さまざまな産業に適応するロボットを開発するスタンフォード発のRIOSが5億円超を調達

米国サンフランシスコ・ベイエリアのロボティクスのスタートアップであるRIOSは米国時間6月29日、ステルス状態を脱して500万ドル(約5億3700万円)の資金調達を発表した。そのラウンドをリードしたのはValley Capital PartnersとMorpheus Venturesで、参加した投資家はGrit Ventures、Motus Ventures、MicroVentures、Alumni Ventures Group、Fuji Corporation、NGK Spark Plug Coなどとても多い。

ちょうどいまは、工場の自動化への関心が再び高まっている時代だ。最近ではさまざまなスタートアップが大量の資金を獲得している。例えば1月には、Berkshire Greyが2億6300万ドル(約282億7600万円)の巨額を調達した。それに比べればRIOSの調達額は小さいが、まだまだこれからの若い企業だ。

それでも、グローバルなパンデミックの最中で多くの産業が停滞し、ウイルスを媒介する人間という要素のない生産工程が求められている中で、オートメーションへの投資家の関心も大きく膨らんでいる。

RIOSは2018年に創業したスタンフォード大学からのスピンアウトだが、Xerox PARCの技術者が多く関与している。過去1年半ほどステルスで過ごした同社は、その間パートナーの企業グループとともに技術のテストを進めていた。

同社の最初の製品であるDX-1は、さまざまな産業のさまざまなタスクを狙っている。その中には、製品の箱詰めやコンベアベルトの操作もあるだろう。そのシステムは同社のAIスタックで動き、その中には感知システムやロボットの手に装着したさまざまな触覚センサーもある。

料金は月額固定料金制を予定しており、提供されるサービスはプログラミングやメンテナンス、モニタリング、定期的アップデートなど実にさまざまだ。

画像クレジット: RIOS

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トヨタらの支援で品質管理ロボットのElementary Roboticsが一般商用製品をローンチ

2年の歳月と1700万ドル(約18億3000万円)あまりを投じて、品質管理用のロボットの開発に取り組んでいたロサンゼルスのElementary Roboticsが、ついに商用製品の提供を開始した。

CEOのArye Barnehama(アリエ・バーネハマ)氏によると、同社はすでに自動車産業や消費者向け包装製品、航空宇宙、防衛産業などの分野に、トヨタに代表されるような大企業の初期顧客がいる。現在、バーネハマ氏と彼に協力する労働者たちによるロボット技術は、最初のパイロット段階の6社以外にも、他の企業も幅広く利用できるようになっている。

同社のロボットは、大きな箱に3次元で自由度のあるガントリーシステムを付けたもののようで、縦横方向に動くとともにジンバルにマウントされたカメラが製品を可視化できるようにする。

画像クレジット:Elementary Robotics

ロボットはオブジェクトをスキャンすると、同社と協力している企業が提供した物体の分類と比較され、欠陥と良品をを判断する。

バーネハマ氏が強調するのは、Elementaryのロボットが製造工程における人間の介入や評価行為に代わるものではないことだ。「機械学習は人間と組み合わせた方が常にうまくいく。結局のところ、工場を動かしているのは人間だ。夜間に明かりを消して無人で動いている工場ではない」とバーネハマ氏はいう。

今回の商用化を支えたのは、2019年末に同社が調達した1270万ドル(約13億7000万円)の資金だ。

その際のリード投資家はThreshold Venturesで、すでに同社のパートナーであるMo Islam(モー・イスラム)氏がElementary Roboticsの取締役会にいる。そのラウンドは既存の投資家であるFika VenturesやToyota AI Ventures、Ubiquity Venturesなども参加し、資金は主にElementary Robotics社の研究開発に投じられる。

イスラム氏は「ロボティクスの中でも、製造業で使われるものに昔から関心があった」と語る。イスラム氏がElementary Roboticsに見ているものは、Cognexのような上場している大企業と競合できる企業だ。また、複雑性が少なくてデプロイが簡単なElementaryのハードウェアも、重要なセールスポイントとしてイスラム氏らの投資を確信させた要素のひとつだ。

Elementaryによると、設置から本番稼働までわずか数日で行えるため企業のコスト削減に貢献し、リモートワークもできるため労働者の安全も確保できる。ユーザー企業がElementaryを気に入っているのはこれらの要素だ。

「我々が今日の立ち上げを喜んでいるのもその点だ。パーツやデータのサンプルをもらったら、その日のうちに動かせるようになる。システムから得られるデータが増えるに従って、機械学習の性能も向上する。そのことが顧客にわかってもらえるのは、稼働開始から1週間後ぐらいだ」とバーネハマ氏はいう。

画像クレジット:Elementary Robotics

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DatabricksがRedashを買収してデータサイエンティストのためのデータ視覚化を充実

データと分析のサービスのDatabricksが米国時間6月24日、データ視覚化サービスのRedashを買収したことを発表した。Radashはデータサイエンティストやアナリストが必要とするデータの視覚化を助け、そのためのダッシュボードを提供する。

Redashの顧客にはAtlassianやCloudflare、Mozilla、Soundcloudなどがおり、同社のサービスには、そのツールのオープンソースで自己ホスト型のバージョンと同社がホストする有料のオプションがある。

両社は、買収の財務的詳細を明かしていない。Crunchbaseによると、テルアビブのRedashはまだ外部資金を調達していない。

Databricksの共同創業者でCEOのAli Ghodsi(アリ・ゴーシ)氏によると、両社が出会ったのはDatabricksの顧客にRedashを使っている企業がいたからだ。「彼らのチーム全体とその質へのこだわりに感銘を受けた。これまでのデータサービス業界には、RedashとDatabricksを組み合わせたようなものが欠けていた。この組み合わせによりLakehouseのすばらしいバックエンドと、Redashからのフロントエンドの視覚化およびダッシュボードが一体化し、マジックが起きる」とゴーシ氏はいう。

画像クレジット: Databricks

これはまた、Databricksにとって同社のサービスが企業のデータチームが必ずアクセスするプラットフォームになり、データから価値を取り出すためにやるべきことのすべてを、単一のプラットフォームでできるようになるという機会だ。

「両社はオープンソースの遺産を背負っている点で共通しているだけでなく、データとAIへのアクセスを誰にとっても容易にして、ビジネスインテリジェンスのユーザーがイノベーションをより迅速に実現できるようにするというミッションでも一致している。すでに両社の技術が一体化したことによる顧客のためのすばらしい成果が出ているため、引き続きさらなる成長を目指したい」とゴーシ氏は述べている。

DatabricksはRedashの買収に加えて、同社のDelta Engineのローンチも発表した。こちらは、同社のトランザクションレレイヤーであるDelta Lakeとともに利用するハイパフォーマンスのクエリエンジンだ。

これについて同社は、次のように説明している。「Delta Lakeのために新たに開発されたDelta Engineは、データ分析とデータサイエンスのためにクエリの高速な実行を可能にし、しかもそのためにデータをデータレイクの外に移す必要がない。このハイパフォーマンスなクエリエンジンはまったく新たに構築され、モダンなクラウドハードウェアを利用してクエリのパフォーマンスを加速する。この改良により、Databricksの顧客は統一的なデータアナリティクスプラットホームへ移行でき、そしてそれはデータのどのようなユースケースでもサポート可能で、オペレーションにとって意味のある効率とコスト節減ができる」。

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複数のクラウドサービスに散らばるコンテンツを検索するCloudtennaのモバイル検索アプリ

いまどき自分のコンテンツは、さまざまなクラウドサービスに分散して保存しているため、いざというときに見つけるのが難しい。メールに添付したい「あれ」は、Slackの会話内にあるのだろうか、Boxの中か、DropboxかGoogle Docsか、それともOffice 365なのだろうか。Cloudtennaはこの面倒な問題解決に挑戦し、米国時間6月16日に250万ドル(約2億7000万円)の資金調達と、新たにモバイル用の検索ツールを発表した。

匿名の投資家が多いが主役はBlazar Venturesで、同社によるとこれまでの調達総額は650万ドル(約7億円)になるという。

Cloudtennaの共同創業者であるAaron Ganek(アーロン・ガネック)氏によると、CloudtennaはAIとドキュメントのメタデータを併用して、コンテンツの保存場所を見つけることができる。「私たちの本当の仕事は、企業のファイルのカオスに秩序をもたらすことだ」とガネック氏はいう。「ファイルはさまざまなクラウドのあちこちに、ばらまかれたような状態で存在している。私たちが開発したアプリケーションは、AIを利用してファイルを見つける。それらは、どこに保存されていてもよいい」。

同社はデスクトップ用の検索アプリケーションを2018年にリリースし、それと併用されるモバイル用の検索ツールである「Workspace」を発表した。ガネック氏によると、モバイルの特徴を十分利用するためにアプリはゼロから新たに制作したとのこと。

「検索のテクノロジーをスマートフォンとタブレットに持ち込んだ。はっきりさせておきたいのは、これがデスクトップ製品のモバイルバージョンではないことだ。人は外出しているとき、すなわちモバイル状態のとき、どのようなコラボレーションしているのか、徹底的なケーススタディを行なった上で設計した」とガネック氏はいう。

画像クレジット:Cloudtenna

AIの部位が、ユーザーの履歴に基づいてファイルがどこにあっても見つけ出す。これまで、誰とコラボレーションしていたかもわかる。最も身近でよく使うファイル、あるいは検索キーと最も関連性が高いファイルを優先して見つけてくれる。どこに保存されていてもいい。

ガネック氏によると、パンデミックのときに資金調達をするのは確かに奇妙な体験だったが、一般的にSaaSの利用が増えて、同社も上昇気流に乗っており、投資家たちにもそのことを理解していた。

同社は2016年に創業して、現在は9人の社員がいる。ガネック氏によると、現時点で人を増やす気はないという。そのため将来の社員の具体的な人数を挙げることもできないとのことだ。

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公共事業向けの現場安全情報を提供するUrbinが20億円超を調達

産業労働者向けの現場安全情報を開発するUrbintは、研究開発能力の拡大、国際的な成長、新しい産業分野向けサービスの開発を目指して、新たなラウンドの資金調達で2000万ドル(約21億4000万円)を調達した。

北米の公益事業市場ですでに大きなシェアを持つ同社が海外に進出するにはいいタイミングだ。このたび、英国の公益企業であるNational Gridのベンチャー部門が同社への投資家に加わったことによって、それが現実になろうとしている。2000万ドルの調達ラウンドのそのほかの投資家は、Energy Impact Partners、Piva、そしてSalesforce Venturesだ。

同社の創業者でCEOのCorey Capasso(コーリー・カパソ)氏がは「公共事業の現場は、インフラの老朽化や極端な悪天候、労働者の不足などによって、数年前から圧倒的な数の脅威に直面していました。しかも、リスク回避のための正しい情報に基づく安全性を確立するための適切なツールがありませんでした。我々は予測AIを活用してこの問題を解決するためUrbintを創業しました。新型コロナウイルスのパンデミックは、インフラと必要不可欠な労働力に対する危険性を増加させ、リソースも逼迫させたことで、我々のサービスのニーズが高まっています。今回の投資により、より多くのコミュニティの安全を守るために、我々の事業が拡がることでしょう」と語る。

カパソ氏はTechCrunchのインタビューで「リソースの配置の適正化のためにはダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(無差別化)を強化しなければならない」ともコメントしている。

同氏によるとUrbintは、大量の情報を集めて分析し、天候や今後の建設計画、事故や感染症や災害、疾病など、現場の労働者が今後直面するかもしれないさまざまなリスクを評価することだ。昨今の米国では、これらに新型コロナウイルスによるパンデミックが加わる。現在同社は米国の40社の公益企業が顧客だが、カパソ氏は顧客ベースをもっと拡大したい意向だ。

National Gridのベンチャー部門であるNational Grid Partnersの創業者で社長のLisa Lambert(リサ・ランバート)氏は「このパンデミックの間のリスクを軽減するには、AIを利用する安全性技術が極めて重要である。そのため、Urbintへの投資を増やしていることに、大きな期待と確信を持っている」と語る。

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たった数分の作業で、あなたも現在活動中の火星探査車のAIを成長に協力できる

火星探査車Curiosityは赤い惑星にそろそろ8年もいるが、旅の終わりはまだまだ見えないし、現在もアップグレードが行われている。あなたも自分の数分間をこのプロジェクトに捧げて、その地形走査AIのために生データのラベル付けをすることができる。

Curiosityは単独では走行しない。地球上のチームが火星から送られてくる画像を分析し、火星の動く科学研究所のために行路を指示している。しかしそのためには、岩や土、砂、その他の特徴がどこにあるかを正確に理解するために、画像を注意深く調べる必要がある。

これはまさに機械学習が得意とする作業だ。いろんな目立つ特徴のある画像を、正しいラベルを付けて大量に与えてやれば、ラベルのない画像の中に類似の特徴を見つけることができるようになる。

しかし人間の顔や、猫、犬といったラベルが付いた画像はすでに大量にあるが、火星の地表の画像に地形タイプのラベルを付けたデータは、まだ多くない。

NASA / JPLのAI研究者である小野雅裕氏はニューズリリースの中で次のように述べている。 「通常、数十万枚のサンプル画像があれば、ディープラーニングのアルゴリズムを訓練できる。例えば自動運転車のアルゴリズムは、道路や標識や信号、歩行者、その他の乗り物といった大量の画像で訓練される。一般に公開されているディープラーニング用のデータセットもあり、それらには人や動物、建物などが写っているが、火星の地形はない」。

そこでNASAはそんなデータセットを作るために、あなたの協力を求めている。

画像クレジット:NASA / JP

より正確に表現すれば、Soil Property and Object Classification(土壌の特性とオブジェクトの分類)と呼ばれるアルゴリズムはすでに存在しているが、彼らはその改善するための助けを求めているのだ。

NASAはすでに、市民科学プロジェクトのサイトであるZooniverseに数千枚の火星の画像をアップロードしており、事前にチュートリアルを読んで、誰もが数分でそれらに注記を付けることができる。岩や砂地などのまわりに、それらの輪郭線を描くことは簡単そうに思えるが、これは「大きな岩」だろうか、それとも「岩盤」か?幅は50cm以上あるが、高さはどれくらいなのか?すぐにいきづまることもある。

これまでのところ、目標の約9000枚のほぼ半分にラベルが付いた。画像は今後もっと増えるだろう。誰もが、暇な時間が数分間あれば協力することができる。責任や義務は発生しない。現在は英語版のみだが、近くスペイン語とヒンズー語、日本語などにも対応する。

AIが改良されれることにより、探査車は走行可能な場所だけでなく、トラクション(対地摩擦)を失いそうな場所が事前にわかり、車輪の配置を調節したりもできるだろう。SPOCの地形分類が正確なら、これまでのように人間が画像を何度もチェックする必要もなくなり、Curiosityの動きを計画しやすくなる。

このミッションのウェブページで、Curiosityの進捗状況に注目しよう。

関連記事:NASAでもリモートワーク、Curiosityチームが自宅から火星探査機を運用中

画像クレジット:NASA / JPL-Caltech

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モトローラは2020年も低価格スマホ中心の戦略をとる

新型コロナウイルス(COVID-19)がやってくるかなり前から、スマートフォンの売れ行きは落ちていた。そして世界がパンデミックに支配された現在、落ち込みも激しく、最近の数字では前年比12%減の予想となっている。消費者は1000ドル(約11万円)のデバイスに背を向けているが、低価格のデバイスは一部の市場でしっかり売れている。

他のメーカーがフラグシップの廉価版のような機種を出してきた中で、Motorolaは100ドル(約1万1000円)のMotorola Edge+や折りたたみ式のRazrのリブートを試験的に投入した。どちらも、結果はぱっとしない。とりわけRazrは、その価格と仕上がりが不評だった。しかし今やLenovo傘下となった同社は、低価格スマホが同社の中心的な価値命題であることを知っている。

米国時間6月5日、同社は2つの低価格スマホに新製品が加わった。気どった名前のMoto G Fastと、それよりずっとシンプルな名前のMoto Eだ。Gシリーズの最新モデルは「AIの処理能力によりパフォーマンスを次のレベルへ上げた」という主張が名前にある「Fast」の由来になっているらしい。しかし実際に見るまで、ひとまずその言葉を信じるしかないだろう。確かに搭載するSnapdragon 665だけではそれを正当化するには十分ではないし、3GBのRAMも同様に十分ではない。低価格のスマホであればそれも悪くないが、「Fast」の由来にはならない。

Moto G Fastは専用のマクロカメラと16mpのカメラを搭載し、後者は暗い場所でもまあまあな写真が撮れそうだ。4000mAhの大きなバッテリーも注目に値する。Motorolaは一般的に、そのあたりはケチらない。米国では6月12日に200ドル(約2万2000円)で発売され、米国時間6月5日から予約を受け付けている。

159ドル(約1万7000円)のMoto Eも、同時期に発売される。当然ながらこのたいへんお買い得なデバイスには、それほど特筆すべきことはない。カメラが2つ、6.2インチのHD+ディスプレイ、3500mAhのバッテリーそしてSnapdragon 632を搭載している。この価格にしては立派なデバイスで、Lenovoはこういった低価格モデルを得意としている。

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秘匿性の高いメッセージングアプリ「Signal」に顔をぼかす機能が加わる

今のような不安な時期には、Signalのようなアプリが特に貴重だ。人に知られたくない情報を安全かつ簡単に共有できる方法なら、何でも歓迎したい。そのためにSignalは、このアプリで送る写真の中の顔をぼかす機能を加えて、ほかのあまり安全でないアプリに痕跡を残さずに、特定の人のアイデンティティ(本人情報)を容易に保護できるようにした。

創業者のMoxie Marlinspike(モクシー・マーリンスパイク)氏はブログで、今世界中に広がっている警官の暴力に対する抗議活動への支持を表明したあと「路上にいるみんなを支援するためのさまざまな方法を考えている。とりあえず今年は、顔を隠す方法が必要だ」と語る。

写真の中に顔を見つけて画像をぼかすツールはほかにもあるが、Signalの来歴から考えると不可逆性、元に戻せない機能を実装したいだろう。現在同社に、技術の詳細を問い合わせているところだ。とにかく、 既存の技術を使って写真の中のすべての顔を1回のタップでぼかす機能は作れるはずだ。
画像クレジット:Signal

この機能は、Signalを使って秘密の情報を送っているすべてのユーザーに役に立つ。例えば、写真なら、その人が誰か知られたくない。写真編集アプリを使って顔をぼかすことはできるが、この簡単な方法は必ずしも安全でない。写真編集という計算集約的なプロセスをクラウドから提供しているアプリなら、元の写真をホスト側に保存するかもしれない。そうなると、その写真が今後どんな目に遭うかわからない。

人に知られたくない情報はすべて、自分のスマートフォンか、または信頼するアプリに保存したい。そしてSignalは以前から、通信の秘密を冒されたくない人々に愛用されている。

同氏によると、Signalの場合、顔の検出とぼかしはすべてユーザーのスマートフォン上で行われる。ただし顔の検出は100%正確ではないので、ツールが見つけてくれなかった顔はユーザーが手作業でぼかし処理する。

この新しい機能は、GoogleとAppleの承認が得られ次第、Signalアプリの最新バージョンに登場する。

最後に同氏は「さまざまなもので顔を隠せる機能を無料でコミュニティに提供したい」と語る。例えば、上の写真では冬に顔を覆う防寒具のようなもので、顔を隠している。今後が楽しみなアプリだ。

画像クレジット: Signal

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フォード向け自動運転技術開発のArgo AI、フォルクスワーゲンの投資を受け欧州進出へ

米国時間6月2日、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ、VWグループ)はFord(フォード)の自動運転車向けにバーチャルドライバーシステムや高精細の地図を研究開発していた米国ピッツバーグのArgo AIに対し、26億ドル(約2800億円)の戦略的投資を完了する。Argo AIは2017年にステルスを脱し、フォードから10億ドル(約1080億円)の支援を受けている。

この投資によってArgo AIは、フォードとVWグループという2つの顧客を持つグローバル企業になり、米国とヨーロッパで操業することになる。もちろん、一挙に従業員数が増える。VWグループが2017年に自動運転車の技術開発のために立ち上げた子会社であるAutonomous Intelligent Driving(AID)(Fortune記事)はArgo AIに吸収され、AIDのミュンヘンオフィスはArgoのヨーロッパ本社になる。

投資の完了により正規に操業を開始するこの統合された本社は、Argo AIの従業員数を1000名あまりに増員する。同社のオフィスは、ミシガン州デトロイトとカリフォルニア州パロアルト、およびニュージャージー州クランビュリーにある。また、テキサス州オースチンとフロリダ州マイアミとワシントンD.C.には地図制作と試験用に、公道を走る自動運転車の車隊がある。

Argo AIはフォードが製造する自動運転車向けに、バーチャルドライバーシステムと高精度の地図を開発しており、今回の投資でそのミッションがVWグループにも拡張されるわけだ。今回の投資の条件として、Argo AIの自動運転車技術の開発費用はフォードとVWグループが分担することになる。

Ford Autonomous VehicleのCEOを務めるJohn Lawler(ジョン・ローラー)氏はブログの記事(Medium記事)で「安全でスケーラブルで信頼性のある自動運転サービスを構築することは、ささやかな仕事ではない。また安上がりな仕事でもない」と語っている、

2年前にフォードは「2023年には自動運転車事業を構築するために新たに作ったLLC(リミティッド・ライアビリティ・カンパニー、有限責任会社)に40億ドル(約4310億円)を支出する」と発表した。そのLCCであるFord Autonomous Vehiclesは、フォードの自動運転システムの統合、自動運転車の研究と先進的なエンジニアリング、AV輸送サービスネットワークの開発、ユーザー体験、ビジネス戦略、事業開発チームなどで構成される。

同氏は「『費用の分担』によって自動運転車へのフォードの全体的な支出が減るわけではない」と強調している。Ford Autonomous Vehicleによると、むしろ費用はTaaS(トランスポーテーション・アズ・ア・サービス)のソフトウェア開発と、その最終的な自動運転サービスを担う車隊の編成や運用に回される。投資の分有にもかかわらず、フォードとVWグループの2社は自動運転車のサービスでは連携しない。

フォードのモビリティーパートナーシップ担当副社長でもあるローラー氏は、「米国の自動車メーカーは、独自の自動運転サービスの構築においても独立性と激しい競争を維持するだろう」と述べている。Argo AIの取締役会の構成は、VWグループから2名、フォードから2名、同社から3名となる。

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山火事のシーズンが近づく中、AIが衛星画像を使って危険な地域を教える

地球温暖化と天候パターンの変化でここ数年の米国は壊滅的な山火事に苦しめられた。そしてこの、本来なら普通の自然現象は、きわめて予測不可能で深刻な災害になった。そこでスタンフォード大学の研究者たちは、機械学習と衛星画像を利用して危険な乾燥地域を調べ予報する方法を見つけた。

これまでの、山火事になりやすい森林や低木地帯の検査方法は、手作業で枝や葉を集め、その水分を調べた。それは正確で信頼できる方法だが、きわめて労働集約的で大規模な調査は難しい。

しかし幸いにも最近は、その他のデータソースを利用できる。欧州宇宙機関(European Space Agency)の人工衛星センティネルとランドサットは、地表の画像を大量に集めており、それらを詳しく分析すれば山火事のリスクを評価するための二次的なデータソースが得られる。しかもこの方法なら、木の枝の棘に刺される心配もない。

衛星画像を利用する観測方法は以前から存在するが、人間の目で判断するため極端にサイト固有の結果になりがちだ。つまり、場所によって分析方法が相当異なっている。棘の心配はないが、広い面積の調査は難しい。スタンフォードのチームが利用した新しい方法では、センティネル衛星の「合成開口レーダー」を利用して森林の林冠を貫き、その下の地表の画像を見る。

スタンフォードの生態水文学者Alexandra Konings(アレクサンドラ・コーニングス)氏はニュースリリースで「私たちの大きな突破口は、これまでよりもずっと長い波長を使う新しいタイプの衛星に着目したことです。それによって森林の林冠のずっと深いところの水分を観測できるようになり、それは燃料水分の含量を直接表しているのです」と語っている。

チームは2016年から定期的に集めたこの新しい画像を、米国林野局が手作業で計測したデータと共に機械学習のモデルに与えた。これによってモデルは、画像のさまざまな特徴と地上の測定値との相関を学習した。

次に彼らは、そうやって得られたAIエージェントに、彼らがすでに答を知っている古いデータで予報をさせ、テストをした。結果は正しかったが、そのほとんどが低木地帯で、それは米国の西部で最も多いバイオームであり、山火事になりやすい植物相でもある。

プロジェクトの結果をこの対話的なページで見ることができる。西部全域の1年の各時期における、モデルから得られた乾燥度の予報を示している。消防士にとって具体的に役に立つ、というものではないが、でも同じモデルに最新のデータを与えれば、今後の山火事シーズンに関する予報ができ、当局が延焼をコントロールし、危険な地域や安全性に関する警報をするための、情報に基づく決定ができるだろう。

研究結果は、Remote Sensing of Environmentに載っている。

画像クレジット: スタンフォード大学

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マイクロソフトがより公平な機械学習モデルを作るためのツールを発表

Microsoft(マイクロソフト)は、米国時間5月19日のデベロッパーカンファレンスBuildで機械学習に力を入れていた。そして同社は多くの新しいツールや機能を発表しただけでなく、AzureクラウドとMicrosoftのオープンソースツールキットの両方で、より信頼性が高く公平なAIシステムの構築に取り組んでいることも強調していた。

そのシステムには、差分プライバシー(differential privacy)のための新しいツールや、モデルが異なるグループでも動くためのシステム、厳しい規制要件を満たしながら企業がデータの最大限に利用できるようにするツールなどが含まれている。

このところデベロッパーは、AIのモデルの構築方法を勉強しなければならない機会がますます増えており、そのシステムは「説明しやすいか」や「差別やプライバシーの規制を満たしているか」などと定期的に自問することになる。そのためには、モデルの結果をより良く解釈することを助けるツールが必要だ。そんなツールの1つが、Microsoftがしばらく前にローンチしたinterpretMLだが、MLのモデルの公平性を評価するツールキットであるFairlearnもある。このFairlearnは現在、オープンソースのツールとして利用できるが、2020年6月にはAzure Machine Learningに組み込まれるという。

差分プライバシーは、プライバシー情報を保護しつつ個人データからインサイトを得られる技術だが、マイクロソフトは新しいオープンソースのツールキットであるWhiteNoiseを発表した。GitHubとAzure Machine Learningの両方で使うことができる。WhiteNoiseは、マイクロソフトとハーバード大学のInstitute for Quantitative Social Science(定量化社会科学研究所)とのパートナーシップの結果だ。

画像クレジット:Akos Stiller/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトはOpenAIと協力してAzure上に世界第5位となるスーパーコンピューターを構築

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間5月19日に、デベロッパー会議であるBuild 2020で汎用AIを開発するスタートアップのOpenAIと提携したことを発表した。提携の中身にはいろいろあるが、その1つはマイクロソフトが10億ドル(約1078億円)を投資して、Azureのインフラストラクチャ上に、世界的にも最速レベルのスーパーコンピューターを構築することだ。マイクロソフトによると、28万5000コアを持つマシンで上位500位のスーパーコンピューターのランキングでも、トップ5に位置するものだという。

マイクロソフトはまだ多くを明らかにしていないが、1万基のGPUを備え、サーバー1台あたり毎秒400ギガビットのネットワーク通信速度を実現するという。これについては、マイクロソフトとOpenAIの言葉を信じるしかない。

現状でスーパーコンピューターランキングのトップ5に入るには、2万3000テラフロップスを超える必要がある。参考までに述べれば、現在第1位のマシンはIBMのPower SystemベースのSummitで、速度は14万8000テラフロップス以上に達している。それとの差はかなり大きい。マイクロソフトは同社のAIイニシアチブについて、4ページに渡るプレスリリースを出したにも関わらず、これまで実際のパフォーマンスの数値は公表していなかった。

「このコンピューターは、Azureに接続されてはいますが、OpenAIの専用リソースとなります。OpenAIはシステムの利用代金を、マイクロソフトと他のサプライヤーに対して支払います。その費用の総額は明らかにできません」と、マイクロソフトの広報担当は私の質問に答えて語った。また、システムは現在稼働中だという。

マイクロソフトによる大規模な投資を受けて以降、OpenAIはクラウドサービスとしてAzureを選択している。このスーパーコンピューターは「OpenAIと協力してOpenAI専用に」開発されたものだ。

OpenAIは、非常に大きなモデルをトレーニングすることで有名になった。それももちろん、これと同じように、1つのプロジェクトの目的なのだろう。

「私たちが、私たちのニーズを理解し、スーパーコンピューターを構成するすべてのコンポーネントのさまざまな限界についてよく知るにつれて、ようやくわかりました。私たちの夢をかなえるようなシステムを設計できるとすれば、それをどのようなものにすべきか、ということを表現できるようになったのです」と、OpenAIのCEOであるSam Altman(サム・アルトマン)氏は語った。「そして、マイクロソフトがそれを実現してくれました」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトが量子計算機プラットフォームを限定プレビュー

米国時間5月19日、Microsoft(マイクロソフト)はパートナー主体の量子コンピューティングプラットフォームであるAzure Quantumの限定プレビューを、量子コンピューティングの利用を開始したいと考えているデベロッパーに対して開始したと発表した。

画像クレジット:Xinhua / Sylvia Lederer via Getty Images / Getty Images

Azure Quantumは、当初Microsoft Ignite 2019で発表された。このAzure QuantumはIonQ、Honeywell、QCI、マイクロソフトのハードウェアと、1QBitなどのサービスを従来からあるAzureクラウドのコンピューティング機能に統合するものだ。今回の限定プレビューへの移行にともなって、マイクロソフトは選定された少数のパートナーと顧客にサービスの提供を開始した。

現段階では、ほとんどのビジネスにとって、まだ量子コンピューティングは文字通り不可欠な機能とはいえない。しかし物事が速く移り変わること、そして数年以内にこの技術が成熟したときにそれがどれほど強力なものになるかを考えると、着手すべき時は今だと多くの専門家が指摘している。特に量子コンピューティングと従来のコンピューティングとの違いを考慮し、デベロッパーが実際に開発するのにかかる時間を考えればなおさらだ。

Microsoft Igniteでは、マイクロソフトはQuantum Development Kit、コンパイラー、シミュレーターもオープンソース化した。

このようなマイクロソフトのアプローチは、他のどんな競合企業とも異なっている。また現状においては、マイクロソフトは他の量子ハードウェア企業と提携する必要がある。その理由は単に同社の量子ハードウェアへの取り組みが、まだ実用可能なレベルに達していないからだ。マイクロソフトは、マシンのコアにある異なる種類の量子ビットの開発に関して、IBMやRigettiなどとはまったく異なるアプローチを取っている。この数カ月で、いくつかのブレークスルーはあったものの、まだ動作可能な量子ビットは実現できていない。もしかすると、公表していないだけで、既に実現しているのかもしれないが。

関連記事:Honeywell says it will soon launch the world’s most powerful quantum computer

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

マイクロソフトが自律システム向け機械教示サービス「Project Bonsai」をプレビュー公開

米国時間5月19日、Microsoft(マイクロソフト)は同社主催のBuild 2020で、新しいMachine Teaching(機械教示)サービス、Project Bonsai(ボンサイ)を発表した。現在パブリックプレビュー版が公開されている。

この名前に聞き覚えがあると思う人は、おそらくマイクロソフトがBonsaiという会社を買収したからだろう。2018年、機械学習に特化していたBonsaiは、シミュレーションツールに複数の機械学習技術を組み合わせることで、産業用制御システムに焦点を当てた汎用ディープ強化学習プラットフォームを作った。

Project Bonsaiもまた企業の自律機械の学習と管理のために同様の狙いを持っていることは容易に想像できるだろう。「Project Bonsaiを使えば、AIの専門知識を持たない特定分野の専門家が、最先端の知識を機械システムに追加できる」とマイクロソフトはリリース文で語っている。

「パブリックプレビュー版のProject Bonsaiは、Bonsai社の技術と、2019年のBuildとIgniteでプライベートプレビューを発表した自律システムをベースに開発されている」。

マイクロソフトによると、Project Bonsaiは顧客の自律システム開発を支援するための同社の長期的展望の第1弾にすぎないという。同社はMachine Learning(機械学習)と比較してMachine Teaching(機械教示)の優位性を強調し、他の手法よりブラックボックス的要素が少なく、期待どおりに動かない時にデベロッパーやエンジニアがデバッグしやすい点を指摘した。

Bonsaiの他にもマイクロソフトは、エンジニアやデベロッパーがリアル世界の制御システム開発の基本を学ぶためのオープンソースのバランシングロボットであるProject Moabを発表した。3本の腕で支えられた台の上にボールをバランスさせるようロボットに教えるというものだ。

ロボットは3Dプリントして作るか、2020年中に売り出させる完成品を買うことができる。MathWorks(マスワークス)が開発したシミュレーションがあるので、デベロッパーは今すぐ試してみることもできる。

「卵を立てるといった従来の方法では容易でなかった分野に今すぐ参入できる」とマイクロソフトのゼネラルマネージャーであるMark Hammond(マーク・ハモンド)氏はいう。「Project Moabの鍵は、エンジニアがいろいろな問題に挑戦し、ツールやシミュレーションモデルの使い方を学べるプラットフォームを提供することだ。ひとたび概念を理解すれば、他のまったく新しい分野に応用できる」

関連記事:Microsoftが強化学習のスタートアップBonsaiを買収して自律型システムの研究開発を推進

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon KendraはAIと機械学習で企業内サイトの検索精度を強化

エンタープライズサーチは常に難題だった。目標は社内用のGoogle検索だ。キーワードを入力すると結果の上位に、常に完璧な結果を得たい。でもローカルな検索ではコンテンツが少ないので、満足な結果を得ることが難しかった。

Google(グーグル)にはWorld Wide Webという大きな宇宙があるが、エンタープライズが得る検索結果はもっと小さい。対象が少なければ理想的な結果を得やすいと思いがちだが、事実はその逆だ。データは、多ければ多いほど目的の情報を得やすい。

Amazon(アマゾン)は、エンタープライズサーチでもウェブのような完全な結果が得られるために、機械学習の導入による検索技術のアップデートを目指している。

米国時間5月11日に同社が一般公開したAmazon Kendraは、同社が昨年のAWS re:Inventで発表したクラウドベースのエンタープライズサーチプロダクトだ。自然言語処理の機能があるのでユーザーは単純に質問を入力でき、すると検索エンジンに接続された複数のリポジトリから正確な答えを見つける。

同社はリリース声明で「Amazon Kendraはエンタープライズサーチをゼロから作り直して、ユーザーは正しいキーワードだけでなく本当の質問を入力して、複数のデータサイロ全域を検索できる。そして内部では機械学習のモデルを利用してドキュメントの内容とそれらの間の関係を理解し、リンクのランダムなリストではなくユーザーが求める正確な答を提供する」と説明している。

AWSはこの検索エンジンを、IT、ヘルスケア、保険など主要な業種分野別にチューンアップしている。年内に対応を予定している業種分野は、エネルギー、工業、金融サービス、法務、メディア、エンターテインメント、旅行とホスピタリティ、人事、ニュース、通信、鉱業、食品と飲料、そして自動車だ。

ということは、この検索エンジンは各専門分野の特殊な用語も理解するので、導入したらその日からすぐに使える。また、会社で作るアプリケーションやウェブサイトにKendraを組み込んでもいい。現在では検索入力に必須ともいえる、入力補助機能(先行入力機能)もある。

エンタープライズサーチの歴史は長いが、今回AIと機械学習が加わったことによって、ついにその最終解が得られたと言えるかもしれない。

関連記事:AWS announces new enterprise search tool powered by machine learning(AWSがエンタープライズサーチに機械学習を導入、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NVIDIAがネットワークOSのCumulus Networks買収

NVIDIA(エヌビディア)は米国時間5月4日、企業のデータセンターネットワーキングスタック最適化のサポートを専門とし、オープンソースをベースに開発を進めているCumulus Networks(カミュラス・ネットワークス)の買収計画を発表した。Cumulusはネットワークスイッチに自社のLinuxディストリビューションを、そしてネットワークオペレーションを管理するツールを提供している。Cumulus Expressでは自前のデータセンタースイッチという形でハードウェアソリューションも提供している。

両社とも、買収価格については明らかにしていない。しかしCumulusが2010年の創業以来、1億3400万ドル(約143億円)調達してきたことを考えると、それなりの額であることは想像に難くない。

マウンテンビューに拠点を置くCumulusはこれより前に、NVIDIAが69億ドル(約7358億円)で買収したMellanox(メラノックス)と提携を結んでいた。Mellanox買収は数日前にクローズしたばかりだ。MellanoxのAmit Katz(アミット・カッツ)氏は本日の発表文で、両社は2013年に知り合い、2016年に正式に提携を結んだと書いている。CumulusがOpenStackエコシステムにおいて先駆けた存在であったことは記すに値するだろう。

CumulusとMellanoxをしっかりと手元に置くことで、NVIDIAは実質的に企業やクラウドプロバイダーが自社のデータセンターに高パフォーマンスのコンピューティングやAIワークロードを構築するのをサポートするのに必要なすべてのツールを手にする。ほとんどの人がNVIDIAと聞くとグラフィックスカードを思い浮かべるだろうが、同社はかなりの規模のデータセンターグループを擁し、直近の四半期の売上高は前年同期比43%増の10億ドル(約1066億円)だった。参考までに、NVIDIAのゲーミング部門の売上高は15億ドル(約1600億円)に満たない。

「Cumulusとともに、NVIDIAは顧客にすばらしいパフォーマンスと価値を提供しつつ、チップやシステムからCumulus NetQのような分析を含むソフトウェアに至るまで、全ネットワーキングスタックを刷新し、最適化できる」とカッツ氏は書いている。「このオープンネットワーキングプラットフォームは拡張可能で、企業やクラウドスケールデータセンターがオペレーションを完全にコントロールできるようにする」。

画像クレジット: Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

MITが筋肉でロボットをコントロールするシステムを開発、ドローンをジェスチャーで正確に操縦

MITの計算機科学と人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Lab、CSAIL)が、今手がけている筋肉の信号でデバイスを制御するプロジェクトをビデオで披露した。彼らの最新の成果ではドローンを完全かつ細かく制御でき、手と腕のジェスチャーだけを使って複数の輪を通り抜けることができた。これは、デバイスをバイオフィードバックでコントロールし、別途ジェスチャー認識のための光学系などを必要としないだけでなく、細かい明確な制御ができるので、遠隔制御の応用領域を大きく広げることができる。

この研究グループも、さまざまな利用分野を展望している。たとえば、複数のロボットのコラボレーションの産業分野への応用だ。もう一つの領域がドローンの操縦で、現実世界での用途に大きな利点をもたらす。例えば、パイロットがVRで大きな視界を獲得できれば、ドローンの複数の編隊をコントロールすることも可能だろう。これでたとえば、大きな建設現場の測量を一人でできたりするだろう。あるいは人が行くのが困難なオフショアのプラットホームなどで、遠隔の機器装置を検査できる。

ロボットと人間のシームレスな対話は、ロボット工学の究極の目標の1つだ。人間は自分の動作や環境を効果的に扱うことを直観的にできるから、ロボットを制御したりロボットと一緒に仕事をするときもそうありたいと願う。人間が環境と対話するときは、思考と行為が基本的には並列で生じているが、機械や遠隔のツールが相手のときはその滑らかさと直観性が翻訳過程で失われ、ロボットの学習過程や訓練は急峻な学習曲線になる。

人間と一緒に安全にコラボレーションで仕事ができるロボットの研究開発は、ロボティクスでなくコボティクス(Cobotics、協働ロボット)と呼ばれる。これは、人とロボットの対話をもっと自然で直観的に、そして究極的には安全にするための研究開発の進歩から生まれる。この分野でのMITの研究は、大規模な仕事でも訓練やプログラミングが少なくてすむ未来の工業用ロボットに結実するだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ソースコードをオートコンプリートするAIプラットフォームCodotaが13億円を調達

スマートフォンとその小さなキーボードのおかげで、今や私たちが文章を書く際には、オートコンプリートがほぼ常識になっている。言いたいことをキーボードが提案してくれるので、作業が少しだけ楽になって、文章を書いて(少なくとも親指が太い私の場合)言葉を修正することで食われる貴重な時間を節約してくれる。だが、人工知能とセマンティック(意味論)分析がこうした形で利用されているのは、電子メールやメッセージを書くときだけではない。本日、コンピューター・プログラムのコーディングの世界にこのコンセプトを採り入れたプラットフォームを開発したスタートアップが、事業拡大のための投資を獲得したと発表した。

Codota(コドタ)は、作業の時間短縮(「生産性が25パーセントまで向上」と同社は主張)と文法と「スペル」の修正を目的に、記述中のコードを行ごとにオートコンプリートしてくれるAIツールを開発したイスラエルのスタートアップだが、e.venturesから1200万ドル(約13億万円)のシリーズA投資を獲得した。このラウンドには、前回の投資会社Khosla VenturesのほかTPY CapitalとHetz Venturesが新規に加わった。同社はこれまでに合計で1600万ドル(約17億万円)を調達したが、企業評価は公表していない。

この資金調達は2018年末(発表は3月になってから)で、Codotaが自社よりも大きな競合相手であるカナダのTabNine買収した直後に確定した。買収の目的は対応するプログラミング言語を増やすためだ。現在のところPython、JavaScript、Java、C、HTMなどを含むすべての主要言語に対応していると同社は話している。またVSCode、Eclipse、IntelliJといった主要な統合開発環境にも横断的に対応しているという。

この資金は、現在の範囲からさらにリーチを広げ、より多くの顧客を獲得するために使われる。今日、Codotaのツールをすでに利用している顧客はそうそうたる顔ぶれだ。Google、AmazonをはじめNetflix、Alibaba、Airbnb、Atlassianなどなど数多くの企業の開発者が顧客リストには含まれている。2019年は顧客ベースが1000パーセント以上に拡大し、月に100万人の開発者が利用しているという。

今回の資金調達のニュースは、Codotaのセマンティック技術とTabNineのテキスト技術を融合させたJavaScript用オートコンプリートの新バージョンをCodotaがローンチした時期と一致していた。

上に示した顧客リストの筆頭であるGoogleとAmazonは特に驚くべき存在だが、Codotaは狙いが定まっていて、現在の行動は正しいようだと彼らも明言している。この2つの企業は、それ自身が巨大AI企業であり、どちらも開発者向けに非常に強力なツールセットを提供している。特にGoogleは、Gmailのために同社が開発したツール群によってオートコンプリートの代名詞ともなっている。

2015年創立のCodotaが注目を集める理由は、共同創設者でCTOのEran Yahav(エラン・ヤハブ)氏によると、他の言語では進歩している意味論の専門家にとってすら、コーディングはそれまで難物だったからだという。

「数年前まで、それは実現不可能なものでした」と彼は話す。さらに、コーディングのオートコンプリートを可能にしたのは、次の4つの技術的な流れが合致したためだという。アルゴリズムに供給できる高品質なオープンソースのソースコードが入手可能になったこと。セマンティック分析が、洞察の抽出を大規模にできるまでに発達したこと。機械学習が発達して機械学習のコストが本質的に下がったこと。すべてをクラウドで処理できる計算資源が、誰でも、どこにいても利用できるようになったことだ。オープンソースが非常に活況となり、その他のすべてのものが一緒に付いてきた。他にも同じ研究をしている企業はあるが、Codotaはこの理想的な嵐をつかんだのだ。

「成功の度合いに違いはあれ、他社でもやっています」ともう1人の共同創設者でCEOのDror Weiss(ドロール・ワイス)氏はいう。「私は推測していますし、実際に知ってもいますが、他の企業も同じことをしています」。その他の企業とはKiteUbisoft、Mozillaなど数多い。

Codotaが構築してきたものの中でも、今、特にタイムリーな一面により正確なコーディング支援を開発者にもたらすと同時に、特定の環境や職場でのベストプラクティスは何かを「学習」する能力がある(個人向けコースと企業向けコースの両方があるが、この機能が提供されるのは企業コースだ)。あらゆる状況で便利に機能するが、とりわけ今の、開発者が家で1人で作業する場面では、あたかも同じ場所で仕事をしているかのように、即座に手助けをしてくれる。

非常に多くのAIが自律システムの考え方に傾いているが、ワイス氏は短期的にもましてや長期的にも、それは目標としていないと強調する。

「開発者に置き換わるものを作れるとは思いませんし、作りたいとも思いません。私たちの目標は、ありふれた繰り返しの側面を取り出して、そこを肩代わりすることです」と彼は言う。その点でいえば、バックオフィス機能におけるロボティック・プロセス・オートメーションと変わらない。「文法やベストプラクティスを覚えることには、それほど高い価値はありません。Smart Composeを使えば、(カスタマーサービスの)例文の提案はしてくれるでしょうが、あなたの心を読んで、あなたの言いたいことを察してまではくれません。なので、あなた自身に置き換わったり、あなたの意図を汲んで応答するといった方向に進む可能性はとても低いのです。そんなことは、私たちは長期目標にすらしていません」。

2019年にe.venturesは、アーリーステージの投資のための4億ドル(約430億円)のファンドを発表した。今回の投資はそこからのもののようだ。このラウンドにともない、e.venturesのジェネラルパートナーTom Gieselman(トム・ギーゼルマン)氏がCodotaの役員に加わった。

「私は開発者用ツールの市場を20年間見てきましたが、Codotaはコミュニティー、製品、テクノロジーの面において独占的なプレイヤーの地位を確立したと信じています」と彼は声明の中で述べている。「ソフトウエア開発を変革して、コーディングを楽にして、企業内のチームを構成する個人開発者の効率を高めるというドロールとエランの使命を支援できることを、私は誇りに思います」。

画像クレジット:Cavan Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

カスタマーエクスペリエンス管理のMedalliaが音声テキスト変換のVociを買収

現在の市場ではM&Aのペースはすっかり落ちているが、タイミングと金額が合えば、M&Aのための資金はまだある。米国時間4月22日、Medalliaが音声のテキスト変換スタートアップのVoci Technologiesを5900万ドル(約63億3000万円)の現金で買収すると発表した。Medalliaは、オンラインのレビューやソーシャルメディアなどのソースを調査し、企業の良い面と悪い面、改善すべき箇所を提案する、カスタマーエクスペリエンスのプラットフォームだ。

MedalliaはVociのAIテクノロジーを統合して、音声のやりとり、例えばコールセンターにかかってきた通話などを、同社のプラットフォームで分析するデータとして利用する計画だ。ソーシャルメディアやメッセージングが多く活用され、そして今は人々がオンラインへと大幅にシフトしているが、そのような状況でも音声は依然として企業と顧客とのやりとりの大きな部分を担っている。そのため、Medalliaにとって音声への取り組みは重要だ。

Medalliaの社長兼CEOのLeslie Stretch(レスリー・ストレッチ)氏は声明で「Vociでライブと録音の通話を100%文字に起こせば、迅速に分析して顧客満足度を判断でき、Medallia Experience Cloud(同社のSaaSプラットフォーム)にとって有力な材料になる。同時に、Vociで毎回の通話が終わった瞬間に分析し、コールセンター運営のあらゆる側面を確実に最適化できる。バーチャルやリモートでコンタクトセンターを運営しようとする際には特に重要だ」と述べた。

現在、市場には音声をテキストに変換する製品は多数あるが、Vociの特徴は感情、性別、意見、声による生体認証など、内容以外の多くの詳細を認識できるということだ。データを詳しく分析する際に、個人を識別する情報を取り除いてプライバシーを確実に保護することもできる。

Vociはカーネギーメロン大学からスピンアウトしてスタートし、Grotech Ventures、Harbert Growth Parnters、そして同大学などの投資家から合計で約1800万ドル(約19億3000万円)を調達した。3人の創業者はいずれも同大学で博士号を取得している。最終評価額はシリーズBの調達中だった2018年3月の2800万ドル(約30億円)で、今回の買収額は最終評価額の2倍をやや上回る。

Vociはこれまで急成長してきたようだ。同社はおよそ20億分間の音声を処理し、1月にはその勢いを示す数字として、直前の四半期にコンタクトセンターの業務が増加したことに伴い契約が63%増えたと発表していた。

コンタクトセンターだけでなく、金融、ヘルスケア、保険などの分野でもアウトソーシングを請け負っているとのことだが、取引先の社名は明らかにされていない。このところ新型コロナウイルスの影響で移動が制限され、人が実際に接触する機会が減っているため、リモートでサービスを提供する製品を手がける企業や組織はどこもそうだが、Vociでも需要が高まっている。

VociのCEOのMike Coney(マイク・コニー)氏は声明で「エクスペリエンス管理のリーディングカンパニーであるMedalliaの戦力となれることを当社全体で喜んでいる。Vociのパワフルな音声テキスト変換機能がMedallia Experience Cloudに組み込まれるのはすばらしいことだ。コンタクトセンターのあらゆる事柄がビデオやアンケートなどの重要なフィードバックと統合されれば、業界を大きく変える」と述べた。

Vociがここ数カ月で資金を調達しようとしていたのか、あるいはMedalliaから積極的にアプローチしたのかは明らかになっていない。しかし一般論としていうと、M&Aはテック業界で重要性を増している。現在、スタートアップの資金調達は難しくなってきた。有望な企業とテクノロジーが完全に倒れてしまうことを避けるためのひとつの方法として、最後の神頼み的なM&Aが増えるかどうかは大きな問題だ。

Sequoiaなどから資金を調達した後、2019年7月に上場したMedalliaは、市場の多くの企業と同様にここ数週間で株価が下落している。現在の時価総額はおよそ28億ドル(約3003億円)で、公開前の最終評価額と比べて4億ドル(約429億円)の成長に止まっている。

Medalliaによれば、買収は2020年5月に完了する予定だ。

画像クレジット:dotshock / Shutterstock

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(翻訳:Kaori Koyama)

Linux VMインフラのパフォーマンスを最適化するGranulateが13億円相当を調達

最近の企業は経費節減にますます熱心なため、その波に乗ってイスラエルのアーリーステージスタートアップGranulateは、インフラストラクチャの使い方を最適化する巧妙な方法を提案しようとしている。同社は米国時間4月22日にシリーズAで1200万ドル(約12億9000万円)を調達した。

このラウンドはInsight Partnersがリードし、TLV PartnersとHetz Venturesが参加した。投資に伴う合意により、Insight PartnersのマネージングディレクターのLonne Jaffe(ロン・ジャフェ)氏がGranulateの取締役会に加わる。Granulateによると、これで同社の調達総額は1560万ドル(約16億8000万円)になる。

同社は、オンプレミスでもクラウドでもインフラストラクチャのコストを20%から最大80%カットできると主張している。現在、世界の経済が大波乱に陥っているため、かなり意義のある節約率となる。

Granulateの共同創業者でCEOのAsaf Ezra(アサフ・エズラ)氏によると、同社はLinux仮想マシンについて徹底的な研究を行なった結果、その効率化技術に到達した。6カ月あまりの実験により、ボトルネックを取り除き、Linuxのカーネルが効率を大幅にアップするためにやっていることの利用の仕方を学んだ。

Linuxはリソースの公平性を目指して最適化をしていることが判明しているが、Granulateの創業者たちはその発想を逆転して、公平性ではなく反復性に着目した。多くのファンクションに公平にリソースを割り当てるのではなく、1つのファンクションに集中させる。

「実際のプロダクションシステムでは、マシンの中に大量の反復性がある。ユーザーは、1つのことをしっかりやって欲しいと考えている」と彼は語る。

またエズラ氏は、VMである必要はないと指摘する。コンテナやKubernetesのポッドで十分だという。ここで忘れてならないのは、Linuxに固有のインタラクティビティや公平性はもはや気にしないということであり、むしろ重要なのは、マシンがある特定のものに向けて最適化されていることだ。

「そのプロダクションシステムのユーティリティファンクションが何かを教えていただきたい。すると我々のエージェントが、そのユーティリティファンクションを用いるすべての意思決定を最適化する。つまり、そういう利益を得るために何一つコードを書き換える必要がない」とエズラ氏は説明する。

しかも、そのソリューションは機械学習を利用して、さまざまなユーティリティファンクションがどのように機能しているかを理解し、長期的にもっとパフォーマンスを向上するためのさらなる最適化を提供する。

InsightのJaffe(ジャフィ)氏は、そんなソリューションのポテンシャルと適時性をよく認識している。

「パフォーマンスの高いデジタル体験とインフラストラクチャの低いコストの両立が今ほど厳しく求められている時代はない。Granulateの機械学習を利用する高度に差別化されたプロダクトは、構成管理やクラウドリソースの購入などのレベルに依存していない」とJ声明で述べている。

エズラ氏も、このようなプロダクトが特に今、役に立つことを理解している。「我々は現在、ユニークな立場にいる。我々のプロダクトは現在、人を解雇せずにコストを節約することによって、沈滞期における企業の生存を助ける」と彼はいう。

同社は2018年に創業され、現在は20名の社員がいる。年内に倍増する予定だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa