Alphabetは量子技術グループをスピンアウト、Sandboxが独立した企業に

量子テクノロジーに、ついにその時が来たのかもしれない。

2022年3月初めには、世界でも数少ない「専業」の量子技術企業Rigetti Computingが、特別目的買収企業SPACとの合併で上場した。しかし2021年10月にはもう1つの企業であるIonQがSPACとの合併で上場し、Rigettiは量子技術の商用化を明白に打ち出した最初の上場企業になる機会を惜しくも逃している。そして、もう1つのライバルD-Waveは、SPAC経由の上場を発表している。このような「動き」の意味を考えてみよう。

上場への動きは確かに量子技術が理論の域を超えて前進している1つの徴候ではあるが、もっと強力なシグナルは、それがAlphabetと強力な関係を結ぼうとしていることだ。同社は米国時間3月22日、6歳になる量子技術グループであるSandbox AQを独立した企業にすると発表した。

SandboxでAIと量子技術のディレクターを務め、長い間、X Prizeの取締役でもあるJack Hidary(ジャック・ヒダリー)氏は、引き続きこのカリフォルニア州マウンテンビューにある社員55名の企業を率いる。同社は通信、金融サービス、ヘルスケア、政府、コンピューターセキュリティなどの商用製品を開発するエンタープライズSaaS企業と自称している。

Sandboxには、元Alphabet会長でCEOのEric Schmidt(エリック・シュミット)氏、元JPMorgan Chaseの幹部でクレジット・デフォルト・スワップの開発に携わったBlythe Masters(ブライス・マスターズ)氏、元パロアルト研究所のチーフサイエンティストJohn Seely Brown(ジョン・シーリー・ブラウン)氏など、羨ましいほどのアドバイザー陣も揃っている。

さらに注目すべきは、Sandboxが額面非公開で「9桁ドル」のファンドを展開していることだ。新しい外部投資家の中には、Breyer Capitalとその創業者Jim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏がおり、同氏はSandboxの顧問団にも加わった。その他にも、投資家集団の中にはSection 32、Guggenheim Investments、TIME InvestmentsそしてT. Rowe Price Associatesの顧問を務めるアカウントも名を連ねている。

AlphabetがSandboxのスピンオフを決意した理由の一部には、マーケットの需要もある。Gartnerによると、2023年は全世界の企業の20%が量子コンピューティングのプロジェクトに投資すると予想される。このパーセンテージは、2018年には1%未満だった。

Sandboxのコンピューティングパワーを有料で利用している顧客の中には、Vodafone Business、SoftBank Mobile、そしてMount Sinai Health Systemがいる。

量子技術への関心が高まっているのは、おそらく、真の意味で耐障害性の高い量子コンピューティング(量子物理学を利用して、多数の可能性の中から可能性の高い結果を判断する能力)は5年以上先になるかもしれないが、いわゆる量子センシング技術といった他の関連技術は急速に現実化しつつあるということがわかってきたからだろう。

実はSandboxも、量子コンピューターの開発や利用よりも、量子技術のAIへの利用にフォーカスし、特にサイバーセキュリティのプラットフォームを強化するアプリケーションを開発している。同社自身の言葉によれば「量子物理学とその技術には、量子コンピューターを必要とせずに、今日のハイパフォーマンスコンピューターを使って近い将来商用化できる側面が数多くある。そこから得られる量子シミュレーションは現実世界のビジネスと多様な産業の科学的課題にに対応できる。金融サービスやヘルスケア、航空宇宙、製造業、通信、材料科学など、その対応範囲は広い」という。

この声明はブレイヤー氏が2週間前に語ったことと重なる。その際、彼は私たちに「量子関連企業には国のセキュリティをめぐって大きなチャンスがあります。しかし、私が今日、投資の観点から本当に期待しているのは、必ずしも超大型資本集約型の量子コンピュータではなく、量子センシングのような分野です」と述べている。

ブレイヤー氏が例として挙げたのは、非常に強力で超軽量な医療用顕微鏡だ。「米国の一部の優れた病院では量子センシングの技術を試用しています。それは心臓医学や薬の発見に革命をもたらすでしょう」という。

つまり、ブレイヤー氏によると究極的には量子コンピューティングのプラットフォームが病気の発見やセキュリティの改善、データの保護などで大きな役割を果たすだろうが、これらのシステムの一部に対して部分的な応用も可能であり、今すでに政府や企業といた大きな組織が巨大な量子コンピューターの登場を待たずに量子技術の応用に取り組んでいる。いずれにしても、待つ必要がないともいえるかもしれない。同氏は「そちらの方に手を回す必要がある」という。

「現在、量子テクノロジーは、4〜5年後の量子コンピューティングのブレイクポイントには達していませんが、非常に大きな変化をもたらしています」とブレイヤー氏はいう。Sandboxのチームは、その先頭を走っているチームの1つだと、そのとき彼は示唆していた。

画像クレジット:Justin Sullivan/Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Waymoがサンフランシスコでロボットタクシー乗車料金の徴収を開始

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)は、カリフォルニア州公益事業委員会から、サンフランシスコで自律走行車によるライドヘイリングに乗車した人に料金を課すことを認める許可を得た。ただし、許可の規定に従い、人間のセーフティオペレーターが立ち会う必要がある。

このカリフォルニア州公益事業委員会(CPC)からの許可取得は、同社がサンフランシスコで自律走行車を商用化するための最終ステップの1つだ。2021年9月、カリフォルニア州自動車局はWaymoに同市での運転者同席許可証を与え、それにより同社は自社の自律走行車が提供するサービスの対価を受け取ることができるようになった。

この許可は、Waymoが特別にロボットタクシーサービスに料金を課すことを許可するものではなかったが、同社は自律配送から収益を得ることができた。11月、同社はスーパーマーケットチェーンのAlbertsons(アルバートソン)と提携し、サンフランシスコで一部の顧客に食料品を配達している。

Waymoは2021年8月から、サンフランシスコで十分に精査された個人のグループである「Trusted Tester」プログラムのメンバーに無賃乗車を提供している。これは、乗車体験に関する詳細なフィードバックを提供してもらい、同社のサービスに関する学びを手助けするものだ。同社によると、テスターは秘密保持契約書にサインしてプログラムに参加し、ウェイティングリストは数万人に上るという。

今後数週間のうちに、WaymoのSFサービスエリア内であれば24時間365日どこでも有償で乗車できるよう、同社はこのプログラムを発展させる予定だ。

Waymoの広報担当者であるNick Smith(ニック・スミス)氏はTechCrunchに「我々は完全自律走行体験を一般に展開するための道筋を、段階的なアプローチで進めています」と語っている。「それは、私たちがアリゾナで取ったアプローチで、これは 私たちの安全への焦点に深く基づいています。そしてそれは、私たちが今後運営するどの都市でも取るであろうアプローチです。まず、自律走行モードで自律走行スペシャリストがハンドル操作を管理する状態で開始し、選ばれたテスターに、料金を徴収開始する前に無料で乗車を公開します。最終的には、ライダーのみのモード(他に誰も乗っていない状態)での運行に移行します。アリゾナでは、何千人ものライダーがライダーのみのモードで何万回もの移動をこなした実績があり、この方法はサービス運営に関する学びを得るのに役立っています」と語る。

同社は、同社の自律走行型Jaguar I-PACEを何台保有しているのかは共有していないが、最新のCPUC四半期報告書では、Waymoは報告期間中のある時点でライダーによる移動に利用できる車両を約100台保有していたことが判明した。

同社のライドヘイリングサービスであるWaymo Oneは、アリゾナ州フェニックスですでにドライバーレスサービスとして提供されており、このサービスがどの程度のコストになるかの指標となるはずだ。最近のCNBCのレポートによると、5mil(約8km)を14分かけて走った場合、結局1分あたり約1ドル(約115円)のコストがかかったという。Uberの平均的な乗車時間は1分あたり約0.40ドル(約46円)である。

「価格設定は合理的で、サンフランシスコの他のサービスと競争力のあるものになる予定ですが、現時点で共有できる具体的な内容はありません」とスミス氏は語る。

Waymoが有料乗車に完全移行したら、サンフランシスコのTrusted Testerの無料乗車を停止すると、スミス氏は述べた。

同市におけるWaymoの最大の競合であるCruise(クルーズ)は、Waymoがドライブレスの許可を得たのと同じ日にカリフォルニア州陸運局からドライブレスの展開許可を得ており、2月初旬から一般市民に対して人間のセーフティ・オペレーターを介さない無料乗車を提供している。Cruiseは、それらの乗り物を有料化するためのCPUCの許可をまだ待っているところだ。Waymoは、DMVにドライバーレス許可証を申請したかどうかについてコメントするのを避けた。

関連記事:Cruise、サンフランシスコの公道で自動運転タクシーの一般乗車開始へ

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AlphabetのドローンサービスWingが配達件数20万件を達成、豪スーパーマーケットColesとの提携を発表

Alphabet(アルファベット)のドローンサービスWing(ウイング)は米国時間3月1日、新しいマイルストーンとなる商業配送件数20万回を達成したと発表した。この数字は、試験飛行を除いたものであり、10万回を達成してから半年後の達成となる。オーストラリアが、テストおよび商用展開の主要市場であり、2022年1〜2月の配達回数は3万回となった。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

さらに細かくいうなら、1日に1000回以上、25秒に1回の割合で配達が行われたことになるとWingはいう。この大きな節目の数字は、オーストラリアの大手スーパーマーケットチェーンであるColes(コールス)との業務提携発表とともにやってきた。この契約により、Wingはオーストラリアの首都キャンベラで、食品からヘルスケア製品、トイレタリー製品に至る250種類の商品を配達することになる。

その他にも、KFCやRoll’d(ロールド)のベトナム料理、Friendly Grocer(フレンドリーグローサー)の新型コロナウイルス(COVID-19)迅速検査、St. John Ambulance QLD(聖ジョン・アンビュランスQLD)の応急処置キットなどが最近宅配サービスに加わった。大きな数字はともかく、都市部でのドローン配送の有効性には疑問符がついたままだ。多くのサービスは、未来のラストワンマイル配送の手段として、地上型ロボットに一段と積極的に注目している。

このテクノロジーは田舎や到達しにくい場所にとっては意味がある。しかし、Wing自身は、そのアプローチは都市生活にも適しているのだと主張する。

Google(グーグル)は米国時間3月1日のブログ記事の中で「ドローンによる配達を日常生活に取り入れることは、単なる利便性の追加にはとどまりません」と述べている。「交通渋滞や事故、温室効果ガスの排出量を削減すると同時に、企業の売り上げを伸ばし、忙しい日々の生活に余裕を取り戻すこともお約束します。そんな未来を覗きたいなら、オーストラリアをご覧ください」。

一方、Amazonの競合サービスであるPrime Air(プライム・エア)は、パンデミック中にレイオフを余儀なくされ、この配送方法の実行可能性に疑問を残している。

画像クレジット:Wing

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

グーグル、ウクライナでGoogleマップのリアルタイム交通状況ツールを無効に

Alphabet(アルファベット)は米国時間2月28日、取材に対し、ウクライナでGoogleマップのライブ交通状況ツールの一部を無効にしたことを明らかにした。Reuters(ロイター)が報じたこのニュースは、同国がロシア軍からの攻撃に直面している中で、同社が地元当局と協議した後に発表された。該当する機能に関して、広範なグローバルアクセスは無効になるものの、現地ドライバーのためのローカルターンバイターンナビゲーションは有効になっているとのこと。

人気の高い同社のマッピング技術は、ウクライナ侵攻の当初から意外な役割を担ってきた。カリフォルニア州のある研究施設では、ロシアの「特別軍事作戦」が公式に宣言される数時間前に、Googleマップの交通データと衛星画像を組み合わせて交通渋滞を発見し、ウクライナ国境に向かうロシア軍の接近を察知することができたという。

研究者のJeffrey Lewis(ジェフリー・ルイス)博士は、The Washington Post(ワシントン・ポスト)にこう語っている。「昔なら、現場で起きていることを教えてくれる記者に頼ったところですが、今日ではGoogleマップを開くと、キエフから逃げる人々を見ることができてしまいます」。

Alphabetの動きは、ロシア軍がウクライナ軍の動きを追跡するために、同様に情報を悪用する可能性があるという懸念からきているようだ。この件に関してAlphabetは、いつスイッチをオフにしたのか、他の世界的な紛争で同様の行動をとったことがあるのか、など具体的なことは何も述べていない。

現地では、ウクライナの人々はこの問題に対して、もっとはるかにオールドスクールなアプローチを取っている。同国の道路局であるUkravtodor(ウクライナ道路公団)は、ロシア軍を混乱させるため、道路標識を撤去し始めた

Ukravtodorは26日にソーシャルメディアに「やつらの地獄直行を手伝おう」と書き込んだ。「Ukravtodorは、すべての道路組織、領域共同体、地方自治体に、近くの道路標識の撤去を直ちに開始するよう呼びかけています」。

GoogleはTechCrunchの取材に対し、先週始まった侵攻に関しては直接のコメントを控えた

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

Waymo、ロボタクシーの安全性の詳細を秘密にすることを裁判所に認められる

カリフォルニア州の裁判所は米国時間2月22日、Alphabet(アルファベット)の自律走行部門のWaymo(​​ウェイモ)はAV技術に関する特定の詳細を秘密にしておくことができると判決し、同社は勝訴した。

同社は1月下旬、自律走行車の展開許可に関する一部の情報、およびカリフォルニア州車両管理局と同社との間の電子メールの一部を、身元非公開の第三者によって提出された公文書請求から削除するために、同局を提訴していた。

カリフォルニア州上級裁判所サクラメント支部による今回の判決は、少なくとも自律走行車業界においては、公共の安全に関わるが企業が企業秘密を含むと主張する情報への一般公開に関して、より広範な企業秘密保護の前例となる可能性がある。

Waymoは訴訟の中で、企業秘密の開示を迫られれば、自動運転技術への投資が損なわれ、車両管理局はもはや企業が自社の技術に関する情報を透明性を持って共有する安全な相手ではなくなるという「業界全体での冷え込み効果」があると主張した。

「Waymoがカリフォルニア州車両管理局に提出した許可申請書に含まれていた競争上重要な企業秘密の開示を除外する仮処分申請を裁判所が認めるという、正しい判断が下されたことをうれしく思います」と、Waymoの広報担当者はTechCrunchに語った。「当局と共有する詳細な技術情報は、必ずしも一般と共有することが適切ではないと認識している一方で、当社の自律走行技術と運用に関する安全性およびその他のデータをオープンに共有し続けます」と述べた。

カリフォルニア州でテストや展開を考えている他の自律走行技術企業と同様、Waymoもその安全対策や技術に関する情報を車両管理局に提出しなければならず、その後、車両管理局はより具体的な質問でフォローアップしていた。車両管理局はWaymoの許可申請情報の公文書請求を受けた際、企業秘密が漏れる可能性があると判断したカ所を検閲する機会をWaymoに与えた。Waymoはそれを実行し、車両管理局は主要部分を黒塗りにした状態で第三者にパッケージを送付した。Waymoによると、依頼者はこの黒塗りに異議を唱え、巻き込まれたくない車両管理局はWaymoに車両管理局に対して一時的な差止命令を求めるよう助言したという。その後、裁判官は2月2日に差止命令を出し、これによりWaymoは編集されていない形での資料の開示を永遠に禁止する差止命令を求めるための時間を稼いだ。

Waymoが訴訟を起こしたのは、同社のAVが特定の条件を識別して走行する方法、AVが人間のドライバーに制御を戻す状況を判断する方法、AV車両へのサポートを提供するタイミング、離脱事故や衝突事故への対処方法などの詳細を保護したいためだ。

「これらの研究開発には何年もかかり、莫大な資金を伴います」と、裁判所に共有されたWaymoの宣言文にはある。「WaymoのAV開発は、Waymoが2016年に独立する前、2009年にGoogleの一部として始まり、したがってWaymoのAV開発は12年以上にわたります。Waymoは、AV製品の研究開発に実に多大な投資を行ってきました」。

しかし、実際に企業秘密が含まれているかどうかは、その情報を一切見ることができないため、判断が難しい。

「問題は、その情報を他者と共有しないことによって純粋に経済的価値を得られるかどうかです」と、nuTonomy(Aptivが買収)の元顧問で、ニューヨークのイェシバ大学カルドゾ法科大学院の法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズレー)氏はTechCrunchに語った。

例えば、物体を知覚する問題や、他の要因がどのように極端なものになるかを予測する問題を詳細に説明するソフトウェアの不具合は、技術の仕組みに関する情報が明らかになり、競合他社がそれを真似るか、特定のビジネスに対する自社の相対的な位置を評価する可能性があるため、非常に機密性が高いとワンズレー氏は指摘する。したがって、企業がそのような情報を公にしたくないのは理に適っている。しかし同氏は、当局がこの技術が完璧ではないことを知っていて、リスクをゼロにすることより、むしろリスクを減らすことに関心があると確信している。もし規制当局が守秘義務のもとにさらなる情報を求めたら、自身は情報共有に傾くだろうとも述べた。

「Waymoが提出した訴状に目を通しましたが、同社が話している情報のカテゴリはかなり広いです」とワンズレー氏は話した。「同社が送った情報の中に企業秘密があるのでしょうか ?おそらく、いくつかあるはずです。送った情報のすべてが含まれているのでしょうか? おそらく、ほとんどではないでしょう。ただ1つ驚くのは、同社が企業秘密だと言っているものが、実際にすべて企業秘密であった場合です。しかし、同社が当局と共有する具体的な情報を知らない限り、知ることは困難です」。

そして今、市民は知る由もない。ビジネス界はこの結果を成功だと思うかもしれないが、カリフォルニア州や一般市民は自律走行車に関して正当な公共安全の懸念を抱いているかもしれないし、当局が自分たちの代わりに判断してくれるとは思っていないかもしれない。

AV技術は非常に複雑で高度なものであり、また当局の多くの職員は必ずしも技術者ではない。市民は、公聴会や学術研究などを通じて、重要で社会に直結する決定が適切に行われているかどうかを検証する権利があると主張する人もいる。

「ある面では、これが単なるブラックボックスである場合、公共の乗り物に対する社会の信頼をどのように醸成するかという核心に触れるものだと思います」とAlston & Birdのパートナーで知的財産権訴訟を専門とする弁護士のRyan Koppelman(ライアン・コッペルマン)氏はTechCrunchに語った。「そして、これは自律走行車の根本的な問題で、データを入力し、データを出力し、その結果が安全であることを示しているだけなのです。ですので企業は、ブラックボックスで何が起こっているか、あなたは知る必要はない、ただ安全だと認識し、我々を信頼してくれ、というでしょう。そして、ブラックボックスを覗き見して署名した車両管理局を信用しなさい、それで社会にとっては十分でしょう、ともいうでしょう」。

Waymo側は、自社の技術に対する不安を解消するために、一般市民と共有している情報の幅を指摘した。例えば、AV安全報告書を発行し、米運輸省に安全自己評価を提出し、法執行機関との対話ガイドと安全手法の詳細な説明を公表している。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルファベット社内の黒人投資家グループ「Black Angel Group」が台頭

Black Angel Groupの設立メンバー。左からジャクソン・ジョージズ Jr.氏、キャンディス・モーガン氏、ジェイソン・スコット氏(画像クレジット:The Black Angel Group)

1年前、巨大企業であるAlphabet(アルファベット)の社内で、黒人のGoogler(グーグル社員)やAlphabet社員が、黒人歴史月間中にエンジェル投資に関する非公式なプログラムに招待された。これはスタートアップ企業への投資がどのように構成されているか、可能性のあるエグジットまでの一般的なタイムラインなどについて、興味のある人が学べるように社員が企画したものだ。

このアイデアは、暫定的なエンジェル投資スクールのようなもので、組織を作り上げるためのものではなかった。それは単に、講演者として参加したGVのゼネラルパートナーであるJessica Verrilli(ジェシカ・ヴェリリ)氏をはじめとする、知識豊富な社員の話を聞きたいと思っているスタッフのための機会だった。

「こんなアイデアがあるけど、一緒に投資しない?という感じでした」と、GVのパートナーであり、エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョンに力を入れているCandice Morgan(キャンディス・モーガン)氏は語っている。

このアイデアを実現するために、2週間のうちに5人の参加者が集まった。それから、さらに多くの人が手を挙げて、どうしたら参加できるのかと尋ねるようになった。そして現在、このBlack Angel Group(ブラック・エンジェル・グループ)という組織には、Google(グーグル)、GV、CapitalG(キャピタルG)、YouTube(ユーチューブ)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)など、Alphabet社内から35人の黒人リーダーやオペレーターが参加している。

また、元YouTubeのVPで、最近ではPinterest(ピンタレスト)のチーフコンテンツオフィサーに就任したMalik Ducard(マリク・デュカード)氏のような、会社の卒業生もこのグループに参加している。

彼らは強力な個人であり、さらに強力なグループでもある。そのメンバーたちは、プロダクトマネジメント、ソフトウェアマネジメント、ユーザーエクスペリエンス、ピープルオペレーションなど、全員のさまざまな専門知識を駆使して、興味深い案件に参入を始めたところだ。2021年は、Bowery Farming(バワリー・ファーミング)、Polar Signals(ポーラー・シグナルズ)、Matter(マター)、Career Karma(キャリア・カーマ)など、約10社に50万ドル(約5800万円)以上の投資を行った。

いずれの場合も、より小規模な委員会が案件を持ち込み、メンバーはそれぞれ自分自身で決定するように依頼される。これまでのところ、出資した企業の半数は黒人の創業者であり、中にはGoogleの元社員である黒人の創業者もいたが、彼らの目的は黒人の創業者を支援することではなく、元同僚が創業した企業を探すことでもない。そうではなく、シードからシリーズAまでの「エシカル(道徳的)」な企業に焦点を当てていると、CapitalGのグロースパートナーで、この集まりのメンバーであるJackson Georges Jr.(ジャクソン・ジョージズ・ジュニア)氏はいう。

「私たちはブラックエンジェル(黒人エンジェル投資家)です。そしてブラックエンジェルのネットワークは、多くのエンジェル投資家のネットワークよりも、概して多様性に富んでいます」と、ジョージズ Jr.氏は語る。しかし、その最も重要な目的は、メンバーに世代間資産をもたらすための最良の投資先を見つけ出すことである。

だからこそ、Black Angel Groupは、その注目度を高め、より多くの案件に力を注ぐ準備を整えているのだ。

この成長の一部は、ドルという形でもたらされる。2022年のBlack Angel Groupの投資額は、これまでの投資額の「倍」になると、モーガン氏は予想している。

また、その成長の一部は、新しいメンバーからももたらされる。Googleでスタートアップ開発者エコシステムの責任者を務めるJason Scott(ジェイソン・スコット)氏はこう説明する。「2021年のエンジェルプログラムへの参加が、多くのメンバーの基盤となりました。しかし今は、他にも興味を持った黒人のGooglerやAlphabetの社員が参加を申し込めるようなプロセスを立ち上げています」。

全員がミリオネアである必要はない。この集まりを可能な限り包括的なものにするために、メンバーたちは、まだ認定投資家ではないが認定投資家になるための道を歩んでいる人たちにも、取引の流れへの参加を勧めることを計画している。

それは純粋な利他主義ではない。ジョージズ Jr.氏によれば、案件の調達や投資についてもっと知りたいと思っている出世途中の社員やOBを積極的に教育することは、グループにとってもメリットがあるという。数と、そしてネットワークには力があるからだ。

確かに、黒人投資家の世界を広げることは必要だ。現在、黒人投資家はベンチャー企業のパートナーの4%以下、エンジェル投資家の1%に過ぎない。このような数字を見れば、地球上で最も強力な企業の1つで道を切り開こうとしている黒人エンジェル投資家のネットワークが拡大していることは、特に注目に値するだろう。

実際、このグループは、メンバーの経験の蓄積や、より多くの出資を望んでいること、また、スタートアップの創業者たちが、より多様な投資家を資本政策表に加えることに関心を示していることを考えると、今後より多くの案件に登場することが予想される。

モーガン氏はその一例として、パフォーマンス分析を行うスタートアップ企業のPolar Signalsを挙げ、同社のCEO兼創業者であるFrederic Branczyk(フレデリック・ブランズィック)氏は「よく考えて非常に多様性に富んだ資本政策表を用意していた」と述べている。

他の多くの創業者も「かなり明確になっている」という同氏は、これを「すばらしいことだ」と語っている。

「私たちの価値提案で重要な部分は、私たちと価値観が一致する創業者と一緒に仕事をすることです」と、モーガン氏は言及している。多様性を重視することは「そのような創業者について多くのシグナルを与えてくれる」という。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

DeepMindのAI「AlphaCode」は競技プログラミングレベルのコードを書ける

DeepMind(ディープマインド)は、任意の問題を解決するためにコードを書くことができるAIを開発した。このAIはコーディングチャレンジに参加し、中間あたりの成績を収めたことで実証されている。まだソフトウェアエンジニアの仕事を奪うまでには至っていないが、基本的な作業の自動化に役立つ可能性がある。

Alphabet(アルファベット)の子会社であるDeepMindのチームは、できる限り多くの形で知能を創造することを目指しており、最近ではもちろん、多くの優秀な頭脳が取り組んでいる作業としてコーディングが挙げられる。コードは、言語、論理、問題解決の融合であり、コンピュータの能力に自然に適合すると同時に、難題でもある。

もちろん、このような試みは初めてではない。OpenAIには独自の自然言語コーディングプロジェクト「Codex」があり、GitHub Copilotと、Microsoftが提供する、GPT-3にコードを完成させるテストの両方を支えている。

関連記事:OpenAIが自然言語AIコーダーのCodexをアップグレード、プライベートベータを開始

DeepMindの論文では、競技プログラミングを狙う理由を説明する中で、フレンドリーながらも競争相手を遠回しに侮辱している。

近年の大規模な言語モデルは、コード生成能力に優れており、簡単なプログラミングタスクをこなすことができるようになってきた。しかし、これらのモデルは、単に命令をコードに変換するだけでなく、問題解決能力を必要とする、より複雑で見たことがない問題で評価すると、いまだに性能が低い。

それについてOpenAIは言いたいことがあるかもしれないが(そして、同社の次の論文ではこの点についての反論が期待できるだろう)、研究者たちが指摘するように、競技プログラミングの問題は一般的に、既存のコードAIには見られないレベルの解釈と創意工夫の組み合わせを必要とする。

DeepMindは、この分野に挑戦するために、GitHubの厳選されたライブラリと、コーディング問題とその解決策のコレクションを使って、新しいモデルをトレーニングした。言葉にすると簡単に聞こえるが、些細なことではない。完成したモデルを、この種のコンテストを主催するCodeforcesが最近開催した(言うまでもなく、AIはそれ以前に見ていない)10のコンテストに投入した。

その結果、50パーセンタイルを少し超える中位の成績を収めた。人間であれば中途半端な成績かもしれないが(決して簡単ではない)、機械学習(ML)モデルの最初の試みとしては、かなり注目に値する。

CodeforcesのMike Mirzayanov(マイク・ミルザヤノフ)CEOはこう述べている。「AlphaCodeの成績は、私の期待を超えていたと断言できます。なぜなら、競技プログラミングでは単純な問題であっても、アルゴリズムを実装するだけでなく、それを発明することも求められることが多いので(これが一番難しい)、半信半疑でした。AlphaCodeは、新人の有望なコンペティターと同レベルの性能を発揮してのけました」。

AlphaCodeが解決した課題とそのソリューションの一例は以下の通り。

画像クレジット:DeepMind

(DeepMindへのメモ:SVGはこのような図には厄介なフォーマットだ。)

ご覧のとおり、これは賢いソリューションだが、エンタープライズ向けSaaS級のものではない。心配無用、それはもっと先の話だ。今は、このモデルが複雑に書かれた課題を一度に解析して理解し、ほとんどの場合、首尾一貫した実行可能な回答を生み出すことができると示すだけで十分だ。

DeepMindチームはこう書いている。「コード生成に関する私たちの探求には改善の余地が大きく残されており、将来はプログラマーの生産性を向上させ、現在コードを書いていない人々にもこの分野を開くことができるような、よりエキサイティングなアイデアを示唆しています」。最後の部分は、筆者に当てはまる。もしAlphaCodeがCSSでレスポンシブレイアウトを変更できるなら、私よりもよほど優れている。

こちらのデモサイトでは、AlphaCodeがどのように構築されたのか、また、さまざまな問題に対するAlphaCodeの解決策をより詳しく見ることができる。

画像クレジット:Krisztian Bocsi/Bloomberg / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

Waymo、一部の自動運転車技術データをさらに22日間秘匿可能に

米国時間1月31日、Waymoは自動運転車の運用に関する一部の詳細データを一般に公表しないでもよい件に関して、小さな勝訴を勝ち取った。

Alphabet傘下の同社は先に、カリフォルニア州自動車局に対して、その自動運転車の展開許可証からの情報の一部を非公開とし、また、自動車局と同社との間のメールも、名称など非公開のサードパーティーから公開リクエストがあった部分を非公開にできるよう、訴訟を起こしていた。1月31日に判事はWaymoに対して、同社は一時的制限命令を発行して、非公開とされた情報をさらにあと22日間、非公表にしてもよいことになった。

これを恒久的な差し止めとしてWaymo側を安心させるか否かに関しては、2月22日に別のヒアリングが行われる。そのヒアリングでは、一部の情報が公開記録から永久かつ継続的に取り除かれていても良いか否かを検討する。

Waymoなどの自動運転車の開発者は、カリフォルニアでテストし展開するかぎり、州自動車局から一連の許可証を獲得しなければならない。カリフォルニア州の許可証を申請するために企業は、その安全対策と技術と、自動車局が通常求めるその他の情報を提出する必要がある。

Waymoの許可証に向けて記録公開リクエストがあると、自動車局は同社を招いて、企業秘密の部分を尋ねる。Waymoが、自動車局が尋ねた質問までも含めて企業秘密部分を指定すると、自動車局はそれら重要部分がブロックされたパッケージをサードパーティに送る。情報要求者がその黒塗りに抗議すると、自動車局はWaymoに、Waymoが消去部分のない公表を禁じる差し止め命令を要求しない限り、情報をリリースしなければならないと告げる。Waymoによると、自動車局は同社にアドバイスして、一時的な禁止令(一時的制限命令)を申請するよう勧めた。

今回のヒアリングで自動車局は、一時的な禁止令の申請に反対しなかったという。この件における自動車局のやや受け身の役割は、同局がどちらか一方の側にはつかない、というサインであり、最終決定を法廷に委ねている。

Waymoが守りたい(一般公開したくない)詳細は、自動運転車が何らかの状況を見つけても走行を続ける場合のやり方であり、人間ドライバーに任せるべきと判断するのはどんなときか、いつAV車隊のサポートを提供するのか、制御不能や衝突のインシデントにどう対応するのか、といった情報だ。同社は、サクラメントの州最高裁にこれらの件の訴訟を提出している。

同社の主張では、情報の公開はWaymoやAV技術への投資者にとって有害であるだけでなく「業界全体に水をさす」という。

訴状によると「AVのカリフォルニア州における展開に利害を有する市場参加者は、企業秘密の開示履歴が明らかとなれば、この技術を開発する貴重な時間とリソースへの投資に向かう積極性を失うだろう」という。

また他社も、どれだけの情報を自動車局と共有すべきかに関して引っ込み思案になってしまい、民間部門と行政との間の透明な対話よりも、業界は規制の精神の理解ではなく、規制を表面的に遵守するだけの態度を選ぶだろう。これによって、もしも自動車局がAVの規制を作って実施するために必要な全面的な展望を持っていなければ、技術の安全性が脅かされるだろう。これが、訴状でのWaymoの主張だ。

さらに他方では、Aptivが買収したnuTonomyの前法務部長で、ニューヨークにあるイェシーバー大学のカードーゾ・ロースクールの法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズリー)氏は以前TechCrunchに、Waymoが隠したい情報のすべてが企業秘密といえるか、それは疑問だが、その隠された部分を実際に見ないかぎりは真相は分からないという。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テック大企業をターゲットにした米国初の独禁法案が現実味を帯びてきた

テック企業が自社の製品やサービスを優遇することを防ぐ米上院の大型の法案が、議会における重要なハードルを通過し、法制定に一歩近づいた。

上院司法委員会は米国時間1月20日「American Innovation and Choice Online Act(米国のオンラインでのイノベーションと選択のための法案)」を採決し、注目を集める反トラスト法案を上院本会議での採決へと前進させた。この法案は、5人の共和党議員が上院民主党議員に加わって法案を推進し、16対6で委員会を通過した。

同法案は、テックプラットフォームが「自社の製品やサービスを優遇したり、ライバル企業に不利益を与えたり、プラットフォーム上の競争に重大な損害を与えるような形でプラットフォームを利用する企業を差別したり」することを禁止する。また、支配的なプラットフォームが他のサービスとの相互運用性を妨げたり、プラットフォーム上の他社のデータを活用して競合することも禁じられる。

こうした目的を達成するため「American Innovation and Choice Online Act」は、反トラスト法執行機関に「強力で柔軟な手段」を与え「民事罰、広範な差止命令、緊急暫定措置、役員報酬の没収の可能性」などを認めている。

上院司法委員会競争政策・反トラスト・消費者権利小委員会の委員長Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主・ミネソタ州選出)は、この法案を「インターネットの夜明け以来」上院議場に向かう初のテック大企業競争法案だと称賛している。この法案は、1月20日には進行を妨げなかったものの、最終的な文言に影響を与える可能性がある、いくつかの修正で変更が見られるかもしれない。

混み合い、ほとんど失速している立法議題に盛り込むために上り坂をのろのろと進んでいる一方で、法案の勢いは顕著で、これを受けてGoogle(グーグル)とApple(アップル)は今週初めにコメントで意見を述べている。

「毎日、何百万人もの米国人が新しい情報を見つけて、物事を成し遂げるためにGoogle検索、Maps、Gmailのようなオンラインサービスを使用しています」と Alphabet(アルファベット)のグローバル問題担当社長兼最高法務責任者Kent Walker(ケント・ウォーカー)氏はブログ投稿に書いた。「……下院と上院で議論されている法案は、そうしたサービス、他の人気オンラインサービスを壊す可能性があり、その結果、今ほどに有用かつ安全なものでなくなり、そして米国の競争力を損ないます」。

Appleはまた、上院司法委員長Dick Durbin(ディック・ダービン)氏、共和党の有力委員Chuck Grassley(チャック・グラスリー)氏、反トラスト小委員会委員長クロブチャー氏と小委員会の有力メンバーMike Lee(マイク・リー)氏に手紙を書き、介入を模索した。

「ソーシャルメディアに関する複数の論争、長い間無視されてきた子どもへのリスクに関する内部告発、重要なインフラを妨害するランサムウェア攻撃を目撃した激動の年を経て、議会が米国人の個人デバイスのプライバシーとセキュリティの保護をはるかに困難にする措置を取るとしたら、それは皮肉です」とAppleの政府問題担当シニアディレクターのTim Powderly(ティム・パウダリー)氏は書いている。「残念ながら、これらの法案はそうなりそうなものです」。

2社は、別の法案「Open App Markets Act(オープンアプリ市場法)」とともに、この法案が消費者セキュリティに害を及ぼすと主張した。オープンアプリ市場法案は、OSを管理する企業にサードパーティーのアプリやアプリストアを認めさせ、開発者が消費者に対して、同じソフトをより安い価格で入手できる場所を教えることを認めるというものだ。

関連記事:モバイルアプリのアプリストア支配の打破で上院が新法案

1月17日の週に、Yelp(イェルプ)、DuckDuckGo(ダックダックゴー)、Sonos(ソノス)、Spotify(スポティファイ)、Proton(プロトン)、Match Group(マッチグループ)、スタートアップアクセラレーターのY Combinator(Yコンビネーター)を含むテック企業グループと、ベンチャーキャピタル企業のInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)が、反自社優遇法案への賛成を表明した。

「米国や世界各国の政府の調査から、支配的なテック企業が、競争、消費者、イノベーションを阻害するゲートキーパーの地位を獲得して市場に定着させるために、多くの反競争的な自己優遇戦術を使用していることが明らかになっています」と、各社は記している。「The American Innovation and Choice Online Actは…デジタル市場の競争を回復し、消費者が望むサービスを選択できるよう、障壁を取り除くために自社優遇をターゲットにしています」。

テック産業の規制は、議会で超党派の協力を促す珍しい問題であり、そうした法案の進捗がまだ這うようなものだとしても、テック産業がそのビジネスに対する新しい規制を予想すべきものだ。

この法案は、上院議員のエイミー・クロブシャー氏(民主・ミネソタ州選出)とチャック・グラスリー氏 (共和・アイオワ州選出)が提出し、Dick Durbin氏 (ディック・ダービン、民主・イリノイ州選出)、Lindsey Graham氏(リンゼイ・グラハム、共和・サウスカロライナ州選出)、Richard Blumenthal氏(リチャード・ブルーメンソール、民主・コネチカット州選出)、John Kennedy氏(ジョン・ケネディ、共和・ ルイジアナ州選出)、Cory Booker氏(コリー・ブッカー、民主・ニュージャージー州選出)、Cynthia Lummis氏(シンシア・ルミス、共和・ワイオミング州選出)、Mark Warner氏(マーク・ウォーナー、民主・バージニア州選出)、Mazie Hirono氏(メイジー・ヒロノ、民主・ハワイ州選出)、Josh Hawley氏(ジョシュ・ホーリー、共和・ミズーリ州選出)、Sheldon Whitehouse氏(シェルダン・ホワイトハウス、民主・ロードアイランド州選出)およびSteve Daines氏(スティーブ・デインズ、共和・モンタナ州選出)が共同スポンサーになっている。

下院版の法案は、下院反トラスト小委員会の委員長David N. Cicilline氏(デイビッド・シシリー二、民主・ロードアイランド州選出)と有力委員のKen Buck氏(ケン・バック、共和・コロラド州選出)が主導し、すでに委員会を通過して投票の準備が整っている。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

議事堂暴動を調査する米下院委員会がMeta、YouTube、Twitter、Redditに召喚状

2021年1月6日の米議会議事堂での暴動に関する調査を主導する下院委員会は米国時間1月13日、テック大手4社に召喚状を出した。

「1月6日特別委員会」の委員長Bennie G. Thompson(ベニー・G・トンプソン、民主・ミシシッピ州選出)氏は、YouTube(ユーチューブ)の親会社Alphabet(アルファベット)、Facebook(フェイスブック)とInstagram(インスタグラム)の親会社のMeta(メタ)、Reddit(レディット)、Twitter(ツイッター)に対し、これらのプラットフォームが当日の暴動を組織するためにどのように使われたかについて追加情報を提供するよう要求する文書を送付した。

発表の中で委員会は、連邦議会議事堂への攻撃計画に関連したコンテンツをホストしていると各社を非難している。「Metaのプラットフォームは憎悪、暴力、扇動のメッセージを共有するため、選挙に関する誤った情報、偽情報、陰謀論を広めるため、そして『Stop the Steal運動』を調整、または調整しようとするために使われたとされています」と委員会は述べ、その後解散したFacebookのCivic Integrityチームが調査に関連する情報を持っていたと考えていると指摘した。

当時報じたように、Facebookは2020年の米大統領選の正当な結果を否定するコンテンツの拡散を制御できず、Stop the Steal運動の主要ハブだった。また、Facebookは以前、Proud BoysやThree Percentersなど、議事堂襲撃事件の一翼を担うに至った一部の過激派や民兵的なグループを組織するためのプラットフォームとして選ばれていたこともあった。

同委員会のRedditへの苦情は、2020年1月下旬にヘイトスピーチを巡って禁止された後、独自ドメインに移行した悪名高いサブレディット「r/The_Donald」に焦点を当てているようだ。委員会はまた、YouTubeが暴動のライブストリームに使用されたこと、Twitterユーザーが「暴行の計画と実行に関するコミュニケーションに同プラットフォームを使用したとされている」ことを指摘した。

委員会は2021年8月に初めて15のプラットフォームに関連記録を要求したが、その回の書簡では、Snapchat(スナップチャット)、Twitch(ツイッチ)、TikTok(ティクトック)といった従来のソーシャルメディアアプリに加え、4chan(4チャン)、8kun(8クン)、Gab(ギャブ)、Parler(パーラー)、theDonald.win(ザドナルド・ドット・ウィン)といった過激派向けのサイトにも情報を要求している。

「繰り返し具体的に要請したにもかかわらず」4つの主要なソーシャルプラットフォームが十分に詳細な情報を提供しなかったため、委員会は前回と同じ要請をしており、今回は1月27日を期限としている。

画像クレジット:Photo by Spencer Platt/Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルファベット傘下Waymoが中国メーカー「Geely」と提携、米国での配車サービス用電動AVを製造へ

Alphabet(アルファベット)の自律走行技術部門であるWaymo(​​ウェイモ)は、中国の自動車メーカーGeely(吉利)と提携し、全電動の自動運転配車サービス車両を製造する。WaymoのAVシステムであるWaymo DriverをGeelyのZeekr車両に統合し「数年内」に米国市場で使用する予定だ。

Waymoは生産開始時期やこれらの車両が路上を走るようになる時期など具体的なタイムフレームを示していないが、この提携はWaymoがOEM提携に向けたマルチプラットフォーム・アプローチを追求していることを示している。Waymoの現在の配車サービス車両は、Jaguar(ジャガー)のI-PacesとChrysler Pacifica(クライスラー・パシフィカ)のハイブリッド構成で、アリゾナ州フェニックスで自律走行による乗車を提供している。また、 Fiat Chrysler automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)を傘下に持つStellantis(ステランティス)との提携を拡大し、ローカル配送サービスも行っている。Waymoの広報担当者によると、吉利との計画によるWaymoの既存の提携への影響はないとのことだ。

Geelyが2021年3月に立ち上げた高級EVブランドZeekrは11月、初のプレミアムモデルである洗練されたクロスオーバーを中国で発売した。Waymoのバージョンは、レンダリング画像ではミニバンのような外観で、スウェーデンのヨーテボリでカスタム設計とエンジニアリングが行われている。米国に出荷された後、Waymoがライダー、センサー、カメラなどのハードウェアとソフトウェアを含む同社のDriverを車両に統合し、自社の配車サービスフリートで展開する予定だと同社は話している。

関連記事:中国自動車メーカーGeelyがTeslaら対抗でラグジュアリーなEVブランド「Zeekr」を立ち上げ

Waymoのブログ記事によると、Zeekrの車両は「ライダーファースト」に設計されていて「よりアクセスしやすいフラットフロア、Bピラーレス設計による容易な乗降、低い踏み込み高、ゆったりした頭上と足元のスペース、完全に調節可能なシート」を備えている。完全なドライバーレス化を見据えてハンドルやペダルがない代わりに、ゆったりとくつろげるよう頭上と足元のスペースは十分に確保され、リクライニングシートやスクリーン、充電器も手の届くところに設置される。

Cruise(クルーズ)やArgo AI(アルゴAI)など他のAV企業も、専用の配車サービス用EVの計画を明らかにしている。Cruiseは2020年、ライドシェア向けのOriginを発表した。9月にはArgoとVolkswagen(フォルクスワーゲン)が共同開発した自律走行バンのID Buzz ADの計画を明らかにし、2025年にドイツのハンブルクで自律走行配車プールシステムの一部として商業展開する予定だ。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、EUの違約金3145億円のGoogleショッピング独占禁止決定を覆せず

Google(グーグル)の購買比較サービス(Googleショッピング)に対する2017年のEU反トラスト事実認定における異議申し立ては、欧州連合の一般裁判所により大部分が棄却された。

これは欧州委員会の反トラスト部門にとって重要な勝利であり、近年、同部門はGoogleに対する複数の決定を含め、このビッグテックに対する強制執行を次々と行ってきた。しかし、2021年の夏はApple(アップル)への追徴課税に対して大きく敗訴していた

米国時間11月10日、欧州の一般裁判所は、製品比較検索サービスであるGoogleショッピングに関連して、競争の濫用に対してGoogleおよびその親会社のAlphabet (アルファベット)に4年以上前に課せられた24億2000万ユーロ(約3145億円)の違約金を支持した。

GoogleがGoogleショッピングに対するさらなる上訴を求めるかどうかは定かではない。

広報担当者は質問に対するコメントを避けた。2017年に、委員会はGoogleがその自社の名を冠した購買比較サービスを派手に目立たせる一方で、同時にオーガニック検索結果でライバルの順位を下げることにより、検索の支配的立場を濫用していることに気づいた。

Googleとその親会社のアルファベットは判決に対して上訴したが、一般裁判所は請求のほとんどを取り下げた。認可を受けた行動が反競争的であり、Googleがより良い結果のために役立つよりも、その比較購買サービスを競合サービスより優遇したことに同意した。

判決に関するプレスリリースで、裁判所はもう1つの問題ある戦術についても読み上げた。「Googleはその後、競合の比較購買サービスが有料で『ボックス』内に表示させることでその結果表示の質を高められるようにしたが、一般裁判所はそのサービスがビジネスモデルを変えてGoogleの直接の競合となることをやめ、代わりにその顧客になってその比較購買サービスに依存していると述べた」。

さらなる事実認定では、裁判所はGoogleの反競争的行為がその競合にとって有害な影響があることに同意した。そして比較購買グサービスの競合がその市場の販売者プラットフォームの存在により深刻な状態のままだというGoogleの主張を受け入れず、それらのプラットフォームが同じマーケットにないとの委員会の評価に同意した。

Googleにとってせめてもの救いは、委員会がテックジャイアントの行為が一般的な検索サービスのマーケットに(可能性も含め)反競争的影響を及ぼしたことを確証しなかったことに裁判所が気づいたことだ。そのマーケットだけに関して違反の発見を取り消した。

しかし、もう一度いうが、比較購買に特化した検索サービスの委員会の市場分析(およびその中におけるGoogleの反競争的活動)を支持した。

また、裁判所は、Googleのその行為が「検索サービスの質を向上させた」ため客観的に正当化されるという主張を退けた。

そして平等な扱いの提供を妨げる技術的制約についてのGoogleの請求を棄却した。

「Googleは競争に対するその負の影響を相殺する慣行に結び付いた効率の向上を示さなかった」。プレスリリースにはそう付け加えられた。

委員会により課された制裁金のレベルを支持するときに、裁判所はそれが取り消した判定の一部が罰金額に影響しないと述べ(「委員会が罰金の基準額を判断するためにそのマーケットでの販売額を考慮しなかったため」)、また行為が不注意によるものではなく意図的であるという事実を考慮し「特に違反の深刻な性質」として説明されるものを強調した。

委員会は、判定が「Googleの行為が違法で、それがマーケットに必要な法的明確性を提供する明確なメッセージを伝える」ものであると述べた。

「比較購買は、eコマースがどんどん小売業者や消費者にとって重要になってきた時に消費者に重要なサービスを提供します。デジタルサービスが私達の社会に偏在している今、消費者は情報に基づいた、偏見のない選択を行うためにそれらに依拠できるようになるべきだ」。と、委員会は声明で述べた。

委員会は「すべてのツールを自由に」続けて使用し「企業やユーザーがエンドユーザーやデジタルサービスにアクセスするために利用する大きなデジタルプラットフォームの役割に対応する」と付け加え、現在欧州議会および理事会により議論がなされており「公平性と競争可能性 」の確保を目的としたそのデジタルマーケット法規制の提案を指摘した。

その独自の声明内で判決に反応し、Googleの広報担当者は書面でいかなる重要性も軽視しようとした。

ショッピング広告は常に人が求める製品を迅速かつ簡単に探すのを助け、商売人が潜在顧客にリーチするのを助けてましきた。今回の判定は、非常に特定の事実に関連するものであり、念入りに読むと、2017年に欧州委員会の判定に準拠するよう変更を行いました。当社のやり方は3年以上うまく機能しており、700を超える比較購買サービスで何十億回のクリックを生み出しています。

しかしGoogleのローカル検索分野におけるライバルの1社、Yelp(イェルプ)は判定に付けこみ「他のバーティカルにおける行為の種類違法性の迅速な評価」のための枠組みを確立したと述べ、委員会にローカル検索に関してGoogleに対し措置を取るよう求めています。

「Yelpは欧州の一般裁判所による今日の判決、つまりGoogleがバーティカルの検索サービスの競合を消すために一般的な検索における支配を濫用したことをいかなる効率に関する正当な理由なく違反と認定したことを歓迎している」とパブリックポリシーのSVP、Luther Lowe(ルーサー・ロー)氏は声明で述べた。

「ピュロスの勝利を受け入れるよりも、欧州委員会は今こそ望ましい前例を受け入れ、ローカル検索市場における同時濫用でGoogleを告訴し、Yelpのようなサービスが実力で競争できるようにしなければなりません」。彼は続けた。「現在覚えておくことは難しいかもしれせんが、Googleとその同種のビッグテックはいつもこれほど不人気とは限りませんでした。2015年、欧州委員会の副委員長であるVestager(ベスタージャー)氏はGoogleの濫用が受け入れられないことを世界に見せるという驚くような勇気を見せました。彼女はこの勇気を称えられるべきです」。

「しかしこの期間における歴史の判断はこのオデッセイが最終的に欧州の消費者に目に見える影響を生み出したかどうかに基づきます。そのためこれらのツールが、競争が救いのままである市場で活用されることが必須なのです」。

その間に、Googleには他のEU反トラストの事実認定(AndroidおよびAdSense)に対する上訴のパイプラインに加えて、そのアドテックのEUの公開調査がある。母国の多数の反トラスト事例はいうまでもない。

したがって、その弁護士達は今回の損失の派生効果に関係なく非常に忙しい日々を過ごすだろう。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

グーグルの親会社アルファベットがAIを活用して創薬に挑むIsomorphic Labsを設立

創薬の分野はAIの能力によって超高速化が進んでいる。複数の企業がさまざまな方法でAIを応用し、膨大な実際上の課題を、扱いやすい情報の問題に変えている。最近の動きとして、Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)が、DeepMind(ディープマインド)のトップであるDemis Hassabis(デミス・ハサビス)氏の下でIsomorphic Labs(アイソモルフィックラボ)を設立し、この有望な新分野に挑戦する。

この会社については、初公開のブログ記事と、それに付随するごく一般的なFAQでは、ほとんど何も明らかにされていない。同社の目的は「生体システムを第一原理から理解し、病気治療の新方法を発見する計算プラットフォームを開発する」ことだ。

もちろん、この設立宣言には、いくつかの前提条件が織り込まれている。その中でも最も重要なのは、創薬に適した方法で生体システムを計算機上でシミュレートすることが可能であるという前提だ。

過去5年ほどの間に、よく似た目標を追求するために、複数の大企業が形成され、何億ドル(何百億円)もの資金が投入されたが、目に見える革命や、これまで治療不可能だった病気の特効薬をAIが発見したというようなことはなかった。その理由について考察することは本稿の範囲を超えているが(近い将来、Isomorphic Labsが取り組むことになるだろう)、AIシステムというものは奇跡の工場ではなく、いまだに膨大な時間・資金・試験管を必要とする長く複雑なプロセスの一部に過ぎないことは明らかだ。

ハサビス氏も馬鹿ではない。同氏は生物学を「情報処理システムです。ただし、非常に複雑で動的な」とやや楽観的に表現しているが(この分野の読者は下にスクロールしてコメント欄に向かっていることだろう)、直後にやや穏やかな言葉に置き換えた。

生物学はあまりにも複雑で混沌としているので、単純な数式では表現できないものです。しかし、物理学を記述する適切な言語は数学だということがわかったように、AIを応用する対象として生物学が最適だということが明らかになるかもしれません。

情報システムと生物システムには共通の構造があるのではないかという考えから「Isomorphic Systems(同型のシステム)」と名づけられた。同型とは、形は似ているが起源が異なるという意味だ。

同氏の説明の背景には、2020年、生物学者の度肝を抜いた、DeepMindのAI搭載タンパク質折り畳み構造解析システム「AlphaFold」が有効だとわかり、非常に複雑な分野で新たな常識を生み出すことに貢献したことがあるのは間違いない。

DeepMindの学習システムが汎用性や知識の伝達に特に親和性があることが明らかになりつつある。さまざまなタスクに再利用できる構造を持つということだ。AlphaFoldの成功が示すように、生物学的システムがこの種のシミュレーションや分析に適しているとすれば、ハサビス氏による検証は同社の幅広い能力を証明することになるかもしれない。

しかし、それが実現するのはしばらく先のことだろう。DeepMindがAI研究でスタートダッシュを見せたとしても、Isomorphicは基本的にこの問題をゼロから始めることになる(今後も両社は別々の会社として存在する見込みだが、研究結果は共有される可能性がある)。Isomorphicは、採用により「世界レベルの学際的なチーム」を構築しており、おそらく1~2年後には、同社の野望から生まれる成果の最初の兆候を目にすることができるだろう。

画像クレジット:Isomorphic Labs

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトとAlphabetはともに投資家の成長予測を上向きに裏切る

スタートアップへの投資の世界的なブームを支えているのは、デジタル製品とサービスへの巨大な需要とその成長だ。しかも実は、小さなテクノロジー企業を後押ししている同じ追い風が巨大企業の力にもなっている。

ソーシャルの大手Snapの第4四半期の弱い成長予測と、ソーシャル大手Facebookの売上の鈍化の後を受けて、その他の巨大テクノロジー企業に対する予測が低くなったとしても許されるだろう。

しかし米国時間10月6日は、まるでスタートアップような扱いをされかねない市場の空気をぶち破って、MicrosoftとGoogleの親会社Alphabetはいずれもその売上が予測を上回った。

以下が、その数字だ。

時間外取引でMicrosoftの株価は1%の上昇、対してAlphabetは微減だった。

もちろん、どちらの決算報告も話題山積みだ。AlphabetとMicrosoftはともに、単なる企業というよりも企業帝国に近い。両社をすこし掘り下げてみよう。

Microsoftの2022会計年度第1四半期

Microsoftの強烈な数字の中心にあるのは、パブリッククラウドサービスAzureの成長だ。この売上源は前年比で50%成長し、恒常通貨ベースでは48%の成長となった。言い換えるとAzureは通貨変動によりわずかに上昇し、売上が髪の毛一本ほど増えた。

細部の話はともかくとして、Azureの成長はこのところずっと、ほぼ50%周辺を維持している。つまりMicrosoftのプロダクトの全体としてトップラインに、Azureからかなり大きな数字が加えられていることを意味している。

Microsoftの決算報告を見て目立つその他の数字は、検索とニュースの売上が前年比で40%伸びていることだ。この数字はトラフィック取得費用などを取り除いて調整されているが、このような公正を期しての調整はAlphabetも行っている。一方悪い方のニュースは、Surfaceの売上が17%落ちたことだが、新しいハードウェアを準備中だから好転の可能性もある。

サブスクリプションに関しては、Microsoftは好悪混交している。Office 365の企業売上は前年比で23%伸び、同じプロダクトの消費者収入は低めの10%という成長だ。そしてLinkedInの売上の42%増は、Microsoftにとってかなりの余録だ。

Alphabetの2021年第3四半期

Alphabetの財務報告の良いところは、短いので記事にしやすいことだ。下図を見てみよう。

Alphabetの決算報告

YouTubeの売上の伸びは依然として驚異的で、今回同社はこの製品を独立項目にしている。なお、2020年にはパンデミックで突然みんなが家にいるようになり、テクノロジー大手の検索広告の需要が落ち込んだが、その中でどこよりもGoogleの被害が大きかった。被害を受けたのは他の検索サービスもにも影響があった。

CNBCのマーケット予測記事によると、Google Cloudは今四半期の成長ターゲットに達しなかった。予想は50億7000万ドル(約5777億円)で、実値が49億9000万ドル(約5686億円)、一応成長ではあるが、投資家たちがGoogleのクラウドに期待していた額には達しなかった。

細かい科目も集めれば大きいが、グループの営業損失は当四半期に増えた。さまざまな研究開発事業は合わせて12億9000万ドル(約1470億円)の営業損失を計上し、前年同四半期の11億ドル(約1253億円)よりも大きくなった。

ここで両社の財務についてさらに1000の言葉で表現するのを止めると、2つの大手テック企業は堅実な成長率を上げ、彼らの間で数兆ドルを稼ぎ、株式買い戻しと配当金を含む株主に優しい活動に回収された2350万ドル(約27億円)を使った。テクノロジーの巨人になるには良い時代だ。

画像クレジット:Bryce Durbin/ TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ドラッグストアWalgreensがドローン配送をテキサス州ダラス・フォートワース地域で展開

Alphabet(アルファベット)は米国時間10月20日、子会社Wing(ウィング)とWalgreens(ウォルグリーン)が提携し、テキサス州ダラス・フォートワース地域の一部でドローンによる配送を行うことを発表した。ドラッグストア大手Walgreensは、Alphabetの補助金によって発表された新しい迅速なドローン展開システムを利用する最初の企業となる。

今回の発表に先立ち、Wingはフォートワースに拠点を置くHillwood(ヒルウッド)のAllianceTexas Flight Test Centerでドローンの飛行テストを行っている。今後数週間のうちに、周辺地域のフリスコ市とリトルエルム町でテスト飛行を開始し、今後数カ月のうちにさらなる商業的拡大が期待されている。

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Alphabetは、以前からオーストラリアでシステムのテストを行っており、2019年からはバージニア州の町クリスチャンズバーグで小規模な配送を運用している。同社は、より人口密度の高い地域への拡大を開始するために、アメリカ連邦航空局(FAA)と協力しているという。担当者がTechCrunchに以下のように語った。

2019年4月、Wingは連邦航空局から航空事業者として認定された初のドローン事業者となり、何マイルも離れた受取人に商品を届けることができるようになりました、そして2019年10月にバージニア州でサービスを開始するための許可も得ました。現在は、この許可をさらに拡大するために向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース地域でのサービス開始に先立ち、私たちは地域、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保します。

今回の初期導入では、ドローンはWalgreensの駐車場から離陸する。また、ドローンのコンテナを格納庫として有効的に活用するこのシステムは、屋根や建物の横にも展開することができる。

「これまで米国でのこの種のサービスは、土地利用が混雑しておらず、複雑ではない小さな町に限られていました」Alphabetは発表で述べた。「Wingの信頼性の高い機体と高度な飛行計画とルーティング機能により、より混雑した複雑な環境でも高度に自動化されたドローン配送サービスを運用できるようになります」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Yuta Kaminishi)

アルファベットCEOピチャイ氏がテック業界の規制とサイバーセキュリティへの投資を米国に要求

WSJ Tech Liveカンファレンスで行われたリモートワークの未来からAIの革新、従業員の政治活動、さらにはYouTubeにおける誤情報にいたるまで幅広い話題に及んだインタビューで、Alphabet(アルファベット)CEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、米国における技術革新の現状と新たな規制の必要性について自身の考えを述べた。特にピチャイ氏が強調したのは、米国の連邦レベルのプライバシー基準の創設で、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)に類似するものだ。さらに同氏は、中国の技術エコシステムが欧米市場からさらに切り離されていく中、米国がAI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどの分野で有意を保つことがより一層重要であると提起した。

ここ数カ月、中国はテック企業の締め付けを行っており、テック企業による独占の阻止、顧客データ収集の制限、およびデータセキュリティを巡る新たなルール制定など、新たな規制がいくつも施行されている。Google(グーグル)を含め多くの米国テック企業は中国で中核サービスを提供していないが、提供中のいくつかの企業は撤退を始めている。たとえばMicrosoft(マイクロソフト)は2021年10月、LinkedIn(リンクトイン)を中国市場から引き上げた

関連記事:マイクロソフトがLinkedInを中国市場から撤退

ピチャイ氏は、こうした欧米テック企業の中国との分離は今後増えていく可能性があると語った。

またピチャイ氏は、米国と中国が競合する分野で先行することが重要だと語り、AI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどを挙げて、Googleによるこれらの分野への投資が、政府による「基礎研究開発財政支援」がやや後退したタイミングで行われたことを指摘した。

「政府のリソースは限られているので焦点を絞る必要があります」とピチャイ氏は話した。「しかし私たちが恩恵を受けているのは20~30年前の基礎的投資からです。現代テクノロジーの多くがこれに基づいており、少々慣れきっているところもあります」と彼は語った。「だから私は、半導体サプライチェーンと量子コンピューティングでリードするために、政府は重要な役割を果たすことができると考えています。それは政策面だけでなく、私たちが世界中から優れた人材を集めたり、大学と協力して長期的な研究分野を作り出すことを可能にすることです」とピチャイ氏は付け加えた。それらの分野は民間企業が最初から焦点を当てられるものではないかもしれないが、10年20年かけて実行できると彼は言った。

国境を超えるサイバー攻撃が増加する中、ピチャイ氏は、サイバーワールドのための「ジュネーブ協定」のようなものが必要な時が来たと語り、政府はセキュリティと規制の優先順位を上げるべきだと付け加えた。

同氏は米国における新たな連邦プライバシー規制に賛成する意見を明確に表明した。これはGoogleは過去何度にもわたって強く要求してきたもので、ヨーロッパのGDPRのようなものを想定している。

「GDPRはすばらしい基盤となっていると私は思います」とピチャイ氏は言った。「私は米国に連邦レベルのプライバシー基準ができることを強く望んでおり、州ごとにバラバラな現在の規制を懸念しています。そのために複雑さが増しています」と彼は続けた。「大企業はさまざまな規制に対応して自らを守ることができますが、小さな会社を始めるためには大きな障壁です」。

これは、Facebook(フェイスブック)CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が規制を求めた際にも再三指摘された問題だ。米国テック業界の規制が強化されることは、FacebookやGoogleのように規制のハードルを超えるためのリソースをもつ大企業に有利に働く。しかし、国が単一の基準を定めることによって、巨大テック企業はただ1つの規則と戦い、米国各州に点在する多くの規則に対応する必要がなくなる。

ピチャイ氏は消費者のプライバシーをセキュリティに結びつけ「プライバシーの最大のリスクはデータが不正アクセスされること」であるとも指摘した。Google最大のライバル、Amazon(アマゾン)のゲーム・ストリーミングサイトであるTwitch(トゥイッチ)がわずか数日前にハックされた後だけに興味深い発言だ。

テック業界の規制でどこに線を引くのかについてピチャイ氏は、法律はオープンインターネットを侵害すべきではないと語った。

「インターネットがうまくいっているのは、相互運用可能で、オープンで、国境を越えた利用が可能で、国境を越えた取引を推進しているからだと私は思っています。だから私たちがインターネットを進化、規制していく上で、こうした特性を維持していくことは重要だと考えています」と同氏は話した。

CEOは他にも、パンデミックが企業カルチャーに与える影響、従業員の政治活動、YouTube上の誤情報などAlphabetとGoogleが直面しているさまざまな問題に関する質問に答えた。

YouTubeの問題についてピチャイ氏は、体験の自由に対する誓約を表明しつつも、最終的には、会社がコンテンツクリエイターとユーザーと広告主のバランスを取ろうとしていることに言及した。同氏は、多くのブランド広告主が自分たちの広告がある種のコンテンツと並んで表示されることを望んでいないと語った。本質的に、YouTubeの広告を基盤とする経済には、誤情報問題の解決に役立つ可能性があることを同氏は示唆した。

「自由市場ベースで考えれば、自分の広告がブランドを損なうと思うコンテンツと並ぶことを広告主は望まない、ということができます。ある意味で、エコシステムのインセンティブが時間とともに正しい判断を後押しすることが実際にあるのです」。

しかしピチャイ氏は、YouTubeは自らがコンテンツの判断を下すことで、パブリッシャーのように振る舞っているのではないか、というインタビュアーの質問はかわした。

ピチャイ氏はパンデミック下におけるAlphabetの企業カルチャーとオフィスへの復帰についても語り、3-2モデル(3日対面と2日リモート)がよいバランスをもたらすと言った。対面勤務日によって共同作業とコミュニティが可能になり、リモート勤務日によって社員は長時間通勤など対面勤務につきものの問題をうまくやりくりできる。しかし、インタビューの別の部分では、ピチャイ氏は少なくなった自身の通勤時間を懐かしんだ。そこは「深く考える」ための空間だったと彼は言った。

従業員の積極活動について。近年多数かつ多様化した従業員が幹部の下した決定と対立する意見を共有することが頻繁に起こり、多くの積極的活動が見られている。ピチャイ氏はこれをビジネスにおける「新常態」だという。しかし、これはGoogleにとってまったく新しいことではないとも指摘した(たとえば数年前、Google従業員は会社が中国市場向けに検閲機能付き検索エンジンを開発していることに抗議した)。

「最近慣れてきたともいえます」とピチャイ氏は語り、会社としてできる最善のことは、決定したことを説明しようとすることだと語った。

「私はこれを会社の強みと考えています、高いレベルで。会社のやっていることをそこまで深く気にかけるほど熱心な従業員がいるのですから」と彼は言った。

画像クレジット:Kenzo Tribouillard / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Alphabet傘下のWingがショッピングセンターの屋上からドローンで配達する試験プログラムを開始

Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が、同社のドローンを使ってショッピングセンターの屋上から商品を飛ばす試験プログラムを開始した。実は同社最大の市場であるオーストラリアのローガン市で、このプログラムはすでに始まっている。Wingはオーストラリアの商業施設グループ、Vicinity Centres(ヴィシニティ・センターズ)と提携し、ローガン市のショッピングセンター「Grand Plaza(グランドプラザ)」で、この新しいビジネスモデルをテストしている。Wingのドローンは、発射台の真下にある店舗から、顧客に向けて直接注文された商品を飛ばしているのだ。

Wingは2年前からローガン市で事業を展開しているが、これまで企業は同社の配送施設に商品を配備する必要があった。参加企業が店舗を構えている場所から直接配達を行うのは、今回が初めてのことだ。8月中旬よりWingはGrand Plazaの屋上からドローンを飛ばし、同ショッピングセンター内の加盟店から寿司やタピオカティー、スムージーなどの商品を顧客に届けている。さらに現地時間10月6日には、市販の医薬品やパーソナルケア・美容製品の配達も開始した。

Grand Plazaでの運用開始から6週間で、Wingのドローンはすでにローガン市郊外のいくつかの地域へ2500件の配達を行っている。このAlphabet傘下の企業は、同ショッピングセンター内の提携加盟店に留まらず、配達エリアの拡大も計画している。

Wingのオーストラリアにおける政策・地域担当責任者を務めるJesse Suskin(ジェシー・サスキン)氏は、Grand Plazaでの試験運用が成功すれば「Vicinity Centresが運営する他の商業施設でも、同様のモデルを展開できる可能性がある」と述べている。

Grand Plazaでの試験運用が、より多くのVicinity Centresの店舗で屋上配達を行うことにつながるかどうかはまだわからないが、Wingがローガン市でかなりの成功を収めていることは確かだ。2021年に入ってから、同社は市内で5万回を超える配達を行っており、8月には総計10万回目の配達達成を祝ったところだ。

関連記事:ドローン配達のWingがサービス開始から2年で10万回の配達を達成、豪パイロットサービスで

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

画像クレジット:Wing

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アルファベットが気球ネット企業Loonの特許を一部ソフトバンクに譲渡、飛行データはオープンソース化

Alphabet(アルファベット)のLoonは、高高度気球を飛ばして対象地域にセルラーネットワークを提供するという、成層圏でのムーンショットだった。このプロジェクトは、気球が自律的に航行し、1つのエリアに長時間とどまることができる技術を開発するなど、多くの新境地を開拓したが、最終的には終了した。現在、AlphabetはLoonのアセットを分割しており、その多くは業界の他の企業に無料で提供されたり、重要なパートナーや戦略的投資家に引き渡されたりしている。

ソフトバンクはこのプロセスで、知的財産を手にする企業の1つとなる。日本のテレコム大手である同社は、Loonが保有する成層圏での通信、サービス、オペレーション、航空機に関する約200件の特許を取得し、自社の高高度プラットフォームステーション(HAPS)事業の開発に活用するという。ソフトバンクはかつて、Loonのパートナーとして「HAPSアライアンス」を設立し、業界の発展に貢献してきた経緯がある。ソフトバンクのHAPS事業は自律型グライダーを中心に展開していたが、通信用のペイロードをLoonの気球にも搭載できるように適応させた。ソフトバンクはLoonの投資家でもあり、2019年にはAlphabet傘下にあった同社に1億2500万ドル(約139億2000万円)を出資している。

Loonの閉鎖によって、ある種の利益を得ることになったもう1つの企業がRavenだ。Ravenはもう1つのパートナーであり、Loonが運用していた高高度気球の製造に特化した企業だ。同社は、気球の製造に特化した特許を取得する。

落雷がLoonのハードウェアに与える影響を実験室で検証(画像クレジット:Alphabet)

Loonの残りの研究内容の大部分は、成層圏の科学と産業の技術水準を向上させるために一般に公開される。Alphabetは、GPSやセンサーのデータを含む、Loonの約7000万kmの飛行データをオープンソースとして提供している。また、気球の打ち上げ、飛行中のナビゲーション、気球の管理など、270件の特許および特許出願について、権利を主張しないことを表明している。成層圏気球の専門家を目指す人々や一般大衆のために、Loonは同社の経験をまとめた本を出版した。この本は以下に埋め込まれた無料のPDFから入手できる。

このプロジェクトをICARUSと比較して論じたくなるところだが、Alphabetのムーンショットには最初から一定レベル以上の失敗の可能性が織り込まれているため、それほど適切な比較ではない。また、これらのIPやデータがすべて公開されることは、科学界にとっても非常に良い結果となるだろう。

画像クレジット:Alphabet

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

DeepMindがAlphaFoldで折りたたみを行った人体のすべてのプロテオームをオンライン化

DeepMind(ディープマインド)と数社の研究開発パートナーは、人体を構成するほぼすべてのタンパク質の3次元構造が格納されたデータベースをリリースした。この3次元構造は、2020年実証された画期的なタンパク質フォールディングシステムAlphaFoldを使って、コンピューター上で算出したものだ。無料で利用可能なこのデータベースは、数百の分野や領域に及ぶ科学者たちに大幅な進歩と利便性の向上をもたらし、生物学と医学において新しい段階の礎を形成する可能性が高い。

AlphaFoldタンパク質構造データベースは、DeepMind、欧州バイオインフォマティクス研究所、その他の研究機関が協力して構築したもので、 数十万のタンパク質アミノ酸配列について、その構造をAlphaFoldによって予測した結果が格納されている。最終的には、さらに数百万を追加して「世界のタンパク質年鑑」を作成する計画だ。

「この取り組みは、科学知識を高めるためにこれまでにAIが行った最も重要な貢献であると確信しています。また、AIが社会にもたらすことができる利点のすばらしい一例でもあります」とディープマインドの創業者兼CEOであるDemis Hassabis(デミス・ハサビス)氏はいう。

ゲノムからプロテオームへ

無理もないことだが、プロテオミクス全般について馴染みのない方もいると思うので、簡単に説明しておく。プロテオミクスのイメージを把握するには、別の大きな取り組みであるヒトゲノムの解読作業について考えてみるのが一番良い。ヒトゲノムの解読は、1990年代から2000年代にかけて、世界中の多数の科学者グループや組織が長年に渡って取り組んだ一大作業だ。そして遂にヒトゲノムが解読されたおかげで、数え切れない症状の診断と理解に大いに役立ち、そうした症状の治療薬や治療法の開発が進んだ。

しかし、ヒトゲノムの解読はこの分野における取り組みのほんの始まりに過ぎなかった。喩えていえば、巨大なジグゾーパズルの縁のピースがようやくすべて埋まった段階だ。当時、誰もが注目していた次の大きなプロジェクトは、人のプロテオーム、つまり、人体で使用されており、ゲノムにコード化されるすべてのタンパク質を把握することだった。

プロテオームを把握するときに問題となるのは、ゲノムの解読よりもはるかに複雑であるという点だ。タンパク質はDNAと同様、既知の分子の配列だが、DNAでは、アデニン、グアニンなど、お馴染みの4種類の塩基しか存在しない。しかし、タンパク質では、20のアミノ酸が存在する(各アミノ酸は遺伝子を構成する複数のベースによってコード化される)。これだけでも、DNAに比べてはるかに複雑だが、それは一端に過ぎない。アミノ酸の配列は単なる「コード」ではなく、実際には、編み込まれ、畳み込まれて小さな分子折り紙マシンを形成し、これが人体であらゆる種類のタスクを遂行する。ちょうど、2進コードから、実世界のモノをあらわす複雑な言語に翻訳されるようなものだ。

これは事実上、プロテオームが数百のアミノ酸の2万個の配列で構成されているだけでなく、その各配列に物理的な構造と機能が備わっていることを意味する。プロテオームの最も難解な部分は特定の配列からどのような形状が形成されるのかという点だ。この解析は一般に、X線結晶構造解析などを使用して実験的に行われるが、1つのタンパク質を解析するのに、数カ月またはそれ以上の長く複雑なプロセスを要する。たとえ、最高の実験室と実験技術が使えるとしてもである。タンパク質の構造はコンピューターでも予測できるが、これまでは十分に信頼性の高い予測結果が得られていなかった。が、AlphaFoldの登場でそれが一変したのだ。

関連記事:Alphabet傘下のAI技術企業DeepMindがAIベースのタンパク質構造予測で歴史的なマイルストーン

構造生物学の分野に驚きをもたらす

この記事ではコンピューターによるプロテオミクスの歴史について深く立ち入ることはしないが、基本的には、15年前の分散型の力技方式(Folding@homeを覚えているだろうか)から、この10年間でより洗練されたプロセスへと移行してきた。そこにAIベースのアプローチが登場し、DeepMindのAlphaFoldが世界中の他のシステムを一足飛びに追い抜いて世界を驚かせた。2020年にはさらに大きな前進があり、一部の専門家たちに、任意のアミノ酸配列を3次元構造に変換する問題は解決されたと言わしめるほどの高い精度と信頼性が達成された。

私がこの長い歴史を上記の1段落にまとめたのは、詳細な説明は以前の記事で行ったからだが、今回の前進がいかに突然でなおかつ完全なものだったことは強調しても強調しすぎることはない。数十年に渡って世界中の最高の頭脳を悩ませてきた問題が、1年のうちに「使えるアプローチはあるかもしれないが、極端に遅く、コストが極めて高い」というレベルから「正確で、信頼性が高く、市販のコンピューターで実行できる」というレベルにまで進歩したのだから。

画像クレジット:DeepMind

今回DeepMindが実現したブレイクスルーの詳細とその達成方法については、コンピューターバイオロジーとプロトテオミクスの分野の専門家たちにおまかせすることにする。彼らが、今後数カ月および数年かけて、今回の進歩の内容を分解して繰り返し説明してくれるだろう。我々が今懸念しているのは実際の結果だ。DeepMindは現在、AlphaFold 2(2020年時点のバージョン)の公開以来、彼らが入手できるあらゆるタンパク質のアミノ酸配列について、今回のモデルの微調整だけでなく実行に時間を費やしている。

同社によると、その結果、人体プロテオームの98.5%の「たたみ込み」を完了したという。つまり、AIモデルが充分な信頼性があると判断した(そして何より、我々が充分に信頼できる)予測結果が、現実になったということだ。同社は、人体以外にもイーストやE. colなど、20の有機体についてプロテオームのたたみ込みを完了しており、合計で35万のタンパク質の構造が明らかになった。これはもちろん、これまでのレベルをはるかに凌ぐ、最大かつ最高のタンパク質構造コレクションだ。

これらはすべて無料でブラウジング可能なデータベースとして公開される予定だ。研究者は、アミノ酸配列またはタンパク質名を入力するだけでその3次元構造を即座に表示できる。プロセスとデータベースの詳細については、雑誌ネイチャーに掲載されている論文をお読みいただきたい。

「このデータベースは、見ていただければ分かるとおり、検索バーになっています。タンパク質構造のグーグル検索のようなものと考えてください」とTechCrunchのインタビューでハサビス氏はいう。「3次元構造を3Dビジュアライザーで表示して、各部を拡大縮小したり、遺伝子配列を質問したりできます。EMBL-EBIと連係しているため、EMBL-EBIの他のデータベースともリンクされています。ですから、関連する遺伝子に即座に移動して表示できます。他のすべてのデータベースとリンクされているため、他の有機体の関連する遺伝子、関連する機能を持つ他のタンパク質などを確認できます」。

「私自身科学者として、計り知れない奥深い機能を備えたあるタンパク質の働きに取り組んでいます」とEMBL-EBIのEdith Heard(エディス・ハード)氏はいう(同氏は具体的なタンパク質の名前には触れなかった)。「現時点の、特定のタンパク質の先端部の構造を即座に確認できるのは、本当にすばらしいことです。これまでは何年もかかっていましたから。タンパク質の構造を調べて「なるほど。これが先端部か」と納得して、その先端部が実際に行っている仕事の研究に集中できます。これによって科学の進歩が数年単位で加速されるのではないかと思います。20年ほど前に、遺伝子配列を決定できるようになったときと同じように」。

こういうことが可能になったのは本当に画期的なことなので、この分野の研究全体が一変し、それと並行してこのデータベースも変わっていくのではないか、とハサビス氏はいう。

「構造生物学者たちはまだ、ほんの数秒でタンパク質の構造を調べられるという状況に慣れていません。これまでは、実験で何年もかけて調べていたわけですから」と同氏はいう。「これによって、質問の立て方とか実験のやり方という点で、これまでとはまったく異なる新しいアプローチが生まれるのではないかと思います。そうしたことができることが分かってくると、例えば1万のタンパク質を特定の方法で関連付けるとどうなるのか確認したい、などというセレンディピティ(偶然の発見)的な質問にも答えることができるツールが構築されるようになるかもしれません。今は誰もそんな質問を立てることもありませんから、そんなことをする通常的な方法もありません。ですから、我々は新しいツールの作成を開始する必要があると思います。研究者たちがこのデータベースの使い方に慣れてくれば、そうしたツールの需要はあるでしょう」。

これには、長い開発の歴史の中でオープンソース形式でリリースされてきたソフトウェアの派生バージョンと改善バージョンも含まれる。ワシントン大学のベイカー研究室の研究者によって独立に開発されたシステムRoseTTAFoldもすでに存在している。このシステムは2020年、AlphaFoldのパフォーマンスを上回り、同じような構造をより効率的に作成できるようになった。ただし、DeepMindは最新バージョンで再度トップの座を取り戻したようだ。いずれにしても、こうした秘密兵器が誰でも使えるようになったということだ。

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現実的なマジック

構造生物情報工学者にとって一番の夢が実現する見込みがあるのはすばらしいことだが、DeepMindとEMBL-EBIが実現したシステムが即座に現実の利点をもたらすことも重要な点だ。その利点が明らかに見てとれるのは、Drugs for Neglected Diseases Institute(DNDI)とのパートナーシップだ。

DNDIは、その名前から想像できるように、稀であるがために、治療法の発見につながる可能性のある大手の製薬会社や医療研究機関からの注目や投資の対象とならない病気に焦点を当てている。

「これは臨床遺伝学の分野では極めて現実的な問題です。この分野では、症状のある子どもに遺伝子配列の異常が疑われる場合、その特定の遺伝的疾患の原因となっている可能性の高い遺伝子を特定する必要があるからです。タンパク質の構造情報が広く利用できるようになれば、そうした作業が大きく改善されることはほぼ間違いありません」と、DNDIのEwan Birney(イワン・バーニー)氏は今回のリリースに先立って報道陣に語った。

特定の問題の根本原因であることが疑われるタンパク質を調べる作業は通常、大変な費用と時間を要する。ましてや実際の患者が少ない病気の場合、癌や認知症といったより一般的な患者数の多い症状が優先され、お金と時間はますます不足する。しかし、10の正常のタンパク質と10の配列異常のあるタンパク質の構造を簡単に比較できれば、これまでのように何年にも渡って綿密な実験作業を行わなくても、ものの数秒で原因が明らかになるかもしれない(治療薬の発見と臨床試験には数年かかるが、それでも、たとえばシャーガス病の原因究明を、2025年からではなく明日からすぐに始めることもできるのだ)。

RNAポリメラーゼII(タンパク質)がイースト内で機能しているところ(画像クレジット:Getty Images / JUAN GAERTNER/SCIENCE PHOTO LIBRARY)

実験的に結果が確認されていない構造について、コンピューターの予測に頼りすぎているのではないかと思われるといけないので、まったく別のケースを紹介しよう。このケースでは厄介な実験による確認作業の一部をすでに終えていた。ポーツマス大学のJohn McGeehan(ジョン・マクギーハン)氏(別の潜在的な使用事例でDeepMindと連携した)は、同氏のチームのプラスチック分解の取り組みにどのような影響があったかを説明してくれた。

「最初我々はDeepMindに7つのアミノ酸配列を送りました。そのうちの2つは実は、実験による構造解析をすでに終えていたのです。ですから、結果が返ってきたときにその2つについてはテストできました。そのときは正直、身の毛がよだつような興奮を覚えました」とマクギーハン氏はいう。「DeepMindが作成した構造は、我々が実験で確認した結晶構造と完全に一致していたのです。いえ、場合によっては、結晶構造から分かるよりも詳細な情報が含まれていました。我々はその情報を使って、より高速に作用するプラスチック分解酵素を直接開発することができました。その酵素の実験は、すでに始まっています。ですから、我々のプロジェクトは数年分前進したと言えるでしょう」。

DeepMindの計画は、今後1、2年の間に、あらゆる既知の配列済みタンパク質の3次元構造を予測することだ。その数は1億近くにもなる。その大部分について(数は少ないがこのアプローチでは対応できない構造もある。それについては、まもなく公開されるようだ)生物学者たちは予測結果を信頼できるはずだ。

3次元の分子構造を調べるのは数十年前から可能だったが、そもそもその構造を見つけること自体難しい(画像クレジット:DeepMind)

AlphaFoldが構造の予測に使っているプロセスは、ある意味、実験的な方法よりも優れている。AIモデルがその予測結果に達する過程については不明確な部分も数多くあるものの、ハサビス氏にとって、これは単なるブラックボックスではないことは明白だった。

「このケースの場合、説明可能性は、プラスチックの分解というその用途の重要性を考えると、機械学習に対してよく言われるように、『あればいい』というものではなく、『なくてはならない』ものだったと思います」と同氏はいう。「ですから、このケースについては、説明可能性が確保されるように、特定のシステムに対してできることはすべてやったと思います。アルゴリズムの粒度という意味での説明可能性、出力、予測結果、構造という観点からの説明可能性、そしてそれらの信頼性、予測された領域のうち信頼可能な部分という意味での説明可能性があります」。

にもかかわらず、同氏はシステムの説明に「奇跡的」という言葉を使っていたため、私の見出し語に対する特殊感覚が引きつけられた。ハサビス氏によると、このプロセス自体には奇跡的な部分は何もないが、その処理によって作成されるものがあまりにパワフルなので少し驚いたのだという。

「これまでで最も困難なプロジェクトでした」と同氏はいう。「コードの動作方法、システムの動作方法については詳細部分まで明確であり、すべての出力も確認できるのですが、システムが行っていること、つまり、この1次元のアミノ酸の鎖を取り込んで美しい3次元構造を作成するのを見ると奇跡的という言葉を使いたくなるのです。しかもその構造の多くは審美的にも信じられないくらい美しく、科学的および機能的にも価値のあるものでしたから。ですから、あれはある種の感嘆の言葉だったと思います」。

大量のたたみ込みの実行

AlphaFoldとプロテオームデータベースがもたらしたインパクトはすぐに広く伝わらなかったものの、初期のパートナーが証言しているように、これが短期的にも長期的にも重大なブレイクスルーになることはほぼ間違いない。しかし、だからといってプロテオームの神秘が完全に解決されたわけではない。それどころか、解決にはまだほど遠い。

前述のとおり、基本的なレベルでのプロテオームの複雑さに比べれば、ゲノムの複雑さなど何でもないが、このDeepMindがもたらした大きな進歩を以ってしても、プロテオームの上っ面をなでただけに過ぎない。AlphaFoldは、非常に限定的だが、非常に重要な問題を解決する。すなわち、アミノ酸の配列を受け取って、その配列が実際に実現する3次元形状を予測する。しかし、タンパク質は真空中に存在するわけではない。構造を変え、破壊と再生を繰り返し、さまざまな条件、および要素や他のタンパク質の存在に反応し、それらに応じて自身も形を変える複雑でダイナミックなシステムの一部だ。

実際、人体を構成する多くのタンパク質の中には、AlphaFoldがその予測結果に中くらいの信頼性しか与えられなかったものが大量にある。こうしたタンパク質は、基本的に「無秩序な」タンパク質であり、あまりに可変的であるため静的なタンパク質のように特定することができない可能性がある(静的なタンパク質の場合、AlphaFoldは非常に精度の高い予測システムであると評価されることになる)。このように、解決しなければならい問題はまだまだ山積みの状態だ。

「新しい課題に目を向けるときがきています」とハサビス氏はいう。「もちろん、まだ課題は山積みです。それでも、先程触れたタンパク質の相互作用、複雑さ、リガンド結合といったさまざまな問題に我々は取り組んでおり、こうした課題を解決する極めて初期段階のプロジェクトも立ち上げています。しかし、今回の大きな前進は少し時間を取って取り上げる価値はあると思います。それはコンピューターを使った生物学のコミュニティで20年から30年にも渡って取り組みを続けてきた問題であり、今回ようやくその最重要部分が解決されたと考えています」。

画像クレジット:DeepMind

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)