幻となったアップルの無線充電器AirPowerのスペックをほぼ満たすLiberty Wireless Charger

Apple(アップル)がAirPowerワイヤレス充電マットの開発を中止したのは、同社の数少ない派手な失敗の1つだった。だが開発中止になったこの製品の、接続のためにいちいち手を煩わす必要がなく複数デバイスを充電可能なワイヤレスパッドというコンセプトはいまでも魅力的だ。このたび、ワイヤレス充電アクセサリメーカーのZensが、Liberty Wireless Chargerという名前のデバイスを開発した。この製品は、AirPowerができると主張していたもののすべてを提供しているわけではないが、現在のワイヤレス充電器からは大きく一歩前進するものであり、iPhone、AirPods、そしてApple Watchたちの素晴らしい相棒だ。

コイル、コイル、そしてコイル

Zens Libertyは、ワイヤレス充電器の充電能力を担っているワイヤレス充電コイルの使用方法が特殊だ。最新のiPhoneやAirPods充電ケースのように、デバイスに誘導電力を提供できるよう巻かれた円形銅ケーブルが使われているが、Zensの場合、このようなコイルが16個重なるように並べられている。好都合なことにこの様子は、透明なガラスケースで覆われた製品版で詳細に見ることができる。

これらの重なり合ったコイルが、Zens Libertyのユニークな能力の鍵だ。これらの配置によって、基本的にデバイスを任意の方向に置くことができ、すぐに充電が始まる。これに対して、多くの充電パッドは、特定の場所に1つ、2つ、または3つのコイルが配置されているだけだ。つまり、実際に充電を開始するには、デバイスがいずれかのコイルの上に正しく置かれている必要があるのだ。従来のワイヤレス充電器をある程度の期間使ってきた経験があるなら、おそらく置く方向がよくなかったために、翌朝目覚めたときに携帯電話がまったく充電されていないという災難を経験したことがあるだろう。

ZensのLibertyはこの厄介な問題を確実に解決する。そして基本的にはデバイスを好きなように置いて充電させることができたのだ。

2台を柔軟に充電

本製品は、一度に最大2つのQi互換デバイス(それぞれ15Wまで)を充電できる。Androidの携帯電話、iPhone、AirPods(およびAirPods Pro)でテストしてみたところ、すべてが問題なく機能した。基本的に思うようにパッドの上に置くことができたのだ。注意すべき点は、充電器の端の領域は、基本的に非アクティブだと考えなければならない点だ。従って最外周から1インチ(2.54cm)ほど内側に置くことを心がければ問題はない。

もし従来の充電器にデバイスを置くときにも、ちょっと注意を払えば良いだけではと考えるなら、この柔軟性にはあまりありがたみがないように思えるかもしれない。しかし実際のところ、これは本当に便利なのだ。デバイスをLibertyの表面に気軽に置いて、実際に接続が行われたかどうかをあまり気にしなくてもいいというささやかな保障は、iPhoneやAirPodsくらい頻繁にデバイスを充電するときには大きな安心だ。

Apple Watchも充電できる

Zens Libertyは、パッド上でApple Watchを充電することはできない。アップルがキャンセルしたAirPowerでは、これは可能だと宣伝されていた。しかし、アクセサリを使用すれば、Libertyパッドは、Watchを含むアップル製モバイル機器向けの、真のオールインワン充電ステーションになる。Zensがアドオンオプションとして正式にサポートするApple Watch充電器は、一端にUSB-Aコネクタを備えていて、Zens LibertyにあるUSBポートに簡単に挿入できる。そして、使用していないときには保護のためにゴムのフタをして隠すことができる。

実際には、このポートはあらゆる種類のUSB給電デバイスをサポートしているので、ケーブルを使えば、例えばiPadなどの別のガジェットを充電することもできる。しかしこの製品は、新しいZens Apple Watch充電器アクセサリ用向けにフィットするようにデザインされていて、充電中にWatchを支えるための小さな台も付属している。それはまたApple Watchのナイトスタンドモードにぴったりの角度を提供する(オールインワンソリューションを探している人にとって必要な追加機能だ)。

まとめ

Zens Libertyは、これまでの私がテストした範囲では、現在利用可能な最高の総合充電オプションだ。60ワットのUSB-C電源アダプターも付属していて、海外用プラグ変換アダプターが2個付属しているので、他のデバイス用にもなる絶好の旅行グッズとなる。つまり、専用の電源アダプターの代わりに、標準のUSB-C電源アダプターとして使うこともできるのだ。

ただし、留意すべき欠点がいくつかある。例えば、これは大きな充電器であることを認識しておく必要がある。複数のデバイスを簡単にサポートできるという点で優れているが、平均的なワイヤレス充電器よりも多くのスペースを占有する。また、コイルを重ね合わせ、冷却機構を実現するために厚みもあるこの製品は、これまで私が使った中で、はっきりとした通気孔をもつ唯一のワイヤレス充電器だ。

とはいえ、Zens Libertyは、利便性と柔軟性を実現するというワイヤレス充電の本来の約束を果たしている。そして、布地で覆われたデザインと印象的な透明ガラスのデザインのどちらも、魅力的で優れたデザインだ。現在、Zensは予約注文を受け付けていて、今月中に出荷が開始される。標準の布地バージョンは139.99ユーロ(約1万7000円)、ガラス版は179.99ユーロ(約2万2000円)、Apple Watch USBアダプターは39.99ユーロ(約4800円)で発売される。

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(翻訳:sako)

アップルのAirPowerがNomadの新製品Base Station Proとして蘇る?

アクセサリメーカーのNomadは、Apple(アップル)やその他のQi互換デバイスで使える優れたワイヤレスチャージャーを、すでにいくつか販売している。そして、さらに汎用性の高い新製品を発売する予定だ。新しいNomad Base Station Proは、パートナー企業のAiraが提供する「FreePower」と呼ばれる技術を利用したもの。表面に置いた3台までのデバイスをまとめて充電できる。置く向きは関係ない。3台を同時に充電できるだけもすごいが、普通の充電器とは異なり、充電するデバイスを正しい向きで所定の位置にぴったり合わせて置いたりする必要もないのも素晴らしい。

これは、残念ながらポシャってしまったアップルのAirPowerが目指したものによく似ている。内部には、複数の充電コイルがマトリックス状に並んでいる。それらが相互にリンクすることで、Base Station Proの表面の、どの位置でも充電できるようになっている。おそらく意図的なものだが、AiraのウェブサイトのURLは「airapower.com」となっている。アップルが棚上げした純正アクセサリの名前に1文字だけ加えたドメイン名だ。

Nomadの新しい充電器は、同社の既存の製品と同じ仕上げを継承している。つまり、デバイスを置く面は、黒い柔らかなレザーになっている。周囲のフレームはスレート色のアルミニウム製だ。この充電器も、かなりの高級感を備えている。これも、同社の他のBase Stationから受け継いだもの。

Base Station Proは、各デバイスに対して最大5Wの電力を供給できる。これはiPhoneや、その他のデバイスがサポートする最大電力ではないが、Airaの共同創立者であるJake Slatnick(ジェイク・スラントニック)氏によると、実際にはほとんど問題にならないという。

「ベンチマークテストによって明らかになったのは、私たちの5W出力による充電時間が、他社の10W出力とされている充電器と、ほとんど変わらなかったことです」と、スラントニック氏はメールで説明してくれた。「スマホが熱くなり始めると、充電速度が大幅に低下することもわかりました。その際、電力は5W未満になってしまいます。7.5W以上の充電器は、その電力を、ほんの2、3分しか維持できないようです。現時点でのパフォーマンスは、他社のどんな充電器とも同等で、ほとんどのユーザーは違いに気付かないはずです」。

Nomad Base Station Proは、すべて5Wで最大3台のデバイスの同時充電をサポートする。例えば、2台のiPhoneと、AppleのWireless Charging Caseに入れたAirPodsを一度に充電できる。

この製品には、USB Power Deliveryに対応した27WのUSB-C電源アダプターと、それをBase Station Proに接続するUSB-Cケーブルも付属している。価格は、おそらくかなり高価なものとなりそうだが、実際のところは11月に予約注文が始まれば明らかになるはずだ。

アップルが開発していたものと比べると、少なくともアップルの熱心なユーザーにとって重要な違いが1つある。それはApple Watchの充電をサポートしていないこと。NomadのBase Stationには、Apple Watchの充電機能を統合したモデルもある。しかし、そのモデルには、この新モデルのようなオーバーラップするコイルの設計は採用されておらず、どこに置いても充電できる機能は実現していない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

MophieのAirPower物マネ品をAppleが公認

iPhoneとApple Watch、AirPodsの同時充電を目指して開発が進められ、結局は開発中止になったApple(アップル)のAirPower。その模造品は市場にあふれている。その多くはApple製の本物が出る前からあり、低価格を売りにしていた。Appleが突然プロジェクトから手を引いたため、入手できるのはそれらの模造品だけだ。

TechCrunchはこの前、99ドルの製品をレビューしたが、今Amazonへ行くともっと安いのがたくさんある。しかし、Mophieを模造品と呼ぶのは失礼かもしれない。このアクセサリーメーカーの製品は主に高級品で、お値段も高い。しかも他社と違って、Appleが公認している。

ゆえに同社の新製品、3 in 1の充電パッドは、Apple Storeへ行ってAirPowerを持って帰れた場合の状況にいちばん近いかもしれない。

Mophieは「その3 in 1のワイヤレス充電パッドでは、iPhoneとAirPodsとApple Watchを中央の同じ位置で充電する。三機種に同一の充電体験を確保するために、AirPods専用のくぼみをつけ、またApple Watchは専用の充電スタンドで理想的な角度を保ち、画面を見やすくした」と語る。

なんだかよさそうだ。この黒い充電パッドは多くの競合製品と似た使い方で、3つのApple製品のための専用スロットがある。オリジナルのAirPowerではまさにこの、1台で3つの機種に対応することが、克服できない難題だったのだ。

関連記事:開発中止になったAirPower99ドルの類似品なら今すぐ手に入る

140ドルというお値段もAirPower並みだ。もちろんもっと安い製品もあるが、Mophieという名前が安心感を与えてくれるかもしれない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

開発中止になったAirPower、99ドルの類似品なら今すぐ手に入る

Apple(アップル)のAirPowerと、よく似たコピー商品AirUnleashed(エアーアンリーシュド)の間には、いつくか決定的な違いがある。最も顕著な違いは、2つのうち1つだけが実際に購入可能であることだ。

アップルはしばらく沈黙を続けたあと、今年3月にAirPowerの幻影を捨て、「(同社の)高い水準を維持」できなかったためだったと理由を述べた。それ以上の情報はほとんど明らかにされていないが、多くの報道は、高密度に実装された充電コイルが製品の過熱を招く可能性があるという技術的問題だろうとした。

当然のように多くの会社が、独自のノーブランド製品を計画していたが、アップルが発売前にこの製品カテゴリーから撤退したことで、ワイヤレス充電器市場にぽっかりとAirPowerサイズの穴が開き、市場にはその穴を埋めるべく数多くの製品が待機している。

AirUnleashedのアプローチはかなり見境がなく、クパチーノのデザイン部門から少なからぬヒントを得たミニマリストデザインの白いケースを作った。フォームファクターはAirPowerと同じ楕円形だが、色はオフホワイト(クリーム色?アイボリー?)だ。

本体上には2つの「+」シンボルが小さな円形のくぼみの中に書かれている。製品デザイナーは3つのアップル製品(iPhone、Apple Watch、AirPods)のそれぞれに専用の位置を指定している。AirPowerでは数多くの充電コイルがオーバーラップしていたと言われているが、この製品のコイルは3つでデバイスごとにワット数が異なる(それぞれ7.5W、2W、5W)。

ある程度は置き換えが可能だが、さまざまな理由により各デバイス向けのワット数を利用するのがいい。それでも本機はQi標準に沿っているため、かなり広範囲のワイヤレス機器に対応している。

iPhoneとAirPods 2は、いずれも台に載せた直後に充電を開始した。Apple Watchはだめだった。メーカーに問い合わせたところ、最新のwatchOSにアップデートする必要があり、それで問題は解決した。コイルが3つしかないため、デバイスは正しい位置に置く必要があり、Apple WatchはOSをアップデートしたあとも、正確なスポットを見つけるのに苦労した。

99ドルという価格は、噂されていたAirPowerより50ドル安い。なぜかこの価格には充電アダプターが含まれておらず、AirUnleashed製品を買うとさらに14ドルかかる。もっとも、そもそもアップルの模造品を買おうという人がそうする理由は見当たらない。

ざっとAmazonを見たところ、他のAirPower風充電器は何分の1からの価格で売られており、いずれも同じ3コイルを使っているようだった。それらを保証することはできないが、少なくともAirUnleashedについては、数時間試してみた範囲ではある程度使えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AirPodsを発売した数日後にAirPowerをキャンセルしたアップル

「AirPowerマットで使えます」。嘘だろう。私に言わせれば、Appleがハードウェアの品質に求めているという「高い水準」は、その顧客の扱いには発揮されていない。ワイヤレス充電が可能な199ドル(日本では22800円)のAirPodsヘッドフォンを発売してからわずか9日後、やがて発売されるはずだったApple純正AirPower誘導充電マットとの互換性をウリにしていたのもむなしく、AppleはAirPowerを完全に破棄した。なんでも「普通に使える」ことを標榜する企業にとって、これはらしくない、ずさんな仕事だ。まったく使えない。

AirPodsの発売後、かなり短期間でAirPowerのキャンセルが表明されたことを考えると、3月20日に「AirPods with Wireless Charging Case」を発表した時点で、はたしてAppleはAirPowerが予定通り発売可能だと判断していたのかどうか、疑問が残る。それを明らかにしないのは、顧客の信頼を踏みにじるものだ。まだ誰も手に触れたことがないうちに、次々に登場する新製品を発注するよう、いつも促しているような会社にとって、これは痛手だろう。そうした顧客に償う方法を真剣に考えるべきではないだろうか。何しろAppleは、2450億ドル(約27兆円)もの現金を常に保有している会社なのだから。

AirPower廃止のニュースをすっぱ抜いたのはTechCrunchだった。「最大限に努力しましたが、AirPowerでは私たちの高い基準を達成することができないという結論に達し、プロジェクトをキャンセルしました。発売を楽しみにされていたお客様にはお詫びいたします。私たちは、ワイヤレスは将来有望だと相変わらず信じています。そしてワイヤレス体験をさらに推し進めるようコミットしています」と、Appleのハードウェアエンジニアリング担当上級副社長であるDan Riccio氏は、電子メールで述べている。

これは驚き以外の何物でもない。特に、AirPowerと互換性があると書いてあったワイヤレス充電可能な199ドル(日本では2万2800円)のAirPodsや、箱にAirPowerと組み合わせた使い方が大々的に描かれている79ドル(日本では8800円)の単品の充電ケースを買った人は、がっかりだろう。

Appleが、AirPowerマットを最初に発表したのは2017だった。その時点では、「来年」にはAirPodsのワイヤレス充電ケースといっしょに発売するとしていた。しかし、2018年は何事もなく行き過ぎた。そして、新しいAirPodsは3月20日に発売されたが、そのプレスリリースにもAirPowerについて何の言及もなかった。これで一気に疑惑が高まった。そして今、伝わるところでは過熱の問題によって生産が困難となり、製品自体がキャンセルされることになった。Appleは、火災の危険性が指摘されたGalaxy Note 7の二の舞になることを避けるため、発売を中止したのだ。

「AirPods with Wireless Charging Case」の箱には、AirPowerの図も載っていた(画像:Ryan Jones

AirPodsで使える充電マットは、他にもいろいろある。もしかすると、Appleが将来発売するiPhoneやMacBookは、ワイヤレスでAirPodsに電源を供給できるようになるかもしれない。しかし、粗悪なサードパーティ製品を避けて、Apple製品だけですべて揃えたいという人には、歯がゆい事態となってしまった。

ありがたいことに、新たにAirPods with Wireless Charging Caseを購入した人は、まだ返品することもできる。しかし、レーザー刻印によってパーソナライズしたApple製品は、普通は返品できない。私自身、よくなくすので、AirPodsには電話番号を刻印している。さらには、AirPowerの発売を楽しみにしながら、Apple Watcheや、iPhone 8以降のモデルを購入した人もいるはずだ。こうした例外的な返品を認めるのかどうか、Appleに問い合わせ中だ。

どうしようもなく壊れやすい新型MacBookシリーズのキーボードについての謝罪Mac Proについての謝罪旧いiPhoneの動作が遅くなることを通知するやりかたがまずかったことについての謝罪、Apple TV+とApple Arcadeを発表だけして、登場は何ヶ月も後になるという最近のベイパーウェアの発表イベント、そして今回のAirPowerについての謝罪とキャンセル。世界で最も多くの現金を保有している会社のゴタゴタが収まらない。こうした問題をうまく解決できなければ、Appleは、Android並に信頼性が低いものに見られてしまうというリスクを冒すことになる。

(関連記事:The greedy ways Apple got to $1 trillion

(関連記事:アップルが野心的ワイヤレス充電マットAirPowerをキャンセル、品質が水準を満たせない

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アップルが野心的ワイヤレス充電マットAirPowerをキャンセル、品質が水準を満たせない

Apple(アップル)はAirPowerシリーズ製品化の計画をキャンセルした。自身が設定した高い品質基準を満たすことが困難だと判明しためという。Appleのハードウェアエンジニアリング担当上級副社長、Dan Riccio(ダン・リッチオ)氏はTechCrunch宛メールで次のように述べている。

製品化に向けて努力を重ねてきたものの、AirPowerはわれわれが設けた高い品質基準を満たすことが困難だと結論せざるを得なかった。このため製品化はキャンセルされた。出荷を期待していた顧客の皆さんにはお詫びしたい。しかしワイヤレスはトレンドであり、Appleは今後ともワイヤレス体験の改善に向けてコミットしていく。

2017年の9月にAirPowerの開発がスタートしたことが発表されて以来、スケジュールは1年以上遅れていた。このワイヤレス充電マットは野心的な開発計画を製品の完成前に発表するというAppleのPR手法の代表的な例の1つだった。AirPodsも開発中に発表された一例だ。広く市販される前に限定販売が行われたが、その後量産体制が軌道に乗ると新しいカルチャーのシンボル的なプロダクトへと成長した。

しかしAirPowerのスケジュールの遅れははるかに長く、その間に各方面からさまざまな議論が起きた。最近AppleはMacBookのキーボードの不具合で謝罪を余儀なくされた。キーボード問題と共にAirpowerのキャンセルは「Appleのハードウェア開発のプロセスにはなにか根本的に問題があるのではないか?」という議論を引き起こしそうだ。

私が個人的に聞いたところでは(もちろんAppleは公式には何も認めていない)、AirPowerの遅れは物理法則上の非常に困難な問題から生じていたという。特に発熱が障害となったようだ。空間的にごく近接してコイルを配置しなければならないワイヤレス充電システムでは非常に微妙な電流制御が必要になるのだという。

仮にデバイスをオーバーヒートさせ、その結果損傷させる可能性があるワイヤレス充電マットを出荷してしまったらAppleにとって致命的な問題となる。それならむしろプロジェクトをキャンセルするほうがいいと考えたのだろう。このあたりの詳細をご存知の読者がいればぜひ情報提供をお願いする。

見込み発車で先進的な技術を搭載した製品を発表し、市販後に改良を加えていった例がAppleにはいくつかある。しかしAirPowerの場合、カメラの不具合などととは異なる次元の問題を引き起こす恐れがあったわけだ。ともあれキャンセルが決定されたのはごく最近のはずだ。新しいAirPodの箱にはAirPowerの上に置かれている画像が印刷されていたし、AirPodの説明にもAirPowerが登場していた。

Appleにしては非常に異例の失態といえるだろう。 AirPowerについての外野の議論は大いに盛り上がっていたものの、誰も「キャンセル」とまでは思っていなかった。Appleのハードウェアエンジニアリングは年来ほとんど不可能と思えるような難関を次々にクリアしてきた実績があり、それだけユーザーからの信頼も厚かった。しかしついに(少なくとも当面)ハードウェアエンジニアリング上の困難が開発チームを打ち負かしたようだ。

ハードウェアの開発というのは文字通りハードな仕事だ。ワイヤレス充電の原理は比較的シンプルだし、特定のデバイスのペアではすでに広く実現している。しかしAirPowerが約束していたような能力、つまりさまざまなデバイスを同時に載せて充電し、かつデバイスと対話して充電レベルをモニターするというのは非常に高いハードルだった。このケースでは高すぎた、ということのようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Applehがニュージーランドのワイヤレス充電専門企業を買収、この技術の‘自社化’にこだわる理由とは

Appleの最新のM&AといえばニュージーランドのPowerbyProxiだが、同社はこれによって、今年iPhone 8とiPhone Xでデビューしたワイヤレス充電技術に、いよいよ本腰を入れようとしている。

創業10年のPowerbyProxiはオークランド大学で生まれ、ワイヤレス充電と電力転送製品にフォーカスしている。それにはワイヤレスのコントロールシステムやワイヤレスセンサー、ロボティクスなども含まれ、それにもちろんワイヤレスの電池充電というApple向きの分野もある。

この買収はStuff New Zealandが最初に報じ、珍しくもAppleが直接の声明で確認した。このクパチーノに本社を置く企業を常時ウォッチしている人びとは、同社が買収をするときとくに発表などしないことを、もういやというほどよく知っているのだ。たとえば最近フランスから買ったRegaindなどは、その典型的な例だ。

Appleが本誌TechCrunchにくれた、ハードウェア部門のSVP Dan Riccioによるとされる声明は、こう言っている: “手間も苦労も要らない簡単な充電方法を弊社は世界中に広めたい。オークランドのチームは、Appleがワイヤレスの未来を作ろうと努力するときの、すばらしい支えとなる”。

この声明に付随するコメントでPowerbyProxのCEO Fady Mishrikiはこう述べている: “チームも私もAppleの一員になることに興奮している。同社との連帯は弊社の価値を大きく増幅し、オークランドで成長を続けながら、ワイヤレス充電に対しニュージーランド発のすばらしいイノベーションを寄与貢献できることに、大きな喜びを感じている”。

この買収は公式には非公表だが、Stuff New Zealandの報道では1億ドルあまり、とされている。

これまで同社には、ニュージーランドのVC Movacとドイツの製造企業Darmstadtが計900万ドルを投資しているが、彼らはこの買収でおいしいリターンを得ることになる。もうひとつ、意外な受益者がSamsungだ。このAppleの天敵のような企業は、4年ほど前にSamsung Ventures経由でPowerbyProxiを支援したことがある。

PowerbyProxiの技術資産には、50名あまりのスタッフと300以上のパテントが含まれる。それらが、Appleのワイヤレス技術を強力に充電することは確実だ。同社の初のワイヤレス充電パッドAirPowerは来年リリースの予定だが、さらにAirPodsのワイヤレス充電バージョンも出る。さらに今後だんだんと、Appleの製品からワイヤーが消えていくだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple、ワイヤレス充電パッドAirPowerを来年発売

AppleはAirPowerという名前の新しい充電パッドを開発中だ。今日発表されたiPhone 8またはiPhone XとApple Watch、さらにはAirPodsの新しい無線充電ケースも載せることができて、ケーブル無しで3つ同時に充電できる。ただし、手に入れるには2018年まで待たなくてはいけない ―― Appleは来年早くに発売すると言った。

AirPowerマットは、複数デバイスの充電が可能な新しい標準を利用する。今すぐ出荷しない理由がそれで説明できるかもしれない。おそらく量産体制にはいるまでにすべきことがあるのだろう。今日の発表前にそんな噂が流れていた。

AppleのAirPowerは、真のワイヤレスデバイスの普及を大いに促進するだろう。なぜなら今のワイヤレス充電には不便なことがおおいからだ(パッド1枚につき1台しか充電できない、置き方に制限があるなど)。出荷時期についてはチェックを続ける。値段(未発表)次第ではあるが、Appleはかなりの数を売るだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook