AI契約書レビューのAI-CON Proに秘密保持契約の校正・評価機能が加わる、迅速なNDA締結を実現

GVA TECHは6月8日、AIを利用した契約書校正サービスの「AI-CON Pro」に秘密保持契約書(NDA)の校正機能「AI-CON Pro for SalesNDA」を追加したことを明らかにした。これにより、法務部や法務担当者に依頼しなくても営業部で秘密保持契約書を校正(レビュー)可能になる。

AI-CON Proは、企業が自社のノウハウとして持っている契約書ひな型や法務知識を登録することで、自社の法務基準に則して契約書を校正できる業務支援サービス。属人的になりやすい契約書の校正業務をAI-CON Proが共有・平準化し、法務部や法務担当者以外でも契約書を校正・評価できるようになる。

秘密保持契約書とは、他社と業務提携する際に機密情報の取り扱いについて定めた契約書。例えば、新製品や新サービスの販売を控えた企業と報道各社が契約を結んで、情報解禁日などについて同意する際に使われる。国内では口約束のケースもいまだに多いが、外資系企業や国内大手企業では秘密保持契約を締結したうえで説明会や内覧会を実施している。

通常、企業間でこのような契約書を締結する場合、法務部、もしくは各部の法務担当者が内容をチェックするケースが多いが、大企業でもない限り法務部や法務担当者はマンパワー不足のことが多い。

一方で依頼する側は、法務部などにチェックを依頼すると時間がかかるという問題もある。、秘密保持契約書は、作成した企業によって言い回しなどの差異はあるものの、内容はほとんど変わらないので「なぜ遅い?」とストレスを感じこともしばしば。責任の所在や契約を破った際、破られた際のリスクを社内で統一しておけば、わざわざ法務部が内容を逐一確認する必要がないケースがほとんどだろう。

AI-CON Pro for SalesNDAはこの問題をAIで解決するサービス。法務部でルールを定めた秘密保持契約書の評価・校正方針をAI-CON Proを通じて社内展開することで、法務部や法務担当者を介さずに契約書の校正や評価などの作業を完結できるようになる。

これにより法務部の負担軽減や契約処理のスピードアップが可能になるほか、評価基準はクラウド上で管理するため常に最新の基準を共有できるというメリットもある。

実際にAI-CON Pro for SalesNDAを先行導入した、管理部門や士業に特化した転職サービスを運営するMS-Japanは「法務担当がノウハウとして持っている、修正依頼の多い条文での返答例や注意すべき内容をAI-CON Proに集約することで、営業担当自身がNDAや人材紹介契約書などの定型的な契約書のレビューを完結できるようになれば、契約締結までのスピードが早くなり、事業が伸びていくことを期待している」とコメントしている。

オンライン法人登記支援サービス「AI-CON登記」が役員変更の登記に対応

リーガルテックのスタートアップ、GVA TECHは12月2日、オンライン法人登記支援サービス「AI-CON登記」において、役員変更登記への対応を開始した。

GVA TECHいわく、役員変更は、法人の登記の中では最も件数の多い登記種類。同社は「法務局に提出される登記書類のうち、50%近く(2017年度は48.3%)が役員変更の登記だ」と説明し、「役員変更の登記に対応しているサービスはAI-CON登記のみ」と加えた。

AI-CON 登記は必要書類をアップロードし、登記上の変更したい最低限の項目を入力することで、法人登記の申請書類を自動作成するサービスだ。このサービスにより自動で作成された書類に押印し、収入印紙を貼り、法務局に送付するだけで登記申請が完了する。

司法書士などの専門家に依頼すると、内容や登記の種類によっては数万円程度の費用が必要となってしまうが、AI-CON登記を使えば1万円以内で登記書類の作成が可能だ。そして最短15分で作成可能なのも同サービスの強みとなっている。

1月のリリースの際には、本店移転と増資の2種類でサービスを開始したが、今では作成できる会社の変更登記書類が7種類となった。その7種類は以下のとおりだ。

  • 株式会社の役員変更(新任・辞任)登記

  • 株式会社の本店移転登記

  • 株式会社の募集株式発行(増資)登記

  • 代表取締役の住所変更登記

  • 株式会社の商号変更登記

  • 株式会社の目的変更登記

  • 株式会社の株式分割登記

今回の対応では役員変更のうち「取締役および代表取締役の新任」または「取締役および代表取締役の辞任」のみが対象となっているが、同社は「ニーズの高い登記を中心に、引き続き対応登記のラインナップを増やしていく」と説明した上で、新任と辞任の組み合わせや重任などについても、今後対応を予定していることを明かした。

GVA TECHはAI-CON登記の他にも、AI契約書レビュー「AI-CON」を提供しており、11月15日に開催されたTechCrunch Japan運営のイベントTechCrunch Tokyo 2019では、エンタープライズ向けのAI契約法務サービス「AI-CON Pro」β版のリリースを発表した。2017年1月設立の同社で代表取締役を務めるのは、GVA法律事務所でスタートアップ企業のクライアントに特化し、1000社以上を支援してきた山本俊氏。同社はAI-CON Proの提供を通じて、スタートアップだけでなく、幅広い規模の企業をサポートし、「法務格差のない世の中」の実現を目指している。

AI契約書レビュー「AI-CON」に新機能、NDAを500円で“即時チェック”できるように

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」などを提供するGVA TECH。そんな同社は10月21日、AI-CONをリニューアルし、新機能である「即時チェック」の提供を開始したことを発表した。

2017年1月設立のリーガルテック領域のスタートアップであるGVA TECHの当初のミッションは法務担当者いのいない中小企業やスタートアップにサービスを提供し、法務格差を解消することだった。だが、大手企業からのニーズに気付き、9月には「AI-CON Pro」のα版をリリース。年内には正式な提供を開始する予定だ。

そして、本日発表されたAI-CONの新機能である即時チェックのターゲットは、フリーランサーや企業に所属しながら副業する人。これまで、そのような人たちもAI-CONを利用していたが、「1通あたり数千円〜1万円程度かかる今までのAI-CONでは、フリーランスや副業をされる方にとっては高額だった」(GVA TECH)。

即時チェックを使えば、WordやPDFといった形式の契約書をアップロードするだけで「契約書内のリスク判定」「トラブル事例」「修正例」などのチェック結果を数秒程度でフィードバックしてくれる。

GVA TECHいわく、同社がこれまでに提供していた契約書チェック機能と比較すると、即時チェックでは特にトラブルに繋がりやすい項目を重点にフィードバックする。そうすることで「今まで法務ノウハウやコストが原因で契約書チェックができていなかった中小企業や創業間もないスタートアップ企業、フリーランサー、副業される方の契約書関連業務をサポートする」(GVA TECH)。

即時チェックの提供開始に合わせ、GVA TECHでは「秘密保持契約書(NDA)」を対象に、ワンコイン(税別500円)という低価格でのAIによる契約書チェックを実現した。ワンコインで即時チェック、リスク判定、そして修正例までを提供する。今後はNDAだけでなく、業務委託契約書など他の契約書類型にも対応していく予定だ。

GVA TECH代表取締役の山本俊氏はAI-CONのリニューアル、そして即時チェックの提供開始について後述のように説明した。

「(同社の)メインターゲットは今まで通り、スタートアップや中小企業なのは変わりありませんが、昨今の働き方改革により、エンジニアやデザイナーといったフリーランスに向いている職種だけでなく、企業に勤めながらも副業をする方も増え、個別に相談をもらう機会がでてきました。そのような方にも使っていただきやすいように都度課金かつ500円の安価なサービスにすることにしました。今後も創業の想いである『法務格差を解消する』ために、より多くの方に使っていただきたいです」(山本氏)。

GVA TECHの次の一手は「エンタープライズ向け」、大手の“法務格差解消”目指し「AI-CON Pro」α版リリース

AI契約書レビュー「AI-CON」や法人登記支援サービスの「AI-CON 登記」を提供するGVA TECH。2017年1月設立のLegalTech(リーガルテック)スタートアップである同社の次の一手は「エンタープライズ向け」。GVA TECHは9月2日、エンタープライズ向け“⾃社専⽤”のAI契約法務サービス 「AI-CON Pro」のα版をリリースした。

開発の背景に関して、GVA TECH代表取締役の山本俊氏は「AI-CONはスタートアップ、中小企業向けに提供を想定していたものの、エンタープライズからの問い合わせも非常に多かった」と話す。GVA TECHの理念は「法務格差を解消すること」。今後はスタートアップや中小だけでなく、エンタープライズにおける「法律業務の民主化」もGVA TECHのミッションとなった。

「エンタープライズにおいても法務部と事業部間での法務格差はもちろんのこと、法務部内でも知識や経験の差があるため、法務格差が生じていることがわかった。そこで、大手企業の中でのノウハウや方針を生かしてエンタープライズ企業内での法務格差の解消を行うことにより、法務を企業の中に浸透させることができればと考えている」(山本氏)

山本氏いわく、大手企業からの問い合わせでは「自社の基準を反映させたいという要望が非常に多かった」という。そのため、従来のAI-CONでは「GVA TECHの設定による法務基準」でリスク判定をしていたが、AI-CON Proでは「自社の法務基準で契約書レビューがしたい」という大手企業からの要望に応えた。「顧客企業が使用している契約書の雛形や法務知識をGVA TECHのAIにセットアップすることで、導入企業の法務基準に則した契約書レビューを実現した」そうだ。

「スタートアップや中小企業と違い、内部にノウハウがあるエンタープライズ企業は内部に法務知見があるため、知見を集約して法務部間の法務格差を解消することを当初の目標とし、その後は経営や事業部に一部法務機能を移管することを目指している。また、法務部の時間も効率化や移管によって増加するため、アメリカのように経営や事業に密着した創造的な法務を生み出すことができるようにしたい」(山本氏)

GVA TECHいわく、AI-CON Proでは以下の付加価値を提供することが可能になるという。

  1. 法務担当者の業務効率化および契約書レビュー期間を短縮することができる
  2. 法務担当者の知識をAIにセットアップして自社の法務部門へ共有することで、契約書レビューの精度を標準化し、属人化を防止することができる
  3. 法務部門だけではなく、法務知識が浅い各部門も「AI-CON Pro」を使用することで、契約書をレビューする際の観点がわかる

GVA TECHは年内にはAI-CON Proの正式版をリリースする予定だ。山本氏はこれまでにリリースしてきたプロダクトに関し、次のようにコメントしている。「AI-CONについては多様な企業の利用が増えている。今後はよりスタートアップや中小企業のニーズにマッチするような機能や価格帯により特化していく予定。 AI-CON登記は評判が非常に良く、毎月利用が伸びている。本日も商号変更対応機能が追加されたが、今後も登記事項を随時増加していく予定だ」(山本氏)

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Founder Story #1
GVA TECH
代表取締役
山本 俊
Shun Yamamoto

TechCrunch Japanでは起業家の「原体験」に焦点を当てた、記事と動画のコンテンツからなる「Founder Story」シリーズを展開している。スタートアップ起業家はどのような社会課題を解決していくため、または世の中をどのように変えていくため、「起業」という選択肢を選んだのだろうか。普段のニュース記事とは異なるカタチで、起業家たちの物語を「図鑑」のように記録として残していきたいと思っている。今回の主人公はリーガルテック・スタートアップGVA TECHで代表取締役を務める山本俊氏だ。

山本俊氏
GVA TECH代表取締役・GVA法律事務所 代表弁護士)
  • 1983年 三重県生まれ
  • 2005年 岡山大学法学部卒業
  • 2008年 山梨学院大学法科大学院卒業。同年、司法試験に合格
  • 弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にGVA法律事務所を設立(現在グループで日本法弁護士24名、顧問先250社以上)。
  • 創業時のマネーフォワードやアカツキ等の上場も含め顧問弁護士としてサポートしている。
  • 2017年1月GVA TECH株式会社を創業。AI契約サービス「AI-CON」、契約書自動作成支援「AI-CONドラフト」をはじめとしたリーガルテックを用いたプロダクト開発の指揮を執る。
  • 最近自宅に酸素カプセルを購入。良質な意思決定を効率的に行うためのコンディション作りに励む。
  • 趣味は中学生より続けている麻雀、競馬。
Interviewer:Daisuke Kikuchi
TechCrunch Japan 編集記者
東京生まれで米国カリフォルニア州サンディエゴ育ち。英字新聞を発行する新聞社で政治・社会を担当の記者として活動後、2018年よりTechCrunch Japanに加入。

法務面における「格差の解消」、GVA TECH誕生の秘話

『この契約条件では、明らかにこちらが不利じゃないか』

2011年頃、山本俊氏は企業法務を手がける弁護士として、主にスタートアップ企業の支援を行っていた。大企業との取引が始まり、契約書を取り交わす段階で、山本氏は数多くの「理不尽」を目の当たりにする。大企業側は「これが当たり前ですよ」という顔を見せながら、自社が技術や知的財産を吸い上げる方向へ運ぼうとすることもあった。


山本氏自分が弁護士として付いたことで、契約条件の交渉・修正ができたケースがたくさんあった。そのまま進んだら、スタートアップ企業がやがて行き詰まってしまうような事態を防ぐことができた。そんな役割を担うことで、企業の成長、起業家たちの夢の実現を支援できることに喜びを感じたんです。以来、法務面における『格差の解消』が私のテーマとなりました


山本氏が代表を務めるGVA TECHは、2017年に創業したリーガルテック企業だ。

リーガルテックとは法務面の課題を技術で解決する新分野。AI(人工知能)の進化に伴い、多様なサービスが登場している。

GVA TECHのサービスは主にベンチャー・中小企業が対象。企業同士の契約においては法務知識が必要となるが、ベンチャーでは自社内に専門人材を抱えることができず、専門家に依頼するコストもかけられない。そんなベンチャー・中小企業でも契約業務が円滑に行えるように、AI契約サービス「AI-CON」、契約書自動作成支援「AI-CONドラフト」などを開発・提供している。


山本氏『リーガルテック』というと、大手企業の法務部の業務フローを効率化したり、判例検索をスピードアップしたりと、範囲が広い。その中で私が目指すのは、法律業務をテクノロジーによって『民主化』することです。法務はこれまで、専門知識を持つ一部の人だけが扱えるものでした。けれど法務知識がない人が当たり前に活用できるようになってこそ、リーガルテックが生まれた意味があると思っています

弁護士から起業家へ、AI技術の進展に感じた「可能性」

山本氏が法律分野に目を向けたのは高校3年生の頃。当時は麻雀と競馬に夢中で、将来は「プロ雀士になるかJRA職員になるか」と想像しつつも、大学受験という現実に向き合い、「潰しが利きそう」という理由で法学部に進んだ。


山本氏勉強してみると、面白くて、興味が深まった。高校時代は数学の証明問題などが得意でしたが、それに通じるものがあって。ロジカルに物事を考える部分が性に合っていたんです


学びを深めるため、大学と併行して司法試験予備校に通おうと考えた。ラーメン屋での時給700円のアルバイトで100万円の学費を貯め、予備校入学後はひたすら勉強に打ち込んだ。

大学卒業後は法科大学院に進み、2008年、卒業と同時に司法試験に合格。弁護士として法律事務所に所属し、大手企業の法務を手がけるようになる。

そのかたわら、個人でスタートアップ企業からの依頼も請け負っていた。その案件が増えたことから、2012年に独立し、GVA法律事務所を設立。ベンチャー・スタートアップ企業のクライアントに特化し、1000社以上を支援してきた。


山本氏ビジネスを生み出すことにも興味があったんですよね。弁護士になって上京した頃から、いろいろなビジネスセミナーや交流会に通ううちに、ビジネスの世界に惹かれるようになって。その世界で勝負する人たちを手助けしたいと思ったんです」


とはいえ、自分はあくまでも法律家。ビジネス分野での起業の道は考えていなかった。

しかし2016年、社会に変化の波が訪れる。AIの進展に伴って、金融業界ではフィンテック、農業分野ではアグリテック、教育分野ではエドテックなど、さまざまな分野で「xxTech」が注目を集めるようになった。法律分野も例外ではない。これまでは課題を抱えながらも限界を感じていた法務業務の効率化を、一気に進められると考えた。


山本氏法務業務を効率化できれば、コストも下げられる。つまり、顧問弁護士を雇う余裕がないスタートアップ企業、ひいてはフリーランスや個人事業主まで、幅広い人が法務サービスを活用できるようになる。これは、5年前から課題として意識していた『法務格差』を解消するチャンスだ、と思いました


もともとITを活用したビジネスモデルに興味があり、トレンド情報の収集を続けていたという山本氏。2016年よりプログラミングやAIについて本格的に勉強を開始し、2017年1月、GVA TECHを創業した。

苦労したのは人材採用。何人かと面接したが、「この人なら」という確信が持てず、採用を見送ってきた。サービスの設計ができても実行するエンジニアを獲得できず、外注せざるを得ない状況が約半年続いた。

CTO本田勝寛氏との出会い、GVA TECHの「これから」

しかし創業から8ヵ月後、信頼できる知人からの紹介により、CTOを獲得する。ソーシャルゲーム・アドテク・シェアリングエコノミー領域で実績を持つ本田勝寛氏だ。GVA TECHのプロダクト開発の内製化を実現させた本田氏は、入社翌年、最も輝くCTOを選出する「CTO of the year 2018」のファイナリストとなった。


山本氏私とは逆のタイプです。私はプロダクトを増やそうと、つい突っ走ってしまいそうになるのですが、ほどよくブレーキをかけてくれる。エンジニアの立場から適切な判断をしてくれるんです。トップ2人がブレーキを外した状態で暴走したら、マズイですからね(笑)。冷静さを持ったパートナーを得られてよかったです


創業から2年。現在はエンジニア10名強、リーガルスタッフ10名ほか、デザイナーや管理部門スタッフなど、約30名体制となっている。

2018年には多くのピッチイベントに参加し、手応えを得た。2019年はこれまで開発したプロダクトをブラッシュアップすると同時に、セールス部隊も強化し、ユーザーへ届ける。そしてユーザーからのフィードバックを受け、さらに使いやすく改善していく。


山本氏まずは、法務面においての大企業・中小企業・スタートアップ企業の格差をなくし、どんな企業も手軽に法務サービスを活用できるようにします。そしていずれは、専門知識を持たない個人も、法律をうまく使いこなせる社会になればいい。それを実現できるよう、プロダクトを進化させていきたいと思います」

<取材を終えて>

山本氏の話すとおり、これまで法務は専門知識を持つ一部の人だけが扱えるものだった。AI-CONシリーズは法務格差を解消し、起業家がよりサービス開発に集中できるようにするため、開発された。GVA TECHは1月、法人登記に必要な書類を自動作成する「AI-CON 登記」を新たにリリースしたが、今後は各プロダクトのブラッシュアップに注力するそうだ。その後のAI-CONシリーズの更なる広がりに関しても期待したい。(Daisuke Kikuchi)

【動画】GVA TECH 代表取締役 山本俊氏に聞く20の質問

( 取材・構成:Daisuke Kikuchi / 執筆:青木典子 / 撮影:田中振一 / ディレクション・動画:平泉佑真 )

20の質問に答えて契約書を自動生成、「AI-CON ドラフト」がβ版公開――1.8億円の調達も

AI契約書レビューサービス「AI-CON レビュー」など、リーガルテック領域で複数のプロダクトを展開するGVA TECH。同社は9月3日、DBJキャピタルと西武しんきんキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、約1.8億円を調達したことを明らかにした。

合わせてAIを活用した“契約書の自動生成機能”を備える「AI-CON ドラフト」のβ版の提供を始めたことも発表している。

弁護士が作る“法務格差”を解消するためのプロダクト

4月にも紹介した通りGVA TECHは弁護士の山本俊氏が2017年1月に設立したスタートアップ。同社ではビジネスにおける法務格差の問題を解決するべく、テクノロジーを駆使した複数のプロダクトを開発する。

法務の専門部署がないような企業が契約を交わす場合、通常は時間とコストをかけて弁護士に確認を依頼するか、十分な確認をせずに契約を締結するかのどちらかが多い。特に初期のスタートアップにとっては少しでも余分なコストを削減したいところだけれど、専門家に確認せずに進めた結果「契約書に潜むリスクを見落とし、自社が不利な契約を締結してしまった」なんてこともありうる。

山本氏自身も弁護士として複数の企業をサポートする中で「一方にとって圧倒的に有利な契約内容」になっている契約書を目の当たりにしてきたという。

その解決策としてGVA TECHが4月にリリースしたのが、AIによって契約書のレビューを自動化するAI-CON レビューだ。同サービスでは契約書のファイルをアップロードすると、1営業日以内に条項のリスクを5段階で判定し、修正案も提案。目の前にある契約書が自分にとって有利なのか不利なのか、人間に変わってAIがチェックしてくれる(現在はAIで判定した結果を弁護士が目視でチェックしているという)。

契約書のレビューにAIを活用するプロダクトとしてはつい先日も「LegalForce」を紹介したけれど、細かい機能面やアウトプットの内容には違いがありそうだ。

条項のリスク判定画面

修正案のレコメンド画面

AI-CON レビューは現時点で業務委託契約や秘密保持契約、投資契約など10種類以上の契約書に対応。無料の登録者数は1000社を突破した。

山本氏によると今の所は法務リテラシーが高い層を中心に、大手企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業で使われているそう。今後はレビューの精度を上げることで、法務に関する知見がないユーザーでもより使いやすいサービスにすることが目標だという。

「今のAI-CON レビューは統計情報を元に契約書の内容が有利か不利かを判断しているので、この情報を自社として呑むかどうかを別途判断する必要がある。Google翻訳で英語を訳すのに近いような状態で、それ(機械的に翻訳されたもの)をベースに修正すれば業務の効率化にも繋がるけれど、出てきたものを完全に信じて使うにはまだ精度の改善が必要だ」(山本氏)

今後は「事業性も理解したレビュー」についても実現したいそう。これは利用者の事業内容や会社のフェーズも踏まえて条文の内容チェックや修正案の提案をするもので、「ここまでいくと弁護士のヒアリングにも近く、かなり使えるものになるのではないか」と山本氏は話す。

質問に回答すれば自社に合った契約書が自動生成

そしてGVA TECHがレビュー業務と並行して変えようとしているのが、前工程にあたる契約書の作成業務だ。

同社では6月よりAI-CON ドラフトという名称で主にスタートアップやフリーランス向けに、17種類の契約書テンプレートを無料で公開。今回新たにAIを活用した契約書の自動生成機能を追加して、β版として提供を始める。

「AI-CON ドラフト」利用イメージ

質問に回答していく様子

同サービスは契約条件に関する簡単な質問に20個程度回答することで、条件に合った契約書のテンプレートが自動で生成される仕組み。山本氏いわく「契約書作成時の弁護士によるヒアリングに近い」流れになっていて、「弁護士のヒアリングするパターン(各質問および回答)と条文群を両方機械学習にかけて、最適なものをマッチングするようなイメージ」だという。

「たとえばNDA(秘密保持契約書)の場合でも、入退社に関わるもの、業務提携の前提になるもの、業務委託と一緒に結ぶものなど条件ごとに最適な内容は異なる。質問に対する回答に沿った形でカスタマイズされたNDAのフォーマットが作られるのが特徴だ」(山本氏)

自動生成機能についてはリリース時点で対応しているのは秘密保持契約書のみ。9月中旬にはシステム開発契約・保守契約、アドバイザリー・コンサルティング契約、コンテンツ制作契約などの業務委託契約全般に対応する予定で、年内には販売代理店契約書、売買契約書など約20種類の契約書をカバーする計画だ。

ビジネスモデルとしては作成する契約書1通ごとに料金が発生する仕組みを検討しているが、まずはβ版として利用者あたり1通のみ無料で提供する。

「意外と自分の取引実態に合った契約書を持っている人は少ない。たとえば契約書の雛形をネットでダウンロードしていたり、自分の手元にないので相手方にもらっていたような場合、自分にとって不利な内容だと知らずに毎回使い続けてしまっているようなこともある。特にそういった人たちが、少しでも自社の取引実態に合った意味のある契約書を使えるようにしたい」(山本氏)

まだ限定的ではあるものの、これまで手がけていた契約書のレビュー業務に加えてドラフトの作成業務にも対応範囲を広げたAI-CON。契約書に関する業務は大きく(1)ドラフト作成(2)レビュー(3)交渉(4)契約締結(5)管理というプロセスに分かれるが、「AI-CONでは合意形成までのプロセスを効率化したい」という思いがあるそうで、今後も「AI-CON ○○」のように同シリーズのプロダクトが増えていくようだ。

GVA TECHではこれまでエンジェル投資家とチームメンバーから約6500万円を集めているが、VCからの資金調達は今回が初めてとなる。

調達した資金は主にエンジニアや法務人材などの採用とプロダクト強化に用いる計画。まずは2019年の春頃を目処にAI-CONシリーズ全体での登録者数5000社の達成を目指すという。