3Dプリンティングは医療産業をディスラプトする――補装具カスタマイズから再生医療まで

〔編集部〕この記事の筆者はXponentialWorksのファウンダー、CEOのAvi Reichentalで、Dプリンティング・テクノロジーとその影響についてのエキスパート。

1983年に3Dプリンティングの父、Chuck Hallはきわめてシンプルでありながらきわめて革命的なものを作り出した。彼は世界で最初に目の洗浄用コップを3Dプリンターでプリントアウトした。

それは見たところごく平凡な小さい黒いカップに過ぎなかったが、このカップこそ来るべき革命を予告していた。今や3Dプリンターは医療とヘルスケアを根本的にディスラプトしつつある。

アメリカのヘルスケアのコストは天井知らずで高騰を続けている。政治による解決は望み薄だ。テクノロジーの革新以外に意味ある結果をもたらす可能性はない。ここでは3Dプリンティングがすでに起こしつつある革命の一端を紹介したい。

カスタム化補装具

私はよくAmanda Boxtelの例を話す。Amandaは下半身に麻痺があり、Ekso Bionicsのロボット・スーツを利用していた。Amandaは私に相談に来て「装着感が悪く困っている」と訴えた。このスーツは優れたデザインでAmandaにある程度の運動の自由を与えたものの、誰もが当然望むような自然な動作は不可能だった。

ソース:Scott Summit, Charles Engelbert Photography

通常の補装具は各種の現行デバイスと同様、大量生産品だ。これに対して3Dプリンティングによる補装具は個別のユーザーに合わせたカスタムメイドだ。われわれはAmandaの身体をデジタルスキャンし、カスタム化したロボットスーツの製作を目指した。これはテーラーメイドで背広を仕立てるのに似ている。これによりAmandの身体にミリ単位でフィットした軽量で装着感がいいロボットスーツを作ることができた。今ではAmandaはすっかりのスーツに慣れ、ハイヒールを履いて歩く練習をしている。

これと同様のテクノロジーが空気が流通し着用が快適な脊柱側彎用コルセットや義足、義手その他の補装具の製作に用いられている。

バイオプリンティング、ティシューエンジニアリング

外科医の Jason Chuenはオーストラリアの医学誌、Medical Journal of Australiaに掲載された記事で、再生医療においてブレークスルーが起きており、人から人への臓器移植を不要とする時代が近づいていると述べている。これがどのようなテクノロジーなのか簡単に説明しよう。

本質的にみれば、 3Dプリンティングはコンピューターによって薄膜を積層していくテクノロジーだ。現在プリンティングに用いられる素材はプラステイックや金属粉が多い。薄膜を積み重ねて最終的に、おもちゃ、サングラス、医療用コルセット等、所望の形状を得るわけだ。この3Dプリンティング・テクノロジーは医療プロパーの分野に応用されつつある。つまりプラステイックや金属粉の代わりに生体材料を用いることで「オーガノイド」と呼ぶ小さい臓器をプリントアウトできるようになってきた。これには幹細胞を用いて増殖された生体材料が用いられる。こうしたオーガノイドを人体に移植し、時間をかけて成長させることにより、たとえば本来の肝臓や腎臓の機能が失われたときに、その代替とすることができるようなるだろう。

3Dプリンティングによる火傷治療

メアリー・シェリーのSFの古典、『フランケンシュタイン』めいて聞こえるかもしれないが、皮膚の再生医療は、効果はもとより、コスト節約の面を考えてもきわめて大きなインパクトを与えるだろう。過去何世紀にもわたって、火傷によって損傷した皮膚に対する処置はきわめて限られた選択肢しかなかった。皮膚片移植は苦痛がひどく、審美的にも満足のいく結果は得られない。水治療法の効果は限定的だ。しかしスペインの研究者チームは3Dプリンティングによる治療法を開発している。コンピューターにより精密にコントロールして薄膜を積層していくテクノロジーは事実上あらゆる分野に適用可能だ。まだプロトタイプだが、3Dパイオプリンターは人間の皮膚を作出できると示されている。研究チームはヒト血漿と皮膚から抽出された各種物質を生体インクとしてわずか30分程度で100平方センチメートルの人工皮膚を作ることに成功した。このテクノロジーが患者にもたらす利益は計り知れない。

製薬産業

最後に3Dプリンティングは製薬産業にもディスラプトをもたらす可能性があることに触れておきたい。多種類の薬を処方されれば多数の錠剤、カプセルを毎日飲まなければならない。われわれの多くは毎日、毎週、何十錠もの薬を飲んでいる。しかも薬を飲む時間、回数はそれぞれ異なる。赤い錠剤を朝食後に2錠、夕食前に白いカプセルを1つ、といった具合だ。しかも薬を指示どおりにきちんと服用しているかどうかもチェックしなければならない。これらは非常に手間がかかり、患者に負担をかけるだけなく医療機関側のコストも膨大だ。

しかし3Dプリンティングで製造されるカプセルなら、その患者に合わせた複数の薬剤を含有するだけでなく、溶解して身体に吸収される時間も自由にコントロールできる。この「ポリピル」というコンセプトはすでに糖尿病患者に対して治験段階を迎えており、大きな成果が期待されている。

結論

The 医療産業における治療法、用いられるデバイス、作出される臓器は全体として3Dプリンティングの応用による革命前夜にあるといっていい。正確性、柔軟性、信頼性のアップに加えてコストの大幅削減が機体できる。われわれの健康を守り、回復するテクノロジーはまったく新しい段階へと進歩しつつある。これは万人にとって歓迎すべきトレンドだろう。

画像:belekekin / Getty Images

〔日本版〕Amanda BoxtelのTED講演。9分あたりからロボットスーツを着用してデモ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

大工ロボットと一緒に家を建てよう

大工仕事の新参者(おんぼろだが頑丈な納屋を作ったことがある)として、私は良きパートナーのありがたみをよく知っている。測ったり、切ったり、押さえたりするのを手伝って第3第4の手になってくれる。人間に頼む場合の欠点は、お礼にお金や食事が必要なことだ。そんな私がチューリッヒ工科大学が作ったこのロボット大工アシスタントを見つけたときの喜びを想像してほしい。

複数機関の連携によるSpatial Timber Assemblies DFAB Houseプロジェクトは、家屋の枠組みだけでなく、設計の効率も上げようという取組みだ。

誰もが想像するように、プロジェクトのロボット部分を作るのは簡単ではなかった。作業場の天井に設置された1対のロボットアームが、木材を決められた長さに切断し、しかるべき位置においてドリルで穴をあける。

ほとんどの作業は人間の介入なしに行われ、何よりも補強材や足場を必要としない。これらのモジュール(部屋の大きさのバリエーションに応じて組み合わせが可能)は、事実上自立できるように特別な設計で作られていて、荷重や剛性は梁材の組み合わせによって対応されている

事前にCAD作業が行われ、ロボットは設計図に沿って、お互いぶつからないように気をつけて、ゆっくりとしかし効率的に作業する。

「プロジェクトに変更が加わると、コンピューターモデルが調整されて常に新しい要求に対応する」とプロジェクトを率いるMatthias Kohlerが説明した。こうした統合デジタル建築技術は、設計、計画、実施の隙間を埋める役目を果たす。

ボルト止めは人間の作業員が担当している。これも自動化できそうに思えるが、現在のロボットには作業に必要なセンサーやツールが備わっていないのかもしれない。

最終的に柱や梁は、これもプレハブ製のコンクリート柱で補強され、正確にこの配置に合わせて砂ベースの3Dプリンティングで作られた「スマート・スラブ」 に組み込まれる。3階建ての家は秋には完成して見学のために公開される予定。詳しくはプロジェクトのウェブページで。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

今設計しているものの構造や形が目の前で3Dプリントで分かるプロトタイピングマシンをMITらが開発中

MITとコーネル大学の共同プロジェクトRobotic Modeling Assistant(RoMA)は、最新のさまざまなテクノロジーを組み合わせて、従来よりも良いプロトタイピングマシンを作ろうとしている。

上図のように拡張現実ヘッドセットと二つのコントローラー、そしてCADプログラムを使って、設計者は3Dモデルを作る。するとロボットアームが、自分に装着されている3Dプリンターからプラスチックを射出してスケルトンモデル(骨格モデル)を作っていく。

チームリーダーのHuaishu Pengはこう言う: “RoMAを使うと、現実世界の制約を早めに設計に反映できるから、形の良い、実際に手で触(さわ)れる工作物を設計段階で作れる。既存のオブジェクトから直接、設計を起こすこともできるから、単なる工作物でなく、インシトゥ(in-situ)な作り方もできる”。

Pengがアップロードしたビデオでは、このシステムの3Dプリントはまだかなり粗い。ふつうの3Dプリンターのようにプリントベッドなどかんじんの部品が固定されてなくて、自由に動くロボットアームの先端がプリンターだから、現状では細密な動きが難しそうだ。

でも、デスクトップの3Dプリンターで多く使われているFDM法に比べると、相当速い。だから、今設計中の物をリアルタイムで3Dスケッチしていくことも、究極には可能だろう。もうちょっと細かいコントロールができるようになると、3Doodlerのような3Dプリンティング・ペンが得られるだろう。

そのアームは設計者のアクションにリアルタイムで反応して動く。Pengは書いている、“設計者はいつでも、プラットホームのハンドルにさわってモデルのパーツを回転し、見たい部分を前面に出すことができる。ロボットアームは、ユーザーから離れて待機する。設計者がプリンティングプラットホームから退(しりぞ)くと、ロボットがプラットホームのコントロールを完全に握って、プリンティングのジョブを完了する”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

リアルタイムの自己チェック機能のある3Dスキャナーは最初から正しい3Dモデルを作る

物の3Dモデルを作る方法はいろいろあるけど、その自動化となると、その物のまわりをぐるぐる回ってメッシュを作る、というものがほとんどだ。しかしここでご紹介するFraunhoferのシステムはもっとインテリジェントで、スキャンする物の特徴を事前に理解し、全体をスキャンするための効率的な動き方を自分で計画する。

ふつうは、スキャンが完了すると、ユーザーが相当時間をかけて点検しなければならない。たとえば出っ張りの部分がお互いを邪魔していないか、複雑な部分を正確にモデルしているか、などなど。欠陥を直すために、新たに調整した二度目のスキャンをすることもある。スキャナーに何らかの3Dモデルを事前にロードして、その物の形を教えるやり方もある。

Fraunhoferのコンピューターグラフィクス研究所(Institute for Computer Graphics Research)でPedro Santosが指揮したプロジェクトでは、システムが最初から自分の画像を自分で評価して、次の動きをプランする。

“われわれのシステムが独特なのは、各部位を自律的にリアルタイムでスキャンすることだ”、と彼はニュースリリースで言っている。またそれは、“どんなデザインのどんな部位でも測定できる。教えてやる必要はない”。

だからこのシステムなら、過去に一度も見たことのないパーツの、複製を一個だけ作ることもできる。カスタムメイドのランプや容器、ビンテージカーのドアやエンジンなども。

4月にハノーバーにたまたまいる人は、Hannover Messeへ行って自分で試してみよう。

画像提供: Fraunhofer

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

最終製品の色が光によって変わる3Dプリントの技術をMITのチームが開発

これもまた、MITのCSAIL(コンピューターサイエンス人工知能研究所)のクールなプロジェクトだ。研究者たちは、3Dプリントの工程に色が変わるという性質を持たせることによって、材料の無駄遣いを減らそうとしている。省資源はこんなプロジェクトにしては大げさな目標だが、しかし少なくとも、3Dプリントで何かを作ることが、なお一層消費者にとって魅力的になるだろう。

3Dプリントの工程そのものは、特に変わったところはなくてふつうで、液状のレジンに紫外線を当てて硬化する。変わっているのは、フォトクロミック(photochromic, 光によって色が変わる)な染料を加えることだ。そうすると最終製品の表面は、そこに当たる光によって色が変わる。研究者たちはこの技術を“ColorFab”と呼んでおり、それは3Dプリントの世界では何かのネーミングによく使われるパターンだ。

熱で色が変わるTシャツのHypercolorというブランドが昔からあるけど、それに似ていなくもない。でもこの研究を指導しているStefanie Mueller教授によると、光が当たっているかぎりその色を保持するから、むしろE Ink(電子インク)に似ている、という。しかも単純に色が変わるだけでなく、解像度を高くすれば複雑な模様も作れる。

チームの期待としては、製品の色が変わるようになれば、次から次と無駄な衝動買いがなくなるだろう、という。

“みんな、新しいスマートフォンや、新しいスマートフォンケースを欲しがるけど、資源の無駄遣いをせずに製品の外見をフレッシュにする方法が、あった方が良いのではないか”、とMuellerは語る。

でも企業は、次々と新製品が売れなければ困るから、Muellerの説は難しいだろう。しかしそれでも、3Dプリントの新しい技法としては、とてもおもしろい。実装が簡単だから、大衆的普及も早いのではないか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ホログラフィー技術を使い、数秒で成形が終わる3Dプリンター

3Dプリンタはいろいろな意味で有用なデバイスだが、その多くは重大な問題を抱えている。とにかく何を作るのにも長い時間がかかるということだ。これは、主に顕微鏡レベルの薄い層を少しずつ積み重ねていく、追加型の加工方式のせいだ。しかし、新しいホログラフィ印刷技術を使用することで、一遍に全体を作り上げることが可能になる。しかも所要時間はわずか1、2秒だ。

一般に光ベースの3D印刷技術は、樹脂の層をパターンに沿って硬化させるためにレーザーを使用しているので、フィラメント射出型のプリンタと同様に、一層一層作り上げて行く必要がある。レーザーが液状の樹脂を貫通することで、貫通した光の道筋に沿って硬化した構造が出現する。

しかし、もし単体では硬化を行えないほど弱い複数のレーザーを使い、それらの光がすべて交差する場所で、初めて樹脂が硬化するようにしたらどうなるだろうか?それこそが、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究者たちが率いるチームによって、開発された技術である。

この基本的な考え方は、既に多くの他の領域で使われてきたものだ。光、音、または放射線などの弱いビームを慎重に重ね合わせることによって、他の領域にほとんど影響を及ぼすこと無く、選択した領域内に臨界量を超えるエネルギー照射を行うことが可能になるのだ。

今回の場合は、3つのビームが、硬化が必要な正確な地点だけでお互いに重なって、形を作り出すように、注意深くパターンが調整されなければならない。そして1度そのパターンが設定されれば、樹脂を硬化させ、取り出して使える状態にするプロセスを実際に完了するのに必要な時間は、ほんの数秒となる。このような試みを行ったものは、他にもあるが、今回のような完全な3D構造を作ることに成功したものはなかった。

論文から引用したこの図は、レンズとホログラフィックの設定と共に、この技法を使用してプリントされた形状のいくつかの例を示している。

この手法には沢山の利点がある。例えば、ギアボックスの中のギアのように、他の構造物の中で自由に動く構造物を作り出すことが可能だ。オーバーハング(せり出す部分)の下に支えるためのサポート材も不要である。そのため、下から上、あるいは上から下に向かってプリントしていくのが非常に難しい、あるいは不可能な形状をプリントとすることが可能だ。また、複数の構造物を同時に素早く印刷することもでできる。例えば沢山のサイコロを一度に作ったりすることもできる。

現段階では、ほとんどの市販の3Dプリンタから出力されるものと比べて、仕上がりはやや粗雑なものに留まっているが、これは計画通りだ。まずは実験室内での概念的実証実験が行われたということだ。

リード研究者のMaxim ShusteffはTechCrunchに対して「今回の実験では、とにかく3Dを一度に成形できることを、まずはきちんと示すことを優先しました」とメールで返信してきた。「したがって、ビルドパフォーマンスを評価するための様々な指標(速度、構築サイズ、解像度、複雑さ)のいずれも、今回は追求の対象になっていません」。

結局のところ「解像度」は、確実に硬化できる最小樹脂サイズによって決定されることになるが、これには多数の化学的および光学的要因が関わる。それがどれ位の解像度になるのかを予測するのは、時期尚早だが、少なくとも現段階で得られている結果から言えることは、既存の3Dプリンターが実現できている複雑度に到達できることは、確実だろうということだ。

Shusteffと、そのLLNL、MIT、バークレー、ロチェスター大学の仲間たちは、このとても有望な技術の開発を続けたいと考えている。商用への応用はまだまだ先だが、物体を(数分や、しばしばみられる数時間ではなく)数秒で生み出す3Dプリンターに、興味を持つ人びとが出てくることは間違いない。

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(翻訳:sako)

3DプリンタだけでWiFi通信するオブジェクトを作る技術。電源・電子回路不要で情報送信が可能

eng-logo-2015ワシントン大学の研究者が、3Dプリントしたプラスチック製のWiFi通信可能なオブジェクトを作りました。WiFi通信をするのにバッテリーや電子回路をまったく使用しない、本当に3Dプリントしただけのオブジェクトです。

研究者は「3Dプリンタさえあれば誰でも作れて、他のデバイスに何らかの情報を伝えられるものを作りたい」という発想から研究に着手したとしています。ただ、当然ながら問題として立ちはだかったのは、どうやってプラスチックの部品だけでWiFi通信をすればよいのかということ。今まで誰もそんなことを考えもしなかったはずです。

これを解決する方法として、研究チームは3Dプリントしたゼンマイやギア、スイッチを組み合わせて、動きを情報としてアンテナ送信する方法を考案しました。たとえば、3Dプリンタで風速計を作り、その回転でギアを回転させると、ギアの歯がアンテナ部品に接触することでそのアンテナ部品は周囲にあるWiFi電波を反射します。そして、その反射した先に配置したWiFiレシーバーで、その電波を信号として読み取ることができました。

別の方式では、流量計と同様の構造を3Dプリンタで再現し、水の流速に応じてギアが回転し…以下同文。要するにギアとアンテナ部品の組み合わせがあれば(厳密に言えばWiFi通信ではないものの)、その動作をWiFiの電波を通じてPCなどに伝えられるようになったということです。

チームは構造を工夫し、ボタン、ノブ、スライダーといった日常的に使う物理的な操作UIをも、ギアとアンテナ部品の構成に落とし込みました。また流量計の方式をアレンジして洗剤容器の口の部分に装着した例では、その洗剤の流量から残量を自動的に推し量る”機能”も付け加えました。そして、誰でも3Dプリンタさえあればそれを試せるよう、情報を公開しています。

この技術は、11月末にタイ・バンコクで開かれた米コンピューター学会の国際展覧会SIGGRAPH ASIA 2017で発表されました

番外編として、チームはプラスチックを3Dプリントする際に、その中に指定したパターンで鉄を漉き込む方法も生み出しました。予め文字などの情報をパターン化してプラスチック内に配置することで、スマートフォンなどが備える磁気センサーを使ってパターンから情報を読み取ることができます。

Engadget 日本版からの転載。

MITの新しい3Dプリンター技術はスピードを今の一般消費者製品の10倍にアップ

3Dプリントが一般消費者に普及しない理由は山ほどあり、スピードは主な理由の一つではないが、上位の理由ではある。硬貨よりも大きなものをプリントしようと思ったら、そう、先月亡くなった偉大なる哲学者がかつて言ったように、その仕事のいちばん困難な部分は待つことだ。

ただし、この研究は実用化まであと数年は要するだろうが、でもMITのエンジニアたちは、3Dプリンターを今の消費者製品の最大10倍まで速くできることを示した。彼らによると、これまで1時間かかっていたオブジェクトを、ほんの数分でプリントできるようになる。

プリントの方式は、今のデスクトップ3Dプリンターの多くが採用しているものと同じFDM(Fused Deposition Modeling, 熱溶解積層法)だ。溶融したプラスチックを層状に沈積して形を作る。MITは、プリントヘッドに工夫を加えることによって、そのスピードを上げた。たとえば、らせん状の機構でフィラメントを高速で供給し、プラスチックを従来のピンチローラー方式よりもしっかりと保持できる。

そのプリントヘッドはまた、レーザーを新たに設計されたプラスチック溶融機構の至近に置いて、相当速く溶けるようにした。またプリントヘッドを動かす移動台座も、プリントヘッドの可能なスピードアップに合わせて速く動く。

いつごろ市場に出回るか、という問題は、MITがこの技術をどこにライセンスするか、などにもよるだろう。

しかし准教授のJohn Hartはこう語る: “市場に出回るようになれば、とても嬉しいけど、そのために今後どんな経過をたどるのか、まだよく分からない。既存の3Dプリンターのメーカーにライセンスするか、自分たちで会社を興すか、どっちかだろうね”。

一般消費者ばかりでなく、今のデスクトップ3Dプリンターをプロトタイピング用に使っている企業も、スピードアップの恩恵は量り知れない。しかしFDMデスクトップ3Dプリンターの、もっと高度な応用技術になると、さらなる研究開発が必要だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

自宅で安価に歯列矯正治療ができるCandidがシリーズAで$15Mを調達

Candidは、歯列矯正を矯正器やInvisalignよりも安くできる、というスタートアップだ。同社はこのほど、Greycroft Partners, Bessemer Venture Partners, e.ventures, それに一部の既存の投資家たちが率いるシリーズAのラウンドで、1500万ドルを調達した。

同社のプレスリリースによると、資金の主な使途は、操業体制の強化と、それによる顧客ベースの拡大だ。

同じプレスリリースでGreycroftのパートナーJohn Eltonがこう言っている: “Candid Co.のビジョンは、テクノロジーを利用してより多くの人びとに高品質な歯科矯正サービスへのアクセスを提供し、しかもその人たちが自宅で便利にそして快適に治療できるようにすることだ。Greycroftは、非凡な能力を持つCandid Co.とパートナーして同社のポジティブなミッションを支援できることを、たいへん嬉しく思っている”。

Candidは、FDAの認可を得た整列器を3Dプリントで作っており、それらは軽度から中度程度の歯科矯正治療を必要とする人びとに適している。費用は2年間で1900ドル(月額88ドル)だが、これまでの矯正器は7000ドル、Invisaligなら最大で8000ドルぐらいかかる。

同社は過去に、Arena Ventures率いるラウンドで200万ドルのシード資金を得ている。Candic Co.のこれまでの総調達額は、1700万ドルになる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

自宅で安価に歯列矯正治療ができるCandidがシリーズAで$15Mを調達

Candidは、歯列矯正を矯正器やInvisalignよりも安くできる、というスタートアップだ。同社はこのほど、Greycroft Partners, Bessemer Venture Partners, e.ventures, それに一部の既存の投資家たちが率いるシリーズAのラウンドで、1500万ドルを調達した。

同社のプレスリリースによると、資金の主な使途は、操業体制の強化と、それによる顧客ベースの拡大だ。

同じプレスリリースでGreycroftのパートナーJohn Eltonがこう言っている: “Candid Co.のビジョンは、テクノロジーを利用してより多くの人びとに高品質な歯科矯正サービスへのアクセスを提供し、しかもその人たちが自宅で便利にそして快適に治療できるようにすることだ。Greycroftは、非凡な能力を持つCandid Co.とパートナーして同社のポジティブなミッションを支援できることを、たいへん嬉しく思っている”。

Candidは、FDAの認可を得た整列器を3Dプリントで作っており、それらは軽度から中度程度の歯科矯正治療を必要とする人びとに適している。費用は2年間で1900ドル(月額88ドル)だが、これまでの矯正器は7000ドル、Invisaligなら最大で8000ドルぐらいかかる。

同社は過去に、Arena Ventures率いるラウンドで200万ドルのシード資金を得ている。Candic Co.のこれまでの総調達額は、1700万ドルになる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

脳の病変の3Dプリントが医師の難しい診断を助ける

脳に問題がある場合には、精密であることが役に立つ。1ミリ単位で腫瘍や梗塞の可能性があるからだ。しかし、これらのものの正確な形や大きさを知ることは非常に難しく、このため診断や治療も難しいものになっている。だが、成長や損傷している場所のレプリカを3Dプリントすることで、医師の診断や治療をより良いものにすることが可能だ。

これは、多発性硬化症(MS)患者の脳病変の診断と理解に対する、3Dプリンティング手法の有効性を示す論文を発表した、Darin Okuda博士(トップの写真)からの提案である。

Okudaのチームは、MSに冒された脳のMRIスキャンを分析し、その中に検出された病変や損傷した領域の、正確なコピーをプリントした。その出力結果は、こうしたものの診断や観察のために、通常は2Dのイメージや画面上の3D映像だけを見ている人たちに手渡された。

「普通の2次元ビューで見るものは、病変そのものの正しい形状に対する、明瞭な理解を与えてはくれません」とOkudaは語った。「3Dで病変を研究することによって、私たちはそれらを全く違うやり方で見ていますし、その形状や表面の特徴を評価しています」。

彼らは、例えば非対称性および複雑な表面構造を持つ他のタイプの脳損傷から、MS病変を区別する多くの特徴を特定した。これらは単なる平面的なスキャン映像からは常に明らかというものではなく、3Dへの変換によって、より容易に認識できるようになった。

「以前の研究における私たちの多発性硬化症の病変の記述は、不正確なものでした」とOkuda。「MSの病変は、『卵形』であり『ぴっちりと外接している』と記載していました。しかし3Dを用いた研究によって、私たちはこれが正しくないことがわかりました。私たちは、MS病変の複雑さに驚いて、これまで私たちの分野で使われていた用語が、物理的な3D形式のレビューの後では正確なものではなくなるかもしれない、という議論をしました」。

このようなスキャンでは、病変の形状に対して与えられる情報は限定的だ。

このことを知ることが、正しい診断と誤った診断の分かれ道になるかも知れない。そして3Dプリンティングは、安価でどちらかと言えば迅速な手段なのだ。その形状についてよりよく理解するために、それを実際のものよりも大きくプリントするこさえ可能だ。これらの出力結果は、患者の損傷部分の理解や、どのように治療を行なうことができるかを考える手助けとなり、はっきりしない視覚化画像の中から、治療の結果を取り出して見ることに役立つ。

しかし、私にとってもそうだったが、読者も脳の中の3D構造を3Dで視覚化することは当たり前のような気がするかもしれない。しかしテクノロジーが医療分野に到着することはとても遅くなることがあり、この種の医療現場での3D視覚化も例外ではなかったのだ。

3Dの視覚化はすでにある程度普及しているのでは?という私の問いかけに対し、Okudaは「あなたが考えているほど広まってはいません」と答えた。「あなたが見た、他の脳病変イメージング作業は、おそらく手術前計画に用いられる(表面と形状に対して限られた解像度を持つ)CTスキャンやCT/MRIを組み合わせたものでしょう。直感的に思えるかもしれませんが、実は私たちは悪性脳腫瘍の診断と管理に3Dイメージングを使用していないのです」。

彼の病変コレクションを見せるOkuda博士。

ならば技法を広げる余地がある。おそらく。

Okudaとそのチームの次のフェーズは、3Dプリンティングが現実的でない場合に、患者のために使用するVRプラットフォームを開発することだ。またこれは機械学習に最適なユースケースなので、深層学習システムの開発も同時に進められている。特定の形状または特徴で、患者の転帰や予後を予測できるようになるかも知れない。

Okudaらの研究成果は、最新のJournal of Neuroimaging(神経画像処理学会誌)に掲載されている。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

人の感情に反応して動く3Dプリントで作ったソフトロボットのマスク、でも一体何のため?

この奇妙奇天烈なマスクは、キティーちゃんと人の顔に貼り付いて血を吸うエイリアン(face-hugger)のあいの子みたいだが、ソフトな電子回路と着色した液体でできている。これはSirou Peng, Adi Meyer, そしてSilvia Ruedaらの修士論文のプロジェクトがベースで、ハーバード大学のSoft Robotics Toolkitを使用している。

マスクは着用者の顔の各部に対応し、筋肉センサーMyowareを使って、笑ったり、眉をひそめたり、心配したりしたときのパターンを判別する。そしてマスクが感知した感情に応じて、毛細管から液体を射出したり吸ったりする。それによって、マスクの装着者が今何を感じているかを、非常に奇妙な形で表す。

なんでこんなものを? うーん、Burning Manはもう終わっちゃったから、次はハロウィーンで使えるかな。それ以外では、自分の感情を多くのオーディエンスにブロードキャストすることに使えるだろう。 そう、世界は3Dプリントされたソフトロボットのシリコン製マスクだ、ということわざもあったよね。

自分で作ってみたい人は、ここへどうぞ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

3000ドルで売れるフルカラーの3DプリンターをXYZPrintingが発表、コロンブスの卵のようなアイデア

家庭用のフルカラーの3Dプリントは長年、消費者とホビイストの究極の夢だった。これまで、小さな装身具などをプリントするのは楽しかったけど、多色のアクションフィギュアのようなものを作れたら、それこそ消費者用3Dプリントの革命だ。そして実は、インクジェットという技術によって、その革命の入り口あたりにすでに近づいているのかもしれない。

3Dプリンターの人気製品Da Vinciシリーズを作っているXYZprinting日本)は、2014年にレーザースキャナーでもある3Dプリンターを発売したが、今日(米国時間8/31)は定価3000ドルのDa Vinci Colorを発表した。それは、プリントしながらフィラメントに、インクジェット方式で着色していく3Dプリンターだ。それまでのフルカラー機は、ナイロンの粉末とか複数のフィラメントを混ぜることによって、フルカラーをシミュレートしていた。Da Vinci Colorは、プラスチックのオブジェクトのプリントに使われている熱したPLAフィラメントに色を単純にスプレーし、フルカラーのオブジェクトを作る。フィラメントのスプールは35ドル、インクは65ドルだ。

そして、極めつけの特長は、使える色数がほとんど無限であることだ。プレスリリースはこう言っている:

業界初の究極のフルカラー3Dプリンター、XYZprintingの3DColorJetソリューションは、da Vinci ColorがPLAフィラメント上にCMYKの色の飛沫を鮮やかに、正確に、高い精度で輝かせることを可能にする。このプリンターの技術は、最終的に完成した3D製品上に、1600万色のフルカラースペクトルを実現する。弊社独自のその技術は、インクジェット印刷によって実現する微細な色分けと、高度でプロフェッショナルな3Dプリント技術を組み合わせている。

 

このやり方をトライしたメーカーは過去にもあったが、それを単純で低コストな技術として完成させたのはXYZが初めてのようだ。なにしろこれは、プリンターの価格が単色の3Dプリンターとあまり変わらない。とりあえず、われわれとしては、それ以上望むものはないだろう。下のサンプルを見ても分かるように、このプリンターは小さな部分にも運転時に彩色できる。フィラメントを交換して色の帯をプリントするほかの製品とは、大違いだ。そういうマシンは、かなり派手な色のプリントは可能だが、色がそのうちあせてしまう。それに対してこちらは、ふつうのフィラメントでプリントできるから、大進歩だ。

このプリンターは今、$2999.95で予約販売中、店頭に出たら$3500になる。

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こんなものがついに出たことに、ぼくはコーフンしている。これで3Dプリントが家庭に大普及するとは思われないし、色を後から塗るやり方でも場合によっては十分だが、でも同社の技術がもっと進歩したら、たとえばデザイナーが自分の製品(建物でも玩具でもよい)のプロトタイプをいろんな色で簡単に試作するなんてことが、可能になるだろう。ふつうの3Dプリンターを2000年代のドットマトリックスプリンターだとすれば、こちらは21世紀のインクジェットプリンターだ。その巧妙なハッキング的技術は、確実に次の時代を開くだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

右半身麻痺の友だちがNintendo Switchを片手でプレイできるためのアダプターを3Dプリントで作った

Julio Vazquezは、脳血管の傷害で右手が効かなくなった友だちのRami Wehbeが、Nintendo Switchをプレイできる方法を見つけたいと思った。Wehbeはたとえば、Breath Of The WildをJoy-Conコントローラーでプレイできない。二つのスティックを操作するためには両手が必要だからだ。エンジニアであるVazquezは、ゲームを左手だけでプレイできるための簡単なモジュールの、プロトタイプを作った。

“一週間のあいだに、失敗作のプロトタイプをいくつも作り、やっと今の形に落ち着いた。容易に3Dプリントできることと、軽くて実用的であることを目指したからね。テストの結果は上々だったから、これをシェアすることに決めた。同じ問題を抱える人たちにも、きっと役に立つと思う”、Vazquezはそう書いている。プリントモデルはここで入手できるから、だれもが自分ちでプリントできる。

3Dプリントのちょっとした発想で、わりと簡単に人助けができるなんて、ぼく自身も眼から鱗だね。Yodaの頭寝ている豚をプリントするのも楽しいけど、こうやって身の回りの問題解決に利用するようになったら、3Dプリンターの未来はもっともっと大きいだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

炭素繊維とガラス繊維を使って鋼鉄よりも強度のある機械部品を3DプリントするMarkforgeのX3とX5

ボストンで3Dプリンターを作っているMarkforgedが、二つの新機種、X3とX5を発表した。どちらも、ふつうのフィラメント方式のプリンティングで、炭素繊維を満たしたオブジェクトを作れる。それらのオブジェクトには、スチール製のオブジェクトを置換できるほどの強度がある。

どちらの機種もレベリングとスキャンニングを自動的に行い、完全に同じオブジェクトをプリントできる。またどちらも、Markforged特製の特殊な熱可塑性ファイバーフィラメントを用い、X5の方は“ガラス繊維フィラメントの連続的供給”を行うので、通常のプラスチックよりも“19倍も強く10倍の硬度のあるオブジェクト”を作れる。つまり同じマシンで実用に耐える部品と実用に耐える工具の両方を作れるし、ガラス繊維のフィラメントのおかげで、それらは使用中に折れたりしない。あるユーザーは、わずか10分で、自転車の車輪の(チューブの)バルブを締めるバルブレンチ(下図)を作った:

次は悪いニュース。X3はたったの36990ドル、X5は49900ドルだ。Markforgedは、“国内の製造業企業”がターゲット、と言っている。良いニュースは、ユーザーのニーズの変化によっては、X3の機能をX5にアップグレードできること。またどちらも、製造業企業がプロトタイプではなく最終製品の生産に使えることだ。しかも、エンドユーザーの現場でも。

“顧客は、特定の部品が必要になったその日のうちに、強度とコスト要件を満たす部品を作れる”、とCEOのGreg Markは語る。

これらのプリンターは、Markforgedが最終的に目指している“物質転送システム”への途上にある。その複雑なスキャンニングと測定システムにより、ユーザーは遠方から3Dプリントのモデルだけを受信し、完全に同じものを自分の目の前に実現する。そのシステムにはフェイルセーフモードがあり、プリントが異常停止した場合にはレーザースキャナーがその原因を調べる。そしてプリンターはその箇所からリスタートする。同社は金属の3Dプリントについても独自の研究開発を行っていて、それにより複雑な機械の複雑な部品でも、実用に耐える強度のものをプリントできる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

耳を澄ませて3Dプリンターへのサイバーアタックを防ぐ

3Dプリンタがよりスマートになり、製造および製品作成工程に組み込まれ続けるならば、他のすべてのデバイスやネットワークと同様に、オンラインの悪用者に対して晒されることになる。セキュリティ研究者たちは、ハッカーたちが3Dプリンタの出力を妨害することを防ぐ方法を提案している:注意深く耳を澄ませよう。

現在、もし3Dプリンターに対してハッキングを行う誰かが、特にひどい脅威を与えていないなら、まだ許容範囲だ。しかし、実際に3Dプリンターは趣味やプロトタイピングの目的以上のものに使われ始めている。例えば人工装具はありふれた用途の1つだ。そして材料の改良に伴い自動車や航空宇宙への適用も可能になってきている。

一部のセキュリティ研究者がすでに実証しているように、この問題の深刻な点は、ハッカーがマシンを乗っ取り単にシャットダウンさせるというだけではなく、出力される対象に欠陥を忍び込ませることができるかも知れないということなのだ。そのために必要なのは、小さな空洞、内部の支柱のずれ、あるいはその種の微妙な調整だけだ。そうされることで例えば、本来75ポンドを支えるものとして考えられていた部品が、20ポンドを支えることしかできなくなる。これは多くの状況で、致命的なものになる可能性がある。

そしてもちろん、妨害されたパーツは、肉眼では普通のものと全く同じように見えるかも知れない。ではどうすべきだろうか?

ラトガース大学ならびにジョージア工科大学のチームは3つの方法を提案している。そのうちの1つは、幅広く統合することが、簡単かつ賢明な方法だ。ある意味3DプリントのためのShazam*と言えるかも知れない(他の2つも同様にクールな手法だが)。

これまで読者が動作しているプリンターの側にいたことがあるかどうかは知らないが、それは大変な騒音を発している。なぜなら、多くの3Dプリンタでは、移動するプリントヘッドやさまざまな機械部品が使用されていて、それらの部品は、通常キンキン、カチカチ、その他のノイズを発生させるものだからだ。

研究者たちは、レファレンスプリントが作成されている間にそうしたノイズを録音し、そのノイズをあるアルゴリズムに投入して分類し、後からもう一度認識できるようにした。

新しい印刷が行われる際には、サウンドが再度録音され、アルゴリズムによる検査が行われる。もしそのサウンドが全て一致するようなものであるならば、印刷物は改ざんされていない可能性が高い。オリジナルのサウンドからの大きな乖離、例えばある動作が早く終わりすぎたとか、普通の平坦な場所の途中に異常なピークが存在したといった状況はシステムによって検知され、フラグが立てられる。

これは単にコンセプトの実証に過ぎないので、改善の余地がまだ大きい、誤検知を減らし、周囲のノイズへの耐性も必要となる。

もしくは音響による検証を、チームが提案している他の尺度と組み合わせることも可能だ。もう1つの方法は、プリントヘッドにすべての動きを記録するセンサーを装備する必要がある。これらの記録が基準モーションパスと異なる場合には、大当たり!フラグを立てよう。

第3の方法は、非常に特異的な分光特性を与えるナノ粒子を、成形材料に浸み込ませるという方法だ。もし他の材料が利用されたり、出力の中に空洞が残されていたりした場合には、特性が変化し、オブジェクトには問題があるのではないかと推測することができる。

DNAに仕込まれたマルウェアベクターの話題と同様に、ここで予測されているハックや対策は今のところ理論的なものだが、それについて考え始めるのに早すぎることはない。

ラトガースのニュースリリースで研究(PDF)の共同執筆者であるSaman Aliari Zonouzは次のように述べている「3D印刷業界では、約5年以内には、さらに多くの種類の攻撃が発見され、防御法も提案されることでしょう」。

そしてDNA研究同様に、この論文はUSENIXセキュリティシンポジウムで発表された。

*訳注:文中出てくるShazamというのは、音楽を聞かせるとそれが何の曲かを教えてくれるアプリのこと。

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(翻訳:Sako)

3Dプリントされた果物が本物の果物をよりおいしくする

今度あなたが箱入りの果物を買ったりもらったりしたら、その中にはそっくりさんがひとつ入っているかもしれない。そのフェイクフルーツは、箱の中のプラムの温度や動きや衝撃を調べたり、桃の糖度と硬度が適切で傷んでいないことを確認したりする。

スイスのFederal Laboratories for Materials Science and Technology(国立物質科学技術研究所)が作ったEmpaは、3Dプリントで作ったリンゴで、中にいくつかのセンサーがあり、本物のリンゴの群れの中に身を隠す。大きさも形も色も重さも本物のリンゴと変わらないから、箱詰め作業をする人がとくに気にする必要がない。

最初のモデルは温度センサーだけだが、今後はもっといろんなセンサーを詰め込む予定だ。するとこのロボットリンゴはほかのリンゴたちと同じ体験をするから、彼らが受ける扱いを、センサーが感取し記録できる。そして消費地のお店などは、そのデータをチェックする。

このプロジェクトはJournal of Food Engineeringで紹介され、“本物のリンゴと同じように温度に反応するフルーツシミュレーター”、と説明されている。そして、“コールドチェーンの全過程における果肉の温度履歴をモニタできる人工果実”、だそうだ。果物の流通技術における、画期的な発明かもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

高校生が3Dプリントと機械学習を利用して祖父のための網膜診断システムを制作

もしもあなたが、ぼくと同じように、自分はこれまでの人生でまだたいしたことしてないな、と日頃思っているなら、Kavya Kopparapuのこのプロフィールを読まない方がよいかもしれない。このティーンエイジャーはまだ高校生なのに、ぼくが大学卒業後これまでにやったことよりも、すごいことをやってのけた。いちばん最近では、彼女は祖父の、誰にでもよくある目の不具合を診断する、安くてポータブルなシステムを作った。その症状は気づかれないことが多く、しかし放置すると失明に至る。

3Dプリントで作ったマウントに装着したレンズが、iPhoneで網膜をスキャンし、何千もの網膜画像で訓練された機械学習システムが、一般公開されている既存のサービスをいくつか使って診断をする。彼女はその作品を、先月行われたO’Reilly’s AIカンファレンスで発表した。

もっと詳しく知りたい人は、IEEE Spectrumの記事彼女のブログを読んでみよう。ぼくは、Kopparapuの次のプロジェクトを知りたいね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

形状を変える”4D”プリントオブジェクトが宇宙建築への道を拓いてくれるかもしれない

たとえNASAの手にかかろうとも、宇宙に物体を打ち上げるには多額の資金が必要だ。そのコストは、1ポンドあたり約9000ドルから4万ドル以上に及ぶ。こうした価格帯の下では、重量とスペースがシャトルミッションの中で大きなプレミアム価値となる。よってNASAは、よりコンパクトな搭載物を生み出す革新的な新しい手法を探すことになる。ジョージア工科大学のチームは、この問題をいつか解決しようと、熱に晒されたときに拡張する小さな構造の作成を、3Dプリンタを利用して探求している。

この方法は、科学コミュニティの中で4Dプリンティングと呼ばれるものの1形態である。4Dプリンティングというのは3Dプリンティングされた構造が、プリントされた後にその形状を変えることだ。ここで言う第4の次元とは時間である。それは最近聞かれるようになった業界のバズワードのようなものだが、この問題にはかなりうまく適合する。MITのような他の学校で行われている同等の研究のように、ジョージア工科大学のチームの研究も、変形のきっかけが温度によって与えられる。この研究が類似の研究から差別化されている点は、テンセグリティ構造日本語Wikipedia)を利用する点だ。これは浮き上がった固形の棒(ロッド)たちが紐(ワイヤー)によって結び合わされた構造になっているものだ。システムは軽く、強く、簡単に折りたたむことが可能なため、宇宙旅行のためには理想的な構造だ。

チームによる構造は、完全に3Dプリンタによって生み出される。プリント後の段階では、オブジェクトは平らに横たわっている。摂氏65度(華氏149度)の水に浸すと、それらは展開を開始する。それが進行する速度は、試行錯誤を通して、研究者たちがプリント対象に直接焼きこんでいる。もし、大きな構造をあまりにも速く展開してしまうと、ワイヤーとロッドが絡まった混乱した構造が残されることになる。

Glaucio Paulino教授はこのためのプログラミングを「メモリー」と呼んでいる。これはワイヤーによってつながれたポリマーロッドに組み込まれているものだ。「メモリーはロッドに埋め込まれています。ワイヤーにはメモリーはありません」と彼はTechCrunchに語った。「これらは柔軟な素材です。すべてのメモリはロッドの上のみにプリントされています。私たちはこのメモリーをプリントする技法を見出したのです」。

このメモリーはまた、構造物が元の状態に戻ることもできることも意味しているが、現時点では材料による制約でうまく実現できていないとPaulinoは語る。複数回の変形を行なうことで、崩壊が始まってしまうのだ。チームはそれを修正する手法にも取り組んでいる。

Paulinoは、これらのシステムの規模拡張にも取り組んでいるという。現時点ではそれが展開されたとしても、人間を収容できる程の大きな構造物を建てるための道のりは遠い。とはいえテンセグリティ構造自体はかなり大きなスケールで使用されている。この用語は1960年代にBuckminster Fullerによって提唱された概念であり、スタジアムや橋を含む多くの種類の大規模構造物に利用されてきた。建築業界では特に一般的というわけではないが、最小限の材料から生み出される強度は高く評価されている。

すべてがうまくいけば、この技術は最終的には、宇宙構造物やロボットそして生物医学的なニーズに至る幅広いデバイスに利用することができるだろう。

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(翻訳:Sako)

3Dプリントで作ったソフトな脚でロボットが凸凹道を安定的に歩ける、ヒントは蛸などの生物から

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の工学部の連中が、生物からヒントを得たソフトロボットの原理により、石ころや砂などの凸凹道をふつうに歩けるロボットを開発した

柔らかい積層材で作ったロボットの四本の脚は、環境に適応できる。だからセンサーで地表の正確な像を把握する必要がない。平滑でないところに来たら、歩き方をそれに適応させるだけだ。

そのロボットの四つの脚は、3Dプリントした硬い材と柔らかい材から成り、ゴム製の空気袋の伸縮が前進運動を支える。ハーバード大学のGeorge Whitesidesのロボット工学研究室をはじめとして、同様のソフトロボットプロジェクトは過去にもあった。それらにも助けられて、蛸や烏賊のような海の生物にヒントを得たロボットが試作されてきた。

実はこの研究を率いたUCSDの助教授Mike Tolleyは、ハーバードの研究室出身だ。そこで彼は昔、著名なプロジェクトのひとつ、ほぼ全体的にソフトな身体を縮めて狭いところへ入り込める、完全ワイヤレスのX型ロボットを作った。

Tolleyはこう語る: “歩く、と言いたいところだけど、終始すり足だから、歩くと言えば誇大宣伝になる。しかも、起動したら一つの方向へ進むだけだ。でもそれが、おもしろい足並みを作り出す。まるで虫のように、くねくねと波うつ足並みなんだ”。

この研究から、すでに実用製品も作られている。たとえばSoft Roboticsが設計した工業用のグリッパーだ。蛸をヒントにした手だから、ロボット工学に基づく精密な視力がなくても、いろんな形やサイズの物を持ち上げることができる。そしてその脚は、四本ではなく二本で、くねくねした歩みではなく、実際に脚を上げたり下ろしたりしながら動きまわる。

ハーバートのロボットと同じく、圧力を利用する空気袋を使っているが、細かいところはもっと繊細になっている。

Tolleyは話を続ける: “以前は、膨らますと脚がどっちかへ曲がる、という方式だった。でもちゃんとコントロールできるためには、いろんな方向へ曲がれる脚が必要だ。でもそれは、積層材だけでは無理だった。複雑な空気袋を3Dプリントできるようになって、やっと、同じ動きを素早く繰り返すことのできる方法が見つかった”。

最新のシステムでは3Dプリントした空気袋が複数並んでいて、どれとどれを膨らますかで動きのコントロールができる。Tolley曰く、“一つだけ膨らますと、どっちかへ曲がるんだ。さらにもうひとつ膨らますと、360度の曲がり方もできる”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))