広報担当者は、同社が前述の自律運転シャトルバスにレベル3の自律運転技術を提供したと発表している。Society of Automobile Engineers(米国自動車技術者協会)によると、レベル3の自律運転は、運転席に人間のドライバーが座ることが依然として求められるレベルだという。

コロンバス市と自律運転技術との中途半端な関係はもともと、2018年末にスマート・コロンバス構想がDriveOhio(ドライブオハイオ)およびMay Mobility(メイ・モビリティ)と提携して、同市初の自律運転シャトルバスサービスであるSmart Circuit(スマート・サーキット)を開始したときに始まった。シオトマイル地区の中心部に設けられた全長1.5マイル(約2.4キロメートル)のルートを走るSmart Circuitは、2019年9月までの期間に、特定の文化的な名所への無料乗車サービスを1万6000回提供した。

Smart Circuitにかかった費用はわずか50万ドル(約5600万円)ほどだったが、コロンバス市は、自律運転シャトルバスプログラム全体を総合的に開発するために、さらに追加で40万ドル(約4500万円)を投じた。

Kaizen Healthによる妊婦向け移動サポートアプリ「Prenatal Trip Assistance」

女性が創業したテック企業であるKaizen Health(カイゼン・ヘルス)が最初のアプリケーションを開発したのは、健康上の問題で治療に通う必要がある人々が利用できる交通手段が少ないことへの不満がきっかけだった。シカゴを拠点とする同社は、妊婦とその家族が救急時以外のときに利用できるマルチモーダルな病院搬送サービスを簡単に手配できる同社のモデルを応用してアプリを開発した。

2019年6月から2021年の1月の期間にスマート・コロンバス構想の助成金から130万ドル(約1億5000万円)が投じられたこのアプリの利用者は、パンデミックのせいでわずか143人にとどまったが、病院への移動に利用された回数は800回以上、薬局、食料品店、他のサービスを受けるために利用された回数は300回以上にのぼった。このアプリが導入された年にオハイオ州で生まれた新生児1000人あたり平均6.9人が死亡したことを考えると、スマート・コロンバス構想に参加しているメディケイド対象医療機関が、このようなモバイルアプリの導入を含め、非救急時の病院搬送サービスを近代化しようとしていることは、良い傾向だ。

Wayfinderとの提携による、認知障がい者へのモビリティ支援アプリ

最後に挙げるプロジェクトでコロンバス市が手を組んだテック企業はAbleLink(エイブルリンク・テクノロジー)のWayFinder(ウェイファインダー)という、デンバー発の企業だ。どこで曲がるかを非常に詳細に指示してくれるナビゲーションアプリを、特に認知障がいを持つ人々向けに開発するために、Mobility Assistance for People with Cognitive Disabilities(認知障がい者へのモビリティ支援、MAPCD)に関する研究がWayfinderと共同で実施され、認知障がい者がさらに安全に自立行動の範囲を広げられるようになった。

このパイロットプロジェクトには、2019年4月から2020年4月の期間に約50万ドル(約5600万円)が投じられた。31人がこのアプリを実際に使って、公共交通機関の使い勝手が向上するのを感じた。コロンバス市の広報担当者によると、同市は現在、パートナー企業各社とともに、このアプリプロジェクトを継続していく方法を探っているとのことだ。

今後の展望

スマート・コロンバス構想が注力したもう1つの分野は、電気自動車(EV)の導入と充電インフラストラクチャーだった。ポール・G・アレン・ファミリー財団と、オハイオ州の電力会社AEP Ohio(AEPオハイオ)が拠出した資金がインセンティブとして使われて、集合住宅、職場、公共の場所への充電ステーション設置が進んだ。その結果、900か所のEV用充電ステーションを設置するというスマート・コロンバス構想の目標が達成され、同時に、新車販売台数に占めるEVの割合が2019年11月に2.34%に達し、その割合を1.8%にするという目標も達成された。

「将来的には、今後も継続していくテクノロジーやサービスにより、住民が直面している問題がコミュニティにとって理にかなった仕方で解決されていくと思う」とビショップ氏は語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:オハイオスマートシティ駐車場ディスプレイSiemens自動運転バス

画像クレジット:Smart Columbus

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

Joby Aviationが空飛ぶタクシー乗降場所として立体駐車場に注目

Joby Aviation(ジョビーアビエーション)は米国時間6月2日、バーティポート(垂直離着陸用飛行場)のネットワークの構築で米国最大の駐車場運営事業者、そして不動産買収会社と提携すると発表した。ネットワークはまずロサンゼルスとマイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコのベイアリーナにフォーカスする。

REEF Technology、Neighborhood Property Group(NPG)との提携では、Joby Aviationは「米国の全主要都市圏にまたがる前代未聞のきさまざまなルーフトップ、ならびに新しいスカイポートサイトの買収・開発の資金をまかなうメカニズムにアクセスできるようになる」と声明で述べた。

エアタクシーに乗車できるロケーションの便利でアクセスしやすい大規模なネットワークの構築は、どの企業が未来の乗客を自社サービスに取り込めるかを決める鍵を握る要因となる。ヘリコプターをサポートする現在のインフラは限られており、特に電動垂直離着陸機(eVTOL)企業がサービスを展開しようとしている都市部においてはそうだ。

提携によってJoby Aviationは、REEFの不動産ネットワーク内で長期リースを確保できる間、サイトへの独占的なアクセスを持つ。

電動航空機大手であるJoby Aviationの航空ライドシェアリングネットワークに関する意図はこれまでほとんど明らかになっていなかったが、創業者でCEOのJoeBen Bevirt(ジョーベン・べバート)氏は既存の立体駐車場を使うことのメリットについて公言していた。

そうした建物は通常、密集地域にあり、大型で、複数の小型航空機を支えられるだけの頑丈な材料で建てられている。しかしおそらく最も重要なことに、立体駐車場は移動の最初と最後に使われるという点で空飛ぶタクシーと協力し合うことになる別の交通手段である車を有している。

駐車場運営・サービスの会社ParkJockeyを有しているREEFはモビリティとロジスティックのハブ約4500カ所を展開していて、これは北米の都市部の人口の70%をカバーしているとのことだ。同社は2020年11月にソフトバンクやMubadalaなどから7億ドル(約768億円)を調達した

関連記事:駐車場を有効活用するREEF Technologyがソフトバンクなどから7億ドルを調達

新たな提携に加え、Jobyのバーティポートネットワークは既存のヘリポートと地方空港も活用する。

べバート氏は「今回の提携はJobyが進める変革的な空のライドシェアリングサービス構築において画期的なものです。NPGとREEFは米国中にすばらしいサイトネットワークを展開していて、我々の未来のサービスの屋台骨となるサイト選びで両社と協業することを楽しみにしています」と声明文で述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Joby AviationエアタクシーeVTOL駐車場REEF Technology

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルファベット傘下のSidewalk Labsがリアルタイムデータで都市部の駐車スペースを管理するセンサー「Pebble」を発表

Alphabet(アルファベット、Googleの親会社)傘下の都市イノベーション企業であるSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)は、駐車場や路上駐車スペースの空き状況をリアルタイムに提供して都市部の駐車スペース管理を支援する車両センサー「Pebble」を発表した。

Pebbleのシステムは次のようなものだ。駐車スペース(地面)に設置された小さな球状のセンサーが車両の有無を記録する。街頭などに取り付けられた、太陽電池で駆動するゲートウェイハードウェアによって、携帯電話ネットワーク経由でデータがクラウドに送信される。データは不動産開発会社や駐車場運営会社、自治体などがダッシュボードで閲覧・分析できる。

Pebbleは、カメラを使用しないことや、人や車の識別情報を収集しないことで「プライバシーが保護される」という。Sidewalk Labsは1年前に、13億ドル(約1400億円)を投じたトロントのスマートシティ開発をプライバシーの問題で中止して以来、目立った活動はなかった。同社は、大規模な都市インフラプロジェクトをてがけるのではなく、民間企業や公共団体が都市をより良いものにするために利用できる小規模なソリューションに力を注ぐようだ。

関連記事:グーグル子会社スマートシティ開発のSidewalk Labsがトロント事業から撤退

2020年10月、Sidewalk Labsは機械学習を使った設計ツール「Delve」を発表した。Delveでは開発者、建築家、プランナーが都市プロジェクトの最適な設計プランを作成することができる。また、数週間前には、Sidewalk Labsから独立したReplica(レプリカ)が、AIと機械学習を利用して「合成」人口を生成し、その行動を追跡することで現実世界で起こり得るであろうシナリオをシミュレートするデータプラットフォームで、4100万ドルを獲得(シリーズB)した。

ニューヨーク市のMetropolitan Transit Authority(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)は、パンデミックの際にReplicaを活用して公共交通機関のスケジュールを調整した。現在、新型コロナを克服しつつある米国において、駐車場とモビリティに関わる組織、特に環境的に持続可能な交通の復興計画を展開しようとしている都市は、Pebbleのようなツールを使って駐車スペースの供給を効率的に管理することを検討する可能性がある。

交通量の9~56%とそれにともなう公害は、駐車スペースを探して走り回る車両によって引き起こされている。Pebbleを利用すると、リアルタイムの駐車スペース情報が、APIでGoogleマップなどのナビゲーションアプリに表示することが可能で、このような車両を減らすことに役立つという。

Sidewalk LabsのシニアクリエイティブテクノロジストであるNick Jonas(ニック・ジョナス)氏は、今回の発表を次のようにブログで紹介している。「ユーザーは家を出る前にリアルタイムの駐車スペース情報を見て駐車スペースが限られていることを知り、パーク&ライドやフェリーなどの別の移動手段を利用するかもしれません」「例えばBARTのパーク&ライドステーションにおけるスマートパーキングプログラムでは、運転距離が1人当たり月平均約16km短くなり、通勤時間も短縮されました」。

都市部の路上駐車スペースを監視できるツールがあれば、都市には確実にメリットがあるが、その労力は膨大なものになるだろう。ニューヨークのような都市で、路上駐車のスペースに1つずつセンサーを広く設置することを想像してみて欲しい。個々の駐車スペースを線引きするのが難しいのはいうまでもないが、これはかなり大変な作業だ。Sidewalk Labsによると、すでに顧客と協力して、試験的に数万台の駐車スペースを管理しているとのことだが、この顧客の中に都市が含まれるかどうかについての詳細な情報は得られなかった。

Pebbleを発表したブログ記事の中で、Sidewalk Labsは、想定されるユースケースを説明している。Pebbleを路上駐車スペースに設置する市当局は、Pebbleで得た情報を活用して、アウトドアダイニングなどで利用されそうな場所に路上駐車スペースを割り当てたり、需要と供給に応じて路上駐車の料金を調整する変動価格制などの柔軟なプログラムを適用したりすることで、収益を上げることができる。

さらにSidewalk Labsによれば、不動産開発業者は、需要に見合うだけの駐車スペースがすでにあることを市に証明できれば、駐車ゾーンを共有にしたり、駐車スペースの数を減らしたりすることができるという。

駐車の効率が上がれば、車への依存度が上がるように思えるが、Sidewalk Labsはその逆だという。ジョナス氏は、Pebbleが「車の運転を減らし、新たな駐車場を減らすためのいくつかの方法」で貢献できると述べる。例えば不動産開発業者は、新しい住宅やオフィススペースに一定量の駐車スペースを建設することを求める市の条例に対して、説得力のある反論をするために必要なデータを収集することができる。

「Pebbleは、駐車スペースの需要が既存の駐車場や共有の駐車ゾーンでカバーされていることを証明し、新たな駐車スペースを確保する必要性を減らすことができます」とジョナス氏。また、ユーザーが駐車スペースを探す際に発生する交通量についても、Pebbleは「駐車スペースに直接ナビゲーションできるようにする」ことで「駐車スペースを探して走り回ることで発生する交通渋滞の30%」を軽減することができるとのことだ。

こうしたインフラ面でのメリットに加えて「Pebbleは通勤に車ではなく他の交通手段を選択するような経済的・利便的なインセンティブにも貢献できる」とジョナス氏は指摘する。

「Pebbleは、都市が変動価格制を導入して駐車スペースの『適正価格』を設定し、代替の移動手段を促進することができます」とジョナス氏は述べ、ベイエリアのBARTパイロットの初期データに基づいて「駐車スペースへのナビゲーションとリアルタイムの駐車スペース情報を含むPebbleのデータは、オフィスまで車で行くのではなく、パーク&ライドを使用するように促すこともできる」と続ける。

Sidewalks Labsの主張の多くは、人々が実際にはどのように活動しているのか、どのように都市を移動しているのか、という点に関する既存のデータのギャップや盲点に対処することができれば、都市をより効率的に、効果的に、そして安全に運営することができる、という考察をベースにしている。Pebbleは、駐車スペースの利用状況に関するデータの空白を埋める重要な要素になりそうだ。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

【コラム】都市のモビリティを改革する可能性を秘めたコンピュータービジョンソフトウェア

本稿の著者Harris Lummis(ハリス・ルミス)氏はAutomotusの協同ダウンダーでCTO。

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2019年10月、ニューヨーク・タイムズは、ニューヨーク市内では毎日150万個の荷物が配達されていると報じた。顧客にとっては便利で、世界のAmazon(アマゾン)にとっては利益になるが、これほど多くの箱を倉庫から顧客に届けることは、都市にとってかなりの外部不経済を生み出す。

タイムズは「利便性の追求は、ニューヨークをはじめとする世界中の都市部の交通渋滞、道路の安全性、汚染に大きな影響を与えている」と報じた。

この記事が発表されて以降、新型コロナウイルスの世界的流行により電子商取引は興隆を極めており、専門家はこの上昇傾向がすぐに弱まることはないと考える。戦略的な介入がなければ、私たちの都市はますます深刻な交通問題、安全問題、汚染物質の排出に直面することになるだろう。

都市部の道路には、何十年もの間、同じような問題がつきまとっている。しかし、テクノロジーがようやく追いついてきて、密集した都市の道路における混雑、汚染、駐車違反の取り締まりなどの課題に対処する新しい手段を提供できるようになってきた。

常にそうなのであるが、効果的な解決策は、まず問題を引き起こしている詳細な状況を理解することから始まる。今回のケースでは、問題に対処する方法は、街灯カメラを使って路上駐車や道路交通を観察することで、問題点を簡単に把握することである。

公共の場を監視するためにカメラを設置すると、すぐに熱狂的なプライバシー擁護派(私もその1人だ)の怒りを買うかもしれない。だからこそ、私の会社と同類の企業は、プライバシー・バイ・デザインのアプローチで製品開発を行っている。当社の技術は、映像をリアルタイムで処理し、顔やナンバープレートを認識できない程度までぼかしてから、社内や公的機関に画像データを提供することで、監視目的での悪用に対する懸念を払拭する。

これらのカメラの目的は、監視することではなく、実際の都市の道路から得られる具体的なデータを活用して、重要な洞察をもたらし、路上の駐車スペースにおける自動化を促進することだ。Automotusのコンピュータービジョンソフトウェアは、すでにこのモデルを使って、前述のような路上に氾濫する商用車の管理手段を都市に提供している。

この技術は、駐車場の回転率を最適化したり、インセンティブを与えたりするためにも利用できる。ある調査によると、ニューヨーク市のドライバーは、駐車スペースを探すために年間平均107時間を費やしている。ドライバー1人当たりの無駄な時間、燃料、排出ガスのコストは2243ドル(約24万円)に上り、ニューヨーク市全体では43億ドル(約4400億円)にもなる。このような無駄な動きは、米国国内だけでなく、世界中で起こっている。駐車スペースの需要に関する包括的なデータを収集することで、都市は、駐車スペースの供給と車両の実際の使用が適切に合致するような駐車政策を策定することができる。

ロヨラ・メリーマウント大学のキャンパスで実施したAutomotusの実験では、データを利用して駐車ポリシーを調整したところ、駐車場を探すドライバーによる交通量が20%以上減少した。データを利用して駐車スペースを最適化することで、駐車場の利用効率が上がり、駐車場を探す時間が短縮され、交通渋滞の解消につながる。また、駐車スペースの空き状況をリアルタイムに把握できれば、アプリやAPIを介してドライバーに空き駐車場を案内することも可能だ。

当社は、路上の駐車スペースにおけるあらゆる形態の活動に関する正確な最新情報を提供することで、都市プランナーがその都市の駐車スペースの時間的・空間的パターンを完全に理解できるようにしている。これによりプランナーは、その都市の特性に合わせた駐車スペース政策について、十分な情報を得た上で決定することができる。

おかげで「ここでどれくらいのタクシーからの降車が起きているか?」「火曜日の朝、どこの配送トラックが二重駐車(路肩に止めてあるクルマの横にさらに止めること)をしているのか?」といった質問に簡単に解答できるようになった。漠然とした試行錯誤的手法で政策を策定する時代は終わったのだ。乗客用駐車場、配送車専用ゾーン、タクシーエリアの位置、駐車料金の最適な設定、違反時の適切な罰則などについて、豊富な情報を基にした的確で影響力のある判断が可能になる。

この技術は、配送業者にとってもメリットがある。駐車スペースの空き状況をリアルタイムで把握し、予測することができれば、ルートの効率が向上し、コスト削減につながる。配送業者は罰金を払って路上駐車するのではなく、駐車スペースでの利用時間に応じて駐車料金を払えばよい(米国では税金控除の対象となる)。

オハイオ州コロンバスで行われた調査では、指定搬入ゾーンを設けることで二重駐車の違反が50%減少し、商用車が路上の駐車スペースに停車する時間が28%短縮された。FedExやAmazonのような企業にとっては、配送の効率が飛躍的に向上することでコスト削減につながり、その結果、駐車スペースの利用に適正な料金を支払い、浮いた資金を消費者に還元することができる。

現在は、いくつかのトレンドが相互に関連しあっており、新しい技術を道路や路上の駐車スペースに適用するには、特に好都合な時期だと言える。新型コロナの流行前、多くの都市は、人々が相乗りを利用するようになったことで、駐車場からの収入の減少に直面していた。現在、米国の何千もの自治体が、新型コロナの影響で大幅な予算不足に陥ることが予想されている。また、世界経済フォーラムの報告書によると、2030年までに都心部では商業用配送車両の数が36%増加すると予測されている。当社の調査によると、駐車違反の50%以上が商用車による違反であり、取締りを受けていないことが分かっている。

コロンバス市が2016年の米国政府の「Smart City Challenge」で優勝したのは偶然ではない。バラク・オバマ前大統領が2015年に「スマートシティ」構想の一環として1億6000万ドル(約176億4500万円)以上を拠出した際、プログラムの主要な目標の1つとして渋滞と汚染の削減が掲げられた。これらの目標を達成するためには、駐車場や路上の駐車スペースの管理を改善することが重要だ。ドナルド・トランプ前大統領は、大規模なインフラ計画を掲げて選挙戦に臨んだが、この分野での彼の公約の実現は不十分なものだった。米国政府の支援がないにも関わらず、サンタモニカなどの都市では、ダウンタウンの中心部にゼロエミッションの配送ゾーンを実験的に設置するなど、有望な取り組みが行われている。

ジョー・バイデン大統領は、米国が気候変動対策と都市交通の近代化の両方にとって必要なインフラを構築する計画の概要を発表した。この計画には、電気自動車用の公共充電ステーションを50万台分用意すること、ドライバー、歩行者、自転車などが安全に道路を共有できるように都市を変革すること、重要なクリーンエネルギーソリューションに投資することなどが含まれている。

路上の駐車スペースの管理技術は、米国政府や地方自治体が都市の汚染を減らし、生活の質を向上させるために活用できる選択肢の1つだ。次期政権が、都市のモビリティの課題を解決するためのこの斬新なアプローチを支持してくれれば、米国のインフラは単に近代化されるだけでなく、未来への準備が整うことになる。

私個人としては、この改革が実現することを願っている。私たちの国の健康、安全、そして繁栄の共有は、これにかかっているのだ。

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(文:Harris Lummis、翻訳:Dragonfly)