釣果記録アプリのANGLERSが500 Startups Japanなどから数千万円規模の資金調達

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釣りの成果を記録できるアプリを展開する日本のアングラーズは今日、500 Startups Japan、IGNIS LTD、個人投資家から資金調達したことを発表した。調達額は「数千万円台の中間」だという。今回の調達は、500 Startups Japanが今年4月に発表したJ-KISSの新株予約権方式により実施される。また、同社は2015年12月に元クックパッドCOOの山岸延好氏からエンジェル資金を調達しており、今回が同社にとって2回目の外部調達となる。同社は今回利用した資金を利用して、モバイルアプリに続くWebプラットフォームなどの開発を進めていく予定だ。

写真を撮って仲間と釣果を共有

同社が展開するアプリ「ANGLERS」は、釣りの成果の記録と共有ができるアプリだ。釣りの世界では、釣った魚の種類やサイズなどの成果を「釣果(ちょうか)」と呼ぶ。ANGLERSでは、釣った魚の写真を取ってサイズを入力すれば、位置情報、気象情報、その場所の水位などが自動で記録される仕組みになっている。ユーザーは釣果を記録して自分で楽しむだけではなく、それを釣り友達との間で共有して楽しむことができる。しかし、釣果が共有されるのは限られた範囲のみだ。

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「釣りの世界では基本的に、リアルな釣り仲間以外には釣果を人に教えたくないというのが一般的。よく釣れる場所などを公表してしまうと、その場所に人が集まるようになり、結局その場所で釣れなくなってしまう」と語るのは、自身も大の釣り好きであるCOOの藤井紀生氏だ。そのため、同アプリでは釣果の公開範囲が招待コードで友達登録済みの仲間内のみに限られていることが特徴の1つとなっている。しかし、ANGLERSが提供するのはこのような半クローズドな世界だけではない。

ANGLERSでは、アプリで参加できる釣り大会を定期的に開催している。期間内にアプリを通して釣果を記録し、その記録を全国のANGLERSユーザーと競い合うことができるのだ。優秀な成績を収めれば協賛企業から提供された賞品を手に入れることも可能だ。今年は合計で22大会を開催しており、直近の大会での参加ユーザー数は約1000人だったという。

このような取り組みの他にも、アプリには釣りの分析機能も備わっている。「現状で提供できるのは釣った魚の種類や平均サイズくらい」だが、将来的には、水位などの環境データと釣れる魚の種類などの相関関係を提供していく。「釣り業界は感覚的なところが大きい。偉い人が話した言葉が根拠もなく神格化されてしまう。ANGLERSでは、データを根拠にした分析を提供していきたい」と藤井氏は語る。分析に必要なデータは1魚種あたり10万件程度だ。データの量だけで考えれば、魚種によっては現状でも分析機能を提供できる状態ではあるが、機能を実装するまでのタイムラインはまだ未定だという。

釣果登録数28万件、ユーザーは11万人突破

現在、同アプリを通して記録された釣果の数は28万件、ユーザー数は11万人となっている。2013年7月のリリース以降、この数字は順調に成長中だ。藤井氏が競合として名前を挙げたのは、同じく釣果記録アプリのFishBrainだ。同アプリは去年の7月にリクルートが出資したことでも話題になった。「他社では150万人ユーザーがいて、釣果件数は70万件くらい。つまり、ユーザー1人あたりの釣果登録件数は約0.5件ということになる。それを考えると、ユーザー数に対する釣果登録率(ANGLERSの場合は2倍以上)で考えれば他社にも引けを取らないのではないかと考えている」と彼は話す。

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同社によれば、日本の釣り人口は700万人から800万人程度。そして、その約半数を占めるのがルアーフィッシングで、ANGLERSがフォーカスするのもこの分野だ。実際、これまでに登録されている釣果の60%がルアーフィッシングの一種である「ブラックバス釣り」の釣果だと言うことだ。ルアーフィッシングは釣りの中でも比較的若い層に人気があり、ANGLERSユーザーの年齢層も35歳から45歳とのこと。釣りと言うと年齢層が高いイメージがあったので、その層をモバイルアプリでどれだけ取り込めるのかと思っていたが、この程度の年齢層であれば問題なさそうだ。

釣果のC2C取引、Webプラットフォーム、フォロー機能などを追加していく

今後のマネタイズの方向性について聞くと、「広告モデルはもちろん、釣果の個人間取引サービスなどを考えている。釣りは何時間もかけて行くものなので、きちんと整理された釣果データには需要があるはずだ」と藤井氏は話す。釣りブログなどを見れば、どこで、どの魚が釣れたという情報を断片的に手に入れることはできるだろう。しかし、アプリによって自動的に整理され、かつデータに裏付けされた釣果には価値が生まれる可能性もある。藤井氏は想定される釣果の単価について、「この辺りが釣れるというような、低いレベルの情報であれば50円から100円だが、ピンポイントかつデータの裏付けのある釣果であれば、一件あたり1000円程度も考えられるのではないか」と話す。

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株式会社アングラーズCEOの若槻嘉亮氏

株式会社アングラーズの創業は2012年10月だが、当時の企業名は「株式会社FIXA」だった。全員が34歳という創業メンバー3人の「モバイルアプリで起業したい」という想いで設立されたFIXAだが、創業後は2週間に1つのペースでプロトタイプを製作するなど、当初はなかなか方針が定まらなかった。「ジェネリック医薬品などに関するアプリも作ってみたりもしたが、それらのプロトタイプは、僕らが「あったらいいな」と思うレベルのものばかりだった。最後までやり切るためには、創業メンバーが熱をもつ「釣り」という分野で勝負することが重要だと考え、社名もアングラーズに変更し、釣果アプリのANGLERS一本で行くことにした」と藤井氏、そしてCEOの若槻嘉亮氏は話す。その後も、開発費用を捻出するために受託開発を行うなど紆余曲折を経験してきたアングラーズ。その後やっとの思いで熱中できるプロダクトを見つけた同社は、今回調達した資金を利用してANGLERSを単なるモバイルアプリから、もう1つ先の段階へと進化させる。

具体的には、モバイルアプリでインプットした情報の一部を、外部に公開するためのWebプラットフォームだ。冒頭で釣り人は釣果を公開したがらないと述べたが、藤井氏は「ここまでなら公開してもいいと思うようなラインがある。それをWebで公開できるような仕組みを作ることで、アプリを持ってない人でも釣果を見れるような場所を提供したい」と話している。それに加え、Webプラットフォーム上で釣具の比較ができる機能なども実装していくという。

このWebプラットフォームに先がけ、アングラーズは今月初旬にも新バージョンのモバイルアプリをリリースする。その新バージョンでは、それぞれのユーザーがプロフィールページを持つことができ、そこで好きな釣りの種類などをアピールすることが可能になる。また、Twitterのようなフォロー機能も実装される予定だ。

釣り好きの、釣り好きによる、釣り好きのためのアプリANGLERSは、iOSAndroidで利用可能だ。