PDFをモバイル用にAI自動変更する アドビの「Liquid Mode」とは?

みんなも経験があるだろう。Google(グーグル)検索沼にはまって1時間もスマホと格闘。そしてやっとのことで、自分が探し求めていた情報が確かにあると思われるリンクを発見する。それをタップすると、なんと50ページのPDFだった。画面をつまんで拡大して、どう考えてもスマホの画面に対応していないPDF文書を読み進める。

間もなく誕生から30年を迎えることを思えば、PDFというこのファイル形式がモバイル機器を考慮して作られたものではないことは明らかだ。しかし、PDFもスマートフォンも、今すぐ消えてなくなるとは思えない。そこでAdobe(アドビ)は、双方が仲良く共存できる方法を探ってきた。

米国時間9月23日朝、アドビは「Liquid Mode」(リキッドモード)と呼ばれる機能をローンチした。残念ながら現在のところ日本語未対応だが、同モードはアドビのAIエンジン「Sensei」(センセイ)の力を使ってPDFを分析し、自動的にモバイル画面に合った形に組み直してくれるというもの。機械学習でPDFを細かく調べ、必要な処理を行う。例えば、新しい章が始まる部分でのフォントの設定や、表の中のデータの表示方法を調整し、全体を小さな画面に合わせて流し込む。

数カ月間、密かにテストを続けてきたが、本日iOS用とAndroid用のAdobe Acrobat Readerアプリで一般向けに利用可能となった。いずれデスクトップにも対応させる計画だ。同社CTOのAbhay Parasnis(アベイ・パラスニス)氏は、ゆくゆくはアドビ製品以外のアプリにも同様の機能を与えるAPIを開発中だと話してくれた。

Acrobat ReaderでPDFを開くと、アプリはその文書がリキッドモードでの処理が可能かどうかを判別する。可能だとわかれば、リキッドモードのボタンがタップできる状態になる。ボタンをタップすると、文書はAdobe Document Cloudに送られ処理される。完了した後は、ユーザーによるフォントサイズや行間などの微調整も可能になる。リキッドモードでは、検出したヘッダや文章構造から、元の文書に備わっていなかったタップ可能な目次も新たに生成される。これを使えば、章を簡単に飛ばすことが可能だ。すべては非破壊的な調整であるため、オリジナルのPDFに変更が加えられることはない。リキッドモードを解除すれば元どおりのPDFに戻る。

アドビのこの取り組みについては最初に知ったのは、今年の1月に行われたExtra Crunchのインタビューでのことだ。パラスニス氏は、同社が行うほぼすべてのことにAIと機械学習を導入するという計画の概要を私に話してくれた。リキッドモードは、Senseiに文書を理解させるための第一歩に過ぎないと、パラスニス氏は言う。また、いずれはユーザーがSenseiに30ページのPDFを読ませると、数ページの要約が出来上がるようにしたいとも話していた。

画像クレジット:Adobe

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(翻訳:金井哲夫)

Slackの会話データで社員のエンゲージメントを可視化、Laboratikが8000万円調達

写真左がLaboratik代表取締役の三浦豊史氏

Slackなどのコミュニケーションツールから得た会話データをもとに、社内のエンゲージメントを可視化するボットの「A;(エー)」を提供するLaboratikは4月16日、Archetype VenturesみずほキャピタルエルテスキャピタルZeroth AI、ほか個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は8000万円だ。

Slackと連携して利用するエンゲージメント可視化ボットのA;は、自然言語処理を介してチャット中の会話を解析し、チームのエンゲージメント(関与度や熱意)を可視化するサービスだ。会話のポジティブ/ネガティブ度を解析したり、メンバーのチャット上での発話数や、メンタルのバイオリズムを把握したりすることができる。

また、Slackを経由してGoogleカレンダーやGitHubなど他サービスとも連携でき、スケジュールや開発進捗を自動で記録することも可能だ。現在、A;は日本語と英語の2言語版が提供されている。Laboratikは2017年6月よりA;のオープンβ版を公開している。

A;は現在までに約800社の企業をβ版のユーザーとして獲得。これまでに蓄積した会話データは100万件を超える。Laboratikはこれらの会話データの組織名、チーム名、日時など匿名化した状態で保存し、解析にかけているという。

今回の調達を期に、同社はA;の次期バージョンの開発を進める。現在、A;が連携しているコミュニケーションツールはSlackのみだが、次期バージョンでは主に大企業で使われることの多いという「Microsoft Teams」との連携をめざす。また、サーベイ機能を追加し、会話データから得た定性データとサーベイから得た定量データを組み合わせることで新たなインサイトを提供する。

Laboratikは2015年7月の創業。同社は以前に行なわれたエンジェルラウンドで3000万円の資金調達を実施しており、今回を含む累計調達金額は1億2000万円となる。