Omega OphthalmicsがARも可能にするかもしれない眼への移植プラットフォームを試験中

Googleや他のハイテク企業たちはARの目的を果たすためにメガネコンタクトレンズに力を入れている。しかしOmega Ophthalmicsは、眼の中に拡張現実のための空間を作るために、外科的に眼に埋め込まれたレンズを使うという、より侵襲的なアプローチをとっている。

これは野蛮な方法に聞こえるかもしれないが、レンズを埋め込む手法そのものは決して新しいものではない。レンズの移植は、特に高齢者の患者が多い、白内障および他の変性疾患の治療法としてはありふれたものだ。米国内では毎年約360万人の患者が、こうした病気に対する何らかの治療を受けていいる。

白内障の手術には、曇ったレンズを除去し、それを薄い人工レンズで置き換えるやり方も含まれている。共同創業者で認定眼科医のGary Wortzは、これを、単なるレンズではなく、他の製造業者たちが異なるインタラクティブセンサーや、薬の投与装置、そしてAR/VR統合機能を提供できるチャンスと捉えた。

「私たちが作っているのは手袋です」と、Elon Muskが脳内の神経系で実現したがっているものと比較しながらWortzは語る。「眼の中に、私たちはこの生物不活性の場所を作ります。これは手袋の中に手を収めるようなスタイルのインプラントを開発したい人のために、ビジネスとして開放されている場所となります」。

とはいえ、彼はARインプラントのために、視力の良い若者たちがすぐにでもやってくることは期待していない。そうではなく、彼はこのプラットフォームが自立生活を維持したい70代以上の人びとに対して、幅広い応用範囲があるものと考えている。こうした人が歩き回り易いように、拡張地図を表示したり、もし医学的問題が見つかった場合に警告を表示するといった用途は便利だろう。

彼はまた「スーパー兵士」などへの有用性についても言及した。

「ARには巨大な市場があることはわかっています。本質的にこれは、テクノロジー企業たちがまだ認識していない陣取りゲームなのです」と、もう1人の共同創業者でCEOのRick Iflandが、電話越しに語った。

同社は今回のアイデアのためには、特に外部からの投資は求めていない。とはいえWortzとIflandによれば、ニューヨークとオレンジ郡の2つのメジャーVCから、アプローチを受けたらしい。ともあれOmegaは現在、最初の資金を「この用途に理解のある」エンジェル投資家たちや眼科医たちから調達した、とWortzは語っている。

このテクノロジーは実現可能なのだろうか?おそらくは。今のところOmegaは7人の患者に対して、米国外で行われた非常に小さなヒト臨床試験を行い、6ヶ月の間事故は起こしていない。聞いたところによれば、同社は、程なく行われる予定の、より大規模な臨床試験を含む、まだ公表されていないいくつかの研究も抱えているということだ。

大規模臨床試験の結果が出るまで、同社はFDAの承認をまだ待つ必要があり、欧州の眼科でも次の12から24ヶ月の間に承認を得ることができることを期待している。Wortzは、FDAのプロセスについても前向きであるように見えた。

「FDAのScott Gotlieb(FDAのコミッショナーである医師)との仕事には、非常に感銘を受けています。彼は真のプロフェッショナルです」と彼は話した。

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(翻訳:Sako)

SoftBankは日本で自動運転バスの実用化を目指す、商用サービスの開始は2020年を予定

SoftBankは日本で、自動運転バスのプロジェクトに力を入れている。公共交通機関の自動運転技術を開発するために同社が昨年創った会社、SB Drive(SBドライブ株式会社)は、Yahoo Japanが率いるラウンドで5億1000万円(460万ドル)の資金を獲得し、資金的にも潤沢になった。

Yahoo Japanは、Yahooの姉妹会社で、日本のもっとも有力なテクノロジー企業のひとつだが、今回のラウンドでは4億9000万円(440万ドル)を出し、残りをSoftBankが払って筆頭株主の座を維持した。投資後のSoftBankの株式持ち分は51.1%、Yahoo Japanが48.6%である。創業パートナーAdvanced Mobilityが0.3%を保有する。

SB Driveは、公共交通機関にフォーカスした自動運転プロジェクトで、とくに農村部を走る、よりスマートな製品を目指す。来年には公道でテストする予定で、商用走行の開始は2020年を目標としている。

同社によると、すでに“社会的試走”(social trials, 路上運行)は済ませており、今は路線バスと運送用トラックで自動運転技術を試している。そのためにSB Driveは、日本の4つの地方自治体とパートナーしている。

Yahoo Japanは、そのVC部門Yahoo Capital(YJキャピタル株式会社)が資本を提供するだけでなく、重要な戦略的パートナーになる可能性がある。現在の計画では、人気のある地図サービスYahoo MapsとSB Driveをリンクして、天候、渋滞、歩行路、イベントなどの情報を提供して、バスの運行サービスをより充実させる。

西側諸国には大規模な自動運転バスの計画はないが、日本にはそれを必要とする特殊な社会状況がある。SB Driveがとくにねらっているのが、高齢化社会への対応だ。今日、この国の人口の1/4が65歳以上だ。農村部ではこの比率がもっと高くて、また全国的にも、2060年には40%に達すると予想されている。都市部以外では、住民の多くが今後のさらなる援助を必要とするだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

センサーで高齢者の転倒を予測する

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転倒は酷い出来事だ。それは高齢者に恢復できない被害をもたらし、そして転倒への恐れが、高齢者の動きを劇的に減らしてしまい、不幸な悪循環へと陥らせてしまう。このたびミズーリ大学の、Sinclair看護学校とエンジニアリングカレッジの研究成果によって、介護者が被介護者の転倒を最大3週間前に予測し、必要になる前にケアと援助を用意できるようになった。

システムはウェアラブルではなく、カメラを使って歩行速度と歩幅を評価する。研究者たちが発見したのは「歩行速度が毎秒5センチ遅くなると、その次の3週間で転倒する可能性が86.3%あること」である。さらに、歩幅が短くなることで「次の3週間で転倒する可能性が50.6%に及ぶこと」も分かった。これらの2つのデータを使って、介護者は手に負えなくなる前に、用意をすることができる。
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「高齢化という言葉が、成人である彼または彼女が突然独立性を失うこと、を意味するべきではありません」と、看護学の名誉教授であるMarilyn Rantzは語る。「しかしながら、多くの高齢者にとって転倒のリスクは、どれだけ長い期間独立したままでいることができるかに影響します。ある人に転倒のリスクがあることを予測することができれば、介護者に必要なケアを行わせ、高齢者が可能な限り長く独立していられることを助けることができます。

チームはミズリー州コロンビアの老人ホームTigerPlaceに彼らのシステムを設置している。その場所の周りにセンサーを設置し、「不規則な動きが検出されたとき」電子メールの警告が送られるようになっている。これはインテリジェントなテクノロジーの偉大な利用法のひとつであり、ウェアラブルを必要とせず、完全に受動的な目立たないシステムである。

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(翻訳:Sako)

Featured Image: Thanasis Zovoilis/Getty Images

SamsungがIoTとの関わりを深化するために$1.2Bの巨額投資、高齢者のクォリティー・オブ・ライフに着目

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Samsungは、12億ドルという巨額の投資により、同社の物のインターネット(Internet of Things, IoT)との関係を次のより高いレベルへ上げようとしている。

今週DCで行われたイベントでエレクトロニクスの巨大企業SamsungのCEO Dr. Oh-Hyun Kwonが、同社の向こう4年間のR&Dプランを発表した。この投資は合衆国全体のおよそ15000名のSamsung社員の各種業務に行き渡る。Forbesによると、資金はオースチンのチップ製造研究所やパロアルトの研究センターなどSamsung自身のオペレーションのほかに、数社のスタートアップにも投じられる。

“IoT方面のイノベーターを至るところに探そうと思ったら、すべてのツールをスタートアップに対しても確実にオープンにする必要がある”、とKwonは語る。“それは互いを結びつけるテクノロジーであるから、そこに境界を作ったらイノベーションとスケールを妨げることになる”。

CEOはさらに、この投資により高齢化社会の諸問題の解決努力を支援し、高齢者が介護施設や病院に行くことなく、独立的な生活を送れるようにしたい、と述べた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

老人介護のHonorが契約社員を正社員にして株式も付与、そのわけは?

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Andreessen Horowitzが投資している在宅老人介護サービスHonorは、ベビーブーム世代の高齢化を支えるビジネスだ。同社は今、契約社員を正社員にしようとしている。

介護のワーカーを同社はCarePro(s)と呼んでいるが、彼らは正社員になるだけでなく、ストックオプションの権利も付与される。つまり、同社の株を持てる。

CEOのSeth Sternbergはこう語る: “本当は、うちの会社に二種類の人間がいてほしくない。誰もが高齢者を助ける仕事をしているのだし、誰もが成功しなければHonorの成功もない。会社の現実は、ユーザから見た視野の中にある。そしてユーザに提供しているうちのプロダクトは、CareProなのだ”。

とくにUberの成功以来、ソフトウェアをより効率的に使ってサービスワーカーを配置するテクノロジ企業の明確な特徴は、労働者の構造が二層構造であることだ。

ひとつの層は、プラットホームを作るエンジニアや役員、プロダクトマネージャなどだ。もうひとつの層には、大量の契約社員がいる。最初の層の人たちには会社の株式が支給されるが、それは会社の業績次第で無だったり大金だったりする。第二の層の人たちは、個々の契約単位あるいは時間で給与が支払われ、社員福祉や社員特典、失業保険などはない。

この構造は、未来の労働者の保護や福祉はいかにあるべきか、という、まだ結論のない議論を喚(よ)んだ。未来のというのは、フリーランスや契約ベースの労働者がますます増える未来、という意味だ。

もっと面倒なのは、これらのテク企業においても、フルタイムの正社員に比べて契約社員たちは社会経済的な多様性が激しい、という現実だ。Honorの場合は、90%が女性で、その半数以上が非白人、彼らの1/3に要扶養年齢の子どもがいる。そして4人に一人以上が移民だ。私の知るかぎり、契約社員の人種構成や社会経済データを公表しているオンデマンドテク企業は一社もない。

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集団訴訟によってYC出身のクリーニング企業Homejoyが廃業に追い込まれて以来、ShypやLuxeなど数社のテク企業が契約社員労働者を常勤社員にした。労働者の誤分類に対する訴訟は、高くつくことがある。Fedexは昨年の夏、2億2800万ドルの和解金を支払った。

Sternbergによると、彼の決定は全然、これらの圧力の影響によるものではない。今は、決定後の離職者が最初に想像したより少ないので、ほっとしているそうだ。

“うまくいかないよ、と言う人が多かった。CareProたちの60%以上はよそへ移る、と予想していた。でも、蓋を開けてみたら実質ゼロだった。これからは、CareProたちを教育訓練したいし、成長させたいし、昇進の道も開きたい”。

いろんなオンデマンド企業の中でHonorの事業がユニークなのは、このタイプの仕事は本当は代替不可能であることだ。あなたを運ぶUberのドライバーが毎回換わるように、介護労働者をほかの人と簡単に換えることはできない。介護労働者は家族との長いつき合いになることが多く、介護受益者当人の体の状態をチェックしたり、特殊なケアや、食事の世話などが必要だったりするから、専門的な教育訓練が必要になる。

“契約社員に対しては、教育訓練は不可能だ”、とSternbergは語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

高齢者の孤独化を防ぐStitchは、やりたいことの仲間を見つけてくれるソーシャルネットワーク

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最近の本誌TC Radio Pitch-Off(インターネットラジオによる売り込みコンテスト)で優勝したStitchは、50歳以上の人たち用のソーシャルネットワークだ。オーストラリアのスタートアップだが、利用はどこからでもよい。高齢者が、ネットを介して友だちを見つけたり、もっとロマンチックな関係を求めたり、何かやってみることを見つけたりする。

Stitchの協同ファウンダMarcie Rogoはこう語る: “高齢者にもやりたいことはたくさんある。でも、それを一緒にやれる人が見つからない。Stitchでは活発なソーシャルネットワークの力によって、同好の士を見つけ、活動や旅行のグループや、1対1の関係を作れる”。

いわゆるデートサイトではなくて、Stichではメンバがグループを作る: たとえばワインの試飲会とか、雑学クイズ大会とか。今アクティブメンバは20000名おり、アクティブなコミュニティ(グループ)は50あまりある。

基本的に無料だが、年額60ドルを払って特別会員になると、プロフィールを無制限に見られる、紹介プロフィールの上位に載せてもらえる、誰かとネット電話で話せる、などの特典がある。だいたい、登録ユーザの10%が特別会員だそうだ。

同社は、電話を使うカスタマサービスがあることが、なかなかおもしろい。ユーザが電話をすると、本物の人間と話せる。ささいなことのようだが、高齢者は声によるコミュニケーションで安心する生き物なのだ〔それが禍(わざわい)と出る場合もあるが!〕。高齢者サービスでは、声という要素がとても重要だ。

同社は500 Startupの9度目のクラスから巣立った。もともとはTapestryというスタートアップからのスピンアウトで、それは高齢者を定年退職者のコミュニティに結びつけるタブレットアプリだった。Stitchは8月に100万ドルのシード資金を獲得し、2016年の前半にはシリーズAを予定している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

各都市に高齢者が自立生活できるための支援スタートアップを育てるインキュベータAging2.0

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一般消費者の中でも、20代から50代前半までの層は、その購買力ゆえに、いちばんだいじにされ話題にもなる年齢層だ。高齢者は、世界の人口の16%以上を占める*にも関わらず、購買力があまりないので、企業や投資家などから無視されがちだ。〔*: 言うまでもなく日本など‘先進国’では比率はもっともっと高い。〕

Aging2.0は、それを変えたいと願っている。9月に同社は、30日で30の都市を訪れ、高齢者のお世話ができるスタートアップを見つける。サンフランシスコを本拠地とするAging2.0は、高齢者にサービスを提供する起業家の支援を、自分のビジネスにしたいと考えている。すでに20近くの都市に支部があり、有望な企業に機関投資家を結びつけて育てるアクセラレータ事業Aging2.0 Academyを展開している。

来月(2015/9)同社が行うツアーは#30in30in30と呼ばれ、Google For Entrepreneursと提携して9月8日にキックオフする。その主なプログラムは、14の国におけるスタートアップのピッチ(売り込み)大会だ(オーストラリア、ベルギー、合衆国、中国、ドイツ、ペルー、イギリス、オランダ、日本(Aging2.0 #30in30in30 | Tokyo, Japan @ ITOKI Tokyo Innovation Center Oct 6 @ 6:00 pm – 9:00 pm)、チェコ、ブラジル、台湾、イスラエル、カナダ)。ファイナリストたちは11月にサンフランシスコで行われるAgeTech Expoでデモ等を行い、Aging2.0 Academyの次のバッチに優先入学できる。

Aging2.0の協同ファウンダStephen Johnstonは、Nokiaで事業開発部門のシニアマネージャだったが、その後、ヘルスケアのイノベーションを助けるコンサルティング企業を創業した。そのときのクライアントだったある富裕な家族の長老が、あまり例のない形の認知症で苦しんでいた。お金持ちでも、正しいケアが得られないこともある。そのことが、JohnstonをAgeing 2.0のローンチに導いた。

“その家族は私的な研究機関まで作って治療法を見つけようとした。そのときわれわれは、彼らの父親を支援できる適切な介護者を見つけるための、サービスやプロダクトがどこにもないことに気づいた。市場は、大きな機会を見逃していた”、とJohnstonは語る。

高齢者のためのサービスという、地味な業態にもかかわらず、同社はやがて、注目を集め始めた。Johnstonによると、合衆国だけでも、そして過去2ヶ月だけでも、5000万ドルあまりのベンチャー資金が、介護・養護関連のスタートアップに投じられている。それらはたとえば、HonorHomeHeroなどだ。

そのほかの、ポテンシャルの大きいイノベーション分野として、ヘルスケア・ウェアラブルや高齢者の安全確認デバイスが挙げられる。いずれも高齢者が家族等といつも接触している状態を作り出す製品だ。また、Stitchのようなソーシャルネットワーキングサイトや、ある種のスマートホームデバイスは、あまり動けない高齢者が一人でも生活できるようにする。

日本のSoftBankが開発した人型ロボットPepperのようなものでさえ、最初から高齢者との交流を想定して設計されている。日本では、高齢者人口が総人口の20%を超えている。

Johnstonは老年学の研究者Katy Fikeと一緒に、高齢者のケアとサービスにおけるイノベーションを支える、グローバルなエコシステムを作りたいと願っている。Aging2.0は現在、Generator VenturesやFormation CapitalなどのVCと協働して投資家のネットワークを作り、有望なスタートアップたちに彼らがプロダクトを世に出せるための資金を提供しようとしている。

“高齢者が病院や介護施設ではなくコミュニティで、自立的で健康で幸福な生活ができること。われわれはいろんなやり方で、この‘賞’というか‘ごほうび’が得られるよう、努力していきたい”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa