Antがグループ収益の約4割占めていた小口融資事業にメス、中国の「分割」命令から約1年

2020年12月、中国政府はAnt Group(アント・グループ)に対し、史上最大の新規株式公開となる可能性があったIPOを中止した後、その事業を「是正」するためのガイドラインを示した。その中で規制当局は、Antにクレジット事業の見直しなどを求め、金融機関を監督するのと同じ一連の規制を受けるようにした。言い換えれば、Antはもはや「テック」企業と称して自由奔放に活動できないということだ。

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それから約1年後、Alibaba(アリババ)系列のフィンテック企業である同社は、人気の高い消費者向けクレジット商品の再編をほぼ終えたことを示した。

2020年に提出された同社の目論見書によると、クレジットローン商品は2020年6月までの6カ月間でAntの収益の40%近くを占めていた。2つの主要商品は、仮想クレジットカードのように機能する、消費者の日常的な支出のために2014年に発売された「Huabei(花唄、ホワベイ)」と、その1年後、より大規模な消費トランザクションのためのクレジット商品として導入された「Jiebei(借唄、ジエベイ)」だ。

旧モデルでは、Antがオリジネートしたローンを、第三者である銀行などの金融機関が引き受けるという形をとっていた。同社の目論見書によると、2020年6月時点で、プラットフォームを通じて組成されたAntのクレジット残高の約98%は、パートナーの金融機関が引き受けるか証券化されている。

Jiebeiは2つのブランドに分割されたと、今週初めに複数のユーザーが報告している。Antの主力金融サービスアプリであるAlipay(アリペイ)では、サードパーティの銀行が提供するクレジットラインは「Xinyong Dai(信用贷=クレジットローン)」と呼ばれている。一方、規制当局の要請を受けて設立されたAntの消費者金融会社が提供するクレジットラインは、「Jiebei」ブランドのままである。

Huabeiも同様に再編を開始し、どのローンが銀行から独立して提供され、どのローンがAntの消費者金融会社から提供されているかをユーザーに示すようになった。Huabeiは、日常的な「少額」取引に焦点を当てていくと、Weibo(微博、ウェイボー)への投稿で述べている

「ブランドの差別化に伴い、クレジットローンサービスを申し込むユーザーは、ブランドの混同を避けるために、クレジットプロバイダーに関するより多くの情報を得ることができます」とも。

Huabeiはまた、中国人民銀行(中央銀行)が監督するデータベースに消費者の信用情報を提出していることにも言及している。同社は9月に消費者信用会社を設立した後、このルーチンを開始した。消費者信用会社は銀行と同様に、中央銀行に信用評価データを報告する必要がある。

画像クレジット:Ant Group

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

AI革命を掲げ、多くの中国ハイテク企業に投資しているソフトバンクグループの孫正義社長は8月10日の決算会見で、中国当局のIT大手締め付けについて『長い目でみれば、どこかでもう一度バランスを取り直すと私は信じている』とコメントしました。

孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。

また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。

一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。

加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。

また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

また、ビジョンファンドにおける中国企業への依存度については、ビジョンファンド1・2のトータルでは『2021年7月末の時価ベースで23%』としたものの、2021年4月以降の新規投資では11%に留まっていることも明かしました。

Engadget日本版より転載)

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孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。

また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。

一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。

加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。

また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。

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PayPalの中国における野心と苦戦、クロスボーダー決済に注力

過去数カ月、PayPal(ペイパル)は中国での事業拡大に向けて静かに準備してきた。

最近開催された、ダボス会議の中国版Boao Forumで、米国の決済大手PayPalは同社の中国での戦略がAlipayとWeChat Payの複占に挑むというものではないと述べた。その代わり、PayPalはクロスボーダー事業にフォーカスし、中国の小売業者が集金したり、中国の消費者が海外の商品購入の代金を支払ったりするためのゲートウェイを提供する。

これはもちろん儲けが多い分野だ。マーケット調査会社iResearchによると、中国のクロスボーダーeコマースのマーケット規模は2016年の約3兆元(約50兆円)から2021年には6兆元(約100兆円)近くへと急増した。

しかしこの分野は近年競争が激しくなっており、PayPalの参入は遅かったかもしれない、と中国で米テック大手に勤めるとあるマネジャーは話した。この人物はメディアに話すことを許可されていないため、匿名を希望した。

オンラインで商品を販売する中国の輸出業者にとって最大のマーケットプレイスの1つであるAmazonでは、小売業者が集金するための確立されたオプションがすでにある。高額な送金手数料はいうに及ばず、海外での銀行口座開設は小さな中国の輸出業者にとっては難しい。よって、そうした業者は往々にして、米国のPayoneer、中国のPingpongLianlianなどサードパーティの送金決済ソリューションに頼る。こうしたサービスの業者の売り上げを母国の銀行口座に振り込む手数料は比較的少額だ。

中国は外国為替と電子決済に関し、厳格な規定を設けている。しかしPayPalはすでに規制当局の認可を得ている。同社は中国の決済会社の株式を購入したのち、2021年1月に中国でオンライン決済の事業許可を得た初の海外企業となった。

政府からの認可の取得は最初のステップにすぎない。PayPalのアピールは主に、中国のeコマース輸出業者にどんなサービスを提供できるのかによるところが大きい。中国ではAmazonやeBayのような企業が溢れかえっている。

「最終的には、顧客はどのサービスが一番安くて使いやすいかを重視します」と前述のマネージャーは話した。

「中国のクロスボーダー決済ソリューションはプロダクト、スケール、手数料の点ですばらしい成果を上げました。PayPalに可能性があるとは思いません」。

それでも、PayPalアプリの広範なリーチを考えたとき、主要なマーケットプレイスで販売する代わりに自社オンラインストアを構築した輸出業者は、顧客からの支払いを受けるためのツールとしてPayPalを必要とするかもしれない。

クロスボーダー決済に関しては、PayPalはずいぶん前から中国で広く使われてきたTencentのWeChat Pay、Ant GroupのAlipayと競合している。WeChat Pay、Alipayいずれも中国の海外旅行客が中国国内と同様に海外の小売店でも決済できるよう、グローバル提携を積極的に進めてきた。そうした海外商品の国内での買い物では往々にして中国企業のeコマースアプリを使う。それらのアプリでは決済処理業者としてAlipayやWeChat Payを使う傾向にある。

現在保留されているAntのIPO目論見書によると、クロスボーダー決済はAntの主な成長目標にもなっている。同社の2020年上半期の売上高における海外事業の割合は約5%にすぎなかった一方、その大半はクロスボーダー決済によるものだった。目論見書を提出した当時、AntはIPOから得られる純利益の40%、額にして528億香港ドル(約7400億円)をクロスボーダー決済と業者サービス、海外での機能性の拡大にあてる計画を持っていた。

「PayPalがAntよりも安い手数料を提供できるかどうかにかかっています」と以前中国企業のクロスボーダーウォレット部門で働いていた人物は語った。「しかしPayPalは安い手数料では知られていません」。

関連記事:Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPal中国クロスボーダー決済Ant Group

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国当局がジャック・マー氏のAnt Groupに決済における「反競争的な行為の是正」を要請

Ant(アント)の事業見直しの詳細が明らかにされた。中国人民銀行(中央銀行)が中国時間4月12日に発表したところによると、Jack Ma(ジャック・マー)氏が率いるAlibaba(アリババ)傘下のフィンテック企業Ant Group(アント・グループ)は、金融持株会社となり、融資や利益創出の方法について規制当局の監視がより強化されることになるという。

Antは、Alibabaマーケットプレイスのオンライン決済処理会社としてスタートし、その後、決済、融資、ウェルスマネジメント、保険などの事業を展開するフィンテック帝国へと発展した。既存の金融業界への参入は中国ではあまり歓迎されていなかったが、数年前から大手銀行や従来の資産運用会社と競合するのではなく「テクノロジープロバイダー」として位置づけられるようになった。

そうした努力にもかかわらず、中国政府はフィンテックの巨人となったAntをさらに抑制したいと考えていた。

当局が同国のインターネット大手の力を抑制しようとする中、Antが2020年11月に予定していたIPOは頓挫していた。政府がAntに課した「是正計画」と呼ぶものの一環として、同社は「反競争的な行為を是正する」とあるが、これには、消費者に提供する決済手段の選択肢の拡大、ユーザーを誘導してローンを組ませるというような悪質な手法を排除することが含まれる。

また、世界中に10億人以上の年間ユーザーを擁し、そのほとんどが中国にいるAntは、ユーザーデータの独占をやめ、個人情報と国家情報の安全を確保するよう求められている。

さらに金融持株会社としてAntは、金融商品の流動性リスクをコントロールし、世界最大級のマネーマーケットファンドの規模を縮小する必要がある。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Groupジャック・マー中国Alibaba

画像クレジット:Gao Yuwen/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制

中国の決済業界における最近の一連の出来事は、Ant Group(アントグループ)とTencent(テンセント)による複占が揺らいでいる可能性を示唆している。

Ant Groupの急な新規株式公開の中止と、中国政府が同社の事業に修正を指示したことに続き、中国当局は先週、繁栄を続けるデジタル決済業界の寡占を抑制する計画を示す新たなメッセージを送った。

ノンバンク決済を規制するために、中国人民銀行(PBOC)が先週発表した一連の草案によると、1社でノンバンク決済市場の3分の1を占める場合、または2社の合計で半分を占める場合、国務院に属する反独占委員会から規制上の警告を受けるという。

一方、ノンバンク決済事業者1社でデジタル決済市場の半分以上を占める場合または2社で3分の2を超える場合は、独占状態にあるかどうか調査される。

2つの規則の違いは微妙であり、前者はノンバンク決済、後者はデジタル決済に焦点を当てている。

さらに当局が企業の市場シェアをどのように測定するのか、たとえば総取引額なのか、総取引量なのか、それともそれ以外の基準で判断するのかについては、規則では特定されていない。

市場調査会社のiResearch(アイリサーチ)によると、Ant GroupのAlipay(アリペイ)は2020年第1四半期に中国の第三者決済取引の半分以上を処理しており、Tencentは同期間に40%近くを処理していたという。

中国は決済大手への監視を強めており、一方で金融市場を国際的なプレイヤーに開放してもいる。2020年12月には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が中国の合弁事業の完全所有権を取得した。そして2020年1月、PayPal(ペイパル)は現地の決済パートナーであるGoPay(国付宝)の残りの株式を買い取り、中国で1つの決済事業を100%支配する初の外資系企業となった

業界の専門家は、PayPalが中国内の決済大手を追うことはないだろうが、代わりにクロスボーダー決済の機会を探る可能性があると、TechCrunchに語った。つまり、Antのベテランチームによって設立されたXTransferなどの地元企業がいる市場だ。

AntとTencentは、他の中国インターネット企業との競争にも直面している。食品配達プラットフォームのMeituan(美団)や電子商取引プラットフォームのPinduoduo(拼多多)やJD.com(京東商城)、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)まで、様々な企業が独自の電子ウォレットを導入しているが、いずれもAntのAlipay(アリペイ)やTencent傘下のWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に差し迫った脅威を与えるものではない。

PBOCの包括的な提案では、決済処理業者が顧客データをどのように扱うかについても定義している。ノンバンク決済サービスは、一定のユーザー情報や取引履歴を保存し、データチェックについて関係当局と協力することになっている。また、企業はユーザーの同意を得て、顧客のデータがどのように収集され、どのように使用されるかを明確にすることも求められている。これは不正なデータ収集を取り締まる中国の広範な取り組みを反映した規則だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:モバイル決済AlibabaAnt GroupTencentWeChat Pay中国独占禁止法

画像クレジット:Alipay via Weibo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

創業者ジャック・マーが3カ月ぶりに姿を現しアリババ株が急上昇

Alibaba(アリババ)の創業者で億万長者で知られるJack Ma(ジャック・マー)氏が、2020年10月に最後に公の場で姿を見せてから3カ月ぶりに、農村部の教師100人にオンライン会議であいさつをしたことが明らかになり、香港ではeコマース大手の同社の株が8%以上も上昇した。

このビデオ通話の動画は、Alibabaが本社を置く中国東部の浙江省政府が後援するニュースポータルに最初に投稿され、Alibabaの広報担当者によって確認された。

2020年12月に彼は自らが制作したテレビ番組の収録に参加しなかったとメディアが報じた後、マー氏の行方を巡って憶測が渦巻いていた。脚光を浴びるのが好きなことで知られるマー氏だが、自身のeコマース帝国であるAlibabaとフィンテック大手のAnt Group(アントグループ)は、ここ数カ月の間にますます中国当局の攻撃の的となっていた。

マー氏が最後に公の場に姿を現した際、高官の前で中国の金融規制システムを激しく非難した。報道によると、彼の物議を醸す発言により、中国の規制当局は、史上最大の株式公開となるはずだったAnt社のIPOを突然中止することになった

Antはその後、政府の指示の下、企業再編と規制遵守に取り組んでいる。中国最大のeコマースプラットフォームであるAlibabaもまた、市場規制当局がAlibabaの独禁法違反の疑惑について調査を開始したことで注目を集めている。

ジャック・マー氏のインターネット帝国に対する最近の取り締まりは、中国の超富裕層や民間の影の実力者に対する中国政府の不安感の高まりを示しているとの意見もある。

「現在、AlibabaとそのライバルであるTencent(テンセント)は、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)といった米国のハイテク企業が同国で行っている以上に、より多くの個人情報を管理し、中国での日常生活に密接に関わっている。そして、中国の巨大テック企業は、米国の同じような企業がそうするように、時には小規模な競合他社をいじめ追いやり、イノベーションを阻害することもある」と、ニューヨーク・タイムズ紙コラムニストのLi Yuan(リ・ユアン)氏は書いている

「共産党の一員でなくとも、彼ら(テック企業)を制限する理由はわかる」とも。

50秒のクリップでは、マー氏は浙江省の典型的な水辺の町を描いた装飾画のように見えるものを背景に、カメラに向かって直接話している。花瓶に生けられた花と、ゆったりとくつろいでいる男性を象った陶器の置物とともに、積み上げられた本の山の中には美術史の本が見られる。

マー氏は、ジャック・マー財団によって毎年優れた農村部の教師を表彰するために設立された「Jack Ma Rural Teachers Award(ジャック・マー農村教師賞)」を受賞した100人の教師に向けあいさつを行った。マー氏がどこからスピーチをしていたのかは不明だが、ビデオは彼が2021年1月10日に浙江省農村部の寄宿学校を訪問している様子を短時間見せている。授賞式は今年、パンデミックのためにオンラインで行われることになりましたと、マー氏は受賞者に語った。

マー氏はは引退を発表した際、教育者としての原点に戻り、教育の慈善活動にもっと時間を割くと約束したが、強大な権力を持つAlibaba Partnershipの終身パートナーとして同社にかなりの影響力を持ち続ける。伝説の億万長者は杭州で英語教師としてキャリアをスタートさせ、中国のTwitterに相当するWeibo(新浪微博)では「ambassador for rural teachers(田舎の先生の大使)」という愛称で呼ばれている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AlibabaAnt Groupジャック・マー

画像クレジット:Jack Ma / Source: ZJOL

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(翻訳:Nakazato)

中国政府のAnt、Alibabaへの規制強化を受けて世界の投資家は中国のハイテク株から脱出中

ジャック・マー(馬雲)氏が設立したAntとAlibabaは最近まで中国のテクノロジー・エリートの最高の達成点として歓迎されていた。しかしこの世界的企業グループが中国政府から厳しい取り締まりを受けたことで世界の投資家は中国のテクノロジー株から脱出し始めている。

中国の主要テクノロジー企業の株価は急激に下落している。Alibaba、Tencent、JD.com、Meituanは数日で時価総額2000億ドル(20.7兆円)を失ったとBloombergは推計している。

中国を代表するフィンテック企業であるAntグループの株式上場が土壇場で政府から中止を命ぜられたことで関連企業である電子商取引の巨人も大きく動揺していた。中国政府の市場監視機構は反競争的行為の疑いでAlibabaの捜査を始めたと伝えられる。

Antグループ自身は12月26日に政府の召喚を受け、ビジネス慣行を「修正」する計画を提出することを余儀なくされた。

Alibabaの株価は、10月下旬の直近の高値から約30%下落している。さらに中国国内市場におけるテクノロジー株も広範囲に下落している。 中国のテクノロジーに焦点を当てた上場株投資信託の1つは、今日の取引による1.5%の下落を含めて直近高値から約8%ダウンした。

投資家がAlibaba株式に投資するために利用した米国預託証券(ADR)はニューヨーク証券取引所での12月23日の取引終了時の1株あたり256ドルからわずか1日で約222ドルに下落した。 同社は今日、さらに0.5ポイント下落している。 今四半期当初には1株あたり319ドル以上だった。

中国でハイテク企業と中国共産党との間で緊張が高まっていることは明らかでこれまでも投資家を強く懸念させていた。しかしジャック・マー氏の中国政府との関係は他の有名起業家の場合と比べても一層険悪化なものとなった。Tencentのファウンダー、ポニー・マー(馬華騰)氏、百度の共同ファウンダー、エリック・ヨン(徐永)氏とロビン・リー(李延紅)氏はジャック・マー氏とくらべて脚光を浴びまいとしている。

Bloombergは現在の市場の状態を簡明にまとめている。それによれば、最も直接的に政府の標的となっているのはジャック・マー氏のように見えるが、別の機会に中国の規制当局はTencentのゲームにおける影響力を減殺しようと焦点を当てている。

特にAlibabaの事態は悪化の一途をたどっており、大規模な自社株買いプログラムによっても出血を止めることができなかった。

今回の新たな規制は、単発的、一過的なのか、それとも中国政府がハイテク企業を国益に従属させようする努力の表れなのかはまだはっきりと見極められない。アメリカと中国の間でテクノロジー上の対立が激化しする中、これまで政治を避けて成長を遂げてきた多くの企業が外交と国家安全保障の十字砲火にさらされることになるかもしれない。

一方、新たに中国政府から後押しされて幸運が微笑んでいる企業もある。

これはCPU分野では以前から明白で、中国がテクノロジーの自立化を推進する中で新たな事業と新たな富豪が生まれつつある。Liu FengFeng(刘峰峰)氏は国内に新しい半導体メーカーを建設しようとするTsinghon(清鸿光科)を設立してすぐに500万ドルを調達することができた。機械学習アプリケーションに特化したチップセットを製造すIntellifusion社は、4月に1億4100万ドルを追加調達している。

非政府投資家は、中国政府の規制の風向き次第で危機に直面するリスクがある中国のテクノロジー・スタートアップを支援することに意欲を失うかもしれない。 この地域の他のスタートアップ市場(とりわけインド、日本)が中国の規制強化から恩恵を受けるかどうかは、2021年に津注目すべきトピックの一つとなるだろう。
画像:Getty Images

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滑川海彦@Facebook

中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

Jack Ma(ジャック・マー)氏と彼のフィンテック帝国にとって、なんと慌ただしい休日だったのだろうか。中国の中央銀行である中国人民銀行は米国時間12月26日、規制に関する話し合いのためにAnt Groupを呼び出し、フィンテック企業が規制違反を「是正」するための包括的な計画を発表した。

この会合は、中国の金融当局が規制遵守問題を理由に、記録的な新規株式公開(IPO)を突然中止してから2カ月も経たないうちに行われた。Alibaba(アリババ)のオンラインマーケットプレイスにおける決済処理会社として始まり、2011年にスピンアウトした同社は、健全なガバナンス体制を欠き、規制要件に反し、裁定取引を違法に行い、市場での優位性を利用して競合他社を排除し、消費者の権利を侵害したと、中国人民銀行は述べている

同時に、ジャック・マー氏のeコマース大手であるアリババは、独占的行為の疑いで中国の市場規制当局から調査を受けている

銀行当局は、億万長者であるアリババ創業者のジャック・マー氏が支配するよって管理されているAnt Groupに対して「フィンテック企業は決済の原点に立ち返り、取引の透明性を高めること」「クレジット事業に必要なライセンスを取得し、ユーザーデータのプライバシーを保護すること」「金融持株会社を設立し、十分な資本を確保すること」「法律に従ってクレジット、保険、資産運用などの金融事業を見直すこと」「証券業務のコンプライアンスを強化すること」という5つのコンプライアンスアジェンダを提示した。

非公開会議後、Ant Groupはすべての規制要件に取り組むための社内に「従業員調整」のチームを設置したと述べている

この再編が完了するまでには数カ月かかる可能性があり、Ant Groupの評価額を下げる可能性もある(Reuters記事)。評価額は上場予定時期に3000億ドルを(約31兆円)を超えていた。たとえば政府は最近、消費者へのローンを提供するための基準を引き上げる計画(Reuters記事)。を発表していた。これはAnt Groupの年間収益の約35%を占める(未訳記事)セグメントだ。中国政府の債務リスク管理努力の一環として提案されているこの変更では、オンライン小口融資業者が銀行と共同で、融資する資金の少なくとも30%を提供することが新たな要件となり、Antのキャッシュフローを圧迫する可能性がある。

しかし、Ant Groupの将来について楽観的な意見もある「(Antは)多くの勝ちを生み出している。長い目で見れば、IPOの一時的な停止が同社のビジネスに与える影響は限定的だ」とクロスボーダー決済事業者であるXTransferの創業者であり、Antの元幹部であるBill Deng(ビル・デン)はTechCrunchに語っている。

「規制当局の観点から見ると、「(Antの)融資規模は非常に大きくなっており、従来の規制範囲を超えて拡大している。また、伝統的な金融関係者の核心的利益をある程度侵害している」とデン氏は付け加えた。

Ant Groupに対する取り締まりは、間違いなく業界全体に警告でもある。Antへの挑戦者であるJD.comのフィンテック部門は、驚くべき動きとして、元チーフコンプライアンスオフィサー(Caixin記事)を新たな最高経営責任者として同社の舵取りに任命している。

Tencentの海外フィンテック事業のパートナーの匿名希望者は、Tencentはフィンテック事業を拡大(未訳記事)しているが、このソーシャルとゲームの巨人はその推進に対して「Antほど積極的ではない」ためAnt Groupと同じレベルの調査を同社は受けていない可能性があると述べている。

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タグ:AlibabaAnt Groupジャック・マー中国

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(翻訳:TechCrunch Japan)

中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる

中国の最高市場監視機関が、eコマース企業の反競争的慣行の疑惑をめぐりAlibaba(アリババ)の調査を開始。これは拡大を続ける同国のインターネット大手に歯止めをかけようとする中国政府の最新の取り組みだ。

12月24日、国家市場監督管理総局は短い声明の中で、企業がAlibabaでの独占販売を余儀なくされ、競合するJD.comやPinduoduoを避けるという「2つの中から1つを選ぶ」という方針に関して同社を調査していると述べている。

Alibabaからのコメントは得られていない。

同日、Alibabaの関連企業であるAnt Groupが金融当局に召喚され「コンプライアンス」業務について話し合われたと中国国営の新華社通信は報じている

金融サービスと顧客の仲介役を務めるAnt Groupは、中国当局が2020年11月に巨額の新規株式公開を突然中止したことを受け、債務リスクを抑制する措置を講じると約束した。

同社は声明で「本日、Ant Groupは規制当局から会議通知を受け取った。私たちは、あらゆる規制要件を真剣に検討し、厳格に遵守し、関連するすべての業務を遂行するために全力を尽くします」と述べている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AlibabaAnt Group反トラスト法中国

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(翻訳:TechCrunch Japan)

GrabやAnt Groupがシンガポールのデジタル銀行免許を取得

テック大企業が金融サービス商品を拡大するのを許容する流れがあるなか、シンガポールは12月4日、Ant Group(アントグループ)やGrab(グラブ)などを含む4社にデジタル銀行を運営する免許を付与した。

シンガポールの中央銀行、シンガポール金融管理局(MAS)はデジタル銀行候補を選ぶのに「厳格な、メリットベースのプロセス」を適用したと述べた。これらのデジタル銀行は試験運営を開始するが、他の企業に同様の免許を付与するかどうかもレビューする、とMASは話した。

TikTok(ティクトック)の親会社ByteDance(バイトダンス)を含む計21社がデジタル銀行の免許を申請し、うち14社が申請要件を満たした、とMASは明らかにした。大手企業は金融サービスへの事業拡大を急成長地域で売上高を大幅に伸ばす大きなチャンスだととらえている。

MASは、新しいデジタル銀行が2022年初めから営業を開始すると見込んでいると述べた。Ant GroupとGrab以外の残る2つの免許はインターネット大手Sea(シー)が完全所有する企業と、それからGreenland Financial Holdings、Linklogis Hong Kong 、Beijing Cooperative Equity Investment Fund Managementのコンソーシアムに付与された。

Grab-SingtelとSeaは従来の銀行と同じように顧客に銀行口座とデビットカード、クレジットカード、その他サービスを提供できる。大口のデジタル金融業務を行うAnt所有の企業とGreenland Financialのコンソーシアムは、中小企業向けにサービスを提供する。各社いずれも実在店舗を展開する必要はない。

「新しいデジタル銀行が既存の銀行とともに成長し、特に現在十分なサービスを受けられていない事業所や個人への金融サービスの質という点で業界のレベルを上げると考えています」とMASのマネージングディレクターRavi Menon(ラヴィ・メノン)氏は声明文で述べた。英国やインド、香港などいくつかの国は、テック企業がデジタル銀行を運営できるようにするために近年規制に手を加えた。

配車サービスのGrabと通信会社Singtelはデジタル銀行の完全免許を申請するために昨年コンソーシアムを組成した。両社の経験と専門性は「より多くの人が自分の資金をうまく管理して自分自身や事業、家族のために経済状況を改善することができるようにする、という我々の目標の達成を支えます」とGrabのグループCEOで共同創業者のAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明文で述べた。

Ant Groupは「これまでにAnt Groupはかなりの経験を積み、特に中小企業のニーズに応えるためにパートナーの金融機関と共に展開してきた中国において成功を収めました」と声明文で述べた。「シンガポールの金融サービス分野において、より強固で深いコラボレーションを全ての参加企業と展開していくことを楽しみにしています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group、Grab

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(翻訳:Mizoguchi

Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

上海証券取引所はAnt Group(アント・グループ)の巨大な新規株式公開(IPO)を延期することを発表した。中国当局によるフィンテックに関する新たな規制の導入、また当局がJack Ma(ジャック・マー)氏や他の幹部を聴取したことを受けての措置だ。

中国の金融当局トップとAntの間でもたれた稀にしか行われない話し合いで「フィンテック規制における大きな変更」が明らかにされ、これによりAntが11月5日の上場の基準を満たさなくなるかもしれない、と上海証券取引所は11月3日夜に出した声明で述べた。

そうした「変更」がどういうものなのかは明らかではないが、同証取はAntにそれらを開示するよう求めた。10月下旬にマー氏が中国の金融規制を批判する刺激的なスピーチ(新波財経記事)を行っていたことは記すに値する。スピーチが行われたカンファレンスには中国の上層部も出席していて、後に広範にわたる論争を巻き起こすことになった。

Antは上海証取からの通知を受け、計画していた香港でのIPOも一時停止した、と声明の中で発表した(Ant Groupリリース)。

「投資家にご迷惑をおかけすることを心よりお詫び申し上げます。2つの証券取引所の規則に則って今後の問題に適切に対処します」と述べた。

Antはこれまで当局に従順であろうとしてきた。Ant FinancialからANT Technologyにブランド名を変更したとき、この動きは金融大手を脅かすという同社のイメージを払拭し、優しいテクノロジープロバイダーの1社であることを強調するものだと受け止められた。Antは「techfin(fintechの反対)」という奇妙な造語の会社であり、従来の金融機関(多くが国有だ)とは競合していない、ということを周知するキャンペーンを数年前に始めた。

言葉は単なるショーではなかった。Antは何億人もの顧客に従来の金融機関が提供していた金融商品を紹介し、オンラインマーケットプレイスにゆっくりと守備範囲を広げてきた。同社はまた国家安全保障基金や中国合弁投資銀行といったヘビー級の国家主体を投資家にもってきた。

しかし保証材料は十分ではなかったようだ。中国の金融当局はフィンテック部門を監督するための新たな提案を11月2日に発表した(中国銀行保険規制委員会リリース)。Antが世界最大のIPOで345億ドル(約3兆6000億円)を調達することになっていた数日前のことだ。ドラフトははっきりとAntを指してはいないが、金融当局によるAnt幹部の聴取とタイミングは一致する。

「金融部門の健全性と安定に関する考えを交換した」とAntの広報担当はTechCrunchへの声明文で述べた。「Ant Groupは意見交換を深めること、そして安定したイノベーション、規則の遵守、実経済へのサービス、ウィンウィンの企業という原則に基づいた方針を取り続けることを約束する」。

メッセージはクリアだ。Antは中国政府当局の要望に応える努力をする。

「当社は引き続き包括的なサービスを提供する能力を向上させ、一般市民の生活を良くするために経済発展を促進する」とAntは付け加えた。

新たな提案は、活発なフィンテック部門に安定をもたらそうと中国が進める取り組みにおける最新の動きだ。規制草案には、当局が認めたもの以外の地方間オンラインローンの禁止、個人向けのオンラインローンの最高額を30万元(約470万円)とすること、オンライン小口融資貸し手の登記資本金を10億元(約157億円)とすることなどが盛り込まれている。

AntのIPO目論見書によると、貸付事業は急成長中で、同社の年間売上の34.7%を占め、額にして419億元(約6600億円)だ。6月までの1年間にAntは約100行の銀行と共同で1兆7000億元(約27兆円)の消費者金融を実施し、中小企業に4000億元(約6兆円)を貸し付けた。

中国の金融当局は近年、フィンテック企業の拡大と収益性を抑制しようと、多くの規制を導入してきた。例えばAntの決済サービス Alipayと、そのライバルサービスは、顧客準備金から利子収益をあげることが2019年から禁じられている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group新規上場 / IPO

画像クレジット:Ant Group

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(翻訳:Mizoguchi

アリババ子会社Ant GroupのIPO調達額は上海、香港同時上場で数兆円規模に

ずいぶん前から予想されていたが、Alibaba(アリババ)の子会社で中国のフィンテック大企業であるAnt Group(アント・グループ)のIPOによる調達額は、上海と香港株式市場への同時上場で数百億ドル(数兆円)に達する可能性がある。

Ant Group(旧社名Ant Financial)の株価は80香港ドル(約1080円)あるいは68〜69人民元(約1060〜1080円)になることが予想される。同社は香港株式市場デビュー時に1億3400万の株式を売り出し、1株80香港ドルの場合172億5000万ドル(約1兆8000億円)の調達が見込まれる。

上海株式市場でも似たような額の調達が予想されることから、同社のIPOによる調達額は345億ドル(約3兆6000億円)ほどになりそうだ。これはAramco(アラムコ)が最近IPOで調達した294億ドル(約3兆800億円)を(Reuters記事)上回って過去最大規模となる。

AlibabaのAnt Groupの持分は33%だ。現在予想される株価で計算すると、Ant Groupの企業価値はニThe New York Timesによると3100億ドル(約32兆5000億円)、CNBCによると3130億ドル(約32兆8000億円)だ。

Ant Groupの巨大なIPOは、同社の途方もない規模を反映している。TechCrunchが7月に報じた(未訳記事)ように、2020年3月時点のAntの年間アクティブユーザー数は約13億人だった。そしてこの数字はここ数四半期でさらに増えている可能性もある。AntのAlipayは、巨大で儲かる中国マーケットにおいてTencentのWeChat Payと競合する。

Ant GroupのIPOは、米国の株式市場が弱さを露呈した中でのものとみることができる。Alibabaが2014年に株式を公開したとき(未訳記事)、同社はニューヨーク証券取引所に上場した。同社はその後、香港株式市場にもデビューした。Ant Groupのニューヨークではなく、香港と上海でのダブル上場は米国外で資本調達が可能なことを示している。

グローバルパンデミックで消費者の行動が変わり、商品の購入や決済をデジタルで行うようになったため、大方のフィンテックスタートアップは2020年に売上高を増やしている。そして一般的にIPOはプラスに作用し、Ant Groupは株式が売買され始めた時にさらに追い風を受けて企業価値を増やすことが考えられる。

Antは本来の業務に固執しておらず、他のスタートアップに投資することで忙しくしてきた。例えば同社は、2020年初めに分割払いサービスKlarna(クラーナ)の少数株式を取得した。

3100億ドル(約32兆5000億円)超というバリュエーションだと、Ant Groupは現在最も企業価値が大きい米国企業であるJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)に匹敵することになる。また米国拠点のデジタル決済リーダーPayPal(ペイパル)のバリュエーション2360億ドル(約25兆円)、そしてSquare(スクエア)のバリュエーション770億ドル(約8兆円)を上回る。

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タグ:Ant GroupAlibaba新規上場ジャック・マー

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(翻訳:Mizoguchi