Boomの超音速旅客機のテスト機XB-1はカーボンニュートラルの実現を目指す

航空機産業は通常、低炭素排出を志向していると見なされていない。ジェット燃料はグリーンとはいえないし、航空機は空を飛ぶ際、大量にそれを燃焼する。しかし超音速飛行のスタートアップBoomは、その超音速デモ機XB-1の試験開発事業で商業航空のそんなイメージを変えたいと願っている。同社の旅客機Overtureの開発のためにも、低炭素というイメージを持たれるが望ましい。

Boomの主張によれば、超音速デモ機XB-1のフライトは試験と認可の過程の冒頭から、持続可能性を達成できる初の商用OEM飛行となる。XB-1もOvertureもハイブリッドや全電動とは無縁だが、同社としては持続可能なジェット燃料とカーボンオフセットを併用して炭酸ガス排出量をゼロ、すなわちカーボンニュートラルにしたいと考えている。

Boomが使う燃料はパートナーのPrometheus Fuel製だ。同社は電力をソーラーや風力などの再生可能エネルギーから得て、二酸化炭素を減らそうとしている。Boomはすでに、地上テストでも同社の燃料を使っており、今後の地上テストと飛行計画でも使用できると判断している。

カーボンオフセットの意義については異論もあるが、しかしその事業から得たお金が適正な低炭素排出計画を支えるのなら、エコロジーに貢献すると言える。それにBoomのような、航空事業の経済的なインパクトをオフセットする試みが、商用の実機にも適用されるなら、一般的な航空業界がこれまで何もしなかったことと比べて環境に良いと言える。今後はすべての航空機開発事業で、このような風潮になるだろう。

現在、Boomが製造しているXB-1は、今夏にもFlight Researchとのパートナーシップのもとモハーベ砂漠のMojave Air and Space Port(モハーベ航空宇宙飛行場)でテストが行われる。その、パイロットはいるが旅客のいないテストから得られた情報は、将来超音速飛行の商用機となるOvertureの開発のベースになる。そのOvertureはすでにJALやVirginなど複数の航空会社から予約がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

気球ネットワーク開発のグーグル系Loonとの無人航空機開発のソフトバンク系HAPSMobileが空飛ぶ基地局を実現

Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)傘下のLoonは、成層圏上の気球にアンテナを乗せて、僻地にインターネットを届けようとしている。同社はこのほど、パートナーのHAPSMobileのための新しいペイロードの開発を完了した。HAPSMobileはソフトバンクの子会社で、高高度を太陽エネルギーで飛ぶ無人航空機を開発している。両社が協力して互いに適応させた通信技術により、Loonの気球がインターネットの通信を地球に送受し、それをHAPSMobileのドローンが利用してモバイルの空飛ぶ基地局になる。

そのための両社の戦略的パートナーシップは昨年4月に発表されたが、それはLoonの機能試験が初めて気球以外のプラットホーム上で行われるという意味でも重要だ。HAPSMobileが開発したHAWK30航空機は、成層圏を時速100kmあまりで飛ぶ。巡航高度は約2万mだ。しかしそれではLoonの気球よりも早すぎるので、ペイロードの方でそのスピードに適応することが必要だ。例えば、LTE接続を地上のデバイスへ送受するために使うアンテナの感度を高めて高速回転を可能にし、良質な接続を維持する。

LoonとHAPSMobileによると、両社の通信技術では700km離れていても1Gpbsの高速でデバイス間の接続を提供できる。HAWK30プロジェクトにおけるHAPSMobileの目的は、圏域を地上の基地局よりも大きくすることだ。なにしろ高高度だから、最も高い地上基地局と比べても、それがカバーする圏域は大きい。現在では全体をカバーするために何万本もの地上基地局が使われているが、この方法なら40機のソーラー航空機で足りると同社は説明する。それに地上基地局方式では避けられなかった、たくさんの細かい圏外域が減ることも期待できる。

Loonにとってこれは、運用形式の有意義な拡張であり、通信技術を互いに適応させることによって、今後いろんなタイプの航空機や送受信方式にも対応できれば売上の機会も増える。だからこれは、同社の商用パートナーシップの一例にすぎない。もちろん今の気球による展開そのものが、ユーザー企業との新たなパートナーシップを獲得することもありえるが。

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主翼にも乗客を載せて燃費を20%向上するジェット機をKLMオランダ航空などが開発中

空の旅は温室効果ガスなど汚染物質総排出量の相当大きな部分を占め、しかも旅客数はここ数十年着実に増えている。航空機からの排出量は2020年以降も大きく増える、と予想されている。電動旅客機が開発途上だが、今の主役であるジェット旅客機を近日中に置換することはありそうもない。そこで、従来型燃料を使う航空機の新しいタイプが今、KLMオランダ航空の支援で研究開発されている。

CNNの報道によると、その新しい航空機の設計はデザイナーのJustus Benadが着想し、オランダのデルフト工科大学の研究者たちが実現のために取り組んでいる。その航空機は、外観がまず独特で(上図)、これまでの筒型の胴体スタイルを捨てて、1/4サイズにカットしたピザのような形、胴体が飛行機の主翼にまで延びたような形をしている。

この、すごく膨らんだ中心部分に旅客と燃料と荷物が乗る。そしてこの荷重分散により、航空機の全体的な空気力学が改善され、構成次第ではほぼ同数の旅客を乗せることのできるAirbus A350に比べて燃費は20%以上良くなる。

20%の燃料節約は大したことない、と思われるかもしれないが、年月とともに数が増えれば、相当な節約量になる。電動航空機など、そのほかの代替航空機への移行が遅れれば、なおさらだ。ただし、今のスケジュールでは実用展開の開始は2040年から2050年にかけて、と言われている。残念ながらそれは、明日ではない。

今主流のジェット旅客機でも、その昔、実用導入までのテストは年月を要するたいへんな仕事だっただろう。でも今回の良いニュースは、スケールモデルによる屋外テスト飛行は年内にも行われる、ということだ。

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可動部品のないこの飛行機はイオン風に乗って飛ぶ

飛行機はそれが発明されたときから、可動部品を使って空気を押すことにより、飛行した。グライダーや気球は飛ぶというより浮かぶものだが、動力による飛行はもっぱらプロペラ、すなわち“押し進める(propel)”部品が頼りだ。しかし今日(米国時間11/21)それが変わり、世界初の“ソリッドステートな”(固体状態の)航空機が、“イオン風”を生成して可動部品まったくなしで飛ぶ。

SFみたいだ、と思ったそこのあなた、まさにそのとおり、それはSFなのだ。これを作ったMITのStephen Barrett〔航空学と宇宙航行学の准教授〕は、Star Trekからヒントを得た、と言っている。

BarrettはMITのニュースリリースで言っている: “遠い未来の飛行機は、プロペラやタービンがないだろう。それはむしろ‘Star Trek’に似ていて、青く輝きながら無音で滑空する”。

彼は説明する; “大学に職を得たとき、これを研究する良いチャンスだと思った。そして物理学の中に、それを可能にするものを探した”。

彼は、彼のチームの航空機を飛ばせるための原理を‘発見’しなかった…それは、1世紀も前から‘知られて’いた。ただし、それを飛行に応用して成功した者はいなかった。

その単純な原理では、陰電気で荷電した強力な電源があると、それらはその電荷をまわりの空気に放電し、それを“イオン化”する。そしてそのとき、それはその電源から流出し、正しくセットアップされた近くの“コレクター”の表面に向かって流れる(Nature誌にもっと詳しい説明がある)。チームのペーパーも今日(米国時間11/21)同誌に載った

それで一体何をしているのか、というと、マイナス電気を帯びた空気を人間が指定した方向へ流しているのだ。この現象は1920年代には知られていて、60年代にはそれを利用して何かを推進(押し進める)することが試みられた。でもそのときの電気エネルギーの利用効率は、わずか1%だった。それは、あえて穏やかな言い方をすれば、非効率だった。

実は、Barrettらのシステムもそれとあまり変らず、入力エネルギーのわずか2.6%が推進に使われただけだ。でも彼らは、現代の最新技術、CAD(コンピューター支援設計)と、超軽量素材を利用できた。そしてチームは、一定の重量(軽さ)と翼長のある航空機なら、大きな推進力さえ生成できれば飛行は理論的に可能である、と判定した。この結論に達するまでに、彼らは数年を費やしている。

何度も修正し(何度も墜落し)てたどり着いたのが、幅5メートル、重量2.5キログラムの複翼機だ。それは、数回離陸に失敗したあと、約10秒間飛んだ。テストに使った部屋がもっと大きければ、もっと飛べたと思われるが、ふつうに滑空した場合よりもずっと長い時間/距離飛べたということは、概念実証として十分だ。

Barrettは曰く: “推進系に可動部品のない飛行機が飛行を持続したのは、これが初めてだ。これにより、まだ誰も探求しなかった、もっと静かで、機械的に単純で、排気のない航空機の可能性が開けた”。

チームの全員も含めて誰もが、これが近い将来プロペラやジェットエンジンを置換するとは考えていない。でも、静かで機械的に単純な推力機構の用途は、たくさんある。たとえばドローンの微調整や軟着陸にも使えるだろう。

まだやるべきことは大量にある。でも目標はソリッドステートな飛行機械を発明することであり、彼らはそれには成功した。残っているのは、その実用工学だ。

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空飛ぶタクシーのLilium、AudiとAirbusの元幹部を招聘

未来的な空飛ぶタクシーサービスのための垂直離着陸機を開発するLiliumは、AirbusAudiから大物の元幹部を招き入れ、テクノロジーを向上し市場にサービスを提供する準備を進めている。

Mirko Reuterは、Audiで自動運転の責任者を務めていた人物で、無人飛行の責任者として取締役に就任する。Jakob Waeschenbachは元Airbusの機器組立責任者、Rochus Moenterは元Airbusの財務・投資部門担当副社長で、それぞれ飛行機組み立て責任者、および法律顧問・法務責任者としてLiliumに加わる。

Liliumは2015年にDaniel Wiegand、Sebastian Born、Patrick Nathen、およびMatthias Meinerによって共同設立され、そのビジョンは独自の垂直離着陸機のネットワークを構築することで航空移動のコストを削減し、パリからロンドンまで乗客を1時間以内に運ぶことにある。

Audiで長年自動運転の長を務めたReuterは、無人航空機システムに必要なプロセスと技術の開発を受け持つと同社は声明で述べた。

「私は、社会のあらゆる分野で広く使われる効果的で利用しやすい輸送を可能にする革新的サービスを開発する、という当社のミッションに全力を注いでいる。Liliumは新しい革命的な輸送手段を開発しており、その一端を担えることを非常に嬉しく思っている」とReuterが声明で語った。

Liliumは2019年に最初の機体を送り出す準備を整えるなか、経営チームを強化していると記事は伝えている。2017年、同社は9000万ドルの新たな資金調達を行い Tencent、国際民間銀行資産管理グループの LGTAtomico、Skype共同ファウンダーのNiklas Zennströmが設立したLiliumのSeries A支援者、およびTwitterのEv Williamsが共同設立した初期ステージVCファンドのObvious Venturesらが出資した。

こうした投資や有力幹部の入社は、益々競争の激しくなるこの業界でLiliumのビジネスに信用を与える(そう、空飛ぶタクシー業界は競争が激しい)。

ドイツの自動車メーカーDaimlerは、Volocopterを支援する投資家コンソーシアムに参加して約2850万ドルを出資し、配車サービスのUberはブラジルのEmbraerやスロベニアのPipistrelと組んで、独自の空飛ぶタクシーを開発している。実は飛行機メーカーのAirbusも、独自の無人空飛ぶタクシーVahanaを開発中で、数年のうちに市場に出したいと考えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

飛行車PAL-V Libertyの実生産バージョンがスイスのモーターショーに登場した

飛行車は意外と身近に迫ってきている。たとえばPAL-V Libertyは、スイスのジュネーブで行われたモーターショーで実際に見て触(さわ)れる実物だ。この空中飛行車の実生産バージョンがショーで展示されるのはこれが初めてだが、われわれは運良く見ることができた。

PAL-V Libertyの外観は、航空機というよりも自動車的だが、路上というよりも超特殊なサーキットで見かけるかもしれないようなレースカー、といったところ。細いボディーの前の方に二つのシートが横に並んでいるが、これはふつうのデザイン。そして飛行用の折りたたみ式回転翼が上にある。

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この車は、エンジンが路上用と飛行用の計二基ある。そして実は、‘ジャイロプレーン’(gyroplane)と呼ばれるクラシックな航空機のデザインをベースにしている。それは、空中を航行できることが実証されているデザインだ。しかもPAL-V Libertyは、ヨーロッパではEASAの、アメリカではFAAのルールに従って飛行できることが認められている。また、路上の安全基準も満たしている。

ただし、飛ぶためにはパイロットの免許が要る。離着陸には小さな飛行場+滑走路も必要だ。飛行モードとドライブモードの切り替えに5−10分を要するが、広い空き地を持ってる人なら、それも気にならないだろう。

お値段は40万ドルからだ。上に書いたいろんな要件のほかに、銀行の協力も必要かもしれない。最初の予約購入者にキーを渡せるのは2019年、それまでにすべての検定をパスしていればね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Airbusの自動操縦エアータクシーVahana、その初飛行のビデオが公開

Airbusは最近、その自動操縦航空機Vahanaの、まったく初めての飛行に成功し、このほど、この航空機の開発におけるきわめて重要な瞬間をとらえたビデオを公開した。飛行は1月末にオレゴン州ペンドルトンで行われ、この乗客を乗せるドローンは離陸後地上16フィートでホバリングした。すべて、自らの操縦で。

Vahanaの次のステップは、方向認識を持ち、A地点からB地点へ飛ぶことだ。これも自動飛行自動操縦の実用化に向けて、絶対に必要な能力だ。

Vahanaは全電動の航空機で、回転翼は6つあり、垂直に離陸して、その後は翼の角度を調節して特定の方向へ飛ぶ。これがねらっているユースケースは、都市内における近距離移動だろう。“エアータクシー”と呼ばれるのも、そのためだ。

パーソナルな自動操縦航空機はまだまだ先の話だが、でもAirbusのような企業はそのポテンシャルに投資しているし、またSebastian Thrunのようなテクノロジストは、開発のペースと実用化の両面で自動運転車を追い抜く、とまで言っている。注目を維持しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

簡単なアドオンでDJI Phantom 4をレスキューツール化するEXO 1 Exoskeleton

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DJIドローンはそれ自体、多目的に使えるドローンだと言って良いだろう。さらにEXO 1 – Search & Rescue Exoskeletonを用意すれば、本格的な捜索ツールとして利用できるようにもなる。3D印刷で製作したアドオンパッケージで、ドローンに簡単に装着することができる。このアドオンを装備することで、ドローンが緊急捜索隊必携のツールに生まれ変わるのだ。

基本的にはGoProのマウンティングポイントとして機能するもので、カメラやライト、その他マウンターにフィットするさまざまなデバイスを装着することができるようになっている。装着にはプラスチック製の結束バンド(zip-tie)を用いる。

パーツのデザイナーによれば、軽くてGoPro用のマウンターもついているKnog Qudosのライトなどを取り付けることができるとのこと。

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またシンプルながら役に立ちそうな、カラビナおよびネオジム磁石を利用する荷物運搬の仕組みも備えている。小さな荷物をドローンに積み、着陸することなくターゲット地点に荷物を下ろすことができるのだ。

本ツールはDJIおよびShapewaysが、Phantom 4およびShapewaysの3Dプリンティングの応用可能性を示すために行ったデザインコンテストから誕生したものだ。EXO 1が優勝し、1000ドルの賞金と、Phantom 4が与えられた。

EXO 1はShapewaysのサイトからオーダーでき、価格は113ドルとなっている。

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(翻訳:Maeda, H