AI・IoT・ロボット技術で睡眠の質に合わせ変形するベッド開発のAx Robotixが約1億円を調達

AI・IoT・ロボット技術で睡眠の質に合わせ変形するベッド開発のAx Robotixが約1億円を調達

世界初の変形し成長するベッド「Bexx」を開発するAx Robotixは11月24日、第三者割当増資による約1億円の資金調達を発表した。引受先はライフタイムベンチャーズ、インキュベイトファンド。今回の資金調達により、2021年末にローンチするロボットベッド「Bexx」に必要な開発メンバーの採用を強化する。

一般に、ベッド(マットレス)は購入後劣化していき、高機能化することはない。これに対してAx Robotixは、ベッドをロボット化(自在に変形可能)することで、使うほどユーザーの日々の睡眠の質、体調・体重増減などのデータを学習し最適化されていくサービスを提供する。横寝・仰向け寝、入眠時・熟睡時それぞれに最適と判断した形状に変形し、睡眠の質を従来の常識以上に引き上げるという。

同社は、「もっと精力的に働きたいのにコンディションの良し悪しに振り回されて悔しい思いをしている人」を救いたいとの思いから、睡眠の質を計測するIotセンサーと専用アプリを利用し、常に最適な形状を取り続け、毎日の睡眠の質を観測・向上させるソリューションを提供するとしている。これにより、人類の進歩を牽引するために寝る人すべてのパフォーマンスをさらに一段引き上げ、社会の発展に貢献していく。

AI・IoT・ロボット技術で睡眠の質に合わせ変形するベッド開発のAx Robotixが約1億円を調達

2019年4月創業のAx Robotixは、「快眠のその先へ」をコンセプトに、人類の進歩を加速させるロボットベッドを開発するエンジニア集団。開発中のベッド「Bexx」は、新機軸の変形構造とビッグデータを活用した睡眠ケアで、ひとりひとりの理想の睡眠を実現するまったく新しいタイプの寝具という。疲労回復のさらに先、人間の活力を呼び起こす眠りを目指している。

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ソニーがAIロボティクス領域のドローンプロジェクト「Airpeak」始動、2021年春に事業開始

ソニーがAIロボティクス領域のドローンプロジェクト「Airpeak」始動、2021年春に事業開始

ソニーは11月9日、AIロボティクス領域における、ドローンに関する新プロジェクト「Airpeak」(エアピーク)の開始を発表した。2021年春の事業開始に向けて準備を進め、近日中に、同活動に参画を希望するプロフェッショナルサポーターの募集を開始する予定。

同プロジェクト情報は「Airpeakウェブサイト」で随時アップデート予定。

同社は、イメージング&センシング技術や、リアリティ、リアルタイム、リモートの「3Rテクノロジー」を活用し、ドローンのさらなる発展や最高峰の価値創出に貢献するという志を込め、ブランドを「Airpeak」(エアピーク)と命名したという。

Airpeakは、映像クリエイターの創造力を余すことなく支援し、エンタテインメントのさらなる発展に加え、各種産業においても一層の効率化や省力化に寄与することを目指す。

また、これまでドローンの活用が困難だった環境においても最高水準の安全性、信頼性により安心して利用できるよう、プロジェクトを推進する。

ソニーは今後、プロジェクト関連情報を継続的に発信するとともに、Airpeakの体験機会を通じてドローンユーザーからフィードバックを得る共創活動を重ね、2021年春の事業開始に向けて準備を進める。また近日中に、同活動に参画を希望するプロフェッショナルサポーターの募集を開始する予定。
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カテゴリー: ドローン
タグ: AirpeakSony / ソニー(企業)日本

台湾のスタートアップDeep 01がAI医療画像診断ソフトウェアで約3億円を調達

医師が脳のCTスキャンをより迅速に解釈するためのソフトウェアを開発する台湾のスタートアップであるDeep01は、米国時間6月22日に270万ドル(約2億9000万円)の資金調達を行ったと発表した。資金調達を主導したのはPCメーカーのASUSTek(エイスーステック)だ。

Deep01の製品は台湾と米国食品医薬品局(FDA)の両方から認可を得ており、同社は2月に約70万ドル(約7500万円)相当の最初の注文を受けていた。

他の投資家には、台湾の研究機関である工業技術研究院(ITRI)と情報産業研究所(III)が共同出資するデジタル・エコノミー・ファンドと、BEキャピタルが含まれる。

Deep01のソフトウェアは現在、台湾の2つの医療センターと4つの病院で使用されており、すでに2000件以上の脳スキャンに役立っている。

Deep01は救急科向けに開発されたソフトウェアで、急性脳内出血を93%〜95%の精度で30秒以内に検出できるという。

Deep01は創業者かつCEOのDavid Chou(ダビッド・チョウ)氏によって、2016年に設立された。チョウ氏はカーネギーメロン大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得し、2018年から2019年の間にハーバード大学のマサチューセッツ総合病院の研究員として勤務していた。

ASUSのコーポレートバイスプレジデントかつAIoTビジネスグループの共同責任者を務めるAlbert Chang(アルバート・チャン)氏は声明にて「Deep 01はAI医療分野のリーディングスタートアップだ。今回のコラボレーションはヘルステック分野において有望である」と述べている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

中小企業へ「はやい・やすい・巧いAI」の提供目指すフツパーが数千万円調達

中小企業向けのエッジAIソリューションを手がけるフツパーは5月21日、ANRIから数千万円規模の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社が現在取り組んでいるのは、中小企業の課題を解決するための画像認識AIサービスだ。主なユースケースは食品工場や部品工場における検品業務など、従来は人が目視で行なっていた作業の自動化。工場の現場にAIを組み込んだデバイスを設置し、そのデバイス上で画像認識処理を実行する。

これはエッジAI全般に言える話ではあるけれど、クラウド側ではなくエッジデバイス側で処理を行うことで通信コストを減らせるほか、高速なデータ処理を実現できる。またネットワークを整備するための初期工事なども必要ないため、導入までのスピードも早い。

フツパーでは既存のハードウェアやAIモデルなどを組み合わせ、こうしたエッジAIの恩恵を中小企業が享受できるような仕組みを開発している。たとえばハードウェアはNVIDIA製のもの、AIモデルについてはGoogleやFacebookが手がけるオープンソースのフレームワークを採用。すでに存在する高品質なものを取り入れながら顧客のニーズに合わせてカスタマイズしたモデルを生成し、それを自社の圧縮技術によって手の平サイズのデバイスに搭載して、すぐに使える形で顧客へ届ける。

コンセプトは“はやい・やすい・巧い”AIだ。

「通常、工場の現場などでAIを活用したプロジェクトを始めるとなると数ヶ月かかることも珍しくなかった。自分たちの場合は小型のデバイスを現場にポン付けで導入できるので、すぐにスタートできる。初期投資も少なく手軽に始められるほか、(全てをゼロから自分たちで開発するのではなく)質の高い技術を組み合わせることで安くてもいいものを実現できる」(フツパー代表取締役CEOの大西洋氏)

フツパーは2020年4月1日に広島大学出身の3人が立ち上げた。大西氏は大学卒業後に電子部品メーカーを経て、工場向けのSaaSを展開するAI/IoTベンチャーで営業やPMを経験。取締役兼COOの黒瀬康太氏は日本IBMで多数のAI導入案件に携わった。中小企業向けのAIソリューションをテーマに起業を決めたのは、前職時代に感じた課題感も大きく影響しているという。

「九州の拠点で働いていたので、現地の中小企業の課題を聞く機会が頻繁にあった。(人手不足などもあり)AIを用いた解決策に興味を示す人は多かったものの、大手企業向けのサービスではどうしても金額感がフィットせず、本当に必要としている人たちにサービスが届きづらい状況だった」(黒瀬氏)

特に地方の場合はAIの導入支援をサポートするパートナー企業が少ないため、実際に導入するまでの工程を伴走できるのは大手企業くらいしかいないそう。その結果「ミニマムで数千万円から」といったように料金がエンタープライズ向けの価格帯となってしまい、AIの導入を断念する中小企業も多い。

フツパーでは上述した通り既存のものを組み合わせることでデバイス、モデル作成、実装込みで数百万円前半から導入できる仕組みを構築。判定結果を通知するSaaS型のクラウドサービスも月額数万円から使えるようにした。

「モデルを作る技術などで勝負するというのではなく、導入までの手軽さで勝負をしていきたい。(判定結果を)見れる画面までを用意した上で、デバイスとセットでAIを1日程度で提供でき、なおかつ従来のものと比べて料金的にも安ければ十分にチャンスはあると考えている」(大西氏)

初期は食品系の製造業をメインターゲットとして事業を展開する計画。フツパーが大阪に本拠地を構えていることもあり、まずは関西エリアを中心に事業を広げていく予定で、現在は数社と現場への導入に向けた打ち合わせを進めている状況だ。

直近では新型コロナウイルスの影響も受けて、狭い空間に人員が密集するリスクを出来るだけ避けたいというニーズも工場では生まれているそう。そのような要望への対応策としてもAIソリューションの提供を進めていきたいとのことだった。

子供の在宅学習を助けるグーグル謹製Android用英語読み上げアプリ「Read Along」

Google(グーグル)からRead Alongがリリースされた。これは無料のAndroid用教育アプリで、小学生に英語の読み方を教えるのを助ける。新型コロナウイルス(COVID-19)によるリモート学習が続く中、子どもたちの興味を失わせないことに注意が払われている。

Read Alongは2019年にGoogleがインドでリリースしたBoloをベースにしている。これは英語とヒンディー語で短いストーリーを読み上げてくれる教育アプリだった。Read Alongはこのアップデート版だが、インドで話される言語に加えてスペイン語とポルトガル語が追加されている。

Bolo同様、Read AlongもGoogleのAIによる音声認識やテキスト読み上げ機能を利用している。アプリにはDiyaという名前のAIアシスタントが組み込まれている。子供たちがテキストを音読すると、アプリは正しく読めているかどうか判断し、つかえたり読み方がわからなかったりするとDiyaが手助けしたり激励したりしてくれる。

子供たちが進歩するとミニ単語ゲームがプレイでき、アプリ内で賞をもらうことができる。

Googleはこのアプリが子供たちのプライバシーに留意し、モバイルやWi-Fiでネットワークに接続している必要がないことを強調している。入力された読み上げ音声はデバイス内でリアルタイムで処理される。Googleその他の外部のサーバーと通信する必要はなく、外部に保存されることも一切ない。Googleによれば、他のアプリでみられるような品質改善のために音声データを利用することもしていないという。

広告やアプリ内課金もなく、保護者はインターネット経由でGoogleから追加ストーリーをダウンロードできるがこれも無料だ。

サービスのスタート時点でRead Alongは約500本のストーリーをラインナップしている。このカタログには随時新しいストーリーが追加されていく。

Googleは「2019年3月にBoloとして発表して以来、保護者からのフィードバックが好評であることに後押しされてアプリを新しい市場に向けて拡張することを決めた」と述べている。インドで話されるヒンディー系諸語ではBoloは「話す」という意味だが、Googleはアプリを世界に広く展開するに際してRead Alongというアプリ名を選んだ。

新アプリではライブラリが拡大され、言語ゲームやその他の機能が追加、改善されている。フィリピン、コロンビア、デンマーク以外の世界各国(日本を含む)から利用可能だ。ベータ版は英語、スペイン語、ポルトガル語、ヒンディー語、マラーティー語、ベンガル語、タミル語、テルグ語、ウルドゥー語をサポートする。

アプリは5歳以上の子供向けでGoogle Playから無料でダウンロードできる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

AIとクラウドソーシングでコンテンツ監視のコストを減らす「Posmoni」公開

コミュニティサービスの成長には不適切なコンテンツに対応する仕組みが不可欠だ。

サービスのネットワークが広がり多様なユーザーが参加するようになればなるほど、他のユーザーを不快にする投稿や言動が増えるリスクも高まる。運営側がそのような投稿に素早く対処できることが、居心地のいいコミュニティを作るための鍵だ。

実際SNSやソーシャルゲームを含むCGMの運営元の中にはコンテンツの監視や管理にかなり気を配り、多くの予算を投じている企業も多い。ただ全ての投稿を人の目で監視するとなると膨大なリソースと予算が必要で、大きな負担にもなりうる。

そんなコンテンツ監視の課題に対してAIとクラウドソーシングを組み合わせた解決策を打ち出しているのが2013年創業のスタートアップ・ナナメウエだ。同社は5月8日、新たにコンテンツ監視サービス「Posmoni」の提供を開始したことを明らかにした。

Posmoniはもともとナナメウエ自身が自社の課題を解決するために開発した仕組みが基になっている。

現在1日約400万件のコンテンツが投稿される匿名性SNS「Yay(イェイ)」を運営する同社は、2015年に学生限定の匿名SNS「ひま部」を公開して以来、数年に渡ってコミュニティサービスを手がけてきた。

徐々にサービスが拡大していく中でナナメウエが直面したのが冒頭でも触れたコンテンツ監視の問題だ。特に同社のサービスは匿名性ということもあり、良くも悪くも幅広いタイプのコンテンツが投稿されやすい。そこには暴言や嫌がらせのようなものも含まれる。

「Posmoniを作ったのは、コンテンツの監視管理がめちゃくちゃ大変だったから。これまで先輩のSNS企業がどうしていたかというと、地方などにも拠点を設けて、大量に人を雇い人力ベースで対応をすることが多かった。自分たちも最初はタイなどにも拠点を開設し自社でやっていたものの、コンテンツ数が増加するに伴い人だけで対応するのは負担が大きくなってきた。そこでデータがある程度集まってきたこともあり、監視管理用のAIを作ることで一部の業務を自動化できないかと考えたのが最初のきっかけだ」(ナナメウエ代表取締役の石濵嵩博氏)

ナナメウエでは自社サービスに投稿されたデータを活用して開発したAIですべての監視対象をフィルタリングし、そこでは判別できなかったもののみを人力でチェックする仕組みを構築。それによって人だけで監視していた時に比べ、人的なコストを10分の1程度まで削減することに成功した。

今回ローンチしたPosmoniはその仕組みをプロダクト化したもの。同じような課題を抱える外部の企業がコンテンツ監視にかかる負担を減らせるようにサポートする。

Posmoniの場合はナナメウエが自社SNSの運営を通じて培ってきた経験を活用できるので、導入企業側が十分なデータがなくても投稿監視や暴言検知をある程度自動化することが可能。AIで監視が難しい部分はクラウドソーシングを取り入れて人の目でチェックしつつ、その結果をAIにフィードバックして再学習を進めていくことで検知精度自体も高めていける。

クラウドソーシングについてはナナメウエのネットワークに加えて、グローバルでBPO事業を手がける企業とパートナーシップを結び人材を供給する。料金体系は監視対象のコンテンツ数に応じた従量課金型で、人的な部分を自社で賄いたいという企業はAIシステムのみを使うこともできるという(1件あたり0.5円から)。

ナナメウエではすでに国内の大手ゲーム会社とPosmoniを使った取り組みをスタートしているとのこと。オンラインゲームで使われる暴言などは基本的にSNSで使われているものと同じため、新しくデータを用意しなくてもPosmoniを使って十分に検知できるそうだ。

コンテンツのモニタリングをAIで自動化しようというプロダクトや試み自体は以前から存在していたが、石濵氏によると精度面が大きなネックになっていた。Posmoniの1つのポイントは上述した通りナナメウエ自身がコミュニティサービスを運営していること。ひま部やYayで蓄積してきたデータ、知見を基にAIを開発できるのは強みになる。

また全てをAIで自動化するのではなく、そこで対応できないものについてもカバーできるクラウドソーシングの仕組みをパッケージとして備えているのも同サービスの特徴だ。石濵氏はAIとクラウドソーシングを組み合わせたハイブリッド型こそがAIシステム開発の勝ち筋になると考えているようで、今後ナナメウエではこのモデルを用いて企業のAIサービス開発をサポートする事業にも力を入れていく。

Posmoniについてもまずはコンテンツ監視からスタートし、少しずつ対応できる領域を広げていく計画。直近では新型コロナウイルスの影響でスタッフ同士の接触機会を減らしながらコンテンツを監視できるソリューションへのニーズが高まっているため、そういった要望にも応えていきたいという。

ナナメウエは2013年の創業以来、コンシューマー向けのものを中心に複数のプロダクトを開発してきたスタートアップ。これまでにSkyland VenturesやEast Venturesのほか、複数のエンジェル投資家から資金調達を実施している。

ビズリーチと立教大がAIの社会実装に向けてタッグ、「求職者の価値観」の発見目指す

Visionalグループのビズリーチ立教大学大学院人工知能科学研究科は4月27日、AIの社会実装を目的とした共同研究協定を締結することを明らかにした。第1弾として転職プラットフォーム「ビズリーチ」のデータを活用し、AIで「人のキャリアにおける価値観」を発見する取り組みを行う方針。共同研究は4月30日からスタートする。

本人が自覚していないような価値観をAIで可視化

ビズリーチが力を入れている採用領域は直近の新型コロナウイルスの影響もあって急速にデジタル化が進みつつある。言わば「採用のDX」が加速する中で、同社としても「テックカンパニーとしてどのような形で新しいテクノロジーを取り入れ、サービスを提供していけるのかが1つの重要テーマになっている」(ビズリーチ執行役員CSOの枝廣憲氏)という。

ビズリーチでは2016年から社内にAIグループ(旧AI室)を設け、自社サービス内でAIテクノロジーを活用していくための研究開発を続けてきた。今回は2020年4月に日本初のAIに特化した大学院「人工知能科学研究科」を開設した立教大学と連携することで、高度なAIの社会実装を加速させるのが狙いだ。

両者が第1弾の研究テーマに選んだのは、AIによって「本人が自覚していないようなキャリアにおける価値観」を発見すること。AIで人間の感情を推定するような試みだと解釈してもいいだろう。

キャリアを選択する際の重要指標としては定量的に判断できる項目(年収、業種・職種、勤務条件など)だけでなく、仕事のやりがいや価値観など個人ごとに持つ定性的な項目もある。共同研究ではこれまで定量的に分析するのが難しかった個人の価値観を、立教大が注力する深層学習の先端研究を活用してAIで解析することを目指すという。

「本人がこの条件を気にしないと思っていても、実は隠れた行動の中でちょっとしたサインが出ていたりすることがある。他のユーザーや企業のデータなどを複合的に分析していくことで、『もしかしたらあなたはこんなことが好きなのでは?』といった新たな気づきを発見できるかもしれない」(枝廣氏)

立教大学大学院 人工知能科学研究科委員長の内山泰伸氏によると、具体的にはGAN(敵対的生成ネットワーク)を使った新しいレコメンドの仕組みを作る計画だ。僕自身はGANと言えば架空の人物画像の生成などディープフェイク分野に使われているイメージが強かったけれど、内山氏の話ではやり方次第でレコメンドエンジンにも使えるそう。「世界的に見ても成果と呼ばれるものは片手で数えられるほどで、まだまだ研究が進んでいない領域」であり、そこに本気でチャレンジするという。

両者としては研究成果をビズリーチ内で活用していくのはもちろん、論文として発表することも視野に入れている。論文については「当然やるべきだと思っているし、やるからには世界レベルで注目される質のものを目指していく」(内山氏)。

研究機関の先端AI技術をビジネスの現場で有効活用へ

今回の共同研究では、AIの早期社会実装を実現する上で「大量かつ高品質なデータの収集と蓄積の基盤を保有していること」と「最先端のAI研究人材および、HR領域の知見を持つAIエンジニアがいること」が大きなポイントになる。

ビズリーチでは10年以上にわたって運営を続ける転職プラットフォーム・ビズリーチのデータを安全かつ円滑に利用できるように、個人情報の仮名化やノイズ除去を行い、高品質なデータ基盤を構築してきた。この膨大なデータがあるからこそ「ビッグデータ時代に対応したAIを作れる」という。

共同研究では最初に仮説の立案やデータセットの作成を両者で行うが、その際には公開情報やサービスデータから統計的に生成されるダミーデータを用いる。それを基に理論の骨子(アルゴリズム)を作成する部分を立教大側が担当し、そこで生まれたアルゴリズムを実際のサービスに統合する部分はビズリーチのAIグループが担う(まずは匿名化されたユーザーの行動履歴を使いながら実験、検証する)。

この仕組みによって立教大とビズリーチ間においては、ユーザーから取得した個人情報を含むデータの受け渡しを一切せずに研究開発が進められるわけだ。そこで重要なのは両者に高度なAI人材がいることだという。

「ビズリーチ側にAIの研究者がいることで、アルゴリズムを開発した後のリアルデータに適合する工程を立教大抜きで実現できる。これが企業側に研究者がいない場合だと、革新的なアルゴリズムを開発できたとしても、活用するまでのハードルが高く実現に至らない場合もある」(内山氏)

ビズリーチは従業員の約3割が自社サービスのプロダクト開発を担うエンジニアであり、AIグループの中にはコンピュータサイエンスや理学分野の博士号取得者も複数名在籍している。一方の立教大学大学院人工知能科学研究科も今年4月に開設されたばかりではあるものの、AIに関するさまざまな分野で強みを持つ研究者が集まる。

「(立教大は)技術力の観点で日本トップクラスであることに加え、スピード感やベンチャースピリットを持つ『学術界におけるベンチャー企業のような組織』であることが魅力だった。自分たち自身もAIグループを通じて研究開発を進めてきたからこそ、コラボレーションすることで新たな社会価値を生み出せるのではないか。それを期待した産学連携のプロジェクトだ」(枝廣氏)

「ビズリーチの中にはHR分野のドメイン知識とAIの知識をどちらも兼ね備えているエンジニアがいることが大きい。ビジネスにAIを社会実装するには現場の知見が必要で、自分たちだけではどうしようもない部分もある。今回の取り組みは研究費をもらうための共同研究などではなく、研究者同士の対等なコラボレーション。こういう形だからこそ有意義な価値を生み出せると思っているので、(研究機関と企業による)共同研究の良い事例を作っていきたい」(内山氏)

ファイザーの元科学主任が設立したUnlearn.AIは「デジタルの双子」で臨床試験の高速化と改善を目指す

医療研究の分野では、双子は昔から重要な役割を果たしてきた。特に臨床試験では、遺伝的に近い2人の片方に処置を施すという方法で、双子は治療の有効性の測定に寄与している。米国時間4月20日、Pfizer(ファイザー)の元科学主任が設立し、AIを使ってこのコンセプトをデジタル化する方法を開発したスタートアップが、その研究をさらに進めるための資金を得たと発表した。臨床試験の検査に使用する患者の「デジタルツイン(デジタル上の双子)」のプロファイルを構築する機械学習プラットフォームUnlearn.AI(アンラーンAI)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した。

このラウンドは8VCが主導し、前回の投資企業であるDCVC、DCVC Bio、Mubadala Capital Venturesも参加している。

DiGenesis(ダイジェネシス)というこのスタートアップのプラットフォームは、当初は神経疾患、具体的にはアルツハイマー病と多発性硬化症に適用するためのものだったのだが、これらは有効な治療方法がいまだ確立されておらず、既に発症している患者を対象にした臨床試験の実施が非常に難しい。

Unlearn.AIは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック関連の医療にはほとんど関わっていないものの、臨床試験の改善がなぜ重要なのかを知るいい機会を与えてくれた。この新型ウイルスに対抗するワクチンや治療法をみんなが緊急に競い合う中で、臨床試験のより効果的なアプローチの必要性が注目されている。そこはAIが力を発揮できる分野だ。

Unlearnは、現在のビジネスにおける提携先を公表していない。また実践的な臨床試験を、実際にどこまで実現できているのかも不明だ。今回の資金は、商業的展開に少しだけ近づくためのものと思われる。

「今回の資金調達は、私たちの成長にとって重要な布石だ。既にデジタルツインの研究を開始し、強力なエビデンスでその価値を実証し、臨床試験での成功の可能性を高めつつある規制当局との協力関係を大幅に前進させる力となります」とUnlearn.AIの創設者でCEOのCharles K. Fisher(チャールズ・K・フィッシャー)博士は声明の中で述べている。

「臨床試験は非常に困難な局面にあり、ここ数週間は深刻化する一方です。未来志向の投資家や提携企業の支援をいただき、極めて有能な私たちの人材をさらに成長させ、世界初のデジタルツインのアプローチを支える科学技術をさらに発展させられることを、とてもうれしく思っています」。

フィッシャー博士は、まさにテクノロジーと医療研究の集合体の中を歩んできた。製薬大手のファイザーで科学主任を勤めた経歴に加え、Leap Motion(リープモーション)で働いていたこともある。それ以前には、長年にわたり学術界にて生物物理学の勉強と研究を重ねていた。

Unlearnは昔ながらの機械学習の課題のひとつとして、いわゆるデジタルツインを構築するというアイデアに取り組んでいる。そこでは「デジタルツインを生み出すための疾病専用の機械学習モデルと仮想診療記録を構築するための、患者数万人分もの臨床試験のデータセット」が使われている。

これらは、単なる患者プロファイルとは異なる。デモグラフィック、臨床検査、生体指標に従って人と人とをマッチングさせてある。臨床試験と検査に必要な類似の人間、できれば双子を探す手間を、AIベースの双子を作ることで削減したいという考えに基づくものだ。

Unlearnは、2017年からこのプラットフォームの開発に取り組んできたが、双子(そして医療研究において遺伝子構造が類似した1組の人たち)を使った病理学や治療法の研究は、もう数十年前から始まっている。面白いことに、ある大人気の新型コロナウイルス監視アプリは、ロンドンのキングズ・カレッジ病院と、アメリカのスタフォード大学とマサチューセッツ総合病院が共同で行った長期にわたる双子の調査から生まれている

AIで「人」を作り出し、薬の有効性をテストする研究が広がっているが、それはコンピューターとアルゴリズムを使って薬品の組み合わや治療法を割り出しテストするという、さらに大きな課題へとつながる。以前は、長い時間と大きな資金を費やし、手で行ってきたであろうことだ(医療とは別の応用例として、製品開発がある。一般消費財のメーカーは、新しい石鹸やさまざまな製品の調合をAIプラットフォームで行っている)。

「Unlearnによるデジタルツインの先駆的な利用により、プラシーボを与えられる患者の数を減らすことができ、臨床試験にかかる全体的な時間も短縮できます」と8VCのプリンシパルFrancisco Gimenez(フランシスコ・ヒメネス)博士は声明の中で述べている。「医療とテクノロジーの交差点の投資家として、私たちは、最先端のコンピューター技術と革新的なビジネスモデルを組み合わせて医療の有意義な改善に取り組む企業に情熱を注いでいます。8VCはUnlearnをパートナーに迎え、無作為化臨床試験以来となる薬品の認可プロセスへの大きな挑戦に乗り出せたことで、大変に興奮しています」。ヒメネス氏は今回のラウンドにより、Unlearnの役員に加わった。

画像クレジット: Emsi Production Flickr under a CC BY 2.0 license.

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

“AIを守るセキュリティ”開発へ、研究者4人が創業したChillStackが3000万円を調達

AIを活用したセキュリティシステムの研究開発に取り組むChillStackは3月31日、DEEPCOREを引受先とする第三者割当増資により3000万円を調達したことを明らかにした。

ChillStackは2018年11月に代表取締役CEOの伊東道明氏ら4人の研究者が立ち上げたスタートアップだ。4人は法政大学在学中に同じ研究室でAIの研究を行なっていた仲間で、全員が国際学会で論文を発表した経験を持つ。

中でも代表の伊東氏は学生時代からAI×セキュリティ分野の研究に従事。国際学会での最優秀論文賞の受賞経験があり、その反響で様々な企業からセキュリティシステムに関する相談を受けることもあったそう。次第に「1つの会社に入ってシステムを作るのではなく、いろいろな会社に技術を提供したい」という思いが強くなり、ChillStackの創業を決めた。

AI活用でゲームやアプリの不正利用を自動検知

現在ChillStackでは大きく2つの事業を展開している。1つは「AI“で”守る」プロジェクトだ。Webアプリやゲームなどにおける不正利用をAIを用いて検知する取り組みで、昨年夏に「Stena」というプロダクトをローンチした。

Stenaは導入企業から提供されたログデータを基に、様々なデータからチートやBotなど大きな被害に繋がる不正行為を自動で検知する。過去の利用ログから正常な行動パターンを学習することで、サービス本来の使い方らかけ離れた行動をするユーザーを瞬時に捕捉。人力で対応するには高度な専門知識がなければ発見が難しい複雑なパターンなどにも対応できる点が特徴だ。

現在Stenaではオンラインゲームを手がける企業を対象にサービスを提供している。この業界は競合が多く競争が激しいため、ほとんどの予算をゲームの質を高めることに使う必要があり、どうしてもセキュリティ分野への投資が後回しになりがちなのだそう。結果としてある程度の不正利用を許容せざるを得ないなど、大きな課題になっている。

今の所はSaaSモデルのツールとセキュリティエンジニアによる人的なサポートを組み合わせて提供しているが、今後はより安価に使えるように一連の工程を全自動化したツールも開発していく計画とのこと。対象領域もゲームのみならず、広告やチケット販売システムなど別領域まで広げていきたいという。

AIをサイバー攻撃から守るセキュリティシステム開発へ

このAIで守る事業と並行して研究開発を進めているのが「AI“を”守る」プロジェクトだ。自動運転やスマートシティ、スマートスピーカー、顔認証システムなど日常生活の様々なシーンにおいて今後AIが浸透していくことは間違いないだろう。そこではAI自身がサイバー攻撃の標的となる危険性があり、AIを様々な攻撃から守っていかなければならない。

AIを開発する工程でセキュリティを考慮せずにいると、攻撃者が細工したデータが学習データに注入されることでAIにバックドア(侵入ルート)が設置されてしまったり、AIの入力データが偽装されることでAIの判断に誤りが生じてしまったりするなど様々な問題が起こりうるという。

いずれ顕在化するであろうニーズに備えて、ChillStackではAIを守る技術の研究開発を進めている。伊東氏によると既存システムに対する攻撃手法とAIに対する攻撃手法とは根本的に原理が異なるものが多く、これまでのセキュリティ技術だけでは十分な対策ができないそう。AIを守るためには、それに特化したセキュリティ技術が必要になるわけだ。

今月からは三井物産セキュアディレクションとも共同研究に取り組んでいて、5月を目処にイチからAIの安全確保技術を習得できるハンズオン・トレーニング(研修プログラム)を提供する予定。現時点ではAIのセキュリティに対応できる人材が少ないため、まずはその人材を育てる活動から始める。ゆくゆくはこの領域における脆弱性診断ツールなども開発していく計画だ。

ChillStackでは今回調達した資金を用いてエンジニアやビジネスサイドのメンバーの採用を強化し、プロダクトの研究開発、拡販に力を入れるという。

Helm.aiが無人運転車用AI向け無人学習技術に14億円調達

4年前、数学者のVlad Voroninski(ブラド・ボロニンスキー)氏は、自動運転技術開発における数々のボトルネックの一部を深層学習が取り除く可能性を見い出していた。

そして現在、彼がTudor Achim(チューダー・アーキム)氏と2016年に共同創設したスタートアップHelm.aiは、A.Capital Ventures、Amplo、Binnacle Partners、Sound Ventures、Fontinalis Partners、SV Angelなどによるシードラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達したことを発表し、沈黙を破った。

これにはBerggruen Holdingsの創設者のNicolas Berggruen(ニコラス・バーグルエン)氏、Quoraの共同創設者のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏とAdam D’Angelo(アダム・ダンジェロ)氏、NBA選手のKevin Durant(ケビン・デュラント)氏、David Petraeus(デイビッド・ペトレイアス)大将、Maticianの共同創設者でCEOのNavneet Dalal(ナブニート・デーラル)氏、Quiet Capitalの業務執行社員Lee Linden(リー・リンデン)氏、Robinhoodの共同創設者のVladimir Tenev(ウラジミール・テネフ)氏など数多くのエンジェル投資家も参加している。

Helm.aiは、この1300万ドルのシード投資を、工学技術の高度化、研究開発、人材増員、さらに顧客の囲い込みと契約の実行にあてる予定だ。

同社はソフトウェアのみに特化している。自動運転車に必要となるコンピューター・プラットフォームやセンサーは作らない。そうした変化の激しい分野には依存せず、わかりやすく言えばHelm.aiは、センサーのデータや人の行動を理解しようとするソフトウェアを作っているのだとボロニンスキー氏は言う。

それなら、他の企業でもやっていることのように思える。だが注目すべきは、Helm.aiのソフトウェアへのアプローチだ。自動運転車の開発者は、その多くが自動運転車のいわゆる「頭脳」の訓練と改善を、シミュレーションと路上テスト、そして人の手でアンノテーションされた大量のデータセットの組み合わせに頼っている。

Helm.aiは、その工程をスキップすることでスケジュールを短縮しコストを削減できるソフトウェアを開発したという。同社では、人間の教師を必要としない学習アプローチを使い、ニューラルネットワークを訓練できるソフトウェアを開発している。膨大な走行データも、シミュレーションも、アンノテーションも不要だ。

「自動運転車のAIソフトウェア開発は、非常に長い戦いであり、コーナーケースの無限の海を渡らなければなりません」とボロニンスキー氏。「本当に重要なのは効率化の度合いです。ひとつのコーナーケースを解決するのに経費はいくらかかるのか、どれだけ早くできるのか。そこを私たちは改革したのです」。

ボロニンスキー氏は、UCLA時代に自動運転に初めて興味を抱いた。そこで彼は、米国防高等研究計画局主催のロボットカーレース、DARPAグランド・チャレンジに参加したことのある学部教師からその技術を教わった。やがてボロニンスキー氏は次の10年の応用数学に興味が移り、カリフォルニア大学バークレー校で数学の博士号を取得し、MIT数学科の教師になった。だが、いずれは自動運転車に戻ろうと考えていた。

2016年に深層学習にブレイクスルーがあり、ここへ戻る機会が得られたとボロニンスキー氏は話している。彼はMITを去り、後にNetskope(ネットスコープ)に買収されることになるサイバーセキュリティーのスタートアップSift Security(シフト・セキュリティー)を辞めて、2016年11月にアキーム氏とHelm.aiを創設した。

「私たちは、従来のアプローチでは対処できていないと思われる重要な課題を特定したのです」とボロンスキー氏。「早々にプロトタイプを作ったことで、それでやっていけると確信できました」

Helm.aiは、まだ15人の小さなチームだ。彼らは2つの使用事例に向けたソフトウェアのライセンシング事業を目指している。ひとつは、レベル2(新しい規定ではレベル2+)の乗用車向け高度運転補助システム、もうひとつはレベル4の自動運転車両隊だ。

Helm.aiにはすでに顧客がある。名前は明かせないが、その中には試験運用段階を終えたものもあるとボロニンスキー氏は話していた。

画像クレジット:Helm.ai

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(翻訳:金井哲夫)

Web面接ツール「HARUTAKA」運営が8億円調達、面接体験を改善する“面接官育成AI”開発へ

Web面接サービス「HARUTAKA」を開発するZENKIGENは3月18日、WiLなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額で8億円を調達したことを明らかにした。

ZENKIGENでは2018年6月にシードラウンドにてグロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL、みずほキャピタルから2億円を調達済みで、今回のシリーズAラウンドを含めると累計調達額は10億円となる。本ラウンドで同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • デライト・ベンチャーズ(AI領域)
  • PKSHA SPARXアルゴリズム1号投資事業有限責任組合(AI領域)
  • パーソルキャリア(HR領域)
  • エスプール(HR領域)
  • ツナググループ・ホールディングス(HR領域)
  • WiL(既存投資家)
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ(既存投資家)
  • 社名非公開の金融関連企業

ZENKIGENでは調達した資金を活用してエンジニアを中心とした人材採用を進める計画。既存事業であるHARUTAKAの拡大に加えて、現在PoCを実施している面接官育成AI「ZIGAN」の早期事業化を目指し組織体制を強化する。

詳しくは後述するが、ZENKIGEN代表取締役CEOの野澤比日樹氏によると今回の新規投資家とはAI領域とHR領域において事業連携も見据えているという。

Web面接で面接を効率化、200社以上が導入

HARUTAKAはWeb面接を通じて「面接の場の効率化」を実現するSaaS型のプロダクトだ。

面接方法はWebを介してリアルタイムに実施する「ライブ面接」と、候補者が自身のデバイスを使って撮影した動画を企業に送る「録画動画面接」の大きく2種類。たとえば書類選考から1次面接を録画動画面接、2次から3次面接をライブ面接という形で、この2つを組み合わせながら面接フローを設計している企業も多い。

野澤氏によると特に録画動画面接のナビゲーションにはこだわっているそう。候補者は企業側が設定した「学生時代に頑張ったこと」などの質問に対する回答を自分で撮影する形になるのだけど、最初に人事がナビゲーション動画に出てきて「緊張しないで大丈夫ですよ」と声かけをすることで緊張をほぐす。

人となりを見たい部分に関しては動画形式にする一方で、「転勤のありorなし」など基本的な質問への回答は選択式にすることで候補者の過度な負担がかからないようにもしている。

Web面接は上手く活用できれば、企業と候補者双方にとってメリットが大きい。企業側は動画面接を取り入れることでエントリーシートだけでは判断しづらい候補者の人となりや雰囲気を把握でき、面接に進む人数を絞り込める。遠方に住む候補者ともスピーディーかつフェアに面接ができるので、担当者の業務工数を削減できるだけでなく優秀な人材の離脱を防ぐ効果も見込めるだろう。

候補者にとっても場所や時間の制約を取っ払って面接を実施できるため、交通費や移動時間などの負担が少なくて済む。

現在HARUTAKAはWeb面接SaaSとして月額5万円からの定額モデルで提供。すでにソフトバンクや日本たばこ産業、カルビー、USEN-NEXT HOLDINGSを始め大企業を中心に200社以上で活用されている。

一例としてUSENでは一次面接を全て録画エントリーに変え、二次面接から役員面接までを現地での面接とライブ面接から選べるようにした結果、地方の学生などの離脱が減り、内定を出した後の入社率が1.5倍にアップするなどの効果に繋がっているそうだ。

Web面接ツールに関しては米国発の「HireVue」や以前紹介した「インタビューメーカー」などがよく知られている。基本的な機能は似ている部分が多いものの、HARUTAKAの場合は採用管理システムとの連携を積極的に進めていて、これが1つの特徴になるとのことだった(現時点で7つのATSと連携)。

数年以内に「動画面接が爆発的に普及する」

ZENKIGEN代表の野澤氏はインテリジェンス(現パーソルキャリア)、創業期のサイバーエージェントを経てソフトバンクに入社し、電力事業であるSB Powerの営業責任者や「自然でんき」の事業責任者などを務めてきた人物だ。

ソフトバンク退社後の2017年10月にZENKIGENを創業。多くの社会人が寝ること以外で1番時間を使っている「仕事」の領域、特にそのど真ん中となるHR分野で勝負をしようとこのドメインを選んだ。

HRといっても様々な切り口があるが、Web面接に決めたのはサイバーエージェントの創業者である藤田晋氏の「上りのエスカレーターに乗れ」という言葉が頭に残っていたからなのだそう。要は伸びる市場を選べということで、「今後人口が減る中で人材の取り合いが加熱し、採用領域がホットになる」との考えから採用に目をつけた。

「考えてみれば4Gやスマホ、自撮り文化など社会情勢は変わっているのに、面接のやり方自体は20年前からほとんど変わっていない。Web面接も当時は浸透していなかったが、2〜3年以内には爆発的に普及するという感覚があった」(野澤氏)

ソフトバンクアカデミアに参加していた際に孫正義氏からAI事業におけるデータの重要性を聞かされてていたこともあり、ゆくゆくは面接の動画データとAIを組み合わせることで面白いプロダクトが作れるかもという構想のもと、創業と同時にサービスをスタートした。

プロダクトローンチ当初こそ「動画で面接ってどうなの?」となかなか導入が進まず苦戦した時期もあったそうだが、この2年半ほどで採用市場でのWeb面接の認知度も上がり状況が好転。今では多くの企業で当たり前のようにWeb面接が検討されるようになってきているという。

特に直近1〜2ヶ月はコロナウイルスの影響もあり、リモートで面接が実施できるプラットフォームとして問い合わせが急増しているようだ。

蓄積したデータを活用した面接官育成AIの事業化へ

ここまで紹介してきたように、ZENKIGENでは創業から2年半に渡ってWeb面接に特化してプロダクトを磨いてきた。今後も同社にとってHARUTAKAが主力事業であることに変わりはないが、これからはそこで蓄積されたデータを活用した取り組みにも力を入れていくフェーズになる。

それが冒頭でも触れた面接官育成AIの「ZIGAN」だ。HARUTAKAが「面接の場を効率化する」ものだとすれば、ZIGANは「面接の質自体を向上させる」ことが目的。面接における候補者体験を高めるために面接動画データとAIを活用する。

「世界的にみてもHR×AIの分野では『AIが人を評価する』という方向に行きがちで、その代表例がAI面接官だ。特に欧米は効率化が重視される文化なのでその傾向が強いが、ZIGANでは全く別のアプローチからこの領域にチャレンジする」(野澤氏)

野澤氏の話では「面接を受けたことで、この会社に入りたくないと思った人が85%存在するという調査がある」そう。主に面接官の不快な態度や言動が原因だが、これまでは面接が密室で行われブラックボックスになっていた。

「一方でGoogleなど先進的な企業は面接での候補者体験を重要視していて、面接官の育成にも力を入れている。その結果として面接に落ちた人材の約8割が他者にGoogleを勧めるといった現象も見られるほどだ。ZIGANが目指すのは動画を解析した上で面接官にフィードバックを与え、誰でも候補者体験の良い面接を実現できるようにすること。それをAIでサポートする」(野澤氏)

現在は複数社とPoCに取り組んでいる段階ではあるが、面接動画に映っている表情や声のピッチ、仕草、姿勢などの情報から特徴量を抽出し「面接の心地よさをゲージで表示する」ような仕組みの研究開発を進めているそう。まずは面接に特化する形だが、次の段階では1on1など職場領域での応用も考えているという。

ZIGANのように人工知能によって人の感情や感性、仕草などを解析する分野は「アフェクティブ・コンピューティング」と呼ばれ、近年グローバルで注目を集めている。ZENKIGENとしてはこの領域で世界に通用するプロダクトを作ることを念頭に置き、2018年から東京大学の道徳感情数理工学社会連携講座との共同研究も進めてきた。

Pepperの感情エンジンなどを作ってきた東京大学の特任准教授・光吉俊二氏の研究室とタッグを組みながら、彼らの開発するエンジンをいかにHR領域に社会実装していけるかを日々研究しているそうだ。

アフェクティブ・コンピューティング領域で国内トップ企業狙う

今回の資金調達はこの取り組みをさらに加速させるためのエンジニア採用が大きな目的だ。

現在はDeNA出身の2人のエンジニアが中心となってZIGANのプロダクト開発を進めているが、研究者や技術者を仲間に加え「アフェクティブ・コンピューティングの国内トップカンパニーを狙う」(野澤氏)という。

新規投資家であるDeNA(デライト・ベンチャーズ)やPKSHA Technologyとも主にZIGANのおけるAIの研究開発領域で連携を見据えているとのことだ。

一方でHR系事業会社3社とは「明確な事業シナジーがある」ため、まずはHARUTAKAの活用に関する連携からのスタートとなる。パーソルキャリアに関してはコンサルタントと候補者のコミュニケーションなどに、採用アウトソーシング分野の大手企業であるエスプールやツナググループ・ホールディングスとはクライアント企業における選考業務にWeb面接ツールを活用できる余地があるという。

ZIGANが実用化に至った際には、こちらを用いた連携も十分に考えられるだろう。

「プロダクト進化のストーリーを明確に描ける段階になってきた中で、ここからはそれをいかにスピーディーに実現していくか。特にアフェクティブ・コンピューティングの領域では世界で見てもまだ突き抜けているプレイヤーはいない。ZIGANもまだPoC段階ではあるが、すでにプロダクトを開発しているという意味でもこれから戦っていけるチャンスはある」

「ソニーやホンダを初めとしたメーカーの活躍があったからこそ今までの日本の繁栄があるが、ネット系の新興企業でグローバルでチャレンジできている企業はまだまだ少ない。ZENKIGEN(全機現)もZIGAN(慈眼)も禅の言葉から取ったもの。日本的な感覚や思想をプロダクトに取り入れ、世界にはないアプローチから日本発のグローバルカンパニーを目指していく」(野澤氏)

ゲームエンジン開発のUnityがディープラーニングスタートアップのArtomatixを買収

UnityはAIを利用したゲーム開発者向けツールのスタートアップ、Artomatixを買収した。Artomatixはアイルランドのダブリンが拠点で、ディープラーニングを利用してリアルなテクスチャを簡単に作成するゲーム開発者向けツールを構築している。

開発者は、ArtomatixのArtEngineプラットフォームを使ってゲームの世界に現実世界の素材を描くことができる。既存のツールセットよりも短時間でビジュアルのパターンを3Dの世界に合わせることができ、継ぎ目や不自然さも減らせる。ArtEngineは複製したときの見た目の問題点をAIで特定するので、開発者は環境を延々調整する必要がなくなる。

Artomatixは2015年のTechCrunch Disrupt SFで姿を現した。同社は助成金と、Enterprise Ireland、Suir Valley Ventures、Manifold Partners、Boost Heroesなどのベンチャーキャピタルからの資金で、1200万ドル(約13億円)以上を調達した。Artomatixは、これまでのダブリンのオフィスで業務を続ける。Unityは買収金額を明らかにしていない。

Unityは、新作ゲームの半数以上が同社のエンジンを使って作られているとしており、Artomatixのテクノロジーを買収するのは当然の成り行きだ。同社のエンジンは最近も成長を続けてパワーを増しているが、機能が増えて複雑になり、レンダリングにかかる時間が長くなってきている。

Artomatixのテクノロジーがデジタルの環境を描き出すアートを制作するゲームデザイナーの役に立つなら、UnityはAI支援ツールを使うワークフローを推進し、開発者の時間を節約できるようになる。

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(翻訳:Kaori Koyama)

会議や講演の音声をAIで自動的に文字起こしする「Smart書記」が8500万円を調達

会議や商談、インタビュー、記者発表などにおける会話や音声をテキストに変換したいと思った場合、ICレコーダーやスマホのボイスレコーダーアプリなどを使って録音し、人力で文字起こしをすることが多いのではないだろうか。

一方でエピックベースが手がける「Smart書記」は、AI音声認識技術を用いてマイクが拾った音声をリアルタイムに自動で文字に起こす。ユーザーはその内容を基に編集を加えるだけでいいので、ゼロから文字起こしをしていた時に比べて手間が少ない。

Smart書記は電子書籍の流通事業などを手がけるメディアドゥの新規事業として2018年6月にスタート。無料のトライアル利用も含めて累計で800社以上に活用されてきた。今後の成長を見据えた上でメディアドゥから切り出すことを決め、現在はカーブアウトする形で2020年1月に設立されたエピックベースが運営を担っている。

そのエピックベースは3月12日、メディアドゥからの独立とともに、メディアドゥホールディングス、Coral Capital、三木寛文氏、宮田昇始氏(SmartHR代表取締役)、内藤研介氏(SmartHR取締役副社長)より総額8500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

音声データをリアルタイムでテキストに変換

Smart書記はマイクから集音した音声をAIによる音声認識技術によって自動で文字に起こしてくれるSaaS型のプロダクトだ。大きく「収録・文字起こし」「編集」「出力」の3つの機能を通じて、会議の議事録や講演録などを作成する際のユーザーの文字起こし業務を支援する。

まずユーザーはICレコーダーなどで録音する代わりに、Smart書記を開き音声を吹き込む。たとえば会見であれば発表者が装着したワイヤレスピンマイクを通じてバックヤードのPCで音声を取得する、会議であれば参加者が自分のPCにピンマイクを指して収録する、取材や商談であればスマホやタブレット(Smart書記のiOSアプリ)を机に置いて会話をする、そんなイメージだ。

そうやって音声を入力していくと、“発言ごとに細かく区切った状態で”リアルタイムにどんどんテキスト化されていく。この細かく区切るというのが1つの特徴で、これによって各パートごとにテキストを編集することはもちろん、後から確認したいと思った時にその部分だけをピンポイントで再生することもできる。

会議など複数人の会話を文字に起こしたい場合、各々がマイクをつけた状態で収録すれば発言者の名前(音声入力した人の名前)が自動で入力され、誰がどの発言をしたのかがわかるのも使いやすいポイントだ。テキスト化する際には、辞書登録を行うことで誤り語句を自動的に訂正語句へと置き換えてくれる「訂正学習機能」や会話を自動翻訳してくれる「同時翻訳機能」も役に立つ。

そのほかにもセクションを分けたり補足のコメントを追加したりする機能、重要な箇所をハイライトするマーカー機能などを搭載。テキストデータはExcel、Word、テキストファイル形式でダウンロードできる。

料金体系は月額10万円からの定額制。文字起こしをした時間の合計時間が200時間を超える場合には、1時間あたり500円の追加料金がかかる仕組みだ。

エンタープライズや自治体を中心に活用進む

もともとSmart書記はメディアドゥと徳島県が2017年10月から6ヶ月に渡って行った実証実験を機に生まれたプロダクトだ。

これは県知事による記者会見の議事録を作成する際、AIを活用して文字起こしとテキストの要約を効率化することを目的として実施したもの。開発前の段階ではAI要約の方のニーズが強かったそうだが、実際にやってみると文字起こしの方により大きな効果があったという。その後展示会に出してみても反響が良かったため、2018年6月に自動文字起こしサービスとして正式にリリースした。

たとえば徳島県庁の事例では議事録作成までにかかっていた工数を約10時間から約2時間にまで減らすことができたそう。知事の発言をWebサイト上で公開するまでのスピードも、約4日ほどかかっていたところが即日になった。

エピックベース代表取締役の松田崇義氏によると導入企業の約8割がエンタープライズや自治体関係とのこと。会議の議事録作成が義務化されていたり、会見の内容をテキストで発表したりするなど文字起こしのニーズが高く、なおかつその頻度も多い大企業・自治体からは特にニーズが高い。多い時には1日で10件前後の問い合わせもあるそうだ。

この「音声データを手間なくテキストにしたい」というニーズは国内外で共通するものだろう。国内では音声認識技術を手がけるアドバンストメディアなど複数社が文字起こしシステムを展開しているほか、海外でも1月にNTTドコモが協業を発表したOtter.aiなど複数のプレイヤーが存在する。

現在Smart書記では音声認識と翻訳の技術についてはGoogleのAPIを活用。一方で同じエンジンを使っていても「どれだけクリアな音声を入れるかによって精度はかなり変わってくる」ので、その質を高めるための運用サポートや、編集のしやすさを中心としたプロダクダクトの使い勝手の改善に力を入れてきた。

同時翻訳機能を使えば、文字起こししたテキストの下に自分が設定した言語へ翻訳した内容が一緒に表示される

「精度はもちろん高い方がいいが、100%の精度を求められているというよりも、80〜90%くらいで運用負荷が少なく確実に文字起こしの業務効率化に繋がるサービスが必要とされている。実際に導入検討頂く際にはある程度の精度を担保しているという前提で、運用の負荷が1つめのポイント、その次に情報セキュリティの観点も入ってくる。同じ領域のサービス自体はいくつかあるものの、これらの要件を満たしたものはまだ少ない」(松田氏)

音声データをビジネスシーンで有効活用できる基盤に

今回調達した資金は主にプロダクト開発やサポート体制を強化するための人材採用に用いる。まずは文字起こしの作業負担削減を支援するプロダクトとしてアップデートをしつつ、そこで取得した音声データをビジネスの現場でもっと有効活用できるような基盤を整えていく計画だ。

「2000年前半にブロードバンドやWindowsが本格的に普及した結果、PCを使って仕事をする人が増えた。そして2010年前半にはスマホやタブレットが登場し、チャットやクラウドサービスがビジネスの現場で広がった。これまでテクノロジーやネットワーク回線の進化がビジネスシーンにも大きな影響をあたえてきたが、今後キモになるのは『音声』。音声を取得するための高品質なデバイスや5Gの登場によって、ここからまたビジネスが変わると考えている」

「まずは目の前にある『文字起こしの作業負担を軽減したい』という顧客の課題をしっかり解決する。その上で音声データが溜まってきたフェーズでは、たとえば音声ファイルを検索して移動中などにすぐ聞けるようにするなど、ビジネスの現場で音声を活用できる基盤を作っていく。企業が音声という資産をSmart書記に蓄積していくことで、もっと有効活用できるようにしていきたい」(松田氏)

エピックベース代表の松田氏はSmart書記ローンチ時からのメンバーではなく、2019年7月よりメディアドゥに加わり事業部長として同サービスの成長を牽引してきた。

もともとは新卒入社した楽天を経てデジタルガレージに転職し、スタートアップへの投資やアクセラレータプログラム「Open Network Lab(オンラボ)」の運営を担当。その後参画したフーモアでは取締役COOも務めた人物だ。

ちなみに今回のラウンドにはSmartHRの宮田氏や内藤氏も個人投資家として参加しているが、彼らとはオンラボ時代からの縁(同社はオンラボの卒業生)もあり、“エンジェル投資”という形で一緒にチャレンジすることになったという。

Web上のすべての求人から個々人に合うキャリアを提案、LAPRASが今夏に新サービスローンチへ

真剣に転職を考える際、多くの人が登録するであろう転職エージェントサービス。まずはキャリアアドバイザーとの面談を通じて具体的な条件や自身の志向性をクリアにした後、候補先となる企業の提案を受けるのが通常の流れだ。

一方でHR Tech企業のLAPRASが開発に乗り出した「Matching Intelligence」はこの“キャリアエージェントによる面談”をシステム化した上で、Web上に公開されている求人情報を集め、その中から個人個人に合った求人を提案する。いわば同社が磨いてきたテクノロジーとデータを軸にキャリアコンサルティングの仕組みをアップデートしようという試みだ。

LAPRASでは2月26日、同社にとって新事業となるMatching Intelligenceの開発を本格化し、今夏を目処にローンチする計画であることを明らかにした。

機械学習とクロリーング技術でキャリアコンサルティングを自動化

TechCrunch Tokyo2017のファイナリストでもあるLAPRAS(当時の社名はscouty)は、個人向けのスキル可視化サービス「LAPRAS」や企業向けのヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」など人材領域で複数のサービスを展開するスタートアップだ。

特徴の1つはオープンデータを収集するための「クローリング技術」。個人向けのLAPRASではエンジニアの情報を集めるのに使っていたこの技術を、Matching IntelligenceにおいてはWeb上の求人情報を収集するのに転用。集めてきた求人をLAPRASのポートフォリオやWebアンケートの結果と照らし合わせ、機械学習を活用してマッチングする。

サービスの流れ自体はシンプルだ。転職を考えているユーザーはまず、オンラインのアンケートに答える。たとえば転職を考えた理由や企業を選ぶポイントの優先順位、希望の勤務形態、興味のある分野、希望年収、好みのカルチャーなど。これはキャリアアドバイザーとの面談でよく聞かれる内容をアンケートに落とし込んだものだと思ってもらえればいい。

Matching Intelligenceではこの回答結果とLAPRASに蓄積されたスキルや志向性データを解析し、Web上の求人情報の中から相性が良さそうなものをピックアップして提案する。ユーザーが提案内容に対してフィードバックを行うことで、その結果がどんどん学習されて提案精度が向上する仕組みだ。

今回本格的に開発に着手する前段階として、LAPRASでは社内でプロトタイプを作り仮説検証を行った。複数のエージェントに協力してもらって標準的な質問事項を洗い出し、共通するものや重要なものを抽出。Googleフォームでアンケートを作り社内エンジニアに回答してもらった上で、実際にクローリングしてきた求人情報を1人数件ずつ提案し、その会社に面談に行きたいかどうかをチェックしてもらったという。

LAPRAS代表取締役の島田寛基氏によると1回目の提案時には面談に行きたい率の平均が約37%だったが、複数回のフィードバックを繰り返すことで最終的に約60%ほどまで精度が改善したそう。磨きこめばプロダクトとして世の中に出せる手応えもあったため、力を入れて開発に取り組むことを決めた。

今後は社外での実証実験を経て、夏頃のサービス化を予定しているとのこと。まずはLAPRAS上で転職意思が高いと表明しているユーザーに対してサービス内でアンケートを実施し、企業のレコメンドやマッチングを進めていく計画。従来のエージェントは担当者が1人ずつ面談を行っていたが、この工程にテクノロジーを入れることでマッチングの効率や精度をあげていく狙いだ。

最も自分に合った求人情報が提案されるサービス目指す

これまでLAPRASではLAPRAS SCOUTやフリーランス・副業エンジニア紹介サービスの「LAPRAS Freelance」を通じてエンジニアと企業のマッチングを図ってきたが、現状では企業側からアプローチをするものが中心。ユーザー側からアクションする手段は自身の転職意欲を示すことくらいに留まる。

要はスカウトサービスであるが故に企業側に依存する部分が多く、特に転職意欲が高まっている個人のニーズを十分に満たせていない側面もあった。また企業の中には採用活動をサポートしてくれるエージェントの仕組みを求める声もあり、スカウトサービスとエージェント型のサービスの両方が必要との結論に達したそうだ。

LAPRASによると、従来の転職エージェントサービスでは自社が契約している企業の採用募集しか取り扱わないため、選択肢が限定され求職者にマッチした募集が他にあっても紹介できないことがあった。加えて多くのサービスが成果報酬モデルを採用していることもあり、一部では本人の志向性を考慮せず給料が高い企業に求職者を押し込むようなエージェントも存在する。

Matching Intelligenceが目指すのは機械学習による解析とクローリング技術によってこれらの課題を解決し「ミスマッチな転職」をなくすことだ。

最終的には「提案の精度」が大きなポイントになるが、個人のスキルや志向性についてはLAPRASで蓄積してきたデータを活かせるのが強み。もう一方の求人情報に関しても“求人票には書かれていない”企業のフェーズやカルチャーなどの情報を補完的に収集することで、マッチングの精度を高めていくという。

「やりたいことはオープンデータや(Webアンケートなどの)クローズドデータを活用しながら、その人に合った求人情報をマッチングすること。いわゆるAIエージェントの概念自体はすでに存在するが、マッチングの部分を研究していくことで最も良い提案ができるサービスを目指す」(島田氏)

AIチップメーカーGraphcoreが約165億円調達、R&Dと顧客開拓を推進

英国はプロセッサーを得意としてきた歴史がある。しかしグローバルのチップマーケットはこのところ変動が激しい。そして米国時間2月25日、今後状況が厳しくなるかもしれない中で投資家がいかに次世代のチップ製造に賭けているかを強調するような大きなニュースが飛び込んできた。AIアプリケーション向けのプロセッサーをデザインするブリストル拠点のスタートアップGraphcoreは、R&Dと顧客開拓のために1億5000万ドル(約165億円)を調達したと発表した。この調達により、バリュエーションは19億5000万ドル(約2150億円)となる。

Graphcoreの累計調達額は4億5000万ドル(約495億円)で現金準備額は3億ドル(約330億円)だ。過去数カ月、チップ製造マーケットでみられる停滞、そして新型コロナウイルス感染拡大のために製造の鈍化がさらに進むするかもしれないことを考えた時、これは貴重な情報だ。

今回の資金調達はシリーズDの追加拡張投資で、同社のトータルバリュエーションは19億5000万ドルになった(参考までに、2018年12月の元のシリーズDでのバリュエーションは17億ドル(約1870億円)だった)。本ラウンドには新規投資家としてBaillie Gifford、Mayfair Equity Partners、M&G Investmentsが、既存投資家の中からMerian Chrysalis、Ahren Innovation Capital、Amadeus Capital Partners、Sofinaが参加した。また過去の投資家としてはBMW、Microsoft、Atomico、DeepMindのDemis Hassabis(デミス・ハサビス)氏などが名を連ねる。

Graphcoreの最大の売りは、同社がIntelligence Processing Unit((IPU)と呼ぶハードウェアと、それに対応するPoplarソフトウェアの開発だ。これはAIアプリに必要とされる、同時かつインテンシブに行われる計算向けにデザインされている(いかに人間が「並行」処理モードで考えるかをベースにしている)。

Graphcoreは自社のIPUについてAI向けにデザインされた初のプロセッサーだという。ただ NvidiaやIntel、AMDを含む他企業もこの分野にかなり投資しており、マーケットの需要に応えるべく開発のペースを上げている。これらの企業は、現在もまだ続いているAI処理という幅広いエリアにおける制限を克服することを思い描いている。

「深層学習は2012年から始まった」と共同創業者でCEOのNigel Toon(ニジェル・トーン)氏はつい最近TechCrunchに語った。「我々がGraphcoreを立ち上げた時、イノベーターから聞かれたのはハードウェアが足を引っ張っているという言葉だった」

Graphcoreは2020年にかなりの需要を想定している。同社は2019年も好調で、戦略投資家と契約も結んでいる。

「2019年はGraphcoreにとって変化の多い年だった。開発から、大量生産した製品の出荷を伴う販売へと移行した」とトーン氏は話した。「2019年11月のMicrosoftとの緊密な連携や、Azure Cloud上の外部顧客やMicrosoft 内部AIイニシアチブへのIPU提供を発表できたのは良かった。加えて、Dell Technologiesとの提携のもとにDSS8440 IPUサーバーの提供開始とCirrascale IPU-Bare Metal Cloud立ち上げも発表した。また、Citadel Securities、Carmot Capital、そして欧州の検索エンジン企業Qwantを含む顧客へアーリーアクセスも提供した」

最近ベルリンで開催されたDisrupt会議でのトーン氏によるチップ業界の見通しは下のビデオでチェックできる。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

AIが数秒で契約書をレビューする「LegalForce」が10億円を調達、導入企業は250社を突破

AIを活用した契約書レビュー支援サービス「LegalForce」を提供するLegalForceは2月21日、WiLなど複数の投資家から総額10億円を調達したことを明らかにした。

LegalForceにとっては2018年に実施したシリーズAに続くシリーズBラウンドという位置付けで、同社の累計調達額は約16億円となる。なお今回新規の投資家はWiLのみ。エンジェル投資家を除く全ての既存投資家が本ラウンドで追加投資を行った。投資家リストは以下の通りだ。

  • WiL
  • ジャフコ
  • 三菱UFJキャピタル
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • みずほキャピタル
  • ドリームインキュベータ
  • 京都大学イノベーションキャピタル

契約書のリスクを数秒でチェック、導入企業社数は250社超え

LegalForceはAIを含むテクノロジーの活用によって、契約書のレビューやそれに紐づく業務を効率化するプロダクトだ。

細かい機能については昨年4月の正式ローンチ時に紹介したのでそちらを参照してもらえればと思うけれど、軸となる契約書レビュー機能だけでなく、過去の契約書をデータベース化して有効活用できるようにする「ナレッジマネジメント」の仕組みも備える。

LegalForceではWordやPDFの契約書をアップロードして契約の類型と自社の立場を選択するだけで、数秒〜数十秒後にはリスクを洗い出し、不利な条文や欠落条項を指摘。リスクのある部分については確認すべきポイントとともに修正文例を表示する。正式ローンチ後のアップデートとして「なぜこの論点を確認した方がいいのか」を解説してくれる機能も加わった。

レビュー前の画面。過去の似ている契約書やひな形と差分を比較することもできる

実際のレビュー結果。確認した方がいい箇所がハイライトされ、コメントや修正文例、解説が表示される

現在は業務委託契約を含めて22類型をカバーするほか、英語の契約書への対応も進めている。今の所はNDAに限られるものの「英語の契約書をアップロードすれば問題点は日本語で解説し、修正文例は英語で表示する」こともできるようになった。

レビュー画面では自社のデータベース(ライブラリ)に保存されている類似の契約書と照らし合わせて差分を表示したり、自社の用途に合わせてレビューの重要度をカスタマイズすることが可能。これらの機能を法務担当者や弁護士が使い慣れた“Word”でも同じように使えるのも大きな特徴だ。

Wordのアドイン機能を使うことで、普段から使っているWord上でそのままレビューや条文検索ができる

料金は月額10万円からの定額制で、現在までに250社以上の法務部や法律事務所が導入済み。業界問わず幅広い企業で使われていて、顧客の4割近くが上場企業だという。

今後はナレッジマネジメント機能と英文対応を強化へ

LegalForceのメンバー。中央が森・濱田松本法律事務所出身で代表取締役CEOを務める角田望氏。

LegalForce代表取締役CEOの角田望氏によると昨年4月の正式ローンチ以降、細かいものも含めて40以上のアップデートを実施してきたという。上述したもの以外だと民法改正への対応や法律の専門家が作成したひな形(LegalForceライブラリ)の追加、OCR機能の強化などがその一例だ。

レビュー精度の向上と対応類型の拡充も含めてプロダクトが進化したことで「以前はトライアル後に正式導入には至らなかった企業と契約に繋がるケースも出てきている」とのこと。導入企業社数の拡大だけでなく、規模の大きい企業や法律事務所が複数アカウントを契約するなどボリュームの大きい顧客も増えているそうだ。

今回の資金調達はこの勢いをさらに加速させるべく人材採用を強化することが主な目的となるが、特に今後は2つの領域にリソースを投下していく。

1つは英文契約書への対応だ。「留学経験がある人ならストレスなく読めるが、それでも日本語のものに比べると時間がかかる。慣れていない人だと数倍〜10倍くらいの時間が必要になり負担も大きい」と角田氏が話すように、英文契約書のレビューに対するニーズは高い。

そしてもう1つがナレッジマネジメント機能の拡張。これまでもLegalForceではライブラリという形で、社内の契約書をデータベースとして蓄積できる仕組みを提供してきた。これによって契約書をアップロードしておけば、キーワードに応じて条文単位で欲しい情報を引っ張ってきたり、同じような契約書と比較しながら重要な論点を確かめたりすることができる。

データベースでは自社で保有する過去の契約書だけでなく、LegalForce側で用意したひな形(LegalForceライブラリ)も含めて横断検索・活用ができる

「レビューした契約書自体に価値があるというのが自分たちの考え方。共有フォルダを作れば過去の契約書を共有して蓄積することまではできたが、それを有効活用するのは難しかった。LegalForceではファイルをアップロードするだけで情報が整理され、必要な時に資産として活用できる。共有・蓄積のストレスを軽減しつつ、活用の幅を広げていきたい」(角田氏)

たとえば過去に誰かが同様の契約書を作ってレビューしていれば、それはとても重要な参考資料になる。ただし他の人がどんな契約書をレビューしたかを全て把握するのは困難な上に、ファイルの数が増えてくれば探し出すのも大変だった。レビューを効率化するだけでなく「人間だけでは気づけない、たどり着けない自社に眠るナレッジ」に素早くアクセスできるのもLegalForceの強みの1つだ。

今後はこのナレッジマネジメント機能をアップデートしていく計画で、直近ではバージョン管理機能を搭載する予定とのこと。機能追加に加え、新しいプロダクトラインとして締結した契約書を効率よく管理できる仕組みも開発中だという。

「今まではレビューをメインにしていたが、自分たちがやりたいのは法務業務を総合的に支援すること。現在のレビュー機能だけでは十分ではないので、レビュー業務から派生するナレッジマネジメント機能などにも拡張していくことで、法務担当者や弁護士への提供価値をあげていきたい」(角田氏)

Facebookが英国のAIスタートアップを密かに買収

ここ数年、FacebookはAI機能の開発に注力しており、コンピュータービジョン、自然言語処理(NLP)、「ディープラーニング」などの分野で将来有望なスタートアップの買収も行ってきた。

米国のソーシャルネットワーク巨人がAI人材を求めて英国に目を向けたのは当然であり、NLPスタートアップのBloosbury AIを2018年に人材とともに買収、最近ではコンピュータービジョンを利用して拡張現実向けに正確な位置情報を提供する英国企業、Scape Technologiesを買収した。

今回TechCrunchは、2019年12月に3回目の英国企業買収が密かに行われたという情報を得た。Facebookが買収したDeeptide Ltd.はAtlas MLを運営する企業で、機械学習の論文とコードの無料オープンソースである「Papers With Code」の管理人でもある。

Deeptideの公式申請書類によると、Facebookは2019年12月13日に同社の過半数株主になっている。同日、Atlas MLの共同ファウンダー、Robert Stojnic(ロバート・ストイニック)氏はPapers with CodeはFacebook AIに合流するという投稿をMediumにポストしたが、機械学習研究コミュニティー以外で気づいた人はほとんどいなかった。

買収条件、いや、そもそも実際に買収があったかどうかすらも、その当時、ストイニック氏の投稿以上の情報は、Facebookから出ていなかった。しかし、ロンドンIT業界の情報筋によると、買収金額は4000万ドル(約44億円)程度だったと考えられている。

2018年にストイニック氏とRos Tayler(ロス・テイラー)氏が設立したAtlas MLの目標は、「ディープラーニング研究の発見と適用を簡単にする」ことだ。若きスタートアップはEntrepreneur First(EF)の卒業生で、その後Episode1およびKindred Capitalからシード資金を調達した。

Facebookに問い合わせをしている。返答があり次第本稿を更新する予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

改造HoloLensで視覚障がいのある子供に周囲をガイド、マイクロソフトが進める「Project Tokyo」

全盲や弱視の子供が成長する過程での難しさは、見える友だちと同じ本を読んだりゲームをしたりすることができないだけではない。視覚は社会的な交流や会話において大きな役割を担っているという問題がある。マイクロソフトのプロジェクトでは、視覚障がいのある子供が話している相手を「見る」ためにARを活用する研究に取り組んでいる。

画像:Jonathan Banks / Microsoft

当然のことながら、視覚障がい者には周囲の人が見えないという難題がある。そのため、晴眼者が会話の際に利用している多くの非言語の手がかりを、視覚障がい者は見つけたり利用したりすることができない。早期にそのような行動を学習していない場合は、特にそうだ。

Project Tokyoは、AIやARといったテクノロジーを障がいのある人も含め「すべての」人に役立てようとする、マイクロソフトの研究者たちの新たな取り組みだ。すべてのケースに当てはまるわけではないが、音声対応のバーチャルアシスタントはタッチスクリーンやマウス、キーボードを使いづらい多くの人の役に立つはずだ。

研究チームは数年前、非公式にアクセシビリティの向上に取り組み始めた。まずリオデジャネイロで開催されたパラリンピックを訪れ、人々を観察した。次に全盲や弱視の人々のコミュニティとともにワークショップを実施した。これらのことからチームが気づいた重要なポイントは、ほぼどんな状況でも視覚から微妙なコンテクストが得られていることだった。

マイクロソフトの研究者のEd Cutrell(エド・カトレル)氏は次のように述べている。「私たちは、人間として、他人とのやり取りに関してとても微妙で複雑な感覚を持っています。部屋にいるのは誰か、何をしているのか、自分との関係はどうか、私にとって重要かどうかをどう判断するか、これらを知るための手がかりは私たちにとって当然に得られるものです。しかし、目の不自由な人々にとってはそうではありません」。

このことは子供たちには特に顕著で、このような手がかりや振る舞いについておそらく学んでいないために、社会性に欠ける傾向を示してしまうことがある。会話中にテーブルに突っ伏したり、話している相手の方を見ないといった傾向だ。

補足すると、こうした行動自体に「問題がある」わけではない。彼らにとって最も適切な行動をとっているだけだ。しかしこうした行動は晴眼者との日々の関係を阻害するおそれがある。そのため、すべての人にとって容易で自然な関係の構築を目指す研究には意義がある。

Project Tokyoは、改造してレンズをはずしたMicrosoft HoloLensで実験をしている。HoloLensは、適切な情報を与えられれば物体や人物を識別できるきわめて高度なイメージングデバイスでもある。

ユーザーがこのデバイスをハイテクなヘッドバンドのように装着すると、カスタムのソフトウェアスタックが状況に応じた手がかりをユーザーに提供する。

  • 例えば右前方1メートルほどのところに人物を検出すると、ヘッドセットがその方向から鳴っているようなクリック音を発する。
  • その人物の顔が既知である場合、先ほどとは別の弾くような音が鳴り、その人物の名前が読み上げられる(前述のクリック音と同様に、この音もユーザーにだけ聞こえる)。
  • 未知の顔の場合やうまく認識できない場合は、ゴムバンドが伸びているような音が鳴る。ユーザーの顔の向きに応じて音が変化し、顔を相手に向けるようにガイドする。相手の顔がカメラの中央に来るとクリック音が鳴る(つまりユーザーが相手をまっすぐ見ることになる)。
  • 周囲に人がいる場合、ヘッドバンド上のLEDが検出された人物の方向に白く光り、人物が特定されると緑に光る。

ほかの機能も研究されているが、このセットが出発点であり、12歳のTheo(セオ)という少年のケーススタディではこのセットが特に有効と考えられている。

システムやセオとの実験などについてはマイクロソフトの記事に詳しく記されているが、基本的にセオはシステムを詳しく理解し、それにより晴眼者が主に使用している手がかりによって社会的な関係性に対処できるようになっている。例えば、相手に顔を向けて意図的に注目できるようになってきた。また、室内を自分なりの方法でスキャンして周囲の人を常に意識する方法も自ら身につけた。どちらもテーブルに突っ伏していてはできないことだ。

できることが増えるのは良い取り組みだが、もちろんまだ発展途上だ。高価でかさばるハードウェアを一日中身につけたくはないし、ユーザーごとにニーズが異なるのも当たり前だ。表情やジェスチャーについてはどうだろうか? 看板やメニューはどうする? 最終的にProject Tokyoの未来は、AIシステムなどのモダンなツールを構築する際にはほとんど関わりを持たないコミュニティのニーズによって決まるだろう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

AI学習サービスのアイデミーが8.3億円調達、法人向けのAIプロジェクト内製化支援を強化へ

AI学習プラットフォーム「Aidemy」や同サービスを活用した法人向けのAI研修サービスなどを展開するアイデミーは1月30日、UTEC(東京大学エッジキャピタル)など複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額8.3億円を調達したことを明らかにした。

アイデミーにとっては2018年5月にUTECと個人投資家9名から9200万円を調達して以来の資金調達。今回は事業会社やVC、数名の個人が新たに加わり累計の調達額は9.4億円となった。なお具体的な投資家リストは以下の通り。

  • UTEC(リード投資家 / 既存投資家)
  • 大和企業投資
  • ダイキン工業
  • テクノプロ
  • 東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)
  • 千葉道場ファンド(前回ラウンドでは千葉功太郎氏が個人で出資)
  • Skyland Ventures(既存投資家)
  • 松永達也氏(アイデミー社外取締役)
  • 河野英太郎氏(アイデミー非常勤執行役員)
  • 鈴木智行氏(元ソニー副社長)
  • 鈴木悠人氏(JapanWork代表取締役)

ダイキン工業はアイデミーが展開する法人向けサービスの顧客であり、テクノプロとは昨年11月に事業提携を締結済み。アイデミーでは今後両社との取り組みを加速させるとともに、法人向けサービスの拡充に力を入れていく計画だ。

法人事業が成長、製造業を中心に40社以上が有償導入

アイデミーは2014年に当時東京大学の学生だった石川聡彦氏(代表取締役CEO)が創業したスタートアップ。何度かピボットを繰り返した後、2017年12月にAIプログラミング学習サイトのAidemyをローンチした。

同サービスはディープラーニングや自然言語処理などの技術を、ブラウザ上で手を動かしながら学べるのが1つの特徴。開始約2年で登録ユーザー数は5万人を超える。エンジニアが自分の仕事の幅を広げるために使っているケースが多いという話は以前も紹介した通りだ。

現在アイデミーではこのAidemyの基盤を軸にB2B事業へと徐々にシフトしつつある。

2018年にベータ版としてスタートした「Aidemy Business」はAidemyをAI教育研修ツールとして使いやすいように、管理者機能などを追加したもの。昨年4月には正式版をローンチするとともに、オンライン学習サービスに加えてリーダー向けのコンサルティングサービスなどの提供も始めた。

現在は製造業のエンタープライズ企業を中心に金融系や人材系、SIerなど約40〜50社が有償でアイデミーのサービスを活用。石川氏によると約半数近くの顧客がアップセルやクロスセルに繋がっているという。

「特に製造業のニーズが強い。AIを活用したプロジェクトを進める中でコアな部分はできれば内製化したい、もしくは外注するにしても社内にAIに詳しい人材がいないと上手く進まないというのが課題。クラウド教育研修サービスを導入してもらうと半年程でかなり人材が育ってくるため、そのメンバーを軸に新規事業や既存事業の改善に取り組む目的で、予想以上にクロスセルやアップセルに繋がっている」(石川氏)

「AIの内製化支援」テーマに新プロダクトの開発も

今後は「AIの内製化支援」というコンセプトで法人向けのサービスをさらに拡充させていく方針だ。

最近はいろいろな所で「DX」というキーワードを目にする機会が増えてきたが「その中の大きなテーマの1つがAIの活用であり、日本を代表する企業のAI活用やDX支援をしていきたい」とのこと。今回調達した資金を人材採用やマーケティングへ投資し、2年後には現在の10倍となる400社以上へのサービス提供を目指すという。

今は比較的規模の大きい企業が中心となっているが、導入ハードルを下げた安価なプランも作っていくことで中小規模の企業のサポートにも取り組んでいく計画もあるようだ。

また既存事業の強化に加えて、新プロダクトの開発にも取り組む。石川氏の話では「AIに特化したHerokuのようなPaaS」などを法人向けに展開していく予定なのだそう。AIを組み込んだ製品を実運用する際にはメンテナンスや監視、管理といった業務が必要になる。それらの一部を自動化することで現場をサポートしていくことが狙いだ。

「どの企業にとってもゴールはAIの教育研修ではなく、それを現場で運用して利益につなげていくこと。人材育成は最初のステップでしかなく、そこから実運用に至るまでの事業定義や試作品の開発も含めて一気通貫で支援していきたい。特にAIに詳しい人材が社内で増えてくると、今はまだ顕在化していない運用に関する課題も浮き彫りになってくるはず。その負担を減らすプラットフォームを作っていく」(石川氏)

合成データでMLを訓練し機械学習へのエントリーを容易にするRealityEngines

元Googleの役員たちが作ったAIと機械学習のスタートアップであるRealityEngines.AIが米国時間1月28日、ステルスを脱して最初の製品を発表した。

同社が2019年に525万ドル(約5億7300万円)のシードラウンドを発表したとき、CEOのBindu Reddy(ビンドゥ・レディ)氏はミッションについて、機械学習を企業にとってやさしくすると言うだけで、詳しい話は何もなかった。しかし今日チームは、エンタープライズにおけるMLの標準的なユースケースに伴う問題を解決する一連のツールをローンチして、サービスの具体的な内容を明らかにした。それらの問題とは、ユーザーチャーン(中途解約)の予測、不正の検出、営業の見込み客予測、セキュリティの脅威の検出、クラウド支出の最適化などだ。これらにあてはまらない問題には、もっと一般的な予測モデルサービスが提供される。

RealiyEnginesの前は、レディ氏はGoogleでGoogle Appsのプロダクトのトップを、AWSでは業種別AIのゼネラルマネージャーを務めた。共同創業者のArvind Sundararajan(アービンド・スンダララジャン)氏はかつてGoogleとUberに在籍し、Siddartha Naidu(シッダールタ・ナイドゥ)氏はGoogleでBigQueryを作った。同社の投資家は元Google会長Eric Schmidt(エリック・シュミット)氏、Ram Shriram(ラム・シュリラム)氏、Khosla Ventures、そしてPaul Buchheit氏(ポール・ブッフハイト)だ。

レディ氏によると、これら一連の製品を支える基本的な考え方は、企業に機械学習への容易なエントリーを提供することだ。企業自体にデータサイエンティストがいなくてもよい。

人材以外の企業にとっての問題は、ネットワークを有効に訓練するために必要な大量のデータが、往々にして存在しないことだ。AIを試してみたいという企業は多くても、この問題が前途に転がっている巨大な落石のような障害になっていた。RealityEnginesはこの問題を、本物そっくりの合成データを作ることによって解決。それで企業の既存のデータを補うことができる。その合成データがある場合は、ない場合に比べてモデルの精度が15%以上アップするそうだ。

レディ氏は次のように主張する。「敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks、GANS)の最も強力な使い方は、ディープフェイクを作ることだった。ディープフェイクは、部分的に手を加えたビデオや画像で誤った情報を広めることが極めて容易であることを世間に知らしめたから、大衆の心にも訴えた。しかしGANSは、生産的な善用もできる。たとえば合成データセットを作って元のデータと合わせれば、企業に大量の訓練用データがなくても、堅牢なAIモデルを作れる」。

RealityEnginesの現在の社員は約20名で、その多くはML/AI専門の研究者または技術者だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa