クラウド市場の成長を脅かす中国によるテック巨人への弾圧、BATHの中での位置づけは

中国のテック企業が国内の規制当局の監視下に置かれる中、投資家や中国の4大クラウド企業であるBATH(Baidu AI、Alibaba Cloud[アリババクラウド、阿里雲]、Tencent Cloud[テンセントクラウド]、Huawei Cloud[ファーウェイ・クラウド])を含む国内のハイテク企業の間で、懸念やプレッシャーが高まっているとアナリストが報告している。

一連の独占禁止法やインターネット関連規制の取り締まりにもかかわらず、大手クラウド企業4社は着実に成長している。現在の精査は特にクラウド分野に集中しているわけではなく、デジタルトランスフォーメーション、人工知能、スマートインダストリーへの需要が堅調に推移していることから、中国のクラウドインフラ市場規模は、2021年第2四半期に前年比54%増の66億ドル(約7261億円)となった。

それでもなお、Baidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)の3社の株価はこの半年間で18%から30%下落しており、投資家は中国のテック企業に賭けることに慎重になる可能性がある。

「中国のテック企業は、有利な欧米市場へのアクセスが妨げられていたときには特に、常に国内市場に頼ることができました。しかし、過去9カ月間に国内の規制圧力が高まったことで、過去数年間にクラウド事業を大きく成長させてきた企業にとっては、苛立たしい逆風となっています」とCanalysのバイスプレジデント、Alex Smith(アレックス・スミス)氏は語る。

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中国のクラウド市場では、4大クラウド企業がクラウド支出総額の80%を占め、圧倒的な強さを誇っている。Alibaba Cloudは、2021年の第2四半期に33.8%の市場シェアを獲得し、トップランナーの地位を維持している。同じ第2四半期に中国の市場規模の19.3%を占めていたHuaweiは、これまで規制措置を回避してきた存在だ。

CanalysのチーフアナリストであるMatthew Ball(マシュー・ボール)氏はこう語る。「Huaweiはたまたま強力なクラウドビジネスも展開している、インフラとデバイスの会社です。クラウドインフラに関しては、BATだけでなく、BATH企業に注目しています。Huaweiは、特に同社が政府との良好で長期的な関係を持つ公共セクターにおいて、成長を促進するのに強い立場にあります」。

中国の規制当局が自国のテック企業への監視を強化する一方で、弾圧は中国の市場や同国に拠点を置く企業の株式に大打撃を与えている。

中国では、国家安全保障に関わる重要データの保護を目的としたデータセキュリティ法が6月に成立し、9月上旬から施行されている。また、8月下旬には、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent、DiDi(ディディ、滴滴出行)などを対象としたアルゴリズム企業の規制に関するガイドライン案が発表された。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

クラウドインフラ市場は2021年第2四半期も成長を続け、売上高は約4.6兆円に到達

野球で、高い天井が見込めるなどという。若い選手の伸び代が大いにあるということだ。同じことがクラウドインフラストラクチャの市場にも言えるかもしれない。この市場は成長を続け、今後すぐに成長が鈍る兆候は見えない。主要ベンダーの第2四半期の売上合計は420億ドル(約4兆6000億円)に達し、第1四半期より20億ドル(約2200億円)増加した。

Synergy Researchのレポートによると売上は39%のペースで増えており、4四半期連続で増加している。これまで通りAWSがトップだが、Microsoftが急速に成長しGoogleも勢いを維持している。

AWSは依然として市場の論理をものともせず、前四半期をさらに5ポイント上回る37%の成長を見せた。成熟した市場を持つAWSとしてはすばらしい伸びだ。Amazonのクラウド部門の売上は148億1000万ドル(約1兆6300億円)でランレートは600億ドル(約6兆6000億円)近くに達し、市場シェアは33%でトップを走っている。シェアはここ数年このあたりにとどまっているが、市場規模が大きくなっているので売上も伸び続けている。

Microsoftの成長は51%とさらに急速だ。Microsoftのクラウドインフラストラクチャのデータを確実につきとめるのはいつも難しいが、Synergy Researchによると市場シェアは20%で売上は84億ドル(約9220億円)と、前四半期の78億ドル(約8560億円)から増加している。

GoogleもThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏のリーダーシップのもとでゆっくりと着実に成長を続けている。第2四半期の売上は42億ドル(約4610億円)で54%の増加となった。市場シェアは10%で、Google Cloudのシェアが2桁台のパーセンテージになったのはSynergyが四半期ごとのデータを調査するようになってから初めてだ。前四半期の売上は35億ドル(約3840億円)だった。

画像クレジット:Synergy Research

ビッグ3に続くAlibabaは前四半期と同じくシェア6%と堅調で(ただし発表はまだで近日中の予定)、IBMは前四半期よりも1ポイント落として4%となった。IBMはハイブリッドクラウドマネジメントへと移行する中で純粋なインフラストラクチャとして苦戦しているためだ。

SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、ビッグ3はこの成長を加速するために多額の資金を投じているという。同氏は発表の中で「Amazon、Microsoft、Googleの合計で、四半期あたり通常250億ドル(約2兆7500億円)以上の投資をしており、その多くは340カ所以上のハイパースケールデータセンターの建設や設備のためです」と述べた。

一方、Canalysの分析も同様の数字を示しているが、市場全体の売上をSynergyをやや上回る470億ドル(約5兆1500億円)としている。Canalysの調べによる市場シェアは、Amazonが31%、Microsoftが22%、Googleが8%となっている。

CanalysのアナリストであるBlake Murray(ブレイク・マリー)氏は、クラウドベンダーがその巨大なデータセンターの運営にあたって再生可能エネルギーの利用を増やしていることから、企業の業務がクラウドへと移行している理由の1つは環境に対する持続可能性のゴールを達成するためだと述べている。

マリー氏は発表の中で「クラウドベンダーが利用するベストプラクティスとテクロジーは、業界の他の部分にも今後広がっていくでしょう。一方、顧客は環境に対する責任の一端を果たし持続可能性のゴールを達成するためにクラウドサービスの利用を増やしていくでしょう」と述べた。

企業はデータセンタービジネスから離れてクラウドに移行しているのか、あるいはビッグ3の持続可能性の取り組みに便乗したいのかに関わらず、着実にクラウドに移行している。世界全体でのクラウド利用率は25%との推計もあり、特に米国外では多くの市場が未開拓であることから今後も成長を続ける可能性は高い。

このことはビッグ3や、市場シェアに食い込んで売上を大きく伸ばそうとしているビッグ3より小規模の事業者にとっては良い兆候だ。Synergyのディンスデール氏は「ビッグ3より小規模でターゲットを絞っているクラウドプロバイダにとってはまだ大いにチャンスがありますが、ビッグ3の目の飛び出るような数字から目を離せるほどの状況にはならないでしょう」と述べた。

確かに今のところ、ビッグ3が天井にぶつかるとは考えにくい。

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画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

元Alibabaの科学者がコンピューターサイエンス分野以外の創業者に出資する理由

North Summit CapitalとAlibaba Cloudの元チーフサイエンティストであるミン・ワンリ氏(画像クレジット:North Summit Capital)

Min Wanli(ミン・ワンリ)氏は、コンピューターサイエンスを追求している人みなが切望するキャリアパスを持っていた。天才のミン氏は14歳のときに中国の一流大学に入学を許可された。同氏はその後、シカゴ大学で物理学と統計学の博士号を取得し、IBMとGoogleに計10年近く勤めた。

米国で働く多くの野心を持つ若い中国人科学者と同様、ミン氏は2010年代初めに中国でインターネットブームが起きたときに帰国した。同氏はAlibabaに設置されたばかりのクラウド部門に加わり、高速道路の交通量を抑制するために視覚的識別を使ったり、工場の効率を高めるためにコンピューティングを活用したりするような、同社のテックを産業面で応用する取り組みの最前線にいた。

そして2019年7月に、ミン氏は思い切った行動にで出た。eコマースの巨人Alibabaの成長の主要原動力となり、当時中国最大の公共クラウドインフラプロバイダーだった(今でもそうだ)Alibaba Cloudを辞めた。投資の経験はなかったが、ミン氏はNorth Summit Capitalというベンチャーキャピタル会社を興した。

「2016年と2017年ごろは、多くの企業が『デジタルトランスフォーメーション』についてかなり懐疑的でした。しかし(Alibaba Cloudからの)成功ケースを目にし、企業は2019年には実行可能性について疑問に思わなくなりました」とミン氏は深圳市の街並みや高層オフィスビルを見下ろしながら自身のオフィスで語った。きれいにアイロンがかけられた水色のシャツに身を包んだ同氏は子どものようなピュアな笑顔で話した。

「突然誰もがデジタル化したがりました。しかしわずか400〜500人のチームでそうした需要にどうやって応えられるでしょう」。

ミン氏のソリューションは、時代遅れの工場や会社に自らサービスを提供するのではなく、多数の企業がサービスを提供するよう資金を提供しサポートすることだった。間もなく、同氏はアラブ首長国連邦の氏名非公表の富裕人物から「数億ドル(数百億円)」を獲得してNorth Summit最初のファンドをクローズした。この人物とミン氏は、ミン氏が2018年に開催されたドバイテック会議にAlibabaの代表として参加したときに出会った。

「ベンチャーキャピタルは、私が多くのテック企業とコネクトし、私が昔得た教訓を共有できる拡大鏡のようなものです。ですので、テック企業はすばやく、そして効率的に従来の産業の顧客と協業できます」とミン氏は話した。

「たとえばポートフォリオにある企業と、まずハードウェア、あるいはソフトウェアの販売にフォーカスすべきなのか、それとも同等に重視すべきなのかを話し合います」。

ミン氏は支援する会社に深く関与するよう努めている。North Summitはこれまでのところ約500万〜2500万ドル(約5億5000万〜27億7000万円)の範囲で投資している。同氏はまた、ポートフォリオ企業に投資後のサポートを提供するQuadtalentというテクノロジーサービス会社も興した。

深圳市にあるNorth Summitのオフィス

デジタルトランスフォーメーションの概念は、従来の産業の性質がかなり複雑で細分化されているために、多くの投資家にとって手強いものだ。しかしミン氏はターゲットを絞るのに役立つ基準のリストを持っている。

まず最初に、投資可能なエリアはデータ集約型であるべきだ。たとえば地下鉄の追跡は鉄道システムの状況をモニターするかなりの数のセンサーを埋め込むことで恩恵を得ることができるかもしれない。2つめに、製造あるいは事業プロセスは、とてつもない設備を使う製造ラインのように、資本集約的でなければならない。そして最後に、産業は警察の交通誘導のように反復的な人間の経験にかなり頼るものでなけれなならない。

産業問題の解決は、創業者のコンピューティングの発明の才だけを要するのではなく、より重要なのは伝統的なセクターでの経験だ。なので、ミン氏は起業家を探すときに、コンピューターサイエンスウィザードの向こう側「遠く離れたところ」を見ている。

「今日我々が必要としているものは、『複合アルゴリズム』を扱える、複数の異なる分野にまたがる人材です。それは、センサーシグナル、ビジネスの論理的根拠、製造、コンピューターアルゴリズムの理解を意味します。他の要素なしにアルゴリズミックなブラックボックスを通じてニュートラルネットワークを適用するのは単なる無駄です」。

投資家らが次のABB、Schneider、中国Siemensを捉えようとするのにともなってミン氏はかなりの競争に直面している。中国は経済のすべての面でテクノロジーでの独立に向かっていて、新型コロナウイルスが世界のサプライチェーンをディスラプトしている中でその任務は緊急性を帯びている。その結果「産業用アップグレード」ソリューションをうたうスタートアップの評価額はうなぎのぼりだ。

しかし工場長たちは、自動化ソリューションプロバイダーが勝ち目のない企業なのか、あるいはユニコーンのスタートアップなのかは気にしない。「結局のところ、工場のCFOは『このソフトウェアや設備はいくら節約したり儲けたりするのに役立つのか』と聞くだけです」。

投資家らはミン氏の初のファンドの展開について慎重だ。展開を開始して2年、North Summitはこれまでに4件のディールを完了した。オートメーションを取り込んでいる創業17年の履き物メーカーTopScore、ロンドンを拠点とする就学前の中国人の子ども向けの英語学習アプリLingumi、マレーシアのドローンサービスプロバイダーのAerodyne、中小企業に安価なAIビジョンソリューションを紹介するマーケットプレイスのExtreme Visionだ。

North Summitは2021年、中国内外で企業に1億ドル(約111億円)近くを投資することを目指している。このところミン氏が注目している分野は光学式記憶装置とロボティックプロセスオートメーション(RPA)だ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:North Summit CapitalAlibabaDX中国Alibaba Cloud

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

アリババのクラウドOSが複数のチップアーキテクチャに対応

Alibaba Cloudのインテリジェンスビジネスグループのプレジデントであるチャン・ジェンフェン氏。

Alibaba(アリババ)は米国時間5月28日のカンファレンスで、同社のクラウドコンピューティング部門が、Armやx86、RISC-Vといったアーキテクチャをベースとする複数種類のプロセッサーと互換性のあるApsaraオペレーティングシステムを開発していることを発表した。

マーケットリサーチ会社IDCによると、Alibaba Cloudは中国のeコマース巨人の最速成長事業の1つであり、また2020年の後半時点では世界で4番目に大きいパブリッククラウドサービスである。

チップの世界市場は、パーソナルコンピューティングはIntelのx86に、モバイルデバイスはArmにほぼ支配されている。しかしArmの技術と競合するオープンソースのチップアーキテクチャであるRISC-Vは、世界中、特に中国の開発者に人気となっている。カリフォルニア大学バークリー校の研究者たちが始めたRISC-Vは、誰もがライセンスや特許料などなしで利用でき、米国の輸出規制の対象にもなっていない。

トランプ政権の国家のセキュリティに対する懸念によるHuawei(ファーウェイ)とそのライバルであるZTEに対する禁令は実質的に、中国の通信大手と米国のテクノロジー企業、特に半導体の大手サプライヤーとの仲を断った。

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Huaweiとの関係を決断せざるをえなくなったArmは、英国生まれの企業ということもあり中国企業へのライセンス提供を継続できると主張したが、そのアーキテクチャを使って設計したチップを実際に製造することが能力的にも法的にも可能なファブを見つけることで、Huaweiは依然として苦労している。

中国の開発者たちは米国の技術規制が今後も続くことを恐れ、そのための備えとしてRISC-Vに殺到したため、米国の制裁がRISC-V周辺の突然の活況を招いた。そしてその運動の先頭にいたのが、Alibabaだ。Alibaba CloudとHuaweiとZTEは、RISC-V Internationalの13社の上位メンバーに含まれ、同団体の取締役会と技術先導共同体に席を有している。

2019年に、このeコマース企業の半導体事業部T-Headが、最初のコアプロセッサーXuantie 910を立ち上げたが、それはRISC-Vがベースで、クラウドエッジとIoTアプリケーションに使われた。そのオペレーティングシステムが、1つのメインストリームのアーキテクチャではなく複数のチップシステムで使えるようにしたことにより、Alibaba Cloudは中国のチップ独立(特定チップ非依存)の未来に備えたことになる。

Alibaba CloudのIntelligenceグループの代表取締役Zhang Jianfeng(チャン・ジェンフェン)氏は、次のように述べている。「ITのエコシステムは従来、使用するチップで定義されましたが、クラウドコンピューティングがそれを抜本的に変えました。クラウドコンピューティングシステムはサーバーのチップや特殊目的のチップ、およびその他のハードウェアのコンピューティングのパワーをすべて標準化するため、チップのベースがx86やArm、RISC-V、あるいはハードウェアアクセラレータなどどのようなものであっても、顧客に提供されるコンピューティングパワーは標準化され高品質なものです」。

一方では、中国の企業がRISC-Vのような代替製品に向かうと技術とスタンダードの分極化が進み、RISC-Vが世界のその他の部分でも広く採用されないかぎり、グローバルなコラボレーションにとって理想的ではない、との主張もある。

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クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに
アリババクラウドが11年目で初めて黒字化、世界シェア3位に

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AlibabaAlibaba Cloud

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに

2020年のクラウドインフラ市場は社会を反映した。世界で最もリッチな企業はますますリッチになり、マーケット最下層の企業はますます落ち込んだ。Synergy Research Groupのデータによると、クラウドインフラ市場は2019年の970億ドル(約10兆2400億円)から2020年は1290億ドル(約13兆6100億円)に成長した。

Synergyはまた、クラウドインフラ市場が第4四半期に370億ドル(約3兆9000円)に達し、第3四半期の330億ドル(約3兆4800億円)からアップし、前年同期比でも35%増だったと指摘した。

過去9カ月、筆者はあらゆる創業者たちからパンデミックがデジタルトランスフォーメーションを加速させており、その大部分はクラウドへのシフト促進だと耳にした。こうした数字は創業者たちの言葉を裏づけているようだ。

いつものように、ビッグ3はAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)だ。Alibaba(アリババ)が第4位に定着し、IBMは5位に後退した。しかしMicrosoftはライバルのAmazonよりも急成長していて、2020年末に初めてマーケットシェアが20%に達した。レドモンド拠点のソフトウェア大企業Microsoftのマーケットシェアは2017年から倍になったことを心に留めておいてほしい。これは驚くべき成長スピードだ。一方でGoogleとAlibabaのシェアはそれぞれ9%と6%だった。

画像クレジット:Synergy Research

Amazonはその点で興味深く、Synergyのデータでは4年連続でマーケットシェア33%前後で横ばいを維持しているが、急速に成長しているマーケットにおける3分の1であり、これはこの部門の拡大にともなって同社もパブリッククラウドの売上高を成長させ続けていることを意味する。

AmazonはAWSの第4四半期売上高127億4000万ドル(約1兆3400億円)で2020年を締めくくった。これは前期の116億ドル(約1兆2200億円)から増え、ランレートは初めて500億ドル(約5兆2700億円)を超えた。一方でMicrosoftの数字は決算から解析するのはいつも難しく、370億ドル(約3兆9000億円)の20%を計算すると74億ドル(約7800億円)で、これは前期の59億ドル(約6200億円)から増えている。

Googleは第3四半期の29億8000万ドル(約3200億円)から第4四半期は33億ドル(約3500億円)に増え、Alibabaは同時期16億5000万ドル(約1700億円)から22億2000万ドル(約2300億円)に増えた。

SynergyのプリンシパルアナリストJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、トップ企業は巨大で絶対的なマーケットシェア、それからクラウドプロバイダー間の大きなギャップで自社の周りをしっかりと固めていると話す。「AWSは過去10年大きなサクセスストーリーで、広範囲のIT部門企業との競争激化にかかわらずマーケットでかなり強固な地位をキープしています。これはAmazonとAWSの経営チームにとって、新体制になっても状況は変わらないと思わせるすばらしい証拠です」と同氏は筆者に語った。

ディンスデール氏は、Microsoftが相手としてAWSは相応しいライバルだが、いつかの時点で同社は成長の壁にぶつかる運命にあるとみている。「MicrosoftがAmazonとの差を縮め続けるのはもちろん可能ですが、MicrosoftのAzureが大きくなるにつれ、かなり高い成長率を維持するのは難しくなります。これは大数の法則です」。

一方、クラウドインフラ業界の下位のマーケットシェアは減少し続けている。「マーケットシェアで敗れた企業は小規模クラウドプロバイダーの集まりで、過去16四半期で13ポイントのマーケットシェアを失いました」とSynergyは声明で述べている。

しかし、こうしたプレイヤーにとってすべて負けではないとディンスデール氏は話す。「比較的小規模のプレイヤー(あるいは小さなマーケットシェアを持つ大企業)はニッチな特定マーケット(地理、サービスタイプ、顧客の部門に基づくもの)にフォーカスしたり、あるいは幅広い顧客に広範なクラウドサービスを提供しようと試みることができます。前者の企業は極めてうまく振る舞うことができ、後者の場合はかなり厳しいでしょう」と述べた。

Canalysの数字は少し異なり、クラウドインフラ市場が1420億ドル(約14兆9800億円)で、第4四半期は400億ドル(約4兆2200億円)としたが、各社のマーケットシェアはSynergyのものと同じだったことは記すに値する。

画像クレジット:Canalys

パブリッククラウドの売上高はある時点で意味を失うほどに大きくなったが、それでも世界中のIT支出に占める割合としては比較的小さいままだ。Gartnerの推計によると、世界の2020年のIT支出は3兆6000億ドル(約379兆8300億円)だった。つまり、そこでクラウドインフラマーケットが占める割合は3.85%にすぎないことを意味する。

次のことを少し考えてほしい。IT支出の4%以下が現在、クラウドインフラに向けられ、かなりの成長余地を残していて、数年のうちに何十億ドル(約何千億円)も成長する。

もちろん他のプレイヤーが参入してトップ企業を慌てさせればもっと興味深いものになるが、我々がコンピューティングについて想定している道中に予期せぬ何かやドラマティックなことが起こらない限り、差し当たってこのままトップ企業は猛烈な勢いで我が道を突き進んでいくだろう。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

アリババクラウドが11年目で初めて黒字化、世界シェア3位に

 記者会見でSun Art Retail Groupの株式29億ドル(約3050億円)について語るAlibabaグループCEOのダニエル・チャン氏(画像クレジット:Vivek Prakash/Bloomberg via Getty Images)

中国のeコマース大手Alibaba(アリババ)のクラウドコンピューティング事業部門であるAlibaba Cloud(アリババクラウド、阿里雲)は現地時間2月2日、直近の四半期(2020年10-12月)に初めて黒字化したと決算報告で発表した。

Alibabaのクラウド部門は2009年以来の事業展開となるが、当四半期ついに、調整後EBITA(利払い・税・減価償却前利益)で黒字を達成した。このマイルストーンは、「スケールメリットの実現」の結果の一部であると同社は述べている。

データベース、ストレージ、ビッグデータ分析、セキュリティ、機械学習からIoTサービスまで、あらゆるものを組み込んだAlibaba Cloudは、ここ数年、中国のクラウドインフラ市場を席巻しており、世界的にもシェアを伸ばし続けている。Gartner(ガートナー)の調査によれば、2019年の時点で同社は9%の世界市場シェアを誇っており、パブリッククラウド企業(IaaSベンダー)としては、Amazon(アマゾン)のAWSとMicrosoft(マイクロソフト)のAzureに次いで世界第3位にランクされた。

新型コロナウイルスは、人々がオフラインでしてきた活動をオンラインに変えるよう強要することで、世界中のクラウドデジタル導入を後押ししてきた。たとえばAlibabaは決算の中で、中国での新型コロナ流行の後、レストランやサービス業界におけるデジタル化の需要は引き続き旺盛であると指摘しているが、この傾向は同社のフードデリバリーやオンデマンドサービスアプリである「Ele.me」にも恩恵をもたらす。同社のクラウド事業の収益は2020年12月の四半期に24億7000万ドル(約2595億円)に増加しており、主に「インターネット業界や小売業、公共部門の顧客からの収益が堅調に伸びた」ことがけん引しているという。

コマースは当四半期もアリババの収益の最大の原動力であり、収益の70%近くを占め、一方クラウドは7%貢献した。

最も迫るAlibaba Cloudのライバルは、Tencent(テンセント)のクラウド事業部門だ。Gartnerによると、2019年の時点で、後者は世界的に2.8%の市場シェアを持っていた。AlibabaのヴァイスプレジデントであるJoe Tsai(ジョー・ツァイ)氏が2020年8月にアナリスト向けの業績発表で指摘したように、中国の(IaaS)業界にはまだ十分な成長の余地がある。

「第三者機関の調査によると、中国のクラウド市場は150億ドル(約1兆6000億円)から200億ドル(約2兆1000億円)の規模になっていくと見られていますが、米国の市場はその8倍程度です。つまり、中国市場はまだかなり早い段階にあるということです」とツァイ氏は述べた。

「中国市場は、デジタル化がどんどん進み、企業のクラウド利用が急速に拡大している環境であり、米国市場の8分の1程度の小さな基盤から成長している過程にあります。こうした過渡期に中国市場に参入しているのは非常に良い立場だと感じています」とも。

Alibaba Cloudを成長させるための重要な戦略は、Alibabaの企業向けチャットアプリ「Dingtalk」へのクラウドの統合であり、同社は、あらゆる業界がクラウドサービスを利用するようにできることを期待している。これは、Alibaba CloudのJianfeng Zhang(張建峰)社長が以前インタビューで示唆したように、Microsoft 365とAzureの関係を彷彿とさせるものだ。

AlibabaのCEOであるDaniel Zhang(ダニエル・チャン)氏は2020年8月の決算説明会で、「当社はただのインフラサービスとしてだけのクラウドを提供したいわけではありません」 と語った。「インフラサービスとして、SaaSサービスとしてだけ提供すると、価格競争は避けられず、クラウドサービスはすべてコモディティビジネスのようなものになってしまいます。現在、Alibabaのクラウドが提供するのは、クラウド+インテリジェンスサービスであり、クラウド+データ活用の力です」。

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(文:Rita Liao、翻訳:TechCrunch Japan)