Accelがインド向け新規ファンドを約600億円でクローズ

世界で最も影響力のあるベンチャーキャピタルの1つであるAccelがインドでさらに積極展開する。アーリーステージの投資を専門とする米シリコンバレー拠点のAccelは米国時間12月2日、インドにおける6回目となるベンチャーファンドを5億5000万ドル(約600億円)でクローズしたと発表した。

これはAccelがインドで募集したファンドとしてはかなりの額となる。Accelは15年前にインドで事業を開始し、これまでにおおよそ10億ドル(約1090億円)を投じた。インドのAccelでパートナーを務めるAnand Daniel(アナンド・ダニエル)氏はTechCrunchとのインタビューで、シードステージとアーリーステージのスタートアップの発掘と投資に今後もフォーカスすると語った。

しかしAccelは、同社のポートフォリオにあるスタートアップのその後のラウンド(レイターステージのラウンド)に積極的に参加するにはさらなる資金が必要であることを認識していた。今回の発表の前にAccelは、欧州とイスラエルで積極展開するために5億7500万ドル(約630億円)のファンドをクローズしたことを明らかにしていた。

「我々は対象は限定ながら、Swiggy、UrbanClap、BlackStone、Bounceのような規模を拡大している企業にグロース投資も行っている。シリーズB、Cラウンドを通じてそうした企業を支援してきた」とダニエル氏は述べた。

他の多くのマーケットでの展開と同様、Accelのインドでの投資額もかなりのものだ。AccelはeコマースFlipkartのシードラウンドに参加し、Flipkartのバリュエーションはポストマネーで400万ドル(約4億4000万円)となった。Walmart(ウォルマート)は昨年Flipkart株の過半数を160億ドル(約1兆7500億円)で購入した(これによりAccelはFlipkartからの見返りとして10億ドルの益を上げた)。

インドでパートナー9人、スタッフ50人を抱えるAccelは、今やバリュエーションが30億ドル(約3300億円)超となったSaaS大手のFreshworksのシードラウンドや、こちらもバリュエーションが30億ドルを超えるフードデリバリースタートアップのSwiggy、それから最近ユニコーンになったBlackBackにも投資した。Accelは同社のポートフォリオにあるスタートアップの85%にとって最初の機関投資家だ。

インドで投資している100あまりのスタートアップのうち44社は、バリュエーションがそれぞれ1億ドル(約109億円)を超えている。Flipkartの市場価値210億ドル(約2兆3000億円)を含め、全社合計で440億ドル(約4兆8000億円)のマーケットバリューとなっている。

Accelのインドでの投資先

「我々が2005年に初めてインドでファンドを開始したときは、今とはまったく異なっていた。インド人50人のうち1人しかインターネットにアクセスできず、携帯電話の所有はこれからという状況だった。にもかかわらず、我々はインドが大きな変化に直面していると確信していた」とAccelは声明文で述べた。

「今後のポテンシャルは、我々が2005年にインドで展開を始めたときよりもかなり大きなものになっている。インドは国民13億人をデジタルで識別でき、インターネットユーザーは6億人で、毎月200億ドル(約2兆2000億円)を処理する国家支払いプラットフォームに1億5000万人の顧客がいる」

ダニエル氏は、Accelが引き続き消費者や企業間取引、フィンテック、ヘルスケア、グローバルSaaSの部門にフォーカスすると語った。「Accelにはそれぞれの専門分野を持つパートナーが9人いる。彼らはそれぞれの考えとファイナンスシードラウンドに基づいて投資する。新たなセクターが出てくれば、我々は深い論証作業を行う」

「そうした特定の分野に関し、我々は一層理解を深める。例えば、Uberがインドに参入するずいぶん前に我々はモビリティスタートアップのTaxiForSureに投資した。この件は我々がモビリティについて深く理解するのに役立った。そこで学んだことを生かして、我々はさらにいくつかのモビリティスタートアップに投資した」

Accelの中でインドへの関心が高まっているが、時期を同じくしてソフトバンクやProsus Venturesといった他の大手もインドで積極的に動いている。ただ、他社はレイターステージのラウンドに出資する傾向がある。今年すでに十分な資金を調達したインドのスタートアップにとってはいいニュースだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

APIの良質な文書を作るReadMeがログ利用でサービスを高度化

ソフトウェアにAPIがあると、さまざまなツールがお互いにコミュニケーションでき、デベロッパーは自分でコードを書かなくても便利なサービスにアクセスでき、そのソフトウェアをプラットホームとしても運用できるようになる。でも、APIを上手に使うためにはしっかりとしたドキュメンテーション(文書)が必要だ。APIのドキュメンテーションの制作を助けるその名もReadMeが、AccelがリードしY Combinatorが賛助するシリーズAのラウンドで900万ドル(約9530億円)を調達した。同社は、2015年冬季にY Combinatorを受講している。

今日の投資の発表前には、同社は2014年に120万ドルのシード資金を獲得しただけだ。それが今では3000社の有料顧客がいて過去7年黒字という、珍しいほどの好成績を収めている。しかし成功に酔うことのないCEOのGregory Koberger(グレゴリー・コーベルガー)氏は、今後は大型顧客の獲得に努め、より高度な要求にも応じるために今回のラウンドに至った、と控えめに言う。

しかも同社は近年、企業のAPIのログを分析して各種の情況に応じたドキュメンテーションを制作でき、またAPIの使い方がわかると、ユーザーが抱えるいろんな情況のカスタマーサポートにも応じられるようになった。でも、よその会社のAPIログを見るのだからデータのセキュリティが重要だ。今回の資金は主に、その方面に投資される。

コーベルガー氏は「当たり前のように、技術者を増やしサポートやデザイナーも増やす必要がある。しかしそれは何のためかというと、もっと大きな企業を相手にし、そのためにデータのセキュリティを強化するためだ。それを正しくやるためには、お金がたくさん必要だ」と語る。

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画像提供: ReadMe

彼によると、各企業のAPIログを利用できるようになってから、いろんな可能性が一挙に開けた。なぜなら、データが人びとのAPIの使い方を知るための貴重な窓になるからだ。彼は「サーバーのログからいろんなことがわかるから、すごい。誰かがAPIで問題を抱えていたら、ログを見て問題の様相がわかるのでデバッグができる。サポートチームにも、ログから顧客のAPIの使い方に関するいろんなことが分かる」と語る。

今回の投資をリードしたAccelのDan Levine(ダン・レーヴィン)氏によると、APIの成否の鍵を握るのは、良質なドキュメンテーションがあるかないかだ。「APIは技術的な統合を作り出すためにあるだけでなく、そのサービスを軸とするエコシステムを作り、企業間のパートナーシップの強力な糊にもなって、数十億ドルの価値を生み出す。だからReadMeは企業にとって、サービスである以上に戦略だ。クリーンで対話的でデータドリブンなAPIのドキュメンテーションがあれば、デベロッパーはそれで仕事をすることが好きになり、それは100社や1000社のパートナーシップにも値する」とレーヴィン氏。

ReadMeは2014年に創業された。今サンフランシスコのオフィスには社員が22名いるが、今回の投資で当然増えるだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ダイレクトリスティングを控えてSlackは売上が順調に増加し損失率は低下

職場のメッセージングは、いまやSlackで決まり。そのSlackが、6月20日と予想されているダイレクトリスティングに備えて米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、SEC)に、修正S-1を提出した。

その文書でSlackは今後の黒字化への道のりもやや改定し、前期2019年Q1の決算は売上1億3480万ドルに対し損失3180万ドルと報告している。売上は前年同期比67%の増で、2018年Q1では8090万ドルの売上に対して損失が2480万ドルだった。

2019年1月で終わる会計年度では、同社の売上は4億60万ドルに対し1億3890万ドルの損失だった。前会計年度では売上2億2050万ドル、損失が1億1億4010万ドルだった。

Slackは今、ニューヨーク証券取引所におけるダイレクトリスティングに必要な準備過程の最後の段階に来ている。ちなみに同取引所におけるSlackのティッカーシンボルは「WORK」になる。ダイレクトリスティングは株式市場へのアプローチの仕方のひとつで、それにより有名企業は、新株を発行する代わりにインサイダーや社員、投資家などが持つ既存の株を市場に直接売り出す。この方法だと企業は、会社説明など売り出しにあたってのロードショープロセスを省略でき、またウォール街に相当な額のIPO手数料を取られずに済む。

Spotifyは2018年にダイレクトリスティングを完了し、もうひとつの価値の高いVC支援企業Airbnbも、2020年にダイレクトリスティングを行うと噂されている。

Slackは現在、70億ドルの評価額とされている。これまで同社は累計12億2000万ドルを、Accel(同社の株式24%を保有)、Andreessen Horowitz(13.3%)、Social Capital(10.2%)、ソフトバンク、T. Rowe Price、IVP、Kleiner Perkinsなどから調達している。

関連記事: The Slack origin story(Slackの起源、未訳)

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

自動車産業が総合交通サービス業になる?自動車メーカーが車を使わない交通アプリTransitに投資

Transitは、都市に住んでる車を使わない人びとのためのモバイルアプリを作っている。同社はこのほど、二つの自動車メーカーからシリーズBで1750万ドルを調達した。

そのラウンドをリードしたのはRenaultNissan-Mitsubishiグループの投資部門Alliance Venturesと、Jaguar Land RoverのVCファンドInMotion Venturesだ。これまでの投資家AccelとReal Venturesも参加した。

RenaultNissan-MitsubishiとJaguar Land Roverの投資は、5年前なら奇妙に感じられただろう。でも、今は2018年だ。今年は、スクーター戦争とマイクロモビリティ(micro-mobility)の年だ。そして自動車メーカーはそろそろ、単純に車を作って売るだけのビジネスから脱して、業態を多様化しようとしている。

2012年に創業されたTransitは最初、バスや列車などの公共交通機関の時間を調べるアプリだったが、だんだん成長して今ではライドシェアや自転車〜スクーターのシェアなども利用できる。データはリアルタイムで、今シェアを利用しているユーザーからのクラウドソーシングも含まれる。アプリはそのユーザーが今利用しているシェアに通知して“次はどこそこへ行け”と指示し、アプリの本来のユーザーにはそのシェアの推定到着時間を教える。今では、ボストンやボルチモア、シリコンバレー、タンパベイ、モントリオールなどの交通局もTransitを利用している。

同社はこのアプリが交通機関/交通手段の種類やその提供企業/製品を特定しないことを目指しており、その意味でオープンAPIの熱心な支持者だ。今その理想にいちばん近い形を実現しているのは、Transit発祥の地、モントリオールだ。COOのJake Sionによると、モントリオールではユーザーが、カーシェア、自転車シェア、Uber、そして公共交通機関を利用できる。

Transitは世界の175の都市で使われており、今回の資金は各地の既存サービスの内容充実と、対応都市の拡大に充てられる。内容充実は、対応する交通機関/手段の増だけでなく、決済方式の改良等も含まれる。

Alliance Globalのベンチャー担当VP François Dossaは、声明でこう述べている: “この投資はTransitの努力をさらに前進させ、都市における移動をシームレスにし、そのアクセス性を向上する。それはAllianceの2022年戦略にもフィットするものであり、そこでは弊社が、各種シェアサービスを含むすべての交通機関交通手段のシームレスな統合化における、業界のリーダーになることを目指している”。

画像クレジット: Transit

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

インドの家具・家電レンタルサービスRentomojoが500万ドル調達

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インドで家具を揃えるための革新的な方法を考案したスタートアップのRentomojoが、さらなる事業の拡大を目的とし、500万ドルの資金を新たに調達した。今回投資を行ったAccelとIDG Venturesは、昨年11月に同社が行った200万ドルの調達でも資金を提供していた。

設立から18ヶ月が経ったRentomojoは、インドに住む多くの人にとって、自分たちの家用に家具や家電を購入するのは意味がないとシンプルに主張する。その代わりにRentomojoは、人々を家具の所有に伴う重荷やお金の問題から解放し、必要なものをレンタルできるようにしようとしているのだ。

レンタルの仕組みは、家具という商品カテゴリーでは一般的ではないものの、その安さや家具の保有に伴う責任がなくなるという利点から、インドで注目を集めるトレンドを後押ししていると、Rentomojoの設立者兼CEOのGeetansh Bamania氏はインタビューの中で語った。

彼の説明によれば、インド人労働者の平均的な可処分所得は少額(6000〜7000ルピー=約105ドル)のため、高価な商品を買うのは難しい。さらに、彼らは定期的に引っ越しを繰り返す可能性が高く、一般的に若い労働者は2、3年おきに住居を変えるとのこと。そのため、ものを所有しても、引越し時に新しい住居へ運びこむか、引越前に中古品として売るかという選択を迫られることになっててしまい、実用的ではない。

しかし、Rentomojoのサービスを使えば、消費者は借りた家具や家電を返却し、事前に合意したレンタル契約の残りの事項に従うだけでいい。契約上の平均的な支払期間は8ヶ月に設定されており、Bamania氏によれば、一般的な顧客はレンタル品に対して月々30ドルを支払っているとのこと。

Rentomojoは、国内6都市に合計1万人のアクティブユーザーがいると発表している。Bamania氏は、来年の終わりまでにレンタルアパートの数を1000万戸(つまり、合計1000万世帯にレンタル家具を提供する)に到達させようとしている。

Rentomojoが解決しようとしている問題以外に、この企業に関してほぼ間違いなく一番興味をそそられるのが、多額の資金が必要な可能性のある商品の仕入をどのように行っているかという点だ。当初Rentomojoは自社で在庫を購入し管理していたが、途中で心変わりし、商品を投資として扱えないかと考え始めたと、Bamania氏は語った。

その後Rentomojoは、自社のビジネスモデルを根本から覆すアイディアを基に、銀行と資産金融に関して手を組み始めた。つまり、銀行が在庫仕入時に支払を行い、ひとつひとつの商品が生み出すレンタル料金の一部を返済にあてるというモデルを確立したのだ。平均して、100ドルの投資が月に10ドルの売上を生み出しており、そこから一定の割合(具体的な数字は明らかにされていない)を銀行に支払い、残りがRentomojoの売上になっている。

「サブスクリプションモデルでのレンタルには多額の資金が必要だったため、私たちは設備投資を運営費用に転換し、フィンテックモデルを作り上げました」とBamania氏は説明した。「このモデルを利用すれば、資産の保有者と借り主の間でwin-winな関係が成り立ちます」

さらに、今回調達した資金は、資産金融と商品の管理を行うRentomojoのテクノロジープラットフォームの強化や、ほとんどが現場に出ている現在160名のチームの拡大に使われる予定だとBamania氏は付け加えた。

また、彼は「この業界では、資金力はそこまで必要とされず、私たちは必要のない資金を調達したくありませんでした」と説明した。

財務状況について、Rentomojoは「単位経済あたりでポジティブ」、つまり各商品のレンタルで赤字を出していない状態にあり、「すぐに」年間の売上ランレートを1200万ドルに到達させたいとBamania氏は語った。また、現在の年間売上ランレートは300万ドル程とのこと。売上はプラットフォームの全面的な見直しに使われ、ランレートにはパートナー企業への支払分も含まれている。

「(私たちが直面している)一番大きな障壁が、消費者の意識です」とBamania氏は同社の課題について付け加えた。「ディスラプションが起きる前に、まず消費者の意識を変える必要があります。サブスクリプションモデルが売り買いに基づいたモデルを代替し、そのうち購入という概念を塗り替えることになるでしょう」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter