Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」が日本進出、戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」が11億円のシード調達

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」が日本進出、戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」が約11億円のシード調達

香港拠点のAnimoca Brands(アニモカブランズ)は2月15日、日本における戦略的子会社「Animoca Brands株式会社」(Animoca Brands KK)の2021年10月25日設立を発表した。またAnimoca Brands KKは、シードラウンドとして約11億円の資金調達を2022年1月に完了したと明らかにした。引受先は、IPX1号ファンド(MCP アセット・マネジメント)、Animoca Brands。シードラウンド完了を経て、今後東京都港区を拠点に日本における事業拡大に取り組む。

Animoca Brands KKは、大手出版社、ブランド、教育、スポーツ競技団体、アスリート、アーティスト、ゲーム会社といった、日本の知財やコンテンツ(IP)ホルダーがグローバルで直接コミュニティを作るとともにファンを獲得し、トラフィックを創生することを支援する目的で設立。具体的には、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォームを構築・提供し、日本の知財・IP ホルダーがWeb3のエコシステムの中で自らNFTやトークンを発行できる仕組みを提供。これにより、ファンとのコミュニティの構築・成熟化を支援するという。

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ワーナーがアニモカブランズ傘下のメタバースThe Sandboxで「音楽テーマパーク」構築へ、ライブや新しい音楽体験を提供

ワーナーがアニモカブランズ傘下のメタバースThe Sandbox内で「音楽テーマパーク」を構築へ、ライブや新しい音楽体験を提供

The Sandbox

「メタバース」はその概念ばかりが話題にのぼる一方、実態がなかなかはっきりと見えてこないのがもどかしいところですが、メタバースを具現化した成功例のひとつといえるのがゲーム『Fortnite』内で何度か開催されている音楽イベントの類いです。

そして、ワーナーミュージックグループ(WMG)は、これに触発されたかのような音楽パフォーマンスステージを、香港拠点の「Animoca Brands」(アニモカブランズ)傘下、有力なメタバースプラットフォームのひとつである『The Sandbox』との提携により構築しようとしています。

3大メジャー音楽レーベルのひとつであるWMGは、エド・シーラン、Green Day、デュア・リパなど有力なアーティスト多数と契約しており、それらの一部が、今後The Sandbox内のバーチャルステージでコンサートを開催し、ユーザーがそれを体験できるようにしていく予定とのこと。また、The Sandboxは熱心な音楽ファン向けにプラットフォーム内のWMGセクションの仮想不動産を販売する予定もあるとしました。

The Sandboxはすでにスヌープ・ドッグやDeadmau5、スティーブ・アオキらと独自に契約しているものの、メジャー音楽レーベルとの提携は当然ながら過去最大規模のコンテンツ資産がこのプラットフォームで活用されるようになることを意味し、膨大な数のアーティストがその中でバーチャルなイベントを定期的に開催するとなれば、ファンには無視できない新しい音楽メディアの形になるかもしれません。

当然、ワーナーだけでなく、ライバルのユニバーサルミュージックグループなどもレーベル所属アーティスト公式のアバターを公開するなどして、メタバースへの進出を図ろうとしています。

ワーナーのメタバース内テーマパークがユーザーへのサービスを開始する時期はまだ示されていませんが、それが誰もが驚く次世代音楽体験の場になるのか、子供騙しのバーチャルハリボテに閑古鳥が鳴く結果に終わるのか、見守っていきたいところです。

(Source:Warner Music GroupEngadget日本版より転載)

Web3のパワープレイヤー「アニモカブランズ」大解剖

ここ1年間程度でAnimoca Brands(アニモカブランズ)という名を耳にしたことがないという読者は勉強不足だ。デジタルエンターテインメント、ブロックチェーン、ゲームなどさまざまなコンテンツを提供し、香港に拠点を置く創業8年目、従業員600人の同社は、ますます多くの関係者が次世代のウェブと考える世界で最も活動的な1社となっている。

LAを拠点とするFan Controlled Football League(ファン・コントロールド・フットボール・リーグ)は、ファンがチームに関する決定をリアルタイムで投票するスポーツリーグで、米国時間1月13日、Animocaが共同リードするシリーズAの資金調達で4000万ドル(約45億9000万円)を調達したと発表した。スマートフォンやタブレット向けのゲーム開発からスタートしたAnimocaは、2017年頃にブロックチェーンゲームに進出して以来、150社以上の企業に投資を行っている。

それはまるで運命の出会いのようなもので、Animocaの創業者であるYat Siu(蕭逸)氏にとっては一目惚れともいえるものだった。当時Animocaは、ベンチャースタジオのAxiom Zen(アクシオム・ゼン)とオフィスを共有していたFuel Powered(フュエル・パワード)という会社を買収しようとしていたのだが、その際Axiomが取り組んでいた CryptoKitties (クリプトキティーズ)というブロックチェーンゲームに蕭氏は強く惹かれたのである。Axiomの創業者であるRoham Gharegozlou(ローハム・ガレゴズロウ)に助言をしていたFuel Poweredの共同創業者、Mikhael Naayem(ミカエル・ナイエム)を通してその存在を知ったという。

その直後の2018年初頭、AnimocaはAxiom Zenと1年更新の独占ライセンスおよび販売契約を結び、CryptoKittiesの出版契約を結ぶことになる。これが大反響を呼んだため、ナイエム氏とガレゴズロウ氏はチームを組んでDapper Labs(ダッパー・ラブズ)を設立し、Animocaが初期バッカーとなったのだ。現在Dapper LabsはNBA Top Shot(NBAトップショット)マーケットプレイスでさらに有名になっている。

それ以来、Animocaはすばらしい業績を上げている。パブリッシャーとして、また最近ではブロックチェーン資産やトークンの買い手としても活動しており、その膨らみ続けるポートフォリオには、10月に30億ドル(約3436億8000万円)の評価額で約1億5000万ドル(約171億9000万円)の資金調達を完了した世界的大ヒット作Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)の開発元Sky Mavis(スカイメイビス)や、プレイヤーがゲーム内資産を作成して収益化できるゲームで、11月にSoftBank(ソフトバンク)が主導して9300万ドル(約106億6000万円)でシリーズBの資金調達を完了した人気メタバーススタートアップThe Sandbox(ザサンドボックス)などが含まれている(2022年1月初旬時点で、ユーザーがSandboxで購入できる最も小さな土地の価格は1万1000ドル[約126万円]以上だった)。

またAnimocaは、現在133億ドル(約1兆5218億円)もの評価を受けているNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)に早くから出資し、2021年ブレイクしたプロジェクトの1つであるBored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)と協力してBored Apeをテーマにしたゲームを制作するなど、常に活動的な姿勢をアピールしている。

こういったことすべてが積み上げられ、1月初旬に蕭氏と話したところによると、2021年11月下旬の時点ではAnimocaの保有資産は約160億ドル(約1兆8297億円)になっていたという。これはAnimocaがSequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)も参加した6500万ドル(約74億3000万円)の資金調達ラウンドで22億ドル(約2516億円)と評価されてから間もなくのことである。

興味深いのは、Sequoiaと残りのシンジケートが上場株式を買い上げたことだ。蕭氏の説明によると、Animocaは以前オーストラリア証券取引所で取引されていたのだが「Animocaが暗号を扱っていることが気に入らなかった」ため、2020年3月に上場廃止にされたという。現在同社は非上場公開会社として運営されているため、自社サイトやメーリングリストを通じて株主とコミュニケーションをとることができ、約2500人の株主が他の個人に株式を個人的に売却することができるのだ(誰がそれを所有しているかを知ってさえいれば買うことができる)。

一方、OpenSeaとDapper Labsの株式は同社の資産の一部とみなされており、その価値は今のところ理論上のものとなっている。「貸借対照表科目と同じで、基本的にAnimoca Brandsの資本価値に回っていきます」と蕭氏は話している。

Animocaの道のりに障害がなかったわけではない。米国時間1月10日、スポーツNFTを鋳造するAnimocaの子会社にセキュリティ違反があり、ユーザーは1870万ドル(約21億3700万円)相当のトークンを失い、子会社のトークン価格は92%も暴落してしまった(この華麗な新世界には独自のリスクがついてまわるのだ)。

それでも、現在Animocaのグループ執行会長兼マネージングディレクターである蕭氏は明らかにWeb3の信奉者であり、完全な分散型ビジネスを実現するための実用性を含め、最近よくささやかれている批判をあまり信用していない。

例えばBox(ボックス)のCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は最近Twitter(ツイッター)で、コミュニティの意見に依存する分散型組織が常に合意形成の試みに追われていては、どう競争できるのかと疑問を呈している。

このことについて問われると、蕭氏は「全ユーザーが先見の明があるわけではありません。比較するものがあれば、何がベストなのかわかるようになるでしょう」と答えている。

蕭氏によると、現在Animocaは2022年に実行する可能性のある投資やパートナーシップに重点を置いており「ゲームスタジオをブロックチェーン上に移行させ、エンドユーザーに本質的にデジタル財産権を提供する」ためにゲームスタジオの買収を続けていると話している。また投資面では、NFTのようなデジタルプロパティのネットワーク効果を発展させ、成長させることができるインフラに惹かれているとも伝えている。

それがどういうことかというと「融資、DeFi、細分化、プロトコル、そしてレイヤー1(ブロックチェーン)、レイヤー2(ブロックチェーン)」なのである。実際Animocaは、急成長中の企業が成長を続けるために必要な「クロスチェーン」を重要視しているのだ。

「企業がゲーム資産やNFTを立ち上げる際、例えばEthereum(イーサリアム)でも立ち上げて欲しいのですが、同時に(Dapper Labsによって設計されたブロックチェーンの)Flow(フロー)も検討するべきなのです。またSolana(ソラナ)でも開始して欲しいですし、HBAR(ヘデラハッシュグラフ)も検討して欲しいのです。つまり、できるだけ多くのプラットフォームかつできるだけ多くのプロトコルで、資産を展開することを推奨しているのです。それはこの独立性が非常に重要であると私たちは考えているからで、チェーンを国と同じように考えています。もし、ある国でしか製品を発売できないのであれば、その国の文化や可能性に制限されることになるからです」。

オーストリアで中国系として育ち、若干10代でドイツのAtari(アタリ)に就職し、その後同氏が初めて立ち上げたスタートアップを魚油会社に売却した蕭氏との対談は、ここから聞いていただける。Facebook(フェイスブック)のメタバース計画、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏のWeb3に関する考え、中国が境界線を引き直す中で香港のビジネス界がどのように変化しているかなど、さまざまなことを話し合った。

関連記事:イーサリアムよりはるかに高速だと主張するトップ暗号資産投資家たちに人気のブロックチェーンプラットフォーム「Solana」

画像クレジット:South China Morning Post / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)