自動運転開発のAuroraが外部専門家による安全評価の諮問委員会を設置

2020年にUber ATGを買収した自動運転車両開発のAurora(オーロラ)が外部専門家のチームを作り、自己評価安全報告書の運用についての新たな詳細を公開した。そしていつか道路を共有したり、実際に使ったりする自動運転テクノロジーを警戒している消費者の信頼を獲得するための幅広い取り組みの一環としてウェブサイトを立ち上げた。

Auroraは米国時間6月3日、安全への全体的なアプローチに外部の視点を取り込み、進展並びに記録を当局や社会と共有する最善の方法に関する体制とアドバイスのギャップを探すべく、航空安全、保険、そして医療と自動車の安全の専門家(全員ニッチなAV産業外の出身だ)の協力を仰ぐことを明らかにした。こうした専門家による諮問委員会は、路上テストや開発などを含むAuroraの既存の安全に関する取り組みを増強するためのものだ。

「『我々が作れば、彼らは使うにようになる。iPhoneを見ればわかる』といった『Field of Dreams』的な分析をしていたと思います」とAuroraの安全責任者、Nat Beuse(ナット・ビユーズ)氏は最近のTechCrunchとのインタビューで語った。「我々は常にこうした他のコンシューマー向け製品と比較しています。それが実際に米国のあらゆるコミュニティにおける消費者のマインドをつかむものなのか、確かではありません」。

以前Uber ATGで安全チームを率い、その前には米運輸省で自動運転車両開発を監督していたビユーズ氏は、人々を運ぶロボタクシーであれ貨物を運搬するトラックであれ、最終目的はドライバーレスの車両が広く受け入れられることだと述べた。それはテクノロジーが安全だということを測定して社会に示すことができなければ達成し得ない、と語った。

「たとえごく少数でも自動運転車両に接する人が懸念を抱えれば、このテクノロジーの恩恵、広範な使用、有益な方法で我々の暮らしにもたらしえる抜本的な変化や影響を目にすることはないでしょう」と話した。「(社会の信頼を獲得するために)我々はさらに取り組まなければなりません。そうした信頼の獲得は政府とともに行うべきです」と付け加えた。

「『産業界が作っているのだから、自分たちで問題を解決しろ』というのが今までの考え方だったと思います。しかしこれはパートナーシップだと真に思います。もちろん、我々がテクノロジーを作っていて、大きな責任を負います。しかし政府もまた、我々が一般の人を参加させるようにするのを手伝うという非常に大きな役割を担っています」。

安全諮問委員会のメンバーには Intelligent Transportation Society of Americaの会長兼CEOのShailen Bhatt(シャイレン・バット)氏、Boeingで運航安全性を担当した元チーフパイロットDave Carbaugh(デイブ・カーボー)氏、Edge Case Researchの主席エンジニアでイノベーション戦略家のVictoria Chibuogu Nneji(ビクトリア・チブグ・ネジ)氏が含まれる。他のメンバーには、Biologueの会長で米運輸省道路交通安全局の元行政官であるJeff Runge(ジェフ・ルンゲ)氏、HITCH42の業務執行社員で米国道路安全保険協会の元会長のAdrian Lund(アドリアン・ルンド)氏、GHS Aviation GroupのCEO、George Snyder(ジョージ・スナイダー)氏がいる。

すでに会合を持った委員会は「テックに熱中していない」人で構成されている、とビユーズ氏は話した。

Auroraや業界他社にとって最も大事なことは、ドライバーレス車両に関して「どれくらい安全であれば十分に安全なのか」という漠然とした問題に答えることだ。これまで浸透して批判されるようになったメトリックは車両の走行距離と「ディスエンゲージメント」あたりの走行距離を比較するものだ。ディスエンゲージメントというのは、人間の安全オペレーターがコンピューターで動く車両を操作することを意味する業界用語だ。

「それは真のメトリックではない、とかなり自信を持って言えます。というのも、駐車場で運転してもインターラクションを生み出すことができ、それは街中を走行するのとはかなり異なるものだからです。高速道路を走行するのともだいぶ違います」とビユーズ氏は説明した。

Auroraは自動運転技術の業界団体Automated Vehicle Safety Consortium(AVSC)に加盟している。他にDaimler、Ford、GM、ホンダ、Lyft、Motional、SAE、トヨタも名を連ねているAVSCはより良いメトリクスの検討に取り組んでいる。新たに設置されたAuroraの安全諮問委員会はAVSCのプロジェクトとは直接協業していないが、取り組みを支えるかもしれない一般的なガイダンスを提供している。

こうした新たなメトリクスを認証するにはまだすべきことがたくさんあるが、Auroraの安全諮問委員会はかなり有望だと考えているものをいくつか持っている、とビユーズ氏は話した。

関連記事
自動運転車開発のAuroraが買収したUber ATG従業員の大半にオファー、ただし研究開発ラボは対象外
Auroraがトヨタ、デンソーと自動運転ミニバン「シエナ」を共同開発
自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速
自動運転技術のオーロラがボルボと提携、高速道路を自律走行するトラックの製造を目指す

カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora自動運転

画像クレジット:Aurora

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動運転技術のオーロラがボルボと提携、高速道路を自律走行するトラックの製造を目指す

自動運転車のスタートアップ企業であるAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Volvo(ボルボ)と自動運転セミトラックを北米向けに共同開発することで合意したと発表した。

両社によると、この数年に渡る予定の提携は、ボルボの自動運転ソリューション部門を通じて行われ、同社の顧客が利用するハブ間の高速道路を自動運転で走行できるトラックの製造に焦点を当てたものになるという。オーロラが開発した、自動運転ソフトウェア、コンピュータ、センサー類を含む「Aurora Driver(オーロラ・ドライバー)」と呼ばれる技術スタックが、ボルボのトラックに搭載されることになる。

今回の発表は、オーロラがUber(ウーバー)の自動運転子会社を買収したことや、トヨタ自動車と自動運転ミニバンの開発で提携を結んだことに続くものだ。米国で販売されているクラス8トラックは、半数近くが3社のトラックメーカーによって占められているが、オーロラは現在、そのうちのPaccar(パッカー)とボルボの2社と提携している。

関連記事:Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

「パッカーなど以前発表したパートナーとの提携は、ボルボとの協業と並行して継続します」と、オーロラの広報担当者はTechCrunchに語った。「パッカー初の自動運転技術パートナーとして、我々の提携の独自性は、安全のために運転手を乗せることなく運用できるパッカー初の大型トラックを製造して、それを市場に初めて投入し、広範囲に展開することを可能にします」。

オーロラによると、同社が買収したBlackmore(ブラックモア)とOURS Technology(アワーズ・テクノロジー)による周波数変調連続波LiDARは、長距離トラックの自動運転を解決する鍵になるという。LiDAR(ライダー)とは、light detection and ranging(光による検知と測距)レーダーのことで、自動運転システムに必要なコンポーネントと考えられている。オーロラの技術は、従来のTime of Flight(光の飛行時間から計測する)方式とは異なり、危険を察知してから停止または減速するのに十分な時間を確保できる長距離の認識が可能であることを売りにしている。

関連記事:自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速

今回の発表は、ボルボの自動運転車部門であるVolvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)にとっても、大きな加速を示すものだ。同事業部にとって、これが自動運転トラックを公道に導入する初の案件となる。

2017年の創設以来、オーロラは急速に自動運転技術をリードする企業の1つとなり、Amazon(アマゾン)、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)からの支援を集めている。同社は、Uber、Tesl(テスラ)、Google(グーグル)の元幹部らによって設立された。

カテゴリー:モビリティ
タグ:自動運転Aurora InnovationVolvoトラック電気自動車

画像クレジット:Aurora

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速

Uber(ウーバー)の自動運転の子会社を最近買収した自動運転車両開発のAurora(オーロラ)は、別のスタートアップも獲得した。

Auroraは同社にとってこの2年弱で2つの目のLiDARスタートアップとなるOURS Technology(アワーズテクノロジー)を買収する。Auroraはモンタナ拠点のLiDARスタートアップBlackmore(ブラックモア)を2019年5月に買収している。Auroraは買収価格と他の買収条件の開示を拒否した。カリフォルニア大学バークレー校の研究者と博士号の学生たちのチームによって2017年に創設されたOURS Technologyは12人を雇用している。同社によると、チームは全員Auroraに移る。

「我々は、いかに可能な限り早く進歩させられるかに常に目を光らせていて、LiDARチップ開発におけるOURSの専門性が当社がすでに持つ専門性に加わることで、開発が一層加速します」とAuroraの広報担当は語った。

光によって検出と測距を行うLiDAR(Light Detection And Ranging Radar)について、自動運転システムを開発する会社は自動運転車両を安全に大規模展開するのに重要で必要不可欠なセンサーだと考えている。何百万台という自動運転車両が街を行き交う未来はまだ何年も、あるいは数十年も先だ。しかしそれは、数十ものLiDAR企業が最終的な需要を見越して出現するのを阻んだりはしない。

この業界に存在している70ほどの企業の大半はToFのLiDARセンサーを開発し、販売しようとしている。このセンサーは可視域外にパルスレーザー光を照射し、そのパルスが跳ね返ってくるのにどれくらいかかるかを測定する。跳ね返ってくるときに、方向や距離、パルスが当たったものをポイントとして記録し、最終的に3Dマップを作成する。

BlackmoreやOURS Technologyを含め、一部のLiDAR企業は低電力の光の連続波、つまり光の流れを発するFrequency Modulated Continuous Wave(FMCW、周波数変調連続波)LiDARを開発しているFMCW LiDARのデベロッパーはこのテクノロジーについて2つの主な利点を挙げる。1つはより高いダイナミックレンジ、瞬間速度で距離を測定できる点。これは、つまり近づいてくるものや離れていくもののスピードを測定できることを意味する。もう1つが太陽光や他のセンサーの干渉もないという点だ。

しかしFMCWは複雑でもある。FMCWはチップ上のレンジファインダーとして始まる。これを3D LiDARとするのに、多くのFMCWデベロッパーは視野を提供するのに大きな鏡や他の部品を使用するが、ンサーのサイズが大きくなる。OURS Technologyは自らを「LiDAR-on-a-chip」会社だと称しており、この創業4年の会社がソリッドステートスキャニングメカニズムにすべてを組み込む方法を開発したことをうかがわせる。これはセンサーの小型化につながり、FMCWの主な問題の1つを解決する。

Auroraは2020年夏に、自動運転車両、中でも長距離トラック向けに開発されたBlackmoreのテクノロジーに基づくセンサー、FirstLight LiDARを発表した。Auroraは声明文で、OURS Technologyがわずか3年で4世代のLiDARを生産することができ、同社のテクノロジーと互換性があるソリッドステートのスキャニングメカニズムを開発したと言及し、明らかにOURSの開発のスピードに関心を持っている。

AuroraはセンサーをスケーラブルなものにするためにOURSの専門性と開発のノウハウを活用する計画だ。簡単にいうと、Auroraは開発を加速させるためにOURSのチームと、ソリッドステートスキャニングメカニズムのような重要な部品の設計図を使うことを望んでいる。

「当社の車両を拡大し、ドライバーレスのトラックを商業化しようとしている現在、FirstLight LiDARはかなりスケーラブルでなければなりません。小型で、さほど高価でない必要があり、パワフルでなければなりません」とAuroraは述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora買収自動運転LiDAR

画像クレジット:Aurora

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Auroraがトヨタ、デンソーと自動運転ミニバン「シエナ」を共同開発

自動運転テクノロジー企業のAuroraは車両開発およびテストを実施する契約をToyota(トヨタ自動車)および大手部品メーカーのDENSO(デンソー)との間で締結した。Auroraのテクノロジーを搭載して開発される自動運転車両はまずミニバンのトヨタ・シエナが予定されている。

米国時間2月9日、Auroraとトヨタは自動運転バージョンのシエナを設計、テストすることで協力することを発表した。両社のエンジニアのチームは2021年末までに実車のテストを開始することを目標としている。

この発表は、2019年にAuroraがトヨタ、デンソー、SoftBankのVision Fundから10億ドル(約1046億2000万円)を調達してUberから独立したUber Advanced Technologies Groupを買収したことに続くものだ。1月20日に完了したこの買収は、UberがATGの株式を手渡し、4億ドル(約418億5000万円)をAuroraに投資するという複雑な取引だった。Uberは合併後の新会社の株式の26%を保有している。また、トヨタはAuroraの株式の一部を取得している。

関連記事:Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

発表された提携計画は、 少なくとも部分的には 、2018年にトヨタとUberが合意したオンデマンド自動運転タクシー配車(ride-hailing)サービスを市場に投入するための計画に似たものとなっている。両社はUberのタクシー配車ネットワークでミニバン「シエナ」を使用し、同車にUber ATGの自動運転テクノロジーを搭載することで合意した。これにともないトヨタは5億ドル(約523億円)の投資を行った。当時、トヨタとUber ATGはこれらの車両はサードパーティーの企業が買い取って運用・管理することができると述べていた。

関連記事:トヨタ、Uberに5億ドル投資――2021年からから自動運転の実用サービス開始を目指す

Auroraの共同ファウンダーで最高製品責任者のSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏は、「これはまったく新しいパートナーシップであり、以前のトヨタのUber ATGn提携の延長ではない」と強調した。

トヨタとAuroraは、開発チームの規模、契約に関連した財務的インセンティブなどの詳細を明らかにしなかったため、現在のところこの提携が影響する範囲などを見極めるのは難しい。

それでもAuroraは一車種の開発とテストを超えたパートナーシップだという野心的なビジョンを打ち出し「長期的な戦略的提携」と表現している。また2021年の共同開発作業は、最終的に自動運転車両をトヨタと共同で量産し、Uberやそれ以外のタクシー配車ネットワーク上に乗せる基盤を築くことが目的だとしている。また自動走行に必要な部品の量産ではデンソーと協力する。自動運転車に関する融資、保険、メンテナンス等のカスタマーサービスのプラットフォームの構築でもトヨタと協力する方法を検討していくという。

アンダーソン氏はトラック運送のPACCAR、そして今回のトヨタとの提携が実現したことで「フリート管理などの商用の川下(ダウンストリーム)サービスの開発が同社にとってますます重要になってきた」と述べた。

最近のインタビューでアンダーソン氏はこう語っている。

タクシー配車サービスにはまず自動車とドライバーが必要ですが、その次にはサポートサービスが必要です。この一環としてトヨタと協力して研究している分野の1つは、Auroraのサポートサービスとトヨタの販売ネットワークを組み合わせ。Auroraの自動運転テクノロジーを搭載したトヨタ製車両を大規模に展開することです。これはトヨタのネットワークの巨大さが我々にとって非常に重要になる分野です。

自動車の場合、開発、テストから実際に市場で商用化されるまでの道のりは非常に長い。資金調達以外のも技術的な課題や規制上の課題が生じる。熟練労働者の確保をめぐるライバルとの競争もある。これらすべてをクリアしても自動運転タクシー配車ネットワークの運営にはまた独自のハードルがある。つまりAuroraがトヨタと提携したからといって今すぐに成功が保証されたわけではない。

しかし世界的な大手自動車メーカーとの提携はAuroraにとって極めて重要な一歩だったに変わりはないだろう。

Auroraの共同ファウンダーであるCEOのChris Urmson(クリス・アームソン)氏は米国時間2月9日のブログ記事にこう書いている。

トヨタには比類ない実績があり、エンジニアリングの専門知識と高いリーダーシップを持っています。これによりトヨタは高品質かつ手の届く価格で信頼性の高い車両を提供してきました。またタクシー配車ネットワークで真っ先に選定されるメーカーでもあります。我々はトヨタと協力できることをうれしく思っています。Auroraの自動運転テクノロジーでドライバーレス・モビリティサービスを実現しようと考えています。

アームソン氏はまた、同社初の商用プロダクトが自動運転トラックのテクノロジーであることに触れ「現在のライドシェア予約のかなりの部分が時速80km以上のスピードでの運転を必要としています。このため自動運転トラックで培った高速道路対応能力は乗客を安全に移動させるために非常に重要になると考えています」と付け加えている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Auroraトヨタ自動車自動運転

画像クレジット:Aurora

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:滑川海彦@Facebook

AuroraがUber ATG従業員の大半にオファーを送るも、研究開発ラボは対象外

自動運転車企業のAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)が、Uber(ウーバー)アドバンスト・テクノロジーズ・グループ(Uber ATG)の自動運転部門の買収を発表したちょうど一週間後の12月17日に、その従業員の75%以上に対してオファーを送ったことが、合併後の統合計画に詳しい情報筋から伝えられた。

同情報筋によれば、研究開発を行っていた約50人の従業員を擁するUber ATGトロントは、オファーの対象にはなっていないという。また、Uber ATGの研究開発チームを率いていた(未訳記事)Uber ATGのチーフサイエンティスト、Raquel Urtasun(ラケル・ウルタスン)氏も対象外だ。Uber ATGのCEOであるEric Meyhofer(エリック・メイホーファー)氏が、取引が完了した時点でオーロラに入社しないことは既に確認されていた。トロント大学の教授で、カナダ政府からMachine Learning and Computer Vision領域で”Canada Research Chair”に指名されており、同時にVector Institute for AI(ベクター・インスティチュート・フォーAI)の共同創業者でもあるウルタスン氏が、Auroraに移るかどうかはこれまでは不明だった。ウルスタン氏は、自動運転車のための機械認識の第一人者と考えられている。

Uber ATGで働く1200人のうち850人以上が、Auroraの共同創業者でCEOのChris Urmson(クリス・アームソン)氏からメールでオファーを受けたという。TechCrunchが見ることができたメールの抜粋では、アームソン氏は、誰を選ぶかの決定は難しいと述べている。同氏は、この決定は、重複する領域、相対的な影響力、管理報告など、Auroraの具体的なビジネスニーズに基づいて行われたと書いていた。

Auroraはこのオファーについてコメントをしなかったが、Uberのトロントオフィスが、統合される会社に含まれないことは認めた。また、Uberの広報担当者も、トロントのR&DラボがAuroraに合流しないことを認めた。

「長期的な成長と成功に焦点を当てた独立系企業として、どこに、どのように資源を使うかを熟慮しなければなりません。私たちのミッションを果たすために、私たちは研究開発チームを別個に持つのではなく、開発プロセスとエンジニアリング業務に研究を織り込んでいます」と、Aurora社の広報担当者は電子メールの声明文に書いている。「私たちはラケル・ウルタスン氏と彼女のチームを心から尊敬しています。彼らがこれまでATGチームと業界全体の両方に与えてきた影響は驚くべきものです。彼女と彼女のチームはAuroraには合流しませんが、私たちは彼らの素晴らしい成功を願っています」。

もしオファーを受けたUber ATGの従業員が、全員申し出を受け入れれば、Auroraは2倍以上の規模になる。買収が発表される前には、Auroraはパロアルト、サンフランシスコ、ピッツバーグ、テキサスにあるオフィスに約600人の従業員を擁していて、Uber ATGはピッツバーグ、サンフランシスコ、トロントにオフィスを構えていた。

AuroraとUberは、複雑な合意に達する前に何ヶ月も協議を重ねてきたが、合併後の企業の価値は100億ドル(約1兆円)となる予定だ。AuroraはUber ATGに現金は支払わない。Uber ATGは、昨年トヨタ、デンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから10億ドル(約1034億円)の投資を受け、72億5000万ドル(約7498億円)と評価されていた。現金の代わりに、UberはATGの株式を手渡し、4億ドル(約414億円)をAuroraに投資する。これにより米証券取引委員会への提出書類によれば、合体した会社の株式の26%を保持することになる。Uber ATGの株主はAuroraの少数株主となる。

今回の買収が発表された時点で、アームソン氏はTechCrunchに対し、今後60日間は2つのチームをまとめ「最初の製品を市場に送り出すのを加速させる技術は何かを冷静に検討し、それを増幅させていきます」と語った。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:GettyImages
原文へ
(翻訳:sako)

Uberが自動運転部門Uber ATGを売却、購入したAuroraの企業価値は1兆円超え

Sequioa Capital(セコイア・キャピタル)とAmazon(アマゾン)が出資する自動運転車のスタートアップ、Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Uber(ウーバー)の自動運転部門(Uber ATG)を買収する契約で同社と合意した。複雑な契約の結果、合併後の企業価値は100億ドル(約1兆400億円)に達する見込みだ。

AuroraはUber ATGのために現金を支払わない。Uber ATGは2019年にトヨタ、DENSO(デンソー)、およびSoftBank(ソフトバンク)のVision Fund(ビジョンファンド)から10億ドル(約1040億円)の出資を受けた後、企業価値が72億5000万ドル(約7550億円)になった。代わりに、UBerがATG持ち株をAuroraに譲渡し、4億ドル(約420億円)を出資する。その結果Uberは合併後企業の26%を保有することになると米国証券取引委員会(SEC)に提出した資料に書かれている。忘れている人にために書いておくと、UberはUber ATG株の86.2%(完全希薄化ベース)を保有している。Uber ATGの株主は、Auroraの少数株主になる。ちなみに契約が完了すると、Uberと既存ATG株主およびAuroraに継続雇用されるATG従業員を合わせると、Auroraの約40%(完全希薄化ベース)を保有することに注目されたい。

Uber CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は新たに拡張したAuroraの取締役に就任する。

2017年創業のAuroraは完全自動運転用ソフトウェアスタックの開発に注力する企業で、人間のドライバーが運転しなくても車両が高速道路や市街地を走ることのできるテクノロジーに基づいている。AuroraはGreylock Partners、Sequoia Capital、Amazon、T. Rowe Priceなど著名なベンチャーキャピタルや投資運用会社、メーカーなどの注目を集めた。理由の一部は創業者であるSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏、Drew Bagnell(ドリュー・バグネル)氏、およびChris Urmson(クリス・アームソン)氏が揃って自動運転業界で豊富な経験をもつベテランだからだ。

アームソン氏はGoogle(グーグル)の自動運転プロジェクトがスピンアウトしてAlphabet(アルファベット)傘下のWaymoとなる前の責任者だった。アンダーソン氏はTesla Model Xと同社のオートパイロットプログラムの開発・製造責任者として最もよく知られている。カーネギーメロン大学准教授のバグネル氏は、Uberの自律研究の立ち上げを支援し、ピッツバーグのAdvanced Technologies Center(先進技術センター)で自律・認知チームを率いていた。

Auroraはまず自動運転トラックを市場に出す計画だ。しかしアームソン氏は、同社がロボタクシーなど他の自動運転スタックのアプリケーションも追求を続けていると付け加えた。Uber ATGとの契約によって、Auroraは人材と運用可能な設備を手に入れる。しかし、契約はほかにも重要な意味が2つある。Uber ATGの出資者、特にトヨタとの関係構築、そしてUberとの提携による巨大ライドシェアリングプラットフォームの活用だ。

「私たちがこの会社をつくるとき念頭に置いていたのはスケールに合わせて作ること。誰もが最高の仕事ができる環境を作ろう、ということです」とアームソン氏は12月7日のインタビューで語った。「そしてそれから素晴らしいチームを探して引き入れる。これは才能とテクノロジーを組み合わせる方法の一つであり、今回はつながりを得ることもできました」。

この発表はTechCrunchの11月の記事を裏付けるとともに、ピッツバーグ、サンフランシスコ、トロントで操業している1200人のビジネスユニットであるUber ATGが、自分より小さなライバルと合併するという紛れもない大事業の幕開けである。

Uber ATGの社員全員がAuroraに合流するかどうかは明らかになっていない。Auroraでは600人の従業員が働き、サンフランシスコ・ベイエリア、ピッツバーグ、テキサス、モンタナ州モーズマンに拠点がある。少なくとも幹部の1人、Uber ATG CEOのEric Meyhofer(エリック・メイホーファー)氏は加わらない。

アームソン氏は、会社とそれぞれの技術の統合は急がず進めることを強調した。

「今後60日間に私たちが行う最もおもしろいことの1つは、2つチームを1つにすることです」とアームソン氏はいう。「その後、我々が市場に出す最初の製品を加速するテクノロジーは何かを少し冷静に見極め、既存のAuroraチームのものであれ、新しいAuroraチームで作られるものであれ、それを強化して推し進めます。それがアイデアでもコードでもハードウェアでも、市場に出す時間を早めるものであれば」。

会社は人材とテクノロジーの評価をできるだけ早く行う、とアームソンは語った。

Uberの自動運転車の歴史

Uberにとってこの取引は、会社がコアビジネスであるライドシェアリングとデリバリーに焦点を絞りつつある中、未だにスピンオフも売却もしていなかった金のかかる最後の部門を際立たせた。この1年間に、Uberはシェアードマイクロモビリティー部門のJumpを手放し、成長はするも未だ利益を上げていないロジスティクス部門のUber Freightの株を売り、Postmatesを買収した。Uberは、同社の無人空中タクシー事業のUber Elevateの買収を交渉中とも報じられている。

Uber ATGは長期的な金銭的利益が約束されている事業の1つだが、多くの痛みと論争と初期費用が、設立したほぼその瞬間から生まれ出た。

2015年初め、Uberは自動運転車への取り組みを開始し、カーネギーメロン大学のロボティクス研究所との戦略提携を発表した。この無人自動車テクノロジーを共同開発する契約は、Uberが研究所から何十人という研究者や科学者を引き抜く(WSJ記事)という結果になった。1年後、Uberは自動運転トラックのOttoを買収した。グーグルの花形エンジニアだったAnthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドフスキー)氏とグーグルのベテラン社員であるLior Ron(リオ・ルロン)氏、Claire Delaunay(クレア・ドローネ)氏、Don Burnette(ドン・バーネット)氏の3名が設立したスタートアップだ。

買収の2カ月後、グーグルはレヴァンドフスキー氏とルロン氏に対して2件の仲裁請求を行った。Uberはいずれの仲裁の当事者でもなかった。仲裁はうまくいったが、それとは別にWaymoが2017年2月に企業秘密窃盗と特許侵害でUberを訴えた。裁判まで行ったが2018年に和解したその訴訟で、Waymoはレヴァンドフスキー氏が企業秘密を盗み、その後それがUberによって使用されたと主張した。

裁判が終わりUberは開発を加速したが、そのほぼ直後に自動運転試験車の1台が、非常用運転手が運転席にいる状態で死亡事故を起こし、2018年3月に歩行者に衝突して死に至らしめた。業界全体が一時停止し、Uberはテストをすべて中断した。

Uberは2019年春にUber ATGを別会社化した。トヨタ、自動車部品メーカーのデンソー、およびソフトバンクのVision Fundから10億ドルの資金を調達した後のことだ。このスピンオフに関しても、Uberは金のかかる事態に直面する。Uberは11月、ATGおよび「その他のテクノロジー」(Uber Elevateを含む)で2020年9月30日までの9カ月間に3億300万ドル(約315億6000蔓延)の純損失を計上した。Uberは、ATGおよび「その他のテクノロジープログラム」の取り組みで4億5700万ドル(約476億円)の研究開発費が発生したとS-1書類に書いている。

Auroraの価値とは?

Uber ATGを悩ましてきた数々問題の傷跡をよそに、アームソン氏は同社には価値ある資産となる人材といくつかの興味深いテクノロジーがある、と主張する。

「自動車向け次世代ハードウェアを設計するために彼らが行なっていることは非常に興味深いものです」と同氏はいう。「ソフトウェア面で彼らは、予言および予言を認知システムと組み合わせる実に面白いアイデアを持っています」。

この契約に詳しいある人物は、Uber ATGには貴重で有能な中級レベルと初級レベルのエンジニアが在籍しているため、Auroraにとって特に魅力的な買収だと語った。

これはAuroraにとって初めての買収ではないが、最大で最も複雑であることは間違いない。2019年にAuroraは、モンタナ州ボーズマン拠点のLiDAR(ライダー)企業であるBlackmore(未訳記事)とシミュレーションのスタートアップである7D Labsを買収した。Auroraは自社の「no jerks(悪党はいない)」ポリシーと企業カルチャーを喧伝しつつ、何百という新しい人たちを吸収しようとしている。

合併後の統合には数カ月や数年かかることがあり、技術的あるいは戦略的な進捗を遅らせかねない。アームソン氏の考えは違うようだ。

「むしろ、目標実現を加速します」と彼は語った。

関連記事
Uberの自動運転部門がスピンアウトを前にトヨタやソフトバンクから1100億円超調達
Uberがトラブル続きだった自動運転技術部門ATGをライバルのAuroraに売却か

カテゴリー:モビリティ
タグ:UberUber ATGAurora売却自動運転

画像クレジット:Aurora

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Uberがトラブル続きだった自動運転技術部門ATGをライバルのAuroraに売却か

18カ月前、Uber(ウーバー)の自動運転部門である Uber Advanced Technologies Group(ATG)はトヨタやデンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから10億ドル(約1047億円)の出資を受けてバリュエーションが72億5000万ドル(約7600億円)になった。そのATGはいま、売りに出ている。競合相手のスタートアップがATG買収でUberと交渉中だ。この件に詳しい3人の情報筋が明らかにした。

Google(グーグル)、Tesla(テスラ)、そしてUberで自動運転技術に携わった3人の業界ベテランによって設立されたスタートアップAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)はUber ATG買収で交渉している。取引条件などはまだ明らかになっていないが、両社は2020年10月から交渉しており、そのプロセスは進展を見せていると情報筋は話す。

Uberの広報担当は、当社はこうした種の問い合わせには答えない、としてコメントを却下した。Auroraの広報担当は憶測についてはコメントしないと述べた。

交渉は決裂することもあり得る。しかしもしうまくいけば、Auroraの社員は3倍に増え、Uberにとっては短い社歴の間にいくつかの議論の種を抱え込むことになった費用のかかる長期的プロジェクトという荷をおろすことになる。

Uberは「売買」してきた

Uber ATGの売却は、ここ数カ月Uberが配車サービスや配達といった主要事業に注力し、また資金を注ぐことになったスピンオフや他のディールに続く動きだ。2年前の2018年、Uberのビジネスモデルは「上記のすべて的」なアプローチだった。配車サービス、マイクロモビリティ、ロジスティック、荷物・フードデリバリー、そして将来の自動運転ロボタクシーすらも含むあらゆる交通の形態から売上を生み出すことに賭けていた。

Uberが上場してから戦略は変わり、また新型コロナウイルスパンデミックが経済をひっくり返し、人々の暮らしを根本的に変えて以降、その戦略変更は加速した。過去11カ月、Uberはシェアリングマイクロモビリティ部門のJumpをたたみ、成長しているもののまだ黒字化を達成できていないロジスティック部門Uber Freightの株式を売り、Postmates(ポストメイツ)を買収した(Postmatesの買収は2020年第4四半期のクローズが見込まれている)。

Uber ATGは、価値が大きい最後のUberの所有物だ。多くの長期的約束、そしてかなりのコストをUber ATGは抱える。Uberは2020年11月に、 ATGと「他のテクノロジー」(Uber Elevateを含む)が2020年9月30日までの9カ月で3億300万ドル(約320億円)の赤字だったと報告した。UberはフォームS-1の中で、ATGと「他のテクノロジープログラム」の取り組みの研究・開発費用4億5700万ドル(約478億円)が発生した、と述べた。

4人の業界情報筋はTechCrunchに、Uberが今年、自動車メーカーを含む数社にATG売却を打診してきたと語った。また、Uber ATGがダウンラウンドの可能性に直面しており、これがAuroraとの交渉の裏にあるもう1つの動機かもしれない、とも話した。

2017年創業のAuroraは完全自動運転の構築に専念している。車が高速道路や街中の通りをドライバーなしで走行できるようにする技術だ。同社は著名なベンチャーファーム、資産運用会社、そしてGreylock Partners、Sequoia Capital、Amazon、T. Rowe Priceといった企業の関心と資金を集めてきた。創業者のSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏、Drew Bagnell(ドリュー・バグネル)氏、Chris Urmson(クリス・アームソン)氏も出資している。

アームソン氏は、後にAlphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)となるためにスピンアウトしたグーグルの自動運転プロジェクトを率いていた。アンダーソン氏はTeslaのModel XとAutopilotプログラムの開発・立ち上げを主導したことで最もよく知られている。カーネギーメロン大学の准教授であるバグネル氏はUberの自動運転部門立ち上げをサポートし、ピッツバーグにあるAdvanced Technologies Centerの自律・認知チームを率いていた。

Auroraは零細の新スタートアップから、いまやサンフランシスコのベイエリア、ピッツバーグ、テキサス、モンタナ州ボーズマンに事業所を展開し、従業員600人を抱える企業に成長した。ボーズマンは、Auroraが2019年に買収したLiDAR企業であるBlackmore(ブラックモア)の拠点だった。LinkedIn(リンクドイン)の記録によると、Auroraの現在の従業員の約12%が元Uber従業員だ。

そうした成長にもかかわらず、AuroraはUberを大株主にもつUber ATGよりもまだだいぶ小さい。Uber ATGは従業員1200人超を抱え、ピッツバーグやサンフランシスコ、トロントなどに拠点を構える。米証券取引委員会に提出された書類によると、UberのUber ATGの持分は86.2%だ。残りの投資家の持分は13.8%となっている。

Uberの自動運転車両テクノロジーへの参入は、同社がカーネギーメロン大学のNational Robotics Centerとの戦略的提携を発表した2015年に本格的に始まった。ドライバーなし車両テクノロジーの開発を共同で行うという提携は、Uberによる数十人ものNRECの研究者や科学者のハンティングにつながった。1年後、社内にAV開発部門を立ち上げ、共同創業者のTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏が当時率いていたUberはOtto(オット)という自動運転トラックのスタートアップを買収した。

この買収は最初からトラブル続きだった。Ottoはグーグルのスターエンジニアの1人Anthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドフスキー)氏、それから3人のグーグルのベテラン、Lior Ron(リオル・ロン)氏、Claire Delaunay(クレア・ドローネ)氏、Don Burnette(ドン・バーネット)氏らがその年の初めに共同で創業した。そして創業から8カ月も経っていなかったOttoをUberが買収した。

買収の2カ月後、グーグルはレヴァンドフスキー氏とロン氏に対して仲裁を要求した。どちらの要求にもUberは含まれなかった。この件は決着がついたが、それとは別にWaymoは2017年2月に企業秘密の窃盗と特許侵害でUberに対して訴訟を起こした。Waymoは2018年に和解した裁判の中で、レヴァンドフスキー氏が同社の企業秘密を盗み、それが後にUberによって使用されたと主張した。

和解の中でUberは、Waymoの機密情報をハードウェアやソフトウェアに組み込まないことに同意した。Uberはまた、シリーズG-1ラウンド時のバリュエーション720億ドル(約7兆5000億円)に基づく同社の発行株式の0.34%を含む賠償金を払うことにも同意した。当時、その額は約2億4480万ドル(約256億円)と算出された。

TechCrunchが最初に報じた裁判資料によると、Otto買収の初期にUberは2019年までに自動走行車両7万5000台を走らせ、2022年までにドライバーなしのタクシーサービスを13都市で展開できると想定していた。そうした野心的な目標を達成するのに、Uberは自動運転テクノロジーの開発に1カ月あたり2000万ドル(約21億円)を使っていた。

同社がそうした目標の達成に近づくことは決してなかった。技術的困難、Waymoとの裁判、トラブルに満ちたレヴァンドフスキー氏との関係、そして2018年3月にアリゾナ州テンペで同社の自動運転テスト車両が起こした死亡事故など、ミッションは狂った。

事故を受けて同社はテストを中止し、過去18カ月はより対外的なオペレーションをゆっくりと展開してきた。自動運転車両開発の事業は多額の資金を要することから、Uberはトヨタ、車部品メーカーのデンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから10億ドルを調達した後の2019年春にATGをスピンアウトすることになった。

公開企業としてUberがデビューする1カ月前にあったスピンアウトは、何カ月もの間、憶測の対象だった。費用のかかる事業を他の投資家と共有し、主要事業の業績と短期的な利益目標にフォーカスするための手段としてみられた。

Auroraは何を得るのか

トラブルはさておいて、Uber ATGはAuroraにとって魅力的な2つの重要かつ重大な要素を有している。人材とトヨタだ。

トヨタは2019年に現金を注入する前にUberに5億ドル(約523億円)を投資している。当時、2社は「Uber ATGの自動運転技術、トヨタの高度安全サポートシステムGuardianの強みを展開する」べく、トヨタのSiennaに自動走行技術を搭載したライドシェア車両の試験を2021年にUberのライドシェアネットワークで始める意向を発表した。

2019年のUber ATGへの投資により、トヨタのUberとの関係は深まった。

Uberが企業秘密窃盗に関する裁判でWaymoと対決している間に、Auroraは華々しく創業された。18カ月の間に同社はHyundai(現代自動車)、Byton(バイトン)、VW Group(フォルクスワーゲングループ)などと複数の提携を確保した。いくつかは立ち消えになったが、Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)といった大手との提携も獲得した。いす取りゲームのような変化は、自動運転事業における有望なプレイヤーが多いことを示すものだ。この業界は、よく知られていない事業者や最善の技術とディールを求める移り気な車メーカーで溢れている。

2018年1月にAuroraと提携したVW Groupは2019年6月に、「提携が終了した」ことをTechCrunchに認めた。VW Groupは最終的に、もう1つの自動運転車両テクノロジー開発会社のArgo AI(アルゴAI)に出資した。Argo AIはFord(フォード)からの出資と取引を獲得していた。

現代自動車はAuroraの少数株を保有している一方で、2019年秋に自動運転テクノロジー企業Aptiv(アプティブ)との合弁会社の設立を決めた。AptivとのディールによるMotional(モーショナル)という合弁会社の両社の持分は50%ずつとした。Motionalへの両社の投資総額は計40億ドル(約4200億円)となる見込みだ(エンジニアリングサービス、R&D、IPの合算額を含む)。

それでもAuroraは勝利を収めた。同社は2019年春、Sequoiaがリードし、AmazonとT. Rowe Priceからの「巨額投資」があったシリーズBラウンドで5億3000万ドル(約555億円)を調達した。Auroraの当時のポストマネーでのバリュエーションは25億ドル(約2620億円)だった。直近では、Aurora内ではDavid Maday(デイビッド・メディ)氏の部屋が特に活発だ、と業界筋は話す。Auroraの新しい副社長である同氏は、21年にわたってGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)で事業開発とM&Aを統括した。

Auroraは常に、AVのブレインとなるソフトウェアとハードウェアを組み合わせた同社の完全自動運転技術は特定の車両に限定されないものだと述べてきたが、初期テストで同社はロジスティックではなくロボタクシーへの応用にフォーカスしているようだ。同社は2019年に、長距離トラックへの技術応用についてこれまでよりもオープンに語り始めた。特にBlackmore買収後に、応用により積極的になった。

Auroraは2020年7月、テキサス州に進出し、ダラス・フォートワースエリアでFiat Chrysler Pacificaのミニバンと大型トラックを使っての商業ルートテストを計画していると発表した。まずは少数のPacificaが当地に運び込まれるとされた。同社によると、年末までにトラックもテキサスの道路を走行する見込みだ。

Jumpの先例

よくわかっていないのは、Uber ATGの買収がどういう仕組みになるのかということだ。さらに重要なのは、果たしてAuroraがUber ATGに興味を持ち続けるのか、ということだ。たとえUber ATGのバリュエーションが若干減少したとして、外部からの追加の投資が確保できない限りAuroraの守備範囲を超えるか、Uberが株の一部を所有し続けるような買収構造にするか、となりそうだ。

後者の場合は先例がある。2020年初め、UberはLime(ライム)への1億7000万ドル(約178億円)の投資をリードした。複雑なディールの一環として、Uberは自社の自転車・スクーターシェアリング部門Jump(ジャンプ)をLimeに引き取らせた。

過去において、UberのCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏がUber ATGを切り離そうと熱心だという噂は時々あった。しかし新型コロナパンデミックでそれは鳴りを潜め、同氏や他の同社幹部は配車サービスという主幹事業に注力し始め、デリバリーに賭けた。マイクロモビリティ部門とUber Freightのスピンオフに加えて、同社はローカルのライバル企業との競争でコストが増大していた世界各地の事業の多くを売却した。

2人の情報筋によると、Uber ATG売却への関心はJumpのディール後に大きくなった。

ある業界投資家はUber ATG売却を、やや上昇傾向であることの恩恵を受けつつATGを切り離すことができる、Uberにとって興味深いプランBだと表現した。

カテゴリー:モビリティ
タグ:UberAurora自動運転売却

画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi