米国当局が進める新型コロナの接触者追跡の必要性とプライバシー保護の重要性

米国での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数の増加に伴い、当局は、検査数が限られている状況下で、感染の拡大を追跡し制御する方法を切実に求めている。

4月10日、感染者とその濃厚接触者を追跡することで感染の拡大を監視するAndroidとiOS向けの任意の匿名連絡先追跡ネットワークを、Google(グーグル)とApple(アップル)が共同開発することを発表した。このモバイルアプリを公衆衛生当局からダウンロードすると、ネットワークを使用している感染者に接近すると通知される仕組みだ。システムはGPSではなくBluetooth Low Energy(BLE)送信を使用するため、位置情報は追跡されず、追跡データは集中型のデータベースではなく各自のスマートフォンに保存される。これはすべて、利用者のプライバシー保護を考慮した点だ。

関連記事:アップルとグーグルが新型コロナ感染チェック用モバイルアプリを共同開発、プライバシー保護も確約

しかし、多数の他の新型コロナウイルス対策ではプライバシーは十分に考慮されていない。その理由は、位置情報を追跡し、多くは中央集中型データストレージを採用しているためだ。

Googleは、ロケーション履歴の設定をオンにしている人のスマートフォンから匿名で集計されたデータを元に地域別の時系列動向を示す「Community Mobility Reports(コミュニティ・モビリティ・レポート)」を公開すると発表した。Facebookや他の企業は、COVID-19モビリティ・データ・ネットワークの一環として、世界中の疫学者に携帯電話から匿名化して集計されたデータを提供している。

Centers for Disease Control(CDC:疾病管理センター)は、モバイル広告会社からのロケーションデータに基づいて、米国市民の移動を匿名で追跡している。プライバシー擁護者は、このような追跡メカニズムはプライバシーを侵害するもので不安要素があるとしているが、このデータによると、公共の場には依然として大勢の人が集まっていることがわかる。この結果は、政策の決定には役立つが、懸念があることには変わりはない。

感染拡大をより効果的に予防するための政府の取り組みは賞賛に値するが、データの使用方法には特定の条件と制限が必要だ。これを怠ると、国は重大な問題に直面するだろう。政府はこの目に見えない敵と戦うために対策を講じる必要があるが、データの保護と使用に関する条件も必要だ。特に次の5つを保証する必要がある。

一時性

9月11日の同時多発テロ事件の6週間後に可決された愛国者法は、米国民を偵察する前例のない権限を政府に与えた。当時これはやむを得ないことだったかもしれないが、政府は現在も、何百万もの通話とテキストメッセージの収集を継続している。GoogleやFacebookのような企業が政府とデータを共有する場合、共有の期間とその共有データの保持期間には、明確に限定された期間が必要になる。

市民的自由権

9月11日の攻撃後、NYPD(ニューヨーク市警察)などの法執行機関は、地元のイスラム教徒住民の違法な監視活動を行った。このプログラムは、第二次世界大戦での日系米国人強制収容や、公民権運動で人種差別の解消を求めたアフリカ系米国人に対するFBIの監視に比較された。

現在のパンデミックを、市民的自由権が失われていく例に加えてはならない。現在、そして将来にも、我々を守るために共有されるデータが、監視や差別のために使われることになってはならない。

透明性

ロケーションデータなどの機密データを政府と共有する企業には、一般の人が理解できるような、タイムリーで詳細な透明性レポートの提出が義務付けられる必要がある。

限定的使用と目的の明確化

OECD(経済協力開発機構)のFair Information Practice Principles(FIPP:公正情報行動原則)には、データ処理活動に特定された目的以外に個人データを使用してはならないことが明記されている。にもかかわらず、二次的な目的のためにロケーションデータを共有している企業のメディア報道規制措置は後を絶たない。今回も、ウイルスの感染防止のために収集および使用されるロケーションデータは、その特定の目的以外に使用されてはならない。

データセキュリティ

市民を保護するという政府の善意は、即ち機密データを保護することにはならない。むしろ、パンデミック中にサイバー犯罪が増加する可能性の方が高い。政府は、適切な管理上、技術上、物理的な安全対策が講じられていることを市民に保証しなければならない。

米国当局者が対策を模索するなか、どの前例からの教訓やデータ保護の種類が実際に議論されているかは明らかにされていない。これには、ニュースで報道されている内容に頼るしかない。米国人の追跡に対テロ戦争ツールを使用したデータマイニング企業のPalantir(パランティア)は、感染の追跡に関するデータ収集についてCDCと協議中である。

法執行機関、民間企業、独裁政権に自社ソフトウェアを販売したことで厳しく批判された顔認識企業のClearview AI(クリアビュー・エーアイ)は、データ主導型のインサイトを使用して感染を追跡することについて州政府機関と討議している。また、Unacast(ユナキャスト)は、市民のロケーションデータに基づいて、各州の社会的距離戦略の評価格付けを行っている。

自由の鐘を鳴らす

米国は現実的な道を探す必要がある。さまざまな営利団体によって収集、使用、共有されているロケーションデータは、実際には異なるタイプに分かれる。そのため、まず最も重要なデータと、その主要なパートナーを特定する必要がある。医師、研究者、学者、倫理学者、法律専門家が、これらのテクノロジー企業との対話に積極的に参加する必要がある。

また、ロケーションデータを共有する場合は、プライバシー保護技術も使用されなければならない。この最新の例はAppleとGoogleの共同開発だ。その他には、Private Kit:Safe Pathsとマサチューセッツ工科大学のSafeTraceプラットフォームがある。これも、匿名化、分散化、暗号化された手段で、ユーザーが自発的にデータを共有するものだ。

ここでの課題は、契約、技術、管理によるコントロールを追加しなければ、匿名化されたデータ(個人を特定する可能性のないデータ)が本当に匿名であることを実際に保証することが困難な点にある。さらに、ユーザーが自発的に自分の位置と健康状態を送信することでプラットフォームが成り立つため、普及率が十分に伸びず、結果に偏りが生じ、不正確になるだろう。

それなら、公衆衛生の名の下、スマートフォンを持つすべての米国市民にロケーションデータの共有を義務付けるよう、政府に任せるべきだろうか? 何が起ころうとも今まで以上に、地方、州、連邦政府当局は、さまざまなデータ共有案の検討には米国市民を第一にして考慮することが不可欠である。

Heather Federman    寄稿者プロフィール

Heather Federman(ヘザー・フェダマン)は、ニューヨークを拠点とする企業、BigIDのプライバシー&ポリシー担当副社長で、プライバシー法を専門とする弁護士である。同社は、AIを使用して組織が顧客のプライバシー管理を強化できるようにする。これは、個人データを正確に追跡し、機密情報へのアクセスを管理し、プライバシー規制を遵守することで行われる。以前は、メイシーズとアメリカンエクスプレスでプライバシーの責任者を務めた。

画像クレジット: Thomas Tolstrup / Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

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グーグルがアップル対抗のデビットカード準備中であることが写真から判明

近く「Googleカード」が出るかもしれない。TechCrunchはリーク写真を入手した。 Google(グーグル)は物理的、オンライン、双方で利用できるデビットカード決済システムを開発中だ。システムのユーザーはカードと連動するアプリと口座を使って店頭でも携帯電話やデスクトップからでも支払いができるようになる。支払い履歴や預金残高を確認したり、利用にロックをかけたりするのはカード・アプリから簡単にできる。カードはGoogleとCITIなど提携金融機関の共同ブランドになる。

情報源は写真に加えてこれがグーグルのものである証拠もTechCrunchに提供した。別の情報源は「グーグルは現在デビットカードの開発に取り組んでいる。開発チームはこれがGoogle Payアプリのプラットフォームになる期待している」と述べた。同社はこのシステムがApple PayとApple Cardに匹敵する存在となり、オンラインのピア・ツー・ピアの資金移動手段にもなることを狙っている。Googleカードが登場すればGoogle Payのユースケースは大きく拡大し、グーグルをフィンテックの巨人に押し上げる可能性がある。

グーグルは金融サービス企業を狙う

Young wealthy man pays card using mobile payment

Image Credits: jossnatu / Getty Images

スマートデビットカードを構築することで、グーグルは新たな収入源を開拓するチャンスを得る。同社は膨大なデータにアクセス可能であり、伝統的金融機関よりも正確にリスク管理が可能だ。さらに、広告、検索、アプリ、Android OSなど消費者が直接利用する多数のサービスを運用しており、カード・システムをマーケティングし、自社の他のサービスに統合するのに絶好の立場にある。

TechCrunchがグーグルに情報の確認を求めたところ、広報担当者は内容については否定せず、昨年11月のWall Street Journalの記事とその後発表されたプレス向け声明のとおりだと述べた。Googleは、同紙のインタビュー に対し決済手段の分野で実験を行っていると述べた。 これがデビットカードだということを掴んだのTechCrunchが最初だ。

【略】

これがGoogle Cardだ

従来の銀行カードはいったんセキュリティ上の問題が生じるとサポートデスクに電話したり、ウェブサイトのわけのわからぬコンテンツから必要な箇所をみつけたり手間取ることが多かった。Googleは地図やメールで積んだ経験を生かして、支払システムも直感的で使いやすいものにするつもりだ。

下がそのカードの写真だが、デザインは今後変更される可能性がある。またGoogleカードが実際にリリースされる時期も不明だ。しかしグーグルが部内で金融分野への参入に力を入れていることは注目に値する。以下それを見ていこう。

まずグーグルのデビットカードは同社と提携銀行の共同ブランドになることがわかる。TechCrunchではGoogleカード、G Payなどと呼んでいるが、正確なプロダクト名もまだ発表されていない。カード自身はICチップを内蔵しており、VISAネットワークを利用する。しかし将来はMastercardなどほかのカードネットワークを利用する可能性もある。 ユーザーはグーグルのアプリを使ってカードのアカウントに資金を追加したり、アカウントから送金したりできる。このアプリはおそらくGoogle Payになり、認証には指紋とPINが使われるものとみられる。

ユーザーが銀行や信用金庫などの口座を登録すると物理的なGoogleカードで店頭の支払を行うことができるようになる。これは無人チェックアウト、つまりユーザー自身でカードリーダーにカードをかざすだけでもいい。スマートフォン・アプリのバーチャルカードはBluetoothを利用した支払いが可能だ。またオンライン通販やアプリ内課金にも利用できる。

アプリには最近の利用履歴が表示され、それぞれの販売者、日付、料金がわかる。トランザクションの詳細を開けば地図上で店舗の場所を確認したり、道順を調べたり、電話したりできる。また利用した覚えがないトランザクションがあればカードには豊富なセキュリティオプションがあるので自衛は簡単だ。

カードを紛失したなど不正利用のリスクが生じた場合、アプリから簡単にカードをロックし、新しいカードを発注するすることができる。この間もスマートフォンのバーチャルカードを利用して店頭ないしオンラインで支払いを続けられる。これは物理カードの番号とバーチャルカードの番号が異なるためだ。マルウェアなどによってバーチャルカードの番号が盗まれた場合のリセットも容易だ。また重大なハッキングが疑われる場合はデビットカードのトランザクション全体をロックすることもできる。

【略】

あらゆる場面にフィンテック

グーグルのカード分野への参入はライバルに比べて遅れている。アップルは昨年8月にApple Cardをリリースした。このクレジットカードはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が共同発行し、スマートなデザインのチタニム製のマスターカードだ。手数料率は低く抑えられ、Apple Payと接続されたバーチャルカードでもある、またキャッシュバックもあるためユーザーの間に強い関心をひき起した

Apple Card

しかしアップルは加盟店からは手数料を徴収する。グーグルも同様にマーチャント課金によって収入を確保するのだろう。先月アップルはカードのプライバシー既約を変更し、ゴールドマン・サックスに提供するデータの範囲を拡大した。両社はこのデータを利用してさらに新しい金融サービスを開発できる。現在、Apple Payは世界のカードトランザクションの 5%を占めているが、調査会社のBernstein Research(バーンスタイン・リサーチ)は2024年には10%となると予測している。グーグルが狙いをつけているのはまさにこの巨大市場だ。

株式売買や投資のロボアドバイザーのデベロッパーも決済分野に参戦している。Wealthfront は昨年2月に預金口座とデビットカードをスタートさせ2か月で10億ドルを集めた。会社の総資産は9月までに倍増して200億ドルとなったBettermentも10月にVISAと提携してデビットカードをスタートさせたが、こちらは大きな関心を集めていない。なにかと世間を騒がせているRobinhoodも2018年12月にクレジットカードと口座をスタートさせたが、保険でカバーされないことが明らかとなって失敗している

【略】

Robinhoodのデビットカード

この分野がグーグルその他にとって魅力的だというのは明らかだ。人々が金を動かせばそのいくぶんかは必然的に「トラックから落ちて」誰かのポケットに入る。カード事業は金融サービスが利益を生み出す方法として比較的オーバーヘッドが少ない。グーグルが「その他の賭け」と呼ぶ大胆な新規事業の大半が赤字に終わっているだけに、この点は非常に魅力的だろう。タコで風力発電するMakaniプロジェクトなど本業と無関係な実験の一部は中止されている。

グーグルは、検索と広告という中心的事業以上に利益を生むビジネス分野を発見することはできないかもしれない。しかしフィンテック分野で重要なプレーヤーになることには大きなメリットがある。無尽蔵のキャッシュ、最優秀のエンジニア、複雑なユーティリティの構築経験、多数の消費者との接点、膨大なデータの蓄積を誇るグーグルは古臭い銀行や誰も聞いたことがないスタートアップに比べて明らかに有利だ。Facebookは規制の壁に跳ね返されて野心的なLibra暗号通貨プロジェクトを縮小することを余儀なくされている。デビットカードという地味だが多くの人々になじみがあるGoogleのアプローチは成功するかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Apple Musicのウェブブラウザ版が正式リリース

Apple(アップル)は、Spotifyと独自の音楽ストリーミングサービスとのギャップをうまく埋めてきた。しかしSpotifyは堅牢なウェブインターフェイスなど、最近までいくつかの利点を維持している。私自身Spotifyのユーザーで、さまざまなデバイスでブラウザインターフェイスを頻繁に使っている。

アップルはもちろん独自のブラウザインターフェイスを開発してきたが、過去6カ月間はベータ版しか提供されていなかった。そして米国時間4月17日にベータ版を終え、正式版のURLが公開された。MacRumorsが指摘しているように、ウェブブラウザ版はデスクトップアプリとほとんど同じように見えるが、ブラウザで動作するのでクロスプラットフォームでの柔軟性が大幅に向上する。

Apple IDでログインすると、音楽ライブラリが表示される。なお別のニュースとして、アップルは日本時間4月19日午前9時から開催される「One World: Together at Home」のために準備を進めている。コンサートでは3人のコメディアンだけでなく、Paul McCartney(ポール・マッカートニー)やElton John(エルトン・ジョン)、Lady Gaga(レディー・ガガ)やLizzo(リゾ)が共演する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルがmacOSにMacBookの電池寿命を延ばす機能を加える

Apple(アップル)は、macOSの最新バージョンCatalinaに、新たにBattery Health Management(電池の健康管理)という機能を加える。10.15.5で加わるこの機能は、場合によって最大充電を減らすことにより、MacBookのバッテリーの全体的な寿命を延ばす。

つまりアプリの特定の使い方などではなく、充電パターンと温度の履歴に基づいて電池の健康状態を判断する。今多くの人がやってるように、使用中のラップトップを常時コンセントにつないでいるような人は、この最適化のターゲットになるだろう。

この機能はバックグラウンドで動くことがねらいだが、SettingsのEnergy Saver Preferencesでユーザーが無効/有効を切り替えられる。この機能が充電時間に及ぼす影響は少ない。電池寿命がどれくらい延びるのか、その明言はない。システムのパフォーマンスには何も影響しない。

この機能は米国時間4月16日、デベロッパー向けシード版で展開されるが、その後、10.15.5の最終バージョンに含まれる。Thunderbolt 3をサポートしているすべてのMacBookで動く。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

iPad Pro用のトラックパッド搭載Magic Keyboardが予定繰り上げ来週に出荷開始

世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの現在、サプライチェーンはあらゆる角度からのプレッシャーにさらされている。しかし、1つの製品は少なくとも予定より早く到着する。当初5月の出荷を予定していた、iPad Pro向けのトラックパッドを搭載したMagic Keyboardは、現在予約注文を受け付けており、来週には出荷が開始される予定だ。

このアクセサリの詳細はこちらから、そしてTechCrunchによるiPad Proのハンズオンレビューはこちらから閲覧できる。ようするに、Apple(アップル)はハードウェアとソフトウェアにおけるプロダクティビティのアップデートを追加することで、iPadとMacBookの境界線をさらに曖昧にしている。

このアクセサリは、iPadOS 13.4で提供されるカーソルとマウスのサポートを利用する。また「フローティング」スイーベルデザインは視野角を130度まで調整でき、バックライト付きキーには大幅に改良されたシザー構造スイッチを採用している。さらに、充電用のUSB-Cポートも追加されているが、ここではデータ通信には対応していない。

Magic keyboardは最新のiPad Proだけでなく、2018年モデルにも対応している。ただし、価格は11インチモデルが税別3万1800円、12.9インチモデルが税別3万7800円と、決して安くはない。またアップルはアクセサリメーカーと協力し、より低価格のトラックパッド搭載ケースを提供する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Satechiの新しいAirPodsドックでケーブルを完全排除

Satechiのプロダクトは、愚かさと崇高さの中間に位置する(もちろん、使いこなせれば実用性もある)。USB-C Wireless Charging Dock for Apple AirPodsという名前はあまり印象的ではないかもしれないが、価格の割にいいアイテムだ。同社のご都合主義な「自宅で仕事をしながら簡単かつ便利に充電」という宣伝文句はそのとおりだが、一部のApple(アップル)ファンにとって、この奇妙な小型ドックはスイートスポットとなるだろう。

このアクセサリーは似たデザインのApple Watchの充電ドックを踏襲しており、基本的にはAirPodsをUSB-Cポートから直接(ワイヤレスで)充電できる。接続先はMacBookでも、iPad Proでも問題なく、ケーブルだらけのデスクやLightningケーブルにうんざりさせられている人にはぴったりだ。

ドックはワイヤレス充電器かつクレードルとしても機能し、ラップトップがひざの上ではなく机に置かれているときに最適だ。なお製品の幅は、MacBookの片面の両方のポートを埋めてしまいそうまほどとなる。

AirPodsとAirPods Proの両方に対応し(ワイヤレス充電ケースを持っていれば)、動作中であることを閉める小さな充電ライトが埋め込まれている。製品は現在予約販売中で、5月に出荷予定。価格は30ドル(約3200円)で、期間限定の予約割引中は25ドル(約2700円)となっている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルがユーザーの移動データを公開、新型コロナで変化する都市をひと目で確認可能に

Apple(アップル)は、同社のマップアプリのユーザーから集めた匿名情報を元にしたデータを一般公開すると米国時間4月14日に発表した。このデータは「Mobility Trends Reports」として毎日更新され、マップアプリの中で行われたルート検索の回数の変化を見ることができる。マップはiPhoneの標準ナビゲーションアプリで自動車、徒歩、公共交通機関の3種類のモードがある。

アップルは、この情報がいかなる個人とも結びついていないことを強調している。マップアプリが移動データをユーザーのApple IDと関連付けることはなく、人がどこにいたかという履歴を保存することもない。アップルによると、マップで集めた検索ワードや個別の経路などのデータは、ランダムに変わる識別番号と結び付けられるだけで、その番号も定期的にリセットされる。この匿名集約データが提供するのは都市、国または地域レベルのビューだけであり、ある地区での歩行者、ドライバー、公共交通利用者の数の変化を、ユーザーがアプリを開いて道順を調べた回数に基づいて表現している。

Appleのインストールベースの大きさと、日々の通勤や移動のためにGoogleマップなどのサードパーティーアプリを使う人はあまりいないであろうことを踏まえるとある都市における外出回数の減少を確認するかなりよい方法だと考えられる。

このデータはアップルのウェブサイトで誰でも入手可能で、互換性の高いCSV形式でダウンロードできる。ウェブ上でも特定の地域を検索したり、その地域の全体的な傾向を見ることができる。

個人にとっては好奇心を満たす程度のことだろうが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を調査している都市や州、国の政策担当者にとっては、ソーシャルディスタンスや自宅待機、隔離命令などの拡散防止戦略の効果を確認するためにとても役立つだろう。

アップルはほかにも、Googleと共同でOSレベルの匿名接触者追跡システムを開発している。両社はまずデベロッパー向けのAPIを公開し、その後機能をOSに組み込み、公共保健機関のアプリと連携する。アップルは新型コロナ危機のために役立つことに対してとりわけ熱心であると同時に、そのための対策が個々のユーザーのプライバシーを侵害しないことにも腐心している。集団レベルで効果的な行動を起こす上では困難なバランスだが、アップルのリーチの大きさは、どんなツールを提供する上でも強力な優位性になる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルがPixelスマホとChromebook用の独自チップを準備中か

報道によると、Google(グーグル)はApple(アップル)の例に倣ってハードウェア分野を強化するために、将来のスマートフォンに搭載するカスタム設計チップを開発しているという。Axiosの記事によると、グーグルは自社製プロセッサを将来のPixelデバイスに搭載する準備を進めており、その中にはスマートフォンだけでなく、最終的にはChromebookも含まれている。

グーグルによる独自製品への注力は、成功と失敗が入り交じったものだったが、いくつかのPixelスマートフォンは、カメラソフトウェアや写真処理において高い評価を獲得している。しかし、同スマートフォンがこれまでは一般的なQualcomm(クアルコム)製プロセッサを採用してきたのに対し、アップルは長い間iPhone向けに独自のカスタムプロセッサ(Aシリーズ)を設計し続けてきた。AシリーズプロセッサはOSやアプリケーションに合わせてカスタマイズされパフォーマンスを発揮するいう意味で、アップルに優位性をもたらしている。

記事によると、グーグルの独自チップはコードネーム「Whitechapel」と呼ばれており、Samsung(サムスン)と共同開発され、同社の5ナノメートルプロセスが使用されている。内部には8コアのARMベースのプロセッサを内蔵するだけでなく、機械学習とGoogleアシスタントのための専用チップリソースが確保されている。

グーグルはすでにこのプロセッサの最初の動作可能なプロトタイプを受け取っているが、実際にPixelスマートフォンに搭載されるのは少なくとも1年後になるとされており、これはサードパーティ製プロセッサを搭載するPixelが、少なくとももう1世代登場する可能性が高いことを示唆している。レポートによると、チップは最終的にChromebookにも搭載されるが、それにはさらに時間がかかるという。

Aシリーズプロセッサの性能がIntel(インテル)の同等製品をスケールアップし凌駕していることから、アップルがいずれMac製品でも独自のARMベースプロセッサに移行するのではないかとの噂は、何年も前から流れていた。ARMベースのChromebookはすでに存在しているので、もしチップが期待に応えることができれば、グーグル側の移行は容易となるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

AppleとGoogleの新型コロナ追跡システムQ&A

先週、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は、新型コロナウイルス陽性者との接触を確認するためのオプトイン、分散方式の追跡ツールを共同開発することを発表した。

このシステムは本人が許可した場合にのみ作動するオプトイン方式で、Bluetoothを使ってランダム化匿名化された識別子を近くの端末に送信する。ユーザーは自分の匿名化されたデータをアップロードすることが可能で、そこから他の端末に広域発信される。近くの端末との距離と滞在時間に基づき、ユーザーにはウイルスに感染した人と接触した可能性があることが告げられる(個人を特定する情報は知らされない)。

これはMITの研究者らが考案したやはりBluetoothを使って匿名で感染の可能性を他の人に知らせるシステムに似ている。MITのシステムもApple、Googleの新たな取組と同様、位置情報データの利用は回避している。

接触者追跡は一部の国々ではある程度効果が証明されており、当局が感染の中心地を見つけるのに役立っている。しかしプライバシー団体とセキュリティー専門家は、ウイルス感染拡大と戦う個人の権利がプライバシーに優先されることに懸念を抱いている。AppleとGoogleは、このサービスはプライバシーを重視していると言っている。同システムは位置情報データを使わず、乱数化された識別子は15分毎に変更されて追跡を防いでおり、収集されたデータはすべて端末上で処理され、ユーザーが意図的にシェアしない限り端末から外に出ることはない。

しかしセキュリティーやプライバシーの専門家は、システムの潜在的欠陥をすぐに指摘した。元FTC(連邦通信委員会)のチーフ・テクノロジスト、Ashkan Soltani氏は、偽陽性だけでなく偽陰性の可能性を警告している。暗号化メッセージングアプリ、Signal(シグナル)のファウンダー、Moxie Marlinspike氏も、システムが不正利用される可能性に懸念を表明した。

TechCrunchは、AppleとGoogleの代表者とのリモート会見に参加した。記者は両社の新型コロナウイルス追跡の取り組みについて質問する機会を得た。

質疑の内容は以下の通り:

iOS、Androidのどのバージョンで新機能を使えるのか?

Appleは最大限の数のiOS端末にアップデートを提供すると答えた。iPhoneとiPadの3/4以上が最新バージョンのiOS 13を搭載しておりアップデートを受けることができる。GoogleはAndroidの中核部分であるGoogle Play Servicesをアップデートし、最近アップデートされた端末だけでなく、Android 6.0以降を搭載する全Android端末で接触者追跡システムが動作すると答えた。

この追跡システムはいつから使えるのか?

AppleとGoogleはソフトウェアアップデートを5月中旬から配布して接触者追跡の支援を開始すると言った。公共保健機関は自らの専用アプリに接触者追跡APIを組み込み、ユーザーはそのアプリをAppleとGoogleのアプリストアからダウンロードできる。二社は近々、接触者追跡機能をiOSとAndroidに組み込む予定であり、ユーザーはアプリをインストールする必要もなくなると言った。そうなればもっと多くの人たちがこのシステムを使うようになる、と両社は語った。

ただし、接触者追跡機能がOSのシステムレベルに組み込まれた場合でも、陽性者とのマッチングが検出された場合に接触者追跡プロセスの追加情報や次にすべきことなどを知るためには、地域向けの公衆衛生アプリをダウンロードする必要がある。

このAPIを他の誰かが使う可能性はあるか?

両社によると、接触者追跡APIのアクセスが許されるのは公共衛生当局のみである。

この限定APIの利用は、個人の健康情報を医師など資格を持つ医療専門家にのみ提供するのと同じ精神で制限される。APIの利用は認定された公共保健機関のみに制限され、国または地域でその組織を指定する責任のある政府によって認定される。何をもって正当な公共衛生機関と認めるかについては対立が生じる可能性があり場合によっては国と州当局の間でも一致しないかもしれないので、AppleとGoogleはプラットフォーム運営者として微妙な立場に立たされる可能性がある。

なんらかのデータが中央データベースに保存されることはあるのか?

Appleによるとデータはユーザーの端末上で処理され、そのデータは世界中の保健機関が運営するサーバーを「中継」され、中央に集約されることはない。テックの巨人たちは、データが分散化されることで政府が監視することははるかに困難担っていると言っている。

それはAppleとGoogleと公共保健機関はデータをアクセスできるという意味か?

AppleとGoogleは、完全に機密なシステムは存在しないことを認めた。「ハックされない」ものはない、ということはサイバーセキュリティーでは広く知られている概念だ。サーバーが侵入を受ける可能性はあり、データがなくなることもありうる。ただし、データを分散化することで、悪意をもってデータをアクセスすることははるかに困難になっている、と両社は言った。

人々が虚偽の報告をするのをどうやって防ぐのか?

両社は診断の検証について複数の公共保健機関と共同で作業していると語った。AppleとGoogleは、ユーザーにはシステムを信用してほしい、システムが信頼できることもユーザーに知ってほしい、と語った。

確認された新型コロナウイルス感染をどうやって識別するのか?

AppleとGoogleは、陽性の検査結果は症例を識別する最善の方法だが、必ずしも唯一の方法ではないと指摘する。実際、医療専門家の診断にウイルスの存在を具体的に示す陽性検査結果は必須ではない。理論的には、公共保健機関が判断基準を下げ、たとえば症状発現に基づく診断のみを必要とすることもありうる。

両テック巨人ともに、接触者追跡が効果を発揮するためには、集団内で高度な症例識別が行われる必要があることを認めているが、他の感染識別方法が地域の保健機関によって十分信頼できると判断されれば、高度な症例識別が必ずしも広範囲の検査を意味するものではない、という可能性も残している。

このシステムを信頼すべきか?

簡単な答えはない。AppleとGoogleは何もないよりはまし、というシステムを作ったように見えるが、これはユーザーの信頼を相当に必要とするシステムだ。あなたはAppleとGoogleが、彼ら自身あるいは政府による不正使用にも耐えうるシステムを作ったと信じる必要がある。信用しないのであれば、使う必要はない。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPad Proのようなデザインの新iPhoneをアップルが準備中との報道

AppleはiPhone 11 Proに代わる新型のiPhone、そしてiPhone 11の新モデル、小型のHomePodと位置追跡タグを2020年秋発表する準備を進めているようだ。Bloombergが報じている。最上位スマホiPhone 11 Proの後継モデルは少なくともiPad Proに近いデザインとなりそうだ。現在の丸いエッジではなく、スクリーンとサイドはフラットで、Appleが3月に発表した最新iPad Proで導入した3D LIDARセンサーシステムも搭載する。

新iPhoneは「フラットなステンレススティールのエッジ」でiPhone 5のようなデザインとなり、大きいバージョンのスクリーンはiPhone 11 Pro Maxの6.5インチよりもわずかに大きくなる見込みだという。また、ディスプレイ最上部にあるフロントカメラ配置している「ノッチ」を小さくするかもしれない、ともしている。

一方、リアカメラに搭載さたLIDARトラッキングシステムではプロセッサーのスピードやパフォーマンスの改善が図られており、AR性能が大幅に向上しそうだ。Bloombergによると、プロセッサーの改善はAI性能のアップも意図しているとのことだ。

秋のローンチと発売を計画されている段階だが、現在の新型コロナウイルスパンデミックによる混乱で、一部は「通常より数週間後ろ倒しで」提供されることになるかもしれない、とのことだ。

その他の製品に関するアップデートは、新しいHomePodは現行モデルより50%小型で、2020年後半の発売が見込まれている。価格的には安価になり、新HomePodリリース時にはSiriの性能も向上し、Apple以外のストリーミングサービスもサポートするとBloombergの記事にはある。その他にはApple Tagがある。これはAppleが先日、意図せずその存在を明らかにしたもので、TileのようなBluetooth位置追跡アクセサリーだ。これも2020年発売されるかもしれないという。

さらに記事ではMacBook Pro、Apple TV、低価格のiPadとiMacのアップデートも準備中と言及している。Appleのハードウェアアップデートのサイクルを考えれば、驚くべきことではない。それらのリリースについて予定はなく、新型コロナウイルス(COVID-19)がこうした計画にどのように影響を及ぼすか、はわかっていない。

画像クレジット:Qi Heng / VCG / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナの影響で第1四半期のPC需要は急増したが出荷数は減少

働く人々は在宅勤務になり学生たちはオンライン授業に移行したため、今年の第1四半期はPCの需要が急増した。しかし調査会社のCanalysによれば、需要が増えているにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響に伴うサプライチェーンの問題で実際の出荷台数は前年同期比で8%減った。同社によれば、8%の減少は2016年に記録した12%に次ぐ減り方だという。

企業はオフィスでいつもデスクトップPCを使っている従業員のために新しいマシンを求め、保護者は突然オンライン授業になった子供のためのPCを購入している。

Canalysの調査ディレクターのRushabh Doshi(ルシャブ・ドーシー)氏は、第1四半期にPCは飛ぶように売れたが、いくつかの要因により供給が限られ、PCメーカーは需要に応えられなかったと述べた。

ドーシー氏は報告書で次のように説明している。「2020年のはじめは、インテルの10nmプロセスの遅れのためプロセッサの供給が少なかった。中国で旧正月後に工場が生産を再開できなかったことで、この状況がさらに悪化した。供給は遅れるのに、需要は加速した。企業はリモートワーク用の新しい機材を用意する必要に迫られて、大量のPCを緊急に注文した。子供たちも、休校でオンライン授業になったために自分のPCが必要になった」。

2020年第1四半期のPC市場では、Lenovoが23.9%、HPが21.8%と大きなシェアを獲得している。Dellが3位で19.6%、Appleは6%と水をあけられての4位だった。

前年同期比で増えたのはDellのみで、1.1%と微増した。ほかのメーカーは前年同期比で減少し、Appleは21%の大幅減だった。

売上の面では、少なくとも短期的には悪くない。需要が多く供給が少ないので販売価格が比較的高いと思われるためだ。しかし1年を通して考えると、PCメーカーの先行きは明るくない。今年の第2四半期以降、経済の見通しが不透明であり短期的な需要は満たされたことから企業も消費者も購入を控えると考えられ、したがって販売はさらに落ち込むとCanalysは予想している。

画像:Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

AppleとGoogleが新型コロナ感染チェック用モバイルアプリを共同開発、プライバシー保護も確約

AppleとGoogleは協力して個人が新型コロナウイルス(COVID-19)の感染リスクにさらされたかどうかをチェックできる分散型モニターツールを開発中だ。

濃厚接触を知らせるツールは、公衆衛生当局が新型コロナウイルスの感染を追跡し、人々に感染のリスクがあることを知らせて検査を受けるよう推奨することに役立つ。このアプリはBluetoothテクノロジーを利用し、新型コロナ感染者との接触を発見し、適切なフォローアップを送信する。

プロジェクトの最初のステップは、公衆衛生機関がそれぞれのアプリにこのツールを組み込むAPI の開発だ。次のステップではモバイルデバイスのOS、すわなちiOSおよびAndroid のレベルに機能を組み込み、ユーザーがオプトインするだけで別のアプリをインストールせずに接触追跡が可能がシステムが開発される。

このシステムは、デバイスに搭載されたBluetoothチップを使用し、短時間で変化する匿名化されたIDを発信する。 サーバーは過去14日間のIDについて他のデバイスのIDとの一致の有無を検索する。一致は2つのデバイス間の接触時間および距離をしきい値として判断を行う。

新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたユーザーとの接触があったと判断された場合、ユーザーには「感染テストを受け、その間自主隔離を行う」よう通知される。

位置情報を利用した接触追跡はプライバシーの侵害の懸念をめぐって議論を呼び起こしているものの、多数の公衆衛生機関や大学の研究組織が採用しているテクノロジーだ。例えばAppleの「探す(Find My)」にヒントを得たMITのBluetoothツールがそうした例の1つだ。「探す」は従来の「iPhoneを探す」などと異なり、プライバシーを強く意識しており、位置情報を利用した追跡ツールでありながらユーザー以外は個人情報を知りえない。AppleとGoogleはプライバシー問題の困難の解決にあたってMITなどの組織が支援を求めたと述べている。

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開発は2段階

AppleとGoogleは2週間前にこの共同プロジェクトをスタートさせた。まずAPIの互換性を確保し、できるかぎり多数のユーザーが同一のアプリを利用できるようにするのが最初の目標だ。

4月10日の説明によれば、ユーザー同士の接近をモニターするAPIは5月中旬にiOSとAndroidに導入される予定だ。AppleとGoogleによれば、これは比較的シンプルなタスクで、既存または開発中のアプリに組み込むことも比較的簡単なはずだとと述べている。APIを使う場合、アプリはユーザーに対して位置の追跡機能にオプトインするよう求める(このシステムは全体としてオプトインベースだ)。これによりデバイスに付与される短時間で変化する匿名の識別子をBluetooth機能を利用してブロードキャストする。同種のアプリをインストールしているユーザーはこのブロードキャストを受信し、これによって、誰とどのような接触があったかが特定可能となる。

プロジェクトの次の段階は効率のアップだ。つまり位置追跡機能をモバイルOSそのものに組み込むことにより、個別アプリをダウンロードする必要をなくすのが目標となる。ユーザーはOSから機能にオプトインすればよい。第1段階の感染警告アプリも引き続きサポートされるが、OSへの組み込みはさらに広範囲のユーザーに対応できる。このレベルは数カ月以内に実現できるという。

【略】

アプリの動作例

このシステムがどのように動作するのか、ひとつの例を図示してみよう。

  1. アプリのユーザー2人が一定時間、例えば10分間近くにいたとする。ユーザーのデバイスはBluetooth無線により識別子(15分ごとに変化し匿名化されている)を交換する。
  2. その後、ユーザーの1人が新型コロナウイルスに感染していると診断された場合、感染者はAPIを組み込んだ公衆衛生当局のアプリに知らせる。
  3. システムは感染が診断されたユーザーから過去14日間の識別子(匿名)をシステムに送信することを許可するよう追加の同意を求めることができる。
  4. 公衆衛生アプリには(同意を得て)感染者の識別子をダウンロードすることができ、アプリは感染リスクを伴う接触があったかどうか判断する。
  5. 接触があったと判定された場合、アプリはユーザーに今後どうすべきかさらに情報を提供する。

プライバシーと透明性

Apple、Googleはともに「プライバシーと透明性が公衆衛生アプリにおいて最重要」だと述べ、 リリースされるアプリは今後とも決してプライバシーを侵害しないと確約している。この点は、以前からACLU(米国自由人権協会)が提起してきた問題だ。

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しかしACLUはこのアプリに対しては慎重ながら楽観的な見方をしている。

ACLUの監視、サイバーセキュリティ担当弁護士、Jennifer Granick(ジェニファー・グラニック)氏は次のようにコメントしている。

「位置情報を利用するこの種の追跡アプリは無料かつ迅速な検査と各種医療への公平なアクセスが広く保証されないかぎり効果がない。 またユーザーがシステム(の匿名性)を信頼できなければやはり効果的ではない。AppleとGoogleが、プライバシーの悪質な侵害と中央集権化のリスクを軽減するであろうアプローチを発表したことは事実だ。 しかしまだ改善の余地がある。位置追跡アプリがオプトインであり匿名性を確保した分散型であることを確認するため我々は今後も厳しく監視を続ける。このような機能は現在のパンデミックの期間に限り、公衆衛生の確保の目的でのみ使用されるべきだ」。

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感染チェックのためのはAPIについて、Googleの ブログ記事はこちら 、Appleのスペックなどへのリンクはこちら日本語版解説はこちら)。

ACLUからのコメントによりアップデート済み。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

MITがアップルの「探す」機能にヒントを得て新型コロナ接触者追跡システムを開発

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止策のひとつとして、接触者の追跡がある。感染する機会があった人を保健当局が把握し、感染を広げる恐れがあるとその人に通知するものだ。接触者追跡は、感染拡大を抑えた世界の一部の地域では既に効果を上げているようだ。しかしプライバシー擁護派は、米国でこうしたシステムを実施することに大きな懸念を持っている。

プライバシーを守る接触者追跡システムの実施方法については、ヨーロッパの専門家グループによる分散方式など、多くの提言がある。米国では、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが自動で接触者を追跡する新しい方法を考案した。みんなのモバイルデバイスから発信されているBluetoothの信号を利用して、個人をまったく特定せずに、接触した人とランダムな数字を結びつける方法だ。

このシステムは、研究チームが「チャープ(『さえずり』の意)」と呼ぶランダムな数字をモバイルデバイスが常に発信することによって動作する。チャープはBluetoothで発信される。これが重要だ。ほとんどの人のデバイスでBluetoothが常にオンになっており、また短距離の無線通信プロトコルなので誰かのチャープを受信したらそれはその人が比較的近くにいたのが確かであるからだ。

新型コロナウイルス感染症の陽性であると診断されたら、その人は過去14日間(接触感染のおそれがあった期間)に自分のスマートフォンから発信されたすべてのチャープをアップロードする。アップロードされたチャープは陽性と診断されたケースのデータベースに保存され、他の人はそのデータベースを調べて自分のスマートフォンが陽性の人のチャープを受信しているかどうかを確認することができる。もし一致するチャープがあったら、そのスマートフォンの持ち主は感染のリスクがある。陽性の人と約12メートル以内に近づいたことがあるからだ。検査を受けるべきかどうか、あるいは推奨される2週間の自己隔離をするかどうかの目安になる。

MITのシステムは、米国自由人権協会(ACLU)などのプライバシー保護関連団体が詳しく論じている、接触者追跡にまつわるプライバシー関連の厄介な問題の多くを完全に回避している。MITのシステムは位置情報をまったく使用しないし、個人を特定する診断やその他の情報とも一切結びつけられない。ただ、完全に個人の裁量に任されているわけではなく、コンプライアンスの観点からのリスクはあるだろう。MITは、陽性と診断された人に保健当局の担当者がQRコードを発行し、そのQRコードを使ってチャープの履歴をデータベースにアップロードすることを想定しているからだ。

MITのシステムは、人々のスマートフォンにインストールされたアプリで動作する。この設計は、紛失したMacやiOSデバイスを見つけたり、親しい人が持っているデバイスからその人のいる場所を知ったりするためにApple(アップル)が実装している「探す」システムからヒントを得たものだ。「探す」は、チャープを使って近くにあるアップルのハードウェアに位置情報をブロードキャストする。

MITリンカーン研究所のサイバーセキュリティ&情報サイエンス部門の担当主任でこのプロジェクトの共同主任研究員のMarc Zissman(マーク・ジスマン)氏は、ブログで次のように説明している。「このシステムは『探す』にヒントを得たものだ。もし私がスマートフォンをなくしたら、スマートフォンからBluetoothでランダムな数字のブロードキャストを始めることができる。それは広い海でライトを振るようなものだ。Bluetoothをオンにしている誰かが通りがかったとき、その人のスマートフォンが私に関して何かを知ることはない。ただアップルに『私はライトを見ましたよ』と伝えるだけだ」。

このシステムでは、陽性の人のチャープのデータベースを自動で調べ、検査を受けた方がいい人、あるいは自己隔離した方がいい人にアラートを送ることもできる。研究チームは、プライバシーを守りつつ保健当局のニーズと目的に合うよう、当局と緊密に連携してきた。

MITのチームは、この計画を広く実現するには次のステップとしてアップル、Google(グーグル)Microsoft(マイクロソフト)の協力が重要だと述べている。効果的に機能させるには、モバイルデバイスのプラットフォームとの緊密な連携が必要だ。将来的にiOSとAndroidの標準機能として提供すれば、広く普及するだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Kaori Koyama)

最新iPad Proは旧モデルからの乗り換えるほどではないが、マウスとキーボードは快適で便利

iPad Pro

新モデルは魅力的だが、すでに所有している人にとってはそうでもない

過去18カ月間、iPad Proは私の自宅から持ち出した唯一のマシンである。私は最近まで世界中で開かれるイベントに参加するため、またサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンにある当社のオフィスを訪れるため、自宅を離れて何度も国内外を移動した。自宅のデスクにいないときは、常にiPad Proが私のメインのポータブルマシンであった。

乗り換えたのは、カンファレンスとStartup Battlefieldコンテストへ参加するためにブラジルへ旅行した時だった。それはほんの気まぐれだった(話は逸れるが、そのコンテストが最高だったのは、コンピュータービジョンによる牛の体重測定が優勝したことだ)。この1週間の旅行において、iPad Proが仕事用デバイスとして機能するかどうか実際に使って確かめたかった。その後、また信頼のおける13インチMacBook Proに戻ると思っていた。

ところがこの旅でTechCrunchの運営をタブレットからできるかという点において、私の考え方はすっかり変わってしまった。軽くてスムーズに手早く簡単に仕事ができ、いたるところで私のMacBookよりも進んでいることがわかったのだ。私はもう元には戻れなくなってしまった。

iPadPro

iPad Pro、2018年、ブラジル

初めのうち、iPadと私の双方にとって悩みの種が尽きなかった。その時点では共有シート、自動化ツール、新しく導入されたショートカットなどをつなぎ合わせてワークフローを再構築したことが、実用的な作業用マシンとして生まれ変わらせるのに大きな役割を果たした。また、Slide Over(スライドオーバー)、Split View(スプリットビュー)、ホーム画面などを刷新したiPadOSに伴う変更は、デバイスをより柔軟に感じられるものであり、歓迎すべきものであった。

過去の1年半もの間、iPad Proの絶対的な目玉機能について多くのことを学ぶことができた。その一方で、ラップトップよりも軽くて高速なマシンを持ち運ぶことで、得られるものと失うもののトレードオフについて知ることができた。

新しいマシンで過ごした1週間のうちにこれらはすべて整えた。

この新しい2020年のiPad Proは、2019年に発売されたモデルと大部分においてほとんど同じに見える。正方形のカメラアレイ以外は、ほとんどそっくりだといっても過言ではない。その中でも良いニュースは、初めてApple(アップル)がID認証を行って2年経った今でも超サクサクと未来的な感じがすることだ。まさにコンピューターの理想的なかたちである。軽くて、手に持てる大きさで、強力で、機能的なのだ。

私がテストした12.9インチのiPad Proには、私が今まで使用していたモデルとほぼ同じレベルで動作する新しいA12Zチップが搭載されている。Geekbench 4では、5015超のシングルコアと1万8000超のマルチコアスコアを記録した。クラスに関係なく、所有可能で最も強力なポータブルコンピューターの1つであることに変わりはない。1TBモデルには引き続き6GBのメモリーが搭載されているようだが、それより下のモデルでは4GBなのかもしれず、詳細は不明だ。

iPadPro

このバージョンには追加のGPUと「強化されたサーマルアーキテクチャ」が追加された。負荷がかかった状態では熱分散に優れているかもしれないが、iPad Proはめったに熱くならないので、私にとってはよくわからなかった。私は分解した結果が気になった。おそらく新しい排気口、配線、部品などが配置されているのだろう。もしくは何らかの回路かもしれない。

当然のことであるが、このプロセッサーが(少なくともCPUレベルでは)A12X Bionicチップに非常に近い性能を持つことは興味深い。GPUにおいても、AppleはA12Xよりも高速だというのみで、いつものように具体な倍数について言及していなかった。

このことからわかるのは、これがiPad Proを本当に「リフレッシュ」したものだということだ。新しい機能を次に紹介するが、全体的に見るとこれはある意味で「新しいモノ」であり、めったにあるものではない。ただし、ときにはアップルデバイスの真実ともいえる機能だ。ご覧いただくのは、ハードウェアの設計や実装を大幅に見直しなくても、現在ハードウェアから学び、実行できることばかりだということだ。

私がここで注意するとするなら、A12Xがいまだに非常に早く、それほどパワーが欲しいと思ったことがないことであろう。私は使いやすさを犠牲にして、スピードアップを図ることにずっと反対してきた。だからこそ今はその議論を重ねるときであるし、うまく機能しているものに不満をいうべきではないと思っている。

カメラとAR

新しいiPad Proで最も大きく変わったところは、もちろんカメラアレイだ。1000万画素の超広角と1200万画素の広角の2つを備えている。これらの機能は仕様どおりであるが、最も興味深いのは新しいLiDARスキャナの追加である。

これによって我々は、世界を一度に何層もの奥行きをもって体感できるようになるのは間違いない。我々が認識している物理的な層は、レッドウッドの年輪のようなデータの輪によって増強される。

実際のところ、その未来は我々にも到来している。たとえそれを気付いているかどうかが問題ではない。これらの層の存在を要求することにより、今すぐそのほとんどを非同期で体験することができる。どこに行くべきか伝えるために、データオーバレイが必要だって?ターンバイターンで地図を呼び出してみよう。言葉や天候の定義を知りたいって?ボイスアシスタントに聞いてみよう。

ただし、これを超えた次の時代は、受動的なコンテクストに応じた情報レイヤーが視覚的かつ聴覚的に、積極的に提示される時代なのだ。

我々はこれを拡張現実とかMR(複合現実)などと呼んでいるが、どちらも最終的にどうなるかを明らかに説明しているわけではない。拡張ヒューマンエクスペリエンスはスマートフォンから始まったが、スクリーンから透明なディスプレイ、レンズ、義眼、脳幹の結合までをチェーンでつなぐかのように、ゆっくりと小脳に近づいている。

あなたがこの現実を受け入れられなくても、私は責めはしない。ただ、私が正しくないという意味でもない。この記事をブックマークして、2030年に議論しようではないか。

ただし、短期的にはARテクノロジーの発達は主にスマートフォンのエクスペリエンスによって前進することになるだろう。そしてそれらはGoogle(グーグル)とアップルによって急速に発展している。ARをアプリやデバイスに合うハードウェアに組み込むように開発者にフレームワークを提供しているのだ。

AR体験を非常に現実的なものにするための最大のハードルはオクルージョンだ。これはあるオブジェクトが別のオブジェクトと現実的に交差することを可能にするエフェクト。「これはそれより後ろにある」と脳に伝えるためにオブジェクトを不明瞭にしたり、隠したりする。オクルージョンは共有されたエクスペリエンス、リアルな世界とデジタルな世界の相互作用、一般的な信憑性といった面白さにつながる。

これこそがiPad ProのLiDARの見せ場でもある。LiDARを使用すると、ARアプリケーションで2つの大きな前進が可能になる。

  1. 初期化の時間はほぼ一瞬:LiDARは光の速さで動作するため、放った光のパルスを読み取り、その「飛行」時間を測定することで対象物または環境の形を判定する。これはとても速い。典型的な「アプリを開いて、端末をかざして周りを見渡すが、使えるかどうかは運次第」といったAR特有のユーザーエクスペリエンスの悪さは、LiDARによって理論的に取り除くことができる。
  2. オクルージョンは自動:オブジェクトの形や相互関係を「推測」するためにカメラ、小さな手の動き、コンピュータービジョンを使用して計算を行う必要がなくなった。開発者は基本的にこれを無料で、しかも驚きの速さで手に入れることができる。LiDARがたくさんの自動運転自動車システムや半自動運転システムに使われていることには理由がある。高速で比較的信頼性が高く、強力なマッピングツールだからだ。

ARKit 3.5には、平面と表面を検出することにより、環境の完全なトロポジカル3Dメッシュを作成する機能がある。しかも、シンプルなカメラファーストのアプローチよりも高い精度で提供されているのだ。

残念ながら、私はこのシステムをテストすることができなかった。Appleによると、多くはHot LavaのようなゲームからIKEAのような家具販売用アプリへと移行しつつあるとのことだが、それを活用したアプリケーションはまだないとのことだ。2020年か遅くとも次のiPhoneに搭載される可能性が高いため、この追加機能がどれほどiPadに効果的であるのか私は興味がある。

iPadPro

唯一、iPad Proの背面カメラがポートレート写真を撮れないことには驚いたが、大きなショックは受けなかった。フロントカメラのTrueDepthだけが、このポートレートモードを搭載している。

iPad Proには、はるかに正確なポートレートモードが搭載される予定であり、LiDARアレイとカメラを利用するが、まだ準備ができていないようだ。アップルがテーマと背景との関係を理解しているにもかかわらず、ポートレートスタイルの撮影を実行できないようにする理由はない。

LiDARは非常に有望で、たくさんの将来性のあるアプリを生み出すテクノロジーだ。デバイスに外部の世界を取り込むためのより正確な方法があれば、そのうちAppleと開発者にいろいろなチャンスが広がるであろう。しかし、私はそれが一気に広がるのではなく、今後数年にわたって徐々に行われることになると考えている。

TrueDepthカメラの位置が変更されていないことには失望した。iPad Proのデザインに関してアップルが選択したものの中で、カメラを横向きモードのときに手で覆われる場所に配置したのは実にもったいない。

iPadPro

私がiPad Proをポータブルマシンとして使ってきた間、ポートレートモードにしたことはほんの数回しかない。たいていはアプリが単に横向きに対応していなかったからだ。

このデバイスは横向きが前提であり、カメラにもそれを反映すべきだ。5月に出荷される「フローティング」デザインの新しいMagic Keyboardは、カメラを浮き上がらせて手元から離すことができるようになり、私はそれによってかなり使い勝手は良くなるのではないかと思っている。

キーボードとトラックパッドに対応

マウスとトラックパッドへの対応については、現時点でもかなりの人がいくつかの意見を述べている。一般的に反応は非常に好意的であり、私もその評価に同意する。アップルがボタンやアクションをカーソルに合わせる際にどれほど柔軟性があるかにはやや疑問があるのだが、全体的な効果としては信じられないほど快適で便利である。

カーソルを鋭い矢印や手のアイコンではなく、順応性のあるオブジェクトで再現したことは、タッチ環境において大いに納得できる。我々は、自分の指が鉛筆や消しゴム、ときにはボタンを押す道具として必要なツールになることに慣れている。iPadのカーソルも状況に応じて認識されるのだが、それは理にかなっている。

いまのところはMagic Trackpadしか使えないのだが、Magic Keyboardが発売されたときには、これが通常の作業フローになってくれることを期待している。

そしてキーボードのデザインについては、以前よりもはるかに高い位置にあるスクリーンを、キーボードを使いながら指で突かずに済むのは素晴らしいことだ。

Surfaceとの比較

iPad Proにトラックパッドが追加されたことで、「結局のところSurfaceは正しかったのでは?」という直感が正しかったことが証明されたようだ。今となってはほとんど毎日iPadを触っているので、私はこのことについてある時期から2、3年は考えていたことである。

この議論については2018年に評価をしたことがあるので、ここでは端的にそれを引用させていただこう。

関連記事:iPad Proレビュー:Appleの新しいタブレットは、成熟の予兆を見せ始めた

iPadPro

簡単にまとめると、Microsoft(マイクロソフト)はラップトップのタブレット化に、アップルはタブレットのラップトップ化に取り組んでいて、他はよくわからないことをしようとしている。

まずはOSを切り離し、先にタブレットを開発してから元に戻る必要がある。そのことをマイクロソフトは理解することができないでいる。マイクロソフトは以前のマイクロソフトよりもはるかに有能だと思うが、しかしそれは他で議論すべき問題である。

アップルはOS Xをかなり早いタイミングで切り離し、それ以来、別の方向にゆっくり向かっている。しかし、Surface ProがiPadと同じくらい満足できるレベルのタブレット体験を提供してくれたことはない。

たしかにSurfaceのほうがより柔軟性があるかもしれない。しかし、それは統一感と確かな機能性の犠牲の上で成り立っている。それは冷蔵庫やトースターでも同じである。

今でも私はそう思っている。

基本的に、iPadがSurfaceのすぐそこまで追いついていると考えるようになった。なぜならiPadはハードウェアに焦点を当てているのでアプローチが広い。そしてWindowsはタッチ操作向けに適切に調整されたことはない。アップルは先にタッチ操作に合わせており、その後でカーソルのサポートを追加した。

前述したことを繰り返すが、私はここで「Surfaceのアプローチが悪い」と言っているわけではないので、その点は信じて読み進めていただきたい。業界のほぼ全体が別の方向に向かっていたときに、SurfaceのチームがコンバーチブルPCに最大限尽力していたことは、非常に賞賛すべきことだと思う。しかし、iPadが「Surface」化するという意見には絶対に同意しない。なぜならSurfaceのタッチエクスペリエンスはタブレットの中でも最悪であり、iPadのそれは(インターフェイスの欠点も含めて)間違いなく最高だからだ。

これは最近のコンピューターデザインにおいて、異なる両端から同様の問題を解決しようとする明確な例の1つである。

ただし、iPad Proを数年間使用して、何も問題がなかったというわけではない。

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iPadへの期待

2020年の1月のこと、アップルに関するライター兼評論家のJohn Gruber(ジョン・グルーバー)は、iPadがその潜在能力を完全に引き出されていない理由について詳しく解説した。アップルがソフトウェアのマルチタスクの部分で失敗したというのが大筋の結論だった。その当時、ジョンや他の追随する人たちから良い指摘をされていたように思う。私にも意見があったが、思いを表明するまでには至っていなかった。しかし、今なら言える。私の意見は次のとおりだ。

iPad Proは、使いやすさよりもスピードと能力に焦点を合わせているに違いない。

MacBookやラップトップを1日か2日、もしくは10日間も置いたままにしたことがなかったか思い出してみてほしい。開けてみたら一体どうなっただろうか? アラート、通知、アップデート、メッセージの数々がお出迎えしてくれたのでは? マシンから離れていた時間の長短に関係なく、開いてすぐに作業を開始できただろうか?

iPad Proなら、どこにいても何をしていてもパカッと開いて上方向にスワイプすれば、数秒以内に最初の指示を出すことができる。めまぐるしい業界で、荒々しいビジネスをしている私たちにとって、その確かな動作は文字どおりプライスレスだ。

一方で、私が使いやすさを望んだことは一度もない。

あなたはハンマーがもっと使いやすかったらなどと思ったことはあるだろうか?そんなことはないだろう。正しく持ち、正確に打つことを覚えるだけだ。iPadの場合はもっと複雑なことにも利用できる。

現在、iPadOSは批判を許されないレベルにまでシンプルさが高められている。皮肉なことに、iPadソフトウェアチームに代わって物事をシンプル(同じアイコン、同じグリッド、同じアプリスイッチングパラダイム)に維持し、元の意図に忠実にであろうとする努力が、打って変わって一種の複雑さをもたらした。

iPad Proのマルチタスクシステムを取り巻く問題のほとんどは、プロフェッショナルのユーザーに対してアプリやワークスペースを不変に固定する方法を提供することで解決することができると思う。つまり、何年にもわたってiPadの役割であった自分のワークスペースを所有しているようなマルチタスクの方法論を「ぶち破る」能力をユーザーに提供すればいいのだ。ドックを完全に捨て去り、タップで移動できる固定されたスペースのリストを作成しよう。アプリアイコンを保護するステータスをなくし、そのスペースでまさに起こっていることを反映させよう。

これらはひどいアイデアかもしれないが、私の議論の核心はしっかりしている。タッチインターフェイスは70年代に初めて登場した。そして少なくともここ十数年間は非常に人気だ。

今日のiPad Proユーザーはタッチベースのインターフェイスには慣れており、タッチインターフェイスのないコンピューティングライフを知らない可能性が高まっている。

信じられないのなら、子供たちが6つの異なるアプリを操って、簡単なミームやメッセージをまとめて友達に送る様子を観察してみて欲しいい。子供たちはそれを1日に数十回も行うような名人なのだ。こういったユーザーはまさにタッチネイティブである。肉の味を知ってしまった子どもたちは、もうミルクを飲めなくなってしまっているのだ。

iPadPro

このデバイスは依然として絶賛せずにはいられない。とにかく、私が2018年に挙げた理由すべてにおいて、現在でも同じように強く感じている。しかしこれまでのところ、2018年のiPad Proから最新モデルにアップグレードする理由はほとんど見当たらない。Magic Keyboardに下位互換があることを考慮しても、結論は変わらないであろう。

現在iPad Proを所有しておらず、仕事に使えるか悩んでいる人には、可能だと私は答えるし、実際に私はそうしているとお伝えしよう。複雑で多面的な論説、イベント、サブスクリプションビジネスの編集面を管理しながら、さまざまな大陸やタイムゾーンで働く30人もの従業員と話している。

iPad Proとともに(飛行機で)16万kmを移動したが、一度も不具合を起こすことがなかった。バッテリーは常に十分であった。スピードは常に一定だ。キーボードは素晴らしいだけではなく、液体をこぼしても大丈夫で、さらに耐衝撃性能を備える。私がこれまで所有していたどのラップトップにも当てはまるものではない。アップル製品であったとしてもしかりである。

統合されたトラックパッドの将来性とiPadの存在理由のレベルアップにより、Magic Keyboardと新しいiPad Proは、現在の市場に出回っている中で最も魅力的なパッケージの1つになっている。

私はMacBook Airが大好きで、いくつかのモデルを壊れるまで何年も使用したことがある。現在、自分の仕事のスタイルを考えるとラップトップに戻るという選択肢はありえない。高速で信頼性が強く、強力だからだ。

タイピング、スワイプ、スケッチで入力することができ、地球上のあらゆる主要なビジネスソフトウェアを強力にサポートするマルチモードマシンを所有しているというのは尋常ではない。常によく動き、高速で、まるでイタリアのレーシングカーのように組み立てられているマシンだ。

誰が反論できるだろうか?

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(翻訳:Dragonfly)

Twitterのジャック・ドーシーCEOが1000億円超の新型コロナ救済基金を設立

Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は米国時間4月7日、一連のツイートで自身が所有するSquare(スクウェア)株10億ドル(約1090億円)を使って新型コロナウイルス救済に特化した基金を設立することを発表した。TwitterとSquare両社のCEOである同氏は、新ファンドをStart Small(スタート・スモール、小さく始めろ)と名付け、支払額と受取人の記録を公開スプレッドシートに掲載している。

ドーシー氏は発表の中で、Start Smallは将来、新型コロナに打ち勝った後は目標を転換し、少女の健康と教育とuniversal basic income(ユニバーサル・ベーシックインカム)に向けるつもりだと語った。

Start Small最初の寄付として、10万ドル(約1090万円)がAmerica’s Food Fundに贈られる。Leonardo DiCaprio(レオナルド・デカプリオ)氏とLaurene Powell Jobs(ローレン・バウエル・ジョブズ)氏が率いる新型コロナ・パンデミックで困難な生活を送っている人たちに食料を提供する取組みだ。

America’s Food FundのGoFundMeページによると、同ファンドの高額寄付者には他に100万ドル(約1億900万円)のOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏、500万ドル(約5億4000万円)のAppleらがいる。

1社ならず2社の上場企業を率いる米国のテック起業家が米国時間4月7日の午後に発信したツイートからわかったことは、とりあえず上記の通りだ。

Start Smallの資金にTwitterではなくSquare株を使った理由については「私はSquare株をずっとたくさん持っている。そして少し時間をかけて売る必要がある」とドーシー氏は後にツイートで説明している。

ドーシー氏の新たなプロジェクトについて、知るべきことがまだたくさんある。どう運営していくのか、(寄付の他に)投資もするのか、基金に興味のある人がどうやって申し込むのかなどだ。TechCrunchはSquareに詳細を質問しているので、情報が入り次第本稿を更新する予定だ。

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

大画面化しつつキーボードやスピーカーを刷新した16インチMacBook Proの実力を改めて検証

13.3インチモデルの処理性能を大きく上回る最上位モデル

16インチMacBook Proはアップルのクラムシェル型ノートPCの最上位モデル。15インチ(正確には15.4インチ)モデルの後継モデルとしてリリースされており、アップルの直販サイトで15インチモデルはすでに「認定整備済製品」しか販売されていない。

MacBook Proには13インチ(正確には13.3インチ)モデルも用意されているが、16インチモデルが大きく異なるのは搭載されているプロセッサーのグレードと、外部グラフィックスの有無。13インチモデルのプロセッサーは最大4コアのCore i7で外部グラフィックスは非搭載、16インチモデルは最大8コアのCore i9で外部グラフィックス搭載と、処理性能が大きく異なっている。

16インチMacBook Pro(税別価格24万8800円〜)、本記事で掲載している製品は筆者の私物。ディスプレイには非光沢フィルム、キーボードには保護ステッカーを貼っている(以下同)

フルスペックモデルの価格は65万1800円

16インチMacBook Proには、2.6GHz 6コアプロセッサ/512GBストレージ/AMD Radeon Pro 5300Mで税別価格24万8800円と、2.3GHz 8コアプロセッサ/1TBストレージ/AMD Radeon Pro 5500Mで税別価格28万8800円の2つの標準構成モデルが用意されている。メモリーはどちらも16GBだ。

筆者が購入し、今回レビューしているのは後者の上位モデル。直販サイトではプロセッサーを2.4GHz版、メモリーを最大64GB、ストレージを最大8TB、外部グラフィックス「AMD Radeon Pro 5500M」をビデオメモリー4GB版から8GB版にアップグレードできるが、その場合の価格は65万1800円とかなり高額になるし、一般店舗と違って値引きも受けられない。というわけで筆者は標準構成の上位モデルを購入した。

プロセッサー、メモリー、ストレージ、外部グラフィックスを最上位にした場合の価格は税別で65万1800円。搭載メモリー、ストレージの上限が増えたぶん、フルスペックモデルの価格も上昇している

最新薄型ノートPC向けプロセッサーの約1.6倍の処理性能を発揮

8コアの16インチMacBook Proの処理性能は非常に高い。今回のマシンには第9世代(Coffee Lake)の「Core i9-9880H」(8コア16スレッド、2.30~4.80GHz)が搭載されているが、CPUベンチマーク「CINEBENCH R15」で「1501cb」、「CINEBENCH R20」で「3536pts」というスコアを記録した。

第10世代(Comet Lake)の「Core i7-10710U」(6コア12スレッド、1.10~4.70GHz)は、CINEBENCH R20のスコアが2200 pts前後なので、8コアの16インチMacBook Proはその約1.6倍の処理性能を備えていることになる。

「CINEBENCH R15」のCPUスコアは1501cb

「CINEBENCH R20」のCPUスコアは3536pts

ACアダプターを外してもパフォーマンスを維持

特筆しておきたいのがバッテリー駆動でも処理性能が落ちないこと。今回、「Adobe Premiere Pro CC」で5分の4K動画を書き出す所要時間を、AC接続、バッテリー駆動それぞれで計測してみたが、どちらでもほぼ同等の3分20秒前後で処理が終了した。

Hプロセッサーと、より高速な外部グラフィックスを組み合わせているクリエイター向け、ゲーム向けノートPCの多くはバッテリー駆動で処理性能が大きく低下する。電源を確保できない場所でも最大パフォーマンスを発揮できることは、たとえ処理性能で劣るとしても使いやすい仕様と言える。

AC接続時、バッテリー駆動時に3回ずつ計測を実施した。それぞれ大きく計測結果がぶれた回があるが、それを除外すればAC接続、バッテリー駆動のどちらでも3分20秒前後で書き出しを終えている

物理的なESCキーはやはり必須だと改めて実感

16インチMacBook Proのキーボードは、バタフライ構造から、打鍵感や打鍵音を改善したと謳う改良型シザー構造に変更している。その主な目的は故障率の改善だ。実際、筆者もバタフライ構造のキーボードを搭載したMacBook Proを使っていたが、打鍵感の異常が発生して2回修理した。短期間に複数回キーボードの不具合に遭遇した経験から言わせてもらえれば、やはりバタフライ構造のキーボードには欠陥もしくは無理があったのではないか。

もうひとつの大きな「勇気ある撤退」が、物理的なESCキーの復活。利用頻度の高いESCキーを手探りで打てなかったのは非常に不便だった。ふたつの物理キーがTouch Barをはさんでいるのはデザイン的には野暮ったいかもしれない。しかし、アップルが使い勝手を優先させてESCキーを復活させたことは大歓迎だ。

Windowsでもファンクションキーをほとんど使わない筆者にとって、アプリによって機能が変わるTouch Barと物理ESCキーは理想の組み合わせだ

他社の追随を許さないサウンド品質をさらに数段上に向上

筆者は複数の媒体でPCのレビュー記事を書いているが、アップル製品、特にMacBookはほかのノートPCの数段上のサウンドクオリティーを実現していると、数年前から考えている。今回の16インチMacBook Proはそのサウンドクオリティーをさらに数段上に引き上げたというのが率直な感想だ。

完全に再設計された6スピーカーのハイファイサウンドシステムが搭載されているとのことだが、1.62cmの薄型ボディーから再生されているのが信じられないほど伸びやかで、広がりのある音楽を楽しめる。サウンド品質を最優先してノートPCを選ぶのなら、16インチMacBook Pro以外に選択肢はないと言える。

16インチMacBook Proは合計で6つのスピーカー(上に2つ、下に1つ×左右)を内蔵する

16インチMacBook Proを購入してから、リビングなどで音楽を聴く機会が格段に増えた。筆者にとってどこにでも手軽に持ち運べるオーディオシステムのような存在になっている

高負荷なクリエイティブワークを快適にこなしたいなら16インチモデル

16インチMacBook Proの購入を検討している方が最も心配するのはサイズと重量だろう。しかし、ディスプレイが15.4インチから16インチに大きくなっているわりには、本体サイズは幅349.3×奥行き240.7×厚さ15.5mmから幅357.9×奥行き245.9×厚さ16.2mm、重さは1.83kgから2kgと、体積・重量ともに約1.09倍増に留まっている。

モバイル性能を重視するなら現行13インチMacBook Proか、その後継モデルが最適だ。しかし、高解像度RAW画像の現像や、4K動画の編集・書き出しを快適にこなせるマシンを探しているのなら、ある程度のサイズ・重量増は割り切って16インチMacBook Proを選ぶことを強くオススメする。なお、筆者は13インチから16インチMacBook Proに買い換えたが、いま非常に満足しているということを付け加えておこう。

アップルが保護マスクを2000万枚以上調達、フェイスシールドの生産と出荷も開始

新型コロナ感染拡大を防ぐための個人防護具を医療従事者などに提供するためにサプライチェーン、従業員、パートナーらの総力を結集しているApple(アップル)は、2000万個以上のマスクを調達し、現在フェイスシールドの生産と出荷を進めている。CEOのTim Cook(ティム・クック)氏が声明で語った

アップルは世界中の新型コロナとの戦いを支援することに全力を注いでいる。このほど当社のサプライチェーンを通じて2000万枚以上のマスクを調達した。さらにわれわれの設計、技術、運用、パッケージの各部門がサプライヤーと協力して、医療従事者向けフェイスシールドの生産と出荷を行っている。

同社は世界各国の政府と話し合って、保有するマスクを最も必要としている場所に配布しようとしている。

なお、Appleのフェイスシールドが最初に配布されたのは、カリフォルニア州サンタクララ、シリコンバレーのカイザー病院で、先週始めに届けられたとCook氏は語った。

Cook氏によると、フェイスシールドは平たく梱包され100個入りの箱で出荷される。2分以内に組み立てられサイズは調整可能。Appleは今週中に100万個を出荷予定であり、その後も毎週100万個を追加し、最終的には米国以外にも配布することを目標としている。

「これはAppleにとって愛と感謝を込めた行為であり、今後われわれの努力の成果をさらに広く届けていきたい」とCook氏は言った。

今回のAppleの行動は、3Dプリンティングのスタートアップやメーカー数社がすでに行っている取組みに続くものだ。

関連記事:Private tech companies mobilize to address shortages for medical supplies, masks and sanitizer

カナダでは、子供向けの科学機器の開発を行っていたINKSmith(インクスミス)というスタートアップが、フェイスシールドの製造に転換し、需要に応えるために100人の新規従業員を雇用する。

「短期的には、州内の需要に応えられるよう規模を拡大するつもりだ。その後、カナダ全土の需要に応える」とINKSmithのCEOであるJeremy Hedges(ジェレミー・ヘッジス)氏がカナダの、ニュース機関、Global Newsで語った。

3Dプリンティング会社では、マサチューセッツ州拠点のMarkforged(マークフォージド)とFormlabs(フォームラブズ)、ニューヨーク州ブルックリンのVoodoo Manufacturing (ヴゥードゥー・マニュファクチャリング)などが米国でフェイスシールドなどの個人防護具を製造している。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが最新iPadにマイクの物理切断機能を追加

Apple(アップル)は最新のiPadに、ハードウェア的にマイクを切断するセキュリティ機能を導入した。

マイク接続のハードウェア切断機能は、ハッカーがマルウェアや悪意のあるアプリを使ってデバイスの周囲を盗聴することを、より難しくするのが目的だ。

この機能はアップルのセキュリティチップ 「T2」 により、2014年に初めてMacに導入された。このセキュリティチップにより、ユーザーがMacBookのディスプレイを閉じると、確実にマイクがデバイスから物理的に切り離される。そのためマルウェアがルートレベルのデバイス権限を持っていたとしても、近くの会話を盗聴されることを防げる。

アップルはサポートガイドで、同社の最新iPadにも同様の機能が存在することを認めた。「Made for iPad」の認定を受けたケースが取り付けられ、その蓋が閉じられている場合、マイクが物理的に切断される。

つまりこれは、アップルのデバイスにおけるマルウェアの存在を実質的に認めているということだ。まれではあるが、ここ数年でMacやiOSデバイスを標的とした攻撃が相次いで確認されており、同社は拡大するハッカーによる攻撃に対抗するため、バグ発見の報奨金を増額した。2019年にアップルは、中国がウイグル自治区で迫害を受けている少数民族のイスラム教徒が持つiPhoneに侵入するために利用していた多くの脆弱性を修正した。

またアップルは、iOSまたはiPadOSのバージョン13.4で動作するすべてのアプリを「data vault」でサンドボックス化し、アプリが許可なくデータにアクセスすることを防止すると述べた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルが未発表の忘れ物防止タグ「AirTags」の存在をうっかり証明してしまう

Apple(アップル)がうかつにも、未発表のプロダクトを漏らしてしまったようだ。AirTagsと呼ばれるプロダクトのサポートビデオが、米国時間4月2日にYouTubeにアップロードされた。「How to erase your iPhone」(iPhoneの消し方)というビデオは、iPhoneを工場出荷時の設定にリセットする方法を解説している。1分43秒あたりにユーザーに「Find my iPhone」(iPhoneを探す)の解除方法が出てくるのだが、設定画面には「Enable Offline Finding」(オフラインのデバイスを探す)もあり、その下のテキストにAirTagsの名前がある。

具体的には「オフライン検索を使用すると、Wi-Fiまたは携帯電話に接続していないときに、このデバイスやAirTagsで検索できます。」と書かれている。

これを最初に見つけたのは、鷲のような目を持つブログAppleosophyだ。その後アップルは、ビデオを削除したは、そのコピーはここで見られる。

AirTagsは要するにTileに対抗するアップルの製品で、開発中であることは広く知られている。iOSのコードを分析した人によると、AirTagsはBluetoothで接続する小さな紛失物探し用タイルで、まさにTileと同じくなくした物を見つけるために使う。

両者の違いは、AirTagsの方がiOSと深く統合されていることだ。たとえばそれは、いろんな「〇〇を探す」(Find My〜)アプリの中にあったりする。 Itemsタブの中にそのタグが現れて、なくしやすい、あるいは盗まれやすいアイテムを探すことができる。鍵や財布はもちろん、自転車なども。

MacRumorsの記事によると、タグはコインサイズの電池のCR2032を使っており、交換できるのもTileと同じだ。

もちろん、アップルがTileを真似する意図にTileが気が付かないはずがない。同社は米国時間4月1日の議会のパネルで、アップルの反競争的振る舞いは「悪化した、改善されない」と証言した。その公聴会でTileは、「〇〇を探す」アプリに自己のプロダクトを統合するアップルの計画に言及した。TileなどサードパーティのBluetoothトラッカーには、それができない。また彼らは、バックグラウンドの位置アクセスを頻繁に呼び出さなければならないが、おそらくAirTagsではその必要はないだろう。プラットホームを所有しているアップルは、自社のプロダクトにアドバンテージを与えることができるからだ。

TechCrunchでは現在、アップルにコメントを求めている。

画像クレジット: Apple, via YouTube; MacRumors

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新型コロナの検査と追跡調査はAppleとGoogleの協力が不可欠

検査と追跡

閉鎖の後に行われるのは、検査と追跡調査である。韓国では「マントラは追跡調査、検査、治療であり、都市封鎖、道路封鎖、移動制限ではない」。WHOは「感染拡大を抑制し制御するため各国は隔離、検査、治療、追跡調査を行わなければならない」と述べている。

しかし「追跡調査」とは実際のところどのようなものなのだろうか?シンガポールでは「TraceTogether」アプリが使用されている。このアプリではBluetoothによって(位置情報を追跡することなく)近くの電話を追跡して、ユーザーが接触した人のログ記録をローカルで保持できる。そして、ユーザーが選択または同意した場合のみ、シンガポール保健省にそれらの情報がアップロードされる(おそらくユーザーが感染者と診断された後)。これにより、感染者との接触者に警告を与えることができるようになる。シンガポールではこのアプリのオープンソース化を予定している。

韓国では、新型コロナウイルス(COVID-19)感染者と診断された人が近くにいるかどうかを知らせるメールが政府から国民に送られる。送られる情報には、感染者の年齢、性別、位置情報の詳細な履歴が含まれる場合がある。その後、さらに詳細な情報が得られるようになる。

Victoria Kim(ヴィクトリア・キム) @vicjkim
@Seoul_govで提供されているCOVID-19感染者すべてに関する詳細情報のレベルは驚くべきものだ。以下の情報を確認できる。

姓(ここでは表示を隠している)
性別
生年
居住区
職業
旅行履歴
既知の感染者との接触
現在治療を受けている病院

お察しのとおり中国では、監視の目はより深く浸透しており、さらに厳格だ。中国で広く普及しているAlipayアプリとWeChatアプリには、不明瞭な基準に基づいて設定された健康コード(緑、黄、赤)が中国政府により追加された。この健康格付は今や、数百の都市(そして間もなく中国全土)で使用されている。例えば、人々が地下鉄や電車を利用したり、建物に入ったり、さらには幹線道路を出たりすることを許可できるかどうかを判断するために使われている。

高度に民主的な世界に住んでいる私たちはどうだろうか?中国のようなモデルを受け入れられるだろうか?当然受け入れることはできない。では韓国のモデルはどうだろうか?おそらく無理である。ではシンガポールのモデルは?もしかしたら可能かもしれない(例えば、私の故郷カナダでは受け入れられるんじゃないかと思う)。しかし、TraceTogetherアプリや、それと同じ方向性を持ったMITプロジェクトのSafe Pathsアプリといった別個のアプリをインストールする必要があるということは問題だ。シンガポールのような都市国家ではうまくいっても、米国のような巨大で政治的に分断された国で成功させるのははるかに難しいだろう。収集されるデータ品質は、データの使用に対する承諾が得られないこと、および選択の偏りが原因で低いものとなるだろう。

もっと広く言えば、緊急に求められている良質なデータを収集しようとすると、個人のプライバシー保護がどのような場合に犠牲になってしまうだろうか? さらに、警察国家を目指す国や現存する警察国家に利用可能な道具を与えてしまわないようにすることが、どのような場合に困難になるだろうか? 現実を甘く見ないようにしよう。このパンデミックは独裁主義の脅威増大させており、決して縮小させてはいないのだ。

おそらく英国のNHSのように、パンデミック対策の新しいデータインフラスを構築する人たちは「公衆衛生上の緊急事態が終結したら、データは破壊されるか返還される」ことを約束するだろう。しかし、すべての組織が、求められるレベルの信頼を一般大衆から得ているわけではない。このような強い不安が原因で、パンデミックを緩和し制御するために新しい監視システムを構築する必要があるかどうか熱い議論が引き起こされている。

これは私にとってすごく意外なことだ。こうした議論のどちらの側にいたとしても、新しい監視システムを構築することにはまったく意味がない。すでに複数の選択肢が存在するからだ。あまり考えたくはないが、冷厳な事実として、すでに2つの企業グループは集合体として事実上私たちのすべての近接(および位置情報)データに対して、望む時に無制限にアクセス可能である。

お察しのとおり、それら2つのグループを構成するのは主要な携帯電話プロバイダー、そしてAppleGoogleだ。この点は、データ企業のTectonixによってありありと示されている。Tectonixは、春休みにパーティーに行った人の移動に伴うウイルス拡散を視覚化することに成功した。

Tectonix GEO @TectonixGEO
社会的距離を取らないことにより、実際にどんな影響が考えられるか見てみたいと思わないだろうか? 当社では@xmodesocialと協力し、Ft. Lauderdaleビーチのみに限って、春休みの期間中にアクティブだった匿名化されたモバイルデバイスの二次的な位置情報を分析をした。この動画はそれらの人々が米国全土でどこに移動したかを示している。

言うまでもないことだが、それらすべての電話にOSを提供しているAppleとGoogleでは、事実上望む時に同様のことを行える。「科学技術者、感染症専門家および医療専門家」からの公開質問状では「Apple、Google、また他のモバイルオペレーティングシステムのベンダー(他のすべてのベンダーも遠隔で関わるのが望ましいとの考え)が、接触者の追跡調査をサポートするために、オプトイン方式のプライバシーを保全したOSの機能を提供する」ことを求めている。

彼らの言っていることは正しい。AndroidとiOSではプライバシーが保全され、相互使用可能なTraceTogetherのような機能をOSレベル(あるいは技術的な点で細かく言うとGoogle Play Serviceレベル)で追加してリリースすることが可能であり、またそうすべきだ。もちろん、これは企業による監視に頼ることを意味しており、それを考えると私たちはみな不安になる。しかし、少なくともこれはまったく新しい監視インフラストラクチャを構築することにはならない。また、AppleとGoogleは、特に携帯電話プロバイダーと比較して、強固な制度上の歴史を持ち、プライバシー保護、および監視内容の送信に対する制限を重要視している。

(信じられないって?Appleがプライバシーにコミットしていることは、長年にわたり同社にとって競争上優位な点となっている。Googleでは、データとプライバシーの設定をユーザーが管理できるようにする十分なツールセットが提供されている。お尋ねするが、あなたの携帯電話サービスプロバイダーではこれらと同等のものが提供されているだろうか。そう。今後、同等のものが提供されると思うだろうか。なるほど。提供されると思っているとすれば、起こりそうもないことを信じていることになる)

また、AppleとGoogleは、データセットを「匿名化する」ことによって適切な方法でプライバシーを保全できる。メリットは他にもある、両社は、ある種の差分プライバシーや準同型暗号、さらにはゼロ知識暗号化(概要が活発に議論された技術)を利用してプライバシーを保全する仕事を行うことに最適な企業だ。そして実用レベルでも、両社にはバックグラウンドサービスをアクティブ状態に維持する点で、サードパーティーのアプリ開発者よりも優れた能力がある。

もちろん、この点はすべて十分に、かつ厳しく規制されている必要がある。しかし同時に、すべての国民がそのような規制を信頼しているわけではないという事実も認識している必要がある。接触者追跡調査システムの有効性と最大限調和したプライバシー保護をシステムの奥深くに構築することは、生データを要求する独裁国家に利用される可能性を考えるととりわけ重要だ。「匿名化された」位置情報データセットは、確かに矛盾したものとなりがちだが、それでも独裁者にとって匿名性を奪うことの難しさは技術的な障害となる。また、個人のプライバシーを優れた暗号化方式でさらに安全に保全できるのであれば、非常に素晴らしいことだ。

AppleとGoogleは、他の選択肢(政府による監視、電話会社、または新しいアプリ、そしてそれらを使用することに付随するあらゆる衝突と障害)と比較して、異論の余地が少ない選択肢である。加えて、世界的なパンデミックに直面している今、両社ではそれぞれの検査および追跡調査のソリューションを30億人のユーザーに比較的迅速にリリースすることができるだろう。広く普及したパンデミック監視システムが必要であるなら、危険が最小限で、プライバシーが最大限保全される方法で既存のシステム(それについて話すのがあまり好きでないとしても)を利用しよう。

画像クレジット: PeakPx under a CC0 Public Domain license.

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(翻訳:Dragonfly)