高3・既卒生対象のオンライン模試「駿台atama+共通テスト模試」申込数が4万人を突破

atama plus駿河台学園は7月22日、全国の高3・既卒生対象のオンライン模試「駿台atama+共通テスト模試」において、申込数が4万人を突破したと発表した。高校生・既卒生向けオンライン模試では国内最大規模という。

駿台atama+共通テスト模試は、生徒が会場に行かなくても自宅で安心して受験できるオンライン模試。2020年7月よりatama plusと駿台が開始したもので、オンラインの特性を活かし、きめ細かな弱点分析とフィードバックを試験終了直後から受けられる。模試を実力判定・志望校判定のツールで終わらせず、より効率よく、最短で弱点を克服し力を伸ばす学びのサイクルにつなげるという。

第1回の「駿台atama+共通テスト模試」は、2020年7月27日〜8月9日に実施予定。2020年7月18日に第1回申込が終了し、4万人を超える申込があった。

会場で実施した「駿台共通テスト模試」の申込数は3万3578人に対し、オンラインで実施する「駿台atama+共通テスト模試」の申込数は、約1.3倍の4万1819人となった。新型コロナウイルス感染を避けるためにオンライン受験を選択する大学受験生が多かったこと、会場での受験において定員を制限したことが影響しているという。

atama plus 駿河台学園 駿台atama+共通テスト模試 オンライン模試

また、駿台共通テスト模試と駿台atama+共通テスト模試を合わせた申込数は7万5397人で、前年比の約1.5倍となった。受験方法にオンライン受験が加わったことで、全体の申込数を伸ばす結果となった。図中の「公開会場」は、一般申込の受験生が駿台が用意した会場で受験する方法で、「高校会場」は高校などで団体申込をした受験生が、各学校を模試会場として受験する方法。

さらに、会場で実施した「駿台共通テスト模試」と比較して、オンラインで実施する「駿台atama+共通テスト模試」は、地方からの申込割合が約1.3倍に増加した。また、八丈島などの離島や海外からの申込も含まれていた。

模試のオンライン化により、これまで受験が難しかった地域の生徒も受験できるようになり、新たな学習機会の提供につながったとしている。

atama plus 駿河台学園 駿台atama+共通テスト模試 オンライン模試

今後atama plusと駿台は、共通テスト対策以外の模試のオンライン化にも取り組む予定。テクノロジーを活用し、オンラインの良さを活かした新しい模試を生徒に届けていく。

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atama plusは、駿台予備校などの大学受験対策予備校を運営する駿河台学園と共同で、高校3年生と浪人生向けにオンライン模試「駿台atama+共通テスト模試」を開催することを明らかにした。従来の「大学入試センター試験」に代わって2021年度から新しく導入される「大学入学共通テスト」対策のオンライン模試で、7月27日〜8月9日に実施を予定で期間中であればいつでも受験できる。今回は無料提供となる。

新型コロナウイルスの影響を受け、駿台予備校では7月中旬ごろまで校舎での対面授業を全面中止し、全生徒にatama+ mのウェブ版を利用したオンライン授業を提供している。この流れを受けて駿台atama+共通テスト模試も実施され、高校3年生と浪人生が3密を避けつつ新方式の大学入学共通テストに慣れてもらうこと第1の目的としている。なお、模試の内容は駿台予備校の講師陣が作問している。

駿台atama+共通テスト模試では、受験直後にオンラインで正誤結果を受け取れるの特徴。各問題のミスの傾向をもとに今後学習するべき単元を把握することで、学習の振り返りや今後の学習に生かせるシステムも利用可能になる予定だ。atama plusのAI学習システム「atama+」を利用している場合は、この模試の結果を基に弱点単元を目標に設定すると、該当単元を重点的に習得できるよう自動的に適した設問がatama+から提示される。

なお今回の取り組みは一過性のものではなく、今後駿台予備校は「駿台共通テスト模試」のすべてを、既存の会場実施方式・高等学校実施方式に加えて、オンライン版公開模試である駿台atama+共通テスト模試を併用する方式に切り替える予定だ。

「駿台atama+共通テスト模試」の実施概要は以下のとおり。

  • 名称:第1回 駿台atama+模試
  • 実施期間:2020年7月27日〜8月9日
  • 受験形式:選択式、オンライン実施
  • 料金:無料
  • 対象:高3年生・既卒生(浪人生)
  • 教科:(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学)、地歴公民(世界史B、日本史B、地理B、現代社会、倫理、「政治・経済」、「倫理、政治・経済」)
  • 申込方法:6月1日以降に駿台I-SUM Clubから申し込み
  • 模試内容詳細:atama plus模試ページ駿台模試ウェブページ

atama plusが開発したAI学習システムであるatama+は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービス。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。

生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。現在、駿台予備校のほか城南予備校、Z会(栄光の個別ビザビ)、ティエラコム(能力開発センター)などにも導入されている。現在提供している科目は、数学、英文法・語法、物理、化学の4科目。数学は中学、高校生向け、数学以外の科目は高校生向けとなっている。

駿台予備校が1学期の対面授業を全面中止に、全生徒にatama+のAIオンライン授業をリモート提供へ

新型コロナウイルス蔓延による外出自粛要請の真っ只中でも、子供が学べる環境は日々どんどん進化している。子供の就学後としては、多くの家庭が体験したことのない夏休みより長期の休み。将来のために子供に何を学ばせるのか、いま重要な時期かもしれない。

首都圏を拠点に中学・高校生向けの学習塾を全国展開している駿台予備校(学校法人駿河台学園)は4月30日、1学期(7月11日まで)の同校校舎での対面授業をすべて取りやめることを発表した。新型コロナウイルス感染拡大の⻑期化を見越した決断だ。

もちろん同予備校は、新型コロナウイルス禍でも生徒の学習の機会をきっちり確保する。対面授業の代替として大型連休明けの5月7日から、atama plusが開発したAI学習システム「atama+」のオンライン版「atama+ Web版」を全講師と全生徒に提供し、1学期の期間中は在宅での授業を続行するのだ。なおatama+ Web版で学べるのは、英語、数学、物理、化学の4教科となる。

atama+ Web版は、新型コロナウイルス蔓延による政府や自治体の外出自粛要請を受けて、atama plusが急遽開発に着手し、2月25日にリリースしたインターネット版のatama+。従来は、学習塾内の専用タブレットでしか使えなかったatama+を、生徒の自宅にあるPCやスマートフォン、タブレット端末などで利用可能にしたほか、講師が利用するコーチングアプリも校舎外で使えるようにした。4月24日時点ではatama+を導入する全国の 塾・予備校のおよそ7割にあたる1300教室以上で、atama+Web版を使ったオンライン授業が実施されている。

実は駿台予備校は2月28日、2020年4月からこれまでの集団授業をすべて廃止し、全校舎にatama+を全面導入することを発表していた。当初は、生徒を教室に集めて生徒各自に配布したタブレット端末をベースに授業を進め、講師がタブレット上での各生徒の学習の進捗度合いを確認しながら個別指導するという講義スタイルとなるはずだった。

atama+のAI教材は、各生徒の学習理解度をAIが瞬時に判定し、学習や知識が不足している分野につながる基礎的な問題を個別に自動生成することで、生徒のつまずきを解消してくれるのが特徴だ。

具体的には、数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて身体で覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置く。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成するという仕組みだ。

講師側はコーチ専用アプリ「atama+ COACH」から全生徒の学習状態を一元把握できる。具体的には各生徒が、いま解いている問題、もうすぐ解き終わる問題、解答に時間がかかってる問題などがわかり、各生徒の進捗に応じたきめ細かい学習指導が行えるわけだ。

なお、atama+ Web版での講師から生徒への個別指導には電話を利用する。

ちなみにatama plusが調査したオンライン授業における生徒の学習動向を見ると、通常の対面授業とほぼ変わらないか、一部はオンライン授業のほうが良好な進捗を見せているケースもあった。同社によると、生徒のモチベーションは講師のサポートがある限り、維持される傾向が高いとのこと。またモチベーションの高い生徒は、授業外もatama plusで自主学習しているそうだ。

受講者数については、オンライン化へ移行で塾を辞めるという状況は発生しておらず、全国休校要請前と比較して1日あたりの利用ユーザー数はむしろ約10倍に増えているそうだ。

atama plusは、2017年4月に設立されたスタートアップ。代表取締役を務める稲田大輔氏が、大学時代の友人だった中下真氏(同社取締役)と川原尊徳氏(同社取締役)を誘って起業したEdTech企業だ。稲田氏は東京大学工学部卒業・東京大学大学院情報理工学系研究科修了後に三井物産に入社。社内で教育関連の事業を立ち上げたあと、ブラジルでベネッセとの共同事業を進め、ベネッセ・ブラジルの執行役員や海外EdTech投資責任者などを歴任したあと、atama plusの創業に至った。

稲田氏はブラジルの教育の現場を目の当たりにし、テクノロジーの活用において日本が大幅に遅れていることを痛感。日本では、義務教育や高校で学ぶ科目や学習内容に変化はあるものの「学校での授業形態は150年ぐらい前からほとんど変わっておらず、教室の前に立つ教師の話と、黒板に書かれた情報を基にクラス全体で学習を進めていくというスタイルが長らく続いている」ことを問題視していた。

atama plusはこういった旧態依然の学びの環境を学習塾と協力して進化・効率化させ、余った時間を「社会でいきる力」の習得に当てるというミッションを掲げ事業を運営している。

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1961年設立の老舗・城南予備校が従来の集団授業を終了、atama+によるAI個別授業に全面刷新

atama plusは2月28日、東京・神奈川を中心に展開する城南予備校の全校舎に同社のAI教材「atama+」を全面導入することを発表した。

写真に向かって左から、城南進学研究社の下村代表取締役社長兼CEO、atama plusの稲田大輔CEO(提供:atama plus)

atama+は、iPadなどのタブレット端末を使ってAIによる生徒の個別指導を可能にする学習環境。城南予備校は、1961年設立の城南進学研究社が運営する集団授業型の大学予備校だが、長年培ってきた学習カリキュラムをすべて廃止し、3月末から全校舎でatama+による個別授業を導入する。

城南予備校 DUO での授業風景(提供:atama plus)

城南進学研究社は、プロ講師による個別指導とA教材を用いた個別学習を提供する「城南予備校DUO」を2018年12月より開校してatama +の効果を検証してきた。その結果、中学生、高校生の成績向上や生徒・保護者の満足度が高かったことから、全面移行することに決めたという。

さらに城南進学研究社では、個別指導塾「城南コベッツ」にもatama+を導入し、全国150教室の一部の講座に取り入れる。こちらも2019年6月にatama+を試験導入した結果、生徒の成績向上が確認できたことから本格導入に至ったという。

具体的な事例としては、高1の学年末テストと高2の1学期中間テストでatama+導入の効果を確かめたところ、高1の学年末テストで、数I・IIが43点、数A・Bが51点だった生徒が、高2の5~6月の2カ月間でatama+で27時間学習したところ、高2の1学期中間テストで数I・IIが74点と31点アップ、数A・Bと82点と31点アップしたという。別の生徒では、中 3の学年末テストと高1の1学期中間テストでの点数比較で、数学が33点から68点と35点アップしたそうだ。こちらの生徒は、atama+での学習時間は高1の5~6月の2カ月間で29時間。

数学はさまざまな数式を理解して知識を積み重ねることで成績が伸びる教科だ。atama+では、iPad上で生徒が問題を解く時間など記録し、生徒それぞれが「どの問題の何を理解できていないかを」をAIが分析。その分析結果を基に、弱点を克服するための練習問題を生徒ごとに生成するという特徴を持つ。

また城南進学研究社では、新型コロナウイルス対策としてatama plusが開発したatama+のウェブ版も導入しており、生徒が予備校に通わずに自宅で学習できる環境も整えている。

atama+は2月13日に、兵庫県を拠点とするティエラコムが運営する学習塾の能力開発センターへの導入が決まったほか、Z会グループの栄光の個別ビザビ、駿台予備校などにも導入されている。

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新型コロナの影響を受けatama plusがAI学習の自宅受講を可能にするウェブ版を臨時配布へ

atama plusは2月25日、同社が開発する学習塾向けのAI学習教材「atama+」のウェブ版を臨時公開した。atama+を導入している全国の学習塾に順次無償配布している。

atama+は通常、学習塾でiPadなどのタブレット端末を使って塾講師と一緒に個別授業を進めるスタイルだが、新型コロナウイルスの影響により、自宅でも学習可能なウェブ版の公開に踏み切った。不要不急の外出を控えるという新たな政府見解に対応したかたちだ。

若年層は重症化しにくいという調査もあるが、20代の重体患者も出ている。仮に新型コロナウイルスに罹患して軽症で済んだとしても、罹患に気づかずに多くの人のウイルスをまき散らしてしまうスーパースプレッダーになる可能もある。学習塾のように狭いスペースで多人数が長時間滞在する場所は感染のリスクも高い。

生徒がウェブ版のatama plusを使っていても、塾講師はコーチングアプリの「atama+ COACH」により、生徒の自宅学習の状況をリアルタイムに把握でき、遠隔でコーチングが可能。塾で受講するのと変わらない環境を構築できる。

AI学習環境「atama+」を学習塾「能力開発センター」の兵庫や北陸など全77教室が導入、空いた時間でコミュ力強化

独自開発のAIとタブレットを利用した効率的な学習環境の提供を目指すatama plusは2月13日、兵庫県を拠点とするティエラコムとの提携を発表した。ティエラコムは、兵庫県下の明石市や加古川市、姫路市ほか、北陸の石川県、富山県、福井県、九州の長崎県、福岡県、熊本県、そのほか岐阜県と山口県で「能力開発センター」をはじめ、さまざな学習塾や経営している企業。今回の提携で、能力開発センターの全77教室のすべてにatama plusのAI学習環境「atama+」が導入される。

atama+を使った学習の様子

atama+は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するのが特徴。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて身体で覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。

対応教科は、高校生向けが数学、英語、物理、化学、中学生向けが数字と英語。現在大手学習塾の3割程度、約500教室以上への導入が進んでおり、atama+導入後の平均学習時間(習得までの時間)は、数Iで16時間、数Aで15時間。ちなみに、学習指導要綱で規定されている学校での授業時間は2科目合計で146時間だ。

多人数が同時の受ける学校の授業では、生徒それぞれの理解度や習熟度がまちまちでどうしても進捗に時間がかかってしまうが、atama+では自分のウィークポイントをAIが解析し、自分専用の問題が自動生成されるので、苦手な問題を短時間で克服できるのが強みだ。また、教える側の講師にはコーチ向けアプリ「atama+COACH」を用意しており、学習時間、習熟度、進捗状況などを確認しながら生徒一人ひとりにあった学習指導を進められる。AIが塾講師の仕事を奪うわけでなく、講師にもより効率的な働き方を提供するわけだ。

ティラコムでは、2017年の冬季講習からトライアルとしてatama+の体験受講をスタート。2018年のセンター試験の直前にatama+で数学I・Aを20時間学習した高校3年生83名の平均点数が、37.3点から51.7点にアップし、生徒へのアンケートでも9割以上が高評価だったことから本格導入を決めた。

能開個別AIホロンでのatama+の授業風景

2019年には、個別指導「能開個別ホロン」の全教室にatama+を導入し、ブランドを「能開個別AIホロン」に変更。そして2020年3月からは能力開発センターの全教室にatama+を導入する。これに伴い、ティラコムが運営する個別指導と集団指導の学習塾の全77教室のブランドを「能力開発センター」に統合し、「集団コースplus AI」、「個別コースwith AI」の名称で展開する。atama+の全教室導入によって、ティエラコムが経営する学習塾でatama+を利用する中学生、高校生は前年比約4倍に増加するとのこと。

ディスカッション形式の講座風景

さらに両社ではatama+の導入で各教科の習得時間が短縮されることによって生まれる時間に、課題解決能力を養うための講座「新国語」を開設する。新国語では、社会のさまざまな課題を中学生・高校生を交えたグループでディスカッション、多様な考えをまとめてプレゼンテーションする時間を設ける。さらに、その内容を各自に小論文にまとめてもらい、添削指導する体制も整える。

atama plus代表取締役の稲田大輔氏

atama plus代表取締役の稲田大輔氏は以前のTechCrunchの取材で、「日本では、必修科目を習得するための学習時間が海外に比べて非常に長く、自己表現力やコミュニケーション能力、グループで協力して作業するといった『社会でいきる力』の教育・習得に時間が取れていない」と語っていた。今回の能力開発センターにおける新国語の新設は、atama plusが目指す日本の学習環境の改革に一歩近づいたと言えるのではないか。

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AIによる中高生の学習効率化を目指すatama plusは11月12日、Z会グループ(増進会ホールディングス)と業務提携し、Z会グループの学習塾運営会社である栄光の「栄光の個別ビザ」に、atama plusのAI教材「atama+」を導入することを発表した。

栄光は全国に738教室を持ち、約6万名の生徒が通う大手学習塾。栄光の個別ビザビはその中でも、マンツーマンで授業を受けられる個別指導を専門とする塾だ。この栄光の個別ビザビに、atama+の活用を前提とした教室を新規開校するほか、既存133教室にもatama+が導入される。

Z会グループはこれまでも、グループ傘下のZ会エデュース運営の「Z会東大個別指導教室プレアデス」にatama+をいち早く実証・導入するなど、atama plusの創業当初より関係が深く、実際にatama+の導入によって生徒の成績向上や満足度が向上したことから、今回の大規模導入につながったそうだ。

atama+のAI教材は、高校生向けの数学、英語、物理、化学、中学生向けの数学、英語に対応しており、これまでで大手塾の2割強、500教室以上で導入実績がある。具体的な効率化データとしては、数Iは16時間、数Aは15時間で習得できるとのこと。ちなみに学習指導要綱で規定されている学校の授業時間は計146時間だ。

atama+は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するのが特徴。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて身体で覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。

atama plus代表取締役の稲田大輔氏は、ベネッセ・ブラジルの執行役員や海外EdTech投資責任者などを歴任後に同社を創業した人物。TechCrunchの以前の取材で、「日本では、必修科目を習得するための学習時間が海外に比べて非常に長く、自己表現力やコミュニケーション能力、グループで協力して作業するといった『社会でいきる力』の教育・習得に時間が取れていない」と語っていた。また「英語を含む基礎学力は非常に大事で、日本の生徒が受験に向けて勉強をすることは間違いない」という日本の状況を理解したうえで「必須科目を効率的に最短で習得できる方法を開発して学習時間を減らす」ことを目指し、atama+の開発に取り組んでいる。

関連記事:AIによって習熟期間を超短縮、日本の受験環境を一変させるatama plusの想いと狙い

なお同社は9月に駿河台学園とも業務提携しており、2020年4月より駿河台学園が運営する学習塾にatama+を導入することが決まっている。

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スタートアップのチームを深めるコミュニケーション、採用、研修:TC School #16レポート2

TechCrunch Japanが主催するテーマ特化型イベント「TechCrunch School」第16回が9月26日、開催された。今年のテーマはスタートアップのチームビルディング。今シーズン3回目となる今回のイベントでは「チームを深める(エンゲージメント)」を題材として、講演とパネルディスカッションが行われた(キーノート講演のレポートはこちら)。

本稿では、パネルディスカッションの模様をお伝えする。登壇者はキーノート講演でも語ってもらったiSGSインベストメントワークス代表取締役/代表パートナーの五嶋一人氏に加え、atama plus代表取締役の稲田大輔氏、アペルザ代表取締役社長の石原誠氏、エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4名。モデレーターはTechCrunch Japan 編集統括の吉田博英が務めた。

パネルディスカッションでは、従業員が増えていくフェイズに入ったスタートアップにとっての組織づくり、チームづくり、エンゲージメントについて、各氏から話を聞いた。

テクノロジーの力で教育を変えるatama+、製造業を変えるアペルザ

まずはスタートアップ2社から、簡単な事業紹介があった。教育系スタートアップatama plusでは、AI解析で学習時間を短縮するラーニングシステム「atama+」を学習塾などに提供している。2017年4月の創業で、これまでに2回、累計20億円を資金調達している。

atama plus創業者の稲田大輔氏は、150年前に最先端だった富岡製糸場の事業所風景と、現在最新の設備を備えるGoogleのオフィスを写真で比較。続けて昔と今の教室風景をやはり写真で並べて見せ、「最先端の職場で活躍する人を養成しなければならないのに、日本の教育の現場は全く変わっていない」と指摘した。

「もっとテクノロジーを活用して、日本でもこれからの社会で活躍する人を生み出す教育を提供していこう、というのが私たちの事業だ」(稲田氏)

稲田氏によれば、日本の教育で使う時間のうち、基礎学習習得にかける時間がほぼ100%を占めるという。「ここにかかる時間をテクノロジーの力で半分以下にすれば、時間が余るはず。余った時間で、社会でいきる力が学べる」(稲田氏)

atama+では、AI教師が生徒の得意・苦手な部分や伸びている部分、集中度などのデータを取得し、その生徒に最適な専用カリキュラムを作成する。一人ひとりに合わせたコンテンツによる学習で、高校の数IAなら文部科学省が指定する学校での勉強時間146時間を、atama+では31時間にできるという。

「活用している塾では、タブレットを使って、おのおのが学習する形になり、旧来の教室風景とは絵が変わる」という稲田氏。大手塾の2割以上に導入が進む中で会社も成長し、現在の社員は60名ほどだということだ。

アペルザは、製造業向けにカタログサイトやマーケットプレイスを運営するスタートアップだ。横浜を拠点とするアペルザは、創業以来2度の資金調達により24億円を得ている。

アペルザ代表の石原誠氏は「製造業は設備産業。教育と同じで設備の取引のスタイルは100年間変わっていない」と話す。「そこでアペルザでは、BtoBの組織購買のスタイルに合わせて、情報収集から選定、見積もり、比較、購入までの購買プロセスに沿って、メディアからマーケットプレイスまで、サービスをいろいろと提供している。売り手と買い手の間に立ち、売り手からのサブスクリプション費で収益を得ている」(石原氏)

現在の顧客は7500社ほど、というアペルザ。石原氏は「日本の製造業は非常に優秀。製造業というと家電業界などで『元気がなくなった』と言われがちだが、設備向けの部品販売の分野ではまだまだ強い。中小が93%を占める製造業を、我々はどんどん海外へ進出させたいと考えていて、そうした売り手をエンパワーメントするため、営業に注目している」という。

そこで4月から提供を開始したのが、製造業の営業を支援するSaaS「アペルザクラウド」だ。同社の調査によれば、営業担当が対面営業に使える時間は20%ほどで「実は営業できていない」実態が浮かび上がったという。移動や問い合わせ対応などに時間が取られる中で、会える顧客は15%ほどに限定されているとのことで、取引先のカバーができていない実情が読み取れる。

また、設備面ではスマートファクトリー、IoT化が進む中で、製造ラインがインターネットにつながり始めている(効率化が始まっている)。新商品が増えていくことで、営業担当は「商品が多すぎて、商品知識などが覚えきれない」という悩みも抱えている。

「顧客への対応と商品への対応、2つの軸で抜け漏れが発生している、というのが製造業の営業の実態。この隙間の部分をテクノロジーで埋めるのが我々の提供するSaaSの役割だ」(石原氏)

メディア、マーケットプレイス、SaaSなど多様なサービスを提供するアペルザ。石原氏は「我々が目指すのは『マーケットネットワークス』というビジネスモデルだ」と語っている。マーケットネットワークスは米国のVC、NFX Guildが提唱するモデル。2016年のSXSWで「マーケットネットワークスは向こう30年のBtoB市場をロックするビジネスモデルだ」と紹介されたときに「製造業に完全に当てはまる」と感じた石原氏は、現在アペルザでこのモデルを踏襲しようとしているという。モデルについては、NFXの共同ファウンダー/パートナーを務めるJames Currierによる寄稿をTechCrunch Japanでも掲載しているので、そちらも参考にしてもらえればと思う。

エン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏は、「LINEキャリア」を運営するLINEとのジョイントベンチャーLENSAの代表取締役も務める人物。2000年に入社したエン・ジャパンで寺田氏は、求人サイト運営などを経て「誰でも採用ができる、採用が続けられる世の中を実現したい」と2016年に「engage(エンゲージ)」を立ち上げ、運営に力を入れている。

engageは0円から使える採用支援ツールで、現在23万社に利用されている。企業が独自の採用ページを持ち、簡単に情報を掲載、発信できるほか、IndeedやLINEキャリア、Googleしごと検索などに求人情報を告知でき、求職者に届けられる。

また「応募してきた人が、採用対象でなければ放っておく状況が嫌だった。採用もブランディングのひとつ」という寺田氏は、応募者対応やエン・ジャパンが力を入れる「入社後の社員の活躍」にも対応できるよう、採用にまつわるさまざまな活動を支援するツールも、engageで提供している。

拡大するスタートアップのコミュニケーション術

ディスカッション最初のトピックは「チーム内外のコミュニケーション方法をどうしているか」。従業員数が大幅に増えるフェイズにあるスタートアップでは、チーム内、あるいはチーム同士のコミュニケーションが取りにくくなることも多いはずだが、どのような工夫があるのだろうか。

稲田氏は「atama plusでは基本的に全ての情報をオープンにしている」という。「チーム外にも情報が共有できるように会議室の壁を取り払った」というatama plusでは、資金調達や取締役会の報告も含め、全会議をオブザーブできる仕組みにし、「エンジニアでもビジネスの状況に興味があれば、いろいろと話が聞ける状態になっている」そうだ。

石原氏も「アペルザでも社内のミーティングに会議室は使わない」と話す。アペルザではデジタルとリアルの両面でコミュニケーションを工夫しているという。「デジタルでは、Confluence(コンフルエンス:Webベースの企業向け情報共有ツール)で議事録を書いてもらい、公開している。リアルでは全社ミーティングを毎週金曜日に実施し、月1回は経営方針を経営陣から発表している」(石原氏)

ちなみに、Confluenceはatama plusでも議事録に活用されているそうだ。全社での情報共有も、週1回のチームからの報告、月1回の会社からの方針報告と、タイミングがアペルザと同じだと稲田氏は話している。

iSGSインベストメントワークス代表取締役/代表パートナーの五嶋一人氏

五嶋氏からは「全社ミーティングはテーマを絞って実施するとよい」とのアドバイスがあった。「例えば数字の報告と、従業員の誕生日を祝うのを一度の会でやろうとすると、方向性がだいぶ違ってしまう。全社でやるなら、各回の目的は振り切って、同種の内容で1つか2つに絞る方がいい。でないと、ミーティングの意義や面白さが経営者のエンターテインメント性に依存してしまう」(五嶋氏)

ミーティング目的について、アペルザでは「最初は経営陣でコントロールしようとしていたが、今は任せている」と石原氏はいう。「そうすることで、コミュニケーションそのものが生まれる」とのことで、月1回の経営戦略シェアの際には、その延長線上で一緒に食事をとるそうだ。「最初はワークショップを開くなど、がんばっていろいろと(催しを)やっていたが、単に『同じ釜の飯を食う』という方が意外とうまくいく」(石原氏)

稲田氏は「コミュニケーションの目的はいいプロダクトを作ること」として「そのために必要な情報は全部オープンにしている。そうすると全体会議でも誰かから誰かへ一方通行に発信するものにはならず、双方向で質の良いものに変わる」と語っている。

エン・ジャパン執行役員 寺田輝之氏

エン・ジャパンはatama plusやアペルザと比べるとずっと大きな規模になっているが、寺田氏は「情報をフルオープンにするのは、さすがにIR的に難しいが、ミーティングの頻度や内容は基本的には同じ」と話す。「50人を超えた頃からは、その時々で成果のあった従業員を毎週の全社ミーティングで意図的にピックアップして、何をやったかを話してもらい、横のコミュニケーションで学び合いができる状況を作るようにしてきた」(寺田氏)

コミュニケーション、情報共有のツールとして寺田氏は「声の社内報」を挙げている。これは前回のTechCrunch Schoolのパネルディスカッションで登壇したVoicy代表の緒方憲太郎氏が、自社でも使っているサービスとして紹介したもの。音声で情報や報告を伝えられるこのサービスをエン・ジャパンでも取り入れてみたところ、社内で好評だという。

「集まらず、非同期で好きなときに聞けるところが利点。どこまで再生されているかも全部(ログで)分かる。声だと話し手の感情も伝わりやすい」(寺田氏)

採用はカルチャー重視、人柄の見極めは「合うか合わないか」

続く話題は「従業員が増えるフェイズのスタートアップで、人材採用のポリシーをどうしているか」。アペルザの石原氏は「まだ足りないファンクションがいっぱいあるので、マーケティングなど新しい組織を作るために採用を行っている。その際、セオリーどおりかもしれないが、組織の上の方から採用している」と現況を語る。基準としては「スキルより人間性を見ることを大事にしている」と石原氏。それも「人間性がいいかとか悪いかとかではなく、『合うか合わないか』を見ている」という。

atama plus代表取締役 稲田大輔氏

稲田氏は「スキルフィットとカルチャーフィット、両方とも大事にしている」と話すが、やはり「同じミッションに向かって一緒にやっていけるか、熱量の高いチームでメンバーと一緒に『新しい教育を作っていく』ことに合意できるかを大事にしている」と2つのうちでもカルチャーを特に重視しているそうだ。そのために「口説く」というよりは、会社のありのままを伝えて「このカルチャーに合うかどうか、選んでください」と面接では話すようにしているという。

atama plusでは、会社の知名度が上がるにつれ「応募してくる層が変わったという印象がある」と稲田氏は言う。「この会社は勝ちそうだ、とか、伸びそうだから入るという人が増えてきたが、そういう人は非常にスキルが高くても絶対に採らないようにしている。カルチャーが合うかどうかは大事にし続けている」(稲田氏)

五嶋氏は、買収した会社で新たな人を採用してきた経験から「スキルベースでふるいにかけて選別し、そこから人柄で選ぶというのが基本かと思うが、人柄の目利きはなかなか難しいもの」と語る。「何度か飲みに行って、意気投合して仕事の話でめちゃくちゃ盛り上がる、といったことは、採用のプロセスとして最低限やってもいいことかもしれない。自分はカルチャーというよりは人柄を見て『一緒にやって楽しそうだな』という人に入ってもらえるよう、ひたすらがんばる、ということを必死にやっていた。特に組織が大きくない段階では、それが採用では一番いい結果が出て、長く活躍してもらえる人材を獲得できていたと感じている」(五嶋氏)

エン・ジャパンでは「最近は採用する段階で、入社後に何を評価するかを決めておくようにしている。それを相手に話せるよう、準備できるまでは採用自体に踏み出さない」(寺田氏)そうだ。また寺田氏は「転職で違う会社に入るということは、外国に行ったようなものだ。入った後なじむためのプログラムはきちんと設計する必要がある」とも話している。「その上で採用の段階で『過去にこの職種・ポジションでなじまなかった人は、こういう部分が合わなかった』といった情報も伝えている。ネガティブな部分も伝え、認識してもらった上で入社した方が、うまくいく」(寺田氏)

研修はズレを正すものではなく、理解を深めるもの

atama plusでは、カルチャーフィットして採用した人に入社後、さらにカルチャーを理解してもらうために、研修をかなり行うそうだ。「ミッションやバリューの意味や思いなども説明するし、他チームの仕事理解も研修で進めてもらっている」というatama plusでは、「バリューとして『生徒が熱狂するプロダクトであるかどうか』を大切にしていることから、どの職種でも研修の一環で全員現場に行く」と稲田氏。またチーム間のコミュニケーションの場も設定しているそうだ。

アペルザ代表取締役社長 石原誠氏

石原氏はアペルザで「会社のフェイズが変わってきて、バリューやビジョンをあらためて見直しているところ」だそうだが、その過程で「アンラーニング(既存の価値観や知識を意識的に捨て、新たに学び直すこと)が重要だ」と感じているそうだ。「入社してうまくいかない人は、転職前の会社のやり方など過去を引きずってきている。そこを何とかできないかと考えているので、アンラーニングはうまく取り入れたい」(石原氏)

エン・ジャパンでもミッション、バリューなどを伝える研修を行っているそうだが、寺田氏からはほかに「新卒採用などでは、非常にうまくいく方法」として「直前に入社して研修を受けた人に研修を作ってもらう」方法が紹介された。研修終了時に「次に研修を作るのはあなたたちです」とバトンを渡して、研修期間も含めて考えてもらい、次の代へ引き継ぐのだそうだ。

ちなみにカルチャーフィットと研修との関係に関連して、五嶋氏から「カルチャーフィットに代わる言葉がほしい」との提言があった。「カルチャー“フィット”と言うから『カルチャーのズレは矯正して合わせられるもの』という誤解が生じるのだけれども、どうしたって合わない人は合わない。それよりはカルチャーが合っている人に自社を知ってもらうことが大切。ズレを正すのではなく、合わない人を採ってはダメだということ。『カルチャーフィット』という言葉によって、ミスリードが生まれているかもしれない」(五嶋氏)

寺田氏は「採用の際にできることは、カルチャーが合わない人をいかに排除できるかということだけ。そのためには、自社がどういう会社で、どういう人に来てもらいたいのかを面接なども含め、あらゆる機会に発信すること、それに尽きる」と述べている。

atama plusは現在、60名の社員の65%ぐらいがプロダクトに関わる人員で、25%が営業・カスタマーサクセスなどのビジネスサイド、残りの10%がコーポレート業務に関わるという。これからどういう人材が採用したいか、との問いに対しては、稲田氏は「人は多く採りたいけれども、こだわれる限りカルチャーの合う人にこだわりたい」と答えている。

一方、アペルザでは「ビジネスサイドがもう少し多く、プロダクトの人員と同じぐらい」と石原氏。人材は「全方位で採用している」という。特に今、組織固めを行っているという石原氏は「重点的に人事担当を採用したい」と述べている。キーノート講演での五嶋氏の発言に触れ、石原氏は「可視化が大切というのは、その通り。我々の今の状態を可視化して、それを見直している制度にも現段階からきちんと反映させたい。それができる人材がほしい」と語っていた。

最後に寺田氏からチームのエンゲージメントについて、キーノート講演の話とも絡めて「自分たちのメッセージが届く範囲(組織の規模・構成)を考え、コミュニケーションが取れる状況を常に大切にしたいところ。それが人数の関係でできなくなるのであれば、同じようなことができる人をどれだけ早く育てるか、ということに尽きるのではないか」と今回のイベント全体の振り返りがあった。「(むやみに従業員規模を大きくするのではなく)コミュニケーション量を密に取れる組織構成を最優先に考えた上で、『では拡大するためには何が必要なのか』を検討することが重要」という感想が述べられ、ディスカッションは締めくくられた。

atama plusが駿河台学園と業務提携、タブレット型AI教材を全国展開へ

atama plusは9月4日、駿台予備学校を運営する駿河台学園との業務提携を発表した。2020年4月より、atama plusが開発したタブレット型AI教材「atama+」を順次導入していく。対象となるのは、数学、英語、物理、化学の4教科。

atama+は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービス。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。

駿河台学園では2018年3月より、駿台中学部、駿台高校部、東大進学塾エミールなどの駿台グループ会社にatama+を導入。通常の学習との併用によって、標準的学力の生徒の模擬試験での成績が明確に向上したことを確認したという。具体的には、高校2年生の1月の模試から高校3年生の6月の模試の偏差値の上昇幅(5カ月間)において、atama+を1カ月半併用した生徒の集団のほうが、併用しなかった生徒の集団によりも平均で2.89ポイント高い成績を上げたそうだ。

atama+と駿台が持つ学習促進(コーチング)ノウハウの相性がよく相乗効果が見られたこと、基礎固めを目的とした使用における生徒の高い満足度なども今回の提携につながった。

両社はさらに2021年4月を目標に、atama+と駿台で開発中の難関大学対策AI学習教材を組み合わせた、独自のAI学習教材パッケージを駿台グループ内各社で導入する予定とのこと。

9月26日開催のTC SchoolにiSGSインベストメントワークスの五嶋一人氏が登壇、テーマは「チームビルディング(3) 〜チームを深める〜」

4月、6月に続き今年3回目となる「TechCrunch School」の開催が9月26日に決定した。TechCrunchでは、例年11月に開催する一大イベント「TechCrunch Tokyo」のほか、テーマを設定した80〜100人規模のイベントであるTechCrunch Schoolを開催している。

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前回のTC Schoolの様子

9月26日のTechCrunch Schoolは、「チームを深める(エンゲージメント)」をテーマにしたイベントとなり、キーノート、パネルディスカッション、Q&Aの3部構成。

キーノートでは、iSGSインベストメントワークスで代表取締役/代表パートナーを務める五嶋一人氏を招き、これまで手がけてきた投資先スタートアップのチーム育成について語ってもらう予定だ。

パネルディスカッションでは、五嶋氏のほか、AI解析で学習時間を短縮するatama+を大手学習塾などに提供している教育系スタートアップatama plusの創業者である稲田大輔氏、製造業向けカタログサイトやマーケットプレイスの運営を手がけるアペルザでCEOを務める石原 誠氏、そしてエン・ジャパン執行役員の寺田輝之氏の4名で、チーム育成に関わる悩みや問題点を議論していく。

そのあと、来場者を交えたQ&Aセッションを開催する。Q&Aセッションでは、おなじみの質問ツール「Sli.do」を利用して会場からの質問も募集し、その場で回答していく。

イベント会場は、TechCrunch Japan編集部のある東京・外苑前のベライゾンメディア・ジャパンのイベントスペース。Q&Aセッション後はドリンクと軽食を提供するミートアップ(懇親会)も予定している。

スタートアップの経営者はもちろん。スタートアップへの転職を考えているビジネスパーソン、数十人の組織運営に課題を抱えているリーダーなど幅広い参加をお待ちしている。なお、今回からは申し込み多数の場合は抽選となるので注意してほしい。当選者には9月16日ごろにメールにて連絡する予定だ。

TechCrunch School #16概要
チームビルディング(3) チームを深める(エンゲージメント)
開催日時:9月26日(木) 18時半開場、19時開始
会場:ベライゾンメディア・ジャパンオフィス
(東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル4階)
定員:80人程度(申し込み多数の場合は抽選)
参加費:無料
主催:ベライゾンメディア・ジャパン/TechCrunch Japan
協賛:エン・ジャパン株式会社

イベントスケジュール
18:30 開場・受付
19:00〜19:05 TechCrunch Japan挨拶
19:10〜19:40 キーノート(30分)
19:45〜20:25 パネルディスカッション(40分) Sponsored by engage
20:25〜20:45 Q&A(20分)
20:45〜21:30 ミートアップ(アルコール、軽食)
※スケジュールは変更の可能性があります。

スピーカー
・キーノート
iSGSインベストメントワークス代表取締役/代表パートナー・五嶋一人氏

・パネルディスカッション、Q&A
iSGSインベストメントワークス代表取締役/代表パートナー・五嶋一人氏
atama plus創業者・稲田大輔氏
アペルザCEO・石原 誠氏
エン・ジャパン 執行役員・寺田輝之氏
TechCrunch Japan 編集統括・吉田博英(モデレーター)


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AIで学習時間を短縮するatama plusがEdTechカオスマップを公開、研究所設立も

atama plusは7月31日、世界のEdTech(エドテック、教育テック)の最新動向やデータを提供する「atamaEdTech研究所」の設立を発表した。国内でのEdTechへの理解や教育企業・教育機関などでの活用が進むことで教育をさらに発展させることを目指す。研究所の設立に合わせて、K-12・高等教育の領域における世界の企業35社(出典:CB Insights)をまとめたEdTechカオスマップも公開している。

関連記事:AI活用の中高生向けタブレット教材開発のatama plus15億円を調達

atama+EdTech研究所では、初等・高等教育領域におけるテクノロジーの活用に焦点を当て、世界のEdTechの最新動向やデータなどを、海外レポートの分析や現地取材などを通じて発信予定とのこと。

同研究所の所長には、atama plusの創業者である稲田大輔氏が就任。稲田氏は、2006年東京大学大学院情報理工学系研究科修了後、三井物産株式会社に入社。海外でEdTech企業の執行役員や三井物産の国内教育事業統括などを歴任したあと、2017年4月にatama plusを創業した人物だ。

同社が提供している中高生向けタブレット型教材「atama+」(アタマプラス)は、「得意」「苦手」「伸び」「つまずき」「集中状態」などのデータをAIが分析し、各々に適した「自分専用レッスン」を作成することで学習を効率化するのが特徴。

今年からは、駿台教育センターでは「AI演習講座」、Z会エデュースでは「AI最速定着コース」、城南進学研究社では「城南予備校DUO」として、atama+に特化したAI学習コースも開設されている。

日本では、授業をネット配信するなどオンデマンドの教育環境は整いつつあるが、家庭教師などの個別指導以外では各々の進捗に最適化した学習を受けることは難しい。生徒の習熟度やモチベーションが異なる義務教育の現場ではなおさらだ。amtama plusなどテクノロジーを活用して効率的な学習環境を構築するEdTechスタートアップの発展に期待したい。

AI解析で学習時間を短縮するatama plusが中高生向け英文法コンテンツを拡充

atama plusは7月18日、同社が開発したタブレット型AI教材「atama+」に、中学生向けの「英文法」のコンテンツを追加した。サービス開始当初からある高校生向けの「英文法」と合わせ、中高生向けのアダプティブラーニング(学習者一人ひとりに個別最適化された教材を提供する学習方法)による英文法の習得をAIを活用して学習環境を効率化する。
 
日本の英語教育は2020年度の大学入試から、従来の「聞く」「読む」に加え「話す」「書く」も含めた英語4技能が導入される。atama+はこの変更を受け、これら英語4技能を身につけるうえでの土台として「英文法」を最重要視して最短時間で習得することに特化した教材を開発したそうだ。
 
同社は、英語の文章を、基本文型、時制、動詞/助動詞、態、準動詞(不定詞・動名詞・分詞)など、さまざまな文法要素ごとに分解することで、個々の学習状況によってつまづきの原因を特定する。例えば「Was the door locked last night?」(昨夜、ドアは鍵がかかっていましたか?)という英文でつまずいた場合、従来の頭に叩き込む反復学習ではなく、具体的な原因を特定するのが特徴だ。具体的には、理解できていないの要素を、受動態、疑問文、過去形などに絞り込んで分析・診断のうえ、復習に適した教材・体系的なカリキュラムをAIが推薦してくれる。同社によると「つまずきの原因を効率的に解消していくことで、英文法が最短で身につく内容となっています」とのこと。
 同社は5月にジャフコ、DCMベンチャーズのそれぞれが運用するファンドを引受先とする15億円の第三者割当増資を発表し、累計調達額は約20億円となった。国内では教育系スタートアップがなかなか育っていない中、atama+は栄光や学研塾ホールディングス、ティエラコムなど500以上の教室に導入されている。さらに今年からは、駿台教育センターでは「AI演習講座」、Z会エデュースでは「AI最速定着コース」、城南進学研究社では「城南予備校DUO」として、atama+に特化したAI学習コースも開設されるなど、同社の活躍は目覚ましい。

関連記事:AI活用の中高生向けタブレット教材開発のatama plusが15億円を調達

AI活用の中高生向けタブレット教材開発のatama plusが15億円を調達

写真右から、ジャフコでパートナーを務める北澤知丈氏、atama plus代表の稲田大輔氏、DCMベンチャーズの日本代表を務める本多央輔氏

atama plusは5月13日、ジャフコ、DCMベンチャーズのそれぞれが運用するファンドを引受先とする第三者割当増資を発表した。同社はこれにより、シリーズAラウンドで約15億円を資金調達。累計調達総額は約20億円となる。今回の増資により、開発スピードをアップさせるほか、プロダクトの強化および学習塾各社へのサポート体制を強化していくという。

同社が提供している高生向けタブレット型教材「atama+」(アタマプラス)は、「得意」「苦手」「伸び」「つまずき」「集中状態」などのデータをAIが分析し、各々に適した「自分専用レッスン」を作成することで学習を効率化するのが特徴。

現在、栄光(栄光ゼミナール)、学研塾ホールディングス、ティエラコムをはじめとする500以上の教室に導入されており、各教室で集めたデータを基にアルゴリズムやコンテンツが日々最適化されているとのこと。今年からは、駿台教育センターでは「AI演習講座」、Z会エデュースでは「AI最速定着コース」、城南進学研究社では「城南予備校DUO」として、atama+に特化したAI学習コースも開設されている。

atama+の教材は、高校生向けに数学・英文法・物理・科学、中学生向けに数学がある。平均学習完了時間は、高校の「数I」で16時間、「数A」で15時間とのこと。なお、文部科学省が告示している教育課程の基準である学習指導要領では、これらの授業時間は計175時間。学習と授業は同じ尺度で測れないが、AIによる効率化で学習成果を短時間で出せるのがatama+の特徴となっている。

具体的には、中学生や高校生の学習のつまずきの根本になっている単元をAIが突き止め、何を、どんな順番で、どのくらいの量やればいいかをナビゲートしてくれる。例えば、高校物理の「波の式・波の干渉」を学習する場合、「波の基本要素・波のグラフ」の講義動画や数学「三角比の定義」の演習問題等がレコメンドされるといった具合だ。

同社のデータでは、2018年のセンター試験の数IAで受講生の得点伸び率の平均が+50.4%となったとのこと。これは、受講前の2017年12月末の過去問成績と比べての数字で、2週間で平均14時間45分、1日あたり63分の学習結果によるものだそうだ。

生徒の苦手分野をAIが特定し、教材を自動生成――atama plusが初の増資で5億円調達

AIを利用した教育プログラムを提供するatama plusは3月26日、DCMベンチャーズを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は5億円だ。これが同社にとって初めての外部調達となる。

同社が提供する「atama+(アタマプラス)」は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービスだ。例えば、数学の正弦定理が苦手な生徒がいたとする。その場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるという学習方法が一般的だろう。でも、atama plus代表取締役の稲田大輔氏は、その方法はとても非効率だと話す。

正弦定理を理解するにはまず、平方根や三角形の内角など、より基礎的な要素を理解する必要がある。それを理解しないまま正弦定理の問題をただひたすら解くというのは非効率だ。一方、atama plusでは生徒の苦手分野を特定するためのオンラインのテストをさまざまな角度から出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成するのだ。

atama plusが追求するのは“学習の効率性”だ。解いても意味のない問題を解かせるのではなく、AIが特定した苦手な部分だけを集中して解かせる。「Googleで活躍できるような人材を育てるには、“基礎学力”とプレゼン力などの“社会で生きる力”をつける必要がある。そして、その社会で生きる力をつけるには、基礎学力の習得にかかる時間を短縮するしか方法がないと考えている」(稲田氏)

atama plusは、提携する塾に対して同サービスのライセンスを付与するというかたちでビジネスを展開している(ライセンス料は非公開)。2017年4月の創業から約11ヶ月が経過した現在、Z会エデュース、学研塾ホールディングス、駿台教育センターなど学習塾大手がatama+を活用した授業を行っているという。現時点での対応教科は、中高数学、高校英文法、高校の物理化学だ。

同社によれば、2017年12月末に行なったatama+の冬期講習(約2週間)を受講した25人の生徒が、受講前に解いたセンター試験過去問の得点と、2018年1月のセンター試験本番の得点を調べたところ、その得点の伸び率の平均は50.4%だったという。2週間という短期間でこれだけの成果をあげているのは、正直驚きだった。

稲田氏は「塾の先生の役割は2つある。学習を教える“Teaching”と、目標までの到達をサポートする“Coaching”だ」と話す。TeachingはAIの得意領域で、人間の先生は勝てない。でも、Coachingは人間の先生こそが得意とする分野なのだという。atama plusでは、ある生徒が問題を解くのに手間取っていたり集中力が落ちていることを問題を解く時間などからAIが判断し、タブレット端末を持った先生にアラートする。そして、先生がその生徒を手助けにいく。人間がCoachingするのをAIがサポートするのだ。

人に何かを教えるという役割は、もう人間の役割ではなくなったのかもしれない。