出張手配・管理サービスのAIトラベルが2億円の資金調達、JR東との連携も発表

左から、AIトラベル取締役の本間卓哉氏、代表取締役の村田佑介氏、取締役の山口耕司氏、取締役の佐藤尚平氏

クラウド出張サービス「AI Travel」を開発し運営するAIトラベルは8月5日、ジェネシア・ベンチャーズ、キャナルベンチャーズ、AGキャピタル、キャナルベンチャーズ、JR東日本スタートアップ、ジェネシア・ベンチャーズ、横浜キャピタル、その他事業会社からの第三者割当増資、日本政策金融公庫等金融機関からの普通融資、ならびにその他メガバンクからの当座貸越により総額2億円の資金調達を実施したことを明かした。

「AI Travel」は、SaaS型の出張手配および管理(Business Travel Management・BTM)のシステムだ。出張者は、国内および海外への出張時に、出発地と目的地、行き帰りの日時と、大体の宿泊予算を入力するだけで、AIが最適なホテル、飛行機、新幹線を検索し、そのまま予約ができる。一人から複数人の交通手段、そして宿泊先をまとめて一度に手配できることも特徴的だ。

経理や総務担当者には、出張者の手配と同時に出張申請、出張状況、出張後の経費精算のデータが見えるため、出張コスト管理の簡素化、そして最適化などのメリットがある。まさに、出張に関わる「業務の手間」と「出張コスト」の削減を目的としたプロダクトとなっていると言えるだろう。同社いわく、AI Travelを導入することで「約3割の出張経費削減」を実現したケースも出てきているそうだ。

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AIトラベルで代表取締役を務める村田佑介氏いわく、同社は今後、調達した資金をもとに、レガシーなサービスと比較するとデータドリブンなAI Travelの開発をさらに進めていく。その1つが、レコメンド精度の強化だ。「例えば、リストの一番上に表示しているホテルが本当に選ばれていれば正解。上から5番目のものが選ばれているようであれば、何が差分だったのかを繰り返し学習していく。そうすることで、ユーザーの見て回る時間を可能な限り短くしていきたい」(村田氏)

また、レコメンドに加えて、「出張経費の適正化」に関してもより精度を上げていく。他社平均よりも出張費が高かった場合、例えば「より早く予約を済ませる」必要があったのか、または「出張者が高めの値段設定のホテルをあえて選んでいた」のか、など、様々な要素を可視化し、改善に繋がっていくようにしていく。

AIトラベルは6月、クラウド会計ソフト「freee」とシステム連携を行う連携アプリを「freeeアプリストア」にて提供開始したことを発表している。村田氏は、「AI Travelでは出張を扱う。そのため、経費清算や会計とは切っても切れない存在だ」と話し、導入企業がもともと使っていたようなサービスとの連携は「大きな方向性としてある」と説明した。

AIトラベルは8月5日、JR東日本のCVC、JR東日本スタートアップとの資本業務提携も併せて発表している。AIトラベルは先月の上旬、びゅうトラベルサービスの提供する「JR東日本ダイナミックレールパック」、そしてJR東日本レンタリースの提供する「JR 駅レンタカー」との連携を開始した。

同社は上記の2つのサービスの取り扱いを皮切りに、JR東日本グループとのチケット自動手配やチケットレス、そして「シームレスな移動社会の実現」に向けた開発連携を強化していく。

AIトラベルで取締役CMOを務める本間卓哉氏は、同社は「あらゆる交通機関やMaaSをAI Travel内で一気通貫で予約、手配ができる世界を目指している」と話していたが、その世界観を目指す上でJR東との連携は大きな一歩だと言えるだろう。

AIトラベルでは、2017年8月より法人向けにサービスを開始しているが、今年の7月までには200社が導入し、1万人ものユーザーに利用されたという。

楽天出身・出張手配サービスのAIトラベルが4000万円を資金調達、法人向けサービスも開始

出張が決まったとき、地図アプリ、乗換案内や航空会社サイトの時刻表、ホテルや航空券の予約サイトなどを駆使してプランを決め、交通手段を確保し、最適な場所と価格のホテルを予約するのは、楽しいという人もいるかもしれないが、なかなか手間がかかることは間違いない。「AI Travel」は、国内外への出張時に、出発地と目的地、行き帰りの日時と、大体の宿泊予算を入力するだけで、AIが最適なホテル・飛行機・新幹線を調べてくれて、そのまま予約までできる出張手配・予約・管理サービスだ。

このサービスを提供するAIトラベルは8月23日、旅費の申請・精算機能や、部門やプロジェクトごとの経費の一元管理・分析機能を追加した、AI Travelの法人向けサービスの提供を発表、申し込み受付を開始した。法人向けサービスでは、海外出張時のビザの手配代行やリスク管理のサポート、主要な会計ソフトへのデータ入力などにも対応するという。AIトラベルは法人サービスでは、出張者の手配効率の向上だけでなく、総務・経理の業務の自動化・効率化による管理コストの削減、出張経費の可視化も図れる。「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでファイナリストにも選ばれている

また同日、AIトラベルはプレシリーズAラウンドとして、ジェネシアベンチャーズベンチャーユナイテッド、TLMを引受先とした総額約4000万円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。

サービス開始当初から、出張の多いビジネスマンにとっての利便性もうっていたAI Travel。だが実際にユーザーへのヒアリングを進めていくと、「予約のプロセスが楽になっても、出張者の多くは(会社のルール上の)申請フローにおける雑務に対してまだ不満を強く持っているということが分かってきた」(AIトラベル代表取締役の藤原由翼氏)という。また同時に、出張者を管理する総務・経理部門にも課題感があった。

「上司からは業務効率の改善やコスト削減を依頼され、現場からは面倒なプロセスに対する不満が出たり、出張報告書の依頼や経費精算に関するやりとりでのストレスなどがあったりする。もっと効率的にできるはず…と思っても最適なサービスが分からないという意見が多かった」(藤原氏)

実際藤原氏が法人向けの旅行サービスを調査したところ、観光向けサイトに多少の機能が追加されただけ、もしくは逆に多大なコストのかかる大規模なシステムしかなかったのだという。

「米国ではトラベルマネージャーという出張管理を専門とした役職があり、インハウスで雇っている例が多いことも分かりました。既存のプレイヤーのように旅行代理店として予約を増やすことを目的とせず、企業の出張を(まるで優秀なトラベルマネージャーがいるかのように)適切にマネジメントできるサービスを目指しています」(藤原氏)。トラベルマネージャーは、実際経費削減や業務改善といった観点まで含めて出張を管理する。AI Travelも単なる代理店機能でなく、そこまでの機能を提供したいという。すでに、月間50〜100件程度の出張が発生する会社を中心に試験的な導入も行っている。

AIトラベル代表の藤原氏は楽天出身で、インキュベイト・ファンドのデザインフェローを務めた後、2014年に起業した。今回の調達資金により、サービス開発と運営体制をより一層強化する、としている。