おこづかいアプリに中華ブースト、アプリストアのランキングはどこまで信頼できるのか

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「App Storeにランキングがある以上、事業者はその上位を目指す。そしてそのためにはアプリの面白さも大事だが、広告にだってお金をかける。これはi-modeの時代から何も変わっていない」——あるネット広告代理店関係者はそう語る。リワード広告によるブーストみたいなものは「昔からよくある話」なのだと。

アプリストアにあるランキングは、ダウンロード数をはじめとした指標に基づいて作成されている。そのランキングの上位に入るのは、面白くて話題になっているアプリばかりとは限らない。アプリ開発者が広告で露出を増やし、ダウンロードを促したアプリだったりもするわけだ。もちろん広告で知ったアプリが面白くて話題になるというのもよくある話だ。

だがそんな広告手法の中でも、リワード広告を使った「ブースト」と呼ばれる行為について、その是非が問われている。アプリを開発するスタートアップや広告を提供する代理店ならもちろんのこと、アプリストアを利用するユーザーもその実態は知っておいたほうがいいだろう。なぜなら人気だと思ってダウンロードしたアプリは、極端に言えばランキングを「買って」いるかも知れないからだ。そんなアプリストアを取り巻く環境について紹介していこう。

アプリランキングに影響を及ぼす「ブースト」

まずはリワード、ブーストといった言葉について説明する。リワード広告とはユーザーが広告を通じてサービスの会員になったり商品を購入したりすると、その広告収入の一部が還元される広告のこと。この広告の仕組み自体は何も新しいモノではない。「会員になれば○○ポイント」なんて案件が並ぶポイントサイトなどは、読者のみんなもこれまでに見たことがあるのではないだろうか。

そしてブーストというのは、このリワード広告の仕組みを使って、アプリストアのランキングを意図的に急上昇させる行為のを指す。一番多いケースは「おこづかいアプリ」や「懸賞アプリ」(ここからはおこづかいアプリで統一する)と呼ばれるアプリを使って、短時間に特定アプリのダウンロード数を増やすことでアプリのランキングを操作するわけだが、これがアプリストアのランキングに与える影響は決して小さいモノではない。

僕は2013年に、「App Storeランキング騒動の実態–「懸賞アプリ」に対する業界の懸念」という記事で当時のブーストの状況について伝えた。それから2年ほどたった今、過激化するブーストの実態について指摘する報道エントリーが増えている。これらの影響もあってか、昨日今日というタイミングでもアプリストア上からおこづかいアプリが削除されている状態だ。

「おこづかいアプリ」によるブーストはいまだ健在

おこづかいアプリを使ったブーストの方法を詳しく説明すると次の通りだ。ユーザーがおこづかいアプリ上で紹介されるアプリをダウンロードしたり、そのアプリについてアプリストア上でレビューをしたりすると、その引き替えとしてポイントを得られる。ユーザーはこのポイントを貯めることで、Amazonギフト券などを得ることができる。

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おこづかいアプリに並ぶリワード広告

そんなおこづかいアプリ上で「ダウンロードすると○○ポイント提供」なんて紹介されているアプリの枠、それこそがリワード広告なのだ。広告主が広告代理店の提供するリワード広告ネットワークに出稿すると、そのネットワークを利用するおこづかいアプリにその広告が掲載されるのだ。

ポイントを得たいユーザーは当然おこづかいアプリの広告を経由してアプリをダウンロードするので、そのタイミングでダウンロードが集中し、結果としてそのアプリのランキングが上昇することになる。

おこづかいアプリへの広告掲載時間は、実は夕方17〜19時前後に集中している。その理由は何なのか? App Storeでは3時間ごとにランキングが更新されているが、その中でも最もダウンロードが活発になる“ゴールデンタイム”が19時以降だからだ。

Appleはランキングのロジックを公開していないし、ロジック自体も日々変化していると聞くが、「直近数時間で大幅にダウンロード数が増加することがランキング上昇に繋がる」というのはアプリ業界関係者の一致した意見。これを見越して17時にブーストが始まるのだ。

ランキング操作を意図するアプリは「規約違反」

ではこのブースト、つまるところ何が問題なのだろうか。

ユーザー目線で言えばまず、アプリストアのランキングが信用できないものになるということだろう。当たり前だが、アプリストアのランキングは本来「人気のアプリ」が並ぶべき場所だ。そこにCPI(Cost Per Install:1インストールごとの課金)100円程度のいわば“実弾”広告を使ったアプリが入るのだ。ランキングの信頼感は低下しかねないし、極論を言えばアプリビジネスの市場自体にも影響があるという声も聞こえる。

また、ダウンロード数を水増しできるのが問題だと指摘する人もいる。最近ではどんなアプリでも、ダウンロード数よりもアクティブユーザー数が重視される風潮がある。実際取材でもMAUやDAUといった数字を聞くことが多い。だが一方でテレビCMを見れば、「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリはまだまだ多い。アクティブユーザーなんかよりもダウンロード数は何より分かりやすい数字だ。ブーストでは、このダウンロード数も急激に増やすことができてしまう。

関係者へのヒアリングや僕が実際におこづかいアプリを見て調査したところ、ゲームアプリを除いては、SNSの「Twitter」、ニュースアプリの「Gunosy」、月額定額制の音楽アプリ「AWA」、ECの「Amazon」などなど、TechCrunchの読者になじみの深いアプリもブーストを行っている、もしくは過去にブーストを行っていたことが分かる。ここで名前を挙げたサービスはあくまで直近に確認できたものの一部で、全体の数は正直把握しきれない。テレビCMなどで「何百万ダウンロード突破」なんてうたっているアプリも少なくないのだ。

また、プラットフォーマーの規約を見れば、そもそもブースト事態が違反行為ではないのかという話もある。Appleの開発者向けの規約には次のような項目がある(もちろんGoogle Playにも同様の規約がある)。

2.25 Apps that display Apps other than your own for purchase or promotion in a manner similar to or confusing with the App Store will be rejected
(App Storeと類似、もしくは紛らわしい表示をして、他のアプリの購入やプロモーションするアプリをリジェクトする)

3.10 Developers who attempt to manipulate or cheat the user reviews or chart ranking in the App Store with fake or paid reviews, or any other inappropriate methods will be removed from the iOS Developer Program
(偽物のレビューや金銭を支払って書いたレビュー、その他不適切な方法でApp Storeのユーザーレビューやランキングを不正に操作しようと試みる開発者はデベロッパープログラムから削除する)

ブーストが「ランキングを操作しようと意図しているもの」だと考えれば、それは明確な規約違反だ。ただし、リワード広告に関わる代理店やお小遣いアプリ開発の関係者としては、「あくまでダウンロード支援の施策であり、ランキングが変動するのはその結果でしかない」という説明をすることが少なくない。言い分としては分かるのだけれど、実際におこづかいアプリがストアから消えつつある今、はたしてその言葉をそのまま受けられるかというと、正直難しい。

Apple Japanは回答せず、一方で米Appleは「不正」と認識

ではアプリストアを提供するプラットフォーマーはブーストの実情をどう考えているのか? 実は先週Apple Japanの広報部に電話で問い合わせたところ、「メールで質問を送るように」と指示されたため、メールで質問を送付している。しかし1週間近く経っても回答がないままだ。僕が確認した限りでは、別の媒体の記者なども同様の状況らしい。

回答のないApple Japanに対して「プラットフォーマーとしておごりがあるのではないか」と考えるべきか、はたまた「米国本社との関係上、日本法人では回答できない歯がゆい状況にあるのではないか」と考えるべきかはさておき、僕はちょっと面白いメールを入手することになった。以下にあるのは、あるアプリ開発者が、米Appleのアプリレビューチームに対して、「あるアプリがブーストを行ってランキングを不正に操作している疑いがある」と指摘した際の回答メールだ。

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概要を訳すと次のとおり。

We take ratings fraud very seriously and investigate each claim. Someone from this team will investigate and follow up as needed. Because we can only share communications about an app with its developer, you will not receive updates about this matter.
(レーティングの不正を非常に深刻にとらえており、調査を行う。ただし我々は開発者とのみアプリに関するコミュニケーションをしているので、今後あなたには更新情報をお知らせしない)

あくまで個別のアプリに対する説明ではあるが、アップルでもブーストについて状況を理解しており、不正だととらえているのだというわけだ。実際これまでもアップルは「広告を閲覧することでアイテムをもらえる」なんて広告も規約で禁止するなどしてきた。プラットフォーマーとその上でサービスを展開する事業者の狙いは異なる。自分たちの管理下で健全にサービスを運営したいプラットフォーマーと、その裏をかいて少しでも自分たちの価値を高めたい事業者たち。その行動は結局いたちごっこになってしまう。

アプリ開発者「ブーストは“危ないモノ”ではない」

これまではユーザーやプラットフォーマーの視点での話をしてきた。では実際にブーストを行うアプリ開発者やリワード広告を取り扱う代理店、お小遣いアプリの開発者はどう考えているのだろうか。

リワード広告を買う側である、あるアプリの開発者はこう語る。「サイバーエージェントやアドウェイズといった上場企業が広告商品として推奨、販売してくる以上は“危ないモノ”ではないと思っている」「結局のところその善悪を判断するのはプラットフォーマー。彼らの横暴さも知っている」「広告を売っている代理店の思いはいろいろあるのだろうが、買っている我々はあくまで提案された商品を買っているだけ。その存在を問うこともない」——結局のところ、ブーストはマーケティングのツールの1つだし、当たり前のように提案される商品だ。そこまで問題視することはなかったという。

前述の開発者が語るとおりで、リワード広告のネットワークを提供しているのはサイバーエージェント傘下のCAリワードやアドウェイズ、VOYAGE GROUP傘下のZucks、ユナイテッドなど上場企業(の子会社含む)も多い。リワード広告によるブーストが完全に禁止となると、その影響範囲は決して小さくないのは分かる。そんな背景もあってか、あるアプリ会社の代表は「リワード広告自体は数えきれないほど多くのアプリが使っている。これをとやかく言うことは、拡大するアプリ産業にマイナスの影響を与えかねない」と語っていた。

リワード広告のネットワークを展開する広告代理店などに話を聞くと、前述のとおり「規約的にはグレーだが、問題はない」という回答が大半だった。冒頭の代理店関係者の発言にもある話なのだが、i-mode全盛期の時代にだってランキングを操作するような広告手法は存在していたと聞く。当時、公式サイト(キャリア、つまりここではNTTドコモが認めたサイトのこと。i-mode公式メニューからアクセスできる)のランキングはMAUをベースにしていたため、勝手サイト(キャリア非公認のサイト。ブラウザで直接URLを叩いてアクセスする必要があった)に公式サイトの隠しタグを仕込み、MAUを水増ししていたなんてこともあったそうだ。

代理店サイドの回答とは異なり、お小遣いアプリ開発者は、前述の規約によってアプリがリジェクトされたり、開発者プログラムからアカウントが削除されたりする可能性があることは認識していたようだ。自社のアカウントでお小遣いアプリを提供している会社などは誠実なほうで、事実上休眠している法人や開発者個人の名義で開発者登録をし、実質的な運営者を隠しているケースも少なくない。ひどい話では、アップル側から再三の警告があったにもかかわらずにそれを無視し、「稼げるうちに稼げ」という姿勢で小遣いアプリを提供して、最後にはアカウントを削除された事業者もいたという。

「中華ブースト」で制裁を受けたスタートアップ

ところで代理店の話を聞いていく中で「中華ブースト」という聞き慣れない言葉を聞くことになった。これは今まで語られてきたブーストとは全く異なるものだ。一体どういうモノなのか。

これまで紹介してきたブーストは、実際にユーザー1人1人が端末にアプリをダウンロードすることで、短時間でアプリの大量ダウンロードを促すというものだった。一方の中華ブーストというのは、中国で日本のApple IDを割り振ったiPhoneを複数台用意し、機械的にアプリの大量ダウンロードを行うのだという。そんなものが本当にあるのだろうか。

ある代理店関係者が「過去の話」として語った仕組みはこうだ。数年前の中国では、複数台のiPhoneをPCと接続し、機械的にIPアドレスを変更して、当該アプリを何度もダウンロードするという手法があったのだそう。こういったことを行う事業者はネットワーク化され、アプリストアのランキングを大きく動かすことができたという。「中国では『CPI○○円』というような売り方でなく、『1週間ランキング1位キープで○○円』といった大胆な価格設定が行われていた。つまりそれを実現できるような(ブーストの)仕組みがあった」(関係者)のだそうだ。

だがさすがにこれはAppleの知るところとなり、対策がなされた。しかし手を変え品を変え、安価なリソースと機械的な仕組みを組み合わせたブースト手法が編み出されているという。

この中華ブーストの仕組みを日本に持ち込んで販売する広告代理店が存在する。実はこのブースト、金額面でも安価に効果があると一部では話題なのだそう。通常国内でゲームアプリなどをブーストする場合、CPIは80〜100円程度が一般的。だがこの代理店の提供する中華ブーストは、CPI50円程度と通常の約半額で実施できるのだという(これとは別に国内でもCPI十数円の非ゲーム専門ブーストがあるようだ。ここでは割愛する)。

だがこの代理店の仕組みが、機械的なものであれば「規約上グレー」なんてレベルの話ではない。僕は複数人から名前の挙がったその代理店に問い合わせたが、金額については「実際に国内の一般的な価格の半額程度」と回答を得たものの、その手法については聞くことができなかった。

しかしこの中華ブースト、プラットフォーマーからすればたまったもんじゃないし、危険な手法だ。実際、数カ月前にさかのぼるが、このサービスを利用したスタートアップにある事件が起きている。

前述の代理店経由でブーストを行っていたあるスタートアップのアプリが、ある日突然App Storeのランキングから除外されたのだ。アプリ名を直接検索すればそのアプリは出てくるのに、ランキングには一切表示されないのである。アプリ解析サービスに「App Annie」でもそのランキングを探ってみたが、数カ月の間、ランキングの数字自体がつかない状態になっていた。

その原因は何か? この事件を知っていた関係者は一様に「中華ブーストだ」と答える。その手法に気付いたアップルが制裁を行っていたのだと。そのスタートアップの“中の人”も「プラットフォーマーとの関係を考えて利用をやめた。(ブーストは)もう懲りている」として利用を認めた。代理店側はその因果関係については明言せず、「プラットフォームの上でのビジネスなので、(ブーストには)ある程度のリスクはある」とだけ語った。同社への今も問い合わせは、今も増えているのだそうだ。

「規約上グレー」な手法がアプリビジネスの価値を生み続けるのか

取材を通して分かったのは、アプリ開発者や代理店からすれば、規約を唐突に変更するプラットフォーマーだって褒められたモノではないということだ。こんな状況にコメント1つ出さないAppleの対応にも疑問が残る。だがそういったプラットフォーマーの行動の裏には、正攻法から中華ブーストのような危険な手法までを駆使して、ランキングの上位を取ろうとするプレーヤーの活動があるのも事実。プラットフォームでビジネスをする以上、守らなくてはならないルールはある。でもそういった両者の関係について、それこそ普段ランキングを見て、アプリをダウンロードしている読者にも知って欲しいと思っっている。

ただブーストを肯定する人たちにはちょっと考えて欲しい。「規約上グレーだ」なんて言っていたが、今プラットフォーマーが規制を強めている商品を売り続けることが本当にアプリビジネスの価値を生み続けるのだろうか?

今回話を聞いた代理店関係者のうち数人は、「本音を言えば、リワードによるブーストはそう長く続くビジネスではない」といったことを語っていた。ある人物は「PCとアプリを連動させるターゲティング広告を企画している代理店もいる。リワード広告の『次』をすでに探している会社も少なくない」なんて具体的な話もしていた。アプリ広告のビジネスにはまだまだ先があるんじゃないだろうか。

リワードにブースト、これが今日明日ですべてなくなるなんて思わないが、そろそろ別の方向に目を向けたほうがいい時期が来ているんじゃないだろうか。App Storeで「このアプリはなんでこんなに急に上位表示されるのか?」なんてランキングを疑ってかかるのはそろそろやめにしたい。

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Blake Patterson

ヴォラーレがアプリレビューサイト「Appliv」で海外進出——MAU600万人、アプリ版は100万ダウンロード

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ヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏

ヴォラーレが提供するアプリレビューサイト「Appliv(アプリヴ)」が海外に進出する。同社は6月にフィリピン子会社を設立。今後現地の人材を採用して英語でのアプリレビュー記事を作成していき、9月末をめどにUS版のウェブサイトを立ち上げる予定だ。将来的には他の地域への展開も視野に入れる。

Applivは2012年8月にスタートしたスマートフォンアプリ向けのレビューサイト。アプリを1500のカテゴリーに細分化し、約6万8000件のレビューを掲載している。レビューはヴォラーレのライターが執筆したものに加えて、ユーザーの投稿も掲載。MAU(月間アクティブユーザーは)は600万人。

3月に提供を開始したスマートフォンアプリ版(iOSおよびAndroid)は、合計100万ダウンロードを突破した。アプリ版のダウンロード数は現在月間数十万件ペースで増加しているという。

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iOS版の「Appliv」

ちなみにApplivはウェブ版とアプリ版でサイト構成が異なっており、ウェブ版が同社によるレビューが中心になっているのに対して、アプリ版ではユーザーレビューが中心(一部同社の「公式キュレーター」によるユーザーレビューもあるそうだ)になっている。またアプリ版はレビューが時系列で表示される「タイムライン」を用意している。

この理由についてヴォラーレ代表取締役の高橋飛翔氏は「ウェブとアプリではユーザーの導線設計が違っているから」と説明する。

ウェブ版は検索から流入するユーザーが中心。つまりどんなアプリをダウンロードしたいかというニーズが明確だ。一方でアプリの場合はニーズが抽象的。なんとなく(レビューを)見に行くので、「『友達のおすすめ感覚』でアプリを紹介している」(高橋氏)のだという。

Applivは広告モデルでサービスを展開しており、2013年からは「Appliv Ad」と呼ぶインフィード型のネイティブアドを展開している。アプリストアへの送客で課金を行う成功報酬型の広告となっている。

手持ちのファッションアイテムから最適なコーディネートを提案する「ベストスタイルミー」

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エモーシブは6月5日、男性向けのファッションコーディネート提案アプリ「ベストスタイルミー」のiOS版を正式公開した。Android版は2014年10月に公開されている。

人力とアルゴリズムで最適なコーディネートを提案

ベストスタイルミーは、ユーザーが質問に回答して自分の服の好みを選択した上で、所有している、もしくは購入を検討しているファッションアイテムの写真を撮影すると、24時間以内にそのアイテムを使った最適なコーディネートを提案してくれるサービス。

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コーディネートの提案は、人力での画像判定と、独自のアルゴリズムを組み合わせて行う。アップロードされた写真に対して、そのファッションアイテムがシャツなのかジャケットなのかという「種類」やアイテムの「色」、半袖か長袖かといった「袖丈」などをまず人力で判定。その上で機械的に最適なコーディネートを提案する。

人力でのチェックが入ることもあって、ECサイトで見かけるような背景白抜きできっちり撮影した写真でなくとも利用可能。例えばコーディネートを知りたいアイテムを着た自分自身の写真をアップしてもいいのだそうだ。写真を数多くアップデートすることでユーザーの好みを学習し、さらに最適なコーディネートを提案してくれる。ただ、人力ということでどこまでの件数を処理できるかというのはちょっと気になるところだけれども。

サービスを提供するエモーシブは2012年11月の設立。これまでにインキュベイトファンドおよびディー・エヌ・エー、プライマルキャピタルから資金を調達している(金額は非公開)。

スタイリストの「ロジック」をシステムに落とし込む

エモーシブ代表取締役の坂本慧氏は、新卒でホリプロに入社。3年2カ月芸能人のマネージャーを務めたのちに起業を志した。インキュベイトファンドが主催する起業支援プログラムの「Incubate Camp 4th」にも参加している。papeboy&co.(現GMOペパボ)創業者の家入一真氏が自由な発想で次々とサービスをリリースしているのを見て、自らもサービスを立ち上げたいと思ったという坂本氏だが、前職で出会ったスタイリストとのやりとりがベストスタイルミーの企画に繋がったと説明する。

「スタイリストはセンスや感覚でファッションアイテムを選んでいるように見えるかも知れないが、実は何と何が似合うのかということを非常にロジカルに考えている。ロジカルなのであれば、その考え方をシステムに落とせないかと考えた」(坂本氏)

僕もそのアルゴリズムのベースになっているスタイリストへのヒアリングシートの一部を見せてもらったのだけれども、「○○の柄は××な体型には合わない」といったことからファッションアイテムの区分、配色の組み合わせに関する内容まで幅広い。坂本氏いわく「スタイリストには合計100時間以上話を聞いている」(坂本氏)とのこと。これに季節ごとのトレンドなどの情報を追加してアルゴリズムをアップデートしている。

ダウンロード数は4万件に満たない程度でまだまだこれからという数字だが、「リテンションは高い」(坂本氏)とのこと。コーディネートアプリと聞くと、スタートトゥデイの「WEAR」などを思い浮かべるが、坂本氏は利用のニーズが違うと説明する。

「ゼロベースでコーディネートを考えるのであればWEARでいいと思うが、ベストスタイルミーは自分の持っているファッションアイテムを軸にコーディネートを提案してくれる」(坂本氏)。今はアップロードした写真以外、ユーザーの所有していないファッションアイテムを組み合わせてコーディネートを提案しているが、「自分が持っているファッションアイテムだけでのコーディネートを提案する機能が欲しい」という要望も少なくないという。

現状、収益源はファッションアイテムのアフィリエイトのみ。今後はオプション機能の提供などでユーザー課金をする予定だという。

Android Mの開発者プレビューを動かしてみた(ビデオ)

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Android Mはまだ開発の初期段階にある。しかしGoogleは、テストデバイスで確認するためのデベロッパー・プレビューを公開した。さっそくNexus 5に搭載して新機能などの確認を行なってみた(上のビデオをご覧ください)。当然ながら作りこみが不十分なところもあるものの、新機能の様子などを体感することができるだろう。

アプリケーションのドロワーやボリューム調節機能などの細かな変更点も、実際に使い勝手的には大きな改善と言えそうな感じだ。アプリケーションを名前で検索したり、あるいはアルファベット順に並べて探すことができるのは、大量のアプリケーションをインストールしている人にはとても便利な機能だろう。ボリューム調節では通知音やアラーム音などを簡単に設定できるようになっている。

新OSには「Google Now on Tap」という機能も搭載される。但し、現状のプレビュー版では、その実際の動作はまだほとんど確認できない状況だ。しかしどのようなタイミングでどういった機能が実行されるのかということを確認することはできる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

ソーシャル時代のオリコン目指す—ランキング型ニュースアプリ「Wanpick」

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アイスタイル、エキサイト、インキュベイトファンドが出資する、スマートデバイス向け動画広告の新会社「OPEN8(オープンエイト)」。4月に会社の設立と女性ユーザー特化のスマートフォン動画広告ネットワーク「VIDEO TAP」を発表していた同社が、ニュースアプリ「Wanpick(ウォンピック)」の提供を開始した。

アプリ自体は1週間ほど前のiMEDIA SUMMITで発表されていたし、僕も以前にベータ版を利用させてもらっていたのだけれども、本日よりApp Storeでの公開がスタートした。

ソーシャル時代のオリコンを目指す

Wanpickは、FacebookやTwitter上といったソーシャルメディア上で話題になっているニュースをキュレーションして表示してくれるアプリだ。ロジックの違いなどはあるが、ざっくりとはSmartNewsやGunosyのようなイメージでいいだろう。

画面上方にはニュースカテゴリのアイコンが横並びに表示されるが、1番のウリは1時間ごとに1位から10位まで10件のニュースを表示する「ソーシャルニュースランキング」。画面を下にスクロールしていくことで、タイムラインをさかのぼりながら話題をチェックすることができる。OPEN8代表取締役の高松雄康氏はこのランキングを中心とした構成で「ソーシャル時代のオリコンを目指している」と語っている。その他のタブは朝夕30件のニュースを表示する。

画面右側には、特許出願中だというインターフェースの「ストレッチピッカー」が表示される。コロプラが採用する「ぷにコン」をちょっと思い出したのだけれども、ストレッチピッカーは画面上のボタンを上下に引っ張ることで、その引っ張り具合に合わせたスピードでスムーズな画面遷移を実現している。これは動画を見てもらったほうが早いだろう。ちなみに開発はシンガポールやベトナムで行っているそうだ。

動画広告の事業者がニュースアプリを提供する理由

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先日動画広告のネットワークを発表したばかりの同社がなぜニュースアプリを提供するのか。そしてダウンロード数やMAUで数百万という数字のニュースアプリが複数ある中で、最後発としてチャレンジしてうまくいくのだろうか。高松氏はその理由について、「アイスタイルというメディア運営からスタートした会社であるから」語る。「もちろん動画広告の実験の場としても使っていくが、そこで広告を流していく、収益を上げていくということをやりたいのではない。(メディアに)トラフィックを流すことで、メディア側の収益にコミットするプラットフォームを作りたい」(高松氏)。またユーザー数についても、ニュース視聴をする媒体としてはまだまだ大きくない領域であり、同社が狙う女性層も含めて数百万ユーザーを狙えるとしている。

同社の動画広告プラットフォームは女性向けメディア限定。それならば女性向けのニュースに特化したアプリかなのかとも思ったのだが、「デザインに関しては女性にも使ってもらえるように配慮した。しかし女性に(ファッションやコスメなどのコンテンツが中心の)女性向けメディアだけを当てるようなニュースアプリのニーズはすごくニッチ。(アイスタイルの)@cosmeだけは特殊だが。我々はマス向けのニュースを提供していく」(高松氏)とのことだった。

ほかのニュースアプリと比較して特殊なのは、自社でキュレーションメディアも運営し、それを1つのチャンネルとして表示しているところだ。Yahoo!検索で上位の検索ワードに関する情報をまとめた「検索ワード急上昇まとめ」と、エンタメ情報を紹介する「W-STYLE」の2つのチャネルを用意。社内のスタッフが日々情報を更新するのだという。人気の検索キーワードを中心にコンテンツを作るということで、SEOでの集客効果は見込めそうだと思ったが、最近何かと残念な話題が多いキュレーションメディア。そのあたりはしっかりしたコンテンツが出ることを楽しみにしたい。

スマホアプリを動画で解析するRepro、デジタルガレージなどから約1億円の資金調達

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App Storeに登録されるアプリの登録者は2014年末で約39万人、アプリ数では120万種類以上にもなっているそうだ。そんな数のアプリの中からユーザーに選ばれるためには、ASO(アプリストア最適化)やブーストを含む広告などでの「どうユーザーに対して露出するか」のテクニック、定期的なキャンペーンやプッシュ通知などを使った継続率向上施策にはじまり、アプリ内やストア内を問わず、本当にいろいろなことが求められる。

もちろんユーザーのユーザーの行動を解析することも重要なことの1つ。タップされた位置や離脱した画面、そういったユーザーの行動を動画で取得し、アプリの改善に生かすことができるのが、動画を使ったモバイルアプリ解析サービス「Repro」だ。サービスを提供するReproは4月22日、DGインキュベーションとブレインパッド、SHIFTを引受先とした総額1億円の資金調達を実施した。同時に約1年ベータ版として提供してきたReproのiOS向けサービスを正式にオープンした。

Reproでは、SDKを組み込んだアプリ上でのユーザーの⾏動をリアルタイムに動画で取得し分析。そのデータをウェブ上で閲覧できる。パスワードやクレジットカード番号の入力なんかはどうするのかと気になったのだけれども、テキスト入力を検知してモザイクをかけるほか、マスキング用のAPIを用意しているのだという。

では具体的にはどんな時にこのツールを利用できるのか? まず開発段階においては、クラッシュレポートを動画とスタックトレース(ざっくり言うとエラー発生時のログのこと)で提供する。この2つをセットで提供することで、クラッシュ時の挙動が非常に分かりやすくなるわけだ。また、ウェブの管理ツールを通じて、アプリ内にテスト操作を依頼する画面を表示したり、その後のアンケートを投稿してもらったりする機能も用意する。

いざアプリをリリースしたあとは、アプリ開発者が設定したイベントがどの程度実行されているのかを分析したり(カスタムイベント分析)、イベントごとのユーザーの遷移率を分析したり(ファネル分析)といったことができる。Repro代表取締役の平田祐介氏いわく、このような定量的な分析と、動画による定性的な分析を同時に行えるのがこのサービスの最大の強みなんだそう。

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海外を見てみると、スウェーデンの「Lookback」やイスラエルの「Appsee」などの競合サービスはいくつかあるそうだが、「開発会社に協力してもらって3つのアプリで調査したが、SDKの容量やCPU使用率、メモリ使用量でもReproは競合製品より優秀。中には十分な品質で撮影できないものもあった」(平田氏)のだそう。そんなこともあってすでに海外市場も視野に入れており、英語版でもサービスを提供しているとのこと。Android版も現在開発中だという。

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ツイキャスが1000万ユーザー突破、動画サービスからプラットフォームへ

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モイが提供する動画ストリーミングサービス「TwitCasting(ツイキャス)」が1000万ユーザーを突破した。4月8日に同社が明らかにした。

2010年2月のサービス開始から5年弱での達成となる。以下がユーザー数を示すグラフだが、サービス開始から順調にユーザー数を増やしていたが、2013年後半からはユーザーが急増。女子高生を中心にしてサービスを拡大してきた。

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また、当初はノンプロモーションながら、海外ではブラジルを中心に局地的にユーザーが増加。現在海外ユーザーの割合は全体の2割ほどだが、その半数(つまり全体の1割程度)はブラジルのユーザーなんだそうだ。そんなこともあって、現在は米国・ブラジルでもユーザーサポートを行っている。

2013年頃まではアクティブユーザー(ユーザー数400万人でMAU200万人程度だったと聞いている)を公開していたが、現在は非公開。ただし、関係者から聞く限り、いい数字を出しているようだ。

おしゃべりツールからプラットフォームに

もう10代だけのサービスではなくなってきた——モイの丸吉宏和氏は語る。海外での利用はさておき(ブラジルでは初期からアーティストが音楽ライブの配信などをしていた)、日本では「女子高生のおしゃべりツール」からスタートしたツイキャス。高画質配信にも対応してからは、政党やスポーツチーム、アーティストなど、さまざまな組織の公式配信ツールとしての役割も担いつつあるのだそう。その結果、ユーザーの属性も(詳細は非公開だったが)30、40代まで広がったという。

特に2014年10月、法人利用を前提として高画質配信に対応してからはその動きが顕著になっている。アーティストが新譜を発売する際などは、ミニライブなどをツイキャスで配信することも増えたそうだ。

すでにPC版の広告やギフト用のアイテムなどで課金をしているツイキャスだが、1000万ユーザーを迎えていよいよ本格的なマネタイズを始める。具体的な話は今後発表していくということだったが、「ライブ配信はPRには使えても、それだけでは(配信でPRする商品の)売上にはそんなに影響はない、と言われるのは苦しかった」(丸吉氏)と語っていることから、マーケティングやコマース関連の機能を実装していくことが予想される。

実際、ツイキャスで女性誌のモデルがおすすめした化粧品が翌日にはAmazonで売り切れになるといった現象も起きているらしいし、法人のキャス主(配信者)を中心に、コマース機能の連携ニーズは高いらしい。このあたりは今春中にもまた発表すると聞いている。

TwitterのPeriscope買収の影響は?

3月にはTwitterがツイキャスの競合サービスであるPeriscope買収し、さらに別の競合サービスであるMeerkatに対して、ソーシャルグラフの使用を禁止するといったことが起きている。ツイキャスには影響はないのだろうか? 丸吉氏は「(ソーシャルグラフの使用制限など)何もないとは言えないが、ツイキャスではすでに独自IDを用意しており、その数も増えている。またAPIの利用なども適切に行っている」と説明した。

DeployGateが法人向け事業を本格化——ミクシィを飛び出してでもサービスを続ける理由

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スマホゲーム「モンスターストライク」が絶好調のミクシィ。同社は1月、スマホアプリ向けのテスト配信サービス「DeployGate」の事業譲渡について発表した。事業譲渡といっても、これまでDeployGateの事業担当者らがミクシィを飛び出して新会社デプロイゲートを設立、その新会社に事業を譲渡するというものだった。

ミクシィからスピンアウトして約3カ月、AppBroadCastとの共同サービスなども発表していた同社がいよいよ本格的に法人向けビジネスを展開する。サービスの詳細、そして起業に至る経緯や想いについて、共同創業者でCEOの藤崎友樹氏と共同創業者でCOOの安田一斗氏に話を聞いた。

法人向けサービスを正式にローンチ

まずはDeployGateそのものと、3月30日に正式リリースした法人向けの「DeployGate Enterprise」について紹介したい。

DeployGateはiOSおよびAndroidアプリ向けのテスト配信サービスだ。スマートフォンアプリは通常、App StoreやGoogle Playといったアプリストアを経由しないとダウンロードできない(しかもiOSの場合、アップルの審査が入るため数週間かかる)。だがアプリをぶっつけ本番でリリースしても、問題があったり、操作感に不満があればすぐにストアで低評価をつけられてしまうし、そこからアップデートしようにも時間がかかってしまう。これでは開発者も利用者も幸せにはならない。

だがDeployGateを利用すれば、アプリのファイルをアップロードし、生成されるリンクにアクセスするだけでアプリを配布できるようになる。インストール数や利用状況のモニタリングやログの取得も可能。これによって複数人で開発中のアプリを確認したり、クローズドベータ版を配布するといった施策が非常に便利になるのだ。

今回のDeployGate Enterpriseでは、これまでにも提供していた組織・チーム向けプランの機能を大幅に強化。開発グループや開発アプリ数の制限を取り払ったほか、詳細な権限設定も用意。開発会社と外部での共同開発などでも利用できるようにしている。価格は20アカウントで月額5万円から。すでにクックパッドやはてな、リクルート、ミクシィ(もちろんモンストでもバリバリに利用されているそうだ)などがクローズドベータの段階からサービスを利用している。

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事業は黒字化するも、成長は予想を達成せず

新卒でミクシィに入社した藤﨑氏だが、2009年頃からAndroidに触れるようになり、当初は電話帳アプリなどをテスト的に開発していたそうだ。それが最終的に2010年に同社が発表した「ソーシャルフォン」として世に発表され、その後藤崎氏はAndroidの開発担当となる。そしてAndroidの開発環境の不便さを痛感し、社内向けにDeployGateの前身となるツールを開発した。

当時ミクシィでは、新規事業創出プロジェクトの「イノベーションセンター」を発足するタイミング。藤崎氏のツールが第1号案件として採択され、DeployGateのプロジェクトが始まることになった。

藤﨑友樹氏

デプロイゲートCEOの藤崎友樹氏

サービスインから約2年。個人開発者からプリインストールアプリの検証をしたい端末メーカーまで、国内外2万アカウントが利用(海外も2014年時点で90カ国以上で利用されている。先方の許可を取っていないので公開できないとのことだが、本当に著名な米国のアプリなどでも利用されているとのことだった)。実はすでに黒字化し、「ごはんは食べられるくらいには」(藤崎氏)成長していたDeployGate。しかし1月のミクシィの発表のとおり、ビジネスとしての成長スピードでは当初の予定から下振れしていたのだそうだ。

周囲を見てみると、競合サービスの「TestFlight」はアップルに買収され、2014年3月にAndroidのサポートを終了。だがDeployGateはもともとAndroidのみに対応していたものの、iOSのサポートを開始したばかり。「ミクシィという会社を考えれば(サービスを終了するという)ロジックは理解できる話。だが、開発者向けツールは浸透に時間がかかるし、(周辺環境も変わり)スタートラインに立ったところだった」(藤崎氏)「開発ツールなので『使っている』という話があまり外に出ないが、名だたるスタートアップが使ってくれていた。だから僕らとしては可能性が見えていたし、プランが徐々に見えてきていた」(安田氏)という思いから、スピンアウトを決意したのだという。

事業譲渡で「サラリーマンとして覚悟を決めた」

ミクシィは買収こそすれど、手がけてきた事業を社外に譲渡するようなことは少なくともここ数年ではなかったと記憶している。イケてないサービスは閉じて、人材を再分配していたはずだ。だからDeployGateのスピンアウトには正直驚いていた。藤崎氏には「サクッと話がまとまったのか?」と尋ねたのだけれども、同氏は「全然サクッといかなかった」と即答した。

デプロイゲートCOOの安田一斗氏

デプロイゲートCOOの安田一斗氏

ミクシィからは、DeployGateのチームに対して、サービスをピボットする、サービスを終了して別の事業にチャレンジするなど、さまざまな提案があったそうだ。そんな中で2人はスピンアウトすることを選択したという。だけどもミクシィからすれば、「社外に自社のサービスを出すのであれば、すぐに潰れてしまっても困る」と思うわけだし、簡単には譲れないだろう。

だが社内でも彼らを応援する役員・スタッフも多く、「譲歩できるモノは譲歩して、自ら持ち出しもしたが、それだけやる気を認めてもらった」(藤崎氏)のだそうだ。事業譲渡の金額についても聞いたのだけれども、具体的な額は非公開。2人は「サラリーマンとして考えるならば、覚悟を決めないといけない額だった」と語った。

DeployGateで社会問題を解決したい

そんな“覚悟”を持ってスタートしたデプロイゲート。彼らのイグジット戦略はどういうモノなのだろうか。藤崎氏に「TestFlightや(Microsoftに買収された競合サービス)HockeyAppのように、買収がゴールか」と尋ねたのだけれども、同氏はそれを否定する。

「本当にいいモノが開発者に広がっていくのが重要。そして、そのモノがどこかのプラットフォームに属していないことも重要だと思っている。グーグルやアップル、いずれかのプラットフォームでないと動かないというのでは意味がない。そんな縛りがないところで、作る人と使う人を繋ぎたい。今は売り抜けるという目標はない。僕たちの顧客が抱えるのは社会問題であり、それをどんどん解決していきたい」(藤崎氏)

安田氏もこう続ける。

「スマートウォッチやスマートテレビが出てきているが、iOSとAndroidだけを考えても、デバイスはスマートフォンにとどまらない。そうするとさまざまなデバイスで(不具合など)不幸なことは起こってくる。そんなことが起こらないように、DeployGateのようなツールが当たり前に使われて好循環が生まれればいい」(安田氏)

スマートニュースが12億円を追加で資金調達、米国での人材採用を積極化

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すでに本家TechCrunchでも報道されているが、ニュースアプリ「SmartNews」を手がけるスマートニュースが1000万ドル(約12億円)の資金調達を実施したことが明らかになった。評価額はプレ(調達前)で3億2000万ドル(約384億円)、出資したのは既存投資家のグリー、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Atomico、ミクシィ、Social Venture Partnersとなっている。

スマートニュース ヴァイス・プレジデント 財務担当の堅田航平氏曰く、今回の調達はいわゆるブリッジファイナンス(独立した資金調達ラウンドではなく、次のラウンドまでのつなぎの資金調達)で、2014年10月にリリースしたSmartNews米国版や2015年2月にリリースしたインターナショナル版の順調な成長を受けたもの。この資金をもとに米国拠点の人材を強化。米国サンフランシスコの拠点において、マシンラーニングや自然言語処理に長けたエンジニアを積極採用していく。日本のスタッフや役員も出張ベースで積極的に米国とコミュニケーションを取るとしている。

スマートニュース代表取締役の鈴木健氏によると、SmartNewsのMAU(月間アクティブユーザー)は日本で400万人、米国では100万人。提携メディア数も当初の10社から75社まで拡大。日米ともに「数字は順調に伸びている」(鈴木氏)のだそうだ。米国でニュースアグリケーションアプリと言えば、Flipboardが圧倒的なダウンロード数を誇っているようだが(直近の数字は公開していないが、Google Playでは世界で1〜5億ダウンロードとなっている)、スマートニュース代表取締役の浜本階生氏曰く、「ランキングに基づいて言えば、あまり突き抜けている(競合)アプリはない」とのこと。

また米国のアプリストアについて、「CNNやBuzzFeedなど1媒体を閲覧するアプリがランキングの上位を占めている。日本でも3年ほど前はそんな状況だったが、今ではアグリゲーターが上位を占めている。今後はそういった傾向が出てくるのではないか」と語った。

2014年12月に国内で本格的に広告ビジネスをスタートしたスマートニュースだが、米国でのマネタイズはまだまだこれからのようだ。「国内でもMAUが400万人を超えてやっと広告を始めた。米国でも同じように成長していく必要がある」(浜本氏)

日本を見てみれば、競合サービス「Gunosy」を手がけるGunosyに上場承認が下りたばかり。鈴木氏にイグジット戦略について聞いたところ「今のところ時期などは考えていない。まずは米国を頑張るというところ」ということだった。

SwingmailはメールもFacebookメッセージも一緒に扱えて、最小限の情報だけに絞るiOSアプリ

今日、日本のスタートアップであるBHIがローンチした「Swingmail」は、メールとFacebookメッセージ、TwitterのDM、アプリ経由でFaceTimeなどでかけた電話履歴を、全部まとめて見れるiOSアプリだ。コミュニケーションする相手単位でアプリ横断的に見ることができ、「メールしといたから!」とメッセするような矛盾と混乱から、われわれを救ってくれるかもしれない。

Swingmailはこれまで2013年12月に実験的バージョンをリリースし、その後もオーストラリア、北欧、英国、カナダ、そして2015年1月には北米市場向けとしてテストローンチをしてきたが、今回新バージョンとなる3.0で日本での提供を開始してマスターローンチをした形という。

最近、GoogleがGmailのモバイル向け再発明としてInboxをリリースしたり、Dropboxが買収したことで話題となったMailboxなど、メールのユーザー体験を再発明しようという動きが出てきている。背景にはプッシュ通知によるノーティフィケーションであれ、メールの新着であれ、われわれはもはや洪水のようなメッセージにさらされていることがある。これを解決しようというのがSwingmailだ。

従来のアプリとの違いは、すでに書いたように同一人物である限り、アプリを問わずに1つのスレッドにまとめてくれることが1つ。これについてはYahoo.comのメールやLinkedInのメッセージなど、APIで利用可能なところは今後も対応していくといい、こういうクロスプラットフォーム対応ができるのが、Googleのような大手企業との違いだという。GoogleのInboxがGoogle+に対応しても驚かないけど、LinkedInやFaceTimeに対応したら、だいぶ驚くよね、ということだ。Swingmailではメッセージに対する返事も、右や左にスワイプすることで、電話(音声)による返信なのかテキストなのかを選ぶことができる。

BHIを創業し、2013年4月には大和企業投資株式会社に対して第三者割当を実施(金額は非公開)するなど着々と準備を進めてきた日昔靖裕さんによれば、徹底したい設計哲学は「less is more」で、メッセージのインボックスに届くのは、すでにメッセージのやり取りをしたことがある知人からのものに限るという。何らかの理由でトヨタの社長からあなたのところにメールが来ても、今のところSwingmailのインボックスには届かない。「将来的には、重要人物ならばやり取りしていなくても届くように機械学習していくものを作っていきたい」(日昔氏)のだそう。Swingmailを入れてTwitterやFacebook、Gmailのノーティフィケーションをスマホでオフにしてしまえば、必要なもの以外で気が散ることがなくなる、というのが1つの運用形態だという。

BHIはSwingmailのほか、コンタクトリストの「Swingbook」、予定管理の「Swingcal」を今後1週置きにリリース予定だが、これらも less is more で設計してるのだとか。Swingbookで表示されるコンタクト先は15人だけ。その15人はコミュニケーション頻度のほかに端末の位置情報も加味していて、ニューヨークにいるときには、その周辺の人々の表示優先度が上がるといった具合だそうだ。「そのときに誰に連絡したいかを当てる」(日昔氏)というのがSwingbookの本質だという。確かに、今のコンタクトアプリは直近にアクセスしたもの順に表示するという素朴なアプローチだけとなっているが、やるべきことはもっとあるのかもしれないと個人的には思う。この時間帯に同僚に電話するわけないだろ、それぐらい分かってよ、ダム・フォン! とか、そういうことだ。

予定管理のカレンダー、Swingcalでは同じイベントに紐づくべき人を予測してグループとしてまとめるような機能を実装しているのだという。コンタクトが15人のみとミニマムにしているのと同じで、Swingcalは1週間先までしか予定を表示せず、予定に人が紐付いているのも特徴。「カレンダー形式をした連絡帳と思ってもらえれば」(日昔氏)という。

SwingmailとSwingbook、Swingcalの3つは相互に連携できるよう設計されているが、個別に利用することもできる。

どういうユーザーがターゲットかと聞いたところ、「ガチガチのスーツの仕事はイメージしてない。どちらかというとフリーランス寄りで、仕事とプライベートが混ざってカオスになっている人がターゲット」と日昔さん。

プロダクティ・ツールは結構ホットなM&A狙い市場

「もともと自主制作で映画やドキュメンタリーを撮影していた」という日昔さんは、どちらかというとITを毛嫌いしていたタイプと自らを語る。ある映画祭での受賞をキッカケに予算が付いてパリに3年住んだり、上海で一般人エキストラを集めて映画を撮ったりしていた。映像制作プロダクションの立ち上げのときは渋谷の電信柱に広告を貼って回ってインディーズのミュージック・ビデオを1本3万円という格安で作っていたりもした。

そんな日昔さんは、海底調査を行う科学調査船「ちきゅう」でドキュメンタリーを撮影していたとき、寄港した沖縄で初めてiPhone 4Sを買った。そして情報過多と分散が起こっていてメッセージのやり取りが「壊れている」と感じたことが起業のキッカケだそう。船上で事業計画を書き、2012年にサムライインキュベートから430万円の出資を受けた。最初は自分1人だけでiOS向け開発フレームワークのTitaniumを勉強しながらiOSアプリを作り始めた。いまはエンジニアとデザイナを中心に非常勤やアルバイトも含めると、チームは13人になっている。

正直ぼくはSwingmailのデモを見た程度なので、どのくらい生産性ツールとしてイケてるのか分からない。ただ、メッセージもコンタクトも予定もミニマムに絞るというアイデアと、そのために機械学習を取り入れるというのは良い狙いに思えるし、UIと同じくらい課題はむしろサーバサイドだというのも説得力を感じる話ではある。

生産性ツールは類似のものが大量に出てきていて、メールだけでもBoxer、CloudMagic、Dispatch、Seed、Evomail、Triageなどさまざまにある。一方で、MicrosoftやAppleといったプラットフォーマーによる買収が頻々と起こっているホットな市場でもある。2014年12月のMicrosoftによるAcompliの2億ドルの買収や、同じくMicrosoftによるSunriseの1億ドルでの買収、2013年3月のDropboxによるMailboxの1億ドルの買収などが大きな成功例だ。

「プロダクティビティツールは国境ない」というBHIには、現在スウェーデン人やイギリス人が社員がいて、日本はもとよりグローバルで定番ポジションを目指すという。


偏頭痛の原因をスマホで解明する「頭痛ログ」、GREE Venturesなどから約1億円を資金調達

世界では10億人が偏頭痛持ちだと言われているが、その原因はよくわかっておらず、抑制する薬もあるが根本的な解決にはなっていない。シンガポール発のHealint社は、この原因をスマートフォンアプリで解明しようとしているスタートアップだ。患者がアプリで記録した症状を、世界中の患者の症状ビッグデータと照合することで、偏頭痛の原因を特定する。例えば、睡眠時間が短か過ぎる、 アルコールの飲み過ぎ、といったことがわかれば、生活習慣を個人個人で改善すれば偏頭痛の症状を予防することができるはずだ。

Healintは日本で「頭痛ログ」のAndroidアプリを提供していたが、本日3月27日にiOSアプリをリリースした。TechCrunch Japanはこれを機会に来日したCEOのフランソワ・カディウ(Francois Cadiou)に話を聞いた。彼によると、日本人はアプリを長期的に使ってくれると言い、膨大なデータを取得できるのではと期待しているようだ。

Healintはこの来日で、Wavemaker pacific (DFJ network)、GREE Ventures、Shinryoku、エンジェル投資家などから計110万シンガポールドル(約1億円)あまりを調達完了している。

偏頭痛が起こる原因は複合的で人それぞれ

偏頭痛は頭痛とは違うものといわれている。頭痛は何か体に疾患があって、それが原因で起こるが、偏頭痛は違う仕組みで起こる。その原因は個人個人で異なり、スポーツをしてホルモンが出過ぎて起こるとか、コーヒーとストレスでなる人もいる。ある日、花粉がトリガーとなり偏頭痛になった人もいる。また、偏頭痛を抑制する薬の飲み過ぎ、例えばイブプロフェンの飲み過ぎなどによっても起こる。

従来は患者がどんなときに頭痛が起きたかを細かく紙媒体に記入し、医師が小規模な統計データを取っていた(右の写真のような手帳)。Healintは、こうした紙媒体のやりとりをアプリで実現するものだ。解析システムと直結して、世界中から症状データを取得できるようにしている。

既に海外ではアプリがリリースされていて、米国では通院しているクリニック等で使用を勧められてアプリをダウンロードするケースが多いという。アプリ内で症状を報告する項目はかなり詳細にわたるが、むしろ患者は「これでも足りない、もっと詳細に記録すべきだ」と訴えているほどだという。Healintのアプリは現在全世界で5万ダウンロードされている。

花粉、季節、気温や大気汚染も要因

Healintによるビッグデータの解析は始まったばかりだが、それでもいくつかの事実はわかってきた。 花粉、季節、気温の変化等がファクターになっていることがわかってきている。また、大気汚染もファクターになっている可能性があり、現在解析を進めているところ。まだサンプルが少ないという。以下はこれまでに分かった日本の利用者の偏頭痛の傾向を示すインフォグラフィックだ。

Healintでは、偏頭痛の症状のビッグデータ解析により世界のどこで偏頭痛が起こっているのかをマップにできる。しかし日本ではデータがないので、今のところ真っ黒になっている。ここをもっと詳しく調べてみたいとHealintでは考えているという。 国内では「頭痛ログ」と同様なアプリがいくつかある。Pockeの「頭痛~る」は、頭痛と気圧が関係するという仮説のもと、気圧が通常より大きく下がるときにグラフ上に表示してお知らせする。スリーエースの「頭痛 web ノート」は、偏頭痛患者がスマートフォンに登録した頭痛履歴を、医師が確認できるアプリ。Plusrの「頭痛ノー ト」は突発的に起こる頭痛の頻度や程度、誘因や前触れ、服薬記録を行えるアプリ。

父親の脳卒中がキッカケで起業

フランソワが起業したのは、彼の父親が脳卒中で2度倒れたことがきっかけだった。不随になった父親を、緊急時にどうしたら助けられるか。そう考えたフランソワは、脳卒中になった瞬間でも、スマホを振るだけで緊急事態を知らせるアプリを自前で開発。それは「ShakeIt」というアプリサービスだったが、その後の偏頭痛アプリ開発につながった。

フランソワは日本に交換留学したことがあり、卒業後フランス製薬会社大手Sanofiに勤務し、新薬開発のための統計データのマネージメント等を担当した。その流れでヘルスケアにフォーカスしてきたという。

その後、Healint社を立ち上げるため、最初ベンチャーキャピタルに相談したが全く聞き入れられずに苦労した。紆余曲折を経て、ヘルスケア分野のマーケティングプロフェッショナルと機械学習プロフェッショナルを共同創業者に迎え、JFDI等から資金調達したと いう。

この事業のビジネスモデルでは、患者からでなく、製薬会社等企業から資金を得るようにしている。製薬会社からバイアスはかからないのかという質問に対しては、それは製薬会社トップの人物を見極めてやっていて、誠実な企業としか取り引きしないという。

ビッグデータによる偏頭痛の解析というビジョンのほか、今後医療方面のデータ活用はどう進展いくのだろうか? 彼によると、これからヘルスケア分野ではプレシジョン・メディスン(Precision Medicine)がもっと発展していくという。プレシジョン・メディスンとは、がんや希少疾患を対象として、「ゲノム情報・環境要因・ライフスタイル」が「健康維持・疾病発症」にどのように影響するかを調べ、個人個人にあった治療法や発症予防法を開発するものである。

(Hiroki Takeuchi / POYNTER CEO Ph.D)


LINEに脆弱性、トーク内容などを閲覧される恐れ–修正版アプリは配信済み

LINEの手がけるメッセージアプリ「LINE」に脆弱性が発見された。

LINEは3月16日にその詳細を報告しており、問題を修正した最新版のアプリをすでに配信している(iOS版は3月4日から、Android版は3月10日から)。直近アプリのアップデートをしていないという読者は、早急にアップデートして欲しい。

今回発見された脆弱性は、悪意のある第三者が設置した無線LANに接続した際、LINEアプリ内の「その他」にあるページを開いたり、メッセージ・タイムラインに記載されたURLにアクセスしたりした場合に、LINE内のトーク内容・友だち一覧などのデータが取得・改ざんされる可能性があったというもの。

脆弱性はセキュリティ会社のスプラウトが発見。2月3日にJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)および情報処理推進機構(IPA)からLINEに報告があったという。

またそのほかにも、悪意のある第三者が友だち表示名に不正なプログラムを埋め込んだ状態で友だち申請をしてコードが実行されると、LINE内の情報が閲覧・改ざんされる可能性があるという脆弱性も指摘されたとのことだが、こちらは2月3日に修正を完了しているとのこと。


Copyfeedはコピー&ペーストを時系列ですべて記録するiOS版便利アプリ

iOS 8でAppleは写真、テキストその他のデータをアプリ間でやりとりするのを簡単にする機能を付け加えた。

Copyfeedは、この機能を利用してユーザーがコピー&ペーストしたデータを記録するiOSアプリだ。ユーザーがコピーしたリンクやテキストの一部などを時系列で保存し、後で利用できるようにしてくれる。またオプションのウィジェットを使えば、iOSの通知センターに表示させることもできる。

多くの場合、コピー&ペーストというのは一回きりの作業だ。しかし、例えばアドレス帳からコピーした多数のアドレス宛に会議開催のメッセージを送った後で、同僚がそれらのメールアドレスを欲しがるなどという場合があり得る。メッセージ・アプリから送り先を調べていちいちコピーし直すというのは非常に苛立たしい作業だ。

Copyfeedを使っていれば即座にメールアドレスの一覧が手に入る。タップしてクリップボードにコピーするだけでよい。もし部外秘のデータをコピーした場合は、アプリを開いてそのデータを削除することができる。

このアプリは広告入りで無料だ。アプリ内購入で0.99ドルを支払うと広告が消え、画像が記録できるようになる。後で使う写真ならデバイス内に保存すればいいかもしれないが、広告が表示されなくなるなら1ドル払う価値はあるだろう。

コピー内容を記録するというニッチ・アプリは他にもいろいろ出ている。これまで私が愛用していたのはHeapoだ。このアプリ/ウィジェットも機能は似たようなものだが、エクステンションを通じてコピー内容をChromeに送信できる。私はあまり利用しない機能だが、モバイルとパソコンのデータをできるかぎり同期させておこうとするユーザーも多い。そういうユーザーにはHeapoは便利だろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


対戦型脳トレアプリのBrainWarsが1000万ダウンロード達成――Supercell、Kingを目指す

トランスリミットの対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が、全世界1000万ダウンロードを達成した。同社の設立は2014年1月14日。ちょうど創業1周年での達成となった。

日本はたった4.3%――高い海外ユーザー比率

BrainWarsはトランスリミットが2014年5月にリリースしたスマートフォンアプリだ。穴あきの計算式に、正しい式になるよう計算記号を入れる「四則演算」、指示された方向に画面をフリックしていく「フリックマスター」など、直感的な操作で楽しめる約20種類の脳トレゲームで世界各国のユーザーと対戦できる。対戦はリアルタイムだが、相手のユーザーが応じられない場合、そのユーザーの過去の実績をもとに非同期での対戦が行われる。

僕はリリースの1カ月ほど前にアプリのデモを見せてもらったのだが、その頃からトランスリミット代表取締役社長の高場大樹氏は「ノンバーバル、言語に依存しないサービス設計をしている」と語っていた。実際のところ、ユーザーが最も多いのは米国(25.4%)で、日本は4.3%と少ない。

2014年5月にiOS版をリリースしたBrainWarsだが、ノンプロモーションながらサービス開始から2カ月で2万ダウンロードを達成。そこから国内のIT系のメディアやブログなどで取り上げられ、さらに7月にApp Storeの「注目アプリ」として日米で紹介されるようになってから急激にダウンロード数を増やしたそうだ。9月にAndroid版をリリースするとダウンロードは更に増加。10月に300万、11月に700万を達成し、今回の1000万ダウンロードに至った。

高場氏は海外でのダウンロードについて、「特に米国ではApp Storeでの紹介がきっかけだが、それと同時に(対戦結果をシェアした)Twitter経由でのダウンロードが多い。ユーザーインターフェースもフラットデザインを意識したし、ノンバーバルでシンプルなゲーム性を追求している。そのあたりが海外でも受けたのではないか」と分析する。ダウンロード数だけでなくアクティブユーザーも気になるところだが、具体的な数字は非公開だという。ただし「一般のソーシャルゲームのアクティブ率は7日間で20%程度だと考えている。それよりかは大きい数字だ」(高場氏)とのこと。

ユーザーの「真剣さ」ゆえに読み違えたマネタイズ

BrainWarsは1プレイごとにハートを1つ消費していき、そのハートは時間経過によって回復するというソーシャルゲームなどでよくある仕組みを導入している。時間経過を待たずにプレイする場合は課金、もしくは成績上位で得られるコインを使ってハートを購入する必要がある。またコインは、対戦時に自分の得意なゲームを選択する際や過去の成績を閲覧する際にも使用できる。このコインの課金と広告によって、「すごく小さい額ではあるが黒字で運営している」(高場氏)というBrainWars。だが課金に関しては誤算もあったのだそうだ。

BrainWarsは「ガチャでレアキャラを引き当てればゲームを有利に進められる」というものではなく、地道にミニゲームに慣れていかなければいい結果を出せない。そんなこともあってか、前述の「得意なゲームを選択する」という機能を使わずにランダムに選ばれるゲームで正々堂々と戦いたいというユーザーが多いのだそうだ。高場氏もこれについては「鍛錬を積んで勝負をするという競技的な側面があり、ユーザーは(課金して自分に有利なゲームを選ぶことなく)真剣に勝負する。ここが課金のポイントだと思っていただけに誤算だった」と振り返る。また、具体的な数字は教えてもらえなかったが、課金率の低さも今後の課題なのだそうだ。そういった背景もあって、2月にも予定するメジャーアップデートでは、1人向けの新たなゲームモードを用意。ここでコイン消費を促すという。

LINEとの協業、2015年中にゲームを提供

トランスリミットは創業期にMOVIDA JAPANやSkyland Venturesなどから資金を調達。その後2014年10月にLINE傘下のベンチャー投資ファンドであるLINE Game Global Gatewayのほか、ユナイテッド、East Ventures、Skyland Ventures、Genuine Startupsから総額3億円の資金調達を実施している。同社はこの調達と合わせてLINEとの業務提携を発表。LINEのユーザー基盤を活用した新たなゲームコンテンツを開発するとしていた。

このLINE向けゲームの進捗については、「今はBrainWarsに注力しているところ。だが年内にはLINE向けの新規タイトルを1本リリースする予定だ」(高場氏)とした。またそのテーマについては、「『LINEに乗せて成果の出るもの』を考えているが、BrainWarsがベースになるか、まったくの新規タイトルになるか未定」(高場氏)なのだそうだ。

高場氏はこのほか、現状10人(インターン含む)の組織を年内に30人程度まで拡大する予定だとした。年内にはBrainWars、LINE向けタイトルに加えて、自社の新作タイトルも提供するという。「BrainWarsは1年で1000万ダウンロードを達成したので、2015年内に3000万を目指したい。また同時に年内に3ラインまで拡大して、1つ1つのアプリで売上を作って自走しつつ勝負をする。目標は世界で名前が通るデベロッパー。SupercellやKingと肩を並べたい」(高場氏)

トランスリミットのスタッフら。前列中央が代表取締役の高場大樹氏

 


アプリでソーシャルな共有などいろいろできるスマートヘッドフォーンMuzikが$10Mを調達

オーディオアクセサリのMuzikが、設計に2年を要したという新製品を今日(米国時間11/25)発売する。その、Muzikの耳かけ式スマート(smart, 電脳)ヘッドフォーンは、定価が299ドルで、年末クリスマス商戦を待たずして発売され、しかも同社は営業マーケティングを強化するための資金として1000万ドルの資金を調達した。

何がどこがスマートかというと、ホットキーがいくつかあって、その機能をユーザが指定できる。モーションセンサがあるので、頭の動きを入力として利用できる。製品の初期設定では、今聞いている曲をツイートする、Facebookで共有する、付属アプリのお気に入りリストに曲を保存する、友だちにテキスティングやメールができる。…これらの制御はすべて、右の耳カップにあるボタンで行う。

AndroidとiOS用の同梱アプリMuzik Connectが上記のソフトウェア機能をすべて担当し、またオープンソースで提供しているデベロッパプラットホームもある。ということは、Muzikの公式アプリではなく、デベロッパが勝手に作ったアプリがMuzikのAPIを呼び出して、いろんなことができる。お気に入りへの登録、Rdioでオフラインで再生、などなど。モーションセンサは、ユーザの動きでヘッドフォーンを制御できるので、たとえば、外してどこかに置いたら電源を切って電池を節約、といったこともできる。

本体はアルミ製で、耳カップには形状記憶素材を使っている。お値段はほかのヘッドフォーン並だが、ソーシャル機能というおまけが付く。昨年のCESで発表されたが、すぐには発売せず、1年間磨いてから、次のCES(来年1月)の直前に発売されたのだ。

MuzikのファウンダでCEOのJason Hardiはこう語る: “音楽は大好きだ。人と人を結びつけるし、ストーリーがあるし、逃げる場所にもなるし、貴重な時間を作ることもある。うちのビジョンは、ヘッドフォーンのインテリジェントな設計を通じて音楽体験をより豊かにすること。これまでの1年は、そのことに集中していた”。

ヘッドフォーンとしての機能に不満がなければ、Muzikの持つスマート機能は顧客が手を出す強力な差別化要因になるだろう。Beatsはスタイルで評判になり、セレブが使っているというブランドイメージを作った。若者市場をねらう新人ブランドは、ドラゴンを何頭も倒してからでないと、なかなか注目されない。でもアプリの、デベロッパが自由に利用できるプラットホームがあるMuzikは、今後のアプリ次第で大化けする可能性もある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Skypeがついに完全なWebアプリケーションに、ただし今のベータでは小さなプラグインが必要

Skypeのインスタントメッセージングと、音声やビデオによるチャットが、ブラウザから使えるWebアプリケーションになり、そのベータが今利用できる。ということは、どこのどんなコンピュータを使っているときでも、アプリ/アプリケーションをインストールする必要なく、ブラウザを立ち上げ、自分のアカウントでSkypeできるのだ。

SkypeのWebアプリケーションは今後完全にプラグイン不要になるというが、今のところは小さなプラグインをインストールしないと音声とビデオの通話はできない。またInternet ExplorerはReal-Time Communications(RTC)を実装していることが必要だ。それはユーザのさまざまな会話やメッセージのステータスを正しくシンクし、素早くチャットを開始でき、ボタンを一つ押すだけで友だちを呼び出せる。そのプラグインは今、Chrome for WindowsとIEとFirefoxとSafari用が提供されている。

Windows上のChromeだけがサポートされているということは、Chromebookではだめ、ということだ。でも現状はベータだから、今後もっとサポートされるデバイスとオペレーティングシステムは増えるだろう。当面は、Windows以外のChromeはノー、なのだ。

〔ここにスライドが表示されない場合は原文を見てください。〕

今年の初めにOutlook.com用にローンチされたプラグインを使うと、すでにWebからSkypeを使えた。ただしそのためにはOutlookのWebメールを使う必要があった。だから今回は初めての、Skypeの完全なWeb化だが、それならプラグイン不要で使えるはずなのに、まだプラグインをインストールしなければならないのは残念だ。

Skype for Webのベータは、今日から限られた数のユーザに対し徐々に展開されていく。だから誰もがいきなりサイトにサインインしてWebクライアントを使えるわけではない。でもすでに選ばれている人には、ベータをお試しくださいというメッセージが出る。

今、なぜChromeはWindowsだけなのか、そしてそのほかのプラットホームのサポートについて、Skypeの問い合わせ中だ。情報が得られ次第、この記事をアップデートしよう。

アップデート: Skypeによると、インスタントメッセージングはWindows以外のChromeでもサポートされるが、音声とビデオは、そのほかのプラットホームではプラグインがそれら用に構成されていないからだめ、ということだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Google Inboxを使いたい人は、今朝の「ハッピーアワー」に申し込めば確実に招待される


Googleは、Inbox招待プログラムを拡大して新たな「ハッピーアワー」を提供する。今日(米国時間11/5)西海岸時刻 3 pm~4 pm[日本時間11/6 木 8 am~9 am]の間に、inbox@google.com にメールで申し込めば、今日の5 pm[同10 am]までにアクセスが保証される。

まだアクセスの順番を待っていた人にとって、これは最も確実に招待状を確保できるチャンスだ。なお、現在Inboxを利用できるのはGmailの個人アカウントのみなので、Google Apps経由でメールを利用している人は、少なくとも今はサインアップできないことに注意されたい。

GoogleのInboxは私に最も興味を抱かせた非伝統的メールアプリであり、Mailboxを含む他の新種メールアプリには惹かれなかった私も魅了された。アプリは、Googleが通常のGmailの自動カテゴリー分け機能や、モバイル用アシスタントアプリGoogle Nowで培った機械学習知能を有効活用している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook


左右スワイプで高速暗記、1日1000語覚える英単語アプリ「mikan」が、いよいよリリース

「圧倒的にいちばん速く覚えられる英単語アプリ」を目指すという、今までありそうでなかった打ち出しアングルで英語産業にチャレンジしようするスタートアップ企業、mikan(ミカン)が、社名と同名のアプリ「mikan」のiOS版を今日リリースした。AppStoreから無料でダウンロードできる。Android版は2015年春リリース予定。

 

TechCrunch Japanでは、7月29日にmikanのことを詳しく報じているけれど、このときの反響はすごかった。TechCrunch Japanの7年にわたる歴史の中で3位となるはてブ数1500、Twitterで1400ツイート、Facebookで2300いいねが付くなど注目度はきわめて高い。「これならオレ(ワタシ)でも!」という万年挫折組の期待感と、「でも、ホントに効果なんてあんの?」、「ていうか、これ、結局なにが新しいの?」という英語学習中上級者の懐疑の目とが一気に集まったような感じだろうか。

改めて簡単にmikanの紹介をすると、これはスマフォネイティブの英単語帳だ。あらかじめ用意されている「TOEFL3000」「TOEIC2500」「センター試験・大学受験2500」「GRE1500」という4つの試験の学習者向けのカテゴリを選択して、合計9500語の学習ができる。次々に表示されるカード上の単語について、「意味が分かる」(右)、「分からない」(左)と指でスワイプしていくのだが、テンポよく高速にカードがめくれるのが特徴だ。左にスワイプした覚えていない単語のみ、何度も繰り返し復習できるのがポイント。ネイティブスピーカーの発音も収録されているので、「英単語=訳語=音」というセットを高速にグルグルとカードを眺めて学習できる。学習後に出てくる4択テストで、定着度を測ることができる。

以下はプロトタイプの動画でリリース版はもっと洗練されているが、mikanがどういうものかは分かると思うので再掲載しておこう。

で、mikanの何が新しいのか? ということだけど、英単語学習アプリを自作して3年間も使い続けてるほどの学習アプリオタクのぼくに言わせると、mikanがうたう個々の機能は世界初とかそういうものじゃないと思う。覚えていない単語だけを復習するアプローチは長らく存在している手法だし、定着度に応じて復習間隔を徐々に広げていくSRS学習法と呼ばれるようなアプリのモバイル版もたくさんある。

ただ、「スワイプUIで徹底して英単語の学習時間を短くする」ということを目標に全体を最適化しているアプリは、今のところmikan以外にないように思う。やってみれば分かるけど、単語カードや4択のタイマーのリミットがかなり短時間に設定されている。グングンと残時間表示バーが減っていく。知っている単語でもスピードを要求されるゲームのような感じだ。そして反応時間をベースにした統計情報もグラフで表示されるので、同じ「知っている」でも習熟度が上がっていく様子が分かったりするようになっている。隠れている訳語を表示するインターフェイスも、指を載せてスワイプする動作と一体化している。たとえばi暗記+のモバイル版だと、訳語はカードを裏返すアクションの後に表示されるようになっていて、かすかに時間がかかる。別の比較例としてAnkiAppは復習戦略の最適化のために、習熟度の自己申告を促す仕組みを採用しているというのがある。ユーザーは各アイテムごとに「無理、むずい、分かる、余裕」の4つから選んでボタンを選ぶ。やはり左右スワイプに比べると、1アイテムごとの滞留時間が長い想定だ。ぼくが作ったReijiroという単語帳アプリは「用例と例文を読むこと」を重視しているからアイテムごとの滞留時間は、たぶん1〜3分程度とむちゃくちゃ長い。そもそも日々のオンラインでの辞書引きが起点なので開発の背景や目的が全く違う。

こうした違いはmikanだけが「学習時間を徹底して短く」ということを掲げているから出てくるものだと思うし、この軸のために出てくる小さな違いの積み重ねこそがプロダクトの差別化になり、特定の問題への向き不向きを分けるのだとぼくは思う。今までの暗記系アプリは時間的な焦りを感じている英語学習者にとっては「(化学や歴史、資格試験など)ジャンルで欲張りすぎ」、「記憶効率の話はしても、徹底した高速学習を目指してはいなかった」ということで潜在ユーザー層に響いていなかった可能性があるのではないかと思う。もし単位時間あたりの接触回数が記憶効率にとって決定的要因だった可能性があるとすれば、mikanのアプローチは新しいし、興味深いと思うのだ。

起業してアプリを作ったmikanの宇佐美峻さんによれば、従来2000〜3000単語の学習に1〜3カ月かかっていた時間を、1日1000単語にまで縮めることができるという。実際、2014年7月から9月にかけて宇佐美さんら創業メンバーは、北海道から鹿児島県まで全国22都道府県28都市で、英語合宿を実施して、実地でアプリの有効性を検証。合計200名以上の参加者で、合宿終了時の4択問題による最終定着率の平均が81%となったという。合宿で学習した単語はTOEFL85点以上、TOEIC800点以上を目指す人向けの難易度が高い単語だったというから、学校の英語教育で学習するボキャブラリーに上積みする数千語という中級レベルでの結果で良好な結果が出ていると言えるのかもしれない。もっと多くのユーザーの声が聞こえてこないことにはなんとも言えない部分はあると思うけど、今度こそ英語をやるぞと思った読者は、ダウンロードして試してみてはどうだろうか。


「流出」を気にせず気軽に写真を共有できるXim、Microsoftより登場

誰かにスマートフォンの写真を見せてもらうとき、不適切なものが見えてしまわないかという確認にやけに時間がかかってしまうということを経験した人も多いだろう。あるいは気軽に見せてもらったものの、意図しなかったものが見えてしまい気まずくなってしまったりしたことがある人もいるかもしれない。Microsoftのリサーチ部門が、こうした面倒をなくそうとするアプリケーションをリリースした。名前をXimという。

アプリケーションはWindows Phone版、iOS版、そしてAndroid版があり、いずれも無料となっている(訳注:現在のところ、日本では未公開のようです)。見せてもらう側にはアプリケーションも必要なく、また何らかのサービスにログインする必要もない。アプリケーションは公開する側にのみ必要で、アドレス帳から公開相手を選んだり、あるいはメールアドレスないし電話番号などを入力して相手を追加するようになっている。そして公開開始をすれば完了だ。閲覧者側に送られるのはリンク情報で、XimをインストールしていればXim上で閲覧できるし、インストールしていない場合はブラウザで閲覧することになる。

どの写真を公開するのかについては、当然ながら公開者側が完全にコントロールすることができる。すぐ近くの人と同じ写真を見ながら会話を楽しむような場合にも利用できるし、あるいは遠く離れた人と写真を共有するのにも利用できる。閲覧者側もXimをインストールしているのなら、自分から写真を加えたりすることもできる。さらに閲覧者側のアプリケーションと画面をシンクロナイズして、同時に写真を見ていくような使い方もできる。なお、写真には短い説明などを加えることもできるようになっている。

スマートフォンで写真を撮ることが一般的となっている現在、自分の撮った写真を人に見せたくなることも多くなった。しかしいろいろな写真が入っているもので、なかなか気軽に見せるということができにくいこともあるだろう。そうした問題に対処するためのアプリケーションであるわけだ。余分な機能を削って軽量化していて、また共有した写真は一定時間の後には見えなくもなる。写真を共有するのに容量を気にする必要もなく、あるいは知らないうちに流出してしまうようなリスクも軽減されている。

Microsoftによるこの無料ツールは、日常で具体的に困っていることを解決してくれる。今後もこのジャンルでの活躍を期待したい。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


クラウドベースのKdan Mobileはアドビのモバイル製品とEvernoteのスキマを埋める

Kdan MobileはAdobeのモバイル製品とEvernoteの「隙間」を埋める製品を開発している。クラウドで利用できるAnimation DeskNoteLedgeは、学生やアマチュアユーザー向けのiOSとAndroidアプリだ。

Kdan Creative Cloudを使えば、ユーザーは自分のコンテンツに複数のデバイスからアクセスできる。創設者で現CEOのケニー・スー氏はこう述べる。「Kdan Mobileのスタートアップは、シリーズAラウンドのクロージングにあります。近い将来、ファイル形式によるコンテンツの簡単な管理ができるように、すべての自社アプリからデータを解析します」

「現在、弊社が目指している市場ポジションは、AdobeとEvernoteのスキマにある、モバイル端末でのコンテンツ制作のユーザー体験を補完することです。Evernoteのビジネス戦略は、すべてをクラウドで保管することですが、コンテンツの作成をするツールはありません。Adobeはアマチュアのモバイルユーザーではなく、これまでずっとプロフェッショナルユーザーを対象にしてきました。」

NoteLedgeとAnimation Deskは、SamsungとMicrosoftとのパートナー契約により勢いがついている。これらのアプリは、アジアの13カ国でGalaxy 3やGalaxyタブレット等のSumsungのモバイル端末に、台湾でMicrosoftのLumiaシリーズにプリインストールされている。

現在、Kdanはより多くの企業とのパートナー契約と、パートナー契約によらない新規ユーザーの獲得、そして既存ユーザーがKdan Creative Cloudへサインアップするよう促すというチャレンジを抱えている。スー氏は、「秘密保持誓約書のため詳細は明かせないが、北米の携帯キャリアとパートナー契約を結んだ」と語る。

Kdanのスイート、Kdan Creative Cloudには、現在100,000人のとうろくユーザーがいて、毎日2,000から3,000人が新たにユーザー登録をしている。Kdan Mobileは、2015年末までにユーザー数100万人を目標としている。スー氏はプロモーションや追加機能のアンロックなどを提供することで、ユーザーにKdan Creative Cloudへの登録を促す予定だという。

現在、8つのアプリがKdan Creative Cloudと連携している:Animation Desk($4.99)、NoteLedge ($4.99)、PDF Reader ($4.99)、PDF Connoisseur ($9.99)、Pocket Scanner ($3.99)、Write-on Video ($3.99)、PazteUp ($4.99)、EleEditor ($2.99)。

これらのうち、PDF ConnoisseurとNoteLedge、Animation DeskをKdan Mobileは旗艦アプリとしている。

Animation Deskは、デッサンをアニメーションにするiPadアプリで、高額ソフトの機能すべてを必要としない、学生やアマチュア向けのAdobe Edge Animate代替品として制作されたソフトウェアだ。仕様として、フレームレート(静止画像数、コマ数)は3FPSから24FPSまで4段階をサポートし、ユーザーが手描きする必要がないように、背景として動画や静止画を搭載している。また、Animation Deskは、Adonit、Ten One Design、Hex3 stylusに最適化されている。

PDF Connoisseur は、紙の資料をPDF化するスキャナー、PDFリーダー、ファイル・コンバーター、ダウンローダー、ファイル変換ツールを内蔵している。また追加機能として、6言語(英語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語)をサポートするテキスト読み上げ機能、12言語をサポートするOCR(画像からテキストを読み取り、検索可能なテキストファイルに変換する機能)とPDFエディターがある。

NoteLedgeはEvernoteの競合ソフトだが、より若い層をターゲットとし、クレヨンやスタイラスなどのスタイラスや、異なるノートのデザイン、ステッカーのアプリ内購入などのオプションを設けている。Evernoteのように、NoteLedgeはオーディオ録音、ビデオ録画もサポートしている。
Kdan Creative Cloudのサブスクリプションは、個人ユーザーは月$2.99ドルか年$9.99ドル、ビジネスユーザーは月$5.99または年$29.9 ドルだ。

[原文へ]
(翻訳協力:Kdan Mobile Software、早瀧)