AIによる経費精算自動チェックシステム開発のAppZenが約54億円を調達

いまやAIは社内業務のあらゆる場面に関わっている。会社のコアビジネスから、顧客とのやり取り、何か新しいことの創出、あふれかえる書類仕事やバックオフィス業務の支援まで。 米国時間9月9日、バックオフィス業務支援の分野で急成長しているスタートアップが資金調達ラウンドを発表した。会社の財務部門の業務をAIで自動化するツールを開発するAppZen(アップゼン)が、5000万ドル(約54億円)を調達した。Coatue Managementがリードインベスターとなり、既存株主であるRedpoint VenturesとLightspeed Venture Partnersも参加した。

情報筋によると、本ラウンドのバリュエーションは5億ドル(約538億円)だった。急激に評価が上昇しているようだ。昨年10月にLightspeedがリードインベスターとなった3500万ドル(約38億円)のラウンドにおける同社のポストマネーのバリュエーションは1億7500万ドル(約188億円)だった。

シリーズCとなる本ラウンドで同社の調達総額は1億ドル(約108億円)を超えた。資金はプラットフォームの機能拡張に使用されると、CEOのAnant Kale(アナント・ケール)氏はインタビューで語った。ケール氏は同社のCTOであるKunal Verma(クナル・ヴァーマ)氏と共同で会社を創業した。

AppZenの最大のプロダクトは、経費精算自動チェックシステムだ。例えば従業員からの旅費精算の申請を出張の履歴と比べ(他にも比較可能なデータが数多くある)、整合するか確認する。また、経費が社内規程に準拠しているか確認し、準拠していない場合はフラグを立てる。

同社が大企業から多くの契約を勝ち取ったのはこのプロダクトであり、現在顧客は1500社を数える。これは2018年10月の顧客650社の2倍以上だ。AppZenユーザーには、Amazon、Nvidia、Salesforce、米国の上位10銀行のうち3社、メディア企業上位10社のうち4社、製薬メーカー上位10社のうち3社、航空宇宙企業の上位5社のうち2社、その他多数のソフトウェア会社に加え、Verizon(TechCrunchの親会社)が含まれる。

この経費精算システムが今後も引き続き会社の成長を引っ張っていくと見込まれるが、今後は財務部門の他の仕事にこのシステムの仕組みを応用することが検討されている。例として、ビジネスに必要な支払いのプロセスと売り上げ代金の請求・回収プロセスで活用することが挙げられる。

「会社の財務部門で役に立つような新しいツールが何十年も開発されてこなかった」とケール氏は語る。

この分野には非常に大きなビジネスの機会がありそうだ。調査会社ガートナーは、法人向けIT全体で今年1兆ドル(約108兆円)の市場になると予測する。市場が大きいため、AppZenが競合する企業の数もまた非常に多い。自動化とAIによって経費をチェックする分野の企業だけでなく、 ロボット・プロセス・オートメーション(RPA)など他の分野にも競合他社が多い。例えばRPAは、画像認識技術をベースとする業務支援ツールだが、もっと幅広くバックオフィスのニーズに対応できるツールへと進化しつつある。そしてさらにSAPなどの巨大企業が提供する経費管理ソフトウェアが、AppZenのプロダクトと正面から競合する。

これまでは、AppZenは急速に成長しており、顧客から信頼されるパートナーとしてのポジションを確保している。

「AppZenによってこれまで不可能だったことが可能になる。今の経理チームの人数を増やさずに支払いの100%をチェックすることができる。AIによって企業が支出を劇的に減らし、社内規程を遵守し、業務プロセスをスリム化することができる」と、Coatue Managementでシニアマネージングディレクターを務めるThomas Laffont(トーマス・ラフォント)氏は述べる。「アナントやクナル、彼らのチームと出会ったとき、財務部門の変革に関するビジョンとAIの専門知識に感銘を受けた。もちろん、ビジネスにおいて明確かつ迅速に打ち手を実行していく能力については言うまでもない」。

人工知能は人類に大きな進歩をもたらしたが、扱いが難しい部分というものは常に残る。従来人間が行なっていた業務や計算のうち、同じ作業を反復するようなものについては、自動化によって社内のオペレーションコストが間違いなく削減されるはずだ。業務プロセスもスピードアップするだろう。だがAIが常に完璧というわけではない。人間の仕事をAIを使ったシステムが行うようになった後で、問題が発生した時、原因を突き止めるのが難しくなってしまったということが起こっている。

「我々の目標はすべての会社の従業員が大きなフラストレーションを感じないようにすることだ」とケール氏は言う。この目標は、こういったシステムを開発している企業だけではなく、購入する企業の目標にもなり得るものだ。

画像クレジット:Adam Gault

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(翻訳:Mizoguchi)